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- 2019/03/12
- 【外科・整形外科・皮膚科疾患】腰痛について1
鍼治療と言えば、肩こり、腰痛と思われる方も多いとおもいます。しかし、腰痛に鍼治療と言ってもギックリ腰や普通 の腰痛、神経痛のあるもの、内蔵からくるものなどあり、ただ腰の痛いところだけに鍼を打てば治るというものではありません。やはり、その腰痛の種類、患者さんの体質にあった鍼治療をしなくては治るものも治らなくなってしまいます。
西洋医学的アプローチ、東洋医学的アプローチ、家庭でのツボ刺激方法と考えていきましょう。
<西洋医学的診断と治療>
簡単にではありますが、腰痛の診断方法、一般的な治療方法をお話させていただきます。
1.急性の腰痛 |
→ |
安静にしていても痛む |
― |
腫瘍、強い炎症性、内臓性の腰痛 |
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→ |
安静で改善する |
― |
ギックリ腰、圧迫骨折(高齢者) |
2.一般 の腰痛 |
→ |
起床直後、夕方や疲労時に痛む |
― |
変形性脊椎症、分離すべり症 |
(慢性) |
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脊柱管狭窄症 |
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→ |
中腰で痛む、座位 から立位で痛む |
― |
筋肉性(筋・筋膜性)腰痛 |
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→ |
場所が一定しない |
― |
心因性腰痛 |
3.神経症状(足の痺れ) |
→ |
ある |
― |
ヘルニア、分離すべり症、変形性脊椎症 |
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→ |
ない |
― |
筋肉性(筋・筋膜性)腰痛 |
4.つらい動作 |
→ |
前屈がつらい |
― |
ヘルニア、変形性脊椎症、筋肉性腰痛 |
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→ |
後屈がつらい |
― |
分離すべり症、椎間関節性腰痛 |
※ 椎間板とは腰椎の間に挟まれている弾力性のある組織です。クッションの役目をしています。お饅頭のように中に餡のような組織があって、その中の餡が飛び出してしまった状態をヘルニアといいます。飛び出したものが神経を圧迫すると足が痺れたりする症状がでます。
※ 注意をしなくてはいけない腰痛――海老のように丸くなっていてもどんどん痛みが増す場合や、おしっこが出にくくなってしまうときは直ぐに病院に行きましょう。
○治療方針 |
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急性の腰痛 ― |
臥床、安静(湿布など)、神経ブロックをする場合もある おしっこが出にくくなる(排尿障害)ヘルニアでは手術もある |
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一般の腰痛 ― |
湿布、牽引、温熱、マッサージなどの理学療法が主体になる |
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内臓性の腰痛 ― |
問題となる内科の治療 |
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心因性の腰痛 ― |
ストレスなどを解消する。場合によっては安定剤を使用する |
<中医学的診断と治療方法>
中医学では痛みに対する考え方に「不通則痛(通らぬもの則ち痛む)」と「不栄則痛(栄えぬ もの則ち痛む)」がある。つまり、気血の流れている経絡の流れが悪くなったり、気血が足りなくなったりすると痛みが出現するということです。腰痛においては腰の経絡が滞ってしまったり、腰に関係している臓腑の力が弱り気血が足りなくなったりして症状として出てきます。
※ 経絡とは、全身に気や血をいきわたらせ、臓腑と手足をつなぎ、身体の上下左右をめぐる通 路のようなものです。
治療では滞った経絡のながれをよくして、足りなくなった気血を補っていきます。
ギックリ腰には経絡の流れを利用した経験穴があります。
ポイント:関係の深い経絡、臓腑 |
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腰を通 る経絡 |
― |
足の太陽膀胱経 |
… |
腰の盛り上がった筋肉のあたりを通 る |
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― |
督脈 |
… |
腰の真中を縦に通る |
腰と関係する臓腑 |
― |
腎「腰為腎之府」 |
… |
腰は腎の重要な建物という意味 |
○ ギックリ腰(急性の腰痛)の原因と治療
物を持ち上げた時に激痛が走る、振り向いたときに痛むなどの腰痛(脚の痺れがある場合はヘルニアの疑い)
中医学的には、寒さや、ストレス、疲労などで経絡の気血の流れが悪くなっているところに、急激な動きによって、経絡や経筋(経筋…経絡の気血によって滋養されている筋肉)が障害をうけて発症する。治療は関係する経絡上の経験穴を主体に使う。
痛みが真中(正中線上)にある ―督 脈― 人中(鼻と上唇の間のツボ)を使う
痛みが真中より少し脇にある ―膀胱経― サン竹(眉毛の内側)を使う
ポイント:ギックリ腰の鍼治療の注意。ギックリ腰になると動くのがとても大変です。うっかりベッドに横になると立てなくなってしまうこともあります。治療の時には、まず腕の反射区に鍼を打ち、少し動ける様になってからベッドに寝てもらいます。このような治療方法を微鍼治療といいます。詳しくは「鍼灸治療体験談」のギックリ腰のページをご覧になってください。
○ 一般的な腰痛の原因と治療
腰痛の場合、中医学では主に3つのタイプに分かれます。
1.寒湿タイプ腰痛 |
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原因: |
たくさん汗をかいた後冷やしたり、冷たい風をあびたり、長期にわたり湿度の高いところに居たり、雨に濡れてしまったりして、寒湿の邪気が腰部の経絡を侵して気血のながれが悪くなってしまったため。 |
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症状: |
腰に鈍痛がある。強張って横になりにくい。臀部、股関節、膝まで痛む。腰が冷たくなっている。雨が降っている日に悪化するなどの特徴が現れる |
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治療: |
寒湿タイプの場合は、寒邪を追い出し、湿邪を流してあげる治療をおこなう。温めることも大事である。(去湿散寒) |
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ツボ ―腎兪、委中、腰陽関など |
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漢方薬―甘姜苓朮湯加味 |
ポイント: |
寒の邪気の性質 |
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●凝結 ― |
滞って通じない性質を持つ。 気血の流れを滞らせて痛みを発生させる。 |
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●収引 ― |
収縮して、牽引する性質をもつ。 経絡、筋などを収縮して引きつらせてしまう。 |
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湿の邪気の性質 |
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●重濁 ― |
重く濁らせたり、陽気を抑える性質をもつ。 だるく重い疲労感。 |
