よく体がだるかったり眠れなかったりすると、「自分は自律神経失調症ではないか?」と心配される方がいる位 『自律神経失調症』は一般の方もよくご存知の疾患です。しかし、「自律神経失調症って何?」と訊かれると、何となくイメージすることは出来ても明確に説明が出来る方は少ないのではないでしょうか。それは、一言で「自律神経失調症」と言っても様々な症状がありますし、そもそも「自律神経」と言う神経自体は聞き馴染みはあっても、いったいどういう神経なのかがよくわからないからではないでしょうか?
一体「自律神経失調症」とはどのような病気なのでしょうか?まずは現代医学(西洋医学)の観点から説明してゆきたいと思います。
▼現代医学(西洋医学)から診た「自律神経失調症」▼
医学辞典で「自律神経失調症」を調べてみると【種々の身体的自律神経性愁訴を持ち、しかもこれに見合うだけの器質的変化はなく、原因も不明であり、自律神経失調に基づく一連の病症】と書いてあります。
つまりは、『内臓や食道といった臓器や器官などには異常はなく原因も不明な、自律神経の失調によって現れる様々な症状の総称』であるわけです。ですからこの疾患に関しては、まず自律神経の説明から始めていきたいと思います。
○自律神経とは?○
自律神経は随意的に働く体性神経と対比して不随意神経とも呼ばれています。例えばボールを足で蹴る時は、脳から足の筋肉へ指令が行く事により足の筋肉が収縮してボールを蹴るわけですが、この時脳から筋肉へ指令を伝える神経が随意神経(体性神経)です。よく皆さんが言う運動神経(体性系遠心性神経)と言うやつです。他には感覚神経(体性系求心性神経)もこの中に含まれます。これに対して内臓・血管・汗腺などは意思による指令ではなく独立して働いております。これらの循環(心拍・血圧)・消化・排泄・体温維持などの体内機能を調節しているのが不随意神経(自律神経)です。これらの体内調節機構が意思から自律しているからこそ、我々は眠っている間も呼吸が止まったりせずに、ちゃんと生きていられるわけです。逆を言えば手や足は意思で動かすことが出来ても、内臓や血管などは意思では動かすことが出来ません。ですから一般 的に言えば「自律神経」は自分の意思でコントロールは不可能と言えます。
○自律神経の分類○
自律神経は求心性に働く「求心性神経」と遠心性に働く「遠心性神経」に2分されます。「求心性神経」は内臓求心神経とも言い各種内臓の情報を伝えます。「遠心性神経」は更に「交感神経」と「副交感神経」に分かれます。「自律神経失調症」はこの「交感神経」と「副交感神経」が深い関わりをもってきますので、もう少しこれらの神経を説明していきましょう。
○交感神経と副交感神経○
よく「交感神経は緊張の神経で、副交感神経はリラックスの神経」などと言われます。これは、興奮状態時は交感神経の活動が亢進し、反対にリラックス状態時は副交感神経が亢進すること意味します。例えば交換神経は心拍数増加・血管収縮・発汗促進・などの働きがあります。それに対して副交感神経は心拍数低下・血管拡張・発汗抑制といった具合に働きかけるわけです。もう少し具体的に説明をすると、喧嘩や運動時は交感神経が働き心臓の心拍数が上がります、喧嘩が終わり落ち着いたり、運動やめてしばらくすると副交感神経が働いて心臓の心拍数は下がります。他にもまだまだ沢山の働きがありますが、いずれもこの様にして交感神経と副交感神経はバランス良く一つの器官や臓器に対して反対の方向に働きかけることにより機能の調節をしています。
さて、ここで今まで説明してきたことを簡単にまとめてみます。
1.自律神経は不随意神経とも呼ばれ、意思とは独立した働きをしています。
2.自律神経は呼吸・心拍・血圧・体温・発汗・消化・排泄などの生体が生きるための最も基本的な体内機能の調整をしています。
3.自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、この二つの神経がバランス良く相反する働きをすることで体内機能の調節をしています。
ここまでは自律神経の働きについて簡単に説明してみましたが、次に自律神経の失調について説明したいと思います。
○自律神経の失調について○
「自律神経」の失調とは、「交感神経」と「副交感神経」のバランス調整が上手に行われなくなったこと意味します。先ほども説明しましたが「交感神経」と「副交感神経」は、その時その時の体の常態に合わせてバランスよく相反する働きをすることで体内機能の調節をしています。ところが何らかの原因により、このバランスが崩れると、共に亢進したり不安定になったりしてしまうのです。この様な状態を自律神経の失調状態と言います。
