コラム

2019/02/20
便秘

排泄物が長時間腸内にとどまり、水分が吸収されて、排便に困難を伴う状態をいいます。健康な人は普通 1日1回の便通があるが中には2~3日に1回の人もあり、それでも充分に満足でき、また不規則な排便であっても苦痛を感じない場合は便秘とはいいません。毎日便通 があって苦痛や残便感など不快感を伴う場合便秘とみなします。

 

原因として

1.

小食および水分不足

食べ物が便のもとです。小食が便秘を起こします。最近はダイエット志向で小食の方が増えていますので便秘になりやすいです。また十分な水分をとらないと便が硬くなり便秘となります。

 

2.

食べ物の繊維不足

食物繊維は腸で消化されず、便として排出されます。繊維は便通 を整えると共に腸を刺激しスムーズな排便を促します。   

また、繊維は腸内細菌の善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。

 

3.

がまん癖

便意が起きてもすぐにトイレに行けない状態で我慢し続けると便意が消えてしますので便秘習慣がついてしまいます。

 

4.

精神的ストレスで

精神的ストレスが自律神経のバランスを崩し、ケイレン性便秘を起こしやすくなります。

 

5.

運動不足

腸の働きは運動などで活発化します。

 

6.

病気

病気で寝たきりの場合、腸の運動が弱くなります。

 

便秘の種類は急性便秘と慢性便秘があります。   

ここでよく悩みとしてでる便秘は、いわゆる慢性便秘、その中の習慣性便秘の方でしょう。  

・習慣性便秘にはさらに3つのタイプに分かれます。弛緩性便秘・直腸性便秘・ケイレン性便秘があります。

 

 

1.弛緩性便秘

便秘の多くはこのタイプです。   

大腸の緊張が緩んでいて蠕動運動が弱く便秘を感じなくなっています。虚弱体質、無力体質の人に多く見られます。   

内臓下垂の人、病気の後で体力が低下した場合になりやすいです。

 

2.直腸性便秘

便が直腸に達しても便意が起きず蠕動運動が始まらない場合をいいます。忙しくてトイレに行かず我慢をしたり、痔で排 便を抑える、また浣腸を繰り返して年老いて神経が鈍くなったりするとこれにかかわります。特徴として太く硬い便で切痔を起こすことがあります。

 

3.ケイレン性便秘

大腸の運動が強すぎ、ケイレンを起こし便の通過を妨げて便秘になるタイプです。また、神経的ストレス、自律神経失調症が原因でなりやすいです。特徴としては便意は強いが排便困難、腹痛、腹がゴロゴロ鳴ったり、腹が張ったりします。  

便はウサギの糞状の細いものです。

 

便秘の予防および治療

食物繊維は充分の摂る  

・繊維は消化吸収されないので、便の量を増やし便意がつきやすくなります。

 

朝食後に排便の習慣をつける  

・朝食を食べて食べ物が胃にはいると胃から大腸へと信号が送られ大腸の蠕動運動が始まり、便が直腸へと送られ便意が起こります。

 

運動をして腹筋を強化する  

・腹筋が弱いと大腸がだらんとして、りきむ力が弱くなるので腹筋をつけて腹圧を高めます。

 

上記のことをしてもなかなか改善されない場合に下剤や浣腸を使っていきます。

 

 

中医学的に便秘を診たときに4つに分かれます。

1.熱証タイプ

このタイプは便秘は「熱秘」と呼ばれます。病気としては体に熱を持ちやすい体質のうえに辛いもを食べ過ぎたり、野菜不足により陽明(消化器系に関するツボのルート)に熱がたまると津熱(体内を潤す作用のある水分)が損なわれ便が出にくくなるものです。

〈主症状〉

大便は乾燥して硬く通じない・腹部がつかえて膨満感がある・腹部を押さえると塊があり痛む・おならがよく出る・排便の切れが悪い等です。  

 

〈随伴症状〉  

顔色が赤い・身体が熱っぽい・頭痛・口が渇く・小便は量が少なく黄色。

 

治療のポイント  

体の中の熱を取り去るツボや体を潤す「水」(津液)の通りを良くするツボを選んで治療を行っていきます。

 

 

2.気滞タイプ

このタイプは便秘は「気秘」と呼ばれます。病気としては、ストレスなどが原因で鬱状態になると体の気の流れがうっ滞します。

そうなると、気の流れをつかさどっている「肝」の働きが失調して便が流れなくなるものです。

〈主症状〉

便秘であるが乾燥や硬さはひどくない・腹部から両脇に連なる張痛  

 

〈随伴症状〉  

食欲不振・めまい・よくげっぷをする等です。

 

治療ポイント  

「肝」の働きを良くし「気」(エネルギー源)の流れを良くするツボを選んで治療を行っていきます。

 

 

3.虚証タイプ

このタイプの便秘は「虚秘」と呼ばれています。病機としては病後や産後に気血(体にとってのエネルギー源や栄養するもの)が回復せず気虚(エネルギー不足)により、うまく便を出せなくなった状態です。また血虚(体を滋養するものの不足)のため、腸が潤いを失っています。

〈主症状〉  

腹部に張痛はない・小腹(下腹部)が不快で便意があるが力が足りず排便が困難・大便はカスのように軟らかい。  

 

〈随伴症状〉  

排便後に疲れる・汗が出る・息切れ・顔色の色艶が良くない・動悸・目のかすみ

 

治療ポイント   

「気」、「血」を回復させるツボを選んで治療を行っていきます。

 

 

4.寒証タイプ

このタイプの便秘は「冷秘」と呼ばれます。病機としては加齢により下焦(下腹)の陽気(温かいエネルギー)が衰えるため温く(温める)出来なくなると陰寒(冷たいもの)が凝結して、気化作用(この場合物質代謝)がうまくいかず便が出にくくなるものです。

〈主症状〉  

排便困難・ひどいときは脱肛・ときどき腹が冷えて痛む。  

 

〈随伴症状〉  

顔色が白い・小便は透明で量が多い・手足の冷え・足腰がだるく力が入らない。

 

治療ポイント  

下焦(下腹)付近のツボを使い気の働き(ここでは体を温めたり、物質体謝を活発にしたりする働き)を強化、また体が冷えるのでお灸を使った治療を していきます。

 

 

食養生として  

はくさい(熱証タイプ、気滞タイプ)、にら(寒証タイプ)、さつまいも(虚証タイプ)、もも(寒証タイプ、虚証タイプ)などを普段の食事にプラスしてあげると良いかと思います。

 

このように中医学では「便秘」=便が出にくい状態にその他の随伴症状をもとに舌の状態や脈の状態も合わせてタイプ別 に診ていきます。

その結果、便秘だけでなくその他の症状にも治療効果が出ますので統合的にお体のお手当てになります。便秘に対しての対処療法ではなく便秘にならない体にしていきましょうというのが中医学の特徴ですのでなかなか治らない頑固な便秘は中医学的鍼灸治療で改善をはかるのも良いかと思います。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
緑内障

緑内障とは、眼の神経が傷つき「視野」が欠けていく病気です。

決して珍しい病気ではありません。

これといった自覚症状がないまま進行するので、視野の異常に気付いた時には、失明寸前というケースもあります。

失明してからの治療は、現代の医学では不可能といわれています。

最近なんだか視力が落ちた・・・”“なんだか眼が疲れるようになった・・・”といった、よくある眼の不調は、緑内障という眼の病気のせいかもしれません。

 

はじめに、眼の仕組みから説明していきます。

物を見るということは、物から反射した光が眼に入るところからスタートします。

光は、眼球の角膜・前房・瞳孔・水晶体・硝子体を順に通って、網膜に像を結びます。

その情報が、網膜の視神経細胞を通って脳に伝えられることで、私たちは物を見ることができるのです。

この仕組みが正常に働くには、眼球内が一定の圧力、つまり一定の“眼圧”に保たれていることが必要です。

眼圧がいつもほぼ一定なのは、水晶体の周りが「房水」という液体に満たされて、またその後ろが硝子体というゲル状の物質に満たされているからです。

重要なのは、“房水が一定量に保たれている”ということです。

その圧力のおかげで眼球が球形に保たれ、変形することもなく、物の像が結ばれて、物を見ることが出来るのです。

房水は血液の血漿とよく似た成分の透明な液体で、血液の代わりに目の中にあって、水晶体や角膜に栄養を与えています。

房水は、虹彩の裏側にある“毛様体”(後房内)でつくられ、眼の前方(前房)に流れていき、虹彩 と角膜の間の排出管(隅角)から排出され血管へと流れ出ています。

つまり房水が常に一定量流れていることで、ある程度の眼圧が保たれているのです。

ところが、房水の流れが悪くなったり、流れ出なくなったりすると、房水が眼球内に溜まって眼圧が高くなり、周りを圧迫し、硝子体も、その先の網膜も圧迫されてしまいます。

眼圧が高くなると、圧力に弱い視神経が侵され、消失してしまい、そのため視野障害が起こります。これが緑内障です。

視神経は一部でも消失すると、その分だけ視野が欠けてしまいます。

しかも消失した視神経は二度と戻りません。

 

