コラム

2019/03/11
【内科疾患】発熱4~中医学臨床編2

4.「肝鬱による発熱」

《病因・病機》

肝の生理で述べましたが、肝はストレスに弱い臓器でした。ストレスが加わることで、気鬱が起こり、次いで気鬱が火になる「気鬱化火」が起こり発熱を発症いたします。

 

《誘発原因》

情志の変化で誘発されます。

《症状》

〈主症状〉

イライラなどの精神状態で発熱する・・・

 

肝鬱化火の症状です。(詳しくは肝の生理を参照してください。)

 

〈随伴症状〉

イライラ・起こり易い・・・

 

気をスムーズに流す働きである「肝の疏泄作用*」の失調により「精神活動の調整**」が出来なくなって起こります。

(肝の疏泄作用*精神活動の調整**:肝の生理を参照してください。)

胸や脇の張った感じ・乳房の張った痛み・・・

 

肝鬱により気の渋滞が肝と関わりのある「経絡*」に起こり、発症します。(詳しくは「経絡*」を参照してください。)

月経不順・生理時の痛み・・・

 

肝の失調により肝の作用である血流量 の調節が出来なくなっておこります。(詳しくは肝の生理を参照してください。)

ノドが乾き冷たい飲み物を欲する・・・

 

熱が体内の水液を損耗して起こります。

顔が紅い・・・

 

熱が顔まで昇って来ている状態です。

便秘・・・

 

熱が体内の水液を損耗して腸を潤せなくなって起こります。

尿は紅っぽいか黄色・・・

 

熱が膀胱などへ下注すると起こります。

《治療》

治療は「理気解鬱」「清肝瀉火」といい、肝の火をしずめて、疏泄を改善し鬱滞している気を流す治療を行います。

ツボ:太衝・行間・風池・曲池・合谷・など

漢方:丹梔逍遥丸・羚角鈎藤湯・天麻鈎藤湯・大定風珠・竜胆瀉肝湯・越鞠丸・炙甘草湯・など

 

 

5.「オ血による発熱」

《病因・病機》

オ血とは、血が滞ってしまっている状態です。このような状態でいると気血の流れが妨げられて鬱滞を起こし、更に熱化し発熱を発症します。「オ血」は気滞・外傷・出血などにより引き起こされます。

《症状》

〈主症状〉

午後や夜間に発熱・・・

 

オ血の病は血にあります。血は陰に属します。陰の病は午後や夜間に発症しやすい特性があります。(詳しくは、陰虚の症状を参照してください。)

固定痛・・・

 

オ血の特徴です。血の滞りがある場所に痛みが発症します。

サメ肌・・・

 

皮下の経絡にオ血があると、その表皮まで血が循環されなくなり起こります。

 

〈随伴症状〉

顔色がどす黒い・・・

 

オ血があるため顔面 の表皮まで血が循環されなくなり起こります。

ノドの乾き・・・・・・

 

体内に鬱熱があるためノドが潤せずノドの乾きが生じます。

月経血や出血は紫暗色で血塊がある・・・

 

紫暗色は血液循環の悪い特徴で、さらに進むと血塊が生じます。

《治療》

治療は「活血化オ」「行気通絡」と言い、滞っている血を流し、更に、気も流して経絡を通 す治療を行います。

ツボ:合谷・三陰交・膈兪・内関・太衝・など

漢方:七厘散・温経湯・清営湯・など

 

以上が病因の分類による発熱の説明になります。

 

さて、発熱の中に「潮熱(ちょうねつ)」と表現される症状があります。

「潮熱」とは東洋医学独特の考え方で、臨床においてもよく見られる症状ですので簡単に紹介しておきます。

 

★潮熱★

「潮熱」とは、あたかも潮の満ち引きの様に、規則正しく、いつも同じ時間に発熱が起きたり、熱勢が強くなる症状をいいます。

一般には午後に多く発熱し、【陽明潮熱】【陰虚潮熱】【湿温潮熱】などがよく現れます。

 

 

