コラム

2019/02/20
下痢

下痢とは、消化管内において十分に水分が吸収されず、水分を多く含んだ形状のない便を排出することを言います。

 排便回数が多いだけでは、下痢というわけではありません。

健康な便は、腸で水分吸収されるため形状がきちんとありますが、下痢の場合はウィルス感染、炎症、何らかの疾患の1つの症状など様々な原因によって腸の中の悪いものを早く体外へ出そうとする防御反応が働くために起こります。

 

 では、“下痢”について「現代医学」と「中医学」のそれぞれの捉え方を説明していきたいと思います。

 

 

【現代医学な捉え方】

日本人の1日の糞便量はおよそ150gで、水分含有量はその60~70%を占めていますが、80~90%になると軟便から泥状便、90%以上では水様便となります。

便が消化管を早く通過しすぎたり、便中のある物質が大腸の水分吸収を妨げたり、大腸で水分が分泌されたりすると便に過剰の水分が含まれます。

下痢の症状の他に、腹痛、嘔気、嘔吐、脱水症状、発熱などがあります。

 下痢の発生機序から“通過時間の異常による下痢”“浸透圧性下痢”“分泌性下痢”の3つに大きく分類されます。

 

通過時間の異常による下痢≫

 便の通過速度が速くなることは、下痢の最も一般的な原因です。

便が正常な硬さとなるには、ある程度の時間、便が大腸に留まっている必要があります。

便が大腸を速く通過すると水様性の便になります。

多くの医学的処置や治療が、便が大腸に留まる時間を短縮します。それには、甲状腺機能亢進症、胃や小腸・大腸の部分切除、胃潰瘍治療のための迷走神経切断、腸のバイパス手術、マグネシウムを含む制酸薬、下剤、プロスタグランジン、セロトニン、カフェインなどの薬の使用が含まれます。

 多くの食べ物、特に酸性の食品は速く通過します。特定の食品に耐性がなく、それらを食べた後に常に下痢を起こす人がいます。

 

浸透圧性下痢≫

 浸透圧性下痢は、血液中に吸収されない物質が腸内に残存するために腸管内浸透圧が高まり起こる下痢です。

この吸収されない物質が便中に過剰の水分を残留させるので下痢が起こります。

一部の果物や豆類、そしてダイエット食品やキャンデー、チューインガムなどで糖の代わりに使われるヘキシトール、ソルビトール、マンニトールなどの糖類が浸透圧性下痢を引き起こします。

ラクターゼ(乳糖分解酵素)の欠乏症も浸透圧性下痢を起こします。ラクターゼは正常なら小腸にみられる酵素で、乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解して血液中に吸収できるようにします。乳糖不耐症の人が牛乳を飲んだり、乳製品を食べたりすると、乳糖が消化されません。乳糖が小腸に蓄積すると浸透圧性下痢を起こします。

消化管中の血液も浸透圧性物質として働き、黒色便(メレナ)を起こします。

正常な腸内細菌の過剰繁殖や、普通は腸内にみられない細菌の繁殖も浸透圧性下痢の原因となります。アメーバなどの寄生虫感染症、抗生物質の服用による腸内の細菌叢の破壊も浸透圧性下痢の原因となります。

 

分泌性下痢≫

 分泌性下痢は、細菌毒素、ホルモン、化学物質などが腸管において水分や電解質の分解を促進して起こる下痢で、その種類は多くあります。

コレラ菌や、ある種のウィルスに感染したとき産生される毒素によってこの分泌が起こります。ある種の細菌による感染症や、寄生虫による感染症も水分の分泌を促進します。

この下痢は大量に起こり、コレラでは1時間に約1リットル以上の便を排泄します。

 この他の原因には、ヒマシ油のような緩下薬、胆汁酸などがあります。

カルチノイド、ガストリノーマ、ビポーマなどの稀な腫瘍でも、またポリープによっても分泌性下痢が起こります。

 

《下痢の治療》

水分補給

食事療法・・・

1~2日は、食事を避けて安静を保ちます。脂肪の多い食事、冷たいもの、刺激の強い香辛料などは避け、消化の良いものを徐々に摂取するようにしましょう。

薬物療法・・・

抗生物質、腸運動抑制剤など

 

 

下痢の原因が何らかの感染症の場合には、薬を用い下痢を止めることで腸内の細菌やウィルスをとどめることにつながるため、病院を受診し、医師の指示に従うようにしましょう。

 

 

【中医学的な捉え方】

 最初に、中医学的な人体の考え方について説明します。

詳しくは、“わかる東洋医学診断 まとめ”のページの上段の「わかりやすい東洋医学理論」をお読み下さい。

現代医学とは異なる角度から、人体を見ていることが理解いただけると思います。

 

人体には“気・血・水”と呼ばれる「人体を構成して生理活動を活発化させる基本的物質」が巡っています。

 

~気・血・水について~

 

気・・・

気は体内を流れるエネルギーの1つです。消化・吸収・排泄を正常に行なう、血を巡らせる、体温を保つ、ウィルスや細菌から体を守る、内臓を正常な位 置に保つなど、体の生理機能を維持する働きがあります。

 

血・・・

いわゆる“血液”という意味のほか、“気”とともに体内を流れて、内臓や組織に潤いと栄養分を与え、また精神活動(気持ち・気分・情緒・感情)を支える物質でもあります。

 

水・・・

体内を潤すのに必要な水分のことです。胃液・唾液・細胞間液・リンパ液・汗なども含まれます。体表近くの皮毛・肌膚から、体内深部の脳髄・骨髄・関節臓腑までを潤します。

 

 気・血・水の生成や代謝は“五臓六腑”と呼ばれる臓器によって行なわれます。

五臓と六腑は、よく一緒に語られますが役割は異なります。

六腑は、“胃・小腸・大腸・膀胱・胆・三焦”の総称です。

六腑というのは、水穀(飲食物)を消化して、身体に有益な物質である“水穀の精微”(これが気・血・水の生成材料になります)と、不必要な物質である糟粕(カスのことです)とに分け、“水穀の精微”を五臓に受け渡し、糟粕を大・小便に変えて排泄を行なう臓器です。

六腑のうち、口から摂取された水穀が最初に運ばれる臓器が“胃”です。

胃が水穀を受け入れて(これを受納といいます)、消化し(これを腐熟といいます)、消化物を下方の臓器に渡す(これを和降といいます)という3つの働きをします。

小腸は、胃の下にある臓器で、胃で消化された水穀を人体に有益な“水穀の精微(清)”と“不要な糟粕(濁)”とに分別 します。

そして分別した“清”を脾に運び、“濁”をさらに水分とそうでない物に分けて膀胱と大腸に移します。大腸と膀胱は“濁”をそれぞれ大・小便にして排泄します。

また、胆は肝で生成された胆汁を小腸に分泌して、消化を助けています。

三焦は、臓腑機能を統轄して、水分や気を運行させる通路の働きをしています。

五臓”は“肝・心・脾・肺・腎”の総称です。

五臓は、六腑から水穀の精微を受け取り“気・血・水”を生成し貯蔵する臓器です。

 

~五臓について~

 

肝・・・

肝は血を貯蔵する働きのほか、全身の“気”のめぐりをコントロールして、精神・情緒を安定させる作用や、筋肉・目の働きを維持する働きがあります。

 

心・・・

血を全身に送り出すポンプの作用のほか、脳の働きの一部を担っていて、情緒や感情といった“こころ”とも関係が深い臓器です。心の機能が充実していると精神状態が穏やかで、情緒が安定し、思考能力も活発になります。

