コラム

2019-02-20
子宮筋腫

子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で成人女性の4人に1人の割合で見られる疾患です。

思春期前の若い女性に発症することはほとんどなく、閉経後には退縮して小さくなるため、筋腫の発育には女性ホルモンが強く関係していると考えられています。

この場合現代医学での検査は重要な診断・治療の目安となるため、比較的小さな筋腫で、特別 な症状が無い場合でも定期的な検診を受けることをお勧めします。

 

またその際、鍼灸治療と併用することにより(筋腫の大きさや症状の程度によりますが) 一定の効果があらわれやすく、治癒力も高められるため身体への負担も軽減されます。

 

そのほか病の根本である原因、誘発要因に着眼し治療を進めていくため再発しにくい体質へと改善していくことができます。

 

中医学的子宮筋腫のとらえ方▼

子宮筋腫で見られる症状の1つに「しこり」があります。

 

中医学では、この「しこり」の性質や特徴、全身に現れている症状を把握することにより 筋腫が形成された原因、誘発要因を導き出していきます。

 

「しこり」は体の活動源である<エネルギー>、栄養源である<血>、体を潤す<水>の流れが 長期間停滞することにより形成されていきます。

 

 

症状の軽重や進行状態は、生活環境や社会環境、個々の体質や性格が深く関与します。

 

現代医学的診断・治療方法▼

 

<筋腫の発生する部位>   

 

*子宮体部(ショウ膜下筋腫、粘膜下筋腫、筋層内筋腫)   

*子宮頚部(粘膜下分娩、子宮を支える靭帯に筋腫が発生する)    

  全体の95%は子宮体部に発生し、残りの5%が頚部に発生するといわれています。

 

<筋腫の主な症状>    

 月経の量が多くなる、月経期間の延長、頻発月経、月経痛などの月経異常と不正出血が見られます  (これは中医学も同様です)。  

  

 また発生する部位や発育方向によりそれぞれ特異な症状が伴います。

 

 

<検査法>    

 子宮卵管造影や子宮鏡などがあります。

 

 

<治療法>    

 薬物療法と手術療法があります。

~薬物療法~

「偽閉経療法」という薬物を使って半年間ほど月経をとめ、子宮筋腫を小さくする方法です。

 

治療中は月経の症状で苦しむこともなく筋腫も小さくなるため有効な方法です。

 

しかし長期間の服用により骨量の減少や更年期障害のような副作用、さらには薬剤の服用中止後に卵巣機能が再開すると筋腫がまた大きくなってしまうという問題点もあります。

 

その他UAE(子宮動脈塞栓法)という子宮へ流れる血管に栓をして子宮筋腫を小さくするといった治療を行なっている施設もあるようです。

 

 

~手術療法~

手術を要する子宮筋腫は、大きさがこぶし大以上のとき、過多月経や不正出血などの出血傾向が強く貧血がひどくなる場合、不妊や習慣性流産、早産の原因になると考えられるときなどです。          

治療法は子宮全摘術と筋腫核出術があります。           

どちらの手術法を用いるかは全身状態、筋腫の数や大きさ、発生部位 、将来子どもを希望するかどうかなどにより選択されます。

 

 

中医学的からだのしくみ▼

~「気」「血」「水」とは~

体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、 これらの3つが体内に十分な量で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。

 

もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。

 

さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

 

~臓腑の働きとは~

「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。

 

西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。

 

ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。

 

ゆえに違う診たてができるのです。

 

この点をまず理解してください。

 

「肝」・・

全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。   

 

伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。      

   

この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。

 

全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。    

 

肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため肝の支配している器官の機能減退症状があらわれてきます。

 

例)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足の震えやしびれ、筋けいれんが起こりやすくなったりします。         

 

婦人科疾患としては、無月経、不妊症、月経前の乳房のはった痛み、ストレスにより月経周期が早まったり、遅くなったりする。

 

 

「脾」・・

食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。

 

働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。

 

エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。

 

働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。

 

血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。

 

働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

 

婦人科疾患として見られる症状は白いおりものが多くでる、黄色っぽく臭いおりものがでる、不正出血、月経が早まる、子宮下垂

 

 

「腎」・・

生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。

 

「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。

 

このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。

 

「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

 

年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。

 

例)骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる。

 

婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい。

 

 

中医学的診断方法▼

中医学では主に以下の状態での治療に一定の効果をもたらします。

1.筋腫の大きさが5センチ以下と比較的小さいもの

2.過多月経、不正出血による貧血など出血傾向の少ない場合

3.周辺臓器への圧迫や他の器官への癒着のない場合

 

 

個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。

 

そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。

 

月経の状態(周期・期間・月経量・質・色、月経に伴う不快な症状など)、基礎体温表などから体の中の状態を把握することができます。

 

この他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。

 

その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

 

 

中医学的子宮筋腫のタイプと治療方法▼  

 

「気滞」とは主に、精神的ストレスなどにより気の流れが停滞してしまうことです。

 

「血オ」とは血の流れが停滞してしまう状態をいいます。

 

気と血は、体の中をいっしょに運行していますので、気滞(血オ)により流れがスムーズでなくなると血(気)の流れも影響を受け、 滞ってしまうタイプです。

 

その結果、しこりが形成されやすくなっていきます。

 

 

気滞タイプ●

 

主な原因     

精神的ストレス、イライラしやすく怒りっぽい、マイナス思考

 

筋腫の特徴  

・下腹部にしこりがあり、張った感じはあるが触れると堅くはない     

・しこりを押すと移動する      

・日によっては触れるときと触れない時がある    

・痛む部位は一定しない

 

