コラム

2019/03/12
【五官科疾患】花粉症

●花粉症とはどんな病気なのでしょう?

花粉症は典型的なアレルギー疾患です。

アレルギー疾患とは、特定の原因物質が人体に侵入してアレルギー反応(過敏反応)を引き起こし、その結果 として人体にとって不都合で不快な症状を誘発する病気です。

 

この原因物質のことをアレルゲンと呼びます。

花粉症のアレルゲンは文字通り各種植物の花粉です。その中でも、スギ花粉が一番の代表で、これによる花粉症をスギ花粉症と呼びます。

 

<花粉症にかかるまで>

花粉が空中を飛来

鼻、目、喉、気管などの粘膜や皮膚などに付着、侵入

アレルギー反応

いろいろな不快な症状を誘発(鼻、目、喉、気管、皮膚など)

どんな症状が強く現れるかは個人差があります。

 

 

▼▼▼花粉症の症状は原因となる花粉が飛沫する季節にだけ現れます▼▼▼

花粉植物の種類によってその季節が違います。

スギ花粉症の場合は2~5月です。

 

●●不快な症状 鼻、目●●

花粉症はまず鼻と目に症状が現れます。

理由は簡単です。花粉症が着きやすい粘膜部分は常に外界にオープンしている鼻と目にあるからです。

 

●鼻の症状

・くしゃみ、鼻水、鼻づまり(最もよくみられる3大症状です)

・鼻がむずかゆい、鼻くうのまわりが赤く腫れて痛む

・鼻血が出る

・においが鈍くなる、鼻息に熱感がある

・鼻の中が乾燥してガサガサになる

 

●目の症状

・目が充血する、目がかゆい、目に灼熱感

・涙が出る、光がまぶしい、目ヤニが出る

このほかに鼻からの影響で、耳に症状が現れることもあります。

これは耳の中耳の部分が耳管で鼻の奥と通じているためです。

 

●耳の症状

・耳の中がかゆい、耳閉感

 

●●不快な症状 喉・舌・口・気管支●●

喉、舌、口、気管支などにも症状が現れることがあります。

これは第一には、鼻づまりがひどい場合、いつも口で呼吸するため、喉や口内が乾燥して炎症を起こしやすくなるためです。

特に起床時は、喉や口内の乾燥がひどく、痛みます。

また、花粉が喉や気管支に入りこんで刺激するため、喉のかゆみや、咳がでることもあります。

 

●喉の症状

・喉がかゆい、痛む、腫れる

・喉がカラカラに乾燥する(特に起床時が激しい)

・喉にゴロゴロと異物感

 

●舌・口の症状

・口の中がカラカラに乾燥する。舌が乾燥する

・舌に苔が出る、味が鈍くなる、口の中が苦い

 

●気管支の症状

・咳、痰、旨に不快感や閉塞感がある

・ゼーゼーヒューヒューする息苦しさ

 

 

●●不快な症状 皮膚●●

皮膚症状は花粉症の症状の中では、小数派で、鼻や目の症状ほどに多くはありません。

しかし、不快なうえに、美容上の悩みが加わるので、皮膚症状の強く現れる人によっては、大変な災難です。

これは、花粉が外気にさらされた皮膚に着いて、アレルギー反応を起こし、その結果 現れる症状です。

汗ばんだところや、化粧肌には特に花粉がつきやすいので、首、顔に症状が現れます。

耳や腕にも現れることがあります。

普段からアトビー性皮膚炎による皮膚症状があって、花粉症の時期になると、首から上や、腕などの皮膚症状が悪化する人もいます。

 

●皮膚の症状(重に首・顔・耳の後ろ、腕など)

・皮膚がピンク色を帯びる。または赤くなる

・皮膚面から盛り上がる、乾燥してカサカサ、ザラザラになる

・粉をふく、薄いかさぶたができてポロポロはがれてくる

・かきむしって出血する

・かきむしって皮膚ばびらんになり、ヒリヒリ痛む

 

●●不快な症状 その他全身●●

●胃腸症状

・腹痛、便秘、下痢、食欲不振、消化不良、吐き気

●神経、間接症状

・頭痛、頭が重い、関節痛、めまい、立ちくらみ

●その他の症状

疲れやすい、だるい、あくびが多い、眠たい、身体のほてり、寒気、発熱、汗をかきやすい、動機、気がめいる、イライラする、無力感など

これらの内で、どの症状が出るかは1人ひとり違います

 

 

▼▼▼花粉症はどうやって診断するのか▼▼▼

問診

①自覚症状の確認

 

くしゃみ、鼻水、花づまり、目の充血、かゆみなどをはじめとする、花粉症を疑わせる症状があるかどうか

②症状に季節性があるかどうかの確認

 

例えば、春にだけ出るのか、花粉症に合致する症状があり、しかも特定の季節に症状が現れたり、強まったりする場合には、花粉症が疑われます。

 

検査

①皮膚反応テスト

 

皮内注射法(スギ花粉エキス)によるアレルゲンの確認

②血液検査

 

特異的IGE(抗体産生)抗体量の測定によるアレルゲンの確認

花粉がアレルゲンとして確認されると、花粉症として診断されます。

 

▼▼▼現代医学の薬物治療▼▼▼

花粉症に対して、現代医学では、内服、点眼、点鼻など、薬による治療が基本になります。

使用される薬には主に2種類のタイプがあります。

 

●抗アレルギー剤

外用:インター点鼻薬、ソルファ点眼薬

 

使用法:花粉シーズンの2週間以上前から予防に使用。

作用:花粉が身体に侵入後の抗体反応の結果、化学伝達物質が放出されます。

これが花粉症の症状をひきおこします。

抗アレルギー剤は、化学伝達物質の放出を阻止します。

副作用:

眠気、だるさ、胃腸障害など

外用は鼻、目の刺激感

●抗ヒスタミン剤

使用法:花粉症シーズンに内服

作用:化学伝達物質であるヒスタミンの働きを抑制

副作用:眠気、だるさ、胃腸障害(眠気、だるさは特に多い)

 

●ステロイド剤

ステロイド剤は副腎皮質ホルモン剤ともよばれます。

強力な抗炎症作用をもつため、多くの難しい病気に効果があります。

花粉症などのアレルギー疾患にもよく効きます。

しかしよく効く分副作用も強く、従って、その取り扱いには慎重でなければなりません。

ステロイド剤には、外用薬と内服薬、注射薬があります。

点鼻薬は局所に作用するので、比較的副作用が少ないため使用されていますが、内服薬、注射薬の連用は、副作用が強いので特別 の場合以外は控えるべきです。

 

外用剤

点鼻薬:シナクリン

副作用:鼻内刺激感、不快感、乾燥感、嗅覚障害、頭痛、吐き気など

内服剤:

セレスタミン、プレドニン

副作用:

胃十二指腸潰瘍、高血圧、糖尿病、肥満、白内障など、多くの副作用を起こしやすいので要注意。

特にもともとこうした病気のある方は禁忌です。

●アレルゲンにならす減感作療法

現代医学では、薬による対症療法のほかに、減感作療法が行われています。

これは花粉に対する過敏反応を弱めることをねらった、一種の免疫療法です。

 

