女性にまつわるお話
- 2019/02/20
- 乳腺炎
乳腺炎とひとくちに言っても症状は様々です。
もともとあったしこりが、どんどんひどくなって熱を持ち、真っ赤になり、乳腺炎になる場合や、何の前触れもなく、ある日突然しこりができて、一気に高熱が出る場合や、熱はないものの、おっぱいが石のように固くなり、搾乳もできないほどになる場合もあります。どんな状態にしても、そのままにしておくとどんどん悪化し、切開(手術)しなくてはいけなくなります。
おかしい、と思ったら早めに対処することで悪化を防ぐことができます。
産婦人科だと抗生物質などを処方されて終わりということもよくあるようです。
お薬を飲んでも搾乳はできますが、一時的な対処法であり、根本的な解決にはなりません。
一般的に乳腺炎は母乳が出すぎて乳腺がつまってしまうことを想像される方が多いかと思います。実は張らないおっぱいでも溜まらないおっぱいでも乳腺炎になりえるのです。
これは何故でしょう?
はじめに西洋医学からみた乳腺炎の種類、症状、治療方法をご説明します。
その後東洋医学(中医学)からみた乳腺炎(乳少といいます)の説明をさせていただきます。
西洋医学からみた乳腺炎
① 急性乳腺炎
授乳中の乳腺に細菌感染(主にブドウ球菌)が起きて生じる
② 鬱滞性乳腺炎
乳汁が分泌されず、に乳腺内にたまることによって起きる
③ 慢性乳腺炎
陥没乳頭(陥凹乳頭ともいう)が原因で起きる
症状
① 急性乳腺炎
乳房が赤く腫れあがり、激しい痛みと高熱を伴う。
感染は乳首を乳歯によって傷つけられることが原因と考えられています。
生後5ヶ月以上の乳児を育てているお母さんが発病します。
② 鬱滞性乳腺炎
乳児への授乳が十分でない場合
乳首の発達が悪くて乳汁が分泌されにくい場合
(急性乳腺炎ほど激しい全身症状は出ません)
③ 慢性乳腺炎
授乳とあまり関係せず、乳輪近辺に腫瘤が生じ、時々腫れて膿が出ることを繰り返します。
一般的な治療法
① 急性乳腺炎
抗生物質による治療が必要になります。
化膿が進み、膿瘍ができてしまった場合は切開・排膿せねばなりません。
治療が功を奏すると急速に症状は改善しますが、授乳はストップしなければなりません。
② 鬱滞性乳腺炎
搾乳(乳しぼること)と乳房を冷やすなどの治療があります。
③ 慢性乳腺炎
炎症性腫瘤の切除と炎症のもとになっている陥没乳頭の処置療法を行わなければなりません。行わなければ、再燃する可能性が高くなります。
まず、抗生物質で炎症を沈静させ、それから根治手術を行います。
これから妊娠・出産を考えている人は形成外科で治療してもらうほうがいいでしょう。
東洋医学(中医学)からみた乳腺炎とは?
中医学は体に存在する活力エネルギーの失調部分を調整し、元のバランスの良い状態に戻し、体の元気を回復させる事にあります。
乳腺炎が引き金となって起こっている他の不快な症状も緩和されていくことが大きなメリットです。例えば、体のだるさ、食欲不振など様々な症状が乳腺炎と一緒に快方に向かっていきます。
中医学では専門用語がたくさん出てきますので、わかりやすい言葉でご説明していきたいと思います。
乳腺炎と関わりの深い臓腑
中医学では基礎物質(気・血・水)のほかに臓腑(内臓)がとても大切なものと考えられています。
現在、日本の西洋医学で使われている、内臓を表す用語は中医学の「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」と同じ文字で表現していますが、機能は必ずしも一致しません。
肝臓ではなく、「肝」というように、中医学について書かれた文章の中で五臓の名前に「臓」の文字をつけないのは西洋医学と区別 するためなのです。
中医学独特の診断方法で、何が原因で、気・血・水のいずれが、どの様にバランスを崩し、五臓六腑のどの臓腑が、どの様に失調したかを見極めます。
これらによって治療方法が異なるわけです。
タイプによって治療方法が異なりますので、もちろん鍼を打つ場所や漢方の処方も異なるわけです。
乳腺炎にはおおまかに2つのタイプに分かれます。
ご自分の体調などと照らし合わせてどちらのタイプなのかご参照ください。
☆ タイプⅠ☆
気血両虚によるもの
乳汁は「血」が化生したものであり、気によって運行されると考えます。したがって普段から気血生化の源である脾胃が虚して(不足している)いたり、分娩時や産後の出血過多で気血が不足すると乳汁の生成に影響し、乳少(乳腺炎)がおこります。
基本的に栄養状態が悪いことが原因です。
「血」とは中医学的な専門用語です。どのような働きをしているのか詳しく紹介していきたいと思います。
血の生成
血は五臓でいう「脾胃」で作られます。脾胃の消化吸収により「血」が生成される為、脾と胃は気血生化の源といわれます。
血の機能
・ 全身に栄養分を供給し、潤いを与えます。
・ 精神活動の主要な基本物質になります。例を出すと、血の運行が異常である場合には、精神不足、不安感、多夢などの症状が出やすくなります。
血の循環
正常な血の循環は気の推動作用(正常な生理活動に対し激発と促進作用があります)によい行われ、内蔵の生理機能と深く関係しています。
血は「脾」で飲食物から作られ、「心」と「肺」の力によって全身に運ばれ、「脾」の統摂と「肝」の貯蔵、疏泄機能の調整で行われています。
血の原料は五臓の中の「脾」で飲食物を消化して生成される水穀の精微(栄養分)です。生成された血は「心」と「肺」の働きで五臓六腑から皮膚にいたるまで全身に送られ続けます。
全身に送られる血は体の働きを支える栄養源として活用されます。
筋肉や骨格が丈夫でたくましくなるのも、物がしっかり見えるのもすべて血の働きです。
さらに血は気とともに精神活動を支える基本物質でもあります。
基本物質が十分にあるからこそ、意識がはっきりし、精神が安定するのです。
先ほども述べましたが、乳腺炎(乳少)は「血」が化生したもので、気によって運行されています。
では「気」とは何でしょう?簡単にご説明します。
「気」は先天の生まれつきと食べ物の栄養分(脾胃で血と一緒に消化吸収により作られます)呼吸(肺の機能により人体に吸いこまれます)取り込まれ、体内の様々な働きを支えています。
「気」は一種の活動であり、絶えず運動し、全身の内外の各組織、器官をめぐっているのです。そして「血」の項でも紹介しましたが、推動作用など、様々な働きを担っているのです。
「血」は「気」から作られ、その「血」は「気」に変化することもあるように、気血は車の車輪のように、密接に連動しながら人体の生理を支えています。
気血両虚とは、どちらか一方の乱れがもう一方に深刻な影響を与えて病気が起きることをいいます。
● 気血両虚による細かい症状 ●
● 産後に乳汁が分泌しない、または分泌量が非常に少ない
原因
母乳はお母さんの血液「血」からできています。
母乳のおおもとが気血不足になり、乳汁の生成が不足すると起こります。
● 皮膚の乾燥
原因
血虚のために皮膚を潤せないとおこります。
前項でも述べましたが、「血」には身体を潤す働きがあります。これらを滋潤作用といます。これらが不足すると皮膚の栄養失調状態になり、皮膚の乾燥感が起こります。
皮膚表面の皮脂膜を作る力が弱くなってしまっている状態です。
● 顔面蒼白
原因
気血が不足して顔面部をうまく栄養できないと起こります。
「脾」の運化作用には食べ物から気血を作りそれを上にある「肺」などに送る働きも含まれています。この気血を上に持ち上げることを「昇清作用」といいます。
「脾」の運化作用が失調すると気血を生成できなくなるばかりか昇清作用も減退してしまいます。その結果 、顔面部の栄養不足がおこり、顔面蒼白になるのです。
● 食欲減退・大便溏薄
原因
脾胃虚弱により運化機能(食べたものを消化吸収して全身に栄養分を運ぶ作用)が減退すると起こります。
★ タイプ② ★
肝鬱気滞によるもの
産後に情志が抑鬱して条達が悪くなると、気機(気の運動)が滞って経脈の運行不利がおこります。そのために乳汁の分泌が阻害されると乳汁がおこります。
「肝」は肝臓だけでなく、体全体の機能を調節し、消化吸収や血流を正常に保ち、精神活動や情緒をも司る臓腑と捉えられています。
