コラム

2019/02/20
円形性脱毛症

おそらく皆さんの中で「円形脱毛症」という疾病の名前を聞いたことのない方は居ないと思います。ストレス社会の現代ではあまりにも有名な疾患の一つでね。私の知人でも数名「円形脱毛症」になってしまった人がいるくらい身近な疾病です。

では早速「円形脱毛症」の症状から説明してゆきたいと思います。

 

先行する病変や前ぶれもなく突然、円形もしくは楕円形の境界明瞭な脱毛斑生ずる疾患です。脱毛部の大きさは爪位 から手掌位と様々で単発の場合や多発する場合があります。通常は頭部ですが、眉毛・須毛・陰毛などにも及ぶことがあります。まれに白斑や白毛を伴うこともあります。また、目や爪に合併症が現れることもあります。

「円形脱毛症」は日本の人口の1~2%に発症し、約4分の1は15歳以下の小児といわれております。また約2割は家族内で発生し、発症しやすい遺伝的素因があるともいわれております。それではまず「円形脱毛症」を現代医学ではどのように捉えて治療をしてゆくのかを簡単に紹介していきたいと思います。

 

 

現代医学的「円形脱毛症」の捉え方▼

 

症状による分類

1.脱毛部が単発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「単発型脱毛症」

  最も多い脱毛症です。自然治癒率60%前後といわれています。

2.脱毛部が複数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「多発型脱毛症」

3.頭毛全てが脱落・・・・・・・・・・・・・・・・・・「全頭型脱毛症」

4.「全頭型脱毛」に加え眉毛・須毛・睫毛も抜けてしまう・「悪性脱毛症」

5.上記に加え腋毛・陰毛・その他の体毛が脱毛・・・・・「汎発性脱毛症」

6.後頭部から両側頭部にかけて帯状に境界明瞭に脱毛・・「蛇行性脱毛症」

などに分類されます。

* 「蛇行性脱毛症」は「全頭型脱毛症」に移行することが多い。

 

合併症

「爪」・・・爪に小さな凹みや縦に溝や陵ができたり、肥厚・混濁・変形・脱落がおこることがあります。

「目」・・・白内障{「全頭型脱毛症」「悪性脱毛症」から}

 

病因

残念ながら不明です。現在、幾つかの仮説がありますので紹介いたします。

1.自律神経障害説

2.内分泌障害説(ホルモンなど)

3.毛周期障害説(病巣部の毛が休止期毛となる)

4.感染アレルギー説

5.自己免疫説

など現段階だと色々あります。

 

治療

主に薬物治療になります。

内用:セファランチン・グリチロン錠・アレジオン など

外用:塩化カルプロ二ウム液・ステロイド剤 など

病因が不明の為、対処療法的な治療になります。

 

簡単ではありますが現代医学的「円形脱毛症」の捉え方でした。

次に中医学的なお話に移りたいと思います。

 

 

▼▼▼中医学的「円形脱毛症」の捉え方と治療方針▼▼▼

まず、「円形脱毛症」とは現代医学の名前です。中医学では「油風」や「鬼舐頭」と呼んでいます。その他に現代医学と大きな相違点として、中医学では「毛髪」は『血』の余りから作られると考えられており、また髪の毛に栄養を与えているのも「血」と考えております。ですから「円形脱毛症」の原因には『血』が深く関係します。

さて今、皆さんの中には「え~、髪の毛が血から出来てるの~???」と疑問を持たれた方も多いかと思います。確かにいきなり「髪の毛は血からできている」と聞いてすぐに納得できる人は少ないと思います。しかし『血』と言っても現代医学と中医学では若干考え方が違います。そこでまずは中医学で考える『血』の働き・生成・循環・失調を簡単に紹介したいと思います。近代医学とは似ている部分もあれば全然違う部分もありますが、元々身体の捉え方自体が近代医学と中医学とでは違うものなのでその辺も含めて理解していただけたらと思います。

 

『血』とは?●

作用・・・血はどんな働きをしているのでしょうか?

血は全身へ栄養分を行き渡らせたり潤いを与えます。これは現代医学と似ていますね。その他の作用としては精神活動を支えております。

 

生成・循環・・・血はどのように作られ体内を循環し補足されるのでしょうか?

血は「脾」で飲食物から作られます。そして「心」と「肺」の力によって全身へ運ばれ「肝」に貯蔵されます。また『精血同源』といって血や精のどちらか不足した場合は片方が化成して補足することができます。

 

失調・・・血が作用しなくなると?

血の失調については様々な要因があり色々な種類がありますので、今回は「円形脱毛症」に特に関係のある4種類の血の失調の状態を簡単に説明します。

 

1.血虚・・血が不足してしまった状態です。

中医学では血が不足すると「血虚生風」と言って血の不足により栄養が行き届かなくなった結果 、めまい・四肢の痺れや拘攣・肌肉がピクピク動く・目の乾燥・爪が白く光沢がない・皮膚の乾燥などの症状が現れると考えます。又、血が脳を養われなくなると「血厥虚証」と言って突然の昏倒・顔色が蒼白い・四肢が氷のように冷たい・唇が白く艶がない・皮膚が冷たいなどの症状も現れます。

先ほども書きましたが血は精神活動を支えておりますから血虚になると不眠・健忘・昏迷・不安感などが現れます。その他には目のかすみ・動悸・四肢の知覚麻痺・女性では月経量 の減少・月経周期の遅延又は月経の停止などの症状も現れます。

 

2.オ血・・血の流れが停滞してしまった状態です。

症状としては顔色がどす黒い・アザができやすい・皮膚のザラツキ・月経血や出血は紫暗色で血塊が混じるなどがあります。

 

3.血熱・・血が熱をおびた状態です。

ちょっとイメージしづらいかもしれませんね。これは血が熱化してしまたり、熱邪が血に入り込んで起こります。では早速症状をみてみましょう。心煩・躁動し発狂する・口は渇くが飲みたがらない・夜間に身熱が顕著・鼻血・各種出血傾向などがあります。

 

いかがですか、「血」と言ってもその作用や失調状態は近代医学と中医学とではだいぶ考え方が違うということがわかって頂けましたでしょうか?

 

 

中医学的「円形脱毛症」を理解するための予備知識●

次に中医学による「円形脱毛症」を理解するために必要な予備知識として「病因」と「肝」について簡単に解説をいたします。

 

病因について◎

人体に病気を発生させる原因のことを病因と呼びます。

中医学ではこの病因の中で体外が原因で起こるものを「外因」とか「外感」と言い、さらにその中には「六淫」と呼ばれるものがあります。

この「六淫」(ろくいん)とは体外から人体を障害する6種類の要因の総称です。風(ふう)・寒・暑・湿・燥・熱の6種類です。これらを総称して「外邪」(がいじゃ)と呼ぶ事もあります。

又、各々単体に「邪」を付けて呼ぶ場合もあります。例えば「寒邪」(かんじゃ)「湿邪」(しつじゃ)「熱邪」(ねつじゃ)といった具合です。皆さんがよく使う「風邪」(かぜ)もここからきていて、我々は(ふうじゃ)と呼びます。六淫とはどのようなものかもう少し説明します。例えば、日本では春夏秋冬という四季が有り、気候も季節に合わせて変わります。冬は寒く夏は暑くなります。ところがその気候の変動が過度であったり、逆に不足したり、季節はずれの気候だったりすると体の不調を訴える方が出てまいります。この状態が外邪(六淫)が人体に障害をあたえた状態です。そして「円形脱毛症」はこの六淫の中の「風邪」によって起こることがあります。

中医学はマクロの医学と呼ばれ、外界の環境が人体に及ぼす影響をとても重視しています。これは中医学の特徴である考え方で、人間を自然の一部として捉えているからこそ出てくる発想です。六淫についてはなんとなくイメージできたでしょうか?六淫についてはまだまだ説明が足りないと思いますが本題からズレてはいけませんので今回は紹介程度にしておきます。