減感作療法のやりかた

アレルゲンである花粉のエキスを薄めた液を定期的に皮下注射し、だんだん濃くしていきます。

複数の花粉がアレルゲンの場合はそれらのエキスを混ぜて注射します。

週1回のペースで1年ぐらい続け、その後ペースを落とします。

全部で3年以上続けます。

 

副作用

・注射部の皮膚の赤み、腫れが強く出すぎる

・花粉症の症状を悪化させる場合がある

・血圧が低下して顔面蒼白で息苦しくなる

このような場合は、注射濃度を再考するか、中止します。

 

問題点

・治療に根気と時間が必要

・喘息治療で行う、ハウスダストの減感作療法に比べて効果が劣る

 

◆◆◆◆◆◆◆◆東洋医学的に捉えた花粉症◆◆◆◆◆◆◆◆

 

▼東洋医学的に花粉症を捉えた時に関係する臓腑を見てみましょう。

※肺を中心に協同して働く臓腑が弱まるとアレルゲンが侵入しやすい身体の状態を作ってしまいます。

●肺:

肺は全身の皮膚表面を守る気を主る働きと、全身に水液を散布する働きを主っていますが、その働きが弱まってしまうと、皮膚表面 (鼻などの粘膜も含まれます)からアレルゲン(花粉症の場合は花粉)が侵入してしまいます。

 

●脾:

脾は、中医学では気血を生成するところであり、また、その作った気を肺に送り、肺から全身に散布させるという働きを主っています。

ひの機能が弱ると、それは、肺の働きにも影響を与え、身体がアレルゲンに侵入されやすい状態になってしまうのです。

 

●腎:

腎には大切な働きがたくさんありますが、その中のひとつに、気を納める、「納気」という働きがあります。肺は呼吸を主っていますが、腎は深い呼吸特に吸気を主っており、肺と腎は互いに影響して呼吸活動と水液代謝の働きをしています。

腎の納気作用が弱まると、肺の気を全身に散布する力が弱まり、アレルゲンに侵入されやすい状態になってしまいます。

 

▼東洋医学的に花粉症の症状を捉え、その症状がどのような病理で発症しているのかを見てみましょう。

鼻がむず痒い → 侵入した邪気(アレルゲン)と正気の抗争によっておこります。

 

クシャミ → 肺気が邪気(アレルゲン)に抵抗し、邪気(アレルゲン)を追い出そうとする症状です。

 

鼻水 → 肺の全身に気を散布する機能が失調したため、水を下降させて排出することができない症状であり、透明な鼻水は、身体に寒邪があることを示し、粘りのある鼻水は、熱邪があることを示します。

 

④鼻づまり

 

邪気が上から侵入して、肺気が全身に散布されずに、鼻が塞がれてしまった状態です。

 

鼻水は停滞して肺の気の流れが悪くなり、鼻がつまります。

 

鼻で正気と邪気の抗争がおきて、鼻づまりがおきます。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆東洋医学で分けるタイプ別花粉症◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

東洋医学では症状別に花粉症のタイプを分け、その方の体質に合わせて治療します。

まず、タイプを見てみましょう。

 

●くしゃみと鼻水タイプ(風寒証)

・くしゃみが連発し、その後で透明の鼻水が多く、黄色、青色の鼻汁は出ない

・朝起きてからしばらくは、症状が激しい

・冷たい風にさらされると、症状が誘発しやすい

●くしゃみ、鼻水と冷え性、疲れやすいタイプ(風寒陽虚証)

頻繁に出るくしゃみ、多量の鼻水、鼻づまり、鼻がむずがゆい、目がかゆい、涙が出る

冷え性で寒がり

スタミナがなく、すぐに疲れる

寒冷刺激や疲労が鼻症状を誘発させる

●ストレスで悪化タイプ(風寒気欝証)

・会社でストレスがたまると、鼻症状が悪化

・鼻、目、喉、耳に詰まり感、渋り感が強い

・精神不安定 ・寒さやストレスで症状が悪化しやすい

・各種の薬で、胃腸の具合が悪くなりやすい

 

●黄色い目ヤニと鼻汁タイプ(風熱証)

・目ヤニ、鼻汁、痰などの分泌物は、黄色く粘っこい

・くしゃみ、鼻水は少なく、鼻詰まりが強い

・鼻や目に熱感、喉、目、顔が赤い

・暑いところにいたり、温風にあたると症状が悪化する

 

●喉、口、鼻が乾燥タイプ(燥熱証)

・鼻づまり、鼻、喉、口の中が乾燥してガサガサになる

・唇が乾燥して、割れる、鼻や喉が痛む

・から咳をする、痰は出ても少量で、黄色く粘っこい

・暑がり、喉の渇きが強く、冷たいものが欲しくなる

●だるくてすぐに疲れるタイプ(気虚証)

鼻水、鼻づまりは激しくない ・疲労倦怠感が著しくなり、いつでも横になりたい気分

胃腸の働きが悪くなり、食欲が低下する

●寒がりの冷え性タイプ(陽虚証)

・寒がり、冷え性、寒冷刺激で症状が悪化する

・スタミナがなくなり、だるくて疲れやすい

・胃腸の働きが悪くなる、下痢もしやすく、おなかも痛む

・鼻の症状は激しくない

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆当院での治療について◆◆◆◆◆◆◆◆◆

当院では、上記のようにその方の症状を問診でうかがい、舌、脈の状態から、その方の体質と花粉症のタイプを判断します。

その上で、花粉症の辛い症状を緩和する治療を行いながら、その症状が起きている本当の原因である体質を改善する治療を行ってまいります。

 

毎年花粉症の症状で悩まれている方は、だいたい1月ぐらいから治療をされることをおすすめします。

そして、本格的な体質改善を行いたい方は、3ヶ月ぐらい集中的に週に2回ぐらいの治療をされるか、週1回の治療ならば、漢方薬あるいは、家庭灸の併用をされることをおすすめしています。

そして、1~2年は、花粉の飛散していない時期に、月に2回~4回ぐらいのペースで、お手当てをすると、花粉所の時期になっても、花粉症状が起こりづらくなりますし、起こっても軽い症状ですむ場合が多く、人によっては、全く起こらなくなるケースもあります。

まずは、お気軽にお電話でご相談ください。

 

 

●●●●●●花粉症はどうしてこんなに増加したのでしょうか?●●●●●●

 

花粉症といえば、ごくありふれた日常の病気のイメージが定着したようです。

ところが、意外なことに、花粉症は戦後に初めて医師によって報じられた新しい病気です。

1960年代前半にブタクサ花粉症、ついてスギ花粉症の患者がみつかりました。

それから、わずか30年間で花粉症(特にスギ花粉症)は爆発的に増加しました。

 

●増加した原因

スギの増加

戦後に大量植林されたスギが伐採されずに開花適齢期になっているため、春のスギの花粉の散布量 が増加している。

 

●排気ガス、大気汚染

排気ガスなどで汚染された大気中のたくさんの微粒子が花粉症の発症を促進する。

 

●食環境の変化、食品汚染

食生活の変化にともなってたんぱく摂取量が増加したこと、食品が添加物などで汚染されていることなどから、アレルギーを起こしやすくしている。

 