自律神経系の緊張や失調との関係が深いのです。「鬱」は機能の阻滞を表します。
つまり肝鬱には肝機能のストライキによる体調や精神活動の不調のことなのです。
「肝」は憂鬱、イライラ、思考力の低下、ため息などの精神面との関連が深い臓腑です。
こういう状態を「気滞」といいます。「気」は活気の気で、本来体内をスムーズに流れる生命エネルギーを指します。「滞」は渋滞の滞で、流れの悪い状態を指します。
つまり「気滞」は精神面、肉体面でのスムーズな気の流れが悪くなった状態です。
これが乳汁の分泌と深く関係していると考えます。
● 肝鬱気滞による細かい症状 ●
● 産後に乳汁が分泌せず、乳房は脹満して痛む
原因
肝気が鬱滞して気機(気の運動)の運行が失調するとおこります。
「肝」
「肝は女性の先天の本」とも古来言われているほど、女性にとっては大きな臓腑です。「肝」には「血を貯蔵する」「疏泄をつかさどる」という大きな2つの働きがあります。
生理時の血液量をコントロールしているのは、主に肝の「血を蔵す」働きによるものです。
女性の病気は、血の問題と切っても切れない関係にあります。
また、これらは感情、精神状態、自律神経の状態と密接に関連しています。
臓腑の中で、最も感情の状態や自律神経、血の問題と深く関連するのが肝です。
肝は「疏泄(全身の気・血を伸びやかにさせる)」という働きによって、全身の気・血を伸びやかに、滞りなく循環させています。
● 身体発熱
原因
「肝」はのびのびとした環境を好みます。しかし、過度のストレス・イライラなどの状況下では「肝」はのびのびせず、「肝の気」がスムーズに流れなくなってしまい、渋滞を起こします。気や血が渋滞を起こすと熱を生む特性を持っていますので、肝の気が渋滞したことで熱が生まれてしまいます。
これを肝鬱といいます。つまり肝鬱は肝機能のストライキによる体調や精神活動の不調のことなのです。気欝化火によりおこります。
● 胸脇部の不快感
原因
「肝」の働きは疏泄といって気血の流れを調節しています。肝の疏泄が失調すると気血の流れが停滞を起こします。
流れが悪くなると停滞を起こした箇所で不快感や痛みが生じます。
胸脇部に不快感が生じるのは「肝」のエネルギーが流れているルートが胸脇部を通 っているためです。
● 胃脘部の脹痛・食欲減退
原因
「気」の滞りが続いて「肝」の機能が異常に亢進すると、「気」は本来違う方向に働きます。このような症状を「気逆」といいます。
気逆には体の上のほうに向かう「上逆」と脾胃の機能を損なう「横逆(おうぎゃく)」があります。
横逆がおこると栄養素を「肺」に送る「脾」の働きと、不要物を大腸に送る「胃」の働きが乱れ、お腹の張り感や痛みなどの症状があらわれます。
人によって、ゲップやむかつき、吐き気、大小便がすっきり出ない、便がゆるくなるなどの症状も併発します。
乳汁不足の原因のひとつがストレスであることがわかっていただけたかと思います。
育児に家事と日々の生活に追われ、常に気が張った状態ではないでしょうか?
できる範で周囲の協力を得ながら、ストレス解消し、針治療をしながら、育児を楽しく乗り切りましょう。
さて、乳腺炎になってしまった場合、里芋湿布やじゃがいも湿布などを患部に当てると良いなどの知識を持ち、乳房マッサージの経験豊富な助産婦さんもいらっしゃいますが、残念ながら、現状はごくわずかしかいらっしゃいません。
最後に日常生活に取り入れて頂きたい食べ物、生活習慣について書きます。
タイプに合った食養生を1つでも取り入れて、毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し、体調が軽くなっていくのが実感できると思います。
気血両虚タイプ
さくらんぼ・桃
インゲン豆・キクラゲ
蓮根・さつまいも・きゃべつ
枸杞の実・栗・棗
真鯛・ヒラメ・カレイ・どじょう・フナ
鶏・卵・ウズラ・羊
生姜など
消化力が弱く、高カロリーや繊維質が多い食材などは消化吸収しきれず、胃腸の負担にえなるので、栄養価は高くても消化しにくいものは控えめに取りましょう。
肉を少なくし、冷たい飲み物や食べ物を控えめにすることが大切です。
また、牛乳にはカルシウムの吸収を助ける乳糖を含み、日本人の大多数はその乳糖の消化酵素の活性が低いので、牛乳を飲んだ後、むかつきや下痢、水太りなどの症状を引き起こしやすいので控えめに摂りましょう。
「血」を補うためには夜は早く寝るようにしましょう。正しい睡眠が「血」を増やすので睡眠不足や夜更かしは大敵です。
また、激しい運動やサウナ入浴のように多量の発汗を促すことはなるべくしないようにしましょう。
もともと足りないパワー(気)を汗とともに奪ってしまうのでよくありません。
肝鬱気滞タイプ
三つ葉・生姜・パセリ・紫蘇の葉
ジャスミン茶
レモン・きんかん・ゆず・グレープフルーツなど
このタイプの方はストレスは禁物です。
気血の巡りを悪くし、マイナス思考に陥りやすくなってしまいます。
ご自分にあったストレス解消法(アロマ・ヨガなど)を実践してみてください。
「食養」は漢方薬と同様、一人ひとりの体質にあう食品を摂取することが基本になります。
穀物類、野菜類、果物類、動物性食品をバランスよくとれば、氣力を養うことができます。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。
ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。
当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。
しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。
さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。
当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。
それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。
この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。
特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。
顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)
急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子
その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳
アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など
これらの疾患はほんの一例です。
疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。
針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。
当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。
少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。
- 2019/02/20
- 不正出血
不正出血とは、月経以外で膣や子宮などから出血することを言います。大きく分けると機能性出血と、器質性出血の二つに分類されます。
機能性出血とは子宮や膣などその組織自体に異常はみられないが、正常な月経以外で出血をおこすことを言います。多くは、ストレスや不規則な生活、また過度のダイエットなどによって女性ホルモンのバランスが崩れ、不正出血をおこすと考えられています。婦人科で検査をしても子宮などに異常は無いが、月経が長引く、または経血量 の急激な増加、月経周期が短い…などはこの不正出血に含まれます。