先ほども述べましたが「自律神経」は生体が生きるための様々な体内機能の調整をしています。その様な神経が失調を起こしてしまうわけですから、様々な症状が出る理由は理解していただけたかと思います。
では次に自律神経失調症の症状を見てみましょう。
○自律神経失調症の症状○
様々な症状がある「自律神経失調症」ですから、ここで全ての症状を紹介することは不可能なので、主な症状を部位 ごとに紹介します。
頭・・・・・・・ |
頭痛・頭重感 |
顔面・・・・・・ |
口の渇き・口中の痛み・味覚障害・耳鳴り 閉塞感・疲れ目・涙目・目の乾き |
のど・・・・・・ |
異物感・イガイガ感・圧迫感・のどのつまり |
呼吸器・・・・・ |
息がつまる・息が出来ない・酸欠・息切れ |
心臓・血管・・・ |
動悸・脈のみだれ・胸痛・立ちくらみ・のぼせ 胸部圧迫感・冷え・血圧の異常 |
消化器・・・・・ |
食道のつかえ・異物感・嘔吐・吐き気・腹部膨満感・下腹部の張り・ 腹鳴・胃の不快感・便秘・下痢・ガスがたまる |
筋肉・関節・・・ |
肩こり・痛み・腰痛 |
手・足・・・・・ |
しびれ・痛み・冷え・ほてり・震え・ふらつき |
生殖器・泌尿器・ |
インポテンツ・早漏・生理不順・頻尿・残尿感 |
皮膚・・・・・・ |
発汗異常・冷や汗・乾燥感・痒み |
精神症状・・・・ |
不安感・恐怖感・イライラ・落ち込み やる気や集中力がない・ささいな事が気になる 記憶力や注意力の低下・悲観的になる・怒りっぽい |
全身症状・・・・ |
疲れやすい・倦怠感・めまい・微熱が続く ほてり・食欲不振・不眠・すぐに目が覚める 朝、起きることができない・体温調節不能・失神発作 |
ざっと主な症状を列挙してみましたが、多岐わたることが理解していただけたと思います。
しかし、この症状の中には軽度の鬱や精神疲労によるものもかなり多く含まれていますので、診断は心療内科などの専門医の受診をおすすめします。
次に、何故「自律神経」が失調をおこしてしまうのかを考えてみたいと思います。
○原因・性差・好発年齢○
残念ながら原因はまだ不明です。
しかしながら自律神経のバランスが崩れる要因にストレスが関与しているケースが多いようです。先ほど自律神経は一般 的に自分の意思ではコントロール不可能と述べましたが、実際にはかなり感情の影響を受けていますし働きも変化してきます。ですから「自律神経失調症」の患者さんの約半数はストレスによるものと言われております。そこで始めに自律神経失調症の患者さんのタイプを大きく4つに分類してみたいと思います。
1.本体性型自律神経失調症・・・これのタイプは特にストレスとは関係がなく、体質的に自律神経のバランスを崩しやすい方がなりやすい。
2.心身型自律神経失調症・・・・ストレスが原因となるタイプ
3.神経症型自律神経失調症・・・神経質な方に多く、悩みや不安などのコントロールが苦手な方がなりやすい。
4.抑鬱型自律神経失調症・・・・几帳面・完ぺき主義の方がなりやすい。
これらの分類は病気の原因と密接に関係していますので、自分がどのタイプかを把握することで、適切な治療に繋がるばかりではなく予防や再発防止にも役立ちます。
尚、一般に好発年齢は思春期から40歳代の間で男性より女性が多いと言われています。
○診断○
次に現代医学では「自律神経失調症」をどのように診断してゆくかを簡単に説明したいと思います。
まず、最初に身体に器質的な疾患がない無いことを調べます。次に面 接や心理検査を行い心因の有無を調べ、更に自律神経系の検査を行います。
○治療○
治療の基本は精神療法になります。そして補助的に精神安定薬、及び自律神経遮断薬などと、体の不調がある部分に対しての薬を使用します。
○まとめ○
現代医学の観点からみた「自律神経失調症」は理解できましたでしょうか?簡単に言ってしまえば自律神経が失調してしまって起こる不定愁訴の総称ということになります。そして特長として、多岐にわたる症状があるにもかかわらず検査をしても異常がみつからないという点があります。こういった点が一般 の方がこの疾患に対して何となくイメージは出来ても明確にはわからないところではないでしょうか。
次に中医学の観点から「自律神経失調症」の説明をします。
引き続きNOー49をお読み下さい。
医療機関の薬で症状が改善しなくて困っている方はお読みください。
自律神経失調症の症状を改善させるには、
まず自分の体質を知ることが重要です。
ではなぜ症状改善の為に、体質を知ることが必要なのでしょうか?