●住宅環境の変化

住宅やオフィスの近代化に伴い、通気性の少ない、ダニ、カビの温床を作り、アレルギーを起こしやすくしている。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆ 自分でできる花粉症対策 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

原因となる花粉をなるべく避けること

・ 原因植物の分布を知り、なるべく近づかない

花粉は遠くまで飛散されますが、近いとよけいに多く飛んでいます。

花粉情報に基づき、外出スケジュールを調節する。

風が強く晴れた日には花粉の飛散量が多くなりますので特に要注意です。

 

花粉マスク、メガネの使用

・外出後にには洗顔、手洗い、うがいをして衣服をよくはたく

・洗濯後の干し物はよくはたく

・室内の清掃をこまめに

 

体力低下を防ぐ

・充分な睡眠

・規則正しく栄養バランスの良い食事

・アルコール、タバコを控える

・ストレスをためない工夫

 

花粉症でお悩みの方、早めのお手当てをお勧めいたします。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

2019/03/12
【外科・整形外科・皮膚科疾患】頸椎損傷について

頚椎損傷とは頚椎(頭を支える7つの首の骨)が強い衝撃や加齢などにより変形、脱臼、骨折などを起こした状態を言います。頚椎が損傷した際には様々な症状が首周りだけでなく腕や下半身にも出てきます。一口に頚椎損傷と言ってもどこを傷つけたかによっていくつかに分けることが出来ます。それではおおまかにではありますが述べていきましょう。

 

☆変形性頚椎症  

 力仕事やスポーツ、不良姿勢、小さな外傷の積み重ねなどが起因となったり加齢変化としての頚椎の変形、椎間板(頚椎と頚椎の間にあるクッションの様なもの)の変性や破綻が頭部の痛みや重苦、運動制限など頚部の症状として現れた状態です。症状としては無理をしたり、姿勢が悪いなどのきっかけで肩が凝る、首筋が張るなどです。症状が慢性化すると筋緊張の力は頚椎にストレスを与えるので頚椎がより変形していくという悪循環を呈します。

 

☆頚椎症性神経根症  

 変形性頚椎症を原因として頚椎と頚椎の間から出ている神経の根っこが圧迫されて起こるシビレと痛み(神経痛)、筋力の低下や萎縮などの運動マヒが起こる状態です。上を向いたり、首を横に傾けたりでこれらの症状が出やすいですが、どこの頚椎と頚椎の間かによってシビレや痛みが出てくる場所が変わってきます。

 

☆頚椎症性脊髄症   

 変形性頚椎症を原因として頚髄(首から出てる神経のおおもと)が障害された状態です。神経根症よりも重篤で頚髄の上の方を傷つけてしまうと手足が動かなくなってしまうばかり か自分で呼吸することさえ出来なくなったりするのです。また膀胱や肛門の神経も障害され排尿障害(オシッコが出にくい)、排便障害(自力で排便出来ない)といった症状をきたす場合もあります。

 

☆治療法として☆  

 変形性脊椎症であれば寝違え状態の場合は安静が必要です。また温めたり頚椎を牽引したりしていきます。鎮痛消炎剤を飲んだり塗ったりして痛みを抑えたりもします。神経根症の場合では安静の他にカラー(首を保護するもの)や装具を使用したりもします。消炎鎮痛剤以外でもステロイドホルモン剤の投与も考えます。また頚髄症では先に述べたものに加え手術を視野に入れていきます。頚椎が頚髄を圧迫している状態なので頚椎と頚髄の間を拡大する除圧手術が必要です。その際頭を支える頚椎の強度を低下させない工夫があります。安静、薬の投与、手術が治療の基本となっています。

 

☆中医学的な見方☆  

 中医学では頚椎損傷における「痛み」、「シビレ」、「運動 マヒ」や「運動制限」、「感覚マヒ」などの症状に着目し、それらの症状がどういったときに出てきてしまうのかを診ていきます。こういった症状が出る場合をいくつかのケースに分けて述べていきましょう。

 

☆「痛み」や「シビレ」、「マヒ」について  

 中医学において正常な人の体の中では「気」、「血」が「経絡」の中をスムーズに流れています。「気」とは人の生理活動にとって欠かせないものでエネルギー源としての働きがあり、発育や成長の際には推動作用、体を温める際には温く作用、外から入ってくる邪(寒さや湿気など)を防いでくれる際には防衛作用、体の中の液体(血や汗、尿など)の量 を調節する際には固摂作用、食べたものをエネルギーや排泄物に変える際には気化作用としての働きをします。「血」とは全身を滋養して潤す作用があり、生命維持に欠かすことの出来ないものです。また精神活動をする際の栄養源にもなるので思考や感情などとも深い関係があります。「経絡」とはこれら「気」と「血」の通 り道で体じゅうにはりめぐらされているものです。  

 正常な状態ならば「気」、「血」がスムーズに流れ順調に体が機能するのですが、この「気」と「血」が何らかの理由で滞ってしまい、流れなくなったり滋養出来なくなると「痛み」や「シビレ」、「マヒ」が起こってしまうのです。

 

☆「気」や「血」の流れが滞ってしまうケース  

 ○体の中で「気」の流れを統括している器官に「肝」というものがあります。「肝」は全身すみずみに「気」を送る働きがあります。ノビノビとした状態を好みますのでストレスなどが加わると働きがとたんに弱くなって「気」が滞ってしまう「肝気鬱結」という状態になってしまいます。「気」と「血」はともに作用しあって全身を流れますので「気」が滞ると「血」も滞ってしまい関節や筋を滋養出来ず「痛み」等が起こってしまうのです。  

 

 ○外から入ってくる邪気(風、暑、湿、燥、寒、火)の中でも「気」、「血」の流れを滞らせたり「痛み」の発症にもっとも関与するのが「寒」です。「寒」には「凝滞」するという性質があり「気」、「血」の通 り道である「経絡」に外から入ってくると流れを滞らせてしまいます。また「収引」という性質もあるので「経絡」に入ってくると「経絡」をひっぱって引きつらせてしまうので「痛み」が起こるのです。 

 

☆「気」、「血」が不足してしまうケース  

 ○「気」、「血」が不足して充分に働きかけられない状態でも「痛み」や「シビレ」、「マヒ」は起こります。出血したり、長患いで「気」が消耗したりもそうですし、「脾胃」が虚弱になり「気」、「血」を作れなくなったりしたときもそうです。ここでいう「脾胃」の働きとは食べ物が入ってきたときに消化や吸収をして、その中からエネルギーを取り出すことです。このエネルギーから「気」、「血」を作り出すのですが「脾胃」が弱くなってると作り出せなくなってしまいからだの中に充分な量 の「気」、「血」が存在しないために筋や関節、皮膚を滋養出来ず「痛み」や「シビレ」、「マヒ」が起こってしまうのです。

 

☆「運動制限」について  

 筋をつかさどるのは「肝」です。「肝」の「気」が充分であれば、筋は力強くスムーズに動きますが「肝」の「気」が衰えたり、「血」が不足したりすると筋が滋養されず金が思い通 りに動かなくなり「運動制限」や「運動マヒ」が起こるのです。