 

肝について◎

先ほど血の循環のところで血の貯蔵をしていると紹介しました「肝」であります。この「肝」の性質はノビノビした状況を好みます。逆を言えばストレスにとても弱い臓器です。過度のストレスが加わると「肝」の気はスムースに流れなくなり渋滞を起こします。気が渋滞を起こしていることを「気滞」言います。又、「気滞血オ」といい気滞はオ血の原因になります。また、熱にもなることもあります。

 

 

「油風・鬼剃頭」●

主な原因としては風邪(ふうじゃ)によるものや過度の精神緊張により気血の流れが悪くなって起こる場合、過労などにより肝腎の機能低下により起こると考えられております。

それでは「油風・鬼舐頭」を原因別に大きく4つに分類して解説してまいりたいと思います。

 

『血虚と風邪』によるもの

血虚の原因は様々です。例えば先ほど血の生成で述べましたが、血は飲食物と精から作られます。消化器系の機能低下(中医学では脾胃)や過度な飲食物の摂取制限などは血虚をまねきます。ですから無理なダイエットなどは血虚の原因になります。又、中医学では目が機能する際には血を消耗すると考えておりますので、目を酷使しても血虚になる場合があります。このような事が原因で血虚になり血が毛髪を養うことができない状態に加え、風邪を受感してしまい毛竅を阻滞しておこります。

症状は発病初期には突然毛髪が脱落します。斑状は単発や多発の場合があります。随伴症状として不眠や夢を多く見るなどがあります。

これは≪血虚風盛証≫と言います。

 

治療方針:「養血キョ風」といって血の不足を補って風邪を体から出す治療をします。

漢方薬:神応養真湯 七物降下湯

ツボ :患部 百会 風池 膈兪 血海 足三里 三陰交 など

 

 

『肝腎の機能低下』によるもの

疲労やその他の疾患により肝腎が失調して血が化成できなくなり毛髪に栄養が行き届かなくなり脱毛が起こります。

病症が長期化し毛髪が生じない、あるいは症状悪化。随伴症状としては、手のひらや足の裏や胸のほてり・不眠・眩暈・耳鳴り・多汗・寝汗などがあります。

肝腎陰虧証≫と言います。

 

治療方針:「滋陰補腎」といって腎の働きを促進して陰液を補います。

漢方薬:七宝美髥丹 生髪丸 斑禿丸 六味丸

ツボ :患部 太衝 照海 膈兪 肝兪 腎兪 三陰交 など

 

 

『オ血』によるもの

憂慮や怒りにより肝が障害され気滞をお越し、更に「気滞血オ」が起こり毛髪を栄養できない状態です。随伴症状としては脇胸部の脹満疼痛・焦燥感・怒りっぽい・口が苦い・目が赤いなどがあげられます。

 

治療方針:「活血化オ」といって血の流れを改善してオ血を取り除きます。又、肝の気が渋滞をしていれば「疏肝理気」と言って肝をととのえて気を流す治療を行います。

漢方薬:逍遙散加桃仁・紅花・四逆散

ツボ :患部・合谷・太衝・陽陵泉・膈兪・肝兪・三陰交など

 

 

『血熱』によるもの

皆さんも焚き火をした経験があると思いますが、焚き火をすると火の回りの空気が温められて動き出し風を起こすことはご存知ですよね。中医学ではこれと同じ事が体の中で起こると考えます。

これを≪熱極生風≫と呼びます。

例えば、血に熱邪が入り血熱が起きると、その熱により風が生まれると考えます。これは血の中に熱が入ることにより血を消耗してしまい内風が発生するわけで「血熱生風」と呼びます。原因はストレスや過度の精神状態によります。症状は突然限局した円形や楕円形の脱毛が起こります。

随伴症状としてはイライラ・口渇・便秘・などがあります。

 

治療方針:「涼血熄風」と言って血にある熱邪を取り除き内風を鎮めます。

漢方薬:羚羊鈎藤湯

ツボ :内関・通里・太谿・三陰交などがあります。

 

「油風・鬼舐頭」を中医学的に4つに分類して病因・治療方針・漢方薬・ツボを説明いたしましたが、ご理解いただけましたでしょうか?次に分類に関係なくどの証にも共通 に施術ができる治療法を紹介します。

 

梅花針(ばいかしん)

皮膚針の一種で長い柄の先に5本の針を梅の花の様に束ねて作られいる針で、患部を軽く刺激します。

 

外治方

生姜を薄くスライスして患部をこする。又はもぐさの煎じ汁で患部を洗うなどの方法があります。

 

 

▼▼▼予防養生▼▼▼

中医学的「円形脱毛症」の捉え方を読んでいただければ、円形脱毛症は「血」と「ストレス」が深く関与していることがわかると思います。そこでここでは「血」についての予防養生を紹介いたします。尚、「ストレス」についての予防養生は当ホームページの『鬱証』のページに詳しく述べておりますのでそちらを参照してください。

 

補血作用のある食べ物◎

血を増やしてくれる食べ物ですので血虚タイプの方におすすめです。

*野 菜:

ほうれんそう・さといも・ブロッコリー・人参

きゃべつ・ひじき

*果 物:

ぶどう・もも・プルーン・レーズン・ざくろ

ブルーベリー・いちじく

*肉 類:

レバー・羊肉・鶏肉・牛肉

*魚介類:

えび・うなぎ・さば・いか・あなご・あわび・ぶり

まぐろ・かに・たこ・牡蠣・太刀魚・すっぽん

なまこ・すずき・いしもち・ふな・ふかひれ・えいひれ

*穀 物:

あわ・小麦・黒豆・黒米・赤米

*乳製品:

牛乳・卵

*木の実:

黒ごま・松の実・くるみ

*健康茶:

なつめ茶・クコ茶

*漢方薬:

当帰・竜眼

 

・・生活の中で注意すること・・

目が機能するためには血が消耗されますので目の使い過ぎには注意しましょう。

血は飲食物から作られます、過度なダイエットには注意しましょう。

 

 

活血作用のある食べ物◎

滞りを起こしている血の流れを回復してくれます。オ血タイプの方におすすめです。

*野 菜:

にら・えんどう豆・みょうが・なす・れんこん・くわい

セロリ・さといも・フキ・トマト・アスパラガス

たまねぎ・ねぎ・にんにく・らっきょ・しょうが

とうがらし・ピーマン・ほうれんそう・かぶ

*果 物:

くり・プルーン・もも・いちご・メロン

*魚介類:

太刀魚・たこ・いわし・あさり・あわび・たい・かに

ひじき・こい・なまこ・まぐろ・かつお・さば・こはだ

あじ・さんま

*健康茶:

ウコン・ローズティー・田七人参茶

*その他:

酢・カレー・黒砂糖

 

・・生活の中で注意すること・・

血行が悪くなります、寒さには十分注意しましょう。

たばこも血行を悪くします、吸い過ぎに注意しましょう。

適度な運動を心がけましょう。

オ血の要因は「冷え」「ストレス」「過労」です!!注意してください。

 

 

補陰作用のある食べ物◎

陰液を増やしてくれます。陰虧タイプの方におすすめです。

*野 菜:

ごぼう・ちんげんさい・きゅうり・なす・アスパラガス

トマト・みょうが・とうがん・れんこん・せり

*果 物:

スイカ・びわ・なし・バナナ・あんず・さくらんぼ

*魚介類:

ほたて・しじみ・あさり・かに

*健康茶:

緑茶・プーアール茶・ウーロン茶

*その他:

こんにゃく・そば・黒豆・小麦・豆乳

 

・・生活の中で注意すること・・

陰液は夜の睡眠中に作られます。できるだけ12時前に寝るようにしましょう。

 

最後にタイプに関係なくストレスは大敵です。出来るだけストレスは貯めないように注意しましょう。

又、脱毛が起きている方は患部をマッサージして血行を良くするように心がけてください。

 

 

中医学的に捉える「円形脱毛症」は理解できましたか?