体質を見て治療法を決めることは、当院の特徴です。
なぜなら、他院では症状に対しての治療を行っています。
たとえば、自律神経失調症の患者さんに薬を投与するなどです。
鍼灸治療の場合は一般的に、自律神経失調症の部位に鍼治療を施術するところが多いです。
これらも一つの治療法ではございますが、本質的な原因(起因・素因)に対しての治療が
行われていないので良い結果に繋がらないケースがあります。
例えば、素因に虚弱体質が有ればその点にもお手当を加えることにより一層治療効果を高めることが可能になるのであります。
故に自律神経失調症でも、ストレス、睡眠不足、過労、食事の不摂生など、原因は様々です。
それらは患者さんの体質から引き起こされているので有ります。
ですから、体質を知らないと症状の根本的な原因も分からず、いくら薬を飲んだとしても症状は改善が難しい場合があります。
当院ではまず体質を見極めてから、症状改善にベストな治療法を選択しています。
よって患者さんごとにオーダーメイドの治療を行っています。
▼中医学(東洋医学)から診た「自律神経失調症」▼
実は中医学では「自律神経失調症」はありません。なぜなら中医学では神経という概念がありませんので自律神経というものが存在しないのです。一見、乱暴な話にも思えますが、中医学は現代医学とは異なり、体内にある臓器や器官と言った物質的なものに注目するのではなく、働きに注目しているからなのです。このような考え方は物心がついた時から現代医学に慣れ親しんでいる我々にはなかなか理解しがたいところですが、つまりは現代医学とは生理感や病理感の概念が全く違うということです。そして、これはどちらが優れていてどちらが劣っているというものではありません。どちらにも得意・不得意があります。ですから病院で治療してみてあまりよい結果 が出なかった時に、中医学の受診をしてみたら治ってしまった、という事が起こるわけです。そして「自律神経失調症」もそんな疾患の一つだと思います。
○中医学の診察方法○
現代医学では診察をする際、近代的な器械や検査器具などを使用しますが、中医学では四診という手段を用いて診察をします。四診とは、全身や顔色や舌の状態を見る「望診」、声や話し方や臭いから情報を得る「聞診」、患者さんに色々質問して情報を収集する「問診」、脈をとったり、お腹や患部などを触ったりする「切診」、の四つから成り、これら全ての情報を総合して診察をおこないます。この診察方法は現代医学では行われない方法です。「四診」は東洋医学の独特でかつ興味深い方法なのでもう少し詳しく説明しましょう。例えば「脈」についてですが西洋医の先生方も脈をとりますが、診ている観点が違うのです。中医学では脈拍数だけではなく、脈の浮き沈み・太さ・触れ方などを見ます。更に手首で脈をとるのですが、その位 置を若干変えることで病気のある場所を探ったりもします。「舌」に関しても同様で、我々は形・色・苔・湿り気などを見て診察を行っております。現代医学はミクロの医学と言われ、より細かく細かく見てゆきます。その結果 、近代的な検査が必要になり、数値に注目する診察が行われています。それに対して中医学はマクロの医学と言われ、目には見えない働きや体内のエネルギーの歪みや臓器の相互関係や肉体と自然との関係等に注目して診察が行われます。
そしてこの目や数値では測れない体内の歪みを「四診」を用いて診察してゆくわけです。
○未病という考え方○
最近テレビのCMなどで「未病」という言葉を耳にするようになりました。「身体の調子が悪いので病院で検査をしたのに検査結果 はどこも悪くない言とわれた」といった話をよく聞きます。患者さんとしてみれば体調不良は確実にあるわけですからとても辛い状況です。なんとか治して欲しいと思うわけですが、データーを重視している現代医学では検査結果 が正常値であれば「異常無し」という診断になり治療は基本的には行われません。こういった状態を中医学(東洋医学)では「未病」と呼んでいます。