 

☆中医学的な治療として☆  

 ○「気」、「血」がストレスなどによって「肝気鬱結」によ り滞ってしまった場合には「肝」の「気」を流す働きを促してあげるツボを刺激してあげます。また「肝気鬱結」の状態が続くと「脾胃」になで影響が及び、げっぷや胃液がこみ上げる、下痢が出るなどの症状が一緒に出てきますので「脾胃」の働きを整えるツボにも刺激することが必要です。  

 

  ○「寒邪」が入ってきて「気」、「血」の流れが滞ってしまった場合には、体を温める作用のあるツボを刺激します(お灸も有効)。また体の表面 を邪が入ってこないようにガードしている「気」(衛気)の働きを強めるようなツボを刺激してあげると予防にもなります。  

 

 ○「気」、「血」が不足している場合には「脾胃」が正常に働いて「気」、「血」を作り出せるようなツボに刺激を入れます。「脾胃」が弱っているときは、食欲が無い、疲れやすい、下痢、手足がだるいなどの症状も一緒に出ますのでそちらの治療ツボにも刺激を入れていきます。

 

要するに整形外科的な疾患に対しても中医学的な考えでは体のアンバランスが起因だと捉え、全体の体のケアを視野に入れ、お手当てを行います。ゆえに局所のみの治療でなく全体的な治療になります。ですから牽引や薬物療法で結果 が思わしくない場合には違う角度からのお手当てを考える中医学鍼灸の治療を考えるのも良いかと思います。ただし、どこの鍼灸院でも中医学鍼灸を行っているとは限りませんのでご留意してくださいませ。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/03/12
【外科・整形外科・皮膚科疾患】変形性膝関節症について

【変形性膝関節症について】

近年の高齢化社会にともなって、“膝痛”の人が増え続けています。

膝は歩く時に重力のバランスを調節したり、その際の地面からの衝撃のショックを和らげる役目をしている重要な関節です。

統計的に、男性より女性の方が多いようです。

60歳以上では、女性の40%、男性の20%が変形性膝関節症と診断されています。

では、始めに膝関節について説明します。

骨と骨が連結している部分を関節と呼びますが、膝関節は大腿骨と脛骨、膝蓋骨で構成されています。常に曲げ伸ばしをして体重を支えていて、階段を降りる時には体重の3倍もの荷重がかかると言われています。

このように負担がかかっても、大腿骨と脛骨が擦り減ったり、痛んだりしないのは、骨が擦り合う部分を“関節軟骨”が覆ってクッションの役割をしているからです。また、関節軟骨が擦り切れないように、大腿骨と脛骨の間には“半月板”が挟まり、複数の“靭帯”が骨と骨をつなぎ留め、さらに筋肉が膝関節全体を支えています。

また、膝関節を包んでいる関節包の内側にある滑膜細胞から“関節液”が分泌されて、関節の潤滑剤として働き、半月板や軟骨に栄養を与え新陳代謝を促して不要になった老廃物を運んで処理します。

では、何故、変形性膝関節症が起こるのでしょうか?

 

●現代医学的な捉え方●

関節軟骨は新陳代謝を繰り返して弾力性を保っていますが、加齢とともに代謝が低下し、弾力性が失われ次第に擦り減っていきます。

少しずつ膝関節にかかる負担が増して、骨と骨が直接ぶつかり合うようになります。この状態が続くと軟骨の表面 に裂け目ができ、剥がれ始めます。この軟骨のカスを除去しようとする過程で関節に炎症や関節液の過剰分泌(水が溜まる状態)が起きてきます。

こうなると膝関節は腫れて痛み、歩行がつらくなります。

骨同士がぶつかり合ううちに、トゲのような骨(骨棘といいます)が現れたりすると更に痛みが悪化します。

“痛い→歩かない→筋力低下により関節の負担増→痛みが悪化する”、という悪循環に陥ります。このように、膝関節の破壊に伴って炎症を起こし、膝の腫れや熱感・痛みが現れ、体重や身体の動きによって生じるストレスが長い間膝に作用して膝関節の軟骨を壊し、ゆっくり骨の変形が進んでいく疾患が“変形性膝関節症”です。

(原因) 

“加齢”によるものの他に、“肥満”“外傷”“激しいスポーツ”“疾患、代謝異常”などがあります。

 

(症状)

最初のうちは、立ち上がったり、歩き始めるなどの“動作開始時痛”が典型的な初期症状です。病変の進行に伴って、歩行時痛、階段昇降時痛(特に降りる時が痛む)、可動域制限、腫脹、熱感、変形、関節周囲の筋肉の萎縮が出現して、常に痛むようになっていきます。

(現代医学的な治療)

◇ 理学療法・・・・温熱療法で血行改善をし痛みを和らげたり、筋肉トレーニングで関節を支える筋肉を鍛えます。

◇ 薬物療法・・・・痛みに対して、抗炎症剤・鎮痛剤があります。痛みがひどい時は、関節液を抜いたり、ステロイド剤や関節軟骨保護剤を関節に注射します。

◇ 手術・・・・・・人口関節置換術や脛骨高位骨切術などがあります。

 

● 中医学的な捉え方●

中医学とは、「中国伝統医学」のことです。

中医学には、体を一つの統一体として考える、という独特の視点があります。

人間は自然の一部として存在していて、自然の一部であると同時に人間の体の中にも自然界の要素がそのまま揃っているという考え方です。

根底にあるのが、“陰陽五行説”です。先人たちは、自然界のすべてのものが“陰と陽”に分けられると考えました。例えば、“暗いと明るい”“湿りと乾燥”“重いと軽い”などです。

陰と陽は、互いに対立し、かつ影響し合うものとしています。

そして、自然のものは、その性質によって“木・火・土・金・水”の5つの要素に分けられると考えました。5つの要素は互いに生かし生かされつつ、自然界全体を絶妙なバランスに保たせていると考えました。

中医学は調和を大切にした学問です。現象面にとらわれるだけでなく、根本的な調節を行なうことが大切であり、現代医学とは違う角度から体を見つめる医学なのです。

中医学では、人間の体を診るときには“気・血・津液”“五臓六腑”の状態に注目します。

“気・血・津液”は、人体を構成する物質であり、臓腑とともに体の生理機能を維持する働きがあります。“気・血・津液”は“五臓六腑”の働きによって生成と代謝されており、“五臓六腑”は“気・血・津液”によって滋養されているのです。

中医学では、この“気・血・津液”が必要なだけあり、“五臓六腑”に必要なだけ行き渡りスムーズに流れていることが健康(中庸)な状態と考えています。

つまり、病気とは何らかの原因(病因)によって、“気・血・津液”に過不足が起こり、“五臓六腑”に影響を及ぼし、スムーズに流れていない状態なのです。

現代医学で言うところの、“診断・治療”を、中医学では“弁証論治”といいます。

四診(望診・聞診・問診・切診)と呼ぶ独特の診察方法で患者さんから情報を収集し証を決め、これを弁証といいます。証にしたがって治療方針をたてることを論治といいます。

弁証論治には、独特の言葉が使われるので慣れないと違和感があると思いますが、何の病因が、何を障害して、どのようになっているのかを見極めることなのです。

証が決まれば、治療方針(治則)が用意されています。同じ症状であっても、原因や障害を受けている部位 によって証は異なります。証が異なれば、治則も異なります。

患者さんの症状をきちんと把握し、適切な弁証論治を行なうので、対処療法を主とする現代医学とは異なったアプローチが可能となります。

 

前置きが長くなりましたが、変形性膝関節症について考えてみたいと思います。

中医学には、変形性膝関節症という証はありません。痛み方などの症状や患者さんの体質などによって証を立てていくことになります。

まず、“気・血・津液”のどれが障害されているのでしょうか?