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●下に向かう― |
下向し易く、下半身に症状が出ることが多い。 |
2.オ血タイプ腰痛(血の流れが滞ってしまった状態をオ血という) |
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原因: |
過去に何度も腰を痛めていたり、常に中腰姿勢で腰に負担をかけていると腰の経絡の気血の流れが滞ってしまう状態になる。 |
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症状: |
刺すような痛みの腰痛、固定して動かない痛み、日中よりも夜が痛む、寝返りもつらいくてしにくい、膝裏のくぼんだ所に静脈が浮いて青くなっているなどの症状。 |
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治療: |
堰きとめてある川を流してあげるように、気血の流れをよくする治療をおこなう(活血化オ)。 |
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ツボ ―腎兪、委中、膈兪、三陰交など |
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漢方薬―身痛逐オ湯 |
腎虚腰痛 |
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原因: |
加齢や長期の病気、または性交過多などにより腎の気を損傷してエネルギー不足になってしまったためにおこる。 腎為腰之府ともいい、腎と腰の関係は深い。 |
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症状: |
痛みは比較的ゆっくり出てきて、痛みは強くはないがなかなかよくならない。身体も疲れやすく、膝に力が入れにくいなどの症状。 |
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治療: |
腎の気のエネルギー不足なので腎の気を補う治療をおこなう(補益腎精)。 |
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ツボ ―腎兪、委中、志室、太渓など |
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漢方薬―腎陽虚(手足が冷えたりする)―腎帰丸 腎陰虚(咽が渇いたりする) ―六味丸 |
ポイント:心因性の腰痛―はっきりとした腰痛の原因がなく、痛む場所がころころ変わってしまう場合は心因性の腰痛も考慮する。ストレスを抱えていたり、神経質な人の場合、通 常の痛みより強く感じてしまうこともある。ストレスが肝の、精神活動は心の機能を低下させ、気と血の動きを悪くして経絡の流れを更に悪くしてしまうため。腰痛の治療と同じに、神経的な治療も必要。
<日常生活での注意> |
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・ |
身体を冷やさないように…夏はエアコンや汗をかいた後にも注意。 |
・ |
適度な運動…腰痛のない時には運動して、経絡のながれをよくしておきましょう。 |
・ |
姿勢に気をつけましょう…斜めに座ったり、長時間のあぐらは腰によくありません。 |
・ |
ギックリ腰は安静に…軽い腰痛は動いて経絡の流れや血流をよくしてあげれば、よくなることもありますが、ギックリ腰は無理に動くと更に悪くなりますので基本的に安静にします。 (海老のように丸くなる体勢が一番負担がかかりません) |
<家庭でできること> |
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○ |
委中のマッサージ―腰部を通る膀胱経の委中は腰痛の治療の重要なツボです。膝の裏のくぼんだ所にあります。親指で3秒かけて押して、3秒とめて、3秒かけて離します。 委中からふくらはぎを外踝の方に指圧マッサージしていっても効果 的です。 |
○ |
ヨモギ湯―冷えがあったりする場合は、ヨモギの葉を乾燥させてお湯の中に入れ、その湯の中に入って身体を温めます。(寒湿腰痛に効果 ) |
<鍼治療について>
このように腰痛でもいろいろな原因、治療があります。また、ストレスで強張り+冷えて寒湿腰痛や、オ血腰痛+腎虚腰痛など実際には混ざって発症したりしています。そのため腰痛といえどもしっかりとした診断、ツボ選びが必要になります。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/03/12
- 【外科・整形外科・皮膚科疾患】腰痛について2
お年寄りの方も、若年の方も、「腰痛」で悩まれている方は多いのではないでしょうか。
人間が二足歩行である以上、腰に負担をかけることは、避けては通れない道なのかもしれません。
「腰痛」は、No.14で取り上げられた疾患ではありますが、今回は中医学的な観点で、さらに詳しく 腰痛を述べていきたいと思います。
ただし、内臓疾患の反射痛が原因の腰痛については、ここでは割愛させていただきます。
予めご了承ください。
<体内を構成する物質「気」「血」「津液」>
「病気別“わかる”東洋医学診断」の熱心な読者の方は、もうご存知かもしれませんが、人体は、 「気」「血」「津液」の3つの「物質」により成り立っています。
気(き) → 生体の原動力
血(けつ) → 体内組織への栄養源
津液(しんえき) → 体内組織の必要な水分
これらの「物質」が失調することで、体内のバランスが崩れ、限界点(人それぞれ異なります)に 達したところで、様々な症状として現れます。
<気血津液の失調>
これらの物質の失調は、必ずしも目に見えるものではなく、現代医学の検査における数値にも現れることはありません。しかし、これらの物質は、中国の伝統医学において、帰納的な裏付けのもとで、確実に存在していると位 置付けられてきたものです。
ですから、検査の結果、数値には異常がないのに体の状態がおかしいといった場合にも、処置や予防をすることができるのです。
腰痛についても、これらの物質の失調は、大きく関係してきます。
◇腰部における気血の運行障害によるもの
中医学では、「不通則痛」という言葉があり、これは気血の流れがスムーズに流れない状態であると、痛みを感じるというものです。
腰痛においても気血の運行障害により、痛みを誘発します。
◇気血が不足し腰部の滋養不足によるもの
気血が不足すると、筋骨を栄養できず、時に痛みとして現れます。
特に、中医学では、「腰部は腎の腑」と言われ、腰痛と腎には大きな関わりがあります。
<腰痛の原因>
では、気血の失調はどのようにして起こるのでしょう。中医学的な観点で原因を述べていきます。
◇外傷によるもの
・重いものを持った時の急性腰痛
・激しい運動をしている時に起きた急性腰痛
・事故の後遺症
これらは物理的な「外傷」が原因と言えるでしょう。「外傷」では、筋骨の損傷に加え、血の滞った状態である「お血」を誘発することが多々あります。
[症状] |
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・ |
腰部の刺痛、固定痛 |
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腰部の経脈に血が停滞することで、気血の運行が悪くなり痛みとして現れます。 |
・ |
夜間に痛みが増悪 |
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夜間は陽が弱まり、気の流れが悪くなります。そのため、血の運行も悪くなり痛みが増悪します。 |
・ |
局部の血腫 |
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お血が停滞しているために、血腫として見えることがあります。 |
◇六淫(ろくいん)によるもの
「六淫」は、気候の異常であり、「風」「湿」「暑」「熱」「燥」「寒」という6種類の気候異常を言います。簡単に言ってしまえば、「湿度」と「温度」の著しい変化と言えるでしょう。