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

2019/02/20
下痢

下痢とは、消化管内において十分に水分が吸収されず、水分を多く含んだ形状のない便を排出することを言います。

 排便回数が多いだけでは、下痢というわけではありません。

健康な便は、腸で水分吸収されるため形状がきちんとありますが、下痢の場合はウィルス感染、炎症、何らかの疾患の1つの症状など様々な原因によって腸の中の悪いものを早く体外へ出そうとする防御反応が働くために起こります。

 

 では、“下痢”について「現代医学」と「中医学」のそれぞれの捉え方を説明していきたいと思います。

 

 

【現代医学な捉え方】

日本人の1日の糞便量はおよそ150gで、水分含有量はその60~70%を占めていますが、80~90%になると軟便から泥状便、90%以上では水様便となります。

便が消化管を早く通過しすぎたり、便中のある物質が大腸の水分吸収を妨げたり、大腸で水分が分泌されたりすると便に過剰の水分が含まれます。

下痢の症状の他に、腹痛、嘔気、嘔吐、脱水症状、発熱などがあります。

 下痢の発生機序から“通過時間の異常による下痢”“浸透圧性下痢”“分泌性下痢”の3つに大きく分類されます。

 

通過時間の異常による下痢≫

 便の通過速度が速くなることは、下痢の最も一般的な原因です。

便が正常な硬さとなるには、ある程度の時間、便が大腸に留まっている必要があります。

便が大腸を速く通過すると水様性の便になります。

多くの医学的処置や治療が、便が大腸に留まる時間を短縮します。それには、甲状腺機能亢進症、胃や小腸・大腸の部分切除、胃潰瘍治療のための迷走神経切断、腸のバイパス手術、マグネシウムを含む制酸薬、下剤、プロスタグランジン、セロトニン、カフェインなどの薬の使用が含まれます。

 多くの食べ物、特に酸性の食品は速く通過します。特定の食品に耐性がなく、それらを食べた後に常に下痢を起こす人がいます。

 

浸透圧性下痢≫

 浸透圧性下痢は、血液中に吸収されない物質が腸内に残存するために腸管内浸透圧が高まり起こる下痢です。

この吸収されない物質が便中に過剰の水分を残留させるので下痢が起こります。

一部の果物や豆類、そしてダイエット食品やキャンデー、チューインガムなどで糖の代わりに使われるヘキシトール、ソルビトール、マンニトールなどの糖類が浸透圧性下痢を引き起こします。

ラクターゼ(乳糖分解酵素)の欠乏症も浸透圧性下痢を起こします。ラクターゼは正常なら小腸にみられる酵素で、乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解して血液中に吸収できるようにします。乳糖不耐症の人が牛乳を飲んだり、乳製品を食べたりすると、乳糖が消化されません。乳糖が小腸に蓄積すると浸透圧性下痢を起こします。

消化管中の血液も浸透圧性物質として働き、黒色便(メレナ)を起こします。

正常な腸内細菌の過剰繁殖や、普通は腸内にみられない細菌の繁殖も浸透圧性下痢の原因となります。アメーバなどの寄生虫感染症、抗生物質の服用による腸内の細菌叢の破壊も浸透圧性下痢の原因となります。

 

分泌性下痢≫

 分泌性下痢は、細菌毒素、ホルモン、化学物質などが腸管において水分や電解質の分解を促進して起こる下痢で、その種類は多くあります。

コレラ菌や、ある種のウィルスに感染したとき産生される毒素によってこの分泌が起こります。ある種の細菌による感染症や、寄生虫による感染症も水分の分泌を促進します。

この下痢は大量に起こり、コレラでは1時間に約1リットル以上の便を排泄します。

 この他の原因には、ヒマシ油のような緩下薬、胆汁酸などがあります。

カルチノイド、ガストリノーマ、ビポーマなどの稀な腫瘍でも、またポリープによっても分泌性下痢が起こります。

 

《下痢の治療》

水分補給

食事療法・・・

1~2日は、食事を避けて安静を保ちます。脂肪の多い食事、冷たいもの、刺激の強い香辛料などは避け、消化の良いものを徐々に摂取するようにしましょう。

薬物療法・・・

抗生物質、腸運動抑制剤など

 

 

下痢の原因が何らかの感染症の場合には、薬を用い下痢を止めることで腸内の細菌やウィルスをとどめることにつながるため、病院を受診し、医師の指示に従うようにしましょう。

 

 

【中医学的な捉え方】

 最初に、中医学的な人体の考え方について説明します。

詳しくは、“わかる東洋医学診断 まとめ”のページの上段の「わかりやすい東洋医学理論」をお読み下さい。

現代医学とは異なる角度から、人体を見ていることが理解いただけると思います。

 

人体には“気・血・水”と呼ばれる「人体を構成して生理活動を活発化させる基本的物質」が巡っています。

 

~気・血・水について~

 

気・・・

気は体内を流れるエネルギーの1つです。消化・吸収・排泄を正常に行なう、血を巡らせる、体温を保つ、ウィルスや細菌から体を守る、内臓を正常な位 置に保つなど、体の生理機能を維持する働きがあります。

 

血・・・

いわゆる“血液”という意味のほか、“気”とともに体内を流れて、内臓や組織に潤いと栄養分を与え、また精神活動(気持ち・気分・情緒・感情)を支える物質でもあります。

 

水・・・

体内を潤すのに必要な水分のことです。胃液・唾液・細胞間液・リンパ液・汗なども含まれます。体表近くの皮毛・肌膚から、体内深部の脳髄・骨髄・関節臓腑までを潤します。

 

 気・血・水の生成や代謝は“五臓六腑”と呼ばれる臓器によって行なわれます。

五臓と六腑は、よく一緒に語られますが役割は異なります。

六腑は、“胃・小腸・大腸・膀胱・胆・三焦”の総称です。

六腑というのは、水穀(飲食物)を消化して、身体に有益な物質である“水穀の精微”(これが気・血・水の生成材料になります)と、不必要な物質である糟粕(カスのことです)とに分け、“水穀の精微”を五臓に受け渡し、糟粕を大・小便に変えて排泄を行なう臓器です。

六腑のうち、口から摂取された水穀が最初に運ばれる臓器が“胃”です。

胃が水穀を受け入れて(これを受納といいます)、消化し(これを腐熟といいます)、消化物を下方の臓器に渡す(これを和降といいます)という3つの働きをします。

小腸は、胃の下にある臓器で、胃で消化された水穀を人体に有益な“水穀の精微(清)”と“不要な糟粕(濁)”とに分別 します。

そして分別した“清”を脾に運び、“濁”をさらに水分とそうでない物に分けて膀胱と大腸に移します。大腸と膀胱は“濁”をそれぞれ大・小便にして排泄します。

また、胆は肝で生成された胆汁を小腸に分泌して、消化を助けています。

三焦は、臓腑機能を統轄して、水分や気を運行させる通路の働きをしています。

五臓”は“肝・心・脾・肺・腎”の総称です。

五臓は、六腑から水穀の精微を受け取り“気・血・水”を生成し貯蔵する臓器です。

 

~五臓について~

 

肝・・・

肝は血を貯蔵する働きのほか、全身の“気”のめぐりをコントロールして、精神・情緒を安定させる作用や、筋肉・目の働きを維持する働きがあります。

 

心・・・

血を全身に送り出すポンプの作用のほか、脳の働きの一部を担っていて、情緒や感情といった“こころ”とも関係が深い臓器です。心の機能が充実していると精神状態が穏やかで、情緒が安定し、思考能力も活発になります。

 