これは、主に“津液”が考えられます。

津液は、体内にある必要な水分で全身を潤し、関節、靭帯、筋肉に潤いをあたえ、動きを円滑にする作用があります。津液は不足することでも、また流れが悪くなり停滞することでも障害が起こります。

津液に係わりの深い臓器は、“脾”“肺”“腎”があり、協調して生成・運搬・排泄を行なっています。これらの臓腑のどの生理機能が失調しても障害が起こります。

病因には、外因(風・寒・湿・熱・火・暑・燥)という季節や環境によるもの、内因(心理状態)、不内外因(飲食の不摂生、外傷、過労、運動不足など)がありますが、特に外因の寒・湿が大きく影響します。

では、代表的な証をあげてみます。

 

◆ 湿熱証・・・・

津液(水分)が停滞し、水湿の邪に変化したことで起こります。加えて熱性を持つと湿熱といいます。症状は、膝関節が赤く腫れる、灼熱感のある痛み、膝が動かしにくい、重く痛む、関節を冷やすと楽になる、尿が黄色く濁る、舌の色が紅い、舌苔が黄色く厚い、など。

(治則)“清熱化湿”・・・熱を冷まし、湿を取り除く治療です。

 

◆ 寒湿証・・・・

水湿の邪に寒性をもったものです。症状は、膝関節が冷えて痛む、腫れる、気候の寒さや雨で痛みが強くなる、患部を温めると楽になる、舌の色は淡く白っぽい、舌苔は白く厚い、など。

(治則)“散寒化湿”・・・冷えをとり、湿を取り除く治療です 。

 

◆ 肝腎陰虚証・・

肝と腎は互いに協調し合っています。肝陰(血)が不足すれば 腎陰(精=生命のエネルギー)も不足し、腎陰が不足すれば肝陰も不足します。

慢性病や肉体疲労、加齢(老化)により、両者のバランスが崩れ症状が現れます。    

腎陰は脳・骨・髄を滋養する作用があり不足すると、筋骨が滋養されないため足腰がだるくなり、筋肉の萎縮が起こります。舌の色が紅く、裂紋がある、舌苔は薄くて白いか黄色く乾燥、など。

(治則)“滋養肝腎”・・・肝腎の精血を滋養して内熱を冷ます治療です。

 

◆ 脾腎陽虚証・・

腎陽は陽気をつくる源で、全身の温煦作用(温める作用)を促進します。津液を蒸化し津液の代謝障害を抑制しています。また、津液を温めることによって水邪の氾濫や水湿の内停を防ぐ働きもあります。腎陽は脾陽を温煦し、脾の運化作用(消化・吸収・輸送)を助け、また、脾の運化作用によって腎精(生命エネルギー)が補充されます。慢性疾患、疲労倦怠などから水邪が長期間体内に停滞することによって腎陽虚(腎陽が不足)となり、これに脾陽虚が加わり症状が現れます。腰膝が軟弱無力となり冷えて痛みます。舌の色は淡く、舌苔は白く滑らか、など。

(治則)“温補脾腎”・・・腎を温めて脾を健全にする治療です。

 

 

◆ 日常生活で気を付けること◆

 

膝を冷やさないようにする(冷えて痛みが増す方)

運動で筋肉を強くする、または維持をする・・・プールで歩いたり泳いだりするのが一番膝への負担が少なく、筋肉がつけられます。

食生活の改善・・・食生活を改善することによって体重を減らして膝への負担を少なくします。また、体を冷やす食品は避けましょう。冷たい飲み物生野菜、生魚、コーヒーや緑茶も体を冷やします。

 

以上が、中医学的“変形性膝関節症”の捉え方と治療法になります。

勿論、これだけではありませんが、少しでも中医学的なアプローチがご理解頂ければ幸いです。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/03/12
【外科・整形外科・皮膚科疾患】脱肛について

みなさんは、脱肛(だっこう)という病気はご存知でしょうか?

一般的にはよく知らない方が多い病気だと思います。しかし、これは決してめずらしい病気だからというわけではないようです。脱肛は、肛門、直腸の病気です。だからこそ、なかなか人に相談しにくくあまり知られていないのではないでしょうか。

 

今回は、脱肛という病気について述べていきたいと思います。

 

●現代医学的な脱肛の捉え方●

 

まずは現代医学的に脱肛を捉えていきたいと思います。

 

脱肛を簡単に言ってしまえば、痔が進行した状態ということになります。

ですので、まずは痔について少し述べていきます。

 

痔とは、肛門周囲における病気の総称で、大きく分けて、痔核(イボ痔)、切れ痔、痔ろうの 3つのタイプがあります。この中でもっとも多いのが痔核であり、痔の半数以上は痔核であると言われています。

 

痔核は、肛門の静脈がうっ血して起こるもので、肛門の内側にできるものを内痔核、外側にできるものを 外痔核といいます。

内痔核は、痛みはありませんが、残便感や出血が認められることがあります。この症状が進むにつれて 排便時に内痔核が肛門の外へ出るようになってきます。外へ出た内痔核は、始めのうちは自然に肛門の中へ戻りますが、次第に手で押し込まないと戻らなくなってきます。さらに、症状が進行すると常に内痔核が 肛門の外へ出ている状態となります。

 

このように肛門の外に内痔核が出てしまっている状態を脱肛と言います。

症状は、進行の度合いにより違ってきますが、痔核がこすれて異物感を感じたり、痔核から出血したり、 粘液で下着が汚れたり、痛みを感じることもあります。

脱肛は生命に関わる病気ではありませんが、陰部の病気であることから、とくに女性では悩まれる方も 多い病気です。

 

脱肛の原因はさまざまですが、以下のような場合に起こりやすいとされています。

 

・便秘が常習化している

・排便時の力み

・出産時の力み

・力仕事

・過度の飲酒

 

治療は、脱肛の進行状態によって異なります。

完全な脱肛ではなく、進行が軽ければ、生活習慣の改善と、座薬や軟膏を併用すれば治ります。

しかし、完全に脱肛になってしまうと、薬剤や生活習慣の改善だけでは、治療することができないため、 手術の必要があります。

 

●中医学的な脱肛の捉え方●

 

では次に、中医学的にみた脱肛を述べていきたいと思います。

 

中医学的にみた脱肛では、虚証によるものと、実証によるものに分類されます。

 

◇虚証による脱肛

 

虚証とは、体内の臓腑の機能が低下していることが原因で、疾病となるものをさします。

 