気候の著しい変化によって、その変化に体が対応しきれない場合に、腰痛が現れることがあります。例えば、梅雨時期に腰痛をぶり返すと言ったことは、 「湿」という「六淫」の一つが原因と考えられます。
腰痛では、特に「寒湿」と「湿熱」が関係しやすいと考えられています。
―寒湿―
冷気と湿気の多い環境で生活や仕事をしたり、梅雨時期で気温が低い時に関係しやすい「六淫」です。また他にも、運動で汗をかいて、それを長時間拭かずにいたりしても、「寒湿」による腰痛になることがあります。
[症状] |
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・ |
腰部が重だるく冷えて痛む |
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湿邪は重濁の性質、寒邪は冷えの性質を持つため、このように痛みます。 |
・ |
雨天や寒冷時に増悪 |
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寒湿の邪が亢進するために、症状が増悪します。 |
・ |
温めると症状が軽減 |
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温めると寒邪が弱まるため、症状が軽減します。 |
―湿熱―
甘味、辛味のものを多く摂取し続けたり、梅雨時期で気温が高い時に関係する「六淫」です。さきほどは、「六淫」は、著しい気候の変化と述べましたが、摂取する食物によっても、「六淫」から受けた影響と同じような体内の状態を作り出すことがあります。
甘味、辛味のものを摂取しすぎると、体内に「湿」と「熱」が生じることがあり、これらが腰痛の原因となることもあるのです。
[症状] |
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・ |
腰部が重だるく、熱感をもって痛む |
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湿邪は重濁の性質、熱邪は熱の性質を持つため、このように痛みます。 |
・ |
甘味、辛味のものの摂取で増悪 |
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湿熱の邪が亢進するために、症状が増悪します。 |
・ |
雨天や加温時に増悪 |
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これも、湿熱の邪が亢進するために、症状が増悪します。 |
・ |
冷やすと症状が軽減 |
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冷やすと、熱邪が弱まるため、症状が軽減します。 |
◇腎虚によるもの
腎は、元々人が生まれ持った気(先天の気)を蓄えている臓器です。
これを中医学では「腎気」と言い、人の成長や発育に関係しているとされています。
逆に捉えれば、加齢に対しても大きく関係していると言えます。
そのため、歳を重ねるごとに「腎気」は減ってゆき、これにより腰部の滋養が不足し、腰痛として現れることがあります。
特に外傷の既往もないのに、年々重だるい腰痛を覚えるといった場合は、この「腎気」の不足である 「腎虚」による腰痛が疑われます。
「腎気」は、「腎陰」と「腎陽」という二つを基礎物質としています。
この「腎陰」と「腎陽」のどちらかが失調することで、「腎虚」となり、腰痛が現れることがあります。
-腎陽虚-
[症状] |
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・ |
腰部の冷えや冷痛、寒がり |
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腎陽(体内の温める作用)が、弱まることで、体内は冷えやすくなります。 腰部に冷痛は「腎の腑」である腰を温煦できずに気血の流れが悪くなるためです。 |
・ |
腰や膝の無力感 |
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「腎の腑」である腰を、栄養できないためです。 |
・ |
疲労による増悪 |
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疲労により、気がさらに損なわれると、腎陽虚が発展するためです。 |
・ |
腰部を揉み温めると軽減 |
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揉んで温めると、局部の陽気が通り、気血の運行が一時的に改善されるためです。 |
-腎陰虚-
[症状] |
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・ |
発育障害 |
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腎陰虚に到る前提として、発育に関わる「腎精」の不足がみられます。 そのため、発育が遅く体が小さい、若くして性機能の減退、老化が早い、といった発育に関わる障害が見られることがあります。 |
・ |
足腰がだるく痛む |
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腎精が不足して「腎の腑」である腰を、栄養できないためです。 |
・ |
五心煩熱 |
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五心煩熱(手足の裏、胸中が熱く感じるといった症状)は、「腎精」の不足が発展して、「陰液(体内の熱を調節し潤す物質)」が不足するために起こります。 |
・ |
盗汗 |
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夜半になると体内の陽気が相対的に亢進しますが、陰液不足により、その熱を調節できずに、自然と発汗してしまいます。 |
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※夜半だとしても室温が高いなどの環境による発汗は盗汗ではありません。 |
<腰痛の治療>
治療については、先ほど述べた原因ごとに異なります。
ここでは、治療原則とそれに対する主要配穴(圧痛点以外)について、述べていきます。
◇遠導刺による痛みの緩和
経絡に気血が疏滞して痛みを誘発している場合、圧痛点以外にも、遠導刺によって痛みを緩和することができます。
遠導刺とは、患部から遠く離れた同一経絡上の部位に取穴することで、患部を治療するという治療方法です。
この遠導刺による治療をするためには、まず、どの経絡に痛みがあるのかを判断する必要があります。
膀胱経 → 脊柱の両サイド、もしくは片サイドが痛む場合
督脈 → 脊柱ラインが痛む場合
痛みの関係する経絡を特定した上で、同一経絡上に取穴し、鍼治療を施すことで、気血の疏滞を取り除き、痛みを緩和することができます。
◇外傷による腰痛の治療
[治則]
止痛化お・・・お血を除去して、痛みを緩和する治療
活血行気・・・血液循環を良くし、気のめぐりも改善する治療
[配穴]
委中、気海、血海
◇寒湿による腰痛の治療
[治則]
散寒除湿・・・寒邪、湿邪を取り除く治療
通絡止痛・・・経絡に疏帯した気血の流れをよくして、痛みを緩和する治療
[配穴]
腰陽関、大椎、委中
◇湿熱による腰痛の治療
[治則]
清熱除湿・・・熱邪、湿邪を取り除く治療
通絡止痛・・・経絡に疏帯した気血の流れをよくして、痛みを緩和する治療
[配穴]
陰陵泉、委中、足三里、中かん
◇腎陽虚による腰痛の治療
[治則]
温補腎陽・・・腎陽を補い、さらに腎陽の温める作用を高める治療
強腰止痛・・・腎陽を強化し、腰部を滋養する作用を高める治療
[配穴]
命門、腎兪、太谿
◇腎陰虚による腰痛の治療
[治則]
滋補腎陰・・・腎陰を補い、体内の熱を抑え潤す作用を高める治療
補益精気・・・腎精を補い、先天的な滋養不足を軽減する治療
[配穴]
復溜、太谿、腎兪
いかがでしょう?