 

脾・・・

消化に関わる機能すべてを含んだ臓器です。食べたり飲んだりしたものを、体の役に立つエネルギー(気)に変える役割があります。また、血を脈外に漏さないようにする働きや、味覚をはじめとする口の生理機能を維持する働きもあります。

 

腎・・・

腎には体内の水分代謝をコントロールして不必要な水分を尿として排泄させる作用があるほか、成長・発育・生殖・老化に深くかかわる“精”を蓄える臓器でもあります。

 

精とは・・・

体を構成する栄養物質や生命エネルギーの総称です。腎に蓄えられて、人の成長・発育を促進し、性行為・妊娠・出産などの性機能や生殖機能を維持する働きがあります。

 

 

 中医学では、人体は“気・血・水”がスムーズにめぐって、必要なところに必要なだけあり、五臓六腑が正常に機能している状態を“健康”と考え、どこかのバランスが崩れた状態が“病気”と考えます。

 バランスを崩す原因(病因)には、“外因・内因・不内外因”があります。外因とは外界の環境因子(気候の変化など)、内因とは感情や精神状態など、不内外因とは食生活や過労などの生活習慣のことです。

これらの病因が、気・血・水のバランスを崩し、五臓六腑の働きを失調させることで病気になると考えます。

中医学独特の診断方法で、何の病因で、五臓六腑のどの臓器に影響を及ぼし、気・血・水がどのようバランスを崩し、どのように失調したかを見極め(これを弁証といいます)、治療方法を決める(これを論治といいます)ことを“弁証論治”といいます。

 

 では、下痢に関して説明していきましょう。

中医学では、下痢を“泄瀉(腹瀉)”といいます。主症状は、排便回数が増加、大便が軟化、ひどいときは大便が水のようになります。

厳密には、“泄”は大便が軟らかく勢いが緩やかなものをいい、“瀉”は大便が水のようにうすく勢いが急なものをいいます。

 

 正常な排便は、主に脾と胃の協調運動が中心となって行われ、大腸、肝、腎が関与しています。

飲食物は、まず胃で簡単に消化された後に脾に送られます。脾には、飲食物を消化して身体に必要な栄養素を吸収し、肺に送る働きがあります。身体に不必要なものを小腸や大腸に送るのは胃の役割です。

大腸では、小腸から送られてくる食物の残渣を受け取り、余分な水分を再吸収して糞便を形成して排出する働きがあります。

 脾は上向き、胃は下向きという運動をすることによって消化吸収と排泄が正常に行われる仕組みになっています。この運動方向に逆らって、胃の働きが上に向かうと嘔吐や吐き気などの症状が、脾の働きが下に向かうと下痢が起こります。

胃が正常に働くためには適度な潤いが必要ですが、脾は逆に湿気を嫌います。

そのため、水分の摂り過ぎなどで脾に余分な湿気が溜まってしまうと、機能が低下して下痢をしやすくなります。

また、脾の機能がもともと弱い人は、水分をうまく吸収することができないため、脾に余分な湿気が溜まりやすくなる傾向があります。

 下痢には、急性と慢性があります。

急性の下痢の原因は、湿熱や寒湿などの外邪によるものと、暴飲暴食などによるものがあります。

慢性の下痢は、もともと脾胃が弱い、精神・情緒をコントロールする肝が機能失調を起こしている、腎陽が不足している、といった原因で起こると考えられます。

それでは、それぞれのタイプ別に説明します。

 

外邪(寒湿または湿熱)による下痢

寒湿の感受(雨中や湿地での生活、生ものや冷たいものの過食)によって、脾の機能が低下して下痢が起こります。

このタイプの人は、冷えたり、生もの・冷たいものの過食によって症状が悪化します。

 水様便に加え、吐き気、手足や全身が重だるい、頭がスッキリしない、むくみ、寒気 がする、腹部冷痛、といった症状が現れます。温めると症状は改善します。

(治療方針)散寒化湿・・・寒湿を取り除きながら脾の機能を整える治療です。

 

湿熱(暑く湿度の高い季節や、味の濃いもの・脂っこいものの過食、過度の飲酒)が大腸に侵襲して機能失調となり下痢が起こります。

症状は急迫し、便は水様の黄褐色で、臭いが強く、肛門に灼熱感があるなどが特徴です。

(治療方針)清熱利湿・・・湿熱を取り除き大腸の機能を整える治療です。

 

 

飲食失調よる下痢

 

暴飲暴食、食べ過ぎによって脾胃の消化・吸収機能が阻害されて下痢が起こります。

みぞおちが張って痛む、腹部を押すと苦しい、臭いの強いゲップがでる、未消化物を伴う腐敗臭の強い便がでる、下痢の後に痛みが軽減する、などの症状があります。

 

(治療方針)消食導滞・・・

胃腸に停滞する消化物を除去して胃腸の機能を整える治療です。

 

 

 

肝気鬱結による下痢

 

肝の疏泄作用(気をめぐらし臓腑の働きをスムーズにします)によって、脾の運化作用(消化吸収し、栄養を全身に送ります)の働きが正常に保たれています。

ストレスや精神疲労などから、肝の疏泄作用が低下し、脾の運化機能が失調して下痢が起こります。

便秘と下痢を繰り返す、下痢をしても腹痛が治まらない、緊張や感情の変化によって症状が増悪するなどの特徴があります。

 

(治療方針)疏肝健脾・・・

肝の疏泄作用を調整し、同時に脾の運化作用を促す治療です。

 

 

脾胃虚弱による下痢

 

便が時に軟便となり、時に下痢となります。便の出始めは硬く形があっても、後に下痢(軟便)となるのが特徴です。

疲れやすい、食後に眠くなる、排便の回数が多い、顔がむくみやすい、尿が出にくい、などの症状があります。

生もの、冷たいもの、脂っこいものなど、消化の悪いものの飲食で症状が悪化します。

 

(治療方針)益気健脾・・・消化機能を増強させる治療です。

 

 

腎陽虚弱による下痢

高齢者や冷え性の人に多いのは、食べ物を消化吸収するエネルギーが不足して起こる下痢です。

腎陽は体を温める原動力です。腎陽の機能は年齢とともに弱くなるため、年をとると冷えやすくなります。また、腎陽の火力がある程度強くないと、脾を温める事が出来ず、脾胃が飲食物をうまく消化吸収することが出来なくなります。

夜明け前に腹部が痛み、腹鳴が起こって下痢を起こし、下痢をした後は楽になる、という特徴的な症状があります。

他にも、腹部が冷え、温めることを好む、腰・膝がだるい、四肢が冷える、夜間頻尿、などの症状があります。

生もの、冷たいものの飲食や寒冷によって症状が悪化します。

 

(治療方針)温腎健脾・・・腎を温めて消化機能を促進する治療です。

 

 

養生≫

下痢のときは、脱水症状を避けるため水分の補給を心掛けて下さい。とくに、高齢者の方は、脱水症状を起こしやすく、全身の症状が悪化することがありますので注意が必要です。

水分補給は、湯冷ましや番茶、スポーツ飲料などがよいでしょう。ジュース類、牛乳などは、含まれる成分が下痢を悪化させることがありますので避けて下さい。

 

予防≫

*身体を冷やさないように心掛ける

*暴飲暴食を避ける

*栄養バランスの良い食事を摂り、体力と抵抗力をつけておく

*体調が悪いときは、脂っぽい食事、アルコールは避ける

*嗜好品や刺激物を摂り過ぎない

*睡眠を十分とり、規則正しい生活を送る

*仕事時間と、休息時間をきちんと分け、生活にメリハリをつける

*ストレスを受けていることを認識して、自分に合ったストレス解消法をみつける、など。

 

