コラム

2019-02-20
三叉神経痛

人間の身体には、感覚をつかさどる知覚神経、筋肉の動きを支配する運動神経、また身体のバランスをとる自律神経があります。

顔では顔の表情をつくる神経が運動神経で、この神経が障害され麻痺すると「顔面 神経マヒ」になります。顔を触られて感じる感覚や温度を感じる神経が三叉神経で、この神経に障害があるととても強い痛みが出ます。

 

ナイフでえぐられるような痛みとか、焼けるような痛みとか、電気が走るようなと表現されるこの三叉神経痛について、西洋医学と中医学からの診断、治療をお話していきます。

 

 

<三叉神経の解剖的特徴>

三叉神経は文字通りⅠ枝、Ⅱ枝、Ⅲ枝と三本に枝分かれしています。

枝:おでこ全体から鼻の真中あたり

枝:頬から鼻の脇、上唇(うわくちびる)のあたり、上の歯、鼻粘膜

枝:下あごのあたり、下の歯

主には顔の知覚をつかさどる神経です。

クシャミが発生する時は鼻の粘膜で異物を三叉神経で察知して、それからクシャミをする筋肉に連絡しています。

歯の痛みを感じたり、口で物を咬む時もこの神経が関係しています。

 

 

<三叉神経痛の特徴>

・ 突発的でとても強い痛み

・ 発症部位はⅡ枝、Ⅲ枝が多い

・ 男性よりも女性に多い (.5~2倍)

40才以降に発生する (50才以降に有意に増加する)

・ 神経痛の持続時間は短く 数秒から数十秒

・ 冷たい物を飲んだり、洗面、歯磨き、ヒゲ剃り、食事などにより誘発される

・ 痛みのあるところに触ると痛みが強くなる

 

 

<西洋医学的原因>

いままで突発性(原因不明)とされてきた多くの三叉神経痛の原因は、屈曲した動脈が脳神経の三叉神経の根元を圧迫することによるものと判断されるようになってきました。少数に脳腫瘍や、ヘルペスウィルスによるものがある。

 

 

<西洋医学的な治療と予後>

1. 薬物治療

まず第一には、テグレトール(カルバマゼピン)といわれる薬による治療から始まる。三叉神経痛には特効薬として良く効く。

短所として徐々に効き目が減少すること、副作用としてふらつき、眠気、脱力感などがある(※てんかんなどにも使う薬)80%の症例に有効といわれています。

 

2. 神経ブロック

痛みを起こしている三叉神経の枝に対して直接、または神経の周囲に麻酔薬を注入して神経を麻痺させる。薬物治療で抑えきれない場合、手術に踏切れない場合には良い治療法です。薬効が切れるたびに再度ブロックする必要があります。

 

ガンマーナイフ(定位放射線手術)治療・・・ガンマーナイフは元々は手術のやりにくいところにある腫瘍にピンポイント(局所的)で放射線をあて腫瘍を焼いて治療する方法です。頭をボルトで固定してガンマ線を病巣部に照射して凝固・壊死させる。速効性はないが身体の負担が少ない。比較的新しい治療なので長期の効果 、副作用は未知である。治療入院期間1~3日。

 

3. 手術療法(微小血管減圧術)

三叉神経を圧迫している血管を手術によって直接圧迫を取り除く手術。十円玉 程度の開頭手術になる。90%以上の効果があると考えられていて、根本治療になる。全身麻酔が必要で、10日程度の入院が必要になる。

 

 

 

<中医学からみた痛みの考え方>

中医学は耳慣れない言葉や考え方がありますので、先に中医学の痛みに対する概念のお話をさせていただきます。

 

中医学では痛みは大きく虚、実の二つに分けて考えます。

 

虚、実とは簡単にいうと 虚は栄養が足りない状態 実は力が過剰な状態や邪気(悪いもの)に侵されてしまっている状態のことをいいます。

虚症の痛み―――

痛みが長時間続く、しくしく痛む、按えると痛みが緩和する。

虚症の痛みは「不栄則痛」といわれ臓腑や経絡上が栄養不足になり起こる痛み。

実症の痛み―――

突然痛み出す、激しく痛む、按えると痛みが強くなる。

実症の痛みは「不通則痛」といわれ邪気が臓腑や経絡上の気血の流れを遮ってしまい起こる痛み。

このことからも三叉神経痛の痛みの症状は実症の痛みであることがわかります。

 

