コラム

2019/02/20
椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、その名の通り、脊椎の間にある椎間板に問題があって起こる病症です。

 

自覚症状○

主に腰から足先にかけての痛みやシビレで、下肢の皮膚感覚が鈍い、座った状態から立ち上がるのが辛い、筋力の低下、排尿障害などをおこす事もあります。咳・くしゃみで痛みが強くなったり、前かがみの姿勢になると痛みが増すなど、体位 を変えると変化があります。

 

《西洋医学的考え方》

 

椎間板とは、脊柱を構成する骨と骨の間にある柔らかいクッションのような役目をする軟骨のことです。例えていうなら、おまんじゅうを平たくつぶしたような形をしており、まわりの皮の部分を繊維輪、あんこの部分を髄核といいます。ヘルニアは、この髄核が何らかの原因により突出してしまった状態をいいます。その突出部が、脊椎の脇を通 る神経を刺激して痛みやシビレをおこします。

 

椎間板ヘルニアの原因○

中腰で重たいものを持ち上げた、スポーツで腰を強くひねったなど、背骨に負担がかかった事等がよく知られていますが、その背景として椎間板や骨の老化・姿勢の悪さなどがあり、思いあたる原因がなくてもおこります。

 

治療方法○

・急性期は、消炎・鎮痛剤や筋弛緩剤を内服し、除痛を図りながらコルセットなどで固定し、安静にします。同時に、痛みのコントロールとしてブロック注射を行う事も多いでしょう。 急性期を過ぎると、温熱療法・低周波療法・ストレッチなどの指導がなされます。

・多くは、これら保存療法で改善される場合が多いのですが、急性期が過ぎても症状が残存する場合は牽引療法を行って様子を見ます。

・排尿排便障害がある場合は手術の適応になります。

 

《中医学的考え方》

 

中医学では、椎間板ヘルニアに相当する病名はありません。なぜなら、西洋医学と中医学は病気の捉え方・考え方が違うからです。西洋医学では、目に見える症状を中心に考えますが、中医学ではその症状が起きる背景・つまり身体のバランスがどのようにくずれたのかを中心に考えます。

 

たとえば、桜に害虫がついて葉が枯れてしまった様な時、害虫の駆除剤を噴霧するのが西洋医学です。中医学では、なぜ害虫がついてしまったのかを考えてから、木に薬を使う事もあれば使わない事もあります。

 

木の生命力そのものが、弱って要る場合は害虫がつきやすくなります。木の栄養源である水や光や土は十分なものだったのか、栄養が十分でもそれを木全体に巡らせる幹に問題はなかったのかなど、全体の状況に応じて手当てをしていくのです。

 

中医学では『人間も、大いなる宇宙と影響しあいながらバランスをとって生きている生命体のひとつ』であり、身体内部も小宇宙であって、『いろいろな臓器がバランスをとりあい、外界の変化に適応しながら生命を維持している』と考えます。

 

病気の背景には、まず何らかのバランスの崩れがあり、その後から症状がでると考えますから、病気の症状は同じでも原因はさまざまであり、治療法もおのずと変わってきます。治療をする時には、そのバランスの崩れを整えていく事を念頭に考えながら、表面 的な痛みなどの症状をとっていきます。

 

では、どのようにしてそのバランスの崩れをつかんでいくのでしょう。西洋医学的な検査ではデータとして出てこないかもしれません。その説明をするには、まず、中医学の生体観についてお話しておきましょう。

中医学では身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・津液』であると考えています。

 

気というのは、気持ちの気と同じような意味合いもありますが、中医学では、活力という意味であり、血脈の流れを推進したり、臓器組織の活動を促進したり、人体を栄養する作用もあると考えます。

血は血液という意味よりも広く考えて全身を栄養するだけでなく、精神活動も支えています。

津液は身体をうるおす水分の事です。これらは飲食から得られ、臓腑で消化吸収して作られていきます。

 

気・血・津液は『経絡』という、人体の上下・内外を貫く道筋によって流れ、全身を栄養したり、臓器の機能を調節したりしています。健康な状態では、経絡は全身を滞る事なく流れています。

 

これらのどこかに問題がおこることにより、身体のバランスが崩れます。そしてその微妙な崩れは、日頃の体調(食欲・排尿・排便・睡眠・疲労感・主訴以外の症状)などに現れますし、他覚症状としては、顔色や脈状・舌の色や形にも現れてきます。ですから、それらすべてを総合し、その人全体をとらえて、どのように治療したら良いかを決めていくのです。

 

経絡の流れを良くしてあげる事は、身体機能のバランスをとり、健康な状態に近づけることにつながりますから、治療においては、ただ単に痛みのある部位 だけではなく、経絡上で、その流れを良くしてくれる作用のある穴や、滞りを除いてくれるような穴も使っていきます。穴にはそれぞれ特性がありますから、その詳しい効能を考慮し、効果 的な組み合わせを考える事も大切です。腰痛の治療にも、手足の穴を使いますし、特効穴が手にあったりするのは、そういった理由からです。

 

その人の体質によっても、施術の方法は違います。鍼の刺激に強い人・弱い人、冷え性の人・のぼせがある人等、さまざまな基本体質があるのですから、オーダーメイド的な治療になるのは当然でもあります。

 

治療を続けるうちに、1番問題となっていた症状がとれていくだけでなく、身体全体が元気になっていき、やる気が湧くようになった・風邪をひきにくくなった・などという声をよくきくのは、このように個人の身体全体を大切にした治療をするからではないでしょうか。

 

 

さて、椎間板ヘルニアの話に戻りましょう。

 

椎間板ヘルニアの症状と病因○

自覚症状は最初にあげた通りですが、他覚症状として、舌質は青紫色、オ斑・オ点があることもあり、脈は渋脈、痛みが激しい時は弦脈・緊脈も現れます。

病因の多くは、血が腰背部の経脈に停滞しておこる気血の運行障害です。発症の原因はさまざまです。

 

ヘルニアという症状がでる背景について、腰痛の原因分類からみてみます。

腰痛の病因は、大きくわけてまず風寒湿・風熱湿など外邪による腰部の経絡の滞り、それから高齢や元気不足、長期間の不適切な仕事による慢性疲労、捻挫・打撲など外傷による腰部の気血の運行障害、などが考えられます。

 

また、その根底に、『腎虚』と言って、先天の精・つまり、持って生まれた元気の元のような活力が衰えていることが考えられます。中国古典に「腎は腰の府。腎は骨を主り、髄を生じる」とあり、『腎』は腰の状態にとても関係深い臓器です。また、中医学では腎は骨の働きを管理する役割もありますから、骨の病には、腎のエネルギーを調整する手当ても必要になってきます。

 

治療方針○

根本の問題である「血の滞り」をなくし、気血の流れをよくしていきます。腰背部の経絡の流れをよくする作用を持つ穴は、腰にもありますが、手の甲や、下腿にもあります。

 