脱肛の場合、主に脾の臓の機能低下が原因となる場合が多いとされています。

これは、中医学では、脾の臓が昇挙の機能をもち、臓器の位置が下がらないよう保っていると 考えられているためです。このため、長期間の消化器疾患を持つ方は、虚証による脱肛を患う可能性が 高いと言えます。

 

脾の臓の疾患であることから、随伴症状としては他にも、次の症状がみられることがあります。

・慢性的な倦怠感

・下痢 ・顔が黄色い

・腹部の張り

・女性の場合、子宮下垂や子宮脱

 

治療は主に、原因となっている脾の機能を高めることを目的とした配穴を処方します。

また、慢性的な疾患であることから、日々の食養生も大切です。

 

以下の食材は、脾の機能を高めるとともに、脱肛を改善する力が高い食材です。

・白きくらげ

・なつめ

・もち米

・鶏肉

 

 

◇実証による脱肛

 

実証は、虚証とはことなり、原因が外的要因によるものが疾患の原因となるものをさします。

脱肛の場合、長期間の便秘による力み過ぎや、痔疾患の急性期による局部の腫脹が原因で、 肛門の拘束機能が果たせなくなった場合が、実証に分類されます。

 

実証における脱肛では、局部の発赤や腫脹、激しい痛みや痒み、時には発熱をすることもあります。

 

治療は主に、体内に熱を生み出しやすいことから、体内の熱を取り除く配穴を処方していきます。

 

また、食養生でも体内の熱を取り除くことはできます。

以下の食材は、体内の熱を取り除くために効果的な食材です。

・せり

・うずらの卵

・昆布

 

便秘痔の力みが原因の場合は、以下の食材が便秘改善に適しています。

・ごぼう

・さつまいも

・くらげ

・はちみつ

 

いかがでしょうか?

中医学的な脱肛に関しての考え、ご理解頂けましたでしょうか。

 

中医学的な観点では、見た目に現れる外科的な疾患であっても、決して外科手術だけが、 手当ての手段というわけではありません。原因によっては、臓腑生理の視点からお手当て していくことで、根本的な治療につながると考えるのが、中医学的治療であるとご理解いただけると幸いです。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/03/12
【産科・婦人科疾患】妊娠中のトラブルの原因と対策

こんにちは。

今回は妊娠中によくあらわれる様々な症状について、中医学ではどのように捉え、治療をしていくのかをお話していきたいと思います。

「妊娠中にハリ!?」と驚かれ、心配される方もいるかと思いますが、機能的な疾患は、鍼灸の得意とするところです。

「症状がつらい。でもお腹の胎児のことを考えると薬の服用は極力避けたい。」という方、是非、鍼治療をおすすめします。

その際、しっかりと妊婦さんの体の状態を心得ており、信頼を持って受けることのできる鍼灸院であることが望まれます。

 

ここでは「つわり、いらいらしやすく怒りっぽい、便秘、むくみ、足のしびれやこむら返り、脇腹の張り」などの症状について紹介していきたいと思います。

習慣性流産や早産、逆子は、当院のHP上にあります「わかる東洋医学診断・まとめ」のページに、‘わかりやすい東洋医学理論’と題して、詳しく説明しております。そちらをご参照ください。

また、各項目別の最後の方で、日常生活の過ごし方、食事で不調を和らげる食養生などを紹介していきます。ご参考までに読んでいただけたらと思います。

 

【中医学的にみるからだのはたらき】

体の活動源である「エネルギー」、体の各組織に栄養を与える「血」、体を潤す「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の中が正常な状態に保たれています。

しかし、妊娠中はこの「気・血・水」が不足したり、流れが停滞しやすくなります。そのため、不快な症状がぽつぽつと現れてくるのです。

★さらに、より深く中医学のからだのしくみについて、お知りになりたい方は当院HP上「わかる東洋医学診断・まとめ」のページに、‘わかりやすい東洋医学理論’として詳しく説明しております。そちらをご参照下さい。

 

~つわり~

つわりは妊娠4~16週の時期にもっともよくあらわれます。

症状の軽重は個人差が大きく、ほとんど経験しない人もいれば出産直前まで続く人までとさまざまです。

 

<中医学で考えられている主な原因>

① 日頃から胃が弱い方、思い悩むことが多い、神経質 ⇒胃虚タイプ

② イライラしやすく怒りっぽい方 ⇒肝熱タイプ

③ 胃のあたりに冷えを感じ体の中に余分な水分が停滞してしまっている方 ⇒痰飲内停タイプ

 

<主な症状>

胃の働きが低下している「胃虚タイプ」

 

吐き気、嘔吐、ひどいときは食べたらすぐに戻してしまう、食欲不振

、お腹がはりやすい、めまい、元気がでない、日中よく眠くなる

 

怒りやすいために、エネルギーがうまく循環せず、渋滞してしまう「肝熱タイプ」

 

酸っぱい水を吐く、または苦い水、胸や脇腹がはりやすい、頻繁にげっぷがでる、めまい、冷たい水を欲する、便秘、尿は濃い黄色

 

不要な水分がうまく体外へ排出されないために生じる「痰飲内停タイプ」

 

嘔吐、よだれや白っぽい痰がでる、みぞおちのあたりがはる、食欲がない、口の中がネバネバする、食べ物の味がしない、めまい、息切れ、足がむくみやすい

 

<治療及びタイプ別食養生>

①胃虚タイプ

鍼では胃の働きを健やかにしていく「降気和胃」、上にあがってしまった気をおろし、嘔吐を静めていく「降逆止嘔」という治療をしていきます。

 

~適した食べ物~

☆生姜黒糖茶:生姜は胃腸を温め、嘔吐をしずめる働きがあり、黒糖は不足しがちな 鉄分を補ってくれる働きがあります。

その他、なつめ、山芋

 

~不適切な食べ物~

生もの、冷たい飲料水や食べ物は、胃腸の働きを更に弱めてしまいますので、極力控えましょう。

 

②肝熱タイプ

鍼では体の中に滞ってしまったエネルギー(熱症状)を冷ましていく「清肝和胃」、上にあがってしまった気をおろし、嘔吐を静めていく「降逆止嘔」という治療をしていきます。

 

~適した食べ物~

☆ 緑豆粥:春雨の原料にもなる緑豆。体の中にこもった熱をさましてくれる働きがあります。

その他、きゅうり、冬瓜、梨、トマト、大根、ナス、レタスは体の中にこもった熱を冷ましてくれる働きがあります。

パセリ、春菊、シソの葉、みかん、ゆず、レモン、グレープフルーツ、ジャスミン茶、菊花茶など、香りのよい食べ物は鬱々とした気持ちを発散してくれます。

 

 

③ 痰飲内停タイプ

鍼では体の中の余分な水分を取り除いていく「化痰除湿」、上にあがってしまった気をおろし、嘔吐を静めていく「降逆止嘔」という治療をしていきます。

 

~適した食べ物~

☆ 小豆(あずき)粥:小豆には利尿効果があり体内に溜まった余分な水分を排出してくれる働きがあります。

その他、はと麦、山芋、鯉(こい)、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶

鯉は利尿作用によりむくみを改善し、エネルギーの不足を補ってくれる働きがあります。また母乳の分泌も促す働きや産後の体力を回復してくれる働きがあります。

あまり食べ慣れないものですが、特に妊娠中・産後の女性にとっては重要な食べ物です。

 

