コラム

2019-02-20
認知症

認知症は、何らかの原因により、脳が障害されて、一度獲得した知的機能が低下することで、その原因となる病気は、頭蓋内の病気によるもの、身体の病気によるものなどたくさんあります。

最も多いのは、アルツハイマー病と脳血管障害による認知症です。

 

日本では、脳血管障害による認知症の方がアルツハイマー病よりも多いといわれていましたが、最近ではその割合が逆転し、アルツハイマー病の方が多いとの報告があります。

 

アルツハイマー病とは

原因は不明ですが、脳内でさまざまな変化がおこり、脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が病的に萎縮して(小さくなって)高度の知能低下や人格の崩壊がおこる認知症です。ゆっくりと発症し、徐々に悪化していきます。

 

脳血管障害による認知症状とは

脳の血管が詰まったり破れたりするような、軽い(小さな)脳梗塞が多発したことによって、その部分の脳の働きが悪くなり、そのため認知症になること脳血管障害による認知症といいます。脳血管障害による認知症は、障害された場所によって、ある能力は低下しているが別 の能力は比較的大丈夫という様に、まだら状に低下し、記憶障害がひどくても人格や判断力は保たれていることが多いのが特徴で、小さな脳梗塞を繰り返してゆくうちに、段階的に悪化していく場合が多いようです。

 

認知証の症状は

中心となる症状とは記憶障害や判断力の低下です。その他に、怒りっぽくなったり、不安になったり、攻撃的になったり、異常な行動がみられたりすることがあります。

 

●●●中医学的にみると●●●

まずは、老化 を中医学的に考えてゆきます。

老化とはいつ頃から始まるものなのでしょうか?

中医学では、老化は、一般的に考えられるよりもずっと若い頃から始まっているとされています。

10歳で五臓の生理機能が安定し、20歳で気血が充満し、勢いに満ちる。30歳では生理機能が安定、血脈機能も盛んで動作も落ち着くが、40歳では、立つことよりも座ることを好み、老化が始まってくる。50歳では肝臓が弱り始め、視力が減退。60歳では、心気が衰弱しはじめ、横になりたがる。70歳では脾胃の機能が低下し、筋肉が衰え、皮膚のつやがなくなる。80歳では肺が弱くなり、言葉をよく間違え、頭が少しボケる。90歳では腎の機能が低下、100歳では五臓が全て虚の状態となり、気力、体力ともに衰え、基本的な物質は全て減少してしまいます。

 

中医学では、人の精気は肝→心→脾→肺→腎 と、順を追って衰弱していくと考えられています。上記のような老化の経過をたどっていくと考える中医学では、老化のお手当ては、身体の不調が出てくる70歳からではなく、老化の始まる40歳~50歳の間に始めるのが適当だとされています。

 

老化現象は個人差がありますが、どの臓腑の働きが弱まるかによっても、その症状が異なります。

 

脾胃の虚衰

脾と胃は食べ物を消化して栄養物質に変える機能があります。

中医学では、脾胃は、生成された栄養物質を全身の各組織に運んで、その成長と発育を促していると考えます。

生まれながらにして父母より授かった精気をつかさどる腎(次にご説明しています)に対して、脾胃は、生まれた後の栄養をつかさどるとされているのです。

ですから、胃腸が弱い、疲れやすいといった脾胃虚弱の人は、発育成長が遅れ、老化現象も早くから現れるのです。

 

腎気の虚衰

上記の脾胃の虚衰が老化の進行を早めるのに対して、生まれながらにして父母より授かった腎の気が虚すると、現れるのは、老化現象そのものです。

頭がぼんやりする、物忘れが多いといった老化現象が現れたら、まず腎気を補うことが必要です。腎は精を蔵すると言われていますが、腎の精は脳の働きを活発にし、身体の成長を促す基本的な物質です。

 

老化に関係の深い臓腑は脾・胃・腎ですが、5つの臓腑が虚した場合の症状もみてみましょう。

 

肝の衰弱は50歳頃からはじまります。五臓のうちで一番早く衰弱するといわれています。

肝は筋をつかさどり、血を蔵し、目につながっています。

ですから、肝か衰退すると、視力減退、白内障、目の症状が出て、筋の余りである爪に変化が顕れます。肝に以上があると爪の状態が異常に薄くなったり、厚くなったりするのです。爪の状態で肝の状態をしることもできると言われています。

 