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

2019/02/20
顔面神経麻痺

ある日、朝起きて歯を磨いていると、口から水がこぼれる。

「あれっ?」っと違和感をかんじながら鏡をのぞいてみると、眼がうまく閉じれず口もひきつり、顔がゆがんでいてビックリする…。

 

顔面神経マヒとは、片側の顔の表情をつくる筋肉が麻痺してしまう病気です。

 

顔面神経マヒになって困っている方、また周りに顔面神経マヒになってしまった人がいる方のためにも、西洋医学的分類、治療方法そして中医学的分類、治療方法、リハビリとお話させていただきます。治療では後からお話する末梢性顔面 神経マヒの鍼治療についてご説明します。

 

 

<西洋医学的分類と原因>

まず、顔面神経マヒは中枢性と末梢性の大きく2つに分かれます。

中枢性とは、脳と脊髄のことをいいます。

末梢性とは、脳と脊髄から木の枝や根のように出ている神経のことをいいます。

このことからわかるように、中枢性顔面神経マヒとは脳の中でおこった血管障害(脳梗塞、脳内出血)が考えられますので、CTやMRIの検査が必要になります。速やかな専門医への受診が必要になります。

 

末梢性顔面神経マヒは、80%以上がベル麻痺と呼ばれる原因のはっきりしないタイプです。最近では、その原因はウィルス性、寒冷刺激、虚血性、免疫異常などが考えられています。年間10万人に22,8人発症するといわれています。次に多いのがラムゼ・ハント症候群といわれるもので、子供の頃に患った水痘(みずぼうそう)のヘルペスウィルスが成人してから神経をおかす病気です。少数ですが、糖尿病性、外傷性、多発性神経炎というものも原因になります。

 

 

<中枢性、末梢性顔面神経マヒの鑑別(見分け方)

中枢性、末梢性の鑑別の仕方は、顔のゆがみ方や全身の症状より判断します。

 

その前に・・・

顔面神経マヒでは、麻痺している側(患側)と正常(健側)を間違えてします方がいます。これは筋肉が麻痺して力がなくなっているので、正常な方(健側)へと引っ張られてしまい、一見麻痺している方がのっぺり無表情で正常な方がゆがんで見えたりします。

表情の作れない方が麻痺しています。注意しましょう。

 

中枢性の顔面神経マヒの鑑別(見分け方)方法

・麻痺している側の額のしわをつくることができる。

・麻痺側の閉眼が出来ます。

・麻痺の程度がひどくない。

・手や足の痺れ、麻痺などが同時に出現する。

などがあげられる。

 

末梢性の顔面神経マヒの鑑別方法

・麻痺側の額のしわをつくることができない。

・閉眼が不充分になる。

閉眼すると白目が残る―兎眼といわれます。

閉眼すると眼球が上に向いてしまう―ベル現象といわれます。

・鼻唇溝(口の端から鼻の端にできる皮膚のしわ)が薄くなる。

・口角が下垂し正常な側へ引っ張られる。

・口笛が吹けない、パピプペポが発音しにくい。

 

また聴覚過敏、味覚低下、唾液、涙の分泌低下も伴うことがあります。

 

 

<中枢性、末梢性 顔面神経マヒの西洋医学的治療と経過>

中枢性では、脳の血管障害(脳梗塞、脳卒中)に基づく治療となりますのでここでは省略させていただきます。

現在、日本においては内科(神経内科)、脳外科での治療となります。

 

末梢性では、

急性期(発症より1週間~10)―早期にステロイド(副腎皮質ホルモン)の注射により炎症を抑える。

メチコバール(末梢神経障害における神経の修復)、回復期(1週間~10日以降)―温熱、マッサージなど本格的なリハビリをいていく。

 

これらの治療によりベル麻痺の約7080%は完治します。軽度のもので12ヶ月。中等度のもので2~3ヶ月で治ります。年齢が若いほど経過は良好です。15%ぐらいに軽い麻痺。

残りが慢性期へと移行していきます。慢性期では後遺症の一つとして病的共同運動とよばれるものがあり、これは回復の過程で神経に混線が生じた結果 、口を開閉したときに眼の筋肉が勝手に動いてしまったり、物を食べるときに涙が出てしまうといったことがあります。

またラムゼ・ハント症候群ではベル麻痺に比べ予後が少し悪く残ります。

 

 

ポイント:ベル麻痺では治療をしなくても麻痺は回復します≫

ベル麻痺では治療を受けなくても自然治癒します。これは大変に希望の持てることですが、中枢性や他疾患との鑑別 、また病気の程度や治療の時期、リハビリのやり方で予後に影響がありますので病院や信頼のおける鍼灸院での治療をお勧め致します。

 

 

 

<東洋医学的分類と原因>

東洋医学でも顔面神経マヒの場合、やはり中枢性と末梢性の鑑別をおこないます。

中枢性の場合は中風(脳血管障害)に基づき診断、治療していきます。

 

末梢性顔面神経マヒは、経絡の気血の流れが弱くなっているところに、風寒(ふうかん)や風熱(ふうねつ)という邪気が襲いかかり、その結果 として気血の流れが滞り、筋肉が麻痺すると考えます。

 

経絡の気血の流れが悪くなる原因としては、ストレス、睡眠不足、過労、食事の不摂生などが上げられます。

風寒、風熱というのは、温度差や冷たい風をあびる(汗をかいた後に風をあび急速に身体を冷やすことも入る)、ウィルスなどのことと考えます。

風邪(ふうじゃ)、熱邪(ねつじゃ)は身体の上の方を犯しやすい邪気です。

寒邪(かんじゃ)はよく筋肉、経絡を引きつらせる邪気です。

 

 

<東洋医学的治療と経過>

鍼治療が中心になります。

治療の1つ目のポイントは、まず早期に治療を開始することです。邪気の性質を見極め、体質を考慮しながら鍼治療し、スムーズに回復期へと移行させることが大切です。

2つ目のポイントは、麻痺の時期を見ながら顔の経絡の気血の流れをよくすること、そして邪気を追い出すことです。

顔から手、顔から足へ流れる経絡―主に陽明経という経絡を使って治療します。

 

手の陽明経は人差し指の先から肘、肩、首を通 り口の横を抜け鼻の脇に至ります。

 

足の陽明経は鼻の脇から口、額を巡り、下がって胸、お腹を通 り足の先まで下がります。

経絡の流れをそのまま使うのは鍼治療の1つですが、顔の治療なのに手や足のツボを使う理由がここにあります、経絡と言う道筋が繋がっているからです。

 

急性期―顔面神経マヒは、始めの1週間は治療で邪気を抑えていても進行していく過程をとります。この時期は、顔面 部で邪気と人間の正気が戦っている最中なので、主に手足のツボを使用して強めの刺激で遠隔治療をします。遠隔治療とは、局所から離れた所に取穴を行い治療を行うことです。経絡と言う道筋を活用して居るからです。局所から離れた所に刺激を与えることにより、気や血のエネルギーの流れを改善する事により局所の症状を改善する目的があります。これは、東洋医学(中医学)の独特な考えの治療の特徴でもあります。このような治療は局所のみの治療より、全体的な治療になり治療効果 が高くなります。

 

回復期―1週間ぐらいで麻痺の状態が決まり安定します。邪気と正気の激しい戦いが一段落してから主に顔面 部のツボを使い、同時に手足のツボで気血を整えます。

 