脾・・・

消化に関わる機能すべてを含んだ臓器です。食べたり飲んだりしたものを、体の役に立つエネルギー(気)に変える役割があります。また、血を脈外に漏さないようにする働きや、味覚をはじめとする口の生理機能を維持する働きもあります。

 

腎・・・

腎には体内の水分代謝をコントロールして不必要な水分を尿として排泄させる作用があるほか、成長・発育・生殖・老化に深くかかわる“精”を蓄える臓器でもあります。

 

精とは・・・

体を構成する栄養物質や生命エネルギーの総称です。腎に蓄えられて、人の成長・発育を促進し、性行為・妊娠・出産などの性機能や生殖機能を維持する働きがあります。

 

 

 中医学では、人体は“気・血・水”がスムーズにめぐって、必要なところに必要なだけあり、五臓六腑が正常に機能している状態を“健康”と考え、どこかのバランスが崩れた状態が“病気”と考えます。

 バランスを崩す原因(病因)には、“外因・内因・不内外因”があります。外因とは外界の環境因子(気候の変化など)、内因とは感情や精神状態など、不内外因とは食生活や過労などの生活習慣のことです。

これらの病因が、気・血・水のバランスを崩し、五臓六腑の働きを失調させることで病気になると考えます。

中医学独特の診断方法で、何の病因で、五臓六腑のどの臓器に影響を及ぼし、気・血・水がどのようバランスを崩し、どのように失調したかを見極め(これを弁証といいます)、治療方法を決める(これを論治といいます)ことを“弁証論治”といいます。

 

 では、下痢に関して説明していきましょう。

中医学では、下痢を“泄瀉(腹瀉)”といいます。主症状は、排便回数が増加、大便が軟化、ひどいときは大便が水のようになります。

厳密には、“泄”は大便が軟らかく勢いが緩やかなものをいい、“瀉”は大便が水のようにうすく勢いが急なものをいいます。

 

 正常な排便は、主に脾と胃の協調運動が中心となって行われ、大腸、肝、腎が関与しています。

飲食物は、まず胃で簡単に消化された後に脾に送られます。脾には、飲食物を消化して身体に必要な栄養素を吸収し、肺に送る働きがあります。身体に不必要なものを小腸や大腸に送るのは胃の役割です。

大腸では、小腸から送られてくる食物の残渣を受け取り、余分な水分を再吸収して糞便を形成して排出する働きがあります。

 脾は上向き、胃は下向きという運動をすることによって消化吸収と排泄が正常に行われる仕組みになっています。この運動方向に逆らって、胃の働きが上に向かうと嘔吐や吐き気などの症状が、脾の働きが下に向かうと下痢が起こります。

胃が正常に働くためには適度な潤いが必要ですが、脾は逆に湿気を嫌います。

そのため、水分の摂り過ぎなどで脾に余分な湿気が溜まってしまうと、機能が低下して下痢をしやすくなります。

また、脾の機能がもともと弱い人は、水分をうまく吸収することができないため、脾に余分な湿気が溜まりやすくなる傾向があります。

 下痢には、急性と慢性があります。

急性の下痢の原因は、湿熱や寒湿などの外邪によるものと、暴飲暴食などによるものがあります。

慢性の下痢は、もともと脾胃が弱い、精神・情緒をコントロールする肝が機能失調を起こしている、腎陽が不足している、といった原因で起こると考えられます。

それでは、それぞれのタイプ別に説明します。

 

外邪(寒湿または湿熱)による下痢

寒湿の感受(雨中や湿地での生活、生ものや冷たいものの過食)によって、脾の機能が低下して下痢が起こります。

このタイプの人は、冷えたり、生もの・冷たいものの過食によって症状が悪化します。

 水様便に加え、吐き気、手足や全身が重だるい、頭がスッキリしない、むくみ、寒気 がする、腹部冷痛、といった症状が現れます。温めると症状は改善します。

(治療方針)散寒化湿・・・寒湿を取り除きながら脾の機能を整える治療です。

 

湿熱(暑く湿度の高い季節や、味の濃いもの・脂っこいものの過食、過度の飲酒)が大腸に侵襲して機能失調となり下痢が起こります。

症状は急迫し、便は水様の黄褐色で、臭いが強く、肛門に灼熱感があるなどが特徴です。

(治療方針)清熱利湿・・・湿熱を取り除き大腸の機能を整える治療です。

 

 

飲食失調よる下痢

 

暴飲暴食、食べ過ぎによって脾胃の消化・吸収機能が阻害されて下痢が起こります。

みぞおちが張って痛む、腹部を押すと苦しい、臭いの強いゲップがでる、未消化物を伴う腐敗臭の強い便がでる、下痢の後に痛みが軽減する、などの症状があります。

 

(治療方針)消食導滞・・・

胃腸に停滞する消化物を除去して胃腸の機能を整える治療です。

 

 

 

肝気鬱結による下痢

 

肝の疏泄作用(気をめぐらし臓腑の働きをスムーズにします)によって、脾の運化作用(消化吸収し、栄養を全身に送ります)の働きが正常に保たれています。

ストレスや精神疲労などから、肝の疏泄作用が低下し、脾の運化機能が失調して下痢が起こります。

便秘と下痢を繰り返す、下痢をしても腹痛が治まらない、緊張や感情の変化によって症状が増悪するなどの特徴があります。

 

(治療方針)疏肝健脾・・・

肝の疏泄作用を調整し、同時に脾の運化作用を促す治療です。

 

 

脾胃虚弱による下痢

 

便が時に軟便となり、時に下痢となります。便の出始めは硬く形があっても、後に下痢(軟便)となるのが特徴です。

疲れやすい、食後に眠くなる、排便の回数が多い、顔がむくみやすい、尿が出にくい、などの症状があります。

生もの、冷たいもの、脂っこいものなど、消化の悪いものの飲食で症状が悪化します。

 

(治療方針)益気健脾・・・消化機能を増強させる治療です。

 

 

腎陽虚弱による下痢

高齢者や冷え性の人に多いのは、食べ物を消化吸収するエネルギーが不足して起こる下痢です。

腎陽は体を温める原動力です。腎陽の機能は年齢とともに弱くなるため、年をとると冷えやすくなります。また、腎陽の火力がある程度強くないと、脾を温める事が出来ず、脾胃が飲食物をうまく消化吸収することが出来なくなります。

夜明け前に腹部が痛み、腹鳴が起こって下痢を起こし、下痢をした後は楽になる、という特徴的な症状があります。

他にも、腹部が冷え、温めることを好む、腰・膝がだるい、四肢が冷える、夜間頻尿、などの症状があります。

生もの、冷たいものの飲食や寒冷によって症状が悪化します。

 

(治療方針)温腎健脾・・・腎を温めて消化機能を促進する治療です。

 

 

養生≫

下痢のときは、脱水症状を避けるため水分の補給を心掛けて下さい。とくに、高齢者の方は、脱水症状を起こしやすく、全身の症状が悪化することがありますので注意が必要です。

水分補給は、湯冷ましや番茶、スポーツ飲料などがよいでしょう。ジュース類、牛乳などは、含まれる成分が下痢を悪化させることがありますので避けて下さい。

 

予防≫

*身体を冷やさないように心掛ける

*暴飲暴食を避ける

*栄養バランスの良い食事を摂り、体力と抵抗力をつけておく

*体調が悪いときは、脂っぽい食事、アルコールは避ける

*嗜好品や刺激物を摂り過ぎない

*睡眠を十分とり、規則正しい生活を送る

*仕事時間と、休息時間をきちんと分け、生活にメリハリをつける

*ストレスを受けていることを認識して、自分に合ったストレス解消法をみつける、など。

 

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

2019/02/20
顔面神経麻痺

ある日、朝起きて歯を磨いていると、口から水がこぼれる。

「あれっ?」っと違和感をかんじながら鏡をのぞいてみると、眼がうまく閉じれず口もひきつり、顔がゆがんでいてビックリする…。

 