月経の特徴

周期:早まったり、遅くなったりその時の精神状態により変わる      

血量:少なく、ぽたぽたと出る程度       

色 :紫色っぽく、赤黒い色       

質 :レバー状のかたまりが血に混じる

 

随伴症状

胸や脇、乳房がはって痛む、イライラしやすい、ガスやげっぷが出やすくなる、   

頭痛は頭の側面が張って痛む、偏頭痛

 

治療方法

気の流れをスムーズにし、しこりを散らしていく「疎肝解鬱」「行気散結」の治療をしていきます。       

ツボ:太衝、子宮、関元、帰来、三陰交、内関、合谷       

漢方:香リョウ丸

   

 

血オタイプ●  

 

主な原因   

月経中或いは産後、子宮から血が体外へ排出されず(子宮へ)停滞してしまう、   

ストレス、冷え、外傷、打撲、手術によるうっ血、過労

 

筋腫の特徴  

・下腹部にしこりを触れる   

・しこりは堅く移動しない   

・痛みが強く、触れられるのを嫌がる

 

随伴症状  

月経中、下腹部が痛む、脹った痛み、腰痛、痛みのため下腹部を押さえるのを嫌がる

 

月経血の特徴

月経周期は遅れがち    

色:赤黒い    

量:少ない    

質:レバー状のかたまりが血に混じる

 

治療法

血の流れを良くし、停滞した血のしこりを取り除いていく「活血破オ」「散結」の治療をしていきます。      

ツボ:子宮、中極、血海、三陰交、合谷      

 

漢方:桂枝茯苓丸

   

 

痰湿タイプ●

「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、経絡(気の流れるルート)の運行を阻害します。

滞っている状態が長く続きますと「しこり」が形成されていきます。

 

主な原因  

冷たい水分・甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの、ビール、生ものを多く摂取する、    

家が湿気を帯びやすい

 

筋腫の特徴

・下腹部の真ん中に堅いしこりを触れる   

・しこりを押すと柔らかい

 

月経の特徴

周期:遅れがち、    

血量:少なめ     

色 :黒っぽい赤色     

質 :レバー状のかたまりが血に混じる、粘っこい

 

随伴症状

白いおりものが多くでる、水太り体質、色白、体が重だるい、痰が多くでる、 頭が重くめまいがする、胸や胃のあたりがもたれる、吐き気、嘔吐をもよおす、手足・目のむくみ

 

治療方法  

脾の働きを高めることにより痰を作らないようにする「健脾化痰」、しこりを散らしていく「散結」の治療をしていきます。   

 

ツボ:子宮、中極、帰来、豊隆、百会、陰陵泉、三陰交   

漢方:開鬱二陳湯、または抑肝散と二陳湯

  

 

タイプ別にみる生活養生・食養生▼

自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。

体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。

 

気滞タイプ●

【生活習慣】

イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、ヨガや気功などの呼吸法やストレッチでリラックスできる時間を作りましょう。  

その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。

お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。  

 

【食べ物】~香りの高い食べ物を摂ることにより鬱々とした気持ちを発散してくれます~

 

(野菜)春菊、三つ葉、みょうが、シソの葉、パセリ、セロリ、   

(果物)みかん、レモン、グレープフルーツ、きんかん、ゆず   

(お茶)ジャスミン茶、ミントティー

 

 

血於タイプ●

 

【生活習慣】

夏は冷房、冬は外気の寒さから体が冷えるのを防ぐようにしましょう。

 

冷たいものの摂り過ぎは血行を悪くするので気をつけましょう。

 

寒い季節や冷房で冷えた日は、生野菜は控え、温野菜を摂るようにしましょう。

 

適度に運動をして、適度な汗をかくよう心がけましょう。

 

【食べ物】  ~血液の流れを良くする作用のある食べ物を摂りましょう~     

 

(豆類)小豆、黒豆        

(野菜)あぶらな、にんにく、にら、ねぎ、しょうが、とうがらし     

(香辛料)酢、少量の酒        

(お茶)さんざし茶、バラ茶、紅花茶

 

 

痰湿タイプ●  

 

【生活習慣】

甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。

 

水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。

 

運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。

 

梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。

 

【食べ物】  ~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~     

 

(穀類)はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆        

(野菜)冬瓜、白菜、山芋、トマト、チンゲンサイ        

(魚類)こい、ふな      

  

(果物)すいか、ぶどう、メロン

       

(お茶)紅茶、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶

 

その他日常生活での注意点▼ 

悩んだり、焦ったり、イライラしたりする気持ち、心身の疲労などが症状を悪化させますので、ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功、など)、軽い散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。

 

室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。   

お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。

 

規則正しい生活をし栄養バランスの摂れた食べ物、特にカルシウムやビタミン類をしっかり摂り、十分な睡眠をとりましょう。

 

さて、お読みになって子宮筋腫にはさまざまなタイプがあり、タイプ別による治療、食養生、生活習慣が重要だということがお分りになって頂けましたでしょうか。

些細なことなのですが日常の過ごし方を少し見直してみるだけで体調が変わりはじめ、 体質改善に繋がっていきます。無理のない範囲で実践し、続けていくことが大事です。

 

 

当院では現代医学が苦手とする領域

「検査で問題はないが症状がある」

「活力エネルギーの調整(自然治癒力の底上げ)、体質改善」

「予防と未病の手当て」に力を入れています。

 

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吉祥寺|中医学に基づく|子宮筋腫

鍼灸・吸玉(カッピング)療法専門 楊中医鍼灸院

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