緑内障の患者総数は、治療を受けていない潜在患者数を含めて全国で約250万~300万人と推定されています。

最近の調査では、40代以上の30人のうち1人に緑内障が見つかりました。

治療を受けていたのは、その中の約20%です。(日本緑内障学会調査)

 

では、緑内障について“現代医学”と“中医学”それぞれの捉え方を説明していきます。

 

現代医学的な捉え方≫

緑内障には、大きく分けて3つのタイプがあります。

先天緑内障・続発緑内障・原発緑内障の3つです。

先天緑内障”は、生まれつき隅角の異常があるなどの場合です。

続発緑内障”は、ケガや病気、薬剤の使用などが原因で起こります。

原発緑内障”は、ほかに原因となる病気がなく、誰にでも起きる可能性があります。

実際に患者数が多いのが原発緑内障です。そして、原発緑内障はさらに「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」とに分けられます。

 

 

開放隅角緑内障

隅角の房水の排出路にはフィルター状の部分があります。

このフィルター部分に様々な物質が溜まって目詰まりしてしまうと、房水の排出がうまく出来なくなります。なぜフィルター部分が目詰まりしてしまうのか、原因ははっきりしていませんが、老化現象のひとつであることは間違いないだろうといわれています。

いずれにしても、房水の排出がうまくいかないと、房水がたまり、眼圧が上がってしまいます。そしてやがて視神経を侵して消失させ、視野障害が起こります。

これが“開放隅角緑内障”です。開放隅角緑内障は、非常にゆっくりと進行し、また自覚症状が現れにくいために気づきにくいといえます。

 また、眼圧が正常範囲の緑内障もあります。

眼圧の正常範囲は1020mmHgです。そして21mmHg以上の高い眼圧のときには、それだけ緑内障の発生率は高くなるといえます。

しかし、眼圧が高い人すべてが緑内障になるというわけではありません。逆に、眼圧が正常範囲なのに視神経の消失や視野障害が起きている正常眼圧緑内障もあります。

眼圧がいくつだと緑内障という、数値の目安はないのです。

なぜ正常眼圧で緑内障になるかについては、視神経の強さには個人差があるからだと考えられています。

実は、日本人には正常眼圧緑内障がとても多く、開放隅角緑内障の4分の3は正常眼圧緑内障だということがわかっています。

 

 

閉塞隅角緑内障

開放隅角緑内障が房水の排出路の問題で起こるのに対して、房水の通 り道の問題で起こるのが閉塞隅角緑内障です。

毛様体で作り出された房水は、水晶体の後ろから瞳孔の方へと流れています。

その通り道である水晶体と虹彩とがくっついて「瞳孔ブロック」を起こすと房水がそこでせき止められてしまうのです。

すると、隅角の房水の排出路も虹彩で塞がれてしまい、房水が溜まって眼圧が上がり、閉塞隅角緑内障になります。

瞳孔ブロックが広い範囲で起きると、短時間で隅角が閉塞し、急激に眼圧が上がって、急性の閉塞隅角緑内障発作が起こります。

この場合には、急激な強い眼の痛みや、その他の症状が現れます。

しかし、隅角の閉塞が起こっては戻り、起こっては戻るということを繰り返す慢性の閉塞隅角緑内障もあって、その場合は開放隅角緑内障同様、症状に気づきにくいといえます。

 

 

緑内障の症状

正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障や、慢性の閉塞隅角緑内障では視神経が徐々に侵されて視野障害が起こりますが、初期の自覚症状はほとんどありません。

視神経は、視神経乳頭というところから束になって脳へとつながっています。

眼圧が高くなり視神経が侵されると、視神経の線維は徐々に消失し、視神経乳頭がへこんでしまいます。こうなると神経線維が消失した部分の情報は脳に伝わらなくなり、視野が欠けるという障害が起こります。

この変化はとてもゆっくりと起こっています。そして、神経線維は120から130万本もあるので、神経線維が消失し始めてもすぐには視野に影響が現れません。

通常、視野の異常が発見されるときは、神経線維の半分ほどが消失している段階です。

さらに、私たちは物を見るときに片方の眼の視野が欠けていても、もう一方の眼で自然にカバーしてしまい、視野が欠けているとは思わずに日常生活にも支障のないまま過ごしてしまうことが多いのです。

しかし、急性の閉塞隅角緑内障の発作の場合はすぐに気づきます。

突然の強い眼の痛みに襲われ、目の充血、かすみ等とともに強い頭痛や嘔吐までもが起こることがあります。こうした症状が起きた時には直ちに専門医の診察を受けることが必要です。

 

 

緑内障の検査

早期発見のためにできることは、定期的な検査を受けることです。

緑内障を診断し治療経過の良し悪しを判断するには、多くの検査が必要なのです。

 

(1) 眼圧検査

 

(2) 隅角検査

主に診断のために行う検査で、専用のコンタクトレンズを用いて行います。

 

(3) 眼底検査

視神経の障害の程度を判定するために行う検査です。視神経の眼球の出口(視神経乳頭)には、小さなくぼみがあり、緑内障ではこのくぼみが拡大します。健康診断などでは、よく「視神経乳頭陥凹拡大(ししんけいにゅうとうかんおうかくだい)」と判定されます。

 

(4) 視野検査

見える範囲を調べる検査です。緑内障の進行具合を判断するために、最も重要な検査です。

 

 

緑内障の治療

緑内障は、眼圧を下げることができれば、その進行を防止したり、遅らせたりすることができる可能性のある病気です。正常眼圧緑内障でさえも、眼圧をさらに下げることで病気の進行を遅らせることができる可能性があります。ただし、ひとたび障害されてしまった視神経は、残念ながら回復することはありません。また、どんなに手を尽くしても進行を止められない緑内障もあります。しかし、早期に緑内障を発見できれば、言い換えれば、まだ視神経の障害が軽いうちに手を打つことができれば、失明に至る危険性はぐっと少なくなります。

治療方法としては、薬物療法・レーザー治療・手術がありますが、すべての緑内障に対して同じ治療効果 があるのではなく、緑内障のタイプやそれぞれの人に適した治療方針を決定してゆくことがとても重要です。

 

(1) 薬物療法

多くの緑内障では、薬物療法が治療の基本となります。現在では、さまざまな薬効を持った点眼薬が発売されており、緑内障のタイプ・重症度・眼圧の高さなどに応じて処方されます。一種類の目薬だけで効果 が少ないと判断された場合は、複数の目薬を組み合わせて処方されます。また、眼圧を下げる飲み薬もありますが、全身の副作用が強く出ることがあり、内服できない場合もあります。

 

(2) レーザー治療

レーザー治療には主に二つの方法があります。ひとつは、虹彩(いわゆる茶目)に孔を開けて、眼内の房水の流れを変えるというもので、多くの閉塞隅角緑内障がこの方法によって治療可能です。虹彩 に孔を開けるときにレーザーを使用します。

もうひとつは、線維柱帯に照射することで房水の排出を促進するためのレーザー治療です。一部の開放隅角緑内障に効果 があります。レーザー治療は外来で行うことができます。

 

(3) 手術

薬物療法やレーザー治療が功を奏さなかった場合に行われる治療です。大まかには、房水を眼外に染み出すように細工をする手術と、線維柱帯を切開して房水の排出をたやすくしてやる手術の二つがあります。緑内障の手術方法は年々改良が進み、治療成績もかなり改善されてきました。

 

 

 

中医学的な捉え方≫

中医学の病気の捉え方は、現代医学とは異なります。

その違いは、病気の原因を考える病理観や人体のしくみを考える生理観といった、根本的なところから始まります。

中医学独自の診断体系に基づいて診断を下し、それに沿った治療方法で病気にアプローチをしていきます。

現代医学とは違う角度から人体を見つめる医学なのですから、比較して“どちらが良いのか?”ということではありません。

病気を治す”という目的は同じで、そのためのアプローチ方法が違うだけなのです。

 