~不適切な食べ物~

生もの、冷たい飲料水や食べ物は、さらに水分代謝の低下をまねき、症状を悪化させてしまいますので極力控えましょう。

 

 

~イライラしやすく怒りっぽい症状、足のしびれやこむら返り、お腹の張り感が強いなどの症状がある~

上記の症状について、お話しをしていく前に中医学のからだのしくみについて、少し述べていきたいと思います。

中医学では、体のすべての器官や機能はすべての臓器と密接な関係があります。感情面 での怒りという症状は「肝」に属します。

この「肝」は西洋医学で捉えられている肝臓の働きとは異なりますので、これから説明していきます中医学的な「肝」の働きと混同しないように注意して下さい。

 

~「肝」の働きとは~

中医学でいう「肝」の働きには①血を蓄え、②全身の「気」のめぐりをコントロールし精神・情緒を安定させる作用や筋肉の働きを維持する働きがあります。

「肝」が支配している器官には、目や爪、手足の筋肉などがあります。

以下に、肝の主な働きである血の貯蔵と気の流れが、なぜ乱れやすいのかを解説していきたいと思います。

 

~全身に現われる血不足のサインとは???~

中医学で捉える「血」とは、気とともに流れ栄養分を運び、組織・器官に潤いを与えます。

妊娠中は「血」の消耗が激しくなります。そのため血の不足やめぐりの悪さからくる症状が現れやすくなります。

髪の抜け毛が多くなる、肌や髪がかさつく、目が乾きやすい、爪が割れやすい、手足をつりやすくなるなどといった症状は、全体的に血が不足しているサインであり、肝が支配している目や爪、筋肉に現われる症状はその中でも特に「肝に蓄えられている血が不足していますよ。」というサインを発しています。

肝に蓄えられている血は、夜寝ている間に作られるため、肝を養うためにも睡眠は大切です。しかし、血の不足した状態では、なかなか寝付けない、眠りが浅くよく夢をみる、夜中に何度も目が覚めるなど不眠の症状が出てきます。妊娠後期はお腹が大きくなって寝返りがうてない、トイレに何度も起きるなど睡眠不足の状態が続きます。そのため、イライラ感が増しやすくなってしまいます。

 

<治療法>

血を増やし、血のめぐりをよくしていく治療をしていきます。

<日常生活の過ごし方>

血の消耗につながる目の使いすぎには気をつけましょう。

例:パソコンの使いすぎ、テレビの見過ぎ、読書のし過ぎ、夜更かしの生活など。

汗は血から作られるため、大量の汗をかくことは血の消耗につながります。

温泉のつかり過ぎやサウナなどは、血を消耗させるだけではなく、体が温まり過ぎると、血の流れも盛んになり胎児が下に押し出されてしまいます。

長時間の入浴は避けましょう。

 

 

血行を悪くする冷たいものの摂り過ぎや、体を冷やす薄着には気をつけましょう。

例:夏場の冷房、冬場の寒さや生野菜の摂り過ぎなど。

 

<適した食べ物>

血を補う食べ物:もち米、小豆、黒豆、ほうれん草、小松菜、動物のレバー、黒ごま、くるみ、なつめ、レーズン、プルーン、ブルーベリー、龍眼茶、クコの実茶

 

血の流れを良くする食べ物:黒豆、あぶらな、にんにく、にら、しょうが、ねぎ、とうがらし、らっきょう

 

~気の流れの乱れとは???~

心がリラックスし、気持ちが伸びやかな状態のとき、気の流れは滞ることなく、スムーズに流れています。この気の流れを調節、管理しているのが「肝」の働きになります。

しかし精神的なストレスを受けると、気の流れが滞り、肝の機能を低下させてしまいます。

妊娠中は、肝のエネルギーが流れている部位である胸やお腹、脇腹に張りや痛みを訴える方がいます。これは「気滞」といい、気の流れが滞ってしまったためにみられる症状です。

気のめぐりは、ストレスや緊張といった精神状態と深く関係があり、特に仕事をしている方に多く見られます。

そのほか、お腹にガスがたまる、イライラする、不安感が強いなど気滞による症状がみられます。また、これらの症状がみられないけれど、お腹が張るなという方は、‘冷え’が考えられます。

冷えにより、血行が悪くなってしまっているため張りを感じるタイプです。

 

<治療法>

肝の気のめぐりをスムーズにし、滞りを改善していく「疎肝解鬱」の治療をしていきます。

 

<日常生活の過ごし方>

妊娠中は、お腹が大きくなるため、気の流れは滞りがちになります。

しかしお腹の痛みや張りが強いとき、働いている方であれば、‘休養をとる’ことが一番の薬になります。そうすることにより、家では気持ちもリラックスし、緊張もほぐれやすいため気滞症状が緩和するのです。

その他、軽い散歩やヨガ、ストレッチなどは、適度に気のめぐりを良くする働きがあるため、体の状態が良くなることはもちろんのこと、心もリラックスした状態を感じることができます。気分がのらない日や体調が思わしくないときを除いては、定期的に続けたいものです。

 

<適した食事>

春菊、三つ葉、みょうが、シソの葉、パセリ、セロリ、みかん、ゆず、レモン、グレープフルーツ、ジャスミン茶、など香りのよい食べ物は鬱々とした気持ちを発散してくれます。

 

~妊娠中の便秘~

妊娠をしている体は、便秘をしやすくなります。便秘にもいくつかのタイプがあり、その人の症状に合った治療が大切となります。そのため、世間でよく聞かれる「~の食べ物は便秘を解消する!」といったことは、すべて方の便秘症に効くというものではありません。個々の体質に合ったものでなければ逆に悪化させてしまうおそれもあるのです。

例としまして、冷えタイプの便秘症の人が、体を冷やす果物や生野菜を摂取して、便秘を解消しようとしても、便が出ないばかりか、さらに体の中に冷えをつくり助長させてしまうのです。

以下、タイプ別の特徴を参考に、ご自分にあった対処法を見つけ出してみて下さい。

 

<中医学で考えられる主な原因>

①ガスが多くお腹が張りやすい ⇒ 気滞タイプ

②お腹が冷えている ⇒ 寒タイプ

③お腹に熱がこもっている ⇒ 熱タイプ

④腸の潤いが不足している ⇒ 血の不足タイプ

⑤パワーが不足している ⇒ 気の不足タイプ

<特徴的な症状>

エネルギーが滞っている「気滞タイプ」(詳しくは1つ前の項目を参照してください)

 

お腹が張りガスやげっぷがよくでる、ひどくなるとお腹がはって痛む、イライラしやすい、胸が張る

 

体が冷えているために、腸の働きが低下し排出困難になる「寒タイプ」

 

寒がり、手足が冷たい、夏でもクーラーに当たるのを好まない、尿の量 が多く、その色は透明で澄んでいる、体を温めると気持ちがよい

 

辛いものや油っこいものが好きな方に多くみられる「熱タイプ」

 

大便は乾燥し硬くなっている、お腹が張って苦しい、体がほてる、のどが渇きやすい、尿は濃い黄色で量 は少ない

 

