コラム

2019-02-20
坐骨神経痛

腰から足にかけての「痛み」、「しびれ」、「圧痛」。このような症状は、年齢を重ねるにつれて 多くの方が経験しているのではないでしょうか。もちろん若いかたでも経験している方は、 いらっしゃると思います。

今回は、整形外科疾患の一つである坐骨神経痛について、述べていきたいと思います。

 

 

現代医学的な坐骨神経痛の捉え方●

 

まずは現代医学的に坐骨神経痛を捉えていきたいと思います。

 

坐骨神経は腰から骨盤、大腿後面を下り、足先にまで伸びている末梢神経のひとつです。 人体の中で最も太い神経で、比較的皮膚に近い位置にあります。

 

この神経に何らかの外的要因が加わることで、神経に沿った痛みやしびれが誘発されます。

このような症候を総称して坐骨神経痛と言います。

また、坐骨神経痛の症状としてはこの他にも、神経に沿った圧痛、神経障害の徴候として、 筋力低下や筋萎縮、知覚障害なども認められることがあります。

 

坐骨神経痛の原因には主に神経根の圧迫と、梨状筋の過緊張による神経の圧迫が考えられます。

 

神経根の圧迫

 

神経根の圧迫による坐骨神経痛には、具体的な原因として、以下の疾患が挙げられます。

椎間板ヘルニア

変形性脊椎症

脊椎すべり症

 

 

梨状筋の過緊張

 

梨状筋は仙骨から大腿骨に付着している筋肉で、坐骨神経はこの梨状筋の下縁もしくは筋中を通 り、下肢へ続いています。この梨状筋が過緊張を起すことで、坐骨神経を絞扼し、痛みやしびれが誘発されることがあります。

 

これらの治療には、基本的には保存的治療が行われます。

硬いマットレスを用いたベッドでの数週間の安静と、痛みと炎症を軽減するための薬剤だけで 回復することもあります。器質的な問題の場合は、外科手術が行われることがあります。

 

薬剤については、痛みの程度に応じて鎮痛剤が処方されることがあります。

神経根圧迫に伴うものについては、非ステロイド系抗炎症剤が処方されることもあります。

また、ここでは詳しくは触れませんが、運動療法や温熱療法によって改善はかる場合もあります。

 

 

 

中医学的な坐骨神経痛の捉え方●

 

では次に、中医学的に坐骨神経痛を捉えていきたいと思います。

 

中医学では、筋、骨、関節の疼痛、腫脹、しびれを主症状とする病症を“痺証”と呼びます。

坐骨神経痛もこの“痺証”に分類されます。生体エネルギーが消耗している状態で、 風邪・寒邪・湿邪が体内に侵入して、四肢の経絡の気血運行を阻滞することで”痺証”となります。

 

風邪・寒邪・湿邪は、総括して外邪と呼ばれ、人体に外を及ぼす気候的変化のことを言います。

例えば、冬などのとても寒い日に腰が痛みだす、といったことは、中医学的には外邪が人体に 侵襲して発病したと考えられます。

 

このことから、多くの場合“痺証”は、季節の状態に左右されやすい傾向があると言えます。

つまり、基本的には、体質と季節を総合的に考えた養生も、治療に重要なエッセンスに なると考えられます。

 

それでは次に痺証の証タイプについて述べていきます。

痺証は風邪・寒邪・湿邪の強さや経過によって異なったタイプの症状が現れます。

これらのタイプには主に4つのタイプがあり、行痺、痛痺、着痺、熱痺と呼ばれます。

 

行痺

行痺は、3つの外邪の中で主に風邪が旺盛の場合にみられる痺証です。  

風邪は、他の病邪と結合して人体に病を引き起すことが多い外邪で、特徴としては、 症状の移り変わりが早いという特徴を持っています。  

具体的な症状としては、痛みの箇所が一定ではなく、寒さを感じる風にあたると症状が悪化したり、  脈浮または脈弦緩がみられる場合などは、行痺が疑われます。 治療には、風邪を抜きさる治療を主として、寒邪、湿邪に対しても治療ができる配穴が必要です。  

また、体質的に影響を受けやすい状態の場合は、臓腑に対してもエネルギーの底上げが必要と考えます。

特に風邪の場合、肝の臓を健康にすることで、風邪に対する耐性を強くすることができます。

 

痛痺

痛痺は、3つの外邪の中で主に寒邪が旺盛の場合にみられる痺証です。  

寒邪は、体を冷やし、免疫力を低下させる作用をもった外邪です。  

具体的な症状としては、疼痛部位が固定であり、冷えにより症状は悪化し、逆に温めることで症状は  緩和します。また、疼痛部に触ってみても熱感はありません。 この痛痺は、気温が急激に低くなる場合に発症しやすい傾向があります。秋から冬にかけて、急に気温が下がる日や、夏でもクーラーに長時間あたっている場合は危険信号となります。  

治療には、温熱療法や、体質的に寒さに対する耐性を強くする配穴が必要となります。

 

着痺

着痺は3つの外邪の中で主に湿邪が旺盛の場合に見られる痺証です。  

湿邪は、体を重だるく感じさせたり、代謝を妨げる作用を持った外邪です。  

具体的な症状としては、関節局部の重だるさ、痛みの部位は固定であり、雨天の場合に症状が  増悪することがあり、このような場合は着痺が疑われます。梅雨時期などは要注意となります。  

治療には、湿邪を除去する配穴が必要です。また、湿邪は脾の臓を侵襲しやすい外邪です。  

逆に言えば、脾の臓を健康にすることにより、臓腑生理の面から湿邪の除去を手助けすることも可能となります。

 

熱痺

熱痺は、風邪、寒邪、湿邪の外邪が従陽によって化熱することで現れる証です。  

従陽とは、従化という病理的な変化のタイプのひとつであり、寒がりや暑がり、水分代謝に異常がある場合、元気の出ない場合などの体質に上に、外邪が慢性化することで、風邪、寒邪、湿邪が化熱してしまうことを意味します。  

そのため、この証タイプでは、関節部の発赤・腫脹・疼痛、灼熱感がみられ、冷やすことで症状が軽減するといった傾向がみられます。また、口渇や煩悶、脈は数脈といった症状を伴うこともあります。  

この証タイプの場合、清熱、つまりは体内にこもった熱を分散させる配穴を主として、熱に至った原因となる体質改善の配穴も必要となります。

 

 

いかがでしょうか?

中医学的な坐骨神経痛に関しての考え、ご理解頂けましたでしょうか。

 

つまり、中医学的な考えでは、本質的なお手当が大切であり、単に筋肉をほぐす、あるいは牽引などで腰椎を引っぱるといった一時的な手当てだけではなく、気候の変化による体への負担にも注意をはらい、手当てをしていくのが中医学的治療であるとご理解いただけると幸いです。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

当院は予約制となります

  • まずはお電話でご相談ください。

  • 0088-221818

診療時間

9:00~
12:00
13:00まで
14:00~
16:30

※ 火曜日・水曜日・木曜日が祝祭日の場合は午前診療となります。
※ 当院は予約制です。

アクセス

〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1丁目17-10

院内の様子