コラム

2019-03-12
【五官科疾患】歯痛について

 みなさんも一度は歯痛に悩まされたことがあるのではないでしょうか?歯痛というとまっさきに虫歯というキーワードが連想できそうですが他にも歯周病や知覚過敏など様々な原因で起きる身近な痛みです。ここでは現代医学でいわれる歯痛の原因を説明していきます。

 

大きくみて歯痛の原因として考えられるお口のトラブルは

 1・虫歯

 2・歯周病

 3・知覚過敏

 4・萌出(歯肉の下に隠れていた歯が歯肉から顔を出そうとすること)

 5・噛み合わせ

 の5つがあげられます。

 

 では歯痛の前に歯のつくりを簡単に説明していきます。

歯は表面に出ている歯冠部と歯肉(俗に言う歯茎)に埋まっている歯根部、その間の歯頚部に分類されます。歯冠部の表面 を覆っているのがエナメル質です。これは人体で一番硬く歯の内部を守っています。歯根部を覆っているのはセメント質です。硬さはエナメル質の4分の1程度です。歯根膜とは歯根と歯槽骨(歯茎の骨)を結びつける繊維です。歯の内部には象牙質が大部分を占め、その中に歯髄と呼ばれる神経と血管から出来ているものがあります。

 

 さて次に歯痛の原因を1つ1つみていきましょう。

 

1・虫歯

歯の表面についた汚れをプラークといい、ほぼ細菌からできています。その細菌によって引き起こされる病気が虫歯です。虫歯は進行度によってC1~C4までの4段階に分けられます。

C1…

エナメル質が虫歯になっている状態で自覚症状はほとんどありません。

C2…

エナメル質の下にある象牙質まで虫歯になっている状態で冷たいものや甘いものがしみます。

C3…

歯の神経まで虫歯になっている状態で神経が炎症を起こすため激痛が生じます。

C4…

歯の根の先まで虫歯が進行している状態で根の先が炎症をおこし痛みが生じます。

虫歯治療は初期の段階で治療することで治療回数も減り、痛い思いをせずに生活を送ることができます。早期に歯医者に行くと良いでしょう。

 

 

2・歯周病

歯周病はプラークが原因で起こる歯の周りの病気です。

成人20代以上の80%が歯周病といわれるくらい身近でほおってはいけない病気です。歯茎の腫れや出血を特徴とする歯肉炎、さらに症状がすすみ歯根膜、歯槽骨まで破壊される歯周炎の2つに分けられ最終的には歯が抜けてしまう病気です。

 

歯周病チェック

 ・歯を磨くと出血する。

 ・強い口臭がある。

 ・歯肉が腫れている。

 ・朝起きたとき口の中がネバネバする。

 ・歯が浮いた感じがする。

 ・歯肉が退縮して歯が長く見える。

 ・歯が移動して歯間に隙間があいている。

 ・冷たいものや熱いものが歯にしみる。

 ・歯がぐらぐらする。

 などの症状があれば要注意です。

 

治療は薬物療法や外科治療がありますが基本的にはきちんとしたブラッシングを身に着けることです。

 

3・知覚過敏

虫歯ではないのに冷たい水や熱いお茶、歯を磨く時に歯ブラシがあたるとしみる等、このような症状を知覚過敏といいます。

歯茎が下がってきたり無理な力でブラッシングを続けていると表面のエナメル質がから内側の象牙質が出てきてしまいます。そうなると冷たいものなどが象牙質の神経に触れしみるようになります。こうなったときは早目に歯医者に行き適切な処置を受けましょう。

歯磨き粉の中にも知覚予防をする粉もありますので自宅でもしっかりケアをすることが大事です。

 

4・萌出

萌出とは歯が生えてくる意ですが乳歯が抜けて永久歯が生えてくる以外にも親知らずの存在があります。

一番奥に生えてくる歯で高校生から25歳ぐらいまでの時期に顔を出します。顎に親知らずを受け入れるスペースがないとまっすぐに生えてくることができず他の歯を押しのけようとすることで激痛をともないます。

親知らずと歯や歯茎、顎の骨が関わりますので状況により治療の仕方が変わりますが抜く、抜かないにしろ歯医者の適切な指示に従うのが良いと思います。

 

