コラム

2019-03-11
【内科疾患】しゃっくりについて

しゃっくりについての話

 

しゃっくりとは、横隔膜(胸部と腹部を隔てる筋肉の壁)の間代性の痙攣により、気管内に急激に空気が吸い込まれ、声帯筋が収縮して「ひっく」という音が繰り返されるものです。一過性のものがほとんどで、数分~数時間で消失します。

 

☆ なぜおこるの?

胎児は母親の胎内にいるときに、しゃっくりをするといわれます。

妊娠時にエコーを取ると、胎児がしゃっくりをしていることがあるのです。この原因ははっきりと解明されていませんが、胎児は羊水に包まれていて、羊水を飲んだり、その中で排泄をしているため、排泄物が口や鼻から喉に入ってしまうと外に吐き出そうとしゃっくりをすると考えられています。

 

赤ちゃんがしゃっくりをするのは、まだ呼吸に慣れていなかったり、母乳やミルクを飲む時に空気も一緒に吸い込んでしまい、食道や胃に入った空気を外に出すために横隔膜が痙攣してしゃっくりがおこると言われています。新生児の場合生まれて3か月までは、心拍数が大人の3倍もあるので、痙攣も細かく、しゃっくりの間隔も短いことが多いようです。おむつが濡れているときはそれが刺激となることもあるので、取り替えてあげるとよいでしょう。

 

成人のしゃっくりに関して、その原因は、暴飲暴食による胃の過進展・アルコールの過剰摂取・過度の喫煙や精神的因子が多いと言われています。

通常であれば、数分間続いた後おさまりますが、数時間以上も難治性しゃっくりでは、長期(1~2年)にわたることがあり、このような場合、うつ状態・食欲不振・睡眠障害・体重減少・栄養障害などを伴い、重篤な身体障害を来たすことがあります。

 

☆ どうしたらよいの?

数分~数十分で治まるような「しゃっくり」は心配することはありませんが、長時間続くようであれば、できるだけ早く原因を突き止める必要があります。まれに、手術や腹部の疾患による横隔膜の直接刺激・アルコールや脳腫瘍などによる中枢神経刺激・気管支、肺炎による末梢神経刺激が原因となる場合があるからです。

 

☆ しゃっくりをとめるには?

色々な言い伝えがありますが、いずれも、刺激により横隔膜の痙攣を治める、また気持ちを落ち着けて横隔膜の過剰な働きを緩めるなどの効果 を期待したものです。

 

〈 中医学からみるしゃっくり〉

医学用語でしゃっくりは「吃逆(きつぎゃく)」「えつ」といい、中医学では「あく逆」とも称します。

吃逆は、胃気の上逆によって、横隔膜が刺激され痙攣をおこすと考えられています。

 

人間の体は、それぞれの臓器や組織がお互いに強調し、バランスを保つことによって形成されています。1つの臓器は自らの役割を果 たすのみにとどまらず、他の臓器とも繋がりをもち、協力して機能を果 たすのです。

そのため、どこか1つの臓器に問題が発生すれば、他の臓器にも影響を及ぼします。  

中医学では、問題のある臓器に対する治療だけではなく、影響を受けている臓器、また、影響を及ぼした臓器に対しても治療を行い、崩れた体のバランスを整え病気を治していきます。そのためには、まず健康(中庸)な臓腑の働きを学び、どうして病気になったのか、臓腑が邪に犯されるとどうなるかなど、基本的な考えをよく理解することが大切です。

 

西洋医学でいう臓器と、中医学でいう臓腑には、少し違いがあります。

中医学でいう臓腑には、

〔五臓〕肝・心・脾・肺・腎

〔六腑〕胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦

〔奇恒の腑〕脳・髄・骨・脈・胆・女子胞

があります。

臓は気・血・津液(生命活動を維持し、人体を構成する基本物質)などを化生したり、貯える働きをもちます。

腑は、飲食物を運搬したり、伝導、排泄する働きをもちます。

奇恒の腑は、形は腑に似ていますが、一方でその性質や働きが臓にも似ているので、奇恒(異常な)の腑と呼ばれています。

 

この中で吃逆と最も関係が深い臓腑は、胃になるので、その機能を詳しくみていきましょう。

 

○ 胃

先ほど述べたように、胃は六腑に分類されます。

この六腑というのは、水穀(飲食物)を消化して、身体に有益な物質である水穀の精微と、不要な物質である糟粕(カス)との分け、水穀の精微を五臓に受け渡し、糟粕を大小便に変えて排泄を行う臓器です。受け渡された水穀の精微から、五臓が気・血・津液を生成します。