血の滞りを起こした痛みの原因が風寒湿熱などの邪気がはいったものであれば、その邪気を払い追い出すような穴を使いますし、慢性疲労であれば元気のでるような穴もつかいます。

 

また「腎」の力を補い、腎の働く力を養うような治療も加えていくと、腰部や骨の働きが良くなるだけでなく、身体に活力が湧いて元気になり、病気が再発しにくい身体づくりが出来ます。

 

もし、痛みが激しい時は、まず痛みを軽くして、根本治療と平行して行います。

 

鍼で痛みがとれるの?と思う方もいらっしゃいますが、現在の日本でも鍼麻酔といって鍼で麻酔をかけ、歯科治療や無痛分娩なども行われているくらいですから、鍼の沈痛効果 は確かなものです。

鎮痛剤を使うのとは違って、胃の調子を悪くすることもありませんし、自然治癒力を強めることにもつながりますから、安心して続けることが出来ます。

 

ただ、気をつけて頂きたいのは、ひとくちに鍼灸治療と言っても、施術方法は多種多様で、表面 的な痛みだけにしか目を向けない治療家も多いという事です。特に最近の日本では、世界的レベルからみて、残念ながら、かなり劣っており、「治療」ではなく「癒し」しか目的としない治療院が乱立しています。表面 だけ癒す事は出来ても、それは治療とはかけ離れたものです。治療院の選択は難しいと思いますが、とにかく、事前に治療内容を調べ、電話やメール等で相談をしてから治療に行く事をお勧めします。

 

鍼灸の治療とは、やはり、伝統医学の根源である「中医学の治療原則」を基本にして初めて、その本当の治療効果 が活かされるものです。身体的にも精神的にも全体的に調和し、バランスがより良くなっていく中医学的治療は、本当に奥が深く、素晴しいものです。また、ここでの治療は、さらに、日本人の繊細な体質にあうように考えられていますし、事前に良く説明もしていますので、安心して治療を受ける事ができます。

 

 

日常生活での養生法○

 

一度ヘルニアになってしまうと再発する事が多いので、治らないと思っている方もいらっしゃいますが、 日常生活で養生することで、再発は防ぐ事ができます。

 

背骨に無理な負担をかけない事が基本ですから、良く知られているのは、重たいものを持ち上げる時に、一度しゃがんでから物を持ち抱え、足の筋力を使って立ち上がることですね。この他、日頃の姿勢に気をつけることも大切です。立っているときには両足に均等に体重をかける・座っている時にはなるべく足を組まない・歩く時にも姿勢良く・荷物を片側の手ばかりに持たないで時々持ちかえる・等です。

 

それから、なるべく規則正しい生活をすることも大切です。睡眠不足など、無理をして疲労をためてしまう事も、食事の時間や量 が乱れて胃腸の調子をくずしてしまう事も、皆、「腎」の活力を消耗する事につながり、結果 的には腰痛を起こしやすい状態になってしまうからです。要するに、中医学的考えにおいては、腎の臓器に負担をかけない事が、腰痛予防にもつながるのであります。

 

また、痛みが激しくなってしまう前に、その前兆のような不快感があったら、早めに鍼灸治療を受けられることをお勧めします。中医学における鍼灸治療は、予防医学でもありますから、ヘルニアの再発を予防する事が出来ます。先にお話しました「身体のバランスの崩れ」を症状が出る前に整えてしまえば、痛い思いをしなくてすむわけです。これを『未病治』といい、中医学においては、とても大切な事と考えられています。

 

身体全体の調和と生命の活力を育む中医学的治療は、身体に無理なく、適切な部位 に、適度な刺激を与えて、人間本来の持つ自然治癒力を高めていきます。宇宙全体に広がるような、大きな優しさのあふれる健康法に、是非一度ふれてみて下さい。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
動悸

動悸という症状は、よく耳にする症状だと思います。

実際に、年齢を重ねれば、このような症状はめずらしくはありませんし、若年の方であっても、自然な体の反応として、動悸がおこることはしばしばあります。

しかし、一方で体にとって重篤な場合の動悸もあり、決して軽視できない症状でもあります。

今回は、この動悸について述べていきたいと思います。

 

 

<西洋医学的な動悸とは>

 

みなさんもご存じのとおり、心臓は、血液を体全体に搬出するために、収縮、弛緩を繰り返してます。この動きを一般 的に鼓動(拍動)といいます。

普段、安静な状態では、この鼓動を意識することはありませんが、運動後や興奮状態に陥ることで、鼓動を自覚することがあります。

これが、動悸という症状なのです。

簡単に表現すると「胸がドキドキする」といった表現が分かりやすいと思います。

 

この動悸という症状は、運動後や興奮状態で動悸を自覚するのは、ごく自然なことだといえます。

運動をすると、体内の酸素を安静時よりも消費し、酸素が不足している状態となり、その結果 、心臓の鼓動が早くなり、素早く体内に酸素が供給されます。

このような動悸は、むしろ体を維持する上で、自然な反応といえます。

 

他の原因によっても動悸は起こりますが、多くの場合は、生命を脅かすものではないことがほとんどなのです。

 

しかし、時に、重篤な病気が原因となって動悸を誘発していることもあります。

 

たとえば、拡張型心筋症を例に挙げましょう。

この病気は、心筋の細胞の性質が変わって、とくに心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気です。

これにより、血液をうまく送り出せなくなり、うっ血性の心不全を起こすこともあります。

このような重篤な病気が引き金となり、動悸症状を自覚させる場合があるのです。

また他にも、不整脈を伴う心臓の病気でも、動悸症状を自覚する場合があります。

このような重篤な病気が原因の場合、早期に治療を行う必要があります。

 

 

<気をつけるべき随伴症状>

 

身体的に問題のない場合もあれば、原因の早期治療が必要な場合もある動悸症状ですが、重篤な場合は、動悸症状の他にも随伴症状が現れます。

参考のために、一部を紹介します。

 

・胸痛や発作性呼吸困難を伴う場合

 

このような随伴症状は、心臓そのものに原因がある可能性があります。

血液を体内に送り出す機能が低下しているため、すぐに息切れを起こすこともあります。

 

・不整脈

 

安静時にも関わらず、脈が早かったり、遅かったり、また、それらが交互に現れる場合、これも心臓そのものに原因がある可能性があります。

 

・発汗過多および体重減少

 

甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫などの病気により、ホルモン分泌が正常にされていない可能性があります。

 

・全身倦怠感、頭重感

 

鉄欠乏性貧血の場合、このような随伴症状を伴う場合があります。

これらは、動悸の随伴症状の一部ですが、とても重篤な病気が裏に潜んでいる可能性がありますので早急な検査と、重篤な病気が見つかった場合は、早急な治療が必要と思われます。