では、具体的にどのような原因でこのような痛みがでるか考えます。

 

 

<原因と症状>

三叉神経痛の原因は主には、風寒(ふうかん)証、熱証、オ血証があります。

 

風寒証―――風邪と寒邪が合わさった邪気に顔面部の経絡が犯されます。

これは、顔面部に冷たい風をあびてしまったり、ウィルスなどの原因によって起こるものがこれにあてはまります。

風邪は身体の上部を犯しやすい性質があり、寒邪は収斂(縮める)作用や凝滞(滞らせる)作用があるので気血の流れを悪くして痛みを発生させ、三叉神経痛をおこします。

特徴的な症状としては、冷えると痛みが増したり、逆に温めると痛みが緩和したりします。

鼻水が出やすくなります。

 

熱証―――熱証の中には、風熱(ふうねつ)という外邪性のものや、ストレスなどから気が滞り熱化(気は滞ると熱になることがある)して火に変わり、火や熱はやはり上昇する性質があることから身体の上部の経絡に影響をおよぼし、顔面 部の経絡の流れを悪くした場合は、三叉神経痛をおこす。

特徴的な症状としては、焼かれたような痛み、目が充血したり、咽が渇いたりします。

 

オ血証(オ血とは血が滞った状態のことをいいます)―――オ血証は慢性期によくみられる状態です。三叉神経痛は度々発作を繰り返し、強いストレスになります(気滞)。また、食事などの誘引により発作がおきることから食事が取りにくく身体の力も弱くなりがちです(気虚)。これらの原因で気の流れが悪くなった結果 、血の流れも悪くなり、オ血(血の流れが悪くなった状態)になります。

特徴的な症状は、慢性的な痛み、顔色が暗くなるなどがあります。

 

 

<鍼治療>

鍼治療では顔面部のツボと身体のツボの両方を使っていきます。

まず、顔面部では三叉神経のⅠ、Ⅱ、Ⅲ枝とわかれた痛みの症状のある部分のツボをとります。顔面 部の痛みをとる鍼治療は一般的に鍼を長めに置きます(20分以上)。身体には原因を診断した上で、それぞれの原因にあったツボをとります。外性の邪気には邪気を退治する方法、冷えたものは暖め、熱邪に対しては熱を取り、オ血では血の流れを良くするツボを取ります。治療は初期は週に2~3回治療し、痛みがコントロールできるようになったら週1回の治療にしていく方法がよいとおもいます。

発作的な痛みがでると、とてもストレスになります。そのストレスから更なる悪循環をおこさないようにする為にも、しっかりとした治療が必要です。

 

<三叉神経痛のケアの仕方>

患部を不適切に触ると痛みが誘発されることがありますので気をつけましょう。

 

睡眠不足や疲れによっても痛みが出やすくなります。夜更かし、過度の疲労は避けるように心がけましょう。。

 

三叉神経痛は強い痛みが出て、しばしば繰り返し発症するにもかかわらず、薬(テグレトール)のみでは抑えることが難しい病気です。

神経ブロックや手術もありますが、それぞれの長所、短所などを検討した上で方法を選択し、その中で鍼による治療や、薬と鍼の併用治療などでやるのも良いかとおもいます。

三叉神経痛でお悩みの方、一度中医学(東洋医学)による治療を試みるのも宜しいかと思います。鍼治療は、有効的な治療かと思えます。症状が発生して期間が1週間以内なら3~5回の治療で楽になります。逆に時間が過ぎれば過ぎるほど治りが遅くなります。この点にご留意して下さいませ。

 

ご質問のある方は、お気軽に当院までご相談下さい。

当院は予約制となります

  • まずはお電話でご相談ください。

  • 0088-221818

診療時間

9:00~
12:00
13:00まで
14:00~
16:30

※ 火曜日・水曜日・木曜日が祝祭日の場合は午前診療となります。
※ 当院は予約制です。

アクセス

〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1丁目17-10

院内の様子