慢性期―治療開始が遅れたりして慢性期になってしまった場合は、顔面 部の気を補い、また手足のツボで気を補ったり調整したりします。

 

<回復期のリハビリ、マッサージの仕方、注意点>

リハビリでは温熱療法、運動法、マッサージなどがあります。

ここでのポイントはやり過ぎないことです。

運動療法、マッサージを疲れたり痛みが出るほどのやり過ぎると、神経系の連絡不良(混線) を起こす可能性となりますので注意が必要です。

 

温熱療法―蒸しタオルで顔を温めます。手で触って心地よい暖かさで温めます。

 

運動療法―ポイントは一つ一つのパーツをバラバラに動かします。

・額にしわを作る。

・頬を膨らます。

・鼻をすくめる。

・口角を引き上げる(イーと口を横に引く)

この時、目、鼻、口はバラバラに動かしましょう(病的共同運動を防ぎます)。手で触ってみて目と口が同時に動かないように注意します。

マッサージ療法

額、眼、口の周囲は手で円を描くように動かしながら優しくマッサージします。

口角、頬は手で円を描きながら上向きに持ち上げるように優しくマッサージします。

首、肩も同じようにマッサージすると効果 的です。

運動療法、マッサージの前に温熱で温めてからやると効果的です。

日常で注意すること

風に当たらないように注意しましょう―冷たい風の吹く日はマスクをしましょう。また、汗をかいた後も風で冷やさないように注意しましょう。

眼の保護―眼が完全に閉眼できないため、角膜が乾燥しやすくなってしまいます。眼帯を着用したり、目薬をさして眼が乾燥過ぎないように注意しましょう。

お酒と控える―アルコール代謝物質のアセトアルデヒドが神経に悪影響を及ぼすと考えられている。

ストレスと避けましょう―東洋医学では、ストレスより気血流れが悪くなると考えます。

過度のストレスを避けましょう。

体調を整えましょう―治療をしていても家や仕事、不摂生をしている、経絡の流れが悪くなり回復が遅くなります。特に急性期、回復期にかけては規則正しい生活を心がけましょう。

 

顔面神経麻痺でお悩みの方、何かの参考になりましたでしょうか?

顔面神経麻痺の治療は、鍼治療の適応であります。また、非常に効果 の出やすい疾患で有ります。治療は、早ければ早いほど効果が良いので、一つの治療法としてご一考にされても良いかと思います。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

 

 

 

なぜ症状改善の為に、体質を知ることが必要なのでしょうか?

 

体質を見て治療法を決めることは、当院の特徴です。

なぜなら、他院では体質ではなく症状に対しての治療を行っています。

 

たとえば顔面神経麻痺の患者さんは、ステロイドやメチコバールなどの薬の投与をしたりするなどです。

一般的な鍼灸院も、顔面神経麻痺を起こしている部位に鍼治療を施術するところが多いです。

 

これらも一つの治療法ではありますが、本質的な(起因・素因に対しての)治療が行われていないので、 良い結果に繋がらないケースもあります。

 

例えば、素因に虚弱体質が有ればその点にもお手当を加えることにより、一層治療効果を高めることが可能に なります。

 

故に顔面神経麻痺でも、ストレス、睡眠不足、過労、食事の不摂生など、原因は様々です。

それらは患者さんの体質から引き起こされているので有ります。

 

ですから、体質を知らないと症状の根本的な原因も分からず、いくら薬を飲んだとしても症状改善が難しい 場合があるのです。

 

当院ではまず体質を見極めてから、症状改善にベストな治療法を選択しています。

よって患者さんごとにオーダーメイドの治療を行っています。

 

 

 

 

 

 

吉祥寺で開業して30年以上!

体質の判断が正確にできる日本でも数少ない院です

 

体質を判断するときに重要なことは見極めです。

 

これを誤ると間違った治療法を選択し、症状の改善もできなくなります。

 

当院では、上海中医大学内のWHO(世界保健機構)認定の伝統中医学研修センターにて臨床研修を受けた日本に於いて数少ない中医師で医学博士とそのノウハウを継承したスタッフが体質を見極めますので患者さんにベストな治療法をアドバイスできます。

2019/02/20
肩こり

肩コリとは、首すじから肩にかけて起こる、筋肉のこわばりのことです・・・なんてあえて言う必要がないくらいよく知られています。と同時にただの強ばりなのに、とても不愉快で、つらく、仕事や家事に影響がでてしまったり、しかもなかなか治らなかったり。中には怖い病気が隠れていたりすることもあります。

 

では、この肩コリをどうすればいいか?怖い肩コリとはどのようなものか?考えていきたいとおもいます。

 

<西洋医学的な考え方>

西洋医学の分野においては、単純な肩コリについてはそれほど重要視されないのが現状だとおもいます。単純な肩コリとは長時間同じ姿勢でパソコンをやったり、細かい作業をしたり、また悪い姿勢で作業したりして特に肩の筋肉を緊張、疲労させた結果 おきます。

単純な肩コリはこのようにおこります。ひどい場合はこわばりだけでなく、痛みになることもあります。

特に肩周囲の筋力の弱い人や、なで肩の人では肩コリになりやすいです。男女比では圧倒的に女性が多くなっています。

また肩コリによって緊張性頭痛、吐き気、耳鳴りなどがおこることもあります。

 

しかし中には他の病気の影響で肩コリがおこることがあります。

 

首の骨の問題→頚椎症(頚椎の間の靭帯、軟部組織などの問題)など

耳鼻科の問題→耳の疾患、蓄膿症、鼻炎など

眼科の問題→視力の低下、老眼、眼鏡の視力矯正不良、ドライアイなど

歯科の問題→虫歯、噛み合わせ不良など

内科的な問題→自律神経失調症、高血圧、冷え性、心臓の病気など

神経内科的な問題→ストレス、うつ

婦人科の問題→更年期障害など

 

これら以外にも肩コリの症状がでる病気はたくさんあります。特に首から上の病気はその首から頭を支える肩にも緊張をあたえ、肩コリとの関係が強い傾向があります。このように他の病気が原因の場合は、まずその病気の治療が必要になります。

 

最近はテレビの中の健康番組などでも取り上げられていることもありますが、肩コリの中には心臓の病気からおこるものもあり、注意が必要です。心筋梗塞、狭心症、肺尖癌(パンコースト症候群)という病気からもおこります。このような怖い肩コリに特徴的なのは、楽な姿勢をとっているにもかかわらず肩が痛んだりします、また心臓の病気からは左肩から左腕に痛みがでることが多い、などの症状があります。ゆっくり横になっても痛みがとれなく、だんだん痛くなったり、今まで肩コリになったことがないのに突然ひどい肩コリになったりした時は心配ですので念のため医療機関での診察が必要になることがあります。

 

高血圧で動脈硬化がすすむと肩の微細な血管の血流が悪くなり肩コリになります。

 

頚椎の問題の場合はしばしば腕から手にかけてシビレが出ることがあります。こちらは詳しくは頚椎症の章を参照してください。

 

肩コリ以外にこのような症状がある場合は当該の病院の診察が必要になります。

 

<西洋医学的治療>

・湿布

・首の牽引→機械によって首を牽引し首の筋肉にストレッチをかけ、筋肉をほぐす

・低周波療法、温熱療法、マッサージなどの理学療法

・薬→筋肉弛緩剤、安定剤

・運動の指導

 

これらの治療が主な治療法になります。

基本的にはこわばっている筋肉をほぐすし、ストレッチして症状を緩和させるということになります。 短期間におきてしまった肩コリについては良い結果があります。

 