 

 

<ほとんどは問題のない動悸?>

 

冒頭でも述べたとおり、動悸の多くは、生命にとって問題のないものがほとんどです。

これは、精神的なストレスや、体の状態の微々たる変化によっても、動悸という症状が、現れるからなのでしょう。実際に、病院での心電図検査などでも、何も問題のない結果 となる場合も多いようです。

 

しかし、精神的なストレスが多いこの現代で、この動悸という症状を考えると、あまり軽視できるものではないのかもしれません。精神的なストレスが身体に様々な形で影響を及ぼす以上、病気だけをみるのではなく、生活環境そのものも視野にいれなければ、後に重篤な病気に発展しないとも限りません。

動悸という症状は、生命にとって問題のないものであっても、体にとっての危険信号として捉えるのがよいかと思います。

 

 

<中医学的な動悸の捉えかた>

では、次に中医学的な動悸の捉えかたを述べていきます。

 

中医学では、動悸という症状を「心悸」を呼びます。

「悸」とは、ドキドキする、跳ねるように動くという意味を表す言葉で、心悸とは、動悸がして不安を伴う病症として捉えられています。

 

「心悸」は主に、心の臓の失調により起こります。

心という臓器は、五臓の中でも、もっとも重要な臓器で、人体の生命活動の一切を統帥し主宰することから、「君主の官」とも呼ばれている臓器です。

心では、血液の循環をコントロールする働きと、脳の思惟意識活動の機能を持ち合わせています。

 

つまり、「心悸」という症状は、この血液の循環をコントロールする働きに問題があると発症するのです。

 

 

<動悸の病因病機>

では、どのような原因が心の臓器に問題を引き起こすのでしょう?

 

わかりやすい東洋医学理論でも説明されている通り、中医学では、気、血、津液が身体を構成している物質で構成されています。

心の臓では、その機能を維持するために、気と血が大きく関係しています。

つまり、多くの場合、心の病気は、心が持つ気と血の失調により起こります。

心が持つ気血が体にとって不十分だったり、もしくは気血の運行が悪かったりすることで、血液の循環をコントロールする働きが弱くなってしまうのです。

 

 

<心悸の原因>

では、このような心の気血失調がどのようにして起こるのか、もう少し詳しく述べていきたいと思います。

・経過の長い病気によるもの

 

経過の長い重度の病気は、体内の気血を損傷します。

これにより、心血を損傷することで、心悸を自覚することがあります。

つまり、血虚による心悸なのです。

 

・思慮過度によるもの

 

思い悩みが過ぎたり、過度に物事を考えることで、心血を損傷することがあります。

これにより、心血を損傷することで、心悸を自覚することがあります。

この場合も、経過の長い病気によるものと同じように、血虚による心悸なのです。

 

・過食や偏食によるもの

 

過食や偏食は、脾臓という臓器の機能を低下させます。

脾臓は食物を気血に変え、体内に送り出す役割があります。

また、水液代謝にも関係する重要な臓器です。

この脾臓の機能低下により、痰という体にとって不必要な水分が体内に停留し、それが熱を生み、さらに心臓に影響することで、心悸を自覚することがあります。

つまり、過食や偏食は、痰火による心悸につながるのです。

 

・体質的な心気虚によるもの

 

もともと、心が持つ気が不十分な方もいらっしゃいます。

このような方は、平素から驚きやすい、恐れやすいといった特徴を持っています。

心の気が不足することで、心が血液を送り出す力が弱まり、その結果 、心悸という症状を自覚することがあります。

このような場合は、気虚による心悸と言えます。

 

 

また、体質的な心気虚が発展し、心陽虚となっている方もいらっしゃいます。

このような方は、血の運行が悪く、そのために心に負担がかかり、心悸という症状を自覚することがあります。

このような場合は、お血による心悸と言えます。

 

<証分類別治療方法>

 

では、次に証分類別の治療方法について述べていきます。

先ほど述べた心悸の原因をまとめると、心の気血失調の分類として、気虚、血虚、お血、痰火による分類があると言えます。

 

中医学的な治療は、これらの証分類ごとに行われます。

・気虚による心悸

 

気虚による心悸の場合、「益気安神」のお手当てをして行きます。

「益気安神」は、不足している心気を補充し、精神的な緩和も図ることで、心悸の症状を改善する治療です。

 

・血虚による心悸

 

血虚による心悸の場合、「養血定悸」のお手当てをして行きます。

「養血定悸」は、不足している心血を補充することで、心悸の症状を改善する治療です。

 

・お血による心悸

 

お血による心悸の場合、「活血強心」のお手当てをして行きます。

「活血強心」は、流れの悪い心血の流れを改善し、心の機能も強めることで、心悸の症状を改善する治療です。

 

・痰火による心悸

 

痰火による心悸の場合、「清熱化痰」のお手当てをして行きます。

「清熱化痰」は、熱化した痰を取り除くことで、心悸の症状を改善する治療です。

 

いかがでしょう?

中医学的な動悸の治療はご理解頂けましたでしょうか?

動悸という症状は、しばしば自覚する症状であり、なかなか病気と結び付けづらいものです。

しかし、症状である以上、体の変調の表れであることは確かなのです。

 

時には、ご自身の体の変調に耳を傾けていくのも健康であるための秘訣であるといえます。

耳を傾けてみて、動悸という自覚症状がある方、また、病院で検査をしても検査結果 に表れない動悸をお持ちの方は、一度、中医学的なお手当てをされてみるのも良いかと思います。

 

中医学(東洋医学)全般(鍼灸・漢方・食事療法・体質改善)のご相談は、

当院までお気軽にどうぞ。

2019/02/20
認知症

認知症は、何らかの原因により、脳が障害されて、一度獲得した知的機能が低下することで、その原因となる病気は、頭蓋内の病気によるもの、身体の病気によるものなどたくさんあります。

最も多いのは、アルツハイマー病と脳血管障害による認知症です。

 

日本では、脳血管障害による認知症の方がアルツハイマー病よりも多いといわれていましたが、最近ではその割合が逆転し、アルツハイマー病の方が多いとの報告があります。

 

アルツハイマー病とは

原因は不明ですが、脳内でさまざまな変化がおこり、脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が病的に萎縮して(小さくなって)高度の知能低下や人格の崩壊がおこる認知症です。ゆっくりと発症し、徐々に悪化していきます。

 

脳血管障害による認知症状とは

脳の血管が詰まったり破れたりするような、軽い(小さな)脳梗塞が多発したことによって、その部分の脳の働きが悪くなり、そのため認知症になること脳血管障害による認知症といいます。脳血管障害による認知症は、障害された場所によって、ある能力は低下しているが別 の能力は比較的大丈夫という様に、まだら状に低下し、記憶障害がひどくても人格や判断力は保たれていることが多いのが特徴で、小さな脳梗塞を繰り返してゆくうちに、段階的に悪化していく場合が多いようです。

 

認知証の症状は

中心となる症状とは記憶障害や判断力の低下です。その他に、怒りっぽくなったり、不安になったり、攻撃的になったり、異常な行動がみられたりすることがあります。

 

●●●中医学的にみると●●●

まずは、老化 を中医学的に考えてゆきます。

老化とはいつ頃から始まるものなのでしょうか?