例えば、検査結果が正常値であっても異常値に近い場合もあるわけです、このような場合は例え正常な範囲であっても身体の不調に敏感な人であれば何らかの症状が現れます。身体の働きに注目する中医学では検査データーが正常値であっても身体の不調は身体の異常と考えます。
つまり、身体に不調があるということは体内のどこかの働きが失調をしているわけです。これは中医学的に言えば体内のエネルギーのバランスが崩れている状態で、身体の中で歪みが起きているわけです。そこで先ほど紹介した「四診」という手段を用いて、何処でどの様にエネルギーバランスが崩れているかを探し歪みを調整してゆきます。ですから「未病治療」「未病予防」は中医学の得意分野の一つなのです。
さて、話を「自律神経失調症」に戻しましょう。先ほど、近代医学から診た「自律神経失調症」で述べましたが、この疾患の特徴は様々な不定愁訴があるにもかかわらず、器質的な異常は無く検査をしても原因が見つからないという点でした。つまりは今説明した「未病」に含まれる部分が多い疾患といえます。
さて、中医学の観点で症状の説明をする前に少しだけ中医学の生理感について説明をします。
○中医学の生理感○
・・「気」「血」「水(津液)」・・
人間は基本的に「気」「血」「水(津液)」という3つの物質から出来ています。そして健康な身体は「気」「血」「水(津液)」が多すぎることも、少な過ぎることも無く、適量 な状態で且つスムースに流れていなければなりません。もし、どれかが少なくなったり、流れが滞ったりすると、身体の中で歪みが生じ不調が現れます。又、その状態が長引けば、他の部位 にも影響が出てしまい、症状は更に悪化します。「気・血・水」の各々の作用については病気の症状と照らし合わせて説明したほうがわかり易いと思いますので後述します。
・・「五臓六腑」・・
次に内臓について説明します。よく年配の方が「五臓六腑にしみわたる」などという表現をいたしますが、この五臓六腑というのは中医学が考える内臓をさします。五臓とは肝・心・脾・肺・腎を言い、六腑とは胆・大腸・小腸。胃・三焦を言います。五臓六腑の「三焦」以外は皆さんも知っている内臓の名称と同じですね。しかし、その働きとなると現代医学で考える働きとは大分違ってきます。尚、中医学が考える内蔵の働きについても「気・血・水」と同様に病気の症状と照らし合わせて説明します。
・・経絡・・
経絡とは簡単に言うと「気」「血」が流れる通路のようなものです。経絡は身体中に何本も走っており、一部例外はありますが経絡の上にツボが存在しております。針灸やツボ押しはツボに刺激を与えることにより、この経絡を通 じて全身や歪みのある部位へ刺激を流しているのです。また、経絡にはそれぞれに臓腑と深い関係のある経絡があります。
○病因○
病因とは病気を引き起こす原因です。中医学ではこの病因を外因・内因・不内外因の3つに分類します。
◎外因とは人体の外部が病因になることで主に環境をさします。「六淫」といい風・暑・寒・湿・乾・熱があります。
◎内因とは過度の精神状態が病因になることで「七情」といい怒・喜・思・悲・憂・驚・恐があります。
◎不内外因とは飲食の失調・外傷・寄生虫・過労・運動不足などがあります。
○中医学の観点から見る代表的な「自律神経失調症」の症状○
現代医学では原因が無い不定愁訴の総称を「自律神経失調症」としてひとまとめに考えたのに対して、中医学ではこれらの症状は全て独立した疾患と考え、個々に原因や病気の機序を診察して治療を施してゆきます。