【陽明潮熱】

午後3時~5時の間で熱が高くなります。この時間帯は「日晡」と呼ばれることから、「日晡潮熱」とも言われます。

外因の熱邪が胃腸(陽明)*にこもり、体内や体外を蒸らすことにより発熱します。

腹部の張ったような痛み・乾燥した便・などが特徴です。

[胃腸(陽明)*:経絡の説明で正経12頚経というのがありました。これは経絡のなかで一対ずつ内臓と深い関係のある経絡のことでした。このなかで胃と大腸に関係の深い経絡を陽明経といいます。]

この時間帯は陽明経の気が旺盛になり、陽明経の「正気**」と外邪で「邪正闘争***」が起こるために、毎日この時間に熱勢が強くなります。

(正気**は「気」の説明の「正気」を、邪正闘争は「外感発熱」を、参照してください。)

 

 

【陰虚潮熱】

午後もしくは夜間に発熱することから「午後・夜間潮熱」とも言われています。又、朝には熱は下っているのですが、午後や夜間になると再度発熱を起こします。

発熱はそれほど高熱ではなく(38℃位)、頬が紅潮したり、手の平や足の裏のほてり、寝汗、などが特徴です。「陰虚潮熱」とは先程説明した「陰虚による発熱」のことですので、詳細については「陰虚による発熱」を参照してください。

 

 

【湿温潮熱】

午後の発熱が顕著に現れます。又、高熱がでることもあります。患者さんは熱感を訴えますが、他人が手で触っても最初はそれほど熱はありませんが、しばらくすると著しい熱感を覚えます。

主に外因の中の湿邪・熱邪が脾胃に影響して起こります。

悪心・嘔吐・食欲不振・泥状便・頭や体が重い・といった特徴があります。

湿熱が体内にこもってしまい、陽気の流れを阻滞させてしまいます。その結果 、熱が体外に発散できず発熱します。

 

以上が「潮熱」の説明になります。

先程も述べましたが、「潮熱」は臨床上よく見る症状ですが、東洋医学独特の考え方をし、西洋医学には無い概念であります。

このような症状の患者さんが病院へ行くと、医師からは「ただの風邪でしょう」と言われ風邪薬を処方されたが、何日か服用しても症状が改善されないといった話をよく耳にします。

 

さて、発熱について説明してまいりましたが、ご理解していただけましたか?皆さんに一番わかっていただきたいのは、一口に「発熱」と言っても病因によって、ツボや漢方薬の処方が違うという点です。

中医学には「同病異治・異病同治」という言葉があり、同じ病気であっても患者さんの体質や病状で治療や処方が違うこともあれば、異なった病気であても同じになることもあります。まさしく患者さん個人個人に合わせたオーダーメイドの医学です。

ですから最近TVや雑誌でよく「○○○には、このツボが効く」とか「○○○には、この漢方薬がいい」などと言われていますが、本来の中医学はそのような単純なものでは決してありません。それらはあくまで対処療法的なもので、根本からの治療には残念ですがなりません。

以上が、中医学(東洋医学)の診立てによる発熱の説明です。ご理解いただけましたでしょうか?

 

さて、次にご家庭で簡単に作れる解熱効果のある家庭薬・健康飲料・薬酒を紹介したいと思います。

 

 

★★家庭で作れる解熱効果のある、家庭薬・健康飲料・薬酒★★

 

★家庭薬★

昔から伝わる民間療法や家庭薬の中には、ほとんど薬効がなく、おまじないや迷信といっていいものもから、驚くほど効力があり、且つ科学も認める物まであります。

しかしながら、これらの効力の高い家庭薬は材料の入手が困難であったり、手間がかかるものも少なくありません。ですから、ここでは入手も容易で、手間も出来るだけ掛からないものを紹介したいと思います。(尚、出来るだけ数多くの情報を提供したいと思いますので、レシピについては省かせていただきます。もし、興味のある方はご遠慮なさらずに質問をお寄せくださいませ。)

 

◎たんぽぽエキス

タンポポには西洋タンポポと日本産のタンポポがあります。普段、我々が目にしているのは西洋タンポポですが、薬効は西洋でも日本産でも大差はありません。タンポポは解熱の他にも様々な効用があり、漢方薬にも使われています。タンポポとアルコールで「たんぽぽエキス」が作れます。

 

 

★薬酒★

薬酒とは薬効のある原料をアルコールにつけたものです。薬酒のメリットは原料をそのまま摂取するより吸収率が高いことから、少量 で効果が期待できるところにあります。又、お酒の好きな方には、楽しく美味しく飲んでいただけることも出来ます。又、材料をビンに入れておけば後は自然に熟成されるので手間もかかりません。 結構、作り出すとはまりますよ!