中医学では、老化は、一般的に考えられるよりもずっと若い頃から始まっているとされています。

10歳で五臓の生理機能が安定し、20歳で気血が充満し、勢いに満ちる。30歳では生理機能が安定、血脈機能も盛んで動作も落ち着くが、40歳では、立つことよりも座ることを好み、老化が始まってくる。50歳では肝臓が弱り始め、視力が減退。60歳では、心気が衰弱しはじめ、横になりたがる。70歳では脾胃の機能が低下し、筋肉が衰え、皮膚のつやがなくなる。80歳では肺が弱くなり、言葉をよく間違え、頭が少しボケる。90歳では腎の機能が低下、100歳では五臓が全て虚の状態となり、気力、体力ともに衰え、基本的な物質は全て減少してしまいます。

 

中医学では、人の精気は肝→心→脾→肺→腎 と、順を追って衰弱していくと考えられています。上記のような老化の経過をたどっていくと考える中医学では、老化のお手当ては、身体の不調が出てくる70歳からではなく、老化の始まる40歳~50歳の間に始めるのが適当だとされています。

 

老化現象は個人差がありますが、どの臓腑の働きが弱まるかによっても、その症状が異なります。

 

脾胃の虚衰

脾と胃は食べ物を消化して栄養物質に変える機能があります。

中医学では、脾胃は、生成された栄養物質を全身の各組織に運んで、その成長と発育を促していると考えます。

生まれながらにして父母より授かった精気をつかさどる腎(次にご説明しています)に対して、脾胃は、生まれた後の栄養をつかさどるとされているのです。

ですから、胃腸が弱い、疲れやすいといった脾胃虚弱の人は、発育成長が遅れ、老化現象も早くから現れるのです。

 

腎気の虚衰

上記の脾胃の虚衰が老化の進行を早めるのに対して、生まれながらにして父母より授かった腎の気が虚すると、現れるのは、老化現象そのものです。

頭がぼんやりする、物忘れが多いといった老化現象が現れたら、まず腎気を補うことが必要です。腎は精を蔵すると言われていますが、腎の精は脳の働きを活発にし、身体の成長を促す基本的な物質です。

 

老化に関係の深い臓腑は脾・胃・腎ですが、5つの臓腑が虚した場合の症状もみてみましょう。

 

肝の衰弱は50歳頃からはじまります。五臓のうちで一番早く衰弱するといわれています。

肝は筋をつかさどり、血を蔵し、目につながっています。

ですから、肝か衰退すると、視力減退、白内障、目の症状が出て、筋の余りである爪に変化が顕れます。肝に以上があると爪の状態が異常に薄くなったり、厚くなったりするのです。爪の状態で肝の状態をしることもできると言われています。

 

肺は全身の気をつかさどっています。肺気が衰弱すると、肺活量が少なくなり、皮膚の老化、呼吸の異常が現れ、外邪に対する抵抗力が弱まります。肺は潤いを好み、身体の水分を身体全体に供給する作用を担っていますが、肺が衰退すると、皮膚は乾燥し、色素沈着(シミ)も増えます。皮膚の抵抗力が弱まり、風邪をひきやすくなったり、息切れしたり、声に力がなくなります。

 

心の衰弱は60歳頃から始まります。心は全身の血脈(血流のコントロール)をつかさどりますので、心が衰弱すると、不整脈、頻脈、徐脈があわわれ、動脈硬化、高血圧、狭心症などが現れます。

さらに心は意識活動も統括していますので、心の衰弱によって、物事の判断がつかない、思考力の減退などの脳の症状が現れます。

脳の機能は精を蔵している腎とも関係があり、腎の機能が衰弱すると物忘れが多くなります。

 

腎は耳の働きに関与していると言われています。

ですから、腎が衰弱すると、耳が遠くなります。

腎は骨を主り、歯は骨の余りですから、歯が弱くなり、抜けやすくなります。

腎は精を蔵すので、性欲が減退し、物忘れが多くなります。

 

脾は食物を消化して、栄養物質にかえます。脾の衰弱は栄養を失調させるため、全ての臓腑に影響を与えてしまいます。また、脾は肌肉を主りますので、衰弱すると、肌肉の弾力が失われます。

 

 

上記の中医学における老化現象の捉え方を踏まえて、

認知証をタイプ別に分けて考えます―

 

腎気・腎精の不足

前述しましたように、腎の気の不足と老化は、中医学では密接な関係を持っています。

認知症は、脳が障害される病気ですから、腎精の不足により、脳髄を養う事が出来ず、脳が萎縮して、認知症になると考えます。

また、アルツハイマー型の認知症の際に見られる脳の空洞は、中医学の腎精虚に類似しており、中医学ではアルツハイマー型認知症は、このタイプに属すると考えられています。

 

認知症の症状以外の症状

腎のエネルギーには、腎陰と腎陽とよばれる、異なる働きをするエネルギーが存在します。

もし、腎陽が虚している場合には、手足の冷え、腰の冷え、夜間の頻尿、残尿感があり、 舌はぼてっとして白く、脈は弱く沈みます。

腎陰が虚している場合には、腰痛、のぼせ、微熱、口がかわく、身体がやせてくるなどの症状があり、舌は紅く、苔が少しで、脈は速く細くなります。

 

治療は、腎精を補う治療を行います。さらには、腎陰・腎陽のどちらが虚しているかをよく判断し、その症状にあった治療治療を行います。また、睡眠障害の症状があるのもこのタイプの特徴ですので、睡眠をよく取れるように治療してゆきます。

 

食事・生活など

腎虚を予防、克服するには朝食をとり、毎日30分以上の歩行運動をする。

精神面の休養を増やし、野外で動ける趣味を持つことが良いと考えられます。

ミネラル・良質のアミノ酸・抗酸化成分、植物性タンパク・腎虚を鎮めるキノコ・ヒジキなど海草類・黒豆など豆類を毎日多めに摂ると良いでしょう。

塩分の多い食事・合成調味料・動物性タンパクなどは減らしましょう。

昆布、のり、ひじき、あさり、えび、かに、いかすみなど、色は黒色のネバネバ系の食材がおすすめです。

腎陰が不足している場合は、百合根やスッポン鍋がお勧めです。

腎陽が不足している場合には、肉桂粥、とちゅう茶、生姜、シナモンなど暖める食材がお勧めです。

 