顔面神経マヒとは、片側の顔の表情をつくる筋肉が麻痺してしまう病気です。

 

顔面神経マヒになって困っている方、また周りに顔面神経マヒになってしまった人がいる方のためにも、西洋医学的分類、治療方法そして中医学的分類、治療方法、リハビリとお話させていただきます。治療では後からお話する末梢性顔面 神経マヒの鍼治療についてご説明します。

 

 

<西洋医学的分類と原因>

まず、顔面神経マヒは中枢性と末梢性の大きく2つに分かれます。

中枢性とは、脳と脊髄のことをいいます。

末梢性とは、脳と脊髄から木の枝や根のように出ている神経のことをいいます。

このことからわかるように、中枢性顔面神経マヒとは脳の中でおこった血管障害(脳梗塞、脳内出血)が考えられますので、CTやMRIの検査が必要になります。速やかな専門医への受診が必要になります。

 

末梢性顔面神経マヒは、80%以上がベル麻痺と呼ばれる原因のはっきりしないタイプです。最近では、その原因はウィルス性、寒冷刺激、虚血性、免疫異常などが考えられています。年間10万人に22,8人発症するといわれています。次に多いのがラムゼ・ハント症候群といわれるもので、子供の頃に患った水痘(みずぼうそう)のヘルペスウィルスが成人してから神経をおかす病気です。少数ですが、糖尿病性、外傷性、多発性神経炎というものも原因になります。

 

 

<中枢性、末梢性顔面神経マヒの鑑別(見分け方)

中枢性、末梢性の鑑別の仕方は、顔のゆがみ方や全身の症状より判断します。

 

その前に・・・

顔面神経マヒでは、麻痺している側(患側)と正常(健側)を間違えてします方がいます。これは筋肉が麻痺して力がなくなっているので、正常な方(健側)へと引っ張られてしまい、一見麻痺している方がのっぺり無表情で正常な方がゆがんで見えたりします。

表情の作れない方が麻痺しています。注意しましょう。

 

中枢性の顔面神経マヒの鑑別(見分け方)方法

・麻痺している側の額のしわをつくることができる。

・麻痺側の閉眼が出来ます。

・麻痺の程度がひどくない。

・手や足の痺れ、麻痺などが同時に出現する。

などがあげられる。

 

末梢性の顔面神経マヒの鑑別方法

・麻痺側の額のしわをつくることができない。

・閉眼が不充分になる。

閉眼すると白目が残る―兎眼といわれます。

閉眼すると眼球が上に向いてしまう―ベル現象といわれます。

・鼻唇溝(口の端から鼻の端にできる皮膚のしわ)が薄くなる。

・口角が下垂し正常な側へ引っ張られる。

・口笛が吹けない、パピプペポが発音しにくい。

 

また聴覚過敏、味覚低下、唾液、涙の分泌低下も伴うことがあります。

 

 

<中枢性、末梢性 顔面神経マヒの西洋医学的治療と経過>

中枢性では、脳の血管障害(脳梗塞、脳卒中)に基づく治療となりますのでここでは省略させていただきます。

現在、日本においては内科(神経内科)、脳外科での治療となります。

 

末梢性では、

急性期(発症より1週間~10)―早期にステロイド(副腎皮質ホルモン)の注射により炎症を抑える。

メチコバール(末梢神経障害における神経の修復)、回復期(1週間~10日以降)―温熱、マッサージなど本格的なリハビリをいていく。

 

これらの治療によりベル麻痺の約7080%は完治します。軽度のもので12ヶ月。中等度のもので2~3ヶ月で治ります。年齢が若いほど経過は良好です。15%ぐらいに軽い麻痺。

残りが慢性期へと移行していきます。慢性期では後遺症の一つとして病的共同運動とよばれるものがあり、これは回復の過程で神経に混線が生じた結果 、口を開閉したときに眼の筋肉が勝手に動いてしまったり、物を食べるときに涙が出てしまうといったことがあります。

またラムゼ・ハント症候群ではベル麻痺に比べ予後が少し悪く残ります。

 

 

ポイント:ベル麻痺では治療をしなくても麻痺は回復します≫

ベル麻痺では治療を受けなくても自然治癒します。これは大変に希望の持てることですが、中枢性や他疾患との鑑別 、また病気の程度や治療の時期、リハビリのやり方で予後に影響がありますので病院や信頼のおける鍼灸院での治療をお勧め致します。

 

 

 

<東洋医学的分類と原因>

東洋医学でも顔面神経マヒの場合、やはり中枢性と末梢性の鑑別をおこないます。

中枢性の場合は中風(脳血管障害)に基づき診断、治療していきます。

 

末梢性顔面神経マヒは、経絡の気血の流れが弱くなっているところに、風寒(ふうかん)や風熱(ふうねつ)という邪気が襲いかかり、その結果 として気血の流れが滞り、筋肉が麻痺すると考えます。

 

経絡の気血の流れが悪くなる原因としては、ストレス、睡眠不足、過労、食事の不摂生などが上げられます。

風寒、風熱というのは、温度差や冷たい風をあびる(汗をかいた後に風をあび急速に身体を冷やすことも入る)、ウィルスなどのことと考えます。

風邪(ふうじゃ)、熱邪(ねつじゃ)は身体の上の方を犯しやすい邪気です。

寒邪(かんじゃ)はよく筋肉、経絡を引きつらせる邪気です。

 

 

<東洋医学的治療と経過>

鍼治療が中心になります。

治療の1つ目のポイントは、まず早期に治療を開始することです。邪気の性質を見極め、体質を考慮しながら鍼治療し、スムーズに回復期へと移行させることが大切です。

2つ目のポイントは、麻痺の時期を見ながら顔の経絡の気血の流れをよくすること、そして邪気を追い出すことです。

顔から手、顔から足へ流れる経絡―主に陽明経という経絡を使って治療します。

 

手の陽明経は人差し指の先から肘、肩、首を通 り口の横を抜け鼻の脇に至ります。

 

足の陽明経は鼻の脇から口、額を巡り、下がって胸、お腹を通 り足の先まで下がります。

経絡の流れをそのまま使うのは鍼治療の1つですが、顔の治療なのに手や足のツボを使う理由がここにあります、経絡と言う道筋が繋がっているからです。

 

急性期―顔面神経マヒは、始めの1週間は治療で邪気を抑えていても進行していく過程をとります。この時期は、顔面 部で邪気と人間の正気が戦っている最中なので、主に手足のツボを使用して強めの刺激で遠隔治療をします。遠隔治療とは、局所から離れた所に取穴を行い治療を行うことです。経絡と言う道筋を活用して居るからです。局所から離れた所に刺激を与えることにより、気や血のエネルギーの流れを改善する事により局所の症状を改善する目的があります。これは、東洋医学(中医学)の独特な考えの治療の特徴でもあります。このような治療は局所のみの治療より、全体的な治療になり治療効果 が高くなります。

 

回復期―1週間ぐらいで麻痺の状態が決まり安定します。邪気と正気の激しい戦いが一段落してから主に顔面 部のツボを使い、同時に手足のツボで気血を整えます。

 

慢性期―治療開始が遅れたりして慢性期になってしまった場合は、顔面 部の気を補い、また手足のツボで気を補ったり調整したりします。

 

<回復期のリハビリ、マッサージの仕方、注意点>

リハビリでは温熱療法、運動法、マッサージなどがあります。

ここでのポイントはやり過ぎないことです。

運動療法、マッサージを疲れたり痛みが出るほどのやり過ぎると、神経系の連絡不良(混線) を起こす可能性となりますので注意が必要です。

 

温熱療法―蒸しタオルで顔を温めます。手で触って心地よい暖かさで温めます。

 

