コラム

2019-02-20
帯状疱疹

帯状疱疹は、子供のころにかかった水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、 神経の中に潜んでいて、体力の低下などをきっかけに活性化して起こる病気です。

 

水ぼうそうは、一度かかってしまうと、ウイルスに対する抗体ができるので、免疫状態となります。

しかし、そのウイルスは死んでしまうわけではなく、眠っているような状態なので、 疲労や睡眠不足などによって体力が落ちたり、他の病気で免疫機能が低下したときなどに活性化して、 発症すると考えられています。

 

症状

 

帯状疱疹は身体の左右どちらかに帯のように現れます。

 

はじめはピリピリチクチクした痛みから始まり、しばらくするとその部分が赤くなり、 やがて水ぶくれになって神経痛のような激しい痛みになります。

 

発症部位で一番多いのは肋間神経のある胸から背中にかけてです。

この他、頭部や顔面・腹部・臀部・下肢にもあらわれます。

顔面にある三叉神経に沿って現れる場合は、失明や顔面神経麻痺をともなうこともあるので特に注意が必要です。

 

痛みが始まってから水膨れが治るまでの間は、約3~4週間です。

通常、痛みは水膨れが治る頃に消えますが、治った後も痛みが残る場合があります。

 

一ヶ月以上痛みが続く場合は「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれていて、かなり激しい持続性の痛みがあり、 日常生活にも支障をきたします。

ウイルスによって神経が破壊されることが原因ですから、早めに治療することで、防ぐことができます。

症状が進行する前に、できるだけ早く皮膚科で診てもらいましょう。高齢者は特に注意が必要です。

 

また、それと同時に鍼灸治療をしていくと、回復が早く、予後が大変良いようです。

 

《西洋医学的治療法》

 

帯状疱疹の治療は、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されます。

 

抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止します。

神経がまだ破壊されていない初期の段階で服用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防ができます。

 

一般には、皮膚症状が現れてから5日目ぐらいまでに、抗ウイルス薬による治療を始めれば、 後遺症は残りにくいと考えられています。

 

抗ウイルス剤としては、ゾビラックス・バルトレックスなどがあります。

バルトレックスはゾビラックスを改良した「プロドラッグ」(体内で代謝されることにより、 効果を発揮する薬)です。

ゾビラックスよりも吸収が良く、服用回数が少なくてすむ利点はありますが、 点滴のように血中濃度が上がりやすいので、早期(内服開始1~2日目)に激しい疼痛や腎障害などの副作用が起こることがあります。

特に腎機能障害ある人や高齢者は十分注意してください。

 

補助的な薬としては、神経にいいビタミンであるメチコバール(ビタミンB12)が使われます。

我慢できない痛みがある場合は、消炎鎮痛剤も内服します。

それでも、激しい痛みが取れない場合は、神経ブロックなどの対症療法によって、 痛みを軽くする治療が行われます。

 

最近、薬を必要以上に飲みたくないという方が増えてきましたね。確かにそれも大切なことなのですが、 抗生剤や抗ウィルス剤に関しては、正しい量を、処方された期間きちんと服用しなければいけません。

自覚症状がとれたからといって、早めにやめてしまうと、再発の恐れがあります。

 

余談になりますが、薬の効果を活かすオマジナイをひとつ紹介します。

 

ひとつの薬が開発されるまでには、とても沢山の人々の命や、実験動物達の命が犠牲になっています。

たった一粒の薬について考えても、多くの命が土台となっているのです。薬はモノではありません。

命のかたまりなのです。

 

多くの命に「ありがとう」と、心の中で言ってから飲むと、その効果が最大限に発揮されます。

感謝の気持ちでいるときは、「気」の流れも良くなりますから、東洋医学的に考えても、 身体が良い状態に近づくから・かもしれませんね・・。

 

さて、帯状疱疹の話に戻りましょう。

 

《中医学的考え方》

 

中医学では、「蛇丹」、「纏腰火丹」(てんようかたん)、「纏腰竜」、「水帯疱」などと呼び、 湿熱によるものとされています。疲労やストレスがたまったり、免疫力が低下すると発症します。