器質性出血は、子宮がん・子宮筋腫・子宮内膜症・膣炎などの炎症性疾患が原因でおこる不正出血です。特に不正出血は子宮がんの初期症状でもあります。検査をしなければ、炎症や器質的異常の有無はわからないので、月経の乱れが続く場合は、早めに婦人科を受診されることをお勧めいたします。
<中医学による考察>
一般に現代医学で「不正出血」と総称される女性の月経期間以外の陰道内出血、及び月経後に出血が続くものを、中医学では「崩漏」あるいは「崩漏下」と言います。
崩漏は、急激に大量の出血がおこる「崩」、だらだらと少量の出血が続く「漏」に分けられます。この「崩」と「漏」は時に相互転化をおこします。「崩」が長引いて気血を消耗すれば「漏」に病証が移行し、逆に「漏」から出血量 が次第に増加して「崩」の状態に移行することもあります。
この「崩漏」のおこる背景には、衝脈・任脈という経絡の損傷と、それにともなう固摂機能の失調が深く関わっています。女性の生殖機能を主る臓腑の考え方と「衝脈」・「任脈」を軸に、中医学的考察を次に示します。
○中医学のいろは・1○
中医学では、人間のからだを構成し、生命活動を維持する基本物質を「気・血・津液」と呼んでいます。
「気・血・津液」は、五臓六腑―〔五臓〕肝・心・脾・肺・腎〔六腑〕胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦―の働きにより、飲食物から得た水穀の精微をもとに作られ、からだのすみずみまで運ばれます。臓腑は自らの役割を果 たすのみにとどまらず、他の臓器とも協力して機能を果たしています。臓腑や器官、組織がそれぞれ円滑に働き、「気・血・津液」が充分にあって、かつ、流れがスムーズであれば、病気からからだをまもる「正気」が働いて病気にかかりにくなりますが、何らかの原因で臓腑の機能が損なわれ、「気・血・津液」の不足や停滞がおこれば、健康は脅かされてしまいます。
一個の「統一体」としてのからだの働きに注目し、目には見えない「気・血・津液」の状態や、臓腑の働きに重きをおく中医学の治療は、検査数値で異常がない=健康とする西洋医学的な観点を離れ、何よりも一人一人のからだの「性質の変化」を優先しています。
○中医学のいろは・2○
経絡とは気血がめぐる通路です。体内では臓腑と臓腑、あるいは臓腑と器官をつなぎ、体表では皮膚をはじめ骨・関節などとも繋がっています。このように経絡は全身に分布して、網の目のようにネットワークを広げ、この経絡を流れる「経気」を仲立ちとして、臓腑や器官、組織は互いに連絡し合い、有機的に機能し合っているのです。
この経絡のなかで、縦に流れる主要な脈を経脈と呼びます。経脈には、特定の臓腑と直接繋がっている十二正経(※経絡の根幹をなす)と、属絡する臓腑を持たない奇経八脈、さらに十二経脈から分かれ、深部を走る十二経別 があります。
「衝脈」・「任脈」はともに奇経八脈に含まれ、属する臓腑はありませんが、どちらもその走行は会陰部に起こって腹部を通 り、直接子宮と連なることから、婦人の月経や妊娠と深く関わっているのです。
○中医学のいろは・3○
前述したように、「気・血・津液」は中医学の中で人体を構成する代表的な物質ですが、その他では「精」があります。
「精」は人体の機能活動全てを支える根本的な物質であり、先天の精と後天の精の区別 があります。
先天の精は、両親から受け継ぐ生殖の精で、五臓のうちの腎に蔵されて、生殖や発育を主ることから、「腎精」とも呼ばれます。一般 に狭義的に精という場合は、この腎精を指します。両親の先天の精が交わって受胎すると、先天の精は胎児の腎に蓄えられて(これを“腎は封蔵を主る”という)、腎精となります。青年期になると、腎の精気は生殖の精である「性ホルモン」を産生し、性器を発育させて生殖能力を高め、男子には精子の産生を盛んにし、女子には月経を開始させるのです。
この腎精は物質であるため、発育や成長で使用されれば消耗してしまいます。両親から受け継ぐ先天の精は、一度生まれ出てしまえば、それ以上直接受け取ることは出来ません。そこでもう一つの精、「後天の精」が重要な働きを担うのです。
後天の精は、脾胃の働きにより飲食物から化生された栄養豊富な物質で、全身の臓腑組織にゆきわたり、人間の生理作用を円滑に行うためのエネルギー源となっているものです。この後天の精をもとに、「気・血・津液」の多くは作られています。このように、後天の精は日々人間が生きていく為のエネルギーとなる一方で、その一部は腎に運ばれ、腎精へと化生されます。発育・成長の過程で消耗を続ける「腎精」を補う大切な役割を果 たしているのです。
この他に、精が不足すると「血」が「精」に変化して精を補充しています。反対に「精」が主る骨は「髄」を生じ、この「髄」によって「血」は化生されることから、「腎精は血を化生する」と呼ばれています。この両者の関係を「精血同源」と言います。
<中医学による生殖機能の考え方>
胞宮(子宮)は月経と胎児を育むことを主っており、その機能は腎気の盛衰・天き(人体の成長・発育・生殖機能を促進する物質)の分泌の度合い、衝脈・任脈の気血の状態と密接な関係があります。
※ 腎には、両親から受け継がれた腎精(中医学のいろは・3参照)と、腎精が気化してできた腎気があります。このほか、両親より先天の陰気と陽気が継承されており、先天の陰気は腎精とともに体の火照りをとる力を形成し、先天の陽気は腎気とともに体を温める力を形成しています。腎気は、蔵精・封蔵・気化の作用を持ち、腎精を貯蔵したり、脾より運ばれた後天の精を貯蔵し、腎精に化生する働きを主っており、腎陽はからだを温める作用に優れ、全身を温めて体温を維持したり、熱エネルギーを産み出しています。
腎は精を蔵し、生殖を主り、天きの源であります。そして、衝脈・任脈(あわせて衝任)の本となり、胞宮が胎児を養うことに深く関わっています。腎気が充実し、腎の陰陽が平衡を保つことによってはじめて、天きは分泌されて胞宮に至り、衝任脈は通 じ、精血は胞宮に注入されて月経に変化し、胞宮は懐胎が可能となります。
肝は、血を蔵し、疏泄を主っています。(疏泄とは、気血の流れをスムーズにすることを言います)肝の蔵血と疏泄の機能によって、胞宮の血を蓄え、溢れさせる機能が持続的になされ、月経は規則的に来るよう調整されます。
脾は、胃や小腸、大腸を含めた飲食物の消化吸収に関わるすべてを管理し、水穀の精微から「気・血・津液」を作ります。この作用が失調すると、食欲不振・腹部のもたれ・食後倦怠感や眠気・軟便・下痢・むくみなどの症状があらわれます。
脾胃は後天の本であり、気血生化の源であります。規則的な月経や胎児の栄養、乳汁の分泌には、脾の化生する気血が旺盛か否かに関わっているのです。
また、気の固摂作用(出血や汗がダラダラと出るのを抑える。尿、精液、帯下などの過剰な排泄を防ぎ、内臓が下がらないように一定の位 置に保つ)によって、脾は血が経脈を流れる際に、脈外に漏れださないように監督して、血の漏出を防いでいます。これを「脾は血を統す」といいます。規則的な月経を保つことに、脾の統血作用は不可欠なのです。
ではここから「衝脈」・「任脈」の話に入ります。
「衝脈」は子宮から出て、腹部・胸部の正中線の左右両則に沿い、上に向かって走る経絡で、咽喉を経て口唇に連なっています。衝脈は「十二経の海」・または「血海」とも言われ、五臓六腑に連なる十二の経絡から集められた「血」をたくわえる「海」のような存在です。衝脈にたくわえられた「血」が妊娠時には胎児の栄養として使われます。中国最古の医学書の一つである〔黄帝内経(こうていだいけい)〕の「素問」には、「女性は十四歳になると腎の気が充実して衝脈が血で満たされるので、生殖機能を促進する発育物質{天き}が生まれ、生理が始まり、妊娠が可能になる」と記されています。このように「衝脈」は女性の妊娠・生理作用と深く関わっているのです。
また「任脈」は子宮から出て、腹部や胸部を通る正中線に沿って走る経絡です。「任」とは、妊娠あるいは妊養の意味で、子宮と直接つながり、衝脈同様、女性の生理や、特に妊娠と深く関わっています。中医学の陰陽学説では、からだの前面 である胸腹部は「陰」に、背部は「陽」に属すと考え、からだ前面の胸腹部を通 る「任脈」には人体の陰経の脈気が集まり、諸陰の海を為しているとしています。諸陰の中でも特に足三陰経とは、中極・関元で交会し、さらに足三陰経が全て少腹部を循行していることから、任脈がこれらを隷属させると考えています。