 

脾胃虚弱

脾胃がどれぐらい老化の進行を防ぐのに大切かということは既に前述しておりますが、 栄養をつかさどっている脾胃が弱いと、身体のエネルギーである気と血を作ることができずに、常に不足した状態となり、脳に栄養が行かず、その結果 、認知症になると考えます。

 

認知症の症状以外の症状

このタイプは、内臓下垂、脱肛、慢性の下痢、疲れやすい、むくみやすい、お腹が張るなどの症状も一緒に現れます。舌の色は淡く、脈は細くて弱くなります。

 

治療は、脾は、乾燥を好み湿を嫌いますので、むくみなどの症状を伴っている場合は、むくみを取る治療も同時に行います。

脾気は上に胃気は下に流れる気です。その方向性の逆流が無いよう、に補う治療をします。

そうすることにより、消化の力も出て食べたものを栄養にする力も強くなります。

 

食事や生活

脾胃が弱い方におすすめなのは、黄色い色のホクホク系の食べ物です。

イモ類、穀類、栗、豆類、はと麦、冬瓜、とうもろこしの鬚(お茶に煮出す)

むくみの症状がある場合には、あずきの煮汁もおすすめです。

また、特に消化不良を解消し、胃腸をすっきりさせたい場合は、大根、かぶ、パイナップル、麦芽、麺類など消食の作用がある食事がお勧めです。

 

 

お血

年齢の増加とともに、気は減少してしまい、気血の運行が悪くなり、お血が発生します。

お血は、1、血行が悪い、2、血の質が悪い(コレステロールや中性脂肪が多い)、3、血脈が悪い(動脈硬化)ことを指しますが、心臓疾患、脳血管疾患、癌、動脈硬化などの成人病には、必ず血の病変が存在すると考えて、お血を改善する治療が必要だと考えます。

西洋医学的な捉え方で考えたときの、脳血管障害による認知症は、このタイプに属すると考えられます。

 

認知症の症状以外の症状

気血の流れが滞り、疼痛症状(頭痛、胸痛、胃痛、関節痛、筋肉痛)が表れます。

また、血の凝固によって、しこりの症状(乳腺炎、肝脾肥大、子宮筋腫)や、静脈の怒張手足のしびれ、舌が暗く、紫の点ができたりします。

 

治療は、お血の予防に努め、お血ができたらそれを速やかに除去するなど、お血の前兆の症状にも積極的に対処することが大切です。

当院では、鍼のほか、吸玉療法によりお血の治療を行っています。

 

食事・生活など

紅花がお勧めです。紅花のお茶や、紅花ニラ饅頭など…

サフランは調味料としてもお茶としてもお勧めです。

その他、いわしのつみれ汁、ハイビスカスのゼリーなど、クエン酸が多く含まれる食材がお血を改善する食事としておすすめです。

 

 

 

心虚

心が虚しても認知症の原因となりえます。

これは前述したとおり、心は全身の血脈(血流コントロール)をつかさどりますので、心が衰弱すると、不整脈、頻脈、徐脈があわわれ、動脈硬化、が現れます。この場合、脳よりも、もちろん心臓の方の症状が主となりますが、心は意識活動も統括していますので、心の衰弱によって、物事の判断がつかない、思考力の減退などの脳の症状が現れます。

腎虚にしても心虚にしても睡眠をよく取ることが必要ですが、腎や心が虚衰すると、不眠の症状が出てきます。

 

認知症以外の症状

不眠、動機、多夢、不安、焦燥感など

 

治療は、心をリラックスさせて落ち着かせるような治療と血の流れをスムーズにする治療を行います。

また、熱の症状などがある場合は、熱を冷ます清熱の治療も行います。

 

食事・生活など

食べ物の色は赤い色のものがお勧めです。

あますっぱいベリーなどの果実類、なつめ、はすのみ、ゆり根などは不眠にも効果 的です。

また、にがうり、せり、菜の花、たんぽぽ、どくだみ、苦い緑茶などの苦味のあるものも、心が虚している場合におすすめです。

 

 

認知症を大きくタイプ別に分けましたが、認知症は、単純に1つの原因で発生するのではなく、複数の原因が重なって発生することが多いですので、総合的な治療法が必要です。

当院では、望診、聞診、問診、切診により、その方の症状を把握し、その方の症状に合致した治療を行います。

もし、家族の方で最近行動、言動がおかしいなと思われるふしがある場合、なるべく早めに病院への受診をおすすめ致します。また、西洋医学の薬の治療とあわせ、針灸治療の併用は、より効果 を高めると思います。

症状でお悩みの方、お気軽にご相談くださいませ。

手当ては、早め早めに行うことにより、進行をくい止めることに役立ち、症状の改善にもつながります。尚、薬だけの治療で、改善が見受けられない場合にも、違う視点、角度から、病を捉えて診る中医学(東洋医学)の治療を受診してみるのも一手かと思います。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
発疹

皮膚に見られる肉眼的な変化を言います。発疹とは、局所の刺激によって生じるだけでなく、全身性疾患の一部分症として現れることがあります。

また、健康な皮膚に最初に出現する現発疹と、それに続く続発疹があります。

よくみられる発疹には次のようなものがあります。

・紅斑-

皮膚が限局性に発赤したもので、ガラス定規で圧迫すると容易に退色します。皮膚は隆起していません。

 

・紫斑-

皮膚組織内の出血によるもので、大きさにより点状出血、斑状出血に分けられます。はじめは赤色ですが、やがて紫色→青色→黄色と変化して消失します。

 

・丘疹-

皮膚から半球状、扁平に隆起した病変で、通常直径5mm以下のものを言います。

 

・結節-

えんどう豆以上の皮膚の隆起を言います。

 

・水ほう-

表皮内に空洞を生じ、その中にしょう液の溜まった状態です。

 

・膿ほう-

膿液が溜まり、水ほうが混濁したり黄色に見えます。

 

・蕁麻疹-

真皮上層の浮腫により、限局性にかつ境界鮮明に皮膚の隆起した状態です。

 

上記したものが先に述べた原発疹です。

原発疹が変化し、ひっかいたり、感染が加わるなどして続発する続発疹は下記のようなものがあります。

 

・びらん-皮膚の欠損のうち浅いものをいいます。

 

・潰瘍-深くて治癒した後に瘢痕を残すものを言います。

 

・か皮-いわゆるかさぶたの状態です。

 

・瘢痕-創傷が結合組織によって修復された状態です。

 

・鱗そう-表皮角層上層が角質片となって剥脱したものです。

 

また、発疹には感染によるものとアレルギーが関係しているものがあります。

 

 

感染症による発疹

代表的なものをいくつかあげていきます。

 

麻疹(はしか)

 