それでは今から症状の説明をしてまいりますが、症状が多岐に渡るため全てを説明することや各々を深く説明するのは不可能なので、代表的な症状を「気・血・水」「五臓六腑」の働きと照らし合わせながら、簡単に説明をさせていただきます。尚、各々症状の細かい説明に関しては、既に当HPにアップされている疾患については別 記いたします。それ以外については次回の機会に回したと思います。
■頭痛・耳鳴り・難聴
「肝」はノビノビした環境を好みます。しかし、過度のストレス・イライラなどの状況下では「肝」はノビノビできず「肝の気」がスムースに流れなくなってしまい渋滞を起こします。気や血は渋滞を起こすと熱を生む特性を持っていますので、肝の気が渋滞したことにより熱が生まれてしまいます(肝鬱)。又、「肝」は「血」を貯蔵しており「腎」は水を主ります。
「血」も「水」もどちらも身体の熱を冷やす働きをしています。ところが睡眠不足・過労などにより肝に貯蔵されている「血」や腎の水が消耗してしまうと身体を冷やすことができなくなり熱を生んでしまいます。(肝腎陰虚)
皆さんもご存知のように自然界では熱は上に行きます。身体の中でもこれと同じことが起こります。肝の気の渋滞によって生まれた熱や「血」や「水」の不足によって生まれた熱は上に行き、頭や耳に影響を及ぼすことがあります。熱の影響が頭に及ぼせば頭痛で特に側頭部痛が起こりますし、耳に及ぼした場合は難聴や耳鳴りを起こします。
「脾」は運化といって飲食物から「気・血」を生成します。ところが「脾」の機能の失調がおこると水液を気化する力も減退してしまい体内に余分な水分が停滞してしまいます〔脾気虚〕。また、冷たい物や油もののとり過ぎや過度の飲酒も余分な水分を生みます。この余分な水分のことを「痰濁」といい、この痰濁により頭痛や頭重感・耳鳴り・難聴の症状が現れます。頭痛は前頭痛が多いようです、耳鳴りは重く濁った音がして難聴は耳が閉塞してはっきり聞こえません。又、「脾」の運化作用には食べ物から気血を作りそれを上にある肺などに送る働きも含まれます。この気血を上に持ち上げること「昇清機能」と言います。「脾」の運化作用が失調すると気血を生成できなくなるばかりか昇精機能も減退してしまいます。その結果 、頭部の栄養不足が起こり頭痛や耳鳴り・難聴を生じます。〔気血両虚〕
「腎」は『精』と言って生命の根本をなすものを蔵するとされています。『精』は両親から受け継いだ「先天の精」と飲食物から作られる「後天の精」により形成されます。『精』は腎に貯蔵されることから「腎精」とも言います。腎精の作用のなかに脳の滋養があります。老化・過労・睡眠不足は『腎精』を消耗させます。『腎精』が消耗すると脳の滋養不足が起こり頭痛や耳鳴り難聴を招きます。(腎虚)
■乾燥
「水(津液)」は皮毛・臓器・喉・目・鼻・口・耳・舌を潤しており、「血」にも潤す働きがあります。これらを滋潤作用と言い、これらが不足すると目・口・皮膚の乾きが生じます。〔陰血不足〕
「肝」は「血」を貯蔵しています。「肝」の「血」を貯蔵する能力が減退すると、「血」の不足が起こり目の乾きが生じます〔肝血虚〕
■胸痛
「気」は温煦作用といって身体を温める働きがあります。温煦作用が失調してしまうと気・血の流れが経絡で停滞を起こします。(陽虚)
「肝」の働きは疏泄といって気・血の流れの調節をしています。肝の疏泄が失調すると気・血の流れが経絡で停滞をお越します。)
「脾」の機能失調や油っぽいものや甘いものや味の濃いものを多量に摂取したり、過度の飲酒などにより作られた『痰濁』も気・血の流れを妨害して経絡で停滞を起こします。
経絡の流れが悪くなると停滞を起こした箇所で痛みが生じます。胸部で停滞が起これば胸痛が生じます。
■動悸・脈の異常・息切れ