 

◎クコ酒

クコは生薬名では「枸杞子」「地骨皮」などと言われ、不老長寿・強壮・強精の薬として有名ですが、実はクコには解熱の効果 もあります。クコの実・氷砂糖・ホワイトリカーで作れます。

 

◎地黄酒

地黄は解熱以外に、貧血や強壮に効果があります。

熟地黄・砂糖・ホワイトリカーで作れます。

(熟地黄:アカヤジオウの根を蒸して乾燥させたもので、漢方薬局で購入できます。)

 

◎しそ酒

しそは解熱の他にリラックス効果もあり、漢方では「蘇葉」と呼ばれています。青じそと赤じそがありますが、薬酒にするなら青じその方がよいでしょう。

しその葉と実・蜂蜜・ホワイトリカーで作れます。

 

◎スイカズラ酒

スイカズラは解熱の他には、感冒・利尿に効果があります。スイカズラの花は漢方では「金銀花」と呼ばれています。

 

 

★健康飲料★

ここ数年、健康食品ブームが訪れています。人は物を食べて、それをエネルギーに換えて生きております。どうせ食べるのなら健康によい物・自分の体に合った物を飲食したいですよね。是非とブームで終わらせず、生活の一部にしていただきたいと願っております。

 

◎クズ湯

クズ湯の解熱効果は改めて言う必要がないくらい有名ですね。クズを漢字で書くと「葛」です。どこかで見覚えのある漢字ですよね。実はクズは有名な漢方薬「葛根湯(かっこんとう)」の主原料なのです。クズ粉・ひねしょうが・砂糖で作れます。

 

いずれも解熱効果に優れ、入手も容易だと思います。興味がある方でレシピ等に質問がある方は遠慮なさらずにご質問下さいませ。

 

 

 

さて、冒頭でも述べましたが「発熱」は重大な病気のサインであったりします。ところが誰しも発熱して直ぐに病院へ行く方は少ないでしょう。中には発熱ぐらいで病院へ行くのは恥ずかしいと思い込んでいる方もまだいるようです。又、発熱が長引いた場合にどのタイミングで病院へ行けばよいのか迷う方も多いと思います。そこで最後に病院へ行ったほうがよい状況について挙げておきます。

 

☆お医者さんに相談した方がよい状態とは☆

もし下記の様な状態になってしまったら、医師に相談された方がよろしいと思います。

 

1.生後3ヶ月~1歳のお子さんの発熱が24時間以上持続した時。

2.薬等を服用して1~2時間たっても39℃を超えている時。

3.2日たっても発熱が収まらない時。

 

以上が「発熱」についてになります。

発熱といっても様々な体調のアンバランスから来ることが多いと言うことを今回の内容で学習・ご理解して頂ければ有り難いかと思います。

又、発熱にはその起因によって、単に解熱剤を服用すれば済むということではないという事もご理解して頂ければと思います。

なかなか発熱の症状が改善されない場合は西洋医学的なアプローチだけを試みるのではなく、中医学(東洋医学)に詳しい所へご相談されることも大切かと思います。

ただし、東洋医学と言っても、中医学を行っている所でなければ、タイプ別 の起因判断は行えないかと思いますので、この点もご留意くださいませ。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 

2019/03/11
【内科疾患】貧血1~西洋医学編~

貧血は、いまやとてもポピュラーな病気です。

世間では、安易に貧血には鉄剤が良いと謳われ、コンビニでも鉄剤のサプリメントが売られていますね。

しかし、素人判断で済ませてしまってはいけません。自覚症状は感じ方に個人差がありますし、どのような 原因から貧血症状がでているのか分からないからです。安易に鉄剤を飲んでも、それをきちんと吸収し 血にかえていく力がなければ、無駄になってしまいますし、重大な病気が隠れていることもあるのです。