中医学的に健康を考えるときに重要なのは、「正気」の充実です。

正気とは、免疫力や抵抗力の源です。

正気を生み出す物質が「気・血・水」です。

気・血・水は人体を構成する基本物質で、骨や肉になると同時にエネルギー源にもなっていると考えるのです。

そして、気・血・水をつくり、その補充や代謝を行うのが「五臓六腑」です。

五臓六腑が順調に働けば、気・血・水は充実し、それによって正気も充実します。

これが健康な状態なのです。

逆に、五臓六腑が失調し、気・血・水が不足したり、あるいは代謝が悪くなった状態が病気なのです。

 

ですから、どんな病気でも気・血・水の異常に行きつくのです。

 

では、気・血・水の異常は何故おこるのでしょうか。

病気の原因を「病因」といいます。病因には、体の外からの病因「外感」と、体の内に原因がある「内傷」の二つ大別 されます。

さらに、「外感」には“六淫(りくいん)”といわれる気候の異常(風邪・暑邪・火邪(熱邪)・湿邪・燥邪・寒邪)のほか、“外傷”“寄生虫”“疫痢”があります。

「内傷」には、“七情(精神的病因)”“飲食不調(食事による病因)”“労逸(過労や休みすぎ)”“血・水の代謝異常(体内異常物質が病因)”があります。

 

どういった病因によって、気・血・水の何がどのようにバランスを崩しているのかを見極めることを、“弁証”といいます。

弁証の結果から、治療方法を決めることを“論治”といいます。

中医学では、この“弁証論治”に基づいて治療が行われます。

一般に、未知な病気に対しては対応策をとることは困難ですが、病気の原因(病因)やメカニズムが分析できれば、中医学ではそれに対する何らかの対応策をとってゆくことができます。

 

それでは“緑内障”についての弁証を考えていきたいと思います。

緑内障は、視神経が障害をうけて、視力が低下、悪化すると失明に至る病気です。

中医学には、“緑内障”という弁証はありません。

弁証では、“脾胃虚弱・肝気鬱結・肝腎陰虚”があります。

各弁証を説明する前に、関わる臓腑“肝・脾・腎”の働きから説明します。

 

 

肝の主な働き≫

肝は疏泄を主ります。具体的には、全身の気機(気の昇降出入の運動)を調整し、それによって血・水の運行や、脾胃の運化作用を促進し、情志(感情)を調整するといった作用があります。

肝の疏泄機能が正常であれば、気機はスムーズにゆき、気血が調和し、経絡は滞らず、臓腑・器官も正常に活動します。

しかし、この機能が失調すると、気・血・水の輸送・代謝に異常がおこり、血行障害や病理産物を形成し、経絡が渋滞し、臓腑・器官の活動に影響がでます。

肝の経脈は上って目系に連絡しています。

そして、視力は肝血の滋養に依存しています。このことから、肝は目に開竅するといわれています。

また、五臓六腑の精気はすべて目に上注するため、目と五臓六腑は内在的に連携しています。肝の機能が正常であるか否かは、しばしば目に反映されます。

 

 

脾の主な働き≫

脾は運化を主ります。運化とは、水穀(飲食物)を精微(栄養素)と化し、全身に輸布する機能のことです。脾の運化機能とは“水穀の運化”と“水液の運化”の二つからなります。

水穀の運化”とは、飲食物の消化・吸収作用のことです。この機能が正常であれば、臓腑・経絡・筋肉・骨髄などに必要な栄養が届き、正常な生理活動が営むことができます。

しかし、運化機能が失調すると食欲不振となり、倦怠感、消痩(やせやつれる)や、気血生化不足などの病変がおこります。

水液の運化”とは、水液の吸収・輸布の作用のことです。水湿の運化ともいわれています。

吸収された水穀の精微に含まれる余った水分はこの作用により、肺と腎に送られ、肺と腎の気化作用により汗・尿となり体外に排泄されます。

この働きが正常であれば、水液は体内に異常に停滞することはなく、湿・痰・飲などの病理産物も生じません。

しかし、脾の水液運化の機能が失調すると水液が体内に停滞し、湿・痰・飲などの病理産物が生じ、また水腫となることもあります。

病理産物が経絡の流れを滞らせると、必要な栄養素が行き渡らず、また痛みを発生させます。

 

 

腎の主な働き≫

腎の機能は、精気(人体の各種機能を支える基本物質)を貯蔵し、発育・成長、生殖を主ること、また水液代謝や呼吸(深い呼吸=納気)作用を管理することです。

腎中の精気は生命活動の基本で、腎陰と腎陽は各臓の陰陽の根本です。

腎陰は人体における陰液(血・水)の根源であらゆる臓腑・器官を潤し、滋養する作用を有しています。また、腎陽は人体における陽気の根源で臓腑・器官を温煦し、推動する作用があります。

これらが衰えると、老化現象が加速され、耳鳴り、難聴、健忘症などの症状や、生殖能力の減退、浮腫などの症状があらわれます。

 

それでは、各弁証の説明をしていきます。

 

 

脾胃虚弱タイプ

過労や思慮過多、慢性疾患などにより、脾気を消耗し運化機能が失われることにより、水穀と水液の代謝障害を引き起こします。

水穀の精微が化生できなくなれば、気血の生成が低下し、気血不足を引き起こします。

また、脾の機能が低下すると、体内に水液が停滞し病理産物である湿が発生します。

これを“内湿”といいます。内湿が停滞すると、そこに“熱”が発生し、経絡の流れが滞っていきます。

このように、気血不足、湿の発生による経絡の阻滞が起こると目(全身)を滋養できなくなります。

その他、食欲不振、下痢、水腫、倦怠疲労、無気力などの症状があらわれます。

 

(治療方法)益気健脾・・・脾の気を充実させ運化機能を整える治療です

 

 

肝気鬱結タイプ

肝の疏泄作用は精神的な要素、ストレスが加わることにより失調します。気機が鬱滞した状態を“気滞”といい、気滞が生じた部分には膨満感と疼痛がおこります。

湿と同様に、気滞がおこると“熱”が発生します。これを肝火といいます。

肝火は経絡の阻滞をおこし、上部に上炎して頭顔面部に症状を引き起こします。

目の充血・腫脹・疼痛、頭痛、顔面紅潮、突発性難聴、耳鳴り、イライラ感、怒りっぽい、不眠などの症状があらわれます。

(治療方法)

疏肝理気解鬱・・・

鬱滞した肝気の流れを改善する治療です

 

瀉肝清火・・・・・

肝火を取り除いて、燃え上がる炎を鎮める治療です

 

 

肝腎陰虚タイプ

肝血が腎を養うことによって精を生成し、腎精が肝を滋養して血を生成します。

ストレス・疲労の長期化・慢性病などによって、両者のバランスが失調すると、内熱が出現して、肝気の疏泄や腎の蔵精機能を減退させます。

肝血と腎精(精血)は同源であるため、肝腎は同時に陰虚が現れやすく、一方が衰えるともう一方が同じように衰える性質があります。

肝の陰液(血・水)が不足すると、目を滋養できなくなります。

腎陰が不足すると、肝の陽を制御できなくなり肝陽上亢を引き起こします。

頭部や目の脹痛、目の充血、顔面紅潮、眩暈、耳鳴り、イライラ感、怒りっぽい、不眠、多夢、腰や膝のだるさなどの症状があらわれます。

 

(治療方法)滋養肝腎・・・肝腎の精血を滋養して内熱を冷ます治療です

 

 

上記の3つのタイプに分類して説明しましたが、大きな原因は目を巡る経絡の流れが滞り、視神経が栄養・滋潤されないことであると考え治療を行います。

 

 

本日の内容は如何でしたか?

