東京都武蔵野市在住 Y.Tさん 40歳 女性
この方は、左側乳癌の切除手術をし、その後放射線治療を受けていましたが、術後の体調が安定せず、知人の紹介を受けて当院へ来院されました。
不眠、脱毛、食欲不振、全身の倦怠感があるということでした。
不眠は術後の体調不良と、この先の自分自身や体に対して不安を感じてしまうために起きていたようですが、元々神経の繊細な方でいらしたので、術前から多少の不眠傾向にあったようです。
中医学的に問診、脈診、舌診を行ったところ、「舌質の色」は淡紫、胖大(ふくらんだ感じ)、「脈診」は細弱でした。
問診の結果、全体的に活力が不足している感じでした。
中医学的には「気血両虚(きけつりょうきょ)」といいます。
これは、活力と体力を潤したり栄養素を与えるエネルギーが減少傾向にある状態を意味します。
それと術後の精神的ダメージによる疲労がある様でした。
やはり女性である以上、乳房切除は精神的に大きなダメージがあるのは当然のことだと思います。
当院ではどんな病でも〝心のケア〟は重要だと考えていますが、特にこの様な場合は普段にもまして重要視しました。
そのため、 この方には訴えている症状の改善と、心のケアを同時に行なっていきました。
まず最初に、「食欲不振の治療」を行い、その後「精神状態を安定させる手当て」、「睡眠内容を充実させる」という様に行なっていきました。
何故食欲不振の手当てを最初に行ったかと申しますと、人間の体が栄養素を得るには、何よりまず〝食生活〟にあると考えるからです。
食事をしっかり摂る事により栄養素の補充となり、それが血となり肉となり力になるのです。
また食欲が増せば、体に行き渡る栄養素も自然と増し、それが不眠改善へもつながります。
中医学の考えでは深い睡眠を得るには、〝血〟が必要と言われています。
また、精神面のリラックスを促す治療も行い、同時に入眠に関わるホルモンの分泌促進を促す治療も同時に行ないました。
大体2ヶ月近く、この様な手当てを行なった結果、食欲も増し睡眠も深くなり、症状が改善されていきました。
本人がおっしゃいますには「充睡感が得られる様になり、体力、気力も付き、精神的にも楽になった」とのことでした。
そして、一番印象に残った言葉は「自分は、今まで以上に元気になれる様な気がする」という一言でした。
この方は、「今まで体をいたわってこなかったが今は体をいたわる充電期間なのだ」と、考え方が前向きに変わっていきました。
そして、その後も自主的に週2回のペースで治療を受けに来られ、日に日に体の倦怠感も抜け、毛髪も生え始めて来ました。
また、本人の希望で、「家庭灸を行ないたい」という事でしたので、この頃から家庭灸を使用して頂くことになりました。
そこで、〝抗癌作用に働きかける灸点(ツボ)〟と〝免疫力増加に働きかける作用の灸点〟を指導させていただきました。
家庭灸も症状、体調が変わった時点で変更し、常に体調に合わせてタイムリーな手当てが出来る様に指導させていただきました。
最初の治療から半年位が経過し、ほとんどの症状が改善されていき、毛髪も綺麗にはえ、睡眠も安定し、体調もかなり良い状態になりましたが、本人はそのまま通院され、定期的に養生の治療も受け続けていらっしゃいました。
手術を受けた病院での定期検診にも問題なくクリアし、トータルで14年間当院へ通院されました。
本人はずっと通院し続けたかったとのことですが、仕事の関係で引越しをすることになり、当院での通院治療を受けることができなくなってしまいました。
現在は当院に通院していませんが、症状に合わせ家庭灸を続けていらっしゃると、毎年年賀状で報告を頂いております。
この方のケースで言えば、本人の努力と当院を信頼して治療を受けて頂いた結果 、良い方向に向いたのではないかと思っております。
コラム『術後の不定愁訴』
https://www.dokutoruyo.com/column/cate6/20200125-2273/
コラム『悪性腫瘍』
https://www.dokutoruyo.com/column/cate6/20200126-2285/
コラム『悪性腫瘍に対しての放射線療法による放射線障害』
https://www.dokutoruyo.com/column/cate6/20200128-2297/
コラム『大病後や手術後に家庭灸』
https://www.dokutoruyo.com/column/cate3/20200129-2309/
下記のページもご参照ください。
当院について
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