肥胖(肥満)・消痩について
肥胖・消痩とは、太り過ぎ・やせ過ぎの事です。
一般的には、食べ過ぎや運動不足から太り過ぎになり、無理な食事制限や病気で痩せすぎになると考えられることが多いようです。
しかし、少食なのに太りぎみの人もいれば、大食いなのに痩せている人もいます。
体質の違いだと言ってしまえば、それまでなのですが、では、いったい何が違うのでしょう。
まず、肥満について考えてみましょう。
単純に考えれば、摂取したカロリーに比べて、消費したカロリーが少ないと、 余分なカロリーが体内に蓄積されていきます。
摂取カロリーが過剰になってしまう原因としては、単なる食べすぎや、味の好みが濃いという事もありますが、精神的なストレスによるものや、摂食中枢の異常による場合もあります。
消費カロリーが少なくなる原因としては、運動不足もありますが、体質的に栄養を活力にかえていく力が弱いという場合もありますし、年齢的に中年以降は代謝が低いということもあります。
外見上、太っていても、その原因はさまざまです。
根本的な原因を治していくことにより、健康的に、適正な体重に近づくことができます。
やせすぎの場合も同様にその原因は何かを考えていくことが大切です。
中医学では常に、表面的な症状だけではなく、根本的な原因を重視して治療を行います。
身体の働きのバランスを整えていくことで、健康で活力があり魅力的な身体づくりをしていきましょう。
なぜ、中医学では現代医学と違って、身体全体のバランスを整えることができるのでしょう。
それは、基本的な身体の働きに関する考え方が違うため、おのずと治療法も違っているからなのです。
詳しいことは、病気別わかりやすい東洋医学診断のまとめのページの上段に中医学で考える身体のしくみについて書いてありますので、「わかりやすい東洋医学理論」をご覧下さい。
今回のテーマで関連深い臓腑について、少し説明しておきます。
五臓六腑というのが東洋医学の考える内蔵のことです。
西洋医学のそれとは異なり、中医学では内臓を物体として区別するのではなく、働きで区別 します。
主な働きとして、六腑は飲食物の消化吸収を行い、五臓は栄養分から「気・血・水」を作り、運んだり、貯蔵したりしています。
五臓とは「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の事で、六腑は「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」の事です。
各々の臓腑には西洋医学と同じような働きをするものや、全く違う働きをするものもあります。同じ臓腑の名前を使ってはいますが、中医学では臓腑の働きに注目していますので、名前が同じでも、全く同じ物を指しているわけではありません。
食物から得た栄養分を肌肉や活力にかえていく作用に関連深いのは、
「脾」・「胃」・「肝」・「腎」です。
「脾」: |
「脾」の働きは、飲食物の消化・吸収・代謝、および栄養物質の生成です。 食べ物から栄養成分を吸収し、「気」「血」といった栄養物質を生成し身体全体に運んでいます。また、水分代謝も調節しています。 |
「胃」: |
「胃」の主な働きは、飲食物を受け入れ(受納)、初期消化し(腐熟)、小腸に送ること(和降)の3つがあります。 |
「肝」: |
「肝」は、全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。 精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。 特に脾胃の働きに影響は受けやすく、食欲不振などを起こします。 また、全身の血液量をコントロールし、蓄える働きもあります。 |
「腎」: |
「腎」は、成長・発育・老化・ホルモンバランス・生殖・水分代謝に関係しています。 |
【 肥胖について 】
大きく分けて以下の3つのタイプに分けられます。
1. 脾胃倶旺タイプ :