六腑は三焦(形は無く、各臓腑の機能を統括し、水液や原気を中心とした諸気を運行させる通 路)を除くと、みな一つに連なった中空の器官になっていて、その中に有形の水穀を通 過させやすくなっています。そのため、六腑の病症の多くは、水穀が下降せずに、詰まったり、逆流する事によってあらわれてきます。(便秘・嘔吐・ゲップなど)

 

次に、各腑の働きを詳しく見てみましょう。

六腑のうち、口から吸収された水穀が最初に運ばれる臓器が胃です。

胃は水穀を受け入れ(受納)、消化し(腐熟)、消化物を下方の臓器に渡す(和降)という三つの働きをします。  

小腸は、胃の下にある臓器で、胃で消化された水穀を人体に有益な水穀の精微(清)と、不要な糟粕(濁)とに分類します。そして、清を脾に、濁を水分とそうでないものに分けて、それぞれ膀胱と大腸に運びます。  

また、胆は肝で生成された胆汁を小腸に分泌して、消化を助けていきます。

このようにして獲得された水穀の精微が、人体にとって欠かす事の出来ない気・血・津液の生成材料になるのです。

 

では、ここから本題の胃の生理作用に入りましょう。

 

六腑に分類される胃は、五臓に分類される脾と表裏関係にあります。、

主な役割は、飲食物の初歩的な消化を行い、小腸に送ることです。

 

○胃の生理作用○

1.胃は腐熟を主る。

口から入った飲食物は、まず初めに胃で受け入れられ(受納)、ドロドロの粥状態に変化します。この働きを「胃は腐熟を主る」といいます。

この胃の働きの失調は、上腹部の張り、悪心、嘔吐、食欲不振などの症状としてあらわれます。

 

2.胃は降を以って順となす

胃には腐熟し終わった飲食物を、一つ残らず小腸に送り出す働きがあります。このことは、飲食物を下に降ろすことでもあるので、「胃は降を以って順となす」といいます。

この働きの失調は、上腹部のもたれ、悪心、嘔吐などの症状としてあらわれます。

 

胃はその働きから、「水穀の海」ともよばれます。そしてこの胃を始め、六腑が協力して行う消化・吸収の働きを統括しているのが五臓のうちの「脾」です。脾は飲食物を消化することにより得られた水穀の精微を運搬し(運化)、気・血・津液(生命活動を維持し、人体を構成する基本物質)を化生する大切な役割を持っています。脾は運化を主り、胃は脾の管理のもと、受納・腐熟・和降を主るのです。これは、臓腑の主従関係の現れですが、脾と胃には、また別 の興味深い関係が存在しています。  

その一つが、脾気と胃気の運動性です。脾気は昇清(飲食物の中から得られた清を、肺に持ち上げるなどの働き)という上昇方向への運動性を示すのに対し、胃気は和降を主り、消化物を下方にある小腸に運ぶ下降方向への運動性を示します。  

また、脾は「燥を喜び、湿を悪む」のに対し、胃は「潤を喜び、燥を悪む」性質を持ちます。これは、胃は飲食物を通 過させる中空器官であり、もし飲食物が乾燥しすぎると、詰まって下降しなくなるので、潤いが必要だと考えるのです。これに対し、脾は水液の運化や昇清を主るので、水液が多すぎると運び切れなかったり、清い津液を化生できないために、脾は湿潤を嫌うと考えたのだと言われます。

以上のように脾胃は、昇降・燥湿など相互に相対した作用によって、消化活動を主るのです。

 

このように正常であれば下降するべき胃気が、何らかの影響をうけて上逆することを「胃気上逆」といいます。

これが吃逆を引き起こすのです。

 

次に、胃気上逆をおこす原因、その特徴とともに中医学での治療法を見てみましょう。

 

 

◎ 弁証〔胃寒〕

○ 起因 

生もの、冷たいものの過食・飲食の不摂生、または腹部が寒冷刺激を受けることにより、寒邪が胃に侵入する。 寒邪が胃を犯すと、陽気が損傷され寒凝気滞となり、これにより胃は和降を失い、胃気上逆となる

