コラム

2019-03-11
【内科疾患】血尿・血便について

尿や便は、身体の健康状態を表す重要な指標です。

現代医学においても内科などでは、その状態は問われますが、それ以上に中医学では何科を受診しても、大抵、尿や便についての問診があります。

 

それは何故かというと、尿や便の状態には、その患者さんの病気の状態や、基本的な体質が反映されているからです。

中医学では、身体全体の様子を把握した上で、全体的にバランスの良い治療をしていきます。

 

最近は洋式のトイレが増えてきたため、自分の普段の尿や便の様子を知らない人が多いですが、日頃の健康管理のために、目で見ておくことをお勧めします。

 

血尿や血便は、自覚症状として気づく前に定期健診などで見つかることが多いようです。

見た目に色が普段と違うときも同様に、身体の中の何かしらの異変を表しているわけですし、何かの病気の場合もありますが、一過性で心配のない場合もありますから、早めに医療機関を受診しましょう。

 

 

<中医学的考え方>

 

中医学では常に、表面的な症状だけではなく、根本的な原因を重視して治療を行います。

身体の働きの全体的なバランスを整えていくことで、健康で活力のある身体づくりをしていきます。

なぜ、中医学では現代医学と違って、身体全体のバランスを整えることができるのかと言うと、基本的な身体の働きに関する考え方が違うため、おのずと治療法も違うからなのです。

詳しいことは、病気別わかりやすい東洋医学診断のまとめのページの上段に中医学で考える身体のしくみについて書いてありますので、

「わかりやすい東洋医学理論」をご覧下さい。

 

中医学では身体のみかたが根本的に西洋医学とは違います。西洋医学では身体を細かく分析し、細胞レベルでとらえますが、中医学では身体を大きく捉えて、小宇宙であると考えます。地球は大宇宙に存在する小宇宙の一つです。これと同じように地球からみれば、身体は小宇宙といえるのです。

宇宙に存在するものにはすべて意味があり、無駄なものはひとつもありません。

それぞれが、互いに影響しあいながら、バランスを保ち、大自然の法則に従って動いているのです。人間も同じように体内に存在するものすべてが重要な意味を持ち、個々の臓器も、互いに影響しあい、バランスを保って、健康を維持しているのです。

 

小宇宙である身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・水』です。

気・血・水が、身体を流れ良く巡る事で、身体内の臓器(五臓六腑)も、うまく働くことが出来、健康でいられると考えます。

 

○「気」・「血」・「水」について

<気>

気は人間が活動するために必要な基礎物質です。そのため気の働きは様々です。

主な作用には、物を動かす「推動作用」・栄養に関わる「栄養作用」・身体を温める「温煦作用」・身体を守る「防衛作用」・ものを変化させる「気化作用」・体内から血や栄養物が漏れるのを防ぐ「固摂作用」など様々な働きがあります。

 

<血>

血は様々な器官に栄養や潤いをあたえます。

ここにも中医学独特の概念があり、血は精神活動の栄養源でもあります。

ですから血の不足は精神不安や不眠を発症させます。

また、身体が熱くなりすぎないように冷却する働きもあります。

 

<水(津液)>

水は津液とも言い、体内にある正常な水液のことをいいます。

主な作用としては 身体の各部所に潤いを与えたり、血と同様に冷却する働きもあります。

 

この「気・血・水」の3つが、充分にあり、スムーズに流れていると、健康な状態が保たれます。

これらが停滞したり、不足したりすると、不調をきたし、様々な症状がでてきます。

 

○臓腑の働き

五臓六腑というのが東洋医学の考える内蔵のことです。

西洋医学のそれとは異なり、中医学では内臓を物体として区別するのではなく、働きで区別 します。

主な働きとして、六腑は飲食物の消化吸収を行い、五臓は栄養分から「気・血・水」を作り、運んだり、貯蔵したりしています。

 

五臓とは「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の事で、

六腑は「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」の事です。

 

各々の臓腑には西洋医学と同じような働きをするものや、全く違う働きをするものもあります。同じ臓腑の名前を使ってはいますが、中医学では臓腑の働きに注目していますので、名前が同じでも、全く同じ物を指しているわけではありません。