一般に鍼灸治療は、痛み・凝り・自律神経失調症などの適応は知られております。

しかし、中医鍼灸を行って居る場合、眼科系の疾患などでも治療効果 を発揮することが出来ます。

眼科疾患でお悩みの方、一度経験豊かな鍼灸の先生の治療を試みるのも良いかも知れません。

本日の内容が、眼科疾患・特に緑内障でお悩みの方の参考になれば幸いかと存じます。

2019/02/20
肋間神経痛 

肋間神経痛に関して、始めに神経の働きから説明します。“神経”とは、動物に見られる組織で、情報伝達の役割を担っています。

神経は、中枢神経と末梢神経に分かれます。中枢神経は、脳そのものと脊髄そのものをいいます。末梢神経は、脳と脊髄と全身の各部との連結する部分で、脳から出る脳神経と脊髄から出る脊髄神経があります。

脳神経は脳から左右それぞれ12本あります。末梢神経は、体性神経と自律神経があります。体性神経とは、痛みや温度などを脳に伝える知覚(感覚)神経と、自らの意志で動かすことの出来る運動神経です。顔の筋肉や手・足の筋肉などは末梢神経で支配されているので自分の意志で動かすことが出来ます。自律神経とは、自分の意志で動かすことの出来ない心臓や血管、内臓に分布している神経です。

肋間神経は、脊髄の胸髄から出て肋骨に沿って走り胸部や腹部に分布している末梢神経です。肋間神経の知覚性のものは胸・背部と腹部の皮膚に行き知覚を司っています。更に胸膜・横隔膜にも肋間神経が分布して痛覚に関与し、心膜・食道にも肋間神経の知覚線維が分布しています。運動性のものは、脊柱起立筋(最長筋・腸肋筋)、肋間筋、腹筋に分布しています。

 

【現代医学的な捉え方】

末梢神経の経路に沿って起こる激痛発作を“神経痛”とよんでいます。神経支配に関係なく現れる痛みは漠然と用いられることが多い病名ですが、医学的にはいくつかの特徴が見られる場合だけを神経痛と定義しています。

神経痛の痛みの発作は1回につき数秒から数分間で終わることが多く、無症状の時間をはさんで繰り返し現れます。さらに、痛みが起こる末梢神経の支配領域に刺激を加えると、痛みを誘発する圧痛点と呼ばれるポイントが認められます。

また、くしゃみや咳をしたときなどに痛みが引き起こされることがあります。体を曲げるといった、ある決まった姿勢をとると痛みが起こる場合もあります。

神経痛は、特発性と症候性(続発性)に分けられます。特発性とは、原因となる病名が判明せず、神経痛が病名としてつけられる場合です。知覚や筋肉の運動・反射といった末梢神経の機能を調べる神経学的な検査をしても、痛み以外の症状が見られません。

かつては、背骨にある病気がなかなか突き止られず、ほとんどの神経痛が特発性として扱われていました。しかし、診断技術の進歩に伴い、神経痛の多くに原因となる病気があることが判明してきました。

症候性とは、診断や検査によって神経痛の背景にある病気が明らかになり、その1つの症状として痛みが現れる場合です。肋間神経痛は症候性タイプがほとんどとされています。 “脊髄の病変”“神経根の障害”“帯状疱疹(ウィルス感染)”“背骨の側湾症”“内臓異常から起こる関連痛”などが原因と考えられています。

 

脊髄の病変が原因の肋間神経痛

背骨の中に脊髄神経が走行していますが、この脊髄神経が何かの原因で圧迫を受けて神経異常を起こした状態です。圧迫を起こすのは、腫瘍・椎間板ヘルニア・脱臼・骨折・血腫 等が考えられます。胸椎部の病変で両側の異常(両側の肋間神経に知覚異常が感じられる) が現れたら、脊髄の病変が疑われます。また、トイレで力んだり、くしゃみをした時に体の両側に症状が出たり、電気的な痛みが走る、なども脊髄病変が疑われます。

 

神経根の障害が原因の肋間神経痛

肋間神経が胸椎の骨の間から出てくる時に、この出口の部分で何かしらの障害を受ける事で痛みなどの神経症状が出てくるものです。神経根をいたずらする要因は、椎間板ヘルニア・骨の変形・椎間関節症などによるものがあります。通 常は片側に症状が出ます。

 

背骨の側湾症が原因の肋間神経痛

側湾症は背骨が側湾しているため、肋骨にアンバランスが生じて神経を圧迫し、靭帯や筋肉に異常をきたし、背中のあちこちが痛くなることがあります。

 

帯状疱疹が原因の肋間神経痛

帯状疱疹は脊髄神経節のウィルス感染症による肋間神経痛で、神経の支配領域に沿って病変が広がります。ウィルスの正体である“ヘルペスウィルス”は脊髄神経節に進入し皮膚に運ばれ、そこに感染を起こして、感染した神経が支配する皮膚領域に激しい痛みを起こします。この場合、身体を動かさなくても痛みが持続します。

 

内臓異常から起こる関連痛

関連痛は、内臓の異常があるときに、ある一定の場所に出てくる痛みです。神経の支配域とは別 の痛みであり、動かしても変化はありません。背中に出てくる痛みが多いために、肋間神経痛と間違われることがあります。肋骨の中には、心臓・肺・肝臓・胃・膵臓などの臓器があります。これらの内臓には自律神経が背骨から走行しています。内臓の異常は神経を伝わって背骨の回旋筋に影響を与えるといわれています。胸椎は支持力を失って変位 を起こし、これが痛みの原因ではないかとも言われています。

 

【中医学的な捉え方】

中医学では、病気は体内の「気・血・水」のバランスが崩れた状態であると考えます。

必要なところに足りなかったり(この状態を“虚”といいます)、必要以上に多かったり (この状態を“実”といいます)、巡りが悪くなったりした状態を、独自の診断方法を用いて見極めて、証をたてて治療方法を決めていきます(これを弁証論治といいます)。

 

~気・血・水について~

《気》・・・

気は人体を構成し、人体の生命活動を維持する最も基本的な物質なのです。

気”は二つの源から作られています。

・先天の気・・・両親から受け継いだ気です。生命の土台といえます。 ・後天の気・・・後天の気には二つあり、生命活動の基礎になっています。

1つは“水穀の精微”と呼ばれ、脾と胃の働きで飲食物を栄養に変えて作られます。

もう1つは、“清気”と呼ばれ、呼吸によって新鮮な外気を取り入れて体内の濁気を吐き出します。

気は体内で、絶え間なく流れ、全身の臓器や組織・器官をめぐり生理活動の動力となっています。

 

《血》・・・

血は栄養素を豊富に含んだものです。脈管内を通 じ、全身を流れ、各器官に 栄養を与え、その活動を支えています。

血の流れが悪くなり、有害な状態で体内に停滞した状態を”オ血“といい、月経痛や肩こりなど様々な痛みの症状を生みます。血が不足した状態を“血虚”といい、貧血やめまいの症状が現れます。

 

《水》・・・

体内に存在する必要な水液のことです。全身に潤いを与え、関節などの動きを 円滑にする作用があります。不足すると乾燥、関節が動かしづらいなど症状が現れます。多過ぎたり、流れが悪くなって停滞すると“湿”となり、むくみ・だるさ・冷えなどの症状が現れます。

 

この“気・血”が流れる通路を、「経絡」といいます。経絡は、臓腑で生成された気血を上下・内外に運び、全身を栄養したり機能を調節したりする作用を持っています。

さらに、臓腑と臓腑、あるいは臓腑と器官、体表などをつなぐ連絡網でもあります。

中医学には、現代医学でいう神経に該当する概念はありませんが、経絡は独自の楯行経路 をもつ循環・伝達系であると考えられています。

 

肋間神経痛は、中医学において“脇痛”に属する疾患で「季肋部痛」「脇下痛」などの病名があります。脇痛は情緒の不安定、飲食の不摂生、慢性疾患が長期化することなどが原因で起こると考えられています。そして経絡の流れに異常が起こったときに「痛み」という身体からの警告が発せられるのです。

経絡の運行障害による痛みを“不通則痛”といいます。治療は「通ずればすなはち痛まず」(通 則不痛)に基づいて行われます。

 

それでは、運行障害を起こす原因をタイプ別に説明していきます。

 

肝気鬱結タイプ

中医学でいう“肝”とは、現代医学の“肝臓”とは異なります。肝の作用には、気の運動を調節して気血の運行を維持して、消化や水液代謝の促進があります。更に、精神・心理活動にも肝の調節機能が作用しています。このような作用を“疏泄(そせつ)”といいます。感情の抑鬱や悩み、怒りによって肝が傷つくことによって、気の流れが滞り経絡の流れが悪くなり胸肋部が張って痛みます(脹痛)。この時、痛む場所は流動的で定まりません。