脾胃の働きが非常に強く、食欲があり、多食で且つ運動不足の方に多く見られます。
主症 : 全身が太る。上腹部の肥満が著明。皮膚を押すと張りがある。
随伴症 : 食欲亢進・多食・顔面紅潮・暑がり・多汗・腹脹・便秘
舌脈 : 舌苔薄黄・脈滑有力
治則 : 清胃瀉火(過剰な胃の働きを整える治療をします)
日常生活 : 過食を防ぐ為に、香味野菜(しそ・セロリ・春菊等)やスパイス(クミン・カルダモン等)を利用しましょう。
全身運動(ジョギング、水泳など)で、汗をかいて気分をスッキリさせると良いでしょう。
2.脾胃虚弱タイプ :
脾は、胃で消化吸収された栄養物質を活力に変え、全身に栄養を運ぶ作用のある臓器です。これらの働きが弱くなると、代謝が低下するため、少食でも太ってしまいます。
主症 : 顔面、大腿部の肥満が著明。肌肉はゆるんでいる
随伴症 : 顔面蒼白・精神疲労・気力がない・疲れやすい・寒がり・すぐに横になりたがる・食欲不振・便秘
舌脈 : 舌質淡・舌苔薄・脈沈細遅
治則 : 健脾益気(脾の働きを良くする治療をします)
日常生活 : 代謝を高め、胃腸にやさしく、「気」を補う作用のある雑穀類がお勧めです。
胃腸の働きを低下させる、冷たいもの・生もの・油っこいものは摂りすぎに注意して下さい。温かく消化の良いものを適量 とりましょう。
運動は、軽いものを無理なく続け、充分な睡眠をとることも大切です。
3. 真元不足タイプ :
高齢者など、身体がもともと持っている元気が足りないために、体が冷え、むくみを伴う事が多い、水太りタイプです。
主症 : 肥満・殿部と大腿部が著明・肌肉はゆるんでいる
随伴症 : 気力がない・動きたがらない・食欲は正常または少食・寒がり・浮腫
舌脈 : 舌質淡・歯痕・舌苔薄白・脈沈細遅
治則 : 健脾益腎(身体を暖め、代謝を良くして元気をつける治療をします)
助気化湿(水分の代謝を良くします)
日常生活 : 腎を養う作用のある黒色の食材(黒豆・黒ゴマなど)をとりましょう。
黒い食材は、ビタミンB群・ビタミンE・良質なたんぱく質を含み、ホルモンのバランスを整え、貧血を改善して血行を促進してくれる作用があります。生もの・冷たいものは出来るだけ避け、身体を冷やさないようにしましょう。 生姜・ねぎ・にんにくなど、体を温める薬味やスパイスを上手に利用して下さい。運動は、疲れが残るほど激しいものではなく、体力に合ったものを選びましょう。よく歩くことも大切です。
【消痩について】
消痩とは、筋肉がやせて体重が異常に減少することを言います。
体型が痩せていても、元気があって、顔色も体調も良い場合は消痩とは言いません。
大きく分けて以下の4つのタイプに分かれます。
1. 脾胃気虚タイプ:
後天性の栄養不足や、悩み事が多く、脾胃の働きが悪くなることにより生じます。
症状 : 食欲不振・やせ・顔色が黄色い・疲れやすい・息切れ・話したがらない・軟便
治則 : 健脾益気(脾胃の調子を整え、栄養分をうまく体に巡らせるように治療をします)
2.気血両虚タイプ :
過労や病後の失調により生じます。
症状 : やせ・疲れやすい・息切れ・話したがらない・めまい・動悸・不眠
治則 : 益気養血(栄養分を筋肉や体力に変える力を補い、気血が増すように治療します)
3.胃熱タイプ :
辛いもの・熱いもの・甘いもの・脂っこいもの・などの食べ過ぎにより生じます。
症状 : 沢山食べてもお腹がすく・のどが渇き冷たいものを好んで飲む。胸焼け・口臭・大便が硬い
治則 : 清胃瀉火(胃の熱を鎮め、食欲や味覚を適正にする治療をします)
以上のように、中医学では、根本的な原因を見極め、根っこから治していくので、全体的にバランスが良く、活力のある身体をつくっていきます。
体調の不良は身体からのメッセージです。その声をむやみに封じこめることなく、根本を見直し、真の健康に近づいていくきっかけにして下さい。
心の底から明るい笑顔で生活することが出来るようになります。
中医学は身体と心に優しい医学です。是非一度ご相談下さい。