・症状と診断

はしかの始まりはカゼ症状です。すなわち、咳、鼻水、目やになどの症状とともに38℃ぐらいの熱が出ます。

このカゼ症状が3~4日続いた後一旦37℃台に熱が下がり、一日くらいたって再び熱が上がり、それと同時に発疹が顔あたりから出始めて全身に広がります。発疹は特徴的に毒々しい色になります。

最初のカゼ症状が出て、2~3日経過したころより口の中を注意深く見ますと頬の内側の粘膜にコプリック斑と呼ばれる白い斑点が見えます。

はしかを最初から疑って注意してみると、このコプリック斑は特徴的なのですが、普通 はなかなか頬の内側まで注意してみないため、小児科医でもこのコプリック斑はしばしば見落とします。

2回目の熱はさらに高く、40℃くらいまでに達し4~5日続きます。咳、鼻水、目やに(結膜炎)もさらに激しくなってきます。

この期間を乗り切ると熱が下がり、発疹の後は茶色い色がついて残ります。

 

・治療および注意点

はしかは病気の力も強いのですが、その伝染力にかけて右に出るものはありません。予防接種を受けないときに、はしかの患者に接触するとまず発病すると考えたほうがよいでしょう。

患者に接触して2日以内であれば予防接種で、4日以内であればガンマグロブリン(ヒト免疫グロブリン)を筋肉注射することによって発症を予防できる可能性があります。もちろん早ければ早いに越したことはありません。

しかし、一旦発症してしまうと直接の治療法は残念ながらありません。重症になり、入院が必要となることも少なからずあります。

はしかは他のウイルス感染症に比べ、圧倒的に細菌感染を併発することが多いため、通 常これを予防するために抗生剤を内服します。高熱と強い咳などで体力を消耗して食事がとりづらいために、脱水症状にならないためにこまめに水分補給をすることが大切です。

高熱で食事や睡眠が妨げられる場合は、熱さましを使ってもかまいません。

ひどい咳や鼻水に対しては、咳止め、鼻水止めを使います。脱水症状になれば点滴で水分補給を行います。

2回目の発熱が5日以上続く、咳がひどく呼吸困難になる、耳を痛がる、けいれんを起こしたり意識状態がおかしくなるなどの症状が出てくれば、合併症(肺炎、中耳炎、脳炎など)の可能性があるので病院を受診しましょう。

 

 

風疹

 

・症状と診断

典型的な経過は、耳の後ろや首のリンパ節が腫れ、その数日後に38℃ぐらいの熱が出、同時に発疹が出ます。鼻水や目やにを伴うことがあります。

発疹はぶつぶつと出色が薄く、顔から出始め全身に広がります。身体にまんべんなく分布しており、あとで皮がむけることはありません。

3日はしかといわれているように、発熱と発疹は約3日でなくなりますが、リンパ節の腫れは1ヵ月以上続くこともあります。

流行していると、発疹を見ただけで診断をつけやすいですが、ぽっと現れたものは断定するのが難しく、血液の抗体検査が必要なこともあります。

 

・合併症と注意点

風疹自体は自然に治り、合併症を起こさない限りは特に治療も必要ありません。知られている合併症は髄膜炎、脳炎、血小板減少性紫斑病(出血を止めるのに必要な血小板がどんどん壊れて少なくなる病気)、溶血性貧血( 赤血球がどんどん壊れて貧血になる病気)などです。

風疹の経過中に頭痛、けいれん、意識障害、出血点、強い疲労感などが出たら病院を受診してください。

妊娠初期の妊婦が感染すると流産の可能性があり、流産しなくても先天性風疹症候群と呼ばれる難聴や目の障害、心臓や脳の障害をもつ子供を生む確率が高くなります。

 

 

突発性発疹症

 

・症状

熱以外にこれといった症状がないのが特徴ですが、下痢をしていることもあります。

診察してもまたこれといって悪いところがなく、口の中に永山斑と呼ばれる小さな斑点を認められることがあるくらいです。

熱は、典型的なものは39℃以上の高熱ですが、38℃前後のこともあります。熱の続く長さも人によってまちまちで、一日で下がってしまうケースもあれば、5日ほど続くケースもあります。平均的には3~4日間です。

体の状態にも個人差があり、熱の割りにけろっとして普通に過ごしている場合もあれば、機嫌が悪くぐったりして食事や睡眠が妨げられるケースがあります。また、急に高熱が出るために、熱性けいれんを起こすことがまれではありません。その一部は単なる熱性けいれんではなく、髄膜炎を起こしていることもあるため注意が必要です。

発疹は、熱が下がると同じくらいに身体から出始め、全身に広がります。発疹は、一見してわかる場合がほとんどですが、中にはよく注意して見ないとわからない場合があります。

 

・治療法

ウイルスそのものに効く薬は残念ながらありません。

高熱で身体がぐったりしたり、吐いて水分がとれず脱水症状になっていることがありますので、点滴による脱水症状の改善が必要となります。熱の原因がはっきりしない場合、抗生剤を飲んでもらうこともあります。

 

 

アレルギーによる発疹

代表的なものをあげていきましょう。

 

じんましん

 

じんましんとは、突然皮膚に出来る痒みを伴う赤い(時には白い)蚊にかまれたようなふくらみのことです。大きさは様々ですが、掻くとどんどん広がります。

普通数時間で消えていきますが、違う部分からまた新たなものが出てきたりします。目の中や唇に出来ることもあり、夏に発症することが多い傾向にあります。

 

 

アトピー性皮膚炎

 

アトピー性皮膚炎は乳幼児期に始まることが多く、よくなったり、悪くなったりを繰り返しながら長期間続く皮膚炎で、症状は痒みのある湿疹が中心です。

原因には、体質的なものと環境的なものが絡んでいると考えられていますが、まだ詳細はわかっていません。乳幼児期に始まったアトピー性皮膚炎が成人期まで続くこともあり、中には成人になってから始まる人もいます。

喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎など他のアレルギー疾患が同時に見られることが多く、伝染性膿か疹(とびひ)などの感染症、白内障、網膜剥離なども見られます。

アトピー性皮膚炎は、近年世界的にも日本国内でも増加傾向にあります。症状や経過は個人差が大きいので、治療効果 を見ながら注意深く根気強く治療する必要があります。

 

 

ここにあげたのは代表的な例です。

これ以外にもたくさんの病気の一症状として出てきます。特に、頭痛や吐き気など発疹以外の症状がでているようならば専門医に見てもらい適切な処置をあおいでください。

 

 

中医学的観点からの発疹

 

中医学による生体観をまずみていき、そこから発疹がどのようにおこるかみていきます。

 

 ~気・血・水~

気-

気とは物質であり、人が生理活動をする上での重要なエネルギー源です。物質ゆえに消耗したり補充したりすることが出来ます。

また運動性も持ち合わせており、「昇降出入」という働きがあります。

「昇降出入」とは気の運動形式のことで、昇ったり降りたりする上下方向の運動と、発散したり収納したりする出入方向の運動が基本になっているということです。よって、気は物質でありながら運動性を持っているのです。