5・噛み合わせ

普段から強く噛み締めるクセがあれば歯の表面が磨耗して知覚過敏の原因なったりします。歯並びを全体的に見直すのであれば専門の矯正医の治療が必要ですし、長期的な治療になるでしょう。

 

これら以外にも肩こりが原因で起こる場合もありますし、歯にいく神経の中に三叉神経といっていわゆる痛みなどを感知する神経になんらかの異常があった場合にも痛みが誘発されるケースがありますので歯に痛みが出たときは早期に適切な治療をうけておくと後で手遅れになることも少ないでしょう。

 

 

中医学でみる歯痛

 

歯痛をひも解くために中医学独特の生体観・生理観、また歯痛に関連するキーワードをピックアップしていき少しでもわかりやすいように説明していきます。

 

~気・血・水~

気-

気とは物質であり人が生理活動する上での重要なエネルギー源です。

物質ゆえに消耗したり補充したりすることが出来ます。また運動性ももちあわせており「昇降出入」というはたらきがあります。

「昇降出入」とは気の運動形式の」ことで昇ったり降りたりする上下方向の運動と発散したり収納したりする出入方向の運動が基本になっているということです。よって気は物質でありながら運動性を持っているのです。

また気が不足して病気になってしまうことを気虚と呼び、気が一ヶ所に滞って流れが悪くなって病気になってしまうことを気滞と呼びます。

気の具体的な生理作用には人体各部を栄養する栄養作用、内臓の活動を促進したり体内の流れを推進したりする推動作用、内臓を温め活動を促進したり体温を維持する温く作用、体表を保護し外から侵入してくるものを防いだり侵入してきたものと闘ったりする防御作用、人体を構成している水分や血液が外に漏れでないようにする固摂作用、体内の物質を変化させたり代謝を行う気化作用などがあります。

 

血-

血とは体内を流れる赤色の液体で人体を構成し生命活動を維持する基本的物質です。

現代医学でいう血液とは似ていますがイコールではありません。中医学で血の作用は全身を栄養し潤すことです。

例えば顔が赤くつややかだったり肌がふくよかで皮膚や髪の毛が潤って光沢があるのも、あるいは目などの感覚器や筋肉などの運動器が円滑にはたらくのも血の充足のおかげなのです。

他にも血は精神活動をも支える栄養源となっており、血が足りなくなると精神的な症状(失眠、健忘、昏迷、不安など)が現れます。

 

水-

水とは人体中の正常な水分の総称です。その中には唾液や涙、汗といったものも含まれます。

水の作用は体表部(皮膚や汗腺など)から体内深部(脳や骨、関節や内臓など)を潤します。またこの水は血を作るうえでも重要な成分になっています。

 

~臓・腑~

臓-

臓とは五臓とも呼ばれ肝、心、脾、肺、腎という実質性臓器のことを指し、主なはたらきは気、血、水の生成や貯蔵を担います。

 

腑-

腑とは六腑とも呼ばれ胃、小腸、大腸、膀胱、胆、三焦という中空性臓器のことを指します。

主なはたらきは飲食物の消化をし身体に必要なものは五臓に渡し、不必要なものは排泄します。

臓の中でも特に腎は歯痛と関連が強いのでピックアップしてみます。

腎-

腎とは腰の位置で背骨の両側に一対ずつあるものです。

腎のはたらきには精を蔵す、先天をつかさどる、生殖をつかさどる、納気をつかさどる、二陰をつかさどる、骨をつかさどる、水をつかさどる、骨髄をつかさどるなどがあります。

精とは身体の生長や発育、生殖能力などの源になっています。

精には先天の精と後天の精があり前者は両親からもらい生まれながらにして備わっているものです。後者は飲食物から摂取されるものでこの2つが合わさり腎にしまいこまれるのです。また身体の水分代謝にも大きく関わり、特に尿の生成や排泄は腎によるところが強いです。

納気とは固摂や受納といった意味で肺によって吸入した清気(イメージは酸素)を体の奥底に引き込むことで正しくガス交換が行われます。腎にはしまい込むというはたらきが多いのです。