情緒が安定して、気持ちがのびやかになると症状が軽減します。

舌質は紅、舌苔は薄白、脈は弦です。

(治療原則)・・・・疏肝解鬱・理気通絡(肝の疏泄作用の失調を整えて、気の流れを促し 経絡の通りを良くして“血”や“水”をどんどん行かせて痛みを取り除きます)

 

血オ(血流不全)タイプ

肝気鬱結”の症状が長く経過すると血行に影響して、オ血(血の流れが停滞した状態)を生み、これが経絡の流れを悪くし痛みが起こります。特徴は、針で刺されるような痛みで、痛む場所が一定しており、痛みは昼間は軽く、夜間に激しくなります。

舌質は暗紫またはオ斑、舌苔は薄白、脈は渋です。

(治療原則)・・・・活血化オ・疏経活絡・キョ風通絡(血の流れを良くして、オ血を取り 除き経絡の通りを良くして痛みを改善します)

 

痰飲タイプ

飲食の不摂生や消化機能の減退により水飲・痰積(体内に溜まった不要な水分のこと)が肋部に停滞した為に経絡の流れを妨げ、胸脇部に痛みを生じることがあります。咳をしたり唾を吐くと胸脇下に痛みが響く、脇間部が脹る、息切れがする、などの症状も現れます。

舌質は淡、舌苔は白、脈は沈弦または沈滑です。

(治療原則)・・・・化痰逐飲(水分代謝を改善し体内にある不要な水分を取り除いて 胃腸の働きを整えて痛みを改善します)

 

肝陰虚(血液・栄養不足)タイプ

肝の働きには“血の貯蔵”があります。活動時にその貯蔵した血を疏泄機能を用いて四肢末端まで供給する役目を担っています。過労や慢性疾患などによって、本来からだに必要な気血が不足することでも痛みが発生します。このような栄養不足の痛みを“不栄則痛”といいます。いつも胸脇部に痛みがあり、目のかすみ、耳鳴り、口の渇きなどの症状も現れます。

舌質は紅、舌苔は少、脈は弦細数です。

(治療原則)・・・・活血潤燥・理気疏肝・和絡止痛(血の不足を補って体を潤し、経絡の 流れを良くして痛みを改善します)

 

少陽病タイプ

これは、“六経弁証”の中の症状です。中医学では、“弁証論治”という方法で病状を見極め、治療方法を導きます。弁証方法には“六経弁証“の他“臓腑弁証”“八綱弁証”“気血弁証”“三焦弁証”などがあります。

六経弁証は、おもに寒冷性の外邪(外因)により、疾病が発生する時に用いられます。六経弁証では、疾病の段階を、“太陽病・陽明病・少陽病・太陰病・少陰病・厥陰病”の6段階に分けています。少陽病は、外邪が体表にはなく、しかしまだ内部(裏)にまでは入っていない状態をいいます。これを、“半表半裏証”ともいい、冷感と熱感とが交互にあらわれること(寒熱往来といいます)を特徴とします。脇肋部が張って痛む他、口が苦い、呼吸をすると増悪する、咽喉部の乾燥感、食欲不振などが現れます。

舌質は紅、舌苔は白滑~薄黄、脈は弦です。

(治療原則)・・・・和解少陽(邪気を取り除いて正気を助けて症状を改善していきます)

 

治療原則の四文字は見慣れないものだと思いますが、原因となるものを取り除き“経絡”の中の気・血・水の流れをスムーズにすることで痛みを取ることを目的としています。

 

現代医学と中医学とでは、“肋間神経痛”という症状の捉え方が異なります。

このように、違った角度から人体を見つめているので、現代医学とは違ったアプローチで治療が行なえるのが中医学であるといえます。

大まかな説明でしたが、少しでも中医学的なアプローチがご理解頂ければ幸いです。

 

最後に、肋骨で囲まれた中には、脊髄をはじめ様々な臓器が存在しています。痛みを発する原因も多くありますので、安易に自己判断をされずに検査を受けることも付け加えさせて頂きます。

 

中医学鍼灸は、一般的な局所治療鍼灸と異なります。

症状のタイプ別や、細かい体質、或は症状の起因を見極め手当てを行なうところに大きな特徴が有ります。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
脇痛

今回は脇痛についてのお話しです。

脇の痛みですが脇のみに限局するのでなく、場合によって胸部や腹部にまで波及するものも含めています。現代医学で脇に出る痛みを外傷によるもの、神経性によるものに分けて紹介していきます。

外傷によるものとしては「肋骨骨折」、神経性によるものとしては「肋間神経痛」、「内臓の関連痛」です。

 

《肋骨骨折》

転倒や打撲による外傷パターンと、スポーツや風邪(持続的な咳)などによる疲労骨折などが主な原因です。骨粗鬆症(骨がもろくなってしまう病気)の高齢者の他にも、スポーツを激しくする若年者にもよくみられます。

症状としては持続する胸脇部痛です。この痛みは咳や深呼吸、体動時に増強します。折れた肋骨が肺を傷つけ気胸(肺に穴が開いた状態)、血胸(胸腔内に血液が貯留した状態)をひきおこす場合もあります。

診断はレントゲン検査が欠かせませんが、骨がずれていないために骨折線が発見できなかったり、肋軟骨部での骨折では肋軟骨がレントゲンに写 らないために診断が難しくなります。したがって、自覚症状や医者の判断が重要となってきます。

2週間以上にわたって持続して痛みが出ている場合には、肋骨骨折の疑いを持ってください。単なる打撲や筋肉痛ではだいたい1週間程度で軽快します。骨折と診断された場合は、治療としてバストバンドによる固定や痛みに対しては非ステロイド系抗炎症剤等の服用があります。

 

《肋間神経痛》

肋間神経痛とは、胸髄(胸からお腹の高さくらいで背骨の中を通る神経のおおもと)から出て肋骨に沿って走行する肋間神経が、何らかの原因により特発的に痛みを生じるものをいいます。

原因不明の原発性肋間神経痛と原因の明らかな続発性肋間神経痛に分けられます。

原因-

原発性のものに関しては、心因性の痛みや続発性の痛みも除いた上で末梢神経になんらの病変がみられません。

続発性の場合は末梢神経、脊髄の知覚神経の刺激や障害によっておこります。最も多い原因としては肋間神経の絞扼(圧迫)障害で、肋間神経が肋骨と肋骨の間の肋間筋というところで圧迫されてしまうパターンです。

その他として寒冷刺激による神経炎や外傷(肋骨の骨折やひび)、帯状疱疹もしばしば肋間神経痛の原因となります。

 

症状-

肋間神経痛の主な症状は片側ででます。

脊髄から肋骨に沿って激しい痛みが突然おこる。

深呼吸や咳、会話で痛みが強くなる。

身体をひねったり、痛みのない側に身体を曲げて肋間神経を伸ばすような姿勢をとると刺すように痛む。 etc

 

治療-

原因が明らかな場合は、まず原因を取り除く治療を行います。

痛みに対しては温熱療法や鎮痛剤の使用、反応点への鍼刺激や筋肉や肋骨を整える徒手療法で様子をみて、それでも痛みが治まらない場合は神経ブロック注射で痛みの除去をはかります。

 

《内臓疾患による関連痛》

 

~関連痛とは?~

ある部位の痛みを、異なる部位の痛みと脳が勘違いをすることによっておこる痛みのことです。

なぜこのようなことがおこるかというと、人は痛みを感じるときは痛みが起きた場所にある受容器(痛みを感知する装置)から脳へ神経を通 って伝えられます。その神経はいくつかに枝分かれをして各所に伝わっているので、同じ神経束が源になっている場合などは、痛みの電気信号が一体どこから出ているのかわからない状態になってしまうことがあり、痛みの発生源が混乱してしまうためです。

 

・右脇腹に痛みが出る場合

・胆石-

肝臓の右下に胆嚢という袋状の臓器があります。

通常は胆汁といって食べた脂肪分の消化を助ける消化液を貯えています。この胆嚢に出来るまるで石のようなもの(結石)を胆石といいます。この胆石は脂肪分や糖分の成分が結晶を作り出来ます。そして胆嚢から胆石が管を通 って出ようとしたときに右脇腹に痛みが出るのです。