また、気が不足して病気になってしまうことを気虚と呼び、気が1ヵ所に滞って流れが悪くなって病気になってしまうことを気滞と呼びます。

気の具体的な生理作用には、人体各部を栄養する栄養作用、内蔵の活動を促進したり、体内の流れを推進したりする推動作用、内臓を温め活動を促進したり体温を維持する温く作用、体表を保護し外から侵入してくるものを防いだり侵入してきたものと闘ったりする防御作用、人体を構成している水分や血液が外に漏れ出ないようにする固摂作用、体内の物質を変化させたり代謝を行う気化作用などがあります。

 

血-

血とは、体内を流れる赤色の液体で、人体を構成し生命活動を維持する基本的物質です。現代医学でいう血液とは似ていますがイコールではありません。

中医学で血の作用は、全身を栄養し潤すことです。

例えば、顔が赤くつややかだったり、肌がふくよかで皮膚や髪の毛が潤って光沢があるのも、あるいは目などの感覚器や筋肉などの運動器が円滑に働くのも血の充足のおかげなのです。

他にも、血は精神活動を支える栄養源になっており、血が足りなくなると精神的な症状(失眠、健忘、昏迷、不安など)が現れます。

 

水-

水とは、人体中の正常な水分の総称です。

その中には唾液や涙、汗といったものも含まれます。

水の作用は体表部(皮膚や汗腺など)から体内深部(脳や骨、関節や内臓など)を潤します。また水は、血を作るうえでも重要な成分になっています。

 

~臓・腑~

臓-

臓とは五臓とも呼ばれ、肝、心、脾、肺、腎という実質性臓器のことを指し、主な働きは気、血、水の生成と貯蔵を担います。

 

腑-

腑とは六腑とも呼ばれ、胃、大腸、小腸、膀胱、胆、三焦という中空性臓器のことを指します。

主な働きは、飲食物の消化をし身体に必要なものは五臓に渡し、不必要なものは排泄します。

 

~外邪~

 

外から体内に入ってきて病気のもととなるものです。

風、暑、湿、燥、寒、火(熱)と六つあるので六淫とも呼ばれています。

その中でも発疹と関わりのあるものには風、火(熱)、寒があります。

風-

他の外邪と結びつきやすく、体内に入ってくるとあちこちと飛び回り、症状が色々と変化していき、一ヶ所にとどまることがないです。

 

火(熱)-体内に入ってくると上のほうに症状が出やすく熱症状を伴います。

 

寒-

体内に入ってくると気や血の流れを止めてしまい、痛みを引き起こすような症状を伴います。

 

 

・気の種類

 

・営気-

気の作用のうち特に栄養作用が強く、経脈を通して全身に運ばれ栄養し潤します。血のもとにもなります。

 

・衛気-

気の作用のうち、防御作用と温く作用のはたらきが強く、肌表を保護して外邪の侵入を防ぎ、汗孔の開閉に関与して発散や体温調節をつかさどるほか皮膚を潤します。

また臓器を温め働きをよくします。

 

 

気の種類の中でも特にこの2つが発疹と関わりがあります。

 

~発疹と関わりが強い臓腑~

 

脾-

食物を水穀の精微(栄養素)にかえ、全身に送り水穀の精微を気、血に変化させます。簡単に言うと食物をエネルギーに変える働きをしてくれます。

 

胃-食物を消化・吸収し小腸に送る働きをします。

 

これらが失調することで発疹が出やすい体内環境になってしまいます。

 

 

・風熱による発疹

 

そう理の状態が悪い人が風熱の邪の侵襲を受け、それが皮毛に停滞すると営衛不和(営気と衛気の働きが悪くなる)になると発疹が起こります。

 

特徴-

発疹が赤くて痒みが激しく、口渇を伴い、舌には薄く黄色い苔がついています。

 

治療-去風清熱(風と熱を体内から外に追い出します)

 

 

・風寒による発疹

 

営衛失調のために衛気が体表にうまく作用しないと、そう理の状態は悪くなります。そこに、風寒の邪が皮毛に侵襲して毛孔が閉塞して、発疹が起こります。

特徴-

悪寒や発熱、無汗といった症状を伴い、軽く触れると脈が緊張したり遅くなったりします。

 

治療-去風散寒(風と寒を体内から外に追い出します)

 

 

・胃の湿熱による発疹

 

体質や飲食不節により胃に湿熱が生じ、その湿熱がうまく発散しないで皮毛で

停滞すると発疹が起こります。

 

特徴-

急に発疹が起こり、色は赤です。舌の色は赤く、舌につく苔は黄色くべったりしています。

脈は速くなり、その他に胃痛や悪心・嘔吐、下痢、小便は黄色く少量 などの症状を呈します。

 

治療-胃の働きをスムーズにし、余分な湿熱を取り除きます。

 

 

・気血両虚による発疹

 

虚弱体質、気血の生成不足、または出血などにより気血が不足し、そのために皮毛がうまく栄養されず、体表の防御機能が低下し、そう理もうまく開閉できずに発疹が起こります。

 

特徴-

発疹は反復して起こり、なかなか治りません。色は淡紅色で、舌は大きく色は淡いです。脈は力なく弱いです。

他に、顔の血色が悪い、精神疲労、無力感、食欲減退、不眠、心悸、息切れが見られます。

 

治療-気血の生成を脾を丈夫にし、衛気の機能回復をはかります。

 

中医学で発疹を捉えるときは、その人がどんな状態にあるかをまず判断していきます。その上で、発疹を治療するには体内環境を正常化するということをしていきます。

中医学では、幅広く病気に対応していけるだけの確かな論理と実践がありますので、発疹をお持ちの方は当院にお気軽にご相談ください。

2019/02/20
腹痛

腹痛について

腹痛は、外来診療で最も遭遇する機会の多い症候のひとつと言われている病気です。

これは、腹部が食物の通り道でもあり、生命を維持する上で必要な様々な臓器が存在しているために遭遇する機会が多いのかもしれません。

今回は、腹痛の鑑別について述べていきたいと思います。

 

 

<概要>

 

まずは、西洋医学的な視点で腹痛を説明していきます。

腹痛は、その名のとおり、腹部を中心とした疼痛や圧迫感などを総称し腹痛と言います。

みなさんも、今まで、腹部の痛みという症状を自覚したことはあるのではないでしょうか。

よくある原因としては、食中毒や冷たいもののとり過ぎ、また、現代社会では、過度なストレスによっても腹痛を覚えることがあります。

 

しかし、腹痛には他にも様々な原因が考えられます。

 