根本的な原因をきちんと把握し、それに合った対応をしていきましょう。

 

《西洋医学的考え方》

貧血の症状は、めまい・立ちくらみ・疲れやすい・眼瞼や爪床の蒼白・頭痛などです。

 

これらの症状は、酸素供給の役割を担っている血液中の赤血球やヘモグロビンが減少し、そのために 体内の細胞が酸素欠乏状態になることで起こります。その原因となる疾患は沢山の種類があります。

 

○貧血の血液検査

貧血の診断のための血液検査では、主に以下の項目を調べます。

・赤血球の数: 酸素を運ぶ主役の赤血球。

 

正常値は、1mml中に、成人男性で450万〜530万個、女性400万〜480万個。

 

検査値が男性450万以下、 女性400万以下だと貧血と診断されます。

・ヘモグロビン

 

正常値は、1dl中、男性14〜18g、女性12〜16g。

 

貧血は男性12g以下、女性10g以下。

・ヘマトクリット値

 

一定量の血液中に存在する赤血球の容積の割合を示した数字。

 

正常値は、男性で40〜50%、女性で35〜45%。

 

貧血は男性35%以下、女性30%以下。

・血清鉄

 

血清中にある鉄分で、肝臓や脾臓で貯蔵された鉄を骨髄に運んでいる状態のもの。

 

正常値は血清100mlあたり 80〜12μ g。

 

鉄欠乏性貧血ではこの値が減少しています。

・フェリチン

 

血清中にあるフェリチンは鉄と結合することのできるタンパクで、貯蔵鉄の減少があるかどうかがわかります。

 

○貧血の原因となる疾患について

☆鉄欠乏性貧血

 

貧血全体の約7割で最も頻度の高い貧血ですが、治りやすい貧血でもあります。

 

鉄欠乏性貧血の原因としては以下の事が考えられます。

 

1・

食生活での鉄不足

 

成人男性や閉経後の女性が1日に必要とする鉄の量 は1mgです。

ただし食事から鉄分を摂っても消化管からの鉄吸収率が約10%なので、食事から10mgの鉄を摂らなければなりません。

さらに成長期(14〜16歳)の男性や、生理のある女性は12mg、妊婦さんは18mgくらいの鉄が必要となります。

 

飽食の時代と言われる現代の日本では、普通に食事をとっていれば鉄分量 は足りるはずなのですが、一人暮らし等で食事が偏っていたり、また一般 の家庭でも好きなものしか食べさせなかったり、インスタント食品に頼りすぎていたり、また若い女性では無理なダイエットをしていたりと、意外にも食生活の不摂生から貧血になる方が多いようです。

また生理による出血や妊娠中はどうしても不足がちになります。

 

このような場合には、なるべくサプリメントに頼らずに食事で改善していきましょう。

お勧めの食品については、後半にあげてありますので、ご参考にしてください。

それと同時に胃腸の調子を整える事も大切です。

 

2・

鉄がうまく吸収できない

 

食事に含まれる鉄分は消化され主に十二指腸から吸収されます。健康な人の鉄吸収率は10%程ですが、 消化器の病気などで鉄の吸収がうまく行われない場合があります。

また胃を切除すると鉄分の吸収に必要な内因子が欠如するため吸収率が悪くなります。

 

3・

慢性的な出血

 

慢性的な出血とは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸がんなどの消化管の疾患や子宮筋腫などにより継続的に少しずつ出血していることをいいます。

少しずつの出血であるため顕著な痛みもなく、気づかないうちにに血液を失っているわけです。

生理も毎月の出血であるので、この慢性的な出血に当てはまります。

生理では月当たり平均40mLの出血があり、鉄として20mgの損失になります。

 

生理のない成人男性や閉経後の女性が鉄欠乏性貧血になった場合は、何らかの病気によって出血が起こっている可能性が高く、病院で検査を受けてみる事をお勧めします。

 

☆ 妊娠による貧血

妊娠をすると母体だけでなく胎児にも栄養と酸素を与え続けなければならず、それだけ多くの血液が 必要となります。しかし妊娠すると「つわり」で食欲がなくなるなど、鉄不足に陥りやすくなります。