中医学における腰痛の治療は、ご理解いただけましたでしょうか?
腰痛というと、腰部の骨や筋肉などの物理的な外傷をイメージしがちですが、中医学では、気候や生活環境、体質も含めた上で、腰痛の原因を捉えて治療をしていきます。
腰痛の発症時期が偏っている方、慢性的な腰痛を持つ方は、一度、このような視点で腰痛のお手当てをしてみるのも良いかと思います。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/03/12
- 【外科・整形外科・皮膚科疾患】脱肛について
みなさんは、脱肛(だっこう)という病気はご存知でしょうか?
一般的にはよく知らない方が多い病気だと思います。しかし、これは決してめずらしい病気だからというわけではないようです。脱肛は、肛門、直腸の病気です。だからこそ、なかなか人に相談しにくくあまり知られていないのではないでしょうか。
今回は、脱肛という病気について述べていきたいと思います。
●現代医学的な脱肛の捉え方●
まずは現代医学的に脱肛を捉えていきたいと思います。
脱肛を簡単に言ってしまえば、痔が進行した状態ということになります。
ですので、まずは痔について少し述べていきます。
痔とは、肛門周囲における病気の総称で、大きく分けて、痔核(イボ痔)、切れ痔、痔ろうの 3つのタイプがあります。この中でもっとも多いのが痔核であり、痔の半数以上は痔核であると言われています。
痔核は、肛門の静脈がうっ血して起こるもので、肛門の内側にできるものを内痔核、外側にできるものを 外痔核といいます。
内痔核は、痛みはありませんが、残便感や出血が認められることがあります。この症状が進むにつれて 排便時に内痔核が肛門の外へ出るようになってきます。外へ出た内痔核は、始めのうちは自然に肛門の中へ戻りますが、次第に手で押し込まないと戻らなくなってきます。さらに、症状が進行すると常に内痔核が 肛門の外へ出ている状態となります。
このように肛門の外に内痔核が出てしまっている状態を脱肛と言います。
症状は、進行の度合いにより違ってきますが、痔核がこすれて異物感を感じたり、痔核から出血したり、 粘液で下着が汚れたり、痛みを感じることもあります。
脱肛は生命に関わる病気ではありませんが、陰部の病気であることから、とくに女性では悩まれる方も 多い病気です。
脱肛の原因はさまざまですが、以下のような場合に起こりやすいとされています。
・便秘が常習化している
・排便時の力み
・出産時の力み
・力仕事
・過度の飲酒
治療は、脱肛の進行状態によって異なります。
完全な脱肛ではなく、進行が軽ければ、生活習慣の改善と、座薬や軟膏を併用すれば治ります。
しかし、完全に脱肛になってしまうと、薬剤や生活習慣の改善だけでは、治療することができないため、 手術の必要があります。
●中医学的な脱肛の捉え方●
では次に、中医学的にみた脱肛を述べていきたいと思います。
中医学的にみた脱肛では、虚証によるものと、実証によるものに分類されます。
◇虚証による脱肛
虚証とは、体内の臓腑の機能が低下していることが原因で、疾病となるものをさします。
脱肛の場合、主に脾の臓の機能低下が原因となる場合が多いとされています。
これは、中医学では、脾の臓が昇挙の機能をもち、臓器の位置が下がらないよう保っていると 考えられているためです。このため、長期間の消化器疾患を持つ方は、虚証による脱肛を患う可能性が 高いと言えます。
脾の臓の疾患であることから、随伴症状としては他にも、次の症状がみられることがあります。
・慢性的な倦怠感
・下痢 ・顔が黄色い
・腹部の張り
・女性の場合、子宮下垂や子宮脱
治療は主に、原因となっている脾の機能を高めることを目的とした配穴を処方します。
また、慢性的な疾患であることから、日々の食養生も大切です。
以下の食材は、脾の機能を高めるとともに、脱肛を改善する力が高い食材です。
・白きくらげ
・なつめ
・もち米
・鶏肉
◇実証による脱肛
実証は、虚証とはことなり、原因が外的要因によるものが疾患の原因となるものをさします。
脱肛の場合、長期間の便秘による力み過ぎや、痔疾患の急性期による局部の腫脹が原因で、 肛門の拘束機能が果たせなくなった場合が、実証に分類されます。
実証における脱肛では、局部の発赤や腫脹、激しい痛みや痒み、時には発熱をすることもあります。
治療は主に、体内に熱を生み出しやすいことから、体内の熱を取り除く配穴を処方していきます。
また、食養生でも体内の熱を取り除くことはできます。
以下の食材は、体内の熱を取り除くために効果的な食材です。
・せり
・うずらの卵
・昆布
便秘痔の力みが原因の場合は、以下の食材が便秘改善に適しています。
・ごぼう
・さつまいも
・くらげ
・はちみつ
いかがでしょうか?
中医学的な脱肛に関しての考え、ご理解頂けましたでしょうか。
中医学的な観点では、見た目に現れる外科的な疾患であっても、決して外科手術だけが、 手当ての手段というわけではありません。原因によっては、臓腑生理の視点からお手当て していくことで、根本的な治療につながると考えるのが、中医学的治療であるとご理解いただけると幸いです。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/03/12
- 【外科・整形外科・皮膚科疾患】変形性膝関節症について
【変形性膝関節症について】
近年の高齢化社会にともなって、“膝痛”の人が増え続けています。
膝は歩く時に重力のバランスを調節したり、その際の地面からの衝撃のショックを和らげる役目をしている重要な関節です。
統計的に、男性より女性の方が多いようです。
60歳以上では、女性の40%、男性の20%が変形性膝関節症と診断されています。
では、始めに膝関節について説明します。
骨と骨が連結している部分を関節と呼びますが、膝関節は大腿骨と脛骨、膝蓋骨で構成されています。常に曲げ伸ばしをして体重を支えていて、階段を降りる時には体重の3倍もの荷重がかかると言われています。
このように負担がかかっても、大腿骨と脛骨が擦り減ったり、痛んだりしないのは、骨が擦り合う部分を“関節軟骨”が覆ってクッションの役割をしているからです。また、関節軟骨が擦り切れないように、大腿骨と脛骨の間には“半月板”が挟まり、複数の“靭帯”が骨と骨をつなぎ留め、さらに筋肉が膝関節全体を支えています。
また、膝関節を包んでいる関節包の内側にある滑膜細胞から“関節液”が分泌されて、関節の潤滑剤として働き、半月板や軟骨に栄養を与え新陳代謝を促して不要になった老廃物を運んで処理します。
では、何故、変形性膝関節症が起こるのでしょうか?