二陰とは前陰(外生殖器)と後陰(肛門)のことで腎は生殖や排泄に関わっているので二陰をつかさどっているのです。

骨と骨髄も腎の管理下にあり腎の精気が充分であってはじめて正常に発達していきます。歯は中医学では骨余と呼ばれ骨と同様に腎に養われます。

 

~経絡~

 

経絡とは前述した気、血、水の通り道として身体に存在しています。

また経絡には種類があり先ほどの臓腑と関わりをもちそれぞれに対応したものがあります。特に歯に通 ずる経絡に胃、大腸と関わる経絡があります。

胃-

中医学での胃のはたらきは食べ物を受け入れて(受納)、消化し(腐熟)、消化物を下に降ろす(和降)というものです。

正常なときの流れは上から下ですが異変が起きたときは流れなくなったり逆上したりして経絡を伝って歯に影響してしまいます。

 

大腸-

中医学でいうところの大腸のはたらきは胃、小腸から降りてきた食べ物のカス(糟粕)を肛門から排出することです。

こちらも正常ならば上から下に流れていくものなので異変があれば流れなくなったり逆上したりしてしまい経絡を伝って歯に影響がいってしまいます。

 

~外邪~

 

外邪とは外から体内に侵入してくる病気のもとです。

風、暑、湿、燥、寒、火と6つあるので六淫とも呼ばれます。

特に歯痛と関わりがあるものでは風邪があげられます。これは風には上に上がる、外に向かうといったはたらきがあり体内に入ってきたときに頭部、顔面 部を侵しやすいからです。また他の外邪と結びついて歯に影響がいってしまうこともあります。

 

歯痛に関連する事項を中心に中医学の基本的な生体観を上記しました。

これをふまえたうえでどのようのして歯痛が起こるかをみていきます。

 

<実火による歯痛>

 

辛いものや油っこいものを偏食していると胃腸に熱がこもりやすくなります。

この熱が盛んになると火を生じます。火は炎上し昇っていく性質があります。

この火が歯と関わりのある経絡にそって歯肉に上炎すると痛みが起こります。

このタイプの歯痛には顔のほてり感や口臭、口が渇く、便秘、尿は黄色などの症状が出てくることが多いです。また自分で舌を鏡などでみてみると舌の色は赤く、舌についている苔は黄色くなっています。脈をみてみると速いリズムでなめらかになります。

治療は胃や腸の火を清熱(熱をとること)することで痛みのもとを取り去っていきます。

 

 

 <風火による歯痛>

 

もともと体質的に陽盛(陰陽の陽でこの場合は温かすぎるの意)で内熱がある人(熱がこもっている人)が風邪が体に入ってくることにより体内の熱と結びついて風火となり歯と関わりのある経絡にそって歯にいき痛みが起こります。

このタイプの歯痛には悪風、発熱が症状として一緒に出てきます。

 

 

<腎陰虚による歯痛>

 

腎は骨をつかさどっており、骨余である歯も当然この範囲です。

腎の気には腎陽と腎陰があり、腎陰が不足すると(この場合の陰は水のようなものとイメージしてください)身体の中の火を消すことが出来なくなり虚火が生じこれが上炎すると痛みが起こります。

このタイプの歯痛は昼間よりも夜に痛みが増すなどの特徴があり腰や膝がだるく痛む、めまいや耳鳴り、口が渇くが飲みたがらないなどの症状が出てくることが多いです。

舌をみてみると舌の色は赤く苔は少ないです。脈は細くて速いです。

治療は熱をとるのと同時に少なくなった腎陰も補うことで歯痛をとっていきます。

 

 歯医者に行っても特に原因が見当たらないケースの歯痛には中医学的なお手当てが効果 を発揮する場合もあります。それは体の中のバランスが崩れその影響が歯に出ているという状態をしっかりと改善していくことが出来るからです。

 中医学では表に出てきてしまった症状を治療するのと同時に体の中のバランスを整える治療(これを標本同治といいます)を基本としています。ゆえに歯痛の起こりにくい体質を改善することが出来ます。もちろん虫歯や歯周病など原因がはっきりしている歯痛の場合でも痛みを抑える治療は中医学でも出来ますが原因がわからないものを中医学の角度からみて治療するということが本領です。

 

原因不明の歯痛でお悩みの方、お気軽に当院までご相談ください。

 

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