また妊娠中期以降は、胎児の急速な発育に伴って鉄の需要が増えますから、より注意が必要です。

妊娠中の貧血は、母体にも胎児にも悪い影響を及ぼします。

最近は妊娠検診が実施されるようになり、貧血が発見されやすく早期にに治療を行うことができるため、 重篤な問題は減少しています。

 

☆専門医の診察が必要なもの

以下に上げる疾患は専門医での詳しい検査や治療を必要とします。

・再性不良性貧血

・溶血性貧血

・悪性貧血

・ビタミンB12・葉酸欠乏症

・白血病

 

いずれの疾患も病気が進行してくると、単なる貧血症状以外に心配な自覚症状が現れてきますが、初期にはあまり自覚がないようです。

初期治療は有効ですから、安易な自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。

 

☆慢性の病気によるもの

以下に上げるような慢性疾患でも貧血症状は起こります。

まずは原因疾患の治療がされますが、いずれも長期に渡る治療が必要となります。

・肝臓病

・腎臓病

・慢性関節リウマチ

・膠原病

・悪性腫瘍(癌)

 

☆脳貧血について

脳貧血とは小学校の朝礼などで長時間立ち続けていると気分が悪くなって倒れたりする症状を いいますが、これは本当の貧血とは違います。貧血は赤血球数やヘモグロビンが減少しますが、 脳貧血の場合は血液を調べても正常で問題はありません。

気分が悪くなって倒れてしまうのは、立ち続けていると重力によって血液が足のほうへ下がってしまい、 脳に血液があまりいかなくなったためです。つまり脳貧血とは、血液そのものの問題ではなく、 脳への血液循環がうまくいかずに脳が酸素不足を起こしてしまった状態です。

 

2019/03/11
【その他】梅核気について

梅核気

 

ヒステリー球、神経性咽喉頭部狭窄症ともよばれています。

 

症状として本人は咽喉に梅の種のようなものがあり、飲み込もうとしてもできないし、吐き出したくてもできません。病院で検査して何も見つからないため、理解してもらえない場合が多いようです。

 

この病気は現代人特有の病気ではなく、すでに何千年前からこのような症状の病気が古典に残っています。中医学で『金匱要略』という有名な古典に次のように記載されています

「咽中如有炙肉、呑之不下、吐之不出。常兼見胸脘痞悶、気鬱不暢、呃逆悪心・・・・・」

(つまり、咽に炙ったようなに肉がついていて、飲み込めないし、吐き出せない、また胸部あたりに硬く痛くて、精神的うつっぽい、悶々とした気分、よくゲップをしたり、気持ちがわるいといった症状があります)

 

どういう人がなりやすいか?

基本的に女性が多いといわれていますが、実は男性もいます。性格は人に対してすごく気を使う人、神経質の人、人間関係を悩む人、細かい人、心配性の人です。

 

 

中医学では、「肝鬱気滞痰凝、咽部痰気互結」によって起こった病気と考えられます。気が長い間に鬱滞していて、痰が生じて、そこで、痰は気と一緒に経絡を沿って咽喉に留めています。すなわち、人体の臓腑の「肝」、「脾」の失調と病理物質は「気」の行き詰まりと「痰」の生成によるものです。

 

 

まず、肝の生理機能;

1.蔵血;肝は貯蔵と血量の調節の働きがあります。人が動いている時、血液は全身各所に分布し、正常活動ができるようになります。休みや睡眠しているとき、血液が肝に戻って貯蔵されます。

2.疏泄;全身の気機をスムーズに働きます。

(1)

気機の疏泄作用;人体の気血、経絡、臓腑、器官の活動は主な気機の働きによるものです。

例えば、胃腸の消化作用を助けしたりします。肝は気の昇降出入を調節する作用を持っています。この調節作用が正常に働くと体全体がスムーズに活動できます。

(2)

胆汁の分泌と排泄

(3)

精神情緒の変化;肝は精神活動を調節する働きがあります。

 

肝の疏泄作用が失調すると、気機が鬱滞して、病理現象を起こします。その原因は外からの刺激によって、怒りを覚えたり、自分の情志抑鬱によるものです。

症状は胸脇脹れている感じして痛い、ため息、胸悶、イライラ、食欲がない、頭がめまい

 