肺は全身の気をつかさどっています。肺気が衰弱すると、肺活量が少なくなり、皮膚の老化、呼吸の異常が現れ、外邪に対する抵抗力が弱まります。肺は潤いを好み、身体の水分を身体全体に供給する作用を担っていますが、肺が衰退すると、皮膚は乾燥し、色素沈着(シミ)も増えます。皮膚の抵抗力が弱まり、風邪をひきやすくなったり、息切れしたり、声に力がなくなります。

 

心の衰弱は60歳頃から始まります。心は全身の血脈(血流のコントロール)をつかさどりますので、心が衰弱すると、不整脈、頻脈、徐脈があわわれ、動脈硬化、高血圧、狭心症などが現れます。

さらに心は意識活動も統括していますので、心の衰弱によって、物事の判断がつかない、思考力の減退などの脳の症状が現れます。

脳の機能は精を蔵している腎とも関係があり、腎の機能が衰弱すると物忘れが多くなります。

 

腎は耳の働きに関与していると言われています。

ですから、腎が衰弱すると、耳が遠くなります。

腎は骨を主り、歯は骨の余りですから、歯が弱くなり、抜けやすくなります。

腎は精を蔵すので、性欲が減退し、物忘れが多くなります。

 

脾は食物を消化して、栄養物質にかえます。脾の衰弱は栄養を失調させるため、全ての臓腑に影響を与えてしまいます。また、脾は肌肉を主りますので、衰弱すると、肌肉の弾力が失われます。

 

 

上記の中医学における老化現象の捉え方を踏まえて、

認知証をタイプ別に分けて考えます―

 

腎気・腎精の不足

前述しましたように、腎の気の不足と老化は、中医学では密接な関係を持っています。

認知症は、脳が障害される病気ですから、腎精の不足により、脳髄を養う事が出来ず、脳が萎縮して、認知症になると考えます。

また、アルツハイマー型の認知症の際に見られる脳の空洞は、中医学の腎精虚に類似しており、中医学ではアルツハイマー型認知症は、このタイプに属すると考えられています。

 

認知症の症状以外の症状

腎のエネルギーには、腎陰と腎陽とよばれる、異なる働きをするエネルギーが存在します。

もし、腎陽が虚している場合には、手足の冷え、腰の冷え、夜間の頻尿、残尿感があり、 舌はぼてっとして白く、脈は弱く沈みます。

腎陰が虚している場合には、腰痛、のぼせ、微熱、口がかわく、身体がやせてくるなどの症状があり、舌は紅く、苔が少しで、脈は速く細くなります。

 

治療は、腎精を補う治療を行います。さらには、腎陰・腎陽のどちらが虚しているかをよく判断し、その症状にあった治療治療を行います。また、睡眠障害の症状があるのもこのタイプの特徴ですので、睡眠をよく取れるように治療してゆきます。

 

食事・生活など

腎虚を予防、克服するには朝食をとり、毎日30分以上の歩行運動をする。

精神面の休養を増やし、野外で動ける趣味を持つことが良いと考えられます。

ミネラル・良質のアミノ酸・抗酸化成分、植物性タンパク・腎虚を鎮めるキノコ・ヒジキなど海草類・黒豆など豆類を毎日多めに摂ると良いでしょう。

塩分の多い食事・合成調味料・動物性タンパクなどは減らしましょう。

昆布、のり、ひじき、あさり、えび、かに、いかすみなど、色は黒色のネバネバ系の食材がおすすめです。

腎陰が不足している場合は、百合根やスッポン鍋がお勧めです。

腎陽が不足している場合には、肉桂粥、とちゅう茶、生姜、シナモンなど暖める食材がお勧めです。

 

 

脾胃虚弱

脾胃がどれぐらい老化の進行を防ぐのに大切かということは既に前述しておりますが、 栄養をつかさどっている脾胃が弱いと、身体のエネルギーである気と血を作ることができずに、常に不足した状態となり、脳に栄養が行かず、その結果 、認知症になると考えます。

 

認知症の症状以外の症状

このタイプは、内臓下垂、脱肛、慢性の下痢、疲れやすい、むくみやすい、お腹が張るなどの症状も一緒に現れます。舌の色は淡く、脈は細くて弱くなります。

 

治療は、脾は、乾燥を好み湿を嫌いますので、むくみなどの症状を伴っている場合は、むくみを取る治療も同時に行います。

脾気は上に胃気は下に流れる気です。その方向性の逆流が無いよう、に補う治療をします。

そうすることにより、消化の力も出て食べたものを栄養にする力も強くなります。

 