この二つの経絡はともに奇経八脈と呼ばれ、絡属する臓腑はありません。しかし、上記のように、「衝脈」・「任脈」はともに女性の生理・妊娠と密接に結びついており、「崩漏」を含め、中医学に於いて今日の婦人科疾患を治療する上では欠かすことの出来ない、重要な役割を果 たしている経絡なのです。
では次に、この「衝脈」・「任脈」が損傷され崩漏がおこる発生機序を、中医学の弁証により分類し、以下に示します。
○衝任不固○
平素から脾気不足であったり、あるいは飲食の不摂や疲労により脾気を損傷して、統摂機能の失調がおこる。あるいは、先天の不足や房事過多により腎虚精欠となり、封蔵を司ることができなくなって崩漏が生じる。
・主症
―
月経が頻発し経血量が多い。また月経期間が延長する。重症になると出血がたらたらと続く。経血の色(経色)は淡紅色でさらさらして薄い。顔色は白く、息切れ、倦怠感、食欲不振を呈す。腎虚精欠の場合は膝や腰がだるく、力が入らない。澄んで白色の帯下がみられる。
・舌診
―
舌質:淡 舌苔:薄白
・脈診
―
細弱
・治則
―
固摂衝任(脾虚の場合―加えて補中益気、腎虚の場合―温補腎陽)
○衝任失調○
① 鬱熱
―
ストレスなどにより肝の疏泄が失われ、肝気が滞ることにより、鬱熱が化火する。これにより肝の蔵血機能が失調して崩漏がおこる。さらにこの血熱が直接、衝任脈を破ることもある。
② 血熱
A:実熱
―
もともと陽盛の人が辛いものを食べ過ぎたり、外から熱邪を受けることによって実火が内生し、血を妄行させる。
・脈診
―
細弱
・治則
―
固摂衝任(脾虚の場合―加えて補中益気、腎虚の場合―温補腎陽)
B:虚熱
―
体質が陰虚であったり、失血や長期に渡る慢性病によって、腎陰の不足がおこる。陰虚によって相対的に内熱が発生し、虚火が妄動して精血を固守できなくなって崩漏がおこる。
③ 湿熱
―
甘いものや油っぽいものの過剰摂取や外感湿熱は体内にも湿熱を内生させる。この湿熱が下焦に留まり胞宮の血絡が損傷される。
④ 血オ
―
月経期や産後の悪露が尽きない時に、寒熱を感受したり、気鬱が長期間にわたると血オを形成して衝任脈が阻滞する。衝任脈が阻滞して、胞宮の循環が悪くなると、胞宮に終結した血液は経脈に戻れず、胞宮に蓄積する。血液の蓄積が過剰になると、急激に溢れ出して崩漏が起こる。
①肝鬱による崩漏
・主症
―
精神的刺激などにより誘発されて出血することが多い。経色は暗紅色で血塊がまじることがある。乳房の張痛、心煩、怒りっぽい。
・舌診
―
舌質:紅 舌苔:黄色
・脈診
―
弦数
・治則
―
調理衝任・疏肝理気
②血熱による崩漏
<実熱>
・主症
―
通常の月経期間でない時期に急激に出血がおこる。経色は深紅色、経質は粘り気があり、臭いが強い。口が渇いて水分を取りたがる。イライラ感や、心煩をともなう。便秘傾向。
・舌診
―
舌質:紅 舌苔:黄
・脈診
―
滑数 または弦数
・治則
―
調理衝任、清熱涼血
<虚熱>
・主症
―
少量の出血がだらだら続いて止まらない。または、虚熱が強くなると突然経血量 が多くなる。経色は鮮紅色で粘調。頬の紅潮や五心煩熱、口の乾燥感などを呈す。また、不眠や盗汗を兼ねることも多い。
・舌診
―
舌質:紅 舌苔:少苔または剥離苔
・脈診
―
細数
・治則
―
調理衝任、滋陰清熱
③湿熱による崩漏
・主症
―
月経期間以外の急激な出血、だらだらと出血していて、突然大量 に出血する。経色は暗紅色。臭いが強く、出血とともに濁った帯下、または黄緑色の膿様の帯下が出る。さらに陰部のかゆみと疼痛がある。(湿熱が下注し、陰部を犯す)
・舌診
―
舌苔:黄じ
・脈診
―
濡数
・治則
―
調理衝任、清熱利湿
④オ血による崩漏
・主症
―
月経が停止している期間が続いた後、突然大量 出血をする。または、出血後継続して「漏」状態となる。経色は紫暗色、経質は粘調で血塊がある。小腹部が痛むが、出血後は痛みが軽減する。
・舌診
―
舌質:紫暗色、あるいは辺縁や舌先にオ斑やオ点がある。
舌苔:薄白
・脈診
―
沈渋または、しょく脈
・治則
―
調理衝任、調血化オ
以上のように、同じ崩漏のようであっても、その性質や原因は様様です。特にストレスや不規則な生活、また、若い女性にみられる極端な痩せ願望は、女性のからだに多大な影響を与えます。不正出血だけでなく、月経周期の乱れ、月経痛などは、自分のからだが発する危険信号です。一つでもあてはまる方は、食事や生活環境を整え、養生に努めましょう。食事にあっては、まず、なま物や冷たい物をなるべく避けて下さいね。
また、不正出血が再三反復しておこる場合は、一度、婦人科を受診してみて下さい。
=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。
ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。例えば、顔面 麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。
当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。
しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。
さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。
当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。
それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。
この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。
特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。
顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)
急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子
その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳
アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など
これらの疾患はほんの一例です。
疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。
針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。
当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。
少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。
- 2019/02/20
- 無月経
生活や社会環境から生じる精神的ストレス、無理なダイエット、薄着での体の冷やしすぎなどによりまねいてしまう無月経。
中医学では、こういった器質的に異常がない、原因不明の無月経に効果 を発揮します。
▼現代医学的診断・治療法▼
1.原発性の場合
(性機能が成熟する年齢になっても月経が来朝しない)
原因の約半分は卵巣形成障害が占めていると言われています。
その他、性中枢や内分泌の異常によるものと考えられています。
初経が16歳を過ぎても来ない場合は、産婦人科を受診された方がよいでしょう。
早期に診断、治療することにより将来への妊娠、分娩が可能となります。
2.続発性の場合
(今まで周期的に月経があったにも関わらず連続して3ヶ月以上月経が中断している状態)原因はホルモン分泌の異常や排卵障害で起こるとされています。
排卵障害による無月経は、ホルモン療法や排卵誘発剤が主な治療法になります。