筋弛緩剤について考えてみたいとおもいます。

肩コリもひどくなると痛みになってしまうことがありますが、理学療法で改善しなかったり、理学療法の施設がなかったりする場合は、筋弛緩剤が処方させることがあります。

筋弛緩剤は 筋肉が緊張し痙攣状態になって痛みがある時に脊髄の神経を麻痺させることにより、筋肉のこわばりを取り去ります。  

 メリットとしては理学療法で改善しない、または理学療法する時間がない、運動する時間もない場合は、選択肢としては考えてもいいかもしれません。  

 デメリットとしては、薬で症状だけ緩和させて身体を動く状態にしてしまうことが身体にどのような影響を与えるか少々心配である。肩コリは原因があっての身体の反応です。原因を治療せずに神経の興奮だけを長期に抑えさせると身体がどのようになるか想像してみてください。

 

マッサージについて考える

上手なマッサージ治療には単に筋肉の緊張をとりやわらかくするだけではなく、神経の興奮を抑えたり、精神的なリラックス効果 が得られ自律神経のバランスをとったりすることができます。また多少の頚椎、肩関節の矯正効果 もあります。筋肉疲労の肩コリや短期間の肩コリには適応だと考えられます。ただし、リラクゼーションのみの慰安的なマッサージは長期にわたる効果 を望むことは難しいとおもいます。

注意することは、首を雑にマッサージされると症状が悪化したりすることもありますので、 事前に評判など調べて信用のできるところでのマッサージ治療を受ける必要があります。

 

運動について考える

単純な肩コリは筋肉が緊張してこわばってしまった状態ですから、自分自身で改善させる方法としては、ストレッチや軽めの運動がよいでしょう。

日常生活では意外と手や腕を頭から上に挙げるということがないとおもいませんか?パッと思いつくのは、つり革をにぎったり、洗濯物を干したりぐらいですね。手を上に挙げる動作は、硬くなっている肩の筋肉を動かす作用があります。筋肉を動かせば血管のポンプ作用もちゃんと働き血流もよくなります。血流がよくなればコリも解消するということです。

水泳、エアロビクスなどは自然に手を挙上でき適した運動です。

 

またその他には、枕の高さが合わないためやメガネ、コンタクトレンズの矯正視力が合わないためにおこる肩コリもあります。

 

以上がおおまかですが、西洋医学的な肩コリに対する診断から治療までの流れになります。

 

 

<中医学的な考え方>

中医学は少し慣れない考え方もありますので、先にポイントだけ説明いたします。

まず身体の中には「経絡」というスパイダーマンのコスチュームのように身体の臓腑から手足まで上下、内外をつなぐ気(見えない活力源)(栄養を含んだ血液)の通 り道があります。そして筋肉にもその経絡が影響をおよぼしていると考えます、これを「経筋」といいます。

 

そして健康な身体とは気と血そして水(身体を構成する水分全体)がバランスを保ち、スムーズに流れている状態であることです。気血水は食事で摂ったエネルギーを臓腑で消化、吸収して作られていきます。

健康でなくなるのは、さまざまな原因によってこのバランス、流れがくずれてしまった結果 といえます。

 

中医学では肩コリは肩が引きつれるとか肩がだるい、痛いと言います。これは、肩の経絡、経筋のところで気血の流れが悪くなったり、栄養不足になったりしたためひきつれたり、だるくなったり、ひどいと痛くなったりすると考えます。

 

<中医学的治療>

肩コリの人の中にも 筋肉質の人、痩せている人、冷え性の人、暑がりの人、ストレスを強く感じる人などいろいろなタイプがあり、ただ肩だけに針を刺せば治るというものではありません。確かに、肩に針をするだけでも対症療法的にある程度のコリは取れてしまいますが、やはり原因に対しての治療がないと、体質も変わらず、少し経つとまた強い肩コリに戻ってしまいます。

肩コリに対しても、しっかりした診断から治療を施しひどい肩コリにならない体質作りする治療が必要です。

 

では、肩コリがどのようなタイプに分かれるかを考えていきたいと思います。

 

肝気ウッ滞(気が滞ってしまう)、肝火

原因は緊張や精神的ストレス、怒りなどから気の流れが悪くなってしまったことによります。中医学の臓腑というのは西洋医学でいわれる臓器の機能とは異なるのですが、精神的なストレスなどは「肝」という臓腑に影響を与えます。肝の機能は気の流れをよくしたり、血を蔵したりしています。肝の機能が悪くなれば気の流れも悪くなり、それが滞ってくると燃えて火のようになってしまうのです。そうすると、血が熱せられて肩に充満してしまい肩コリになります。

 

その他の症状としてはイライラ、緊張、憂鬱、ため息がでる、脇が張って苦しい、目が充血などがあります。

 

針治療のときは、肩コリにはやはり肩のツボを取ります。そして、気が滞っていればその気の流れを良くするツボを使い、熱があれば熱を取り冷ますツボを使います。

 

自分でツボを押す場合は、肩以外では足と手のそれぞれ親指と人差し指(第1と第2指)の間の凹んだところをツーンと刺激がでるくらい押しましょう。

軽めの運動やラベンダーなどのアロマセラピーでリラックスさせるのも効果 的です。

 

血オ(血が滞ってしまう)

交通事故や打撲、ケガや手術などによって内出血をしてしまったり、肝気ウッ滞から血流の停滞をまねいてしまったりしたために肩に血オをおこし比較的強い肩コリになってしまう。

 

その他の症状としては 局所が硬い、肩にミミズのような血管拡張が見られたりする。

 

針治療のときは 血の流れを良くさせるツボを使います。

 

自分で肩以外を刺激したい場合は、腕から肘周囲や膝裏(委中穴)などを強めに刺激すると効果 てきです。

 

気虚(気が足りなくなった状態)

原因は疲労や生まれたときから虚弱体質、老化、慢性的な疾患などで気が不足したため、気が上昇できず、人体の上部の経絡、経筋が通 りにくく力不足となり肩コリがおこる。このような肩コリは自覚があるが、触ると柔らかくコリを触れない。

 

その他の症状としては元気がない、疲れやすい、立ちくらみなどがある。

 

針治療では元気を補うツボを使います。

 

気虚の人は朝鮮人参(なかなか食べれないですよね)、山芋、棗などを食べると気が補われます。棗は生姜と一緒に軟らかく煮てお粥などにすると食欲もでると思います。

 

血虚(血が足りなくなった状態)

出血、月経、出産、過労、慢性病などにより血が不足し経筋、筋肉に潤いや栄養がいかなくなり肩コリをおこす。   

 

その他の症状としては 顔色や皮膚にツヤがなくなる、筋肉がひきつる、頭がボーっとする。筋肉の栄養がなくなり筋肉がやせてきたりする。   

 

針治療では 血を補うツボを使います(養血)。   

 

比較的買いやすい食べ物にはクコの実があります。お茶のように煮だして飲んだり、お粥にして少量 の塩をパラッとかけて食べたりすると良いです。

 

陰虚陽亢(陰の力が弱くなり、相対的に陽の力が強くなった状態)   

老化、慢性病、熱病、多産、過度の性生活のどで水分質(精、血)が不足したため、つまり身体の中のクーラーが壊れてしまい、熱が発生してしまい、その熱が上昇して肩の血を充血させ流れが悪くなったため肩コリになる。   

 

その他の症状としては局所が硬く触れ、イライラ、のぼせ、寝汗、腰や膝がだるくなるなどがある。   

 