一つ例を挙げましょう。

あまり腹痛と連想ができないかと思いますが、脂肪肝という病気があります。

この病気は、脂肪や糖質のとりすぎにより起こる病気で、肝細胞に中性脂肪が 蓄積することにより起こります。メタボリックシンドロームに関心のある方は、よく聞く病気なのではないでしょうか。

この病気、症状は、無症状のことが多いのですが、ときに右上腹部痛として、症状が現れることがあるようです。

このような例は、臓器の失調といっても、とても軽度のものであると言えます。

 

しかし、他にも重篤な病気により、腹痛を自覚することがあります。

腹部には、肝臓や膵臓、胃や腸、腎臓など、様々な臓器が存在します。

このような臓器に著しい炎症や、悪性腫瘍が発生することでも、腹痛を自覚し、そのような場合、とても重篤な腹痛と言えます。

 

つまり、腹痛と言っても、軽症なものから重症なものまで、様々であり、命の危険を伴う危険のある腹痛もある以上、軽視できない症状の一つなのです。

 

 

<気をつけるべき腹痛と随伴症状>

 

では、どのような腹痛がより大きな危険性を秘めているのでしょう。

腹痛を自覚したときに、危険性があるかどうかを確実に判断するためには、病院での検査が必要になりますが、とくに気をつけた方がよい腹部の痛み方と随伴症状を参考のために紹介します。

・急性かつ激しい腹痛

 

胃や腸などの、腹腔内の異常によるもので、かつ急性のものであると思われます。

このような場合、すぐにでも病院での検査および治療が必要と思われます。

 

・発熱を伴う

 

広範囲の炎症や、臓器の急性炎症の可能性があります。

 

・体重の減少

 

このような場合、癌やクローン病などの重篤な病気の可能性があります。

すぐにでも病院での検査および治療が必要と思われます。

 

・吐き気や嘔吐を伴う

 

膵炎や胃潰瘍、胆嚢炎などの可能性があります。

もし、上記のような症状がある場合には、病院でより早く検査をして治療をした方が良いと言えます。

 

 

<中医学による腹痛の捉え方>

 

それでは次に、中医学的にみた腹痛の捉えかた方を述べていきます。

 

「わかりやすい東洋医学理論」でも述べられていますが、中医学における人間の体は、気、血、水により構成されており、これらを臓腑が正常に運用することで、人間は正常な生理活動を行っています。

しかし、気、血、水のいずれかが正常に体内を巡らなくなることで、様々な症状が現れることとなり、その結果 、病気に至ります。

 

腹痛においても同様で、主に、気が腹部をスムーズに巡らなくなることで、腹部に痛みを及ぼします。

では、どのような原因によって、気の流れが失調するのでしょう。

もう少し詳しく述べていきます。

 

<腹痛の原因>

中医学においても、腹痛には様々な原因があります。

・寒邪によるもの

 

寒邪とは、人間の体を病気にする原因の一つで、非常に低い外気温をさします。

冬の寒い時期に体を冷やして風邪をひくというような場合も、寒邪によるものと言えましょう。

この寒邪が腹部に停滞することで、気の運行を邪魔し、スムーズに巡らなくなり、腹痛となることがあります。

お腹を開けて睡眠をとり、冷やしてしまうなどの状況がイメージしやすいかもしれません。

 

・過食によるもの

 

暴飲暴食によっても腹痛は起こります。

これは、飲食物が多すぎるために、胃や脾臓の機能を低下させて、その結果 、気がスムーズに運行しなくなるために起こります。

 

・偏食によるもの

 

偏食には様々なものがありますが、特に、脂っこいものや冷たいものの偏食により、腹痛は起こります。

脂っこいものの偏食は、湿熱という水の流れが悪く熱を帯びた物質を生み出し、その結果 、気の運行を邪魔します。

冷たいものの偏食は、直接冷えたものが腹部に入り、停滞することで、気がスムーズに巡らなくなります。

刺身やビールなど、冷たいものを好む日本人には、イメージのしやすい腹痛ではないでしょうか。

 

・過度なストレスによるもの

 

過度なストレスは、中医学における肝臓の機能を低下させて、気をスムーズに流す力が低下し、その結果 、腹痛を及ぼすことがあります。

仕事上における過度なストレス、学生であれば受験に対するストレスにより、 腹部の痛みを経験したことのある方も多いのではないでしょうか。

 

・体質によるもの

 

体質的に胃や脾臓の機能が低下している場合、慢性的に気をスムーズに巡らせる力が低下し、腹痛を及ぼすことがあります。

このような状態では、疲労により気の流れがさらに悪くなり、腹痛という症状を生み出すことがあります。

また、このような体質が長期に続いている場合、腹部を温める作用が低下していることもあります。

腹部を温める作用が低下していれば、冷えの感受により、腹痛を起こすことがあります。

 

<腹痛の治療方法>

では、次に腹痛の治療方法について述べていきます。

腹痛の治療は、先ほど述べた原因を取り去ることと、原因に対する耐性が弱い場合は、その耐性を高める治療を行います。

・外的な冷えによる腹痛の治療

 

寒邪によるもの、冷たいものの偏食による腹痛の場合には、体内から冷えを取り去り痛みを止める治療を行います。

中医学では、このような治療を、「温中散寒」「理気止痛」と言います。

生活面では、なるべく外気温にさらされないよう、厚着をして、なるべく冷たい飲食は控えることが重要です。

 

・過度なストレスによる腹痛の治療

 

過度なストレスによる腹痛の場合、滞っている気をスムーズに流し、ストレスに対する耐性を上げる治療を行います。

中医学では、このような治療を、「疏肝解鬱」「理気止痛」と言います。

生活面では、ストレスを少しでも解消する手立てを見つけ、実践することが重要です。

 

・過食による腹痛の治療

 

食べすぎによる腹痛の場合には、食物の消化を促す治療を行います。

中医学では、このような治療を、「消食導滞」「理気止痛」と言います。

生活面では、食事を多く取りすぎないよう制限をすることが重要です。

 

・体質による腹痛の治療

 

体質による腹痛の場合、胃や脾臓の機能を改善する治療を行います。

中医学では、このような治療を、「健脾益胃」と言います。

また、胃や脾臓の機能の低下が著しく、腹部を温める作用も低下している場合は、「温運脾陽」と言い、脾臓が体を温める作用を高める治療を行います。

生活面では、過食や冷たいものを控えることが重要です。

 

いかがでしょう?

中医学的な腹痛の治療はご理解頂けましたでしょうか?

 

腹痛の場合、食中毒や物理的な腸の疾患など、急な発症の場合も多く、西洋医学的なお手当てが優先される場合が多いと思います。しかし、一方で、長期的に腹痛にお悩みの方は、体質が原因となっている可能性があります。そのような場合、根本的に体質から改善をしていく必要があると思います。

一度、中医学的なお手当てをされてみるのも良いかと思います。

 

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