器質的に異常がない場合でも、中医学とうまく使い分けて治療することにより、効果 が高まりやすくなります。
▼中医学的無月経のとらえ方▼
発症する原因は様々ですが(以下後述)主に2つのタイプに分けることができます。
1.栄養が不足しているため、子宮を養うことができず発症する「血枯タイプ」
このタイプは月経が始まる年齢になっても初潮がない、あるいは月経が遅れ、経血量 が減少し、無月経にいたります。
先天的に虚弱体質で発達が遅い場合や無理なダイエットにより(特に成長期で代謝が高まる時期に)摂取量 や質の少ない栄養は、まず必要な臓器へ供給されるため、子宮まで届かず無月経をまねいてしまうなどが主な原因となります。
2.エネルギーの流れが停滞し、栄養が子宮へ行き渡らないために発症する「血滞タイプ」
このタイプは突然発症し、数ヶ月にわたり月経が停まります。
こちらは主に、精神的ストレス(周りの社会環境、生活環境など)や生活の中での不摂生(飲食、睡眠不足、過労)が主な原因になります。
この他、病状が長引くことにより症状は複雑化していきます。そのため1と2のタイプが混合しているタイプの方も少なくありません。その場合は問診で症状の軽重を推し量 り、現在あらわれているつらい症状がある場合はそちらから先に治療し、特にこれといった自覚症状がない場合は病の根本から治療していきます。
▼中医学的からだのしくみ▼
~「気」「血」「水」とは~
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。
もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりすると からだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。
~臓腑の働きとは~
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。
ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。
「肝」・・
1.
全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。 伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。
2.
全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。
肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため肝の支配している器官の機能減退症状があらわれてきます。
例)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足の震えやしびれ、筋けいれんが起こりやすくなったりします。
婦人科疾患としては、無月経、不妊症、月経前の乳房のはった痛み、ストレスにより月経周期が早まったり、遅くなったりする。
「脾」・・
1.
食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。
2.
エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。
働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。
3.
血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。
婦人科疾患として見られる症状は白いおりものが多くでる、黄色っぽく臭いおりものがでる、不正出血、月経が早まる、子宮下垂
「腎」・・
生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。
「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。
「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。
例)骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる。
婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい。
▼中医学的診断方法▼
個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。
そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。
続発性の場合は月経があったときの月経の状態(周期・期間・月経量 ・質・色、月経に伴う不快な症状など)、基礎体温表などから体の中の状態を把握することができます。
この他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。
その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。
▼中医学的無月経のタイプと治療方法▼
1.栄養が不足しているため、子宮を養うことができず発症する「血枯タイプ」です。
●気血虚弱タイプ●
食物からエネルギー(気)を生み出す源である「脾・胃」。
この2つの臓器の働きが失調することにより体を養う気や血が作りだせないため、子宮はもとより、体全体の機能減退症状がみられます。
○主な原因
生まれつき虚弱体質、飲食の不摂生、過労、あれこれ思い悩むことが多い。
○月経の特徴
周期:
遅れぎみ
血量:
少ない
色 :
淡い、薄め
質 :
さらさらしている
○随伴症状
めまい、頭がくらくらする、食欲がない、食べても少ししか入らない、息切れ、便はやや軟便傾向、元気がでない、疲れやすい、話したがらない(パワー不足の為)
○治療方法
エネルギーと血を増やしていく「補気養血」、「調経」の治療をしていきます。
ツボ:
脾ユ、胃ユ、中カン、気海、三陰交、足三里
漢方:
人参養栄湯
●肝腎不足タイプ●
肝は血を貯蔵し、腎は先天のエネルギーを貯蔵しています。これらはお互いに協力し必要なときに変換しあいます。この2つの臓器の働きが失調すると、体を養う「血」や「先天のエネルギー」不足を生じ、無月経にいたります。
○主な原因
生まれつき虚弱体質、長期間の過労、性交過多による腎エネルギーの損傷。
○月経の特徴
周期:
遅れがち
血量:
少ない
色 :
薄い赤色
質 :
水っぽくさらさらしている
○随伴症状
めまい、耳鳴り、腰が重だるく不快感があり脚に力が入らない
○治療方法
肝・腎の働きを高め子宮内を滋養していく「滋養肝腎」「調経」の治療をしていきます。
ツボ:
腎ユ、肝ユ、太渓、関元、三陰交
漢方:
帰腎丸、六味地黄丸
2.エネルギーの流れが停滞し、栄養が子宮へ行き渡らないために発症する「血滞タイプ」です。
●気滞血オタイプ●
「気滞」とは主に、精神的ストレスなどにより気の流れが停滞しまうことです。
「血オ」とは血の流れが停滞してしまう状態をいいます。
気と血は、体の中をいっしょに運行していますので、気滞により流れがスムーズでなくなると血の流れも影響を受け、滞ってしまうタイプです。そのため子宮を養うことが出来ず無月経となってしまうタイプです。
○主な原因
精神的ストレス、イライラしやすく怒りっぽい、マイナス思考。
○月経の特徴
周期:
早まったり、遅くなったりその時の精神状態により変わる
血量:
少なく、ぽたぽたと出る程度
色 :
紫色っぽく、赤黒い色
質 :
レバー状のかたまりが血に混じる
○随伴症状
胸や脇、乳房がはって痛む、イライラしやすい、ガスやげっぷが出やすくなる、下腹部がはって痛む。
○治療方法
気と血の流れを調える「理気化オ」、「調経」の治療をしていきます。
ツボ:
太衝、中極、血海、三陰交、合谷
漢方:
血府逐オ湯、桂枝ぶくりょう丸、通 導散
●痰湿阻滞タイプ●
「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、経絡(気の流れるルート)の運行を阻害します。