妊婦さんに多くみられる「血の不足タイプ」

 

コロコロ便、肌や髪のつやがない、貧血を起こしやすい、立ちくらみ、動悸、こむら返り、口やつめの色が淡い白

 

気が不足しているため排出する力がない「気の不足タイプ」

 

排便後に疲労感がある、便は最初硬くあとから柔らかくなる、

便意があってトイレに入るがなかなかでない、やる気が出ず、疲れやすい

 

 

<治療及びタイプ別食養生>

鍼では、気のめぐりをよくし、お通 じをうながす「理気、潤腸通便」の治療をしていきます。

 

~適した食べ物~ 便意をうながし、気のめぐりを促進させる食材

 

大根、春菊、パセリ、シソ、みかん、ゆず、ジャスミン茶

 

鍼では、体を温め、冷えを取り除き、お通 じをうながす「温陽通便」の治療をしていきます。

 

~適した食べ物~ 便意をうながし、体を温めて腸の働きを高めてくれる食材

 

人参、しょうが、にんにく、ねぎ、にら、かぼちゃ、えび、ラム肉、くるみ、杜仲茶

 

鍼では、体の中にこもっている熱を取り除き、お通 じをうながす「清熱潤腸、通便」の治療をしていきます。

 

~適した食べ物~ 便意をうながし、熱を冷ますような性質のある食材

 

バナナ、柿、梨、たけのこ、きゅうり、レタス、セロリ、なす、果 物、生野菜全般

 

鍼では、血を補い、腸の潤いを高める「養血潤腸」の治療をしていきます。

 

~適した食べ物~ 血をつくり、腸壁を潤してくれる食材

 

もち米、小豆、黒豆、ほうれん草、小松菜、動物のレバー、黒ごま、くるみ、なつめ、レーズン、プルーン、ブルーベリー、龍眼茶、クコの実茶

★潤い=水分ではありませんので、たくさん水を飲むだけでは潤せません。適度な水分をとることは必要ですが、がぶ飲みは胃腸の働きを弱めてしまう原因にもなりますので気をつけましょう。

 

鍼では、気を補う「益気・潤腸」の治療をしていきます。

 

~適した食べ物~ 体力をつけ便のすべりをよくする食材

 

粟米、大豆、牛肉、鶏肉、烏骨鶏(ウコッケイ)、山芋、じゃがいも、人参、なつめ、杜仲茶

 

~妊娠中のむくみ~

最後の項目になりましたが、最後は「妊娠中のむくみ」を取り上げていきたいと思います。女性では、足がむくむなど、大体の方が経験をしている症状ですが、妊娠中のむくみとなると、「むくみ=妊娠中毒症」という連想が浮かぶのではないでしょうか。

少しのむくみでも気になったり、不安になったりしますが、妊娠中毒症につながるようなむくみは、そう多くはありません。

しかし、不快な症状の一つでもありますし、快適な妊娠生活を送る上で、改善しておきたい症状であります。

 

中医学では、むくみが上半身に現われるか、下半身に現われるかを診断の目安の一つとしてみていきます。顔や手指などの上半身のむくみは、午前中に起こりやすく、体の水を全身に運び出す「気」の不足のために起こります。

一方、腰や足など下半身のむくみは、夕方に起こりやすく、「血」と「水」両方のめぐりが悪いために起こります。これは体の上部に戻っていかないという状態になるためです。

そして朝夕ともにむくみがひどいのは、「気」と「血」ともに不足している状態になります。特に妊娠中、問題になりやすいのは、下半身のむくみになります。この下半身のむくみの原因は主に、胃腸の働きが低下してなる場合と、体の中が冷えているために、引き起こされるむくみであると考えられます。

ここでは、妊娠中に起こりやすい下半身のむくみを中心にお話ししていきたいと思います。

<主な症状>

胃腸機能の低下により余分な水分がたまる 「水湿困脾タイプ」

 

慢性的に出ている全身のむくみ、手足からむくみはじめ、とくに下半身がむくむ、体が重だるい、頭が重い、食欲がない、吐き気がある、食べ物の味がしない、軟便傾向、白い痰がでる、尿は少ない

 

体の中を温める、陽のエネルギーが不足しているために、不必要な水分を体外へ排出する力がない「腎陽虚タイプ」

 

むくみは下半身からはじまることが多い、腰以下とくに内くるぶしに著しい、腰や膝が重だるく、力が入らない、手足の冷え、尿は少なく色は薄い

 

<治療及びタイプ別食養生>

鍼治療では、体内の余分な水分を排出させ、胃腸機能を高めていく「健脾利水」の治療をしていきます。

 

~適した食べ物~  体内の余分な水分の排出を促す食材

 

緑豆、小豆、黒豆、へちま、冬瓜、とうもろこし、はと麦、鯉(こい)、杜仲茶

 

鍼治療では、体全体を温める働きのある腎機能を高め、余分な水分の排出を促す「温補腎陽・利水」の治療をしていきます。

 

~適した食べ物~  温める力を増やし、余分な水分の排尿を促していく食材

 

もち米、ラム肉、えび、にら、ねぎ、しょうが、にんにく、ししとう、かぼちゃ、栗、くるみ、シナモンティー、ジンジャーティ、杜仲茶

 

<日常生活の過ごし方>

水湿困脾タイプ

塩分を控えめにすることはもちろんのこと、甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。

冷たい物(アイスやジュース)は流れを阻みますので、避けましょう。

運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。無理のない範囲で行ないましょう。

梅雨の時期は湿気の影響を受けるので、特にこの時期は食べ物に気をつけましょう。

 

腎陽虚タイプ

冷えやすい下腹部や腰部はしっかり温めましょう。 薄着を避け、夏場はクーラーから、冬は寒気からくる寒さを、防寒でしっかりガードしましょう。

体を温める食べ物を適度に摂るよう、心がけましょう。

運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。無理のない範囲で行ないましょう。

梅雨の時期は湿気の影響を受けるので、特にこの時期は食べ物に気をつけましょう。

 

~最後に~

さて、見ていただきましたように中医学では「便秘」ひとつをあげてみても、様々なタイプがあり、それぞれに合った治療方法が大切であることがわかっていただけましたでしょうか。そして、タイプは1種類だけではなく、複雑に症状が絡み合っている場合も少なくありません。その際、何が根本的な原因で他の症状を誘発させているのかなど、細かい分別 が必要になってきます。皆さんの中で、症状に悩み、どのタイプも少しずつ当てはまるのでわからないという方は、お気軽にご相談ください。

またここでは、詳しく述べていませんが、逆子を治す際によく使われるツボとしまして、「三陰交」があります。このツボの作用は、子宮を収縮させる働きがあります。そのため、強く押しすぎたりしますと、胎児を下におろしてしまう可能性がありますので、気をつけてください。その他、三陰交と同じような働きをするツボがいくつかあります。使われる際は、一度信頼のできる鍼灸師の先生にご相談されることをおすすめします。

 

このほか、当院では産後の肥立ちをよくする体力の回復をうながす治療をはじめ、母乳が出づらい、抜け毛など血の不足による症状の改善なども行なっております。

 

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 

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