「脾」の生理作用;

(1)運化;食べた飲食物を消化し、吸収して、それを全身に運びます。運化は2つの働きに分かれています。

1.水穀の運化;飲食を消化し、吸収することです。この働きは胃と小腸との共同作業が行われます。体全体に栄養分を万遍なく届けて、体が正常に活動できるようにするためです。

2.水液の運化;水液を運化する。肺、腎と共同で体内の水液のバランスを維持しています。もし、脾が弱ってくると、水液の代謝が悪くなって、体にいらない水分が溜まりやすくなります。いわゆる、浮腫、痰飲などの疾患になります。中医学では、痰の発生する源は「脾」といわれています。

 

(2)昇清;脾気は上に昇るという働きがあります。吸収した栄養分を頭、脳などを含めて全身に届けるためです。

 

(3)統血;脾は血を血脈から漏らさないようにする働きがあります。

 

「気、血、津液」について

人体は気、血、津液によって生命活動を維持するため不可欠の物質です。

 

「気」とは、エネルギーのこと。このエネルギーはわれわれの体の中にいろいろな働きによって、臓腑経絡の活動とお互いの協調関係を維持しています。

気の働きといえば、

1.

推動作用;各臓腑、経絡の整理活動、血液と津液を全身に輸送します。

2.

防御作用;体を保護し、外からの邪気の侵入を防いで、侵入した邪気を追い出します。

3.

温煦作用;体の体温を正常に維持します。

4.

固摂作用;汗や尿の排出をコントロールします。

5.

気化作用;精、気、津、血のお互いの化生の働きがあります。

気の運行が悪くなると、気滞を起こします。

その原因は

外からの寒邪、感情的な失調、飲食の不摂生、外傷、体の余分な水また血瘀による経絡の行き詰まりです。

 

 

「血」とは、脈管を流れている赤色の液状物です。

血の働きは、吸収した栄養分を皮肉筋骨と全身の組織、器官に供給して、潤います。

 

「津液」とは体内の中にある様々な水液のことを言います。

例えば、唾液、涙、鼻水、汗また尿のことです。

 

痰は臓腑の機能が低下しているときに、体の水液代謝に障害が起こって、発生した病理的なもの。

痰には有形のものと無形のものがあります。有形の痰は気道から吐き出されます。無形の痰は臓腑経絡中に停滞している痰のことです。

 

 

では梅核気はどんな症状がありますか?

症状;咽喉に何か詰まってるものがあって、飲み込めなくて、吐き出せない

   イライラ、怒りっぽい、胸脇脹痛、ストレスで症状が悪化する

   痰が多い、便は柔らかい、体が重だるい、浮腫

 

舌診;舌苔厚膩   脈診;弦また滑

治則;疏肝解鬱、健脾化痰

(肝の働きがスムーズにして、滞っている気を解けさせます。脾の機能を強めることで痰をなくして、生成するのを防ぎます)

 

予防;個人の性格的の所と関わることがあるので、すぐ変わるというのは難しいかもしれませんが、日常生活に心を掛けることで、少しずつ変えていくことは大切です。常に、一人で悩みを抱え込まないようにしましょう。

食事面では、刺激のある食べ物をなるべく避けることが大事です。刺激の食事とは、唐辛子、にんにく、たまねぎ、揚げ物、脂っこいものなどです。

 

2019/03/11
【内科疾患】貧血2~中医学編~

《中医学的考え方》

さて、中医学では貧血をどのように考えているでしょう。

病名としては「貧血」に一致するものはありません。

なぜなら、中医学では人体をみる時、西洋医学のように細かく分析して検査の結果 からみるのではなく、全体をとらえてみますから、血液検査の値だけが異常であるという病気はないのです。

血の不足ということだけで考えると「血虚」に近いのですが、イコールではありません。

血虚は何らかの原因により、「血」が不足したり、働きが悪くなって起きる病態と考えますから、血液検査の値が正常でも「血虚」という状態は有り得るのです。

 

この話は後半で詳しく述べますが、その前に中医学の根本的な考え方について、簡単にお話しておきます。

 