●現代医学的な捉え方●
関節軟骨は新陳代謝を繰り返して弾力性を保っていますが、加齢とともに代謝が低下し、弾力性が失われ次第に擦り減っていきます。
少しずつ膝関節にかかる負担が増して、骨と骨が直接ぶつかり合うようになります。この状態が続くと軟骨の表面 に裂け目ができ、剥がれ始めます。この軟骨のカスを除去しようとする過程で関節に炎症や関節液の過剰分泌(水が溜まる状態)が起きてきます。
こうなると膝関節は腫れて痛み、歩行がつらくなります。
骨同士がぶつかり合ううちに、トゲのような骨(骨棘といいます)が現れたりすると更に痛みが悪化します。
“痛い→歩かない→筋力低下により関節の負担増→痛みが悪化する”、という悪循環に陥ります。このように、膝関節の破壊に伴って炎症を起こし、膝の腫れや熱感・痛みが現れ、体重や身体の動きによって生じるストレスが長い間膝に作用して膝関節の軟骨を壊し、ゆっくり骨の変形が進んでいく疾患が“変形性膝関節症”です。
(原因)
“加齢”によるものの他に、“肥満”“外傷”“激しいスポーツ”“疾患、代謝異常”などがあります。
(症状)
最初のうちは、立ち上がったり、歩き始めるなどの“動作開始時痛”が典型的な初期症状です。病変の進行に伴って、歩行時痛、階段昇降時痛(特に降りる時が痛む)、可動域制限、腫脹、熱感、変形、関節周囲の筋肉の萎縮が出現して、常に痛むようになっていきます。
(現代医学的な治療)
◇ 理学療法・・・・温熱療法で血行改善をし痛みを和らげたり、筋肉トレーニングで関節を支える筋肉を鍛えます。
◇ 薬物療法・・・・痛みに対して、抗炎症剤・鎮痛剤があります。痛みがひどい時は、関節液を抜いたり、ステロイド剤や関節軟骨保護剤を関節に注射します。
◇ 手術・・・・・・人口関節置換術や脛骨高位骨切術などがあります。
● 中医学的な捉え方●
中医学とは、「中国伝統医学」のことです。
中医学には、体を一つの統一体として考える、という独特の視点があります。
人間は自然の一部として存在していて、自然の一部であると同時に人間の体の中にも自然界の要素がそのまま揃っているという考え方です。
根底にあるのが、“陰陽五行説”です。先人たちは、自然界のすべてのものが“陰と陽”に分けられると考えました。例えば、“暗いと明るい”“湿りと乾燥”“重いと軽い”などです。
陰と陽は、互いに対立し、かつ影響し合うものとしています。
そして、自然のものは、その性質によって“木・火・土・金・水”の5つの要素に分けられると考えました。5つの要素は互いに生かし生かされつつ、自然界全体を絶妙なバランスに保たせていると考えました。
中医学は調和を大切にした学問です。現象面にとらわれるだけでなく、根本的な調節を行なうことが大切であり、現代医学とは違う角度から体を見つめる医学なのです。
中医学では、人間の体を診るときには“気・血・津液”“五臓六腑”の状態に注目します。
“気・血・津液”は、人体を構成する物質であり、臓腑とともに体の生理機能を維持する働きがあります。“気・血・津液”は“五臓六腑”の働きによって生成と代謝されており、“五臓六腑”は“気・血・津液”によって滋養されているのです。
中医学では、この“気・血・津液”が必要なだけあり、“五臓六腑”に必要なだけ行き渡りスムーズに流れていることが健康(中庸)な状態と考えています。
つまり、病気とは何らかの原因(病因)によって、“気・血・津液”に過不足が起こり、“五臓六腑”に影響を及ぼし、スムーズに流れていない状態なのです。
現代医学で言うところの、“診断・治療”を、中医学では“弁証論治”といいます。
四診(望診・聞診・問診・切診)と呼ぶ独特の診察方法で患者さんから情報を収集し証を決め、これを弁証といいます。証にしたがって治療方針をたてることを論治といいます。
弁証論治には、独特の言葉が使われるので慣れないと違和感があると思いますが、何の病因が、何を障害して、どのようになっているのかを見極めることなのです。
証が決まれば、治療方針(治則)が用意されています。同じ症状であっても、原因や障害を受けている部位 によって証は異なります。証が異なれば、治則も異なります。
患者さんの症状をきちんと把握し、適切な弁証論治を行なうので、対処療法を主とする現代医学とは異なったアプローチが可能となります。
前置きが長くなりましたが、変形性膝関節症について考えてみたいと思います。
中医学には、変形性膝関節症という証はありません。痛み方などの症状や患者さんの体質などによって証を立てていくことになります。
まず、“気・血・津液”のどれが障害されているのでしょうか?