針治療では蛇口をひねり水分を補い、上がってしまった熱を引き戻すツボを使います。   

陰虚を改善させる食べ物はゴマ、黒豆、スッポンなどが効果的です。

 

風寒(冷たい風をあびる)

冷たい風を浴びてしまったり、汗をかいた後よく拭かず風を浴びて冷えてしまったりすると寒くて肩がすくんでしまうように、肩の経絡、経筋の気血の流れが悪くなり肩コリになります。   

 

その他の症状としては 寒気がしたり、風邪の症状がでたりします。一過性のものが多い。   

 

針治療では 身体から風を追い出したり、身体を温めたりするツボを使います。   

 

風寒の状態には葛根湯が有効です。生姜を使った食べ物も身体を温めるので良いでしょう。反対に身体を冷やす生物などは一時避けましょう。

 

殆どの場合、肩の周囲のツボは使っていくことになりますが、肩以外のツボはそれぞれのタイプにあったツボの選択が必要になります。

今まで針治療しても肩コリが治らなかったという人は、単純に肩だけに針治療をされたのかもしれません。

肩コリにしてもしっかりとした診断、治療が必要だということが理解していただける幸いです。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

尚、遠方の方で当院へ来院しての受診が出来ない方の中で家庭灸を行ってみたい方は、HP内の問診表のチェックを入れ送信して頂ければ灸点のポイントを指導させて頂きます。お気軽にご利用下さいませ。

2019/02/20
高血圧

医療機関で測定した血圧の分類では、最高血圧が140159mmHgまたは最低血圧が9099mmHgあるときに(軽症)高血圧とし、最高血圧が160170mmHgまたは、最低血圧が100109mmHgあるときに(中等症)高血圧とし、最高血圧が180mmHg以上または最低血圧が110mmHg以上あるときに(重症)高血圧と定めています。

 

血圧値が高血圧の数値でも、一回測っただけでは高血圧症とはいいません。同じ状態で何回も測って決まります。

 

 

高血圧症は原因が分かっているかどうかで大きく2つに分類されます●

 

血圧が高くなる明らかな原因が分からないものを本態性高血圧と呼び、高血圧症の患者の9095%を占めています。これに対して血圧が高くなる原因が明らかなものは二次性高血圧と呼ばれています。

本態性高血圧は明らかな原因は解っていませんが、遺伝的素因や加齢、食塩の過剰摂取、寒冷、肥満、ストレス、運動不足、喫煙などが影響して血圧を上昇させていると考えられています。そのため、高血圧症は生活習慣病の一つとして取り扱われています。

二次性高血圧には腎臓の働きが低下したものや、ホルモンの異常によっておこるもの、血管に病気があるもの、神経性のものなどがあります。

 

本態性高血圧症の自覚症状は、急激に血圧が変動したときに感じることが多いです。

高血圧症の多くを占める本態性高血圧の患者は、初期には自覚症状を訴えないのが普通 です。しかし、まったく自覚症状があらわれないのかといえば、そうではありません。たとえば、一時的ではありますが、急激に血圧が上がった場合に、頭重感、頭痛、めまい、肩こり、動悸、吐き気、手足のしびれ感、顔面 のほてり感などの自覚症状を訴えることがあります。

高血圧症では、合併症が大きな問題です。

高血圧症の状態が長くなると、徐々に血管障害が進行して、脳、心臓、腎臓などに高血圧症による臓器障害と呼ばれる合併症をひきおこします。この合併症が大きな問題です。

高血圧症によって脳の血管に障害がおこると、頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ感などの症状がでることがあります。さらに進行すると、意識障害や運動障害、脳梗塞を起こします。心臓では不整脈や心肥大、心不全、狭心症、心筋梗塞の原因にもなります。また、腎不全や尿毒症などの腎障害や、眼底出血の原因にもなります。

 

 

 

現代医学的診断・治療方法●

本態性高血圧症は様々な原因がからんで起こるので、問診や検査などによって、考えられる原因を絞り込み、生活習慣を改善した上で、その人に最もあう薬を併用しながら治療を行います。

どのような理由で血圧が高くなっているかによって、循環血液量を減らしたり、血管を拡張させたり、心臓の働きを抑えて、心臓からの血液の拍出量 を減らす薬を用います。

現在使われているのは、利尿剤や血管拡張剤、交感神経抑制剤、レニンアンギオテンシン酵素阻害剤です。

こうして高血圧と深い関係のある動脈硬化や糖尿病などを将来の病気に備えるのが、現代医学の考え方です。西洋薬は副作用などの懸念があるため、絶対的な満足感を得られる治療法にはなってないのが現状です。

 

 

中医学的診断・治療方法●

中医学では主に原因のはっきりしない本態性高血圧症に効果を発揮します。

高血圧症の患者さんは初期には特に症状が現れない人もいれば、自律神経失調による目眩、頭痛、肩こり、イライラ、不眠、動悸、気分の低落など多様な症状を示す患者さんもいます。多様な病態を示す高血圧症に対して、中医学では患者の主症状に注目し、その病機の分析に力を入れます。

中医学は、西洋薬のようには直接的血圧を下げる強力な治療薬はありませんが、患者さんの生体を全身的に調整・治療することによって多様な症状を一つ一つ消し去り、結果 的に血圧異常・代謝異常を改善することができます。

 

 

 

中医学的からだのしくみ●

中医学(中国医学)では人間の体を次のように考えています。人間の体は五臓六腑を中心に生命を維持する基本物質である気(エネルギー)・血(血液)・水(体液)が十分に生産され、この気・血・水が経絡という通 路を正常に流れて初めて人間の健康が維持できるという考え方にあります。

中医学による病気の治療とは、生命活動を維持する気・血・水のどこに問題があり、それが不足(虚)か有余(実)を判断します。そして五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎)のうちのどの臓腑が、この気・血・水の問題を作り出したかを診断をします。

五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎)は西洋医学と全く同じ役割分担ではありませんので混乱しないようご一読下さい。

 

 

 

高血圧症に重要なポイントとは?●

中医学的にみた高血圧症で重要な臓腑(肝・心・脾・肺・腎)は下記のようになります。

 

「肝」…長期的に精神的な緊張が続くため

 

肝のエネルギーが一箇所に停滞し、停滞し続けた肝のエネルギーは火(熱・興奮状態)に変化しやすく、病理的な肝風・肝火といわれる状態になります。肝風と肝火はいずれも肝のエネルギーが興奮した状態であり、上昇・炎上という動的な性質をもっています。その為に血圧の上昇を起こします。

 

 

「脾」…味の濃い食べ物や甘い物を好んで食べたり、過度の飲食不節制のため

 

飲食の不節制が続くと代謝しきらない余分な栄養素(痰濁)が体内に溜まってきます。

余分な栄養素は停滞すると熱に変化しやすくなる傾向があります。この余分な栄養素(痰濁)が上昇する性質をもつ肝の臓腑と一緒になると頭部を乱し(風痰上優といわれる)、血圧上昇、頭痛、めまいなどを引き起こします。また、痰濁は血流を妨げたり、血液のサラサラを低下させたりします。その為に血圧の上昇につながります。

 

 

「腎」…過労または加齢のため

 

腎精が不足すると肝の陰血も不足となり、肝腎不足という状態になります。肝の陰血が不足すると、相対的に肝陽が過剰となり、肝陽が上亢して清空を乱す結果 、血圧上昇、頭痛、めまいなどの症状がおこります。分かりやすく述べると興奮状態(肝陽上亢)、陰血不足は血液の粘着率が高い状態です。

 