食事や生活

脾胃が弱い方におすすめなのは、黄色い色のホクホク系の食べ物です。

イモ類、穀類、栗、豆類、はと麦、冬瓜、とうもろこしの鬚(お茶に煮出す)

むくみの症状がある場合には、あずきの煮汁もおすすめです。

また、特に消化不良を解消し、胃腸をすっきりさせたい場合は、大根、かぶ、パイナップル、麦芽、麺類など消食の作用がある食事がお勧めです。

 

 

お血

年齢の増加とともに、気は減少してしまい、気血の運行が悪くなり、お血が発生します。

お血は、1、血行が悪い、2、血の質が悪い(コレステロールや中性脂肪が多い)、3、血脈が悪い(動脈硬化)ことを指しますが、心臓疾患、脳血管疾患、癌、動脈硬化などの成人病には、必ず血の病変が存在すると考えて、お血を改善する治療が必要だと考えます。

西洋医学的な捉え方で考えたときの、脳血管障害による認知症は、このタイプに属すると考えられます。

 

認知症の症状以外の症状

気血の流れが滞り、疼痛症状(頭痛、胸痛、胃痛、関節痛、筋肉痛)が表れます。

また、血の凝固によって、しこりの症状(乳腺炎、肝脾肥大、子宮筋腫)や、静脈の怒張手足のしびれ、舌が暗く、紫の点ができたりします。

 

治療は、お血の予防に努め、お血ができたらそれを速やかに除去するなど、お血の前兆の症状にも積極的に対処することが大切です。

当院では、鍼のほか、吸玉療法によりお血の治療を行っています。

 

食事・生活など

紅花がお勧めです。紅花のお茶や、紅花ニラ饅頭など…

サフランは調味料としてもお茶としてもお勧めです。

その他、いわしのつみれ汁、ハイビスカスのゼリーなど、クエン酸が多く含まれる食材がお血を改善する食事としておすすめです。

 

 

 

心虚

心が虚しても認知症の原因となりえます。

これは前述したとおり、心は全身の血脈(血流コントロール)をつかさどりますので、心が衰弱すると、不整脈、頻脈、徐脈があわわれ、動脈硬化、が現れます。この場合、脳よりも、もちろん心臓の方の症状が主となりますが、心は意識活動も統括していますので、心の衰弱によって、物事の判断がつかない、思考力の減退などの脳の症状が現れます。

腎虚にしても心虚にしても睡眠をよく取ることが必要ですが、腎や心が虚衰すると、不眠の症状が出てきます。

 

認知症以外の症状

不眠、動機、多夢、不安、焦燥感など

 

治療は、心をリラックスさせて落ち着かせるような治療と血の流れをスムーズにする治療を行います。

また、熱の症状などがある場合は、熱を冷ます清熱の治療も行います。

 

食事・生活など

食べ物の色は赤い色のものがお勧めです。

あますっぱいベリーなどの果実類、なつめ、はすのみ、ゆり根などは不眠にも効果 的です。

また、にがうり、せり、菜の花、たんぽぽ、どくだみ、苦い緑茶などの苦味のあるものも、心が虚している場合におすすめです。

 

 

認知症を大きくタイプ別に分けましたが、認知症は、単純に1つの原因で発生するのではなく、複数の原因が重なって発生することが多いですので、総合的な治療法が必要です。

当院では、望診、聞診、問診、切診により、その方の症状を把握し、その方の症状に合致した治療を行います。

もし、家族の方で最近行動、言動がおかしいなと思われるふしがある場合、なるべく早めに病院への受診をおすすめ致します。また、西洋医学の薬の治療とあわせ、針灸治療の併用は、より効果 を高めると思います。

症状でお悩みの方、お気軽にご相談くださいませ。

手当ては、早め早めに行うことにより、進行をくい止めることに役立ち、症状の改善にもつながります。尚、薬だけの治療で、改善が見受けられない場合にも、違う視点、角度から、病を捉えて診る中医学(東洋医学)の治療を受診してみるのも一手かと思います。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

当院は予約制となります

  • まずはお電話でご相談ください。

  • 0088-221818

診療時間

9:00~
12:00
13:00まで
14:00~
16:30

※ 火曜日・水曜日・木曜日が祝祭日の場合は午前診療となります。
※ 当院は予約制です。

アクセス

〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1丁目17-10

院内の様子