これは、主に“津液”が考えられます。
津液は、体内にある必要な水分で全身を潤し、関節、靭帯、筋肉に潤いをあたえ、動きを円滑にする作用があります。津液は不足することでも、また流れが悪くなり停滞することでも障害が起こります。
津液に係わりの深い臓器は、“脾”“肺”“腎”があり、協調して生成・運搬・排泄を行なっています。これらの臓腑のどの生理機能が失調しても障害が起こります。
病因には、外因(風・寒・湿・熱・火・暑・燥)という季節や環境によるもの、内因(心理状態)、不内外因(飲食の不摂生、外傷、過労、運動不足など)がありますが、特に外因の寒・湿が大きく影響します。
では、代表的な証をあげてみます。
◆ 湿熱証・・・・ |
津液(水分)が停滞し、水湿の邪に変化したことで起こります。加えて熱性を持つと湿熱といいます。症状は、膝関節が赤く腫れる、灼熱感のある痛み、膝が動かしにくい、重く痛む、関節を冷やすと楽になる、尿が黄色く濁る、舌の色が紅い、舌苔が黄色く厚い、など。 (治則)“清熱化湿”・・・熱を冷まし、湿を取り除く治療です。 |
◆ 寒湿証・・・・ |
水湿の邪に寒性をもったものです。症状は、膝関節が冷えて痛む、腫れる、気候の寒さや雨で痛みが強くなる、患部を温めると楽になる、舌の色は淡く白っぽい、舌苔は白く厚い、など。 (治則)“散寒化湿”・・・冷えをとり、湿を取り除く治療です 。 |
◆ 肝腎陰虚証・・ |
肝と腎は互いに協調し合っています。肝陰(血)が不足すれば 腎陰(精=生命のエネルギー)も不足し、腎陰が不足すれば肝陰も不足します。 慢性病や肉体疲労、加齢(老化)により、両者のバランスが崩れ症状が現れます。 腎陰は脳・骨・髄を滋養する作用があり不足すると、筋骨が滋養されないため足腰がだるくなり、筋肉の萎縮が起こります。舌の色が紅く、裂紋がある、舌苔は薄くて白いか黄色く乾燥、など。 (治則)“滋養肝腎”・・・肝腎の精血を滋養して内熱を冷ます治療です。 |
◆ 脾腎陽虚証・・ |
腎陽は陽気をつくる源で、全身の温煦作用(温める作用)を促進します。津液を蒸化し津液の代謝障害を抑制しています。また、津液を温めることによって水邪の氾濫や水湿の内停を防ぐ働きもあります。腎陽は脾陽を温煦し、脾の運化作用(消化・吸収・輸送)を助け、また、脾の運化作用によって腎精(生命エネルギー)が補充されます。慢性疾患、疲労倦怠などから水邪が長期間体内に停滞することによって腎陽虚(腎陽が不足)となり、これに脾陽虚が加わり症状が現れます。腰膝が軟弱無力となり冷えて痛みます。舌の色は淡く、舌苔は白く滑らか、など。 (治則)“温補脾腎”・・・腎を温めて脾を健全にする治療です。 |
◆ 日常生活で気を付けること◆
◇ ◇
◇ |
膝を冷やさないようにする(冷えて痛みが増す方) 運動で筋肉を強くする、または維持をする・・・プールで歩いたり泳いだりするのが一番膝への負担が少なく、筋肉がつけられます。 食生活の改善・・・食生活を改善することによって体重を減らして膝への負担を少なくします。また、体を冷やす食品は避けましょう。冷たい飲み物生野菜、生魚、コーヒーや緑茶も体を冷やします。 |
以上が、中医学的“変形性膝関節症”の捉え方と治療法になります。
勿論、これだけではありませんが、少しでも中医学的なアプローチがご理解頂ければ幸いです。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/03/12
- 【五官科疾患】花粉症
●花粉症とはどんな病気なのでしょう?
花粉症は典型的なアレルギー疾患です。
アレルギー疾患とは、特定の原因物質が人体に侵入してアレルギー反応(過敏反応)を引き起こし、その結果 として人体にとって不都合で不快な症状を誘発する病気です。
この原因物質のことをアレルゲンと呼びます。
花粉症のアレルゲンは文字通り各種植物の花粉です。その中でも、スギ花粉が一番の代表で、これによる花粉症をスギ花粉症と呼びます。
<花粉症にかかるまで>
花粉が空中を飛来
↓
鼻、目、喉、気管などの粘膜や皮膚などに付着、侵入
↓
アレルギー反応
↓
いろいろな不快な症状を誘発(鼻、目、喉、気管、皮膚など)
どんな症状が強く現れるかは個人差があります。
▼▼▼花粉症の症状は原因となる花粉が飛沫する季節にだけ現れます▼▼▼
花粉植物の種類によってその季節が違います。
スギ花粉症の場合は2~5月です。
●●不快な症状 鼻、目●●
花粉症はまず鼻と目に症状が現れます。
理由は簡単です。花粉症が着きやすい粘膜部分は常に外界にオープンしている鼻と目にあるからです。
●鼻の症状
・くしゃみ、鼻水、鼻づまり(最もよくみられる3大症状です)
・鼻がむずかゆい、鼻くうのまわりが赤く腫れて痛む
・鼻血が出る
・においが鈍くなる、鼻息に熱感がある
・鼻の中が乾燥してガサガサになる
●目の症状
・目が充血する、目がかゆい、目に灼熱感
・涙が出る、光がまぶしい、目ヤニが出る
このほかに鼻からの影響で、耳に症状が現れることもあります。
これは耳の中耳の部分が耳管で鼻の奥と通じているためです。
●耳の症状
・耳の中がかゆい、耳閉感
●●不快な症状 喉・舌・口・気管支●●
喉、舌、口、気管支などにも症状が現れることがあります。
これは第一には、鼻づまりがひどい場合、いつも口で呼吸するため、喉や口内が乾燥して炎症を起こしやすくなるためです。
特に起床時は、喉や口内の乾燥がひどく、痛みます。
また、花粉が喉や気管支に入りこんで刺激するため、喉のかゆみや、咳がでることもあります。
●喉の症状
・喉がかゆい、痛む、腫れる
・喉がカラカラに乾燥する(特に起床時が激しい)
・喉にゴロゴロと異物感
●舌・口の症状
・口の中がカラカラに乾燥する。舌が乾燥する
・舌に苔が出る、味が鈍くなる、口の中が苦い
●気管支の症状
・咳、痰、旨に不快感や閉塞感がある
・ゼーゼーヒューヒューする息苦しさ
●●不快な症状 皮膚●●
皮膚症状は花粉症の症状の中では、小数派で、鼻や目の症状ほどに多くはありません。
しかし、不快なうえに、美容上の悩みが加わるので、皮膚症状の強く現れる人によっては、大変な災難です。
これは、花粉が外気にさらされた皮膚に着いて、アレルギー反応を起こし、その結果 現れる症状です。
汗ばんだところや、化粧肌には特に花粉がつきやすいので、首、顔に症状が現れます。
耳や腕にも現れることがあります。