上に述べた関連臓腑の中で中心的役割を果たすのが、「肝と腎」2つの臓腑のアンバランスな関係(陰陽失調)です。

 

 

 

中医学的高血圧症のタイプと治療法●

 

高い血圧を一時的に下げても、高血圧の原因・崩れた体質、病態がそのまま残るならば血圧は再び上昇する可能性があります。したがって高血圧症には根本的な治療が必要であり、中医学には次のような考えかたがあります。

 

1.肝火上炎タイプ

体を温めるエネルギーが過剰になりすぎて、体の上部にその熱が集まってしまう状態です。

 

主な症状

イライラする・怒りっぽい・頭痛(張った痛み)・赤ら顔・めまいなど

治療方法:

清瀉肝火

漢方薬:

竜胆瀉肝湯

 

2.肝陽上亢タイプ

肝火上炎タイプより、症状が複雑化したタイプです。

肝陰を損傷すると肝陽は陰の制約を失ってしまい、上下の陰陽が失調するタイプ。

ストレスなどで肝の働きが過剰となり、またそれを制するための肝の滋養が衰えているタイプ。滋養不足からめまい・ふらつき・耳鳴りなどが起こりやすい。

 

主な症状

めまい・耳鳴り・頭痛・偏頭痛など

治療方法:

平肝潜陽 (上がっている肝のエネルギーを下に下げる治療法)

 

滋補肝腎 (肝と腎のエネルギーバランスを補う治療法)

漢方薬:

天麻釣藤飲

 

 

3.肝風上擾証タイプ

このタイプは肝陽が上逆して肝風を生じたものです。

 

主な症状

めまい(倒れそうになる)・頭痛(張った痛みまたは激痛)

手足の痺れまたはふるえ・言語障害・歩行困難

治療方法:

平肝熄風(肝の機能亢進状態を改善し、めまい・痙攣など状態を改善する)

 

滋陰潜陽(体を潤しつつ、栄養分を補い上がっているエネルギーを下に下げる)

漢方薬:

鎮肝熄風湯

 

 

4.肝腎陰虚証タイプ

気持ちが鬱々とした状態が続くと肝火(肝の機能亢進状態)を動かし、陰液を消耗するタイプ。

 

主な症状

五心煩熱・健忘(物忘れ)・足腰のだるさ・盗汗(寝汗)・遺精

治療方法:

補益肝腎(人体に内在する抵抗力を強め、肝と腎の生理機能の回復を促進する)

漢方薬:

杞菊地黄丸

 

 

5.痰濁内阻証タイプ

脾のエネルギーが足りないために、食べたものが気や血に変わらず、余分な水分が体内に停滞しているタイプ。

 

主な症状

目眩・口が粘る・口が苦い・痰が多い・大小便がすっきり出ない

肥満体型・手足のしびれ

治療方法:

健脾化痰

(胃腸を調整し、体内に内在する不必要な物質を取り除く)

 

平肝熄風

(肝の機能亢進を改善し、めまい・筋肉の痙攣などを改善する)

漢方薬:

黄連温胆湯

 

 

6.気滞血お証タイプ

血の流れが滞ってしまうことにより、気の流れも渋滞を起こしてしまうタイプ。

 

主な症状

めまい・頭痛・固定痛・激痛がある

治療方法:

疏肝理気

(肝の疏泄失調と整え、気の流れを調整し、気の滞りを改善する)

 

活血養血

(血の流れを改善し、血の滞りを改善し、血の不足を補う)

漢方薬:

逍遥散

 

 

7.陰陽両虚証タイプ

陰と陽が両方とも衰えている状態で、大病後の回復期あるいは慢性病の末期などに現れるしまうタイプです。

 

主な症状

目眩・耳鳴り・動悸・息切れ・不眠または夢を多く見る・足腰がだるい・手足の冷え・夜間尿が多い

治療方法:

調補陰陽(エネルギーを陽気といい、それを補給する物質を陰分といいます。この2つをバランスよく調整する)

漢方薬:

二仙湯

 

 

高血圧の食養生と生活養生とは?●

 

ドクダミ茶

乾燥したドクダミの葉25gを600lの水で半量になるまで煎じて1日3回に分けて飲みます。

 

杜仲茶

中国原産のトチュウには、利尿などの作用があります。市販の葉510gを600lの水で煎じ、1日3回に分けて飲みます。

 

決明子茶

便秘傾向の強い高血圧の方に向いています。血圧を下げる作用と便秘(コロコロ便)を改善します。

 

釣藤鈎(ちょうとうこう)

カキカズラのとう(生薬のちょうとうこう)510gを煎じて1日3、4回飲みます。特に動脈硬化性の高血圧に効果 があるとされます。

 

菊花茶

のぼせ、火照り感のある高血圧により、血圧を下げる作用とのぼせ、火照りの改善になります。

 

 

青菜の効用

まず、食用にできる青菜や野草の葉を~6種類用意し、よく水洗いして細かく刻みます。

それをすり鉢ですりつぶし、すりこぎでつくと青汁が取れます。これをなるべく多量 に(目安は90lずつ)123回飲むとよいとされています。

野菜や草木の緑の葉には、多くのビタミン、ミネラル、をはじめ、酵素や植物性ホルモンなどが含まれています。これが、健康的な血液を作るのに役立ち、血圧の安定につながる青汁の効用です。

 

入手しやすい青汁の材料…ほうれん草・小松菜・大根の葉・シソ・ヨモギ・柿の葉など

 

 

クエン酸の効用

クエン酸は食酢や梅干し、柑橘類などに含まれる酸味成分です。クエン酸は現代医学でも体内の細胞のエネルギー代謝を活発にすることが分かっています。血圧には、全身の細胞の代謝が良くなり、心臓や血管の負担が軽減すると考えることができます。

梅肉エキス…5g程度を1日3回に分けて取るとよい。

酢…50g程度を1日3回に分け、水などで薄めて飲用するのが目安。

 

日常生活の改善ポイントとして、

血管収縮作用を引き起こす喫煙を控える。

精神的ストレスを解消するために趣味を持つ。

ウォーキングやストレッチなどの適度な運動を習慣づけて、新陳代謝を活発にし、肥満を解消する。

食べ過ぎによるカロリー過剰を避ける。

動物性脂肪を控えめにし、ビタミンなどのミネラルや食物繊維を取り入れることが大切です。

 

中でも特に気をつけたいのが、食生活です。

 

カツオやマグロ、イワシ、サバなどの青魚には、血液をサラサラにするDHAや、EPAなどの不飽和脂肪酸が含まれており、滞った血液の流れを促進する働きがあります。

 

また、コレステロールを下げて、血栓を予防するタマネギ、血圧を緩和し、末梢循環を促進させて動脈硬化を予防するニンニク、不足しがちなミネラルが豊富な、ワカメや昆布などの海藻類を取るようにしましょう。

 

他に血液を増やす食材に、

ほうれん草やニンジンなどの緑黄色野菜、アサリやシジミなどの貝類、レバー、鶏肉、黒豆、くるみなどがあります。

 

なお、血をめぐらせる作用にすぐれた中成薬に、

「丹参(たんじん)」という生薬を配合したものがあります。

「丹参」には、

血管を拡張して血流を増やす作用

血圧降下作用

血栓抑制作用

血液粘度を下げる作用

血管を若々しく保つ作用

血小板の凝集を抑制する作用

抗酸化作用

などがあることが分かっていて、中国でもお年寄りの病気予防や治療に広く用いられています。

 

日本では、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」という名前で市販されている中成薬があります。血の汚れが悪くなると起こる、頭痛、肩こり、関節痛などの痛みに即効性があります。

また、毎日、服用を続けていると心臓病や脳卒中、認知症の防止にも効果 的です。

 

高血圧ひとつ取り上げても様々なタイプがあることがお分かり頂けたでしょうか?