他にも心か部(みぞおち)の痛みや右肩、右背部にも痛みや筋肉の張りとしてあらわれます。

・肝炎-

肝炎とは、肝臓に炎症が起こった状態で赤く腫れて熱を持ち触ると痛みを感じます。

日本人の約80%はウイルス感染によるものですが、その他にも原因として薬剤、アルコール、アレルギー等があります。

右脇腹の痛み以外にも、全身倦怠感、発熱、頭痛、関節痛、悪心、食欲不振等もみられます。その後黄疸(眼球や皮膚などが黄色くなる)の症状がでてきます。

・尿管結石(右側)-

腎臓内でできた結石の一部が、尿管を下っていく途中で尿管につまってしまうものです。

主な症状としては血尿(目で見てわからない場合あり)と腹痛です。腹痛は脇腹あたりまで広がることもありかなり強い痛みです。

 

・左脇腹に痛みが出る場合

・膵炎-

膵炎には急性のものと慢性のものがあります。

膵臓から膵液という分泌液が出ますが、その中に消化酵素を含みます。この消化酵素が自らを消化してしまい組織が壊死してしまうものが急性です。慢性のものは膵臓が長年にわたって炎症を繰り返しているうちに徐々に膵臓の正常な細胞が破壊されていきます。原因としては胆石やアルコールの過飲等になります。

症状としては左脇腹の痛みの他に心か部(みぞおち)の痛み、発熱、嘔吐、腹部の膨満感、時として黄疸などです。

・脾腫-

脾臓が腫れて大きくなった状態です。

肝硬変や心不全による脾臓のうっ血、細菌やウイルス感染による炎症等が原因で起こります。

症状としては左脇腹の痛みの他に呼吸困難や吐き気、便秘などもみられます。脾臓が巨大になると脾臓への血流が阻害されて組織が壊死してしまい激しい痛みとなるのです。

・尿管結石(左側)-

右の場合と同じです。

 

ここであげた例はごく基本的なことであり、でてくる症状も必ず脇への痛みに限らない場合もあります。脇への痛みを感じた際に、上記で思い当たるものがあれば参考にしていただければと思います。

時間が経過してもなかなか改善しないものであれば、専門の医師のところで検査をして指示を仰いでください。

 

おおまかに3つの項目でみてきましたが、いずれもすぐには完治しないものばかりです。はじめは筋肉の凝り、張り、痛みと思っていても症状がなかなか改善されず、他にも気になる症状が出ている場合には我慢をせず、しっかりと検査等を行いましょう。早期に病態がわかれば治療予後も良いです。

 

 

《中医学からみた脇痛》

 

まずは脇痛に関連する中医学独特の身体観を説明していきましょう。

 

~気・血・水について~

気-

「気」とは、人が生理活動を行う際に必要なエネルギー源です。

生まれながらに両親から授かった「先天の気」と飲食物や呼吸などによって得られる「後天の気」とがあります。

「気」のはたらきとして内臓の活動を促進したり血脈(血の流れ道)や経絡(気の流れ道)を推進したりする「推動作用」、体温を維持したり、内臓を温めて活動を促進する「温く作用」、体の表面 を保護し、外邪(外からやってくる侵入者)を防ぐ「防衛作用」、必要以上に体の外に血や水分が漏れないようにする「固摂作用」、代謝を促進し物質を変化させるはたらきの「気化作用」などがあります。

 

血-

「血」とは人、の生命活動にとって基本となる物質で全身を栄養し潤していきます。顔色や肌つや、毛髪や筋肉などすべて「血」の充足が必要です。また「血」は人の精神活動にも必要なもので「血」が欠乏すると精神的な症状(失眠、健忘、昏迷、不安など)が現れます。

 

水-

「水」とは、人体中の正常な水分の総称です。

主な作用として潤いを与えることであり、体の表面近くでは皮膚や毛など、深い部分では脳や骨、関節、内臓まで潤します。

 

~臓腑について~

臓-

「臓」とは、五臓とも呼ばれ、肝、心、脾、肺、腎という実質性臓器のことを指し、主なはたらきとして気、血、水の生成や貯蔵といったはたらきを担います。

 

腑-

「腑」とは、六腑とも呼ばれ、胃、小腸、大腸、膀胱、胆、三焦という中空性臓器のことを指し、主なはたらきとして飲食物の消化をし身体に必要なものは五臓に渡し、不必要なものは排泄するというはたらきをします。

今回の脇痛と関連する臓腑

肝-

「肝」とは、現代医学でいうところの肝臓とは少し意味合いが違い、色々なはたらきをします。

大きなはたらきとして、1つは身体のすみずみによどみなく気を送り出す「疏泄作用」、もう1つは血液量 を調整すべく貯蔵するはたらきがあります。その他にも目や爪、筋肉といったところとも通 じており「肝」の不調がそこに現れたりもします。

 

胆-

「胆」とは、現代医学でいうところの胆嚢とは少し意味合いが違い、おもしろいはたらきをします。「胆」には「肝」で作られた胆汁を貯蔵し、消化吸収の際に助けるはたらきがあります。また、決断をしたり勇気につながるなどの精神的なはたらきも担うのです。

 

身体には経絡という気の通り道があります。大きなものでは14本身体を上下に走っていますが「肝」、「胆」に関係する経絡は脇を通 過してそれぞれ足や頭に行くのです。それで「肝」、「胆」の不調は時として脇部に出やすいのです。それではこの脇を通 る経絡に影響を与える原因をタイプ別に見ていきましょう。

 

・肝鬱脇痛タイプ

 

先ほども説明したとおり、肝は気をスムーズに流す疏泄作用をもっていますがストレスや怒りなどといった感情の変化にとても敏感で、気の流れが悪くなります。そのために脇を通 る経絡の流れが滞り脇部が張って痛みます。

痛みの症状の他には胸悶(イライラ)、ゲップ、胃液が込み上げる、怒りっぽくて不眠症などです。舌の苔は薄くて白く脈は弦(はじくような脈)です。治療は肝の気の流れを整えつまりをとっていきます。

 

 

・湿熱脇痛タイプ

 

湿とは身体にとって不必要な水分で、身体の中に停滞し重くてだるい感じを出したりするもので、体内で発生するものと外からやってくる場合があります。それに熱が加わると湿熱となります。

具体例として、アルコールの過剰摂取や味の濃い物の食べすぎは体内で湿熱となりやすいですし、高温多湿の環境に長時間いる場合などは外から身体に湿熱が入ってきやすいです。この湿熱が胆の経絡を犯し脇の痛みとなって出てきます。

他の症状として悪寒発熱、口苦、心煩、悪心嘔吐、脂っこい食べ物を嫌うなどです。舌の苔は厚くべっとりとして黄味をおびることもあります。

脈は数弦(速くてはじくような脈)です。治療は熱を発散させて湿を消して肝の疏泄機能をアップさせ流れを良くします。

 

 

・お血脇痛

 

お血とは血の流れが悪くなり臓腑や経絡に停滞したものをいい、きの流れが悪くなったとき(気は血と一緒に巡る)や打ち身や捻挫をして出来ます。脇を痛めてしまうと脇でお血がおきてしまい一定の場所が刺すように痛みます。

他には昼間よりも夜間に痛みが強まります。舌の色は点状に出血があったり暗紫色、脈は弦か細数(細くて速い脈)です。治療は血を活発に循環させて気の巡りも良くして痛みを止めます。

 

 

・陰虚脇痛タイプ

 

肝のはたらきで先ほども説明しましたが、血を貯蔵するはたらきがます。

何か活動する際は、肝で貯蔵していた血が各所にいきますが、慢性的に疲労していたり過労などで身体に必要な血が不足すると(陰虚)肝の経絡が栄養出来ず脇が痛みます。

痛みの他に微熱や自汗、めまいや心悸などがあります。舌の色は赤く苔は少ないです。脈は細数です。治療は陰を滋養して血を養い経絡を和ませて痛みを止めます。

 

 

現代医学で検査をしても特に異常がなく、医者のほうから痛み止めや安静を指示された方などは一度中医学治療での診断をお勧めします。

数値やレントゲンなどに現れない症状をひろい、別の角度からのお手当てをしていくことができます。中医学(東洋医学)の治療の基本ベースは目には見えない体内の生命活力エネルギー(気、血、水)のバランス失調の調整にあります。減少したものは補い、多すぎるものは調整することで体調回復をはかります。生命活力エネルギーを良い状態に戻してあげることが大切であることを忘れずに。これを自然治癒力といいます。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