「気」には推動作用といって気・血の流れを良くする働きがあります。推動作用が失調すると息切れが生じます。(気虚)
「心」は血を全身へ循環しています。「心」が失調することで血が全身を廻らなくなることで動悸・脈の異常・息切れの症状が現れます。(心血虚)
「肺」は呼吸をおこないます。「肺」が失調すると息切れ・呼吸がしづらい、などの症状が現れます。(肺気虚)
■消化器の失調
「血」の滋潤作用の失調が起こると腸が滋潤されず便秘になります。(血虚) 動悸の説明で述べましたが「気」には推動作用があります、推動作用が減退すると押し出す力がなくなってしまい便秘が起こります。(気虚)
辛い物の食べ過ぎや身体の中で熱がこもりやすい体質の人は「胃」に熱がこもり「水(津液)」を損傷してしまいます。その結果 、便秘が起こります。(胃熱)
「脾」の働きには「運化作用」といわれ、飲食物から「気」や「血」を作る働きがあります。「脾の運化作用」が失調すると食欲不振・腹部のもたれ感・食後の倦怠感・食後の眠気・軟便・下痢・などの症状が現れます。(脾気虚)
「胃」は初期消化の働きをしていますので、「胃」が失調を起こすと、上腹部のもたれ症状が現れます。又、「胃の気」がスムースに流れないと胃部の経絡で「気」が渋滞を起こし、胃腸の張った感じが現れます。更に「胃」は通 常食べた物を食道から受け取り、下にある小腸に引き渡します。これは「胃の気」の流れが上から下に流れることにより食物も上から下に落ちて行っているわけです。ところが何らかの原因により「胃の気」が下から上に流れてしまうことが起こります。この「気」の流れが逆になること『気逆』(胃の場合は上逆とも言う)と言い、「胃の気」の気逆や「胃」に余分な水分が溜まり熱化するとゲップ・食欲不振・悪心嘔吐が起こります。(湿熱)
中医学では「肝」が障害されると、それ続いて「脾」「胃」が障害される場合があります(木克土)。これは中国の古代哲学(五行説)の考え方からきたものですが「肝気犯胃」)とか「肝気横逆」といい、ストレスなどで「肝の気」が停滞を起こし、その影響が「脾」に及ぶと下痢になり(肝脾不和)、「胃」に及ぶと「胃気の上逆」が起こります。
長期に渡る病気や疲労により「胃」の中の必要な水分が損傷されると、食欲不振をまねきます。(胃陰虚)又、「脾」と「胃」の気が衰退しても、食欲不振が起きます。(脾胃虚弱)
■イライラ・怒りっぽい・憂鬱感・ため息・不眠・思考力低下・不安感・多夢・精神疲労
先程も記載しましたが、腎精の作用のなかに脳の滋養があります。「腎精」が不足して脳を滋養できないと精神疲労を起こします。〔腎精不足〕
「血」は精神活動に対しての栄養源になっています。「血」が充実していれば情緒も安定しますが、不足すると不安感・不眠・情緒不安定などの症状が現れます。(血虚)
「心」と「脾」が失調すると血が生まれず不眠になります(心脾両虚)
「肝」は「血」を貯蔵しております。この貯蔵力が減退することで不眠が起こります。〔肝血虚〕又、肝の疏泄が失調して血が全身へ廻らなくなっても精神症状があらわれます。〔肝鬱〕 身体の中の余分な水分が熱化し「心」を犯し不眠をまねきます。(痰火擾心)
ストレスなどにより「肝の気」が停滞を起こし熱化したことにより「心」に影響をおよぼし不眠が起こります。(肝火上炎)
「心」は精神の働きを統括していますので、「心」が失調すると様々な精神症状があらわれます。
臓腑と精神の関係をもう少し詳しく説明すると、「肝」は理性・判断・意思の調節、「脾」は思考・記憶・集中の調節、「腎」は意思・信念・記憶力が宿り、これらを「神」と言い、「心」が「神」を統括しています。
■めまい・ふらつき・健忘・頭がボーっとする
「血」は脳髄を栄養しています。「血」が不足すると脳髄が栄養されなくなり結果 としてめまいが起こります。(血虚)