 

今回のテーマで関係深い臓腑は「心」・「脾」・「腎」です。

 

「心」: 中医学でいう「 心 」は西洋医学と同じ血液ポンプとしての役目に加えて、思考・精神作用の中枢とされています。

心を養う栄養物である血や体液(陰)・気(陽)などが充実していると精神的にもいい状態でいられます。この「陰」は冷やす作用があり、陽は温める作用があって互いにバランスを取り合っています。

 

「脾」:

1.食べたものをエネルギー(気・血・水)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。

この働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能が低下してしまいます。

 

2.エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。

この働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。

 

3.血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。

この働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

 

「腎」 : 生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。

「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。

このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。

「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

このエネルギーが足りなくなると、骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなったりします。

 

 

○タイプ別にみた血尿・血便

 

【血尿】

 

1.心火による血尿

主症状:

小便が赤く熱感がある。

随伴症:

顔面紅潮・喉の渇き・不眠

舌脈像:

舌尖紅・脈数

病機 :

「心」の陰陽バランスが崩れて、陰(冷やす作用)が弱くなった結果 、「心」に熱が起こり、「心」と関係深い「腑」である小腸に熱が移ったため、血尿が起きた。

治法 :

清心瀉火・止血

「心」の陰陽バランスを整えて、熱症状を鎮め、止血する治療をします。

 

2.脾腎両虚による血尿

主症状:

小便頻回・淡紅色の血尿

随伴症:

倦怠・顔面が黄色っぽい・腰背部がだるい・めまい・耳鳴り

舌脈像:

舌質淡・脈細

病機 :

疲労しすぎたり、長く病気をしていたりすると、脾と腎の働きが弱まり、統血作用・固摂作用(必要以上の血液が体外に漏れでないようにする)が弱まり血尿が起こる。

治法 :

健脾益腎・補気摂血

「脾」の働きを良くし、気を補って血が漏れ出ないようにします。

 

 

【血便】

 

1.湿熱による血便(血熱内蘊)

主症状:

便は鮮紅色・先に血が出て、その後便が出る。すっきり排便しない。

随伴症:

肛門の疼痛・腹痛

舌脈像:

舌苔黄膩・脈濡数

病機 :

脂っこいもの甘いもの味の濃いものをとりすぎたり、お酒を飲みすぎたりすることにより、脾胃の働きが悪くなり、「湿熱」※が生じる、または、外界から「湿邪」※が身体に襲来して、これが大腸に移行して損傷が起こり、 血便が起こる。

※「湿熱」:飲食の不摂生などにより、湿が内生し、滞って、熱化した状態です。

※「湿邪」:外因のうちのひとつで、体外から侵入する病因物質。

湿邪の特徴は気機を阻害しやすく脾胃の陽気を損傷しやすい、重濁・粘滞の性質があるなどです。

治法 :

清熱化湿・涼血止血

「湿」を身体の外に出し、熱を下げ、止血します。

 

 

2.脾胃虚寒による血便

主症状:

下血・色は紫暗色または黒

随伴症:

腹痛・顔色が悪い・精神不振・下痢

舌脈像:

舌質淡・脈細

病機 :

長く病気を患い、「脾」の力が低下し、統血作用(血が対外に漏れでないようにする作用)がうまく働かず、血が腸からもれ出て血便が起こる。

治法 :

温中健脾・養血止血

身体を温め、「脾」の働きを良くして、統血作用(血が体外に漏れでないようにする作用)がうまく働くようにし、止血します。

 

 

以上のように、中医学的治療では、病気の『原因』を見極め、根本から治していくので、再発しにくくなり、体調も全体的にバランスが良くなっていきます。

 

体調の不調は身体からのメッセージです。その声をむやみに封じこめることなく、根本を見直し、真の健康に近づいていくきっかけにして下さい。

心の底から明るい笑顔で生活することが出来るようになります。

中医学は身体と心に優しい医学です。是非一度ご相談下さい。

 

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