栄養分である気、血が子宮へ到達できないため、無月経となってしまうタイプです。
○主な原因
冷たい水分・甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの、ビール、生ものを多く摂取する、家が湿気を帯びやすい。
○月経の特徴
周期:
遅れがち
血量:
少なめ
色 :
黒っぽい赤色
質 :
レバー状のかたまりが血に混じる、粘っこい
○随伴症状
白いおりものが多くでる、水太り体質、色白、体が重だるい、痰が多くでる、頭が重くめまいがする、胸や胃のあたりがもたれる、吐き気、嘔吐をもよおす、手足・目のむくみ。
○治療方法
脾の働きを高めることにより痰を作らないようにする「健脾化痰」、エネルギーの流れを調え、栄養が子宮へ行くよう促す「理気調経」の治療をしていきます。
ツボ:
(鍼)足三里、中カン、豊隆、陰陵泉、三陰交
(お灸も一緒にすると効果が高まります)
漢方:
半夏白ジュツ天麻湯
●寒凝血オタイプ●
冷たいものの飲食や寒気が体に入ってくることにより、血のめぐりが滞りやすくなってしまいます。 そのため体の各器官や子宮に栄養が行きわたらず無月経となってしまうタイプです。
○主な原因
冷たいものや体を冷やす食べ物の食べ過ぎ、
寒冷にあたる(冷房や真冬の冷たい風)、薄着(とくに下半身)
○月経の特徴
周期:
遅れがち
血量:
少なめ
色 :
黒っぽい赤色
質 :
大きなレバー状のかたまりが血に混じる
○随伴症状
下腹部が冷えて痛む、身体が寒い、手足の冷え、温めると楽になる顔色が青白い。
○治療方法
経脈(エネルギーの通り道)を温め寒さを散らす「温経散寒」「調経」の治療をしていきます。
ツボ:
関元、中極、三陰交、次リョウ
(お灸も一緒にすると効果が高まります)
漢方:
温経湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼
自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。
●脾胃虚弱タイプ●
【生活習慣】
・
消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
・
消化が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。
・
スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
・
頭や目の使いすぎは血を消耗させてしまうので、この時期は極力長時間パソコン作業や、夜遅くまでの勉強、仕事は避けましょう。
・
ダイエットによる食事制限も禁物です。
【食べ物】 ~エネルギーを益す食べ物を摂りましょう~
(穀類)
うるち米、粟米、小麦製品
(豆類)
大豆や大豆製品、牛乳
(肉類)
牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜)
山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参
(魚類)
いか、貝柱
(果物)
なつめ、もも、さくらんぼ
(お茶)
杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶
~体を冷やす食べ物、辛い食べ物、油っこく味の濃い食べ物は胃を刺激し気を消耗させるので避けましょう~
辛い食べ物・・・
青唐辛子、ねぎ、コショウなど
冷やす食べ物・・
すいか、バナナ、イチジク、なし、苦瓜、薄荷など
●肝腎不足タイプ●
【生活習慣】
・
消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
・
穀物をしっかり取り、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
・
ダイエットによる食事制限は禁物です。
【食べ物】 ~主に腎のエネルギーを補う食べ物を多く摂りましょう~
(穀類)
うるち米、粟米、小麦製品
(豆類)
大豆や大豆製品、牛乳
(肉類)
牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜)
山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参
(魚類)
いか、貝柱
(果物)
栗、もも、さくらんぼ
(木の実)
くるみ、なつめ、黒ごま、クコの実
(お茶)
杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶
●気滞血オタイプ●
【生活習慣】
・
イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、ヨガや気功などの呼吸法やストレッチでリラックスできる時間を作りましょう。その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。
・
お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。
【食べ物】~香りの高い食べ物を摂ることにより鬱々とした気持ちを発散してくれます~
(野菜)
春菊、三つ葉、みょうが、シソの葉、パセリ、セロリ
(果物)
みかん、レモン、グレープフルーツ、きんかん、ゆず
(お茶)
ジャスミン茶、ミントティー
●痰湿タイプ●
【生活習慣】
・
甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。
・
水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。 また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。
・
運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。
・
梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。
【食べ物】 ~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~
(穀類)
はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆
(野菜)
冬瓜、白菜、山芋、トマト、チンゲンサイ
(魚類)
こい、ふな
(果物)
すいか、ぶどう、メロン
(お茶)
紅茶、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶
▼その他日常生活での注意点▼
1.基礎体温を毎日つけましょう。
基礎体温を測ることにより自分の体の状態(体内リズム)を目でみてわかることができます。またグラフの内容で体質別 も分かりやすくなります。
2.睡眠はしっかりとりましょう。
3.ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功など)、読書、散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。
さて、お読みになって無月経にはさまざまなタイプがあり、タイプ別による治療、食養生、生活習慣が重要だということがお分りになって頂けましたでしょうか。
些細なことなのですが日常の過ごし方を少し見直してみるだけで体調が変わりはじめ、 体質改善に繋がっていきます。無理のない範囲で実践し、続けていくことが大事です。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/02/20
- 冷え性
女性の半数は冷えに悩んでいると言われています。
「手足が冷たい、夜、布団に入っても足が温まらない、冷房にあたると体調を崩す、手足は冷えているのに顔はのぼせる」という声をよく耳にします。
現代医学で冷えは、症状のひとつにすぎないとされ、指導と対策は軽視されがちです。
一方東洋医学では‘冷えは万病のもと’と言われるほどでさまざまな病気の原因になると考えられています。