2019/02/20
喘息

喘息とは(西洋医学的な考え方)▼

喘息とは、発作性にゼイゼイやヒューヒュー(喘鳴)・息が苦しい(呼吸困難)・胸が苦しい・咳がひどい、などの症状が繰り返しみられる病気です。

空気の通り道である気管支の病気で、もっとも多いのが、気道(気管支)が炎症により細くなり、呼吸が妨げられることによって起こる場合ですが、気管支粘膜の浮腫(むくみ)や痰の増加 などでも起こります。

喘息の原因として一般に良く知られるものはアレルギー性のものです。 例えば、エビや卵などを食べたり、ある種の花粉がハウスダストを吸収したりすると発作が起こるのが特徴です。 気候の変化や温度の変化なども発作の誘引になりますし、精神的なストレスや過労なども原因になります。このようにさまざまな原因が複雑にからみ合って起こるために、治療も中々決め手となるものがありません。

 

 

小児喘息について

小児喘息の患者さんのばあい、喘息になる前に乳児湿疹、アトピー性皮膚炎があることがよくあります。家族のなかにアレルギー体質の方がおられると、小児喘息の子どもが出てくる頻度が高くなります。小児喘息は、成長するにつれて自然に緩解されてくるケースが多いですが、中学生・高校生になっても小児喘息が治らず、思春期喘息に移行するケースも増加しています。

 

 

中医学の喘息の捕らえ方▼

中国医学では、喘息を単に肺や気管支の問題として捉えず、他の臓器や体質など、また、当院のホームページの中でたびたび出てくる生命エネルギー、体を整えるエネルギー(気・血・水)の失調として考えます。

喘息という言葉は日本の言葉で、中医学では、喘息は、「喘証」(呼吸急迫を主症状とする病証)と、「哮証」(咽喉部でゼーゼーと痰の音がし、更に呼吸急迫を伴う病証)に属します。

 

 

【中医学的な喘息の原因の分類】

1.六淫

中医学では、外界(自然界)の環境因子が人体に与える影響を重視します。

風、寒、暑(熱)、湿、燥、火

この6つの外界の環境因子を中医学では六気といいます。

 

例えば、気温の上昇は暑(熱)、低下は寒、 湿度の上昇は湿、低下は燥というように、季節に相応しており、正常な場合は、人体の生理活動を促します。

 

しかしながら、この六気が、過剰・不足・季節との不相応により正常でなくなると、六淫と呼ばれる、人体の生理活動を損なう因子へと変化します。

湿気が多すぎると身体の調子が悪くなったり、乾燥して寒すぎると風邪をひいたり、夏の暑さが異常気象で40度近くになるような時、汗をかきすぎて、力が入らなくなったりするのも、この六淫が原因です。

喘息の場合は、六淫の中でも、寒、熱、燥、風が特に原因として考えられます。

これらの因子は、口、皮膚、鼻から肺に侵入することが多く、その侵入により、 肺の本来の働きができなくなり、喘息の症状を出してしまうのです。

 

 

2.痰飲内停

中医学では肺は貯痰の器と言われておりますが、この痰の代謝がなんらかの原因で悪くなりますと、 粘りのある痰が肺に充満し排出されずに、肺の本来の働きを阻害し喘息の症状をおこします。

身体の水液はきちんと流れていれば、津液と呼ばれ、生命エネルギー物質として働くのですが、 流れが悪くなりますと、痰飲となり、色々なよくない症状を起こしてきます。

水液の流れが悪くなる原因はさまざまですが、問診、視診、聞診、切診により原因を分析し、治療にあたるのが中医学です。

 

 

3.情緒失調

中医学には、六淫と同じように、今度は人間の感情によっても、身体の生理活動を損なうことがあるとして、人間の感情が与える影響も重要視します。

怒、喜、思、憂、悲、恐、驚 を七情と称します。

中でも悲が肺を傷って生じる肺の気の働き損ないや、怒が肝を傷って生じる肝の気の停滞などで 喘息の症状がでることがあります。

感情の変動によって、喘息の発作が表れる場合は、気の停滞を考慮する必要があります。

 

 

4.肺気不足

長い間、咳の症状があり、肺の気が損傷されると、肺気の不足の状態が現れます。

肺は呼吸の気、全身の気の働きを担っていますので、息切れを伴う喘息の症状が現れます。

臓腑は関連して協力しあって働いていますので、肺と関連の深い脾の働きも考慮し、治療することが大切です。

 

 

5.肺陰不足

肺陰不足とは、肺の陰液の不足のことです。陰液とは、簡単に言うと、身体の中の水分(津液)や血です。

特に肺は、潤を好み、燥を嫌う臓腑です。

体内の陰液が不足すると、肺は乾燥し、肺気が情逆して、喘息の症状が現れるのです。

 

 

6.飲食失調

暴飲暴食、冷えた食べ物、脂っこいものの過食により、脾と胃の働きが悪くなると、 痰の停滞が怒ります。中医学では脾は痰を生む源と言われています。

痰の停滞が、気も停滞させてしまい、肺の気の流れを塞ぎ、喘息の症状が現れます。

 

 

7.腎虚

中医学では、色々な病気に言われることですが、慢性化したり、長期化した病は腎に及ぶと 言われます。肺に原因がある喘息でも、長期化すると腎に影響を与えてしまうことがあります。

これは、肺と腎がお互いに影響しあい、協力しながら生理活動を行っていることを理解して頂ければ、一目瞭然ですので、次の項目では、喘息の症状と関係の深い臓腑の働きをご説明します。

 

 

【喘息と関係の深い臓腑の働き】

肺、脾、腎

この3つの臓腑は、協力しあって、身体の水液代謝と呼吸の生理活動に作用します。

1.肺と脾

脾の働きは、食べ物を消化し、身体に有益な水液(津液)を生成し、身体中に運ぶことですが、 肺はその働きを補助して、脾から肺に上がってきた水液を全身に散布します。

 

喘息の症状が慢性化している方の中には、食欲の無い人がいますが、それは、肺の気の消耗により、肺の働きが衰えて、脾の生理活動を補助できなくなっておこります。また、反対に飲食の不摂生で、脾の気が損傷されると、水液の代謝が悪くなり、 痰が生成され、その痰が肺にたまって、痰の多い喘息の症状がでたりするのです。

痰が停滞が長引くと、多くは熱化する傾向にあり、白い痰から黄色い痰に変化し、症状が悪化していくこともあります。

 

 

2.肺と腎

肺が脾によって運ばれた水液を全身に散布することは、すでに上で説明しましたが、 さらに肺は、不要な水分を腎に送るという生理活動も担っています。

腎は運ばれた水液のうち、不要なものは尿として排出、必要なものは再吸収します。

喘息の症状がひどく、肺の気を消耗し、肺が正常な生理活動を行えないと、腎も正常に働かなくなってしまうので、下肢の浮腫や、排尿障害が喘息症状に加わる例があるのはこのためです。

肺と腎は呼吸においても共同で働きます。

呼吸活動は肺で主られ、吐き出すことにより、濁気を排泄し、吸入することによって、清気を吸収しますが、この中の特に吸収する、吸い込む方の作用には、腎の納気作用(気を納めて貯蓄する作用)が重要な役割を担っています。

 

 

3.脾と腎

脾と腎が協同して行うのはまず、水液の代謝です。脾は身体に有益な水液の生成を、 腎は不要な水液の代謝を担います。

そして、もうひとつ、生まれる前までの生命エネルギーの源は、腎が、生まれてからの生命エネルギーの源を脾が担います。

そして、脾が食べ物を生命エネルギーに変える生理活動を、人間が生きている限り、腎がずっとバックアップするのです。

 

 

 

【中医学的な喘息の病態の分類症状と治療】

中医学では、喘息の場合は、まず、実証の喘息なのか虚証の喘息なのかを判断します。

実とは邪気が充満している状態のことで、虚とは、正気が不足している状態のことです。

どちらの状態も正常な状態ではありません。

 

 

実喘の症状

胸部に膨満感があり、非常に呼吸が荒く、喘息の音も大きい。胸に何かが詰まっていて、もう、それ以上空気を吸い込めない感じがします。邪気が盛んであるため舌苔が厚く、時に白く厚い、時に黄色く厚い状態です。脈は力強い脈を打ちます。

 

 

 

実喘には大きく分けると1寒と2熱と3痰の症状があります。

 

それぞれの症状は以下の通りです。

 

 寒邪が盛んな場合

寒の邪が皮膚や口鼻から肺に侵入して肺の機能が乱されることにより、おこる症状です。

寒い冬に喘息が起きたり、悪化する傾向があり、暖かい状態または暖かい飲み物を好みます。

痰は白っぽく水のように淡いといった特徴が重要です。一般的に舌は白く苔が厚いのが特徴です。

 