運動療法―ポイントは一つ一つのパーツをバラバラに動かします。

・額にしわを作る。

・頬を膨らます。

・鼻をすくめる。

・口角を引き上げる(イーと口を横に引く)

この時、目、鼻、口はバラバラに動かしましょう(病的共同運動を防ぎます)。手で触ってみて目と口が同時に動かないように注意します。

マッサージ療法

額、眼、口の周囲は手で円を描くように動かしながら優しくマッサージします。

口角、頬は手で円を描きながら上向きに持ち上げるように優しくマッサージします。

首、肩も同じようにマッサージすると効果 的です。

運動療法、マッサージの前に温熱で温めてからやると効果的です。

日常で注意すること

風に当たらないように注意しましょう―冷たい風の吹く日はマスクをしましょう。また、汗をかいた後も風で冷やさないように注意しましょう。

眼の保護―眼が完全に閉眼できないため、角膜が乾燥しやすくなってしまいます。眼帯を着用したり、目薬をさして眼が乾燥過ぎないように注意しましょう。

お酒と控える―アルコール代謝物質のアセトアルデヒドが神経に悪影響を及ぼすと考えられている。

ストレスと避けましょう―東洋医学では、ストレスより気血流れが悪くなると考えます。

過度のストレスを避けましょう。

体調を整えましょう―治療をしていても家や仕事、不摂生をしている、経絡の流れが悪くなり回復が遅くなります。特に急性期、回復期にかけては規則正しい生活を心がけましょう。

 

顔面神経麻痺でお悩みの方、何かの参考になりましたでしょうか?

顔面神経麻痺の治療は、鍼治療の適応であります。また、非常に効果 の出やすい疾患で有ります。治療は、早ければ早いほど効果が良いので、一つの治療法としてご一考にされても良いかと思います。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

 

 

 

なぜ症状改善の為に、体質を知ることが必要なのでしょうか?

 

体質を見て治療法を決めることは、当院の特徴です。

なぜなら、他院では体質ではなく症状に対しての治療を行っています。

 

たとえば顔面神経麻痺の患者さんは、ステロイドやメチコバールなどの薬の投与をしたりするなどです。

一般的な鍼灸院も、顔面神経麻痺を起こしている部位に鍼治療を施術するところが多いです。

 

これらも一つの治療法ではありますが、本質的な(起因・素因に対しての)治療が行われていないので、 良い結果に繋がらないケースもあります。

 

例えば、素因に虚弱体質が有ればその点にもお手当を加えることにより、一層治療効果を高めることが可能に なります。

 

故に顔面神経麻痺でも、ストレス、睡眠不足、過労、食事の不摂生など、原因は様々です。

それらは患者さんの体質から引き起こされているので有ります。

 

ですから、体質を知らないと症状の根本的な原因も分からず、いくら薬を飲んだとしても症状改善が難しい 場合があるのです。

 

当院ではまず体質を見極めてから、症状改善にベストな治療法を選択しています。

よって患者さんごとにオーダーメイドの治療を行っています。

 

 

 

 

 

 

吉祥寺で開業して30年以上!

体質の判断が正確にできる日本でも数少ない院です

 

体質を判断するときに重要なことは見極めです。

 

これを誤ると間違った治療法を選択し、症状の改善もできなくなります。

 

当院では、上海中医大学内のWHO(世界保健機構)認定の伝統中医学研修センターにて臨床研修を受けた日本に於いて数少ない中医師で医学博士とそのノウハウを継承したスタッフが体質を見極めますので患者さんにベストな治療法をアドバイスできます。

2019/02/20
逆子

妊娠28週~30週前後に胎児の位置が異常になる状態を逆子といいます。

頭が上になった骨盤位、お尻が下になっている殿位、足が下になっている足位 などがあります。

帝王切開によるお産は、大々的に死産率を下げますが母体に負担が掛かります。

中医学的には、腹部の正中線上には、生命のエネルギーを貯えているツボが密集しているため、帝王切開で、その部分を切開してしまうということは、生命エネルギーの消耗に繋がります。また個人差がありますが、子宮の戻りが遅い、母乳の出が悪いといったトラブルも引き起こしやすくなります。

鍼灸治療は、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

そのため、胎児の回転を促す力を引き出すとともに、随伴症状(例:足がつりやすい、むくみやすい、便秘など)をも改善していくことができます。

自然なお産で、体の負担を少しでも緩和してくれる鍼灸治療をおすすめします。

 

<原因>

・骨盤が狭い:胎児が下に下がることができない

・骨盤が広い:水も多いため胎児の安定感が悪い

・胎盤の位置

・臍帯の長さ

・胎児の大きさなど

様々な原因が絡み合って起こると言われています。

 

<治りづらい場合>

・産道が小さい

・胎児が成長し大きくなってしまった場合

 

中医学的な考え▼

体の活動源である「エネルギー」、栄養源である「血」、体を潤す「水」の不足やこれらの流れが停滞することにより、逆子になりやすくなると考えられています。

原因はタイプ別の項を参照してください。

 

矯正治療のタイミング▼

妊娠28週前後、胎児の重さが約 2000gがベストな状態と言えます。

この時期胎児は大きさもちょうどよく、羊水も多いため矯正率が高く、再発率も低くなります。時期が早すぎる場合は、胎児の成長が足りないため、羊水の中で浮いて動いてしまいます。また、遅すぎる場合は退治が成長してしまい、ツボに刺激を与えても胎位 は移動しないケースが多くみられます。

しかし、28週を過ぎてしまった場合でも、胎児がまだ小さく、羊水も充分な量 があり、上記の器質的な原因がみられない方は、矯正が可能になる場合があります。

その際は一度、お気軽にご相談下さい。

 

中医学的逆子のタイプと治療法▼

気滞タイプ●

「気滞」とは主に、精神的ストレスなどにより気の流れが停滞してしまうことです。

そのため胎児の転位も停滞しやすくなり、逆子になるタイプです。

主な原因

精神的ストレス、イライラしやすく怒りっぽい、マイナス思考、仕事が忙しい

主な症状

脇腹や下腹部が脹る、胸のあたりが悶々とする、げっぷやおならがでやすい

気分が晴れずイライラする、よくため息がでる

治療方法

気の流れをスムーズにし、脇腹の脹り感や気持ちの鬱滞感をとっていく

「理気行滞」、「安胎転胎」の治療をしていきます。

 

気虚タイプ●

エネルギー不足のため、胎位転換の力がなくなって逆子になるタイプです。

主な原因

虚弱体質、過労、睡眠不足、汗のかき過ぎ

主な症状

疲れやすい、息切れ、話すのがおっくう、胎児が下がりぎみ、痩せぎみ、唇が白っぽい

治療方法

エネルギーを増して、母体を元気にするとともに胎動も活発にしていく「益気養血」、「安胎転胎」の治療をしていきます。

 

痰湿タイプ●

「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、経絡(気の流れるルート)の運行を阻害します。

そのため、胎児の転位を妨げ、逆子になるタイプです。

主な原因

冷たい水分・甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの、ビール、生ものを多く摂取する、家が湿気を帯びやすい

主な症状

水太り体質、色白、体が重だるい、痰が多くでる、頭が重くめまいがする、

手足・目のむくみ、無力感

治療方法

脾の働きを高めることにより体の余分な水分を外にだしていく「健脾利湿」、「安胎転胎」の治療をしていきます。

 

 

タイプ別にみる生活養生・食養生▼

自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。

体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。

 

気滞タイプ●

【生活習慣】

イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、脇腹が脹りやすいといった症状が多くみられます。ヨガや気功などの呼吸法やストレッチで、リラックスできる時間を作りましょう。その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。

お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。

【食べ物】

~香りの高い食べ物を摂ることにより鬱々とした気持ちを発散してくれます~

(野菜)春菊、三つ葉、みょうが、シソの葉、パセリ、セロリ

(果物)みかん、レモン、グレープフルーツ、きんかん、ゆず

(お茶)ジャスミン茶、ミントティー

 