よくみられる肩こり、頭痛、便秘、下痢、腰痛をはじめ、月経痛、月経不順、不妊症などを引き起こす原因となるのです。
▼中医学的冷え症の考え方▼
中医学では、冷え症を招く要因として身体上の病気因子と環境因子、食生活や嗜好因子、ストレス、年齢・体質及び性差などが考えられます。
★身体上の因子とは・・
気虚(パワー不足:疲れやすい、やる気がでないなど)
気滞(エネルギーが滞り、スムーズに流れない)
血虚(血不足のため各器官、手足などを栄養できない)
お血(血が滞り一定の場所で停滞してしまう)
水滞(体内で余分な水分が停滞してしまう)
これらの因子によって体を温める働きが低下してしまいます。
自分がどの因子にあてはまるか詳しく知りたい方は、当ホームページの「身体健康チェックの‘健康check’」を参照してください。
★環境因子とは・・季節、天候、生活環境
★食べ物・嗜好因子とは・・冷やす食べものの多食、たばこ、飲酒
▼中医学的からだのしくみ▼
~「気」「血」「水」とは~
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、 様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。
~臓腑の働きとは~
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。
中医学的にみた婦人科疾患で重要な臓腑の働きは下記のようになります。
・「肝」
1.全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。
伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。
この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。
2.全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。
ですので、肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため(肝が支配している器官である)目のかすみ、爪が割れやすくなる、 手足がしびれる、筋けいれんが起こりやすくなったりします。
・「脾」
1.食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。
2.エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。
働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。
3.血を脈外に漏らさないようにする働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。
・「腎」・・生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。
「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。
このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。
女性では、月経不順や不妊症、閉経などの原因になります。
「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
▼中医学的冷え症のタイプと治療法▼
それぞれのタイプの原因は主に、冷たいもの、冷たい飲料(ビール)、生もの(刺身、おすしなど)の食べ過ぎなどと似ていますが、 人により症状の現れる場所や見られる症状が違いますので気をつけて見てみてください。
●外寒犯胃タイプ●
冷たいもの、生ものの過食、精神的ストレスなどにより、胃の陽気が損傷されて生じるタイプです。
○主な原因
冷たいもの、生ものを多く摂取したとき、クーラーや寒冷にあたってしまい胃を冷やしてしまったとき
○随伴症状
胃のあたりの冷えと痛み(特に空腹時)があり、軽いときはシクシクと痛み、重いときは激痛、寒冷によって悪化し、温めると楽になる。
少し飲食すると楽になるが冷たいものを食べ過ぎると吐き気を催す、つばやよだれが多い、げっぷ、酸っぱい胃液が上がる、寒がる、胃のあたりがぽちゃぽちゃと音がする、手足が冷える。
○治療方法
脾・胃を温め、寒さを散らす「温中散寒」の治療をしていきます。
ツボ:大椎、胃ユ、上カン、中カン、梁丘、足三里、神ケツにお灸
漢方:小建中湯、厚朴温中湯、安中散
●脾陽虚タイプ●
冷たい食べ物、生ものの食べ過ぎによって「脾・胃」が冷えてしまい働きが弱まってしまうタイプです。現代医学的には消化機能減退、循環障害などが考えられます。
○主な原因
冷たいもの、生ものを多く摂取するなど
○随伴症状
お腹がはる、お腹が冷えると痛くなり、温めたり押さえると楽になる、手足の冷え、便が軟らかい、不消化性の下痢、寒がる、 尿は透明でうすく、量が多い、ふくらはぎがむくみやすい、疲れやすい、女性は水様の白いおりものがたくさんみられる。
○治療方法
脾を温め、働きを高める「健脾温陽」、寒さを散らす「散寒」の治療をしていきます。
ツボ:脾ユ、足三里、陰陵泉、三陰交、章門、神ケツにはお灸
漢方:附子理中湯、真武湯、人参湯
●腎陽虚タイプ●
腎陽は全身の陽気(体を温める力)の源です。体を温め、生殖発育を促進する働きがあります。腎陽の働きが弱まると温める作用が失われてしまいます。
先天的に腎のエネルギーが弱いか、冷たいものの過食などから体の陽気を損なってしまうタイプです。
○主な原因
生まれつき体質が虚弱体質、長期間の過労、性交過多による腎エネルギーの損傷
○随伴症状
腰の周囲が冷え、時に重だるさや痛みを伴う、下腹部が冷える、手足が冷える、尿が希薄で量 が多い、 明け方に下痢、精神、気力が振るわない、性欲低下、女性では不妊症の原因にもなります。(詳しくは「不妊症について」を参照してください)
○治療方法
体を温め、活動力を増す「温補腎陽」の治療をしていきます。
ツボ:大椎、命門、関元にお灸、腎ユ、太ケイ
漢方:八味地黄丸、右帰飲
●寒滞肝脈タイプ●
「肝」エネルギーは、足の親指の先端からはじまり、脚の内側、陰部を通 り下腹部、胸のあたりまで流れています。
この流れに沿った部位に、寒気が入ると、気血の流れが滞り冷えや痛みを引き起こすタイプです。
現代医学的には寒冷による血管収縮、筋肉の緊張、平滑筋のけいれんなどが考えられます。
そけいヘルニア、陰嚢水腫、腸管癒着などでみられます。
○主な原因
寒冷、薄着(特に下半身)、冷たいものの摂りすぎ
○随伴症状
冷えると下腹部が痛み、温めると楽になる、男性の場合は冷えによる痛みが睾丸に放散する、 陰嚢の収縮、または腫大、女性の場合は生理前の下腹部の冷え、痛み、温めると楽になる。
○治療方法
肝気の流れる通り道を温め寒さを散らす「暖肝散寒」の治療をしていきます。
ツボ:大椎、肝ユ、期門、関元、中極
漢方:暖肝煎、天台烏薬散
●寒滞経脈タイプ●
先の「寒滞肝脈タイプ」は主に肝気の流れと深く関わり、このタイプは外傷を受けた部位 に(特に関節周囲部でみられます)寒気が入り気血の流れが滞ってしまうタイプです。よく「古傷が痛む」という言葉を耳にしまが、痛みを引き起こす原因は主に冷えから来ているものと考えられます。
リウマチの安静期、坐骨神経痛の慢性期、捻挫・骨折の後遺症などにみられます。
○主な原因
外傷
○主な症状
関節またはその周囲の筋肉や腱の冷え、痛み、手足末端の冷え、重症の場合は局所のしびれ、知覚、感覚が鈍くなる。
○治療方法
寒さをとり、エネルギーのルートを温め、流れを良くしていく「散寒」「温経通 絡」の治療をしていきます。
ツボ:大椎、大ジョ、懸鐘、陽稜泉、足三里、痛む部位の周囲
漢方:四逆湯、温経湯、小柴胡湯
▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼
私が臨床実習の勉強のため上海へ行ったときに、病院で出会った患者Aさんのお話をしたいと思います。