○ 主症

しゃっくりの音が低くゆっくり・温めると軽減・心か部の冷感・膨張感

○ 兼症

口渇なし、味覚正常、食欲不振、小便は透明で量が多い、水楊の下痢

○ 舌診:白潤苔

○ 脈診:遅緩

○ 治則:温中 和胃降逆

○ 配穴:共通〈中かん・内関・足三里・胃ゆ・かくゆ〉・梁門・公孫

 

 

◎ 弁証〔胃火〕

○ 起因

辛いものの過食など飲食の不摂生により火を生じ、胃熱が亢進される。

胃は潤を喜び、燥を悪むので、胃火が気・津液を損傷すると、胃の潤降の機能が失われ、胃気が上逆する。

○ 主症

しゃっくりの音が大きくてよく響く・激しく上逆して出る・冷たいものを好む

○ 兼症

口臭、口渇、顔色が赤い、小便は少なく濃い、便秘

○ 舌診:黄苔

○ 脈診:滑数

○ 治則:清熱 和胃降逆

○ 配穴:共通・陰谷・内庭

 

 

◎ 弁証〔肝気上逆〕

○ 起因

精神的な抑うつや怒りで肝気が火に変化して上逆する。肝とは、五臓のうちの一つで、全身の気を順調にめぐらせ、精神状態を安定させる機能を持っている。ストレスなどによりこの疏せつの働きが失調すると、気の流れが停滞し肝気鬱結を現し、さらには化火する。

○ 主症

しゃっくりが連続する・ストレスを感じることにより症状が悪化する

○ 兼症

あい気(ゲップ)、胸悶、心か部のつかえ感、膨満感

○ 舌診:薄白苔

○ 脈診:弦

○ 治則:疏肝 和胃降逆

○ 配穴:共通・太衝(しゃ法)

 

 

◎ 弁証〔脾胃陽虚〕

○ 起因

過労や慢性疾患により脾気を消耗し、運化機能が損なわれることにより、水穀・水液の運搬が悪くなる。これにより生じた痰濁(水液の代謝障害によって形成され、人体の局部に貯留した異常な水分)がさらに正常な脾胃の機能を妨げ、寒冷症状及び、胃気上逆をおこす。

○ 主症

しゃっくりの音が低くて弱い。続けては出ない。

○ 兼症

手足が冷える、食欲不振、倦怠感、食後膨張感、痰や涎を吐く

○ 舌診:はん大、淡

○ 脈診:細、あるいは濡

○ 治則:益気 和胃降逆

○ 配穴:共通・気海・三陰交(補法・灸法)

 

 

◎ 弁証〔胃陰虚・胃陰不足〕

○ 起因

胃が滋潤能力を失調し、降濁作用の低下(胃失和降)によっておこる。

これは胃熱症、湿熱症の後期などで、気機が鬱滞、化火して陰液を灼損したり、胃陰が虚して咽喉部や腸を潤せないことによる。

○ 主症

しゃっくりの音が早く続けて出ない。

○ 兼症

口渇、舌の乾燥、煩渇、るいそう、頬が赤い、胃の灼熱感、空腹感はあるが食べたくない、便秘

○ 舌診:ほう、または紅。苔が少ない

○ 脈診:細数

○ 治則:滋陰 和胃降逆

○ 配穴:共通・太けい・照海・廉泉(補法)

 

 

※ 足三里は胃経の合穴であり気逆を止める効果が期待されます。補法では健胃益気、しゃ法では清熱和胃をはかります。

※ 足三里・中かんは、水湿運化に大切な処方穴です。

※ 公孫は脾経の絡穴であり、別支が胃経を走り、また衝脈に通じているので、同穴を取ると健脾和胃・理中降逆が可能となります。

 

 

手術後や神経疾患などの重篤な場合でなく、頻繁にしゃっくりが出やすいときは、まず食生活を見直してみて下さい。

冷たいもの、辛いものなどを取り過ぎていませんか?食事時間が深夜になっていませんか?また、アルコールを取り過ぎていませんか?

これらはいずれも、胃気の正常な働きを妨げ、しゃっくりを始め、身体に様様な影響を与える原因となるので、改善が必要です。

お刺身や生野菜、ジュース、ビール、香辛料などは控えましょう。

そして、特にストレスを感じやすい方は、気の巡りが滞りやすいので、気分転換に散歩を取り入れたり、ヨガやストレッチで体をほぐすことをお勧めいたします。また、ゆずなどの柑橘類やジャスミンティーなども気の巡りを良くするので、どうぞお試しください。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

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