 

発疹は熱邪があり、水疱がは湿邪があると考えます。痛みは、患部に気血が滞るために生じるものです。

帯状疱疹後神経痛は「蜘蛛瘡」(ちじゅそう)といわれ、激しい痛みに加えて便秘・口渇・頻脈を 伴うことが多く、精神的な苦痛も大きいようです。                                             

病機別考え方  

1.肝胆欝火(風火の邪が肝経に鬱滞し、火邪が皮膚にこもる)

多くは腰肋部に発症する。    

過労やストレスが原因となることが多い。    

頭痛や眩暈を起こすこともある。    

治則:清泄肝火

   

2.脾経湿熱(湿毒が脾経に鬱滞し、湿熱が皮膚に浸出する)

多くは胸部に発症する。   

疲労がたまっていたり、暴飲暴食が原因となることが多い。    

治則:清利湿熱

   

症状別治療法    

 

1.初期・灼熱性疼痛と水泡の出現

舌診:

紅・薄黄か膩苔

脈診:

弦・滑

治則:

清熱除湿(身体に入ってしまった熱邪と湿邪を取り去る治療をします)

漢方薬:

竜胆瀉肝湯

 

  

2.高熱・口渇・皮膚の痛み

舌診:

紅絳・黄厚苔

脈診:

滑数

治則:

清熱解毒(熱を下げ、外邪の影響を抑える治療をします)

漢方薬:

清営湯

 

 

3・暴飲暴食が原因の場合

舌診:

胖・白厚苔・白膩苔

脈診:

緩または滑

治則:

健脾燥湿(胃腸の働きを整え、湿邪を取り除く治療をします)

漢方薬:

除湿胃苓湯

    

 

4.過労やストレスが原因の場合

舌診:

暗・薄白苔

脈診:

沈細または沈緩

治則:

活血化お(血流を良くし、血の滞りをなくす治療をします)

漢方薬:

益気活血散お湯

 

 

以上のように、中医学的治療では、病気になったもとの原因や、病気の状態を把握して、治療方針を決め、また、さらに患者さんひとりひとりの体質に合わせた治療をしていきます。

 

現状ではまだ、帯状疱疹後神経痛にまで進行してしまった方が、西洋医学ではどうしようもなくなって、鍼灸治療に切り替えるという患者さんが多いのですが、できればもっと早めに、鍼灸治療を受けられることを、お勧めします。

 

痛みや後遺症が軽くてすむという事はもちろんですし、帯状疱疹になる原因となった、 疲労や免疫力の低下も改善できるからです。

病気なった頃よりも、元気な身体作りができるはずです。

 

鍼は痛いのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、注射針や縫い針のように太い針を刺す訳ではありません。

鍼灸治療の鍼は、細いものでは髪の毛より細いですし、太くても木綿糸程度で、容易にクニャクニャと 曲げられるほど弾力性があります。

刺して痛いというより、ズーンと重たいような響きがあり、これが「気」を動かす刺激となって、鍼の効果 につながっていくのです。

 

鍼を受けると、気持ちが明るくなると、おっしゃる患者さんが多いのは、やはり、 「気」が元気よく巡るようになるからではないでしょうか。

 

日常生活の注意

 

痒くても病変部位を引掻かないようにしましょう。水泡が破れた場合は、ウィルスが他の場所について、 感染を広げてしまうことがあります。水疱瘡になっていない子供にはうつります。

飲酒や熱い風呂への入浴は避けます。

暴飲暴食は避けて、正しい食生活をし、なるべく身体を休めて、ストレスや疲労をためないように心掛けましょう。

 

帯状疱疹は、鍼灸治療による効果が期待できる主要な疾患のひとつです。

 

世の中には、さまざまな鍼灸院がございます。

自分自身が求めている治療は何かを明確にし、納得できる鍼灸院を探して、治療にあたると良いかと思います。

 

個人個人の体質に合わせての治療を行います。お気軽に当院までご相談ください。

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