その方は50歳代前半の女性でとても手足が細く長く、モデル体型をしていました。訴えていた症状は、腰痛と膝の痛みでした。
私は膝の治療を受けていたAさんの脚をみてきれいな脚をしているなと思い、「モデルさんのような脚ですね。」と言いました。そうしましたらAさんは笑いながら、 「30歳代までほとんど毎日、冬でもミニスカートをはいていたのよ。そうしたら今になって急に腰や膝が痛みはじめたの。何か外傷を受けたわけでもないのに。 若いころ冷やし過ぎたのね。」と言っていました。
このお話の例から私は、季節に応じて体を温かくしなければ体内の陽気は寒気におかされそれが成人後の冷え、腰痛、関節症など病気の原因につながることを学びました。
食生活においては、冷たいジュース、生ビール、冷水、冷茶、果物、刺身、冷たいサラダなどの冷飲冷食が多く売られ食べられています。確かに喉ごしがよくついついたくさん食べてしまいがちです。
しかしこのような食べ物を季節を問わず頻繁に食べ続けてしまうと冷え症を招くばかりでなく、さまざまな病気の原因を生み出し、胃腸病の発生率を高くする要因の一つになります。
これから説明していきます、養生法を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ実践してみてください。
体質が除々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。
【生活習慣】
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夏、冷房が強く寒さを感じる場合は腹巻をしたりレッグウォーマーをはき下半身は冷やさないようにしましょう。冬は暖かい服装をし体の温まる食べ物を摂取しましょう。
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入浴時はぬるめのお風呂にゆっくり入り体のしんまで温めるようにしましょう。40℃のお湯に10~15分つかると温まります。
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冷えやすい下半身は下腹部や腰部にカイロをはって、しっかり温めましょう。
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体を温める食べ物を摂るようにしましょう。
・
女性は普段よりいっそう体が冷えやすい生理中は、体を冷やさないよう充分気をつけましょう。
【食べ物】
~体を温め、活動力を増す作用のある食べ物を摂りましょう~
(穀類)
もち米
(肉類)
羊肉、鶏肉、牛肉
(魚介類)
えび、なまこ、あなご、いわし
(野菜)
にら、ねぎ、ししとう、かぼちゃ、しょうが、にんにく、らっきょう
(木の実)
栗、くるみ、なつめ
(香辛料)
こしょう、さんしょう、八角、酒、シナモン、黒砂糖
(お茶)
杜仲茶、ジンジャーティー黒砂糖入り、よもぎ茶
~体を冷やす性質のある食べ物は極力避けましょう~
(野菜)
きゅうり、トマト、冬瓜、苦瓜、レタス、なす、ごぼう、大根
(果物)
すいか、なし、バナナ、柿、レモン
(豆類)
豆腐、豆乳、緑豆
(お茶)
緑茶、ウーロン茶、菊花茶、薄荷(ミント)茶
●中医学を導入している鍼灸院は、それほど多くはございません。
ですので、 中医学的な治療を受けたいとお考えの方はお気軽に当院までご相談下さい。鍼灸・漢方全般 に関する相談も承ります。
- 2019/03/11
- 【その他】中医鍼灸による美容
最近、当院ホームページをご覧になった患者さんから、「鍼灸治療は美容に効果 があるの?」といった内容の質問メールを頂くことが増えています。
そこで今回は、特に女性の患者さんに関心の深い「美容に関する鍼灸」のお話をしたいと思います。
鍼灸治療で肌荒れ或いは吹き出物等の改善が出来ることを、皆さんは御存知でしょうか?
肌荒れ、吹き出物は内臓のトラブルやストレスによって発生することがあります。このような場合、ただ単に荒れた皮膚表面 をお手当てしても改善されないことが多いのです。なぜなら、お肌のトラブルの原因になっている「もと」の部分に対してお手当てしていないからです。
では、鍼灸治療ではどのように肌荒れを改善していくのかといいますと、詳しい問診により日常生活の状態、習慣或いは内臓のトラブルやストレスがないかを把握することが大切です。そして、個人個人の体調に合わせて、お手当ての手順を決め治療を行っていきます。
例えば、日常生活で薄着をすることが多く、冷たい飲み物を好んで飲むような、体を常にひやしているような方には、体を温める治療を行い血液循環を改善し、お肌に血液の栄養素が十分いき渡るように整えます。冷えが改善される事により新陳代謝も良くなり、お肌もきれいになってきます。
内臓にトラブルがある場合には、胃腸の機能に問題がある場合が少なくありません。特に口の周りや前額に肌荒れや吹き出物が出やすいタイプです。この場合は胃腸機能を活発にすることにより、便秘症の方は便秘も改善されお肌のトラブルも改善されます。
ストレスの多い方は、偏頭痛や頭頂痛、肩こりが起きやすく、顔の側面 に吹き出物が出ることが多く、また不眠に悩まされる方も多いようです。中国医学では、ストレスが多くなると体の気(活力・体調を整える力)の流れが停滞しやすくなり、体に様々な症状が現れてきます。女性ホルモンの分泌の変化や冷え、のぼせ生理不順、肝機能の低下などにより、体の中に溜まった不純物を分解する機能が低下して肌荒れが生じやすくなります。
中国医学には「以表知裏」という考え方があります。これは体表に現れている状態は、「裏」つまり内臓の状態を反映しているものであるという考え方で、非常に理に適った見方であるといえるでしょう。簡単にいくつかの例を挙げましたが、日常生活の参考にしていただきたいと思います。美容関係でお悩みの方は、体質改善中心の中国鍼灸にご相談をお勧めいたします。
最近アンチエイジング(老化防止)、デトックス(排毒)などという言葉が流行していますが、中医学は、はるか何千年も前からこのようなことは、行われていました。
デトックスの代表的な治療が吸玉療法(カッピング)。ガラス玉容器を使い、体表に吸い込ませ血流を良くし、酸化した体をアルカリ化へ導く様に働き掛けます。また体に入り込んだ不必要な寒気、熱気を抜き去る作用が有ります。
吸い玉の作用は、解り易く言えば体内の老廃物質の新陳代謝を促進させる事です。アンチエイジングの代表的な治療が、日頃からの体の手当の予防養生なるものです。(鍼灸で自然治癒力を高め、活力エネルギーのチャージ補充する事を指します。)
肌荒れの気になる方
肌の老化(シミ、シワ)、体力の衰え、気になる方は、自然治癒力体を回復させる力を整え、体内から元気を取り戻し、美肌に役立つよう、或は自然な体の衰えを予防して行きましょう。
お気軽にご相談して下さいませ。
中医学診断による個々の体質、症状を判断し、治療は局所治療だけにとどまらず、体質や体の全体の活力エネルギーバランスの調整しお手当てをさせて頂きます。
治療で大切なのは局所治療でなく、症状などを引き起こしている原因に対しての治療が大切なポイントになります。この点を深く理解して頂ければと思います。症状により通 院期間、治療回数は違います。基本的に体質改善を行うのに三ヶ月位 は掛かると思ってくださいませ。ある程度時間を掛けて手当てを受けると言う気持ちをお持ち下さい。
食養生、家庭でのツボ療法の指導も致します。
漢方相談も可能です。
ちなみに、中医鍼灸の美容の適応例:ニキビ、吹き出物、面疔、シミソバカス(程度にもよります)、豊胸、生理時の肌荒れ、円形脱毛、アトピー性皮膚炎(乾燥肌タイプ・じゅくじゅく肌タイプ・皮膚が真っ赤になるタイプ・乾燥肌で赤黒肌色になるタイプ)、ストレスによる肌荒れ、ダイエット、目の下のクマ、冬季の乾燥肌などがあります。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
Eメール genki@dokutoruyo.com
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