普段からアトビー性皮膚炎による皮膚症状があって、花粉症の時期になると、首から上や、腕などの皮膚症状が悪化する人もいます。
●皮膚の症状(重に首・顔・耳の後ろ、腕など)
・皮膚がピンク色を帯びる。または赤くなる
・皮膚面から盛り上がる、乾燥してカサカサ、ザラザラになる
・粉をふく、薄いかさぶたができてポロポロはがれてくる
・かきむしって出血する
・かきむしって皮膚ばびらんになり、ヒリヒリ痛む
●●不快な症状 その他全身●●
●胃腸症状
・腹痛、便秘、下痢、食欲不振、消化不良、吐き気
●神経、間接症状
・頭痛、頭が重い、関節痛、めまい、立ちくらみ
●その他の症状 |
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・ |
疲れやすい、だるい、あくびが多い、眠たい、身体のほてり、寒気、発熱、汗をかきやすい、動機、気がめいる、イライラする、無力感など これらの内で、どの症状が出るかは1人ひとり違います |
▼▼▼花粉症はどうやって診断するのか▼▼▼ |
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問診 |
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①自覚症状の確認 |
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くしゃみ、鼻水、花づまり、目の充血、かゆみなどをはじめとする、花粉症を疑わせる症状があるかどうか |
②症状に季節性があるかどうかの確認 |
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例えば、春にだけ出るのか、花粉症に合致する症状があり、しかも特定の季節に症状が現れたり、強まったりする場合には、花粉症が疑われます。 |
検査 |
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①皮膚反応テスト |
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皮内注射法(スギ花粉エキス)によるアレルゲンの確認 |
②血液検査 |
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特異的IGE(抗体産生)抗体量の測定によるアレルゲンの確認 花粉がアレルゲンとして確認されると、花粉症として診断されます。 |
▼▼▼現代医学の薬物治療▼▼▼
花粉症に対して、現代医学では、内服、点眼、点鼻など、薬による治療が基本になります。
使用される薬には主に2種類のタイプがあります。
●抗アレルギー剤
外用:インター点鼻薬、ソルファ点眼薬
使用法:花粉シーズンの2週間以上前から予防に使用。
作用:花粉が身体に侵入後の抗体反応の結果、化学伝達物質が放出されます。
これが花粉症の症状をひきおこします。
抗アレルギー剤は、化学伝達物質の放出を阻止します。
副作用: |
眠気、だるさ、胃腸障害など 外用は鼻、目の刺激感 |
●抗ヒスタミン剤
使用法:花粉症シーズンに内服
作用:化学伝達物質であるヒスタミンの働きを抑制
副作用:眠気、だるさ、胃腸障害(眠気、だるさは特に多い)
●ステロイド剤
ステロイド剤は副腎皮質ホルモン剤ともよばれます。
強力な抗炎症作用をもつため、多くの難しい病気に効果があります。
花粉症などのアレルギー疾患にもよく効きます。
しかしよく効く分副作用も強く、従って、その取り扱いには慎重でなければなりません。
ステロイド剤には、外用薬と内服薬、注射薬があります。
点鼻薬は局所に作用するので、比較的副作用が少ないため使用されていますが、内服薬、注射薬の連用は、副作用が強いので特別 の場合以外は控えるべきです。
外用剤
点鼻薬:シナクリン
副作用:鼻内刺激感、不快感、乾燥感、嗅覚障害、頭痛、吐き気など
内服剤: |
セレスタミン、プレドニン |
副作用: |
胃十二指腸潰瘍、高血圧、糖尿病、肥満、白内障など、多くの副作用を起こしやすいので要注意。 特にもともとこうした病気のある方は禁忌です。 |
●アレルゲンにならす減感作療法
現代医学では、薬による対症療法のほかに、減感作療法が行われています。
これは花粉に対する過敏反応を弱めることをねらった、一種の免疫療法です。
減感作療法のやりかた
アレルゲンである花粉のエキスを薄めた液を定期的に皮下注射し、だんだん濃くしていきます。
複数の花粉がアレルゲンの場合はそれらのエキスを混ぜて注射します。
週1回のペースで1年ぐらい続け、その後ペースを落とします。
全部で3年以上続けます。
副作用
・注射部の皮膚の赤み、腫れが強く出すぎる
・花粉症の症状を悪化させる場合がある
・血圧が低下して顔面蒼白で息苦しくなる
このような場合は、注射濃度を再考するか、中止します。
問題点
・治療に根気と時間が必要
・喘息治療で行う、ハウスダストの減感作療法に比べて効果が劣る
◆◆◆◆◆◆◆◆東洋医学的に捉えた花粉症◆◆◆◆◆◆◆◆
▼東洋医学的に花粉症を捉えた時に関係する臓腑を見てみましょう。
※肺を中心に協同して働く臓腑が弱まるとアレルゲンが侵入しやすい身体の状態を作ってしまいます。
●肺: |
肺は全身の皮膚表面を守る気を主る働きと、全身に水液を散布する働きを主っていますが、その働きが弱まってしまうと、皮膚表面 (鼻などの粘膜も含まれます)からアレルゲン(花粉症の場合は花粉)が侵入してしまいます。 |
●脾: |
脾は、中医学では気血を生成するところであり、また、その作った気を肺に送り、肺から全身に散布させるという働きを主っています。 ひの機能が弱ると、それは、肺の働きにも影響を与え、身体がアレルゲンに侵入されやすい状態になってしまうのです。 |
●腎: |
腎には大切な働きがたくさんありますが、その中のひとつに、気を納める、「納気」という働きがあります。肺は呼吸を主っていますが、腎は深い呼吸特に吸気を主っており、肺と腎は互いに影響して呼吸活動と水液代謝の働きをしています。 腎の納気作用が弱まると、肺の気を全身に散布する力が弱まり、アレルゲンに侵入されやすい状態になってしまいます。 |
▼東洋医学的に花粉症の症状を捉え、その症状がどのような病理で発症しているのかを見てみましょう。
① |
鼻がむず痒い → 侵入した邪気(アレルゲン)と正気の抗争によっておこります。 |