気虚タイプ●

【生活習慣】

消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。

消化力が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。

スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るようにしましょう。

【食べ物】 ~エネルギーを増す食べ物を多く取りましょう~

(穀類)うるち米、粟米

(豆類)大豆や大豆製品、牛乳、豆乳

(肉類)牛肉、鶏肉、烏骨鶏

(野菜)山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参

(魚類)いか、貝柱

(果物) なつめ、もも、さくらんぼ

(お茶)杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶

 

痰湿タイプ●

【生活習慣】

甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。

水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。

運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。

梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。

【食べ物】~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~

(穀類)はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆

(野菜)白菜、山芋、チンゲンサイ

(魚類)こい、ふな

(果物)ぶどう

(お茶)紅茶、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶

その他日常生活での注意点▼

妊娠中は、胎児を養うために、栄養源である「血」の消耗が激しくなります。

睡眠はしっかりとり、パソコンの使いすぎ、本やテレビの見すぎ、夜更かしは避けましょう。できれば過労も避けたいものです。

逆子体操・・・腰痛のある方や、体操をするとお腹が脹ってしまう方は無理をせず、できる範囲で行いましょう。

悩んだり、焦ったり、イライラしたりする気持ち、心身の疲労などが症状を悪化させますので、ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功、など)、軽い散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。汗のかき過ぎは「エネルギー」と「血」の消耗に繋がりますので、うっすら汗ばむ程度が適度といえます。

室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。

お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。

規則正しい生活をし栄養バランスの摂れた食べ物、特にカルシウムやビタミン類をしっかり摂り、十分な睡眠をとりましょう。

 

 ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

当院での治療をお考えへの方へ

 

= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

 

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。

これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

2019/02/20
欠乳

欠乳とは、産後に母乳の分泌が少なくなったり、全く出なくなったりする状態で、母乳分泌不足のことです。中医学では“少乳”“乳汁不足”“乳汁不行”とも言われています。

母乳は、出産すればお母さんから分泌されるもの!と簡単に理解されがちですが、実際はいくつかの段階を経ています。まず、母乳分泌の仕組みから説明していきたいと思います。

 

母乳の出るしくみ≫

妊娠中、卵巣や胎盤から分泌される“エストロゲン”や“プロゲステロン”というホルモンの働きで乳腺が発育します。一方では、これらのホルモンが乳汁分泌ホルモンである“プロラクチン”の作用にブレーキをかけていて妊娠中に母乳分泌が起こらないように抑制されています。このように妊娠中はホルモンの働きで抑制されていた母乳分泌も分娩後、赤ちゃんを出産するホルモンによる抑制がとれ母乳分泌が始まります。

具体的な流れは次のようになります。

 

分娩で胎盤が体外に排出されると、胎盤から分泌されていたエストロゲンとプロゲステロン(妊娠の維持に作用するホルモンです)は急激に減少します。

 

エストロゲンとプロゲステロンの減少により、乳汁の分泌抑制がとれ、プロラクチン(乳汁の産生を促し、排卵を抑制する作用のあるホルモンです)が乳腺に活発に働きかけ乳汁の生産を始めます。

 

生産された乳汁は乳管を通って、いったん乳管洞に蓄えられます。乳頭の筋肉は乳汁が 溢れないよう収縮しています。

 

乳頭には刺激に敏感な知覚神経が集まっていて、赤ちゃんが乳首をくわえ、吸う刺激により乳頭の筋肉はゆるみます。

 

赤ちゃんの吸う刺激が、脳の視床下部を刺激し、下垂体後葉(脳にあるホルモンを分泌する器官です)からオキシトシンが分泌されます。

 

オキシトシンは乳腺を取り囲んでいる筋肉を収縮させて、乳汁を乳房から積極的に押し出します。この状態を“射乳”といいます。

 

このように、母乳分泌には赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激が大きくかかわっています。

さらに、オキシトシンというホルモンは子宮を収縮させる作用があり、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうことには子宮復古の手助けになるといえます。

 

では、どうして欠乳(母乳分泌不全)になるのか現代医学と中医学の視点から説明したいと思います。

 

現代医学的な捉え方≫

乳汁分泌不全とは、赤ちゃんに必要な量の母乳が分泌されない状態をいいます。

原因は、疲労、精神不安定、栄養不足、貧血、下垂体機能不全など全身的要因や、乳腺発育不全、乳房形成術既往など局所的要因による乳汁産生低下、赤ちゃんの吸啜力不足、オキシトシン性射乳機構不全や、乳管系の開通 不全などによる乳汁排出不全や、それに伴う残乳による血流の変動や、神経反射を介した乳汁産生機転阻害があります。

乳汁分泌促進には、円滑な排乳路の確保や、乳房への血流増加、さらにはプロラクチンなど内分泌性乳汁産生刺激因子(ホルモン)の増強などを必要とします。

従って、乳汁分泌不全に対しては“貧血・脱水・低栄養”などの母体の要因を改善すると共に、乳房マッサージによる血流増加・排乳促進を図ります。プロラクチン分泌には、スルピリドやメトクロプラミドなどの薬剤により亢進します。

 

中医学的な捉え方≫

中医学では、母乳(乳汁)は気・血が変化したものと考えます。

婦人の乳汁不行は皆気血虚弱、経絡不調によるものである”とあります。

母乳分泌不足は、分娩時に出血過多となり、気が血とともに消耗して起こるもの。

母体がもともと気血不足であったのに加え、出産により気血がより不足したために母乳の生成が不足して起こるもの。

肝鬱気滞(肝の働きが低下して気が巡らない状態)となり気機不暢のために乳路の通 りが悪くなり、そのため母乳がつまって出なくなるもの。

脾胃虚弱により納運失職(飲食物を消化吸収して気血の材料を作り出す働きが低下した状態)となって化源が不足し気血不足となって起こるもの。

肝気犯胃(肝の気を巡らす機能が低下して胃の消化機能に影響が及んだ状態)となって受納(飲食物を胃が受け入れること)が悪くなり気血の化生に影響して母乳が不足するものなどがあります。

 

具体的な症状を説明する前に、中医学的な人体の考え方について説明します。

 

人体には“気・血・水”と呼ばれる「人体を構成して生理活動を活発化させる基本的物質」が巡っています。

 

~気・血・水について~

気・・・

気は体内を流れるエネルギーの1つです。消化・吸収・排泄を正常に行なう、血を巡らせる、体温を保つ、ウィルスや細菌から体を守る、内臓を正常な位 置に保つなど、体の生理機能を維持する働きがあります。

 

血・・・

いわゆる“血液”という意味のほか、“気”とともに体内を流れて、内臓や組織に潤いと栄養分を与え、また精神活動(気持ち・気分・情緒・感情)を支える物質でもあります。

 

水・・・

体内を潤すのに必要な水分のことです。胃液・唾液・細胞間液・リンパ液・汗なども含まれます。体表近くの皮毛・肌膚から、体内深部の脳髄・骨髄・関節臓腑までを潤します。

気・血・水の生成や代謝は“五臓六腑”と呼ばれる臓器によって行なわれます。

五臓と六腑は、よく一緒に語られますが役割は異なります。

六腑は、“胃・小腸・大腸・膀胱・胆・三焦”の総称です。

六腑というのは、水穀(飲食物)を消化して、身体に有益な物質である“水穀の精微”(これが気・血・水の生成材料になります)と、不必要な物質である糟粕(カスのことです)とに分け、“水穀の精微”を五臓に受け渡し、糟粕を大・小便に変えて排泄を行なう臓器です。