治療について

辛温散寒 宣肺平喘

寒邪によって傷つけられた肺の治療と寒邪を取り去るために温める治療を行います。

 

 

 熱邪が盛んな場合

熱の邪が皮膚や口鼻から肺に侵入して肺の機能が乱されることにより、おこる症状です。

咳が激しい、呼吸が荒い、吐き出した痰が黄色く、熱で身体の中の水分が損傷されているため痰の粘り気が強く、口渇があります。

熱い物を嫌い、氷や水など冷たいものを好んで飲みます。

熱の季節や暑い環境で症状が悪化するという特徴をもっています。舌は赤く、苔は黄色く厚いのが特徴です。

 

治療について

清熱化痰 宣肺平喘

熱により損傷された肺の治療と同時に、熱を清することにより、身体の中の水分の状態を良くして痰がきちんと排出されるような治療を行います。

 

 

 

 痰が盛んな場合

中医学では、肺は貯痰の器であるといわれています。痰がにごって、どろどろと停滞してしまっている場合には、肺の本来の働きである、水液を体中に散布する働きができなくなってしまいますので、停滞した水液が痰化して、痰が気道に充満してしまいます。

症状としては、喘息と同時に痰が多いために胸が重苦しく、窒息しそうな感じを訴えます。

また、痰湿が多いと、胃にも停滞してしまうため、本来下がるはずの胃の気が上に上がってしまい、悪心と食欲の不振を訴えます。もともと、湿(むくみ)体質の方に多い症状です。

 

治療について

燥湿化痰 降気平喘

湿を除けば、痰の源も自然と枯れてきます。痰を取り去るというよりは、体内の水(津液といいます)の流れをよくすることにより、湿を除く治療を行います。

 

 

虚喘の症状

吸って吐く感覚が短いために、途切れ途切れの状態になる。呼吸が弱く、声も実喘のようなゼーゼーという大きい音ではなくて、非常に低く、弱弱しい状態で、息も絶え絶えといった状態です。たくさんの空気を吸いたくても吸うことができず、浅い呼吸しかできない。

倦怠感を訴え、身体も弱くて、力がない。舌苔は薄いか無い場合もあります。脈は細く無力な場合が多いでしょう。

 

 

虚喘の種類

大きく分けると、すでにご説明しております、肺と腎と脾がからむ気虚、陰虚、陽虚に分けられます。

 

 

 肺気虚 脾気虚

中医学では、肺と脾は身体の正常な働きのためにとても関連が強いため、どちらの状態が悪くなっても、どちらかの状態に影響を与え、具合を悪くしてしまいます。

気虚の症状は、気短、息切れが第一の特徴です。声が小さく、痰が薄く量 が多い。

体表を引き締める力が弱くなってしまうため、汗がよく出て、風邪をひきやすい状態になり、疲労感も強くなります。また、暴飲暴食などで、脾胃の働きが低下すると、水湿の流れが悪くなり、水湿が脾胃に停滞し、痰を良く出すようになります。

また、脾の気は本来上に上がるべきものですが、その働きが低下しているために、水液が身体の中に停滞し、軟便にもなります。

舌は淡く、脈は弱くなります。

 

治療について

補益脾肺、健脾化痰

虚している状態というのは正気が不足している状態ですから、脾と肺を補う治療を行います。また、脾を治療すること胃腸を健康にし、水湿の流れをよくし、痰がたまって息苦しい状態を改善させます。

 

 

 陰虚

陰虚とは、中医学的に言われる陰液が不足している状態のことです。

陰液とは、簡単に言うと、身体の中の水分(津液)や血です。

喘息で見られる陰虚とは、肺と腎の陰虚です。

身体の中の水分が不足しているため、ほてり感、寝汗、喉の乾きなどを感じ、夜間に咳が悪化します。身体の中の水分が不足しているため、痰はあまり出ませんが粘っこく、きれにくいのが特徴です。また、腎の陰虚症状としては、耳鳴り腰痛なども伴います。

 

治療について

滋陰降火、潤肺止咳、滋補腎陰

陰液が不足している原因を突き止め、陰液を補充する治療と同時に、陰液の不足により、 熱が上ってしまったことにより出ていた火照り感などの症状を治療をします。

また、肺の陰液も補い潤すことにより、咳を止める治療を行います。

 

 

 陽虚

慢性化し、非常に重症な喘息の症状を呈している場合、往々にして腎陽虚の状態が見られます。症状としては、動くとゼーゼーする。呼気は楽であるが吸気が難しいのが特徴です。

これは、中国では古来から、空気を吐き出すときは肺が主な役割を果 し、空気を吸い込むときは、腎が主な役割を果すと言われています。これは、腎が気を納める働きを主っているためで、その力が減退しているため、吸気が難しくなるのです。

また、腎の気化(水分を蒸発させる機能)作用(正常な場合、腎には水分を気化させるはたらきがあります)の低下により、 夜間頻尿の症状を伴ったり、痰が薄く量が多いなどの症状も表れます。

冷えが強く、腰痛も悪化します。

 

治療について

温腎、納気平喘

腎を温め、気を納める本来の腎の作用や気化作用を正常に行われるように治療します。

 

 

 

中医学的な喘息の治療について▼

基本的には、ただ単に、咳を止める治療、或は痰を取り去る治療というのではなく、根本的な体質を改善して行くのが治療のメインとなります。 それにより、発作を起こしにくい体づくりをして行くのです。 ですから中国医学の治療は、根本的な体質改善により、痰を除き、痰の産生を防止し、気道を開通 させるとともに、外因に対する抵抗力を高めていきます。基本的に慢性疾患の場合、症状、発作等が落ち着いて3ヶ月間、現れなかった場合は一応 治癒したと見ます。その他の疾患の場合もそうですが症状が出なくなったといって治療をすぐやめてしまう方がおられますが、本来はまだ症状が小康状態になっているだけで完全に治ったという訳ではないのです。ですから症状が出なくなっても最低3ヶ月ぐらいは様子見で継続治療を 行なった方が宜しいかと思います。

 

それともうひとつ喘息治療で大切なのは、発作を止めることが喘息の治療ではないということです。病変を根本から改善し、次の発作をひきおこさないようにすることが大切です。当院にご来院頂いた患者さんから「今までにも鍼灸治療も受けたことがあるのですが、効果 が感じられず、 漢方薬も服用したが効かなかったのですがどうしてでしょう」と聞かれる事があります。

それはひとつに、技術的なレベル、診断・体質分析の把握ができてなかった事、また、局所的な治療しか行なってないと効かない場合もあります。漢方薬も奥深いものでただ単に対症療法的に、咳をおさえ気管支を拡張させるという様な処方をされると、思う様な効果 が出ないケースがあります。

ですので、患者さんサイドも鍼灸・漢方医院で受診、相談される場合、どの様な治療を行なって頂けるのか、また、自分の症状に対して細かく問診をして頂いているかを判断し、受診なり治療を受けた方が宜しいかと思います。 私が言えるのはろくに問診も、体質判断せず、やたらめったら鍼を打ったりするような鍼灸院での受診はなるべくさけられた方が良いかと思います。

尚、治療を受ける側も、治療内容とか考え方を理解、納得した上で、治療を受けられた方が良いかと思います。また、中医学は、体質改善(気・血・水のエネルギーのアンバランスを調整する)を目的として治療をしておりますので、多少時間がかかることもご理解の上、受診された方が良いかと思います。 また、普段の食生活の改善も、ときには必要だと思われます。例えば、冷えやすい方が、冷たい物を多く摂取される場合は、その摂取量 の改善も必要です。その方がより良い、 治療結果を得られることができます。

お互いが相互にコミュニケーションをとり、治療を受けられるのが宜しいかと思います。

 

 

お子様の治療について▼

病態が込み入っていないお子さんの喘息には短期間に効果を示すことが珍しくありません。このような場合には 中国医学による手当てをおすすめ致します。 時には当院で述べている違う角度、観点から病に対して着手するのも一手かもしれません。

小さいお子さんの場合は直接鍼を打たずに、当院ではローラー灸というもので経穴(ツボ)に刺激を与えています。これは、温熱効果 のある物で、とても気持ちがよく、お子さんも恐がらずに受けて頂けます。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

鍼灸・漢方全般のご相談もお気軽にどうぞ。

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