② |
クシャミ → 肺気が邪気(アレルゲン)に抵抗し、邪気(アレルゲン)を追い出そうとする症状です。 |
③ |
鼻水 → 肺の全身に気を散布する機能が失調したため、水を下降させて排出することができない症状であり、透明な鼻水は、身体に寒邪があることを示し、粘りのある鼻水は、熱邪があることを示します。 |
④鼻づまり |
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→ |
邪気が上から侵入して、肺気が全身に散布されずに、鼻が塞がれてしまった状態です。 |
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→ |
鼻水は停滞して肺の気の流れが悪くなり、鼻がつまります。 |
|
→ |
鼻で正気と邪気の抗争がおきて、鼻づまりがおきます。 |
◆◆◆◆◆◆◆◆◆東洋医学で分けるタイプ別花粉症◆◆◆◆◆◆◆◆◆
東洋医学では症状別に花粉症のタイプを分け、その方の体質に合わせて治療します。
まず、タイプを見てみましょう。
●くしゃみと鼻水タイプ(風寒証)
・くしゃみが連発し、その後で透明の鼻水が多く、黄色、青色の鼻汁は出ない
・朝起きてからしばらくは、症状が激しい
・冷たい風にさらされると、症状が誘発しやすい
●くしゃみ、鼻水と冷え性、疲れやすいタイプ(風寒陽虚証) |
|
・ |
頻繁に出るくしゃみ、多量の鼻水、鼻づまり、鼻がむずがゆい、目がかゆい、涙が出る |
・ |
冷え性で寒がり |
・ |
スタミナがなく、すぐに疲れる |
・ |
寒冷刺激や疲労が鼻症状を誘発させる |
●ストレスで悪化タイプ(風寒気欝証)
・会社でストレスがたまると、鼻症状が悪化
・鼻、目、喉、耳に詰まり感、渋り感が強い
・精神不安定 ・寒さやストレスで症状が悪化しやすい
・各種の薬で、胃腸の具合が悪くなりやすい
●黄色い目ヤニと鼻汁タイプ(風熱証)
・目ヤニ、鼻汁、痰などの分泌物は、黄色く粘っこい
・くしゃみ、鼻水は少なく、鼻詰まりが強い
・鼻や目に熱感、喉、目、顔が赤い
・暑いところにいたり、温風にあたると症状が悪化する
●喉、口、鼻が乾燥タイプ(燥熱証)
・鼻づまり、鼻、喉、口の中が乾燥してガサガサになる
・唇が乾燥して、割れる、鼻や喉が痛む
・から咳をする、痰は出ても少量で、黄色く粘っこい
・暑がり、喉の渇きが強く、冷たいものが欲しくなる
●だるくてすぐに疲れるタイプ(気虚証) |
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・ |
鼻水、鼻づまりは激しくない ・疲労倦怠感が著しくなり、いつでも横になりたい気分 |
・ |
胃腸の働きが悪くなり、食欲が低下する |
●寒がりの冷え性タイプ(陽虚証)
・寒がり、冷え性、寒冷刺激で症状が悪化する
・スタミナがなくなり、だるくて疲れやすい
・胃腸の働きが悪くなる、下痢もしやすく、おなかも痛む
・鼻の症状は激しくない
◆◆◆◆◆◆◆◆◆当院での治療について◆◆◆◆◆◆◆◆◆
当院では、上記のようにその方の症状を問診でうかがい、舌、脈の状態から、その方の体質と花粉症のタイプを判断します。
その上で、花粉症の辛い症状を緩和する治療を行いながら、その症状が起きている本当の原因である体質を改善する治療を行ってまいります。
毎年花粉症の症状で悩まれている方は、だいたい1月ぐらいから治療をされることをおすすめします。
そして、本格的な体質改善を行いたい方は、3ヶ月ぐらい集中的に週に2回ぐらいの治療をされるか、週1回の治療ならば、漢方薬あるいは、家庭灸の併用をされることをおすすめしています。
そして、1~2年は、花粉の飛散していない時期に、月に2回~4回ぐらいのペースで、お手当てをすると、花粉所の時期になっても、花粉症状が起こりづらくなりますし、起こっても軽い症状ですむ場合が多く、人によっては、全く起こらなくなるケースもあります。
まずは、お気軽にお電話でご相談ください。
●●●●●●花粉症はどうしてこんなに増加したのでしょうか?●●●●●●
花粉症といえば、ごくありふれた日常の病気のイメージが定着したようです。
ところが、意外なことに、花粉症は戦後に初めて医師によって報じられた新しい病気です。
1960年代前半にブタクサ花粉症、ついてスギ花粉症の患者がみつかりました。
それから、わずか30年間で花粉症(特にスギ花粉症)は爆発的に増加しました。
●増加した原因
スギの増加
戦後に大量植林されたスギが伐採されずに開花適齢期になっているため、春のスギの花粉の散布量 が増加している。
●排気ガス、大気汚染
排気ガスなどで汚染された大気中のたくさんの微粒子が花粉症の発症を促進する。
●食環境の変化、食品汚染
食生活の変化にともなってたんぱく摂取量が増加したこと、食品が添加物などで汚染されていることなどから、アレルギーを起こしやすくしている。
●住宅環境の変化
住宅やオフィスの近代化に伴い、通気性の少ない、ダニ、カビの温床を作り、アレルギーを起こしやすくしている。
◆◆◆◆◆◆◆◆ 自分でできる花粉症対策 ◆◆◆◆◆◆◆◆
原因となる花粉をなるべく避けること
・ 原因植物の分布を知り、なるべく近づかない
花粉は遠くまで飛散されますが、近いとよけいに多く飛んでいます。
花粉情報に基づき、外出スケジュールを調節する。
風が強く晴れた日には花粉の飛散量が多くなりますので特に要注意です。
花粉マスク、メガネの使用
・外出後にには洗顔、手洗い、うがいをして衣服をよくはたく
・洗濯後の干し物はよくはたく
・室内の清掃をこまめに
体力低下を防ぐ
・充分な睡眠
・規則正しく栄養バランスの良い食事
・アルコール、タバコを控える
・ストレスをためない工夫
花粉症でお悩みの方、早めのお手当てをお勧めいたします。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00~ 12:00 |
〇 13:00まで | 休 | 〇 | 〇 | 休 | 〇 | 〇 |
14:00~ 16:00 |
休 診 |
診 | 〇 | 〇 | 診 | 〇 | 〇 |
※ 火曜日・水曜日・金曜日が祝祭日の場合は午前診療となります。
※ 当院は予約制です。
〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1丁目17-10