東京都三鷹市在住T.Sさん
35歳男性。
この方の仕事は、勤務時間が不規則で、常に緊張感を保たなければならない業務についていらっしゃいます。
そのため、なかなか気を抜くことができず、お酒で緊張を解きほぐすことが多かったそうです。
突発性難聴を発症する前には、「キーン」という高い音の耳鳴りが時々鳴っていたそうです。
また、いつも首筋は脹って、上半身はほてる感じが強かったそうです。
中医学の考え方では、T.Sさんの場合、「肝」の「気」のうっ滞が原因と考えられます。
「肝」とは、体のいろいろな機能をのびやかに働かせる役目があります。
さらに「肝」は、全身の「血」の流量を調節します。
T.Sさんの状態は、本来のびやかな性質だった「肝」の「気」が、ストレスによって渋滞を起こしてしまっているのです。
この状態が長期化すると、「肝」と関係が深い「胆」にも影響を及ぼしてしまいます。
「胆」の「気」の流れのルートは、耳の周りをめぐっており、そこで「気」の流れに渋滞が起きてしまうと、突発性難聴という病気になると考えられています。
難聴だけでなく、耳の周りが脹ってくる症状も現れるのは、こうした理由からなのです。
そして、見逃してはいけないのが、発症前に頻繁に出ていた「キーン」という高音の耳鳴りです。
これは、体の悲鳴、いわゆる注意信号が出ていたことを意味します。
一般の方では、そう捉えることが難しいとは思いますが、このような体の小さな叫びに気を配ることがもっとも大切なことなのです。
西洋医学においても数値に出ない以上、この点を重視することがあまりありません。
しかし、中医学の考えに基づいてみると、このような耳鳴りはストレスがたまって、体も疲れがピークに達していることを意味します。
この状態を放置することで、ある日突然難聴になってしまうケースが多いのです。
次に治療方法についてお話したいと思います。
まず、うっ滞した「気」の流れをスムーズに流れるように「疏肝理気」というお手当てを行ないます。
これは、滞った「気」の巡りを良くする治療です。
具体的には、耳の周りの「気」の流れをなめらかになるように通してあげます。
もちろん、局所にも鍼をしますが、手や足のツボも使って全体的に「気」が巡るようにしていきます。
くわえて、心身がリラックスできるツボにも刺激を与え、精神安定をはかる治療も行っていきます。
そして、予防養生のために元気回復のツボにも鍼をします。
T.Sさんは、中医学というものへの信頼感が厚く、とても協力的に治療を受けてくださいました。
ご本人も中国から漢方薬をご自身で取り寄せて服用してらっしゃったので、より良い結果が早く出ることになりました。
週2~3回のペースで治療を受けていただき、5回目位から耳の周りの脹った感じがなくなってきました。
10回目位には、低音の聴力が普通に戻り、15回目位には、高音の聴力も改善されてきました。
20回目位には、高音・低音、ともに聴力は普通になりました。
25回目位には、耳鳴りもほとんど気にならない程に回復されました。
また、以前は疲れると耳鳴りもひどくなっていたそうですが、現在では、そのようなこともなくなってきたということです。
そして、聴力が天候によって左右されることもなくなったそうです。
この方の場合、治療期間はだいたい2か月ほどでした。
突発性難聴に関しては、約2~3ヵ月の治療期間が最低でも必要となります。
実際の治療回数ですと、20~30回位を目安にしていただけると、良い結果が生じるかと思います。
何より、早期の治療が一番大切になります。
なお、これはあくまで目安でありまして、治療というものは「100%絶対」と言いきれるものではございません。発症されるまでその方が置かれていた環境、精神状態、経過の長さ、今現在の状況などにより効果や期間に個人差がでることは予めご理解頂きたいと思います。
当院の突発性難聴の治療に関して↓
https://www.dokutoruyo.com/nancyo/
吉祥寺 中医学に基づく 突発性難聴
鍼灸・吸玉(カッピング)療法専門 楊中医鍼灸院