「脾」の作用には「昇提作用」といわれ、飲食物から作られた「気・血」を上にある「肺」まで送る働きがあります。「昇提作用」が失調するとめまい・ふらつき・健忘・頭がボーっとするなどの症状が現れます。(脾気虚)
「腎」は髄を作ります。中医学では脳は髄が集まって出来ると考えますので、「腎」の働きが失調するとめまい・健忘・頭痛や、頭がボーっとしたりします。〔腎精不足〕
■疲れ易い・無汗・多汗・息切れ・倦怠
「気」には気化作用といって物を変化させる働きがあります。例えば食べた物を「気」や「血」に変化させたり不要な水分を汗や尿に変化させています。気化作用が失調すると無汗や尿が出づらくなります。又「気」は栄養作用といって身体の隅々を栄養しています。栄養作用が失調すると、痩せ・疲れ易い・倦怠などの症状が現れます。その他に「気」には固摂作用といって異常発汗や出血を防ぐ作用があります。固摂作用が減退すると多汗が生じます。(気虚)
「心」や「脾」は気血の生成や循環に深く関与します。これらが失調すると疲労や倦怠を感じます。(心脾両虚)又、「腎精」の不足でも疲労や倦怠がおこります。(腎精不足)
「肺」は宣発粛降といって「脾」で作られたエネルギーを全身へ散布します。「肺」が失調してしまうと、エネルギーを全身へ送ることができずに息切れや疲れ易くなります。また、宣発には発汗の作用もありますので、失調を起こすと無汗になることもあります。逆に「肺」は発汗だけでなく皮毛や汗孔を閉じ、発汗を抑えることもしていますので失調を起こすと多汗にもなります。(肺気虚)
■不妊・性欲減退・インポテンツ・早期の閉経
「腎精」により人は発育します。逆に「腎精」が衰えると、老化が始まります。「腎精」がある一定のレベルを超えると精子が作られたり排卵が始まったり性欲がでてまいります。ですから「腎精」が衰えると不妊・性欲減退・インポテンツ・早期の閉経といった症状が現れます。
△インポテンツ
身体の中に余分な水分が貯まり熱化し起こります(湿熱)
過剰な精神状態(恐怖)などから「腎」と「心」が犯され起こります(七情内傷)
過度な性交など(房事過度)により「腎」のエネルギーが消耗したり、下半身を冷やしたりしても起こります。(命門火衰)
過度な思い悩みで「心」や「脾」が障害され気血が作られなくなり起こります(心脾両虚)
■体温調節不能
「気」の温煦作用が失調すると手足の冷え・寒がり・などの症状が現れます。(気虚・陽虚)
代表的な「自律神経失調症」の症状を中医学の見地から「気血水」や「五臓六腑」の生理作用と照らし合わせながら説明してみました。今回は症状が多岐にわたったため簡単な説明になってしまいましたが、今回皆さんに一番理解して頂きたかったのは、「自律神経失調症」を現代医学と中医学の二つの視点で見たときに、全然違う観点で診察をしてゆくという事です。又、それぞれの症状はどのような機序でおこると中医学では考えるかをイメージできていただけたらと思います。
どうでしょう、理解して頂けましたでしょうか?
皆さんの中に「自律神経失調症」と診断され症状が改善されない方や、体調が優れないのに検査をしても異常が見つからないでおられる方は、是非一度別 の視点から身体の歪みを診てみてはいかがでしょうか?
***今回の症状で既に『病気別・わかる東洋医学診断』にアップせれている疾患のナンバーです
うつ・・・・・・・NOー9
過敏性大腸炎・・・NOー17~18
不眠・・・・・・・NOー21
冷え症・・・・・・NO-39
高血圧・・・・・・NO-42
ストレス・・・・・NO-43
未病・・・・・・・NO-44
めまい・・・・・・NO-47
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。