六腑のうち、口から摂取された水穀が最初に運ばれる臓器が“胃”です。

胃が水穀を受け入れて(これを受納といいます)、消化し(これを腐熟といいます)、消化物を下方の臓器に渡す(これを和降といいます)という3つの働きをします。

小腸は、胃の下にある臓器で、胃で消化された水穀を人体に有益な“水穀の精微(清)”と“不要な糟粕(濁)”とに分別 します。

そして分別した“清”を脾に運び、“濁”をさらに水分とそうでない物に分けて膀胱と大腸に移します。大腸と膀胱は“濁”をそれぞれ大・小便にして排泄します。

また、胆は肝で生成された胆汁を小腸に分泌して、消化を助けています。

三焦は、臓腑機能を統轄して、水分や気を運行させる通路の働きをしています。

五臓”は“肝・心・脾・肺・腎”の総称です。

五臓は、六腑から水穀の精微を受け取り“気・血・水”を生成し貯蔵する臓器です。

 

 

~五臓について~

肝・・・

肝は血を貯蔵する働きのほか、全身の“気”のめぐりをコントロールして、精神・情緒を安定させる作用や、筋肉・目の働きを維持する働きがあります。

 

心・・・

血を全身に送り出すポンプの作用のほか、脳の働きの一部を担っていて、情緒や感情といった“こころ”とも関係が深い臓器です。心の機能が充実していると精神状態が穏やかで、情緒が安定し、思考能力も活発になります。

 

脾・・・

消化に関わる機能すべてを含んだ臓器です。食べたり飲んだりしたものを、体の役に立つエネルギー(気)に変える役割があります。また、血を脈外に漏さないようにする働きや、味覚をはじめとする口の生理機能を維持する働きもあります。

 

肺・・・

肺は呼吸を行ないます。きれいな空気(清気)を体内に取り入れ、汚れた空気(濁気)を体外に出す働きがあります。

また、皮膚や口、鼻などの体表面に細菌やウィルスや有害物質などから体を守るエネルギーのバリア(衛気という気)をはりめぐらせて感染症から守る働きもあります。

 

腎・・・

腎には体内の水分代謝をコントロールして不必要な水分を尿として排泄させる作用があるほか、成長・発育・生殖・老化に深くかかわる“精”を蓄える臓器でもあります。

 

精とは・・・

体を構成する栄養物質や生命エネルギーの総称です。腎に蓄えられて、人の成長・発育を促進し、性行為・妊娠・出産などの性機能や生殖機能を維持する働きがあります。

そして、気・血が流れる通路として人体の上下・内外を貫いて五臓六腑を交流させている通 路のことを“経絡(けいらく)”と呼びます。

中医学には神経という概念がなく、経絡が循環・伝達系の役割を果たしているといえます。

経絡は、東洋医学独特のもので西洋医学(現代医学)にはその存在はいまだ確認はできていません。

しかし、胃の経絡上の経穴に刺激を与え、レントゲンを撮ると胃の働きが活発になることが分かっております。ただ、先程述べたように経絡そのもの自体、科学的に見つけられないのですが、存在はしているので、経絡上のツボに刺激を与えた事により胃の活動が活発になった事が見つけられております。

経絡とは、体の各部をくまなく流れる気・血・水の通路であり、ツボとツボを結んだ線でもあります。それらは、体内に深く入り臓腑と連絡していて、全身の機能を正常に調節する働きがあります。

 

中医学では、人体は“気・血・水”がスムーズにめぐって、必要なところに必要なだけあり、五臓六腑が正常に機能している状態を“健康”と考え、どこかのバランスが崩れた状態が“病気”と考えます。

鍼灸治療は、崩れたバランスを整えることを目的とした治療法なのです。

バランスを崩す原因(病因)には、外因・内因・不内外因があります。外因とは、外界の環境因子(気候の変化など)、内因は感情や精神状態など、不内外因は食生活や過労などの生活習慣のことです。

これらの病因が、気・血・水のバランスを崩し、五臓六腑の働きを失調させることで病気になると考えます。

中医学独特の診断方法で、何の病因で、気・血・水のいずれが、どのようにバランスを崩し、五臓六腑のどの臓器が、どのように失調したかを見極め(これを弁証といいます)、治療方法を決める(これを論治といいます)ことを“弁証論治”といいます。

では、欠乳について、弁証論治別(タイプ別)に説明したいと思います。

 

気血両虚型

母乳の源になる気・血の不足した状態です。母乳は水様、乳房は軟らかく、張った感じはありません。息切れ、精神疲労、めまい、動悸、顔色がすぐれないなどの症状を伴います。

(治療方針)補益気血・・・

不足した気血を補う治療です。気血を充実させて乳汁の産生を図ります。

脾胃虚弱型

脾と胃は、飲食物を栄養にかえて生命活動の基礎を作ります。虚弱してしまうと全身を栄養できなくなり、乳汁の産生ができません。乳房は軟らかく、腹脹、食欲不振、息切れ、精神疲労、倦怠、無力感、下痢といった症状を伴います。

(治療方針)健壮脾胃・・・

脾と胃の機能を回復させ栄養の充実を図り、乳汁の産生を促します。

肝鬱気滞型

肝には“疏泄”という気血の循環を促進させる働きがあります。気血が全身を巡っていれば身体は正常に機能します。しかし、感情の乱れや、ストレスを受けることで機能が低下すると気血の渋滞を招きます。乳房の気血の渋滞が、欠乳となります。

乳房は脹痛(脹満感を伴った痛み)があり、胸脇部の脹り、食欲不振、抑鬱といった症状を伴います。

(治療方針)疏肝解鬱・・・

鬱滞した気の流れを改善し、通乳を図ります。

肝気犯胃型

肝鬱気滞により胃の働きに影響が及んだ状態です。胃には水穀を受納し腐熟させる(飲食物を消化吸収し全身に栄養源を運搬する)働きがあります。この働きが低下すると気血の化生に影響し、母乳の産生が出来なくなります。乳房の脹痛、胃の脹満・つかえ、脇肋痛、食欲不振、ゲップがすっきり出ないとった症状を伴います。

(治療方針)疏肝和胃・・・

肝の疏泄を調節すると同時に胃の機能を改善し、乳汁の産生を図ります。

以上のように、現代医学と中医学とでは“欠乳”という症状の捉え方が異なります。

違った角度から人体を見つめているので、現代医学とは違ったアプローチで治療が行えるのが中医学であるといえます。

 

食事療法≫

気血を増す食物の摂取は、増乳を促す事になります。

下記の様な食物を摂取することにより、より栄養素の高い母乳の生産を手助け致しますのでご参考までにどうぞ。

(気を補う作用のある食べ物)

旬の青魚

・・・

秋は“さば、さんま、いわし”

いも類

・・・

さつまいも、里いも、じゃがいも

その他

・・・

きのこ類、豆類、穀類、ごぼう、人参、根菜類

 

(血を補う作用のある食べ物)

豆類

・・・

黒豆、大豆、小豆

種実類

・・・

松の実、くるみ、ごま、栗

魚介・海草類

・・・

しじみ、あさり、かき、わかめ、昆布

その他

・・・

ほうれん草、長いも、うなぎ、レバー

昔から、“もち米(おもち)”は産前産後に良い食品とされています。

 

欠乳”には様々な原因があります。経験豊かな助産師さんに相談することも大切なことです。乳房マッサージはとても有効な方法です。

 

母乳は、赤ちゃんにとってバランスのとれた最高の栄養源です。

また、先にも述べましたが、母乳を与えることは、赤ちゃんのみならず、お母さんの子宮の働きを回復させるのに大切なことでもあります。そして、何よりも母子を密着させて愛情を育む大切な時間となります。

 

中医学鍼灸は、一般的な局所治療鍼灸と異なります。

症状のタイプ別や、細かい体質、或いは症状の起因を見極め手当をおこなうところに大きな特徴があります。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

当院での治療をお考えへの方へ

 

= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

 

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。

これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

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