当治療院は、お一人お一人の症状に合った治療法を取り、漢方、食生活などをアドバイスさせて頂きます。

お気軽に当院までご相談下さいませ。

2019/02/20
坐骨神経痛

腰から足にかけての「痛み」、「しびれ」、「圧痛」。このような症状は、年齢を重ねるにつれて 多くの方が経験しているのではないでしょうか。もちろん若いかたでも経験している方は、 いらっしゃると思います。

今回は、整形外科疾患の一つである坐骨神経痛について、述べていきたいと思います。

 

 

現代医学的な坐骨神経痛の捉え方●

 

まずは現代医学的に坐骨神経痛を捉えていきたいと思います。

 

坐骨神経は腰から骨盤、大腿後面を下り、足先にまで伸びている末梢神経のひとつです。 人体の中で最も太い神経で、比較的皮膚に近い位置にあります。

 

この神経に何らかの外的要因が加わることで、神経に沿った痛みやしびれが誘発されます。

このような症候を総称して坐骨神経痛と言います。

また、坐骨神経痛の症状としてはこの他にも、神経に沿った圧痛、神経障害の徴候として、 筋力低下や筋萎縮、知覚障害なども認められることがあります。

 

坐骨神経痛の原因には主に神経根の圧迫と、梨状筋の過緊張による神経の圧迫が考えられます。

 

神経根の圧迫

 

神経根の圧迫による坐骨神経痛には、具体的な原因として、以下の疾患が挙げられます。

椎間板ヘルニア

変形性脊椎症

脊椎すべり症

 

 

梨状筋の過緊張

 

梨状筋は仙骨から大腿骨に付着している筋肉で、坐骨神経はこの梨状筋の下縁もしくは筋中を通 り、下肢へ続いています。この梨状筋が過緊張を起すことで、坐骨神経を絞扼し、痛みやしびれが誘発されることがあります。

 

これらの治療には、基本的には保存的治療が行われます。

硬いマットレスを用いたベッドでの数週間の安静と、痛みと炎症を軽減するための薬剤だけで 回復することもあります。器質的な問題の場合は、外科手術が行われることがあります。

 

薬剤については、痛みの程度に応じて鎮痛剤が処方されることがあります。

神経根圧迫に伴うものについては、非ステロイド系抗炎症剤が処方されることもあります。

また、ここでは詳しくは触れませんが、運動療法や温熱療法によって改善はかる場合もあります。

 

 

 

中医学的な坐骨神経痛の捉え方●

 

では次に、中医学的に坐骨神経痛を捉えていきたいと思います。

 

中医学では、筋、骨、関節の疼痛、腫脹、しびれを主症状とする病症を“痺証”と呼びます。

坐骨神経痛もこの“痺証”に分類されます。生体エネルギーが消耗している状態で、 風邪・寒邪・湿邪が体内に侵入して、四肢の経絡の気血運行を阻滞することで”痺証”となります。

 

風邪・寒邪・湿邪は、総括して外邪と呼ばれ、人体に外を及ぼす気候的変化のことを言います。

例えば、冬などのとても寒い日に腰が痛みだす、といったことは、中医学的には外邪が人体に 侵襲して発病したと考えられます。

 

このことから、多くの場合“痺証”は、季節の状態に左右されやすい傾向があると言えます。

つまり、基本的には、体質と季節を総合的に考えた養生も、治療に重要なエッセンスに なると考えられます。

 

それでは次に痺証の証タイプについて述べていきます。

痺証は風邪・寒邪・湿邪の強さや経過によって異なったタイプの症状が現れます。

これらのタイプには主に4つのタイプがあり、行痺、痛痺、着痺、熱痺と呼ばれます。

 

行痺

行痺は、3つの外邪の中で主に風邪が旺盛の場合にみられる痺証です。  

風邪は、他の病邪と結合して人体に病を引き起すことが多い外邪で、特徴としては、 症状の移り変わりが早いという特徴を持っています。  

具体的な症状としては、痛みの箇所が一定ではなく、寒さを感じる風にあたると症状が悪化したり、  脈浮または脈弦緩がみられる場合などは、行痺が疑われます。 治療には、風邪を抜きさる治療を主として、寒邪、湿邪に対しても治療ができる配穴が必要です。  

また、体質的に影響を受けやすい状態の場合は、臓腑に対してもエネルギーの底上げが必要と考えます。

特に風邪の場合、肝の臓を健康にすることで、風邪に対する耐性を強くすることができます。

 

痛痺

痛痺は、3つの外邪の中で主に寒邪が旺盛の場合にみられる痺証です。  

寒邪は、体を冷やし、免疫力を低下させる作用をもった外邪です。  

具体的な症状としては、疼痛部位が固定であり、冷えにより症状は悪化し、逆に温めることで症状は  緩和します。また、疼痛部に触ってみても熱感はありません。 この痛痺は、気温が急激に低くなる場合に発症しやすい傾向があります。秋から冬にかけて、急に気温が下がる日や、夏でもクーラーに長時間あたっている場合は危険信号となります。  

治療には、温熱療法や、体質的に寒さに対する耐性を強くする配穴が必要となります。

 

着痺

着痺は3つの外邪の中で主に湿邪が旺盛の場合に見られる痺証です。  

湿邪は、体を重だるく感じさせたり、代謝を妨げる作用を持った外邪です。  

具体的な症状としては、関節局部の重だるさ、痛みの部位は固定であり、雨天の場合に症状が  増悪することがあり、このような場合は着痺が疑われます。梅雨時期などは要注意となります。  

治療には、湿邪を除去する配穴が必要です。また、湿邪は脾の臓を侵襲しやすい外邪です。  

逆に言えば、脾の臓を健康にすることにより、臓腑生理の面から湿邪の除去を手助けすることも可能となります。

 

熱痺

熱痺は、風邪、寒邪、湿邪の外邪が従陽によって化熱することで現れる証です。  

従陽とは、従化という病理的な変化のタイプのひとつであり、寒がりや暑がり、水分代謝に異常がある場合、元気の出ない場合などの体質に上に、外邪が慢性化することで、風邪、寒邪、湿邪が化熱してしまうことを意味します。  

そのため、この証タイプでは、関節部の発赤・腫脹・疼痛、灼熱感がみられ、冷やすことで症状が軽減するといった傾向がみられます。また、口渇や煩悶、脈は数脈といった症状を伴うこともあります。  

この証タイプの場合、清熱、つまりは体内にこもった熱を分散させる配穴を主として、熱に至った原因となる体質改善の配穴も必要となります。

 

 

いかがでしょうか?

中医学的な坐骨神経痛に関しての考え、ご理解頂けましたでしょうか。

 

つまり、中医学的な考えでは、本質的なお手当が大切であり、単に筋肉をほぐす、あるいは牽引などで腰椎を引っぱるといった一時的な手当てだけではなく、気候の変化による体への負担にも注意をはらい、手当てをしていくのが中医学的治療であるとご理解いただけると幸いです。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

当院は予約制となります

  • まずはお電話でご相談ください。

  • 0088-221818

予約受付・診療時間

9:00~
11:30
13:00まで 11:40まで
14:00~
16:00

16:40まで

※ 火曜日・水曜日・木曜日が祝祭日の場合は午前診療となります。
※ 当院は予約制です。

アクセス

〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1丁目17-10

院内の様子