中医学では身体のみかたが根本的に西洋医学とは違います。西洋医学では身体を細かく分析し、細胞レベルでとらえますが、中医学では身体を大きく捉えて、小宇宙であると考えます。地球は大宇宙に存在する小宇宙の一つです。これと同じように地球からみれば、身体は小宇宙といえるのです。宇宙に存在するものにはすべて意味があり、無駄 なものはひとつもありません。それぞれが、互いに影響しあいながら、バランスを保ち、大自然の法則に従って動いているのです。人間も同じように体内に存在するものすべてが 重要な意味を持ち、個々の臓器も互いに影響しあいバランスを保って、健康を維持しているのです。

 

小宇宙である身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・水』です。

気・血・水が、身体を流れ良く巡る事で、身体内の臓器(五臓六腑)も、うまく働くことが出来るわけです。

それぞれの働きについて、少し詳しく説明していきましょう。

 

1・「気・血・水」について

「気」というのは、気持ちの気と同じような意味合いもありますが、中医学では、活力という意味であり、血脈の流れを推進し、臓器組織の活動を促進すると考えます。

 

気という言葉は日常生活の中でも使っていますね。例えば気が短いとかやる気が無い等々。

しかし、気とは何かというと、大抵の人が説明出来ないのではないでしょうか。目に見えないから信じないという人もいるくらいですが、そういう人でも「やる気」が出る事はあるだろうし、「気が向かない」時よりずっと物事が捗るなどという経験はあるでしょう。

 

中医学では気を大変重要な要素として認識しております。

気にはいろいろな作用があります。

血液の循環をよくする為に血液を押し流して、血流を良くする手助けをしたり、体が冷えないように暖めたり、ウイルスや細菌等が体に入り込まないよう防衛してくれたりしているのが気の作用なのです。

気はいつも充分に体に存在しているわけではなく、普通に生活しているだけでも消耗されてしまいます。

ですから、正しい食事・正しい呼吸をして補う必要があります。気の働きが弱くなった状態を気虚といい、疲れやすい・動くと症状が悪化する・身体が冷える・感染症にかかりやすい等の症状が出ます。

ウイルスや細菌等に感染し易くなり、体が冷えたり、血液の流れが悪くなったりします。

また気はストレス等によって容易に動きが悪くなり、滞ってしまいます。この状態を気滞といいます。

ため息やゲップ、ガスが多い等などの症状がでますし、気が滞ると、血の流れも悪くなり、血の働きにも悪影響がでます。

 

「血」は西洋医学で言う血液とは違い、広い働きを持ち、全身を栄養する働きだけでなく、精神活動も支えていると考えます。血の不足で起こる症状には、めまいなどもありますが、不眠・不安・などもあります。

また、血が滞ると血オという状態になり、オ血という病理産物が発生します。

オ血は固定性で激しく刺しこむような痛みを起こします。

女性では生理不順や生理痛、生理の出血にレバー状の塊が出る事等があります。

 

「水」は身体をうるおす水分の事です。これらは飲食から得られ、臓腑で消化吸収して作られていきます。

正常な水分が変化し、停滞すると湿という病理産物を生成してし、体がむくんだり、体が重い、めまい等を起こします。

 

気・血・水は『経絡』という、人体の上下・内外を貫く道筋によって流れ、全身を栄養したり、臓器の機能を調節したりしています。健康な状態では、経絡は全身を滞る事なく流れています。

 

気・血・水が、身体を流れ良く巡る事で、身体内の臓器もうまく働くことが出来るのです。

 

 

2・「五臓六腑」について

五臓とは肝・心・脾・肺・腎、六腑とは胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の事をさしますが、西洋医学でいう臓器とは違います。

 

それぞれの臓器は、特有の働きがあり、さらにお互いに協力しあい、制御しあいながら、バランス良く健康を保っていると考えます。

西洋医学に比べると、個々の臓器の機能以上に、それぞれの関連性について重要に考えています。

例えば、肝臓にとって良い薬でも心臓には負担になってしまうというような事もあるわけですし、個々の臓器だけをみるのではなく、身体全体をみてバランスを大切にしなくてはいけません。

 

さて、小宇宙である身体の働きの主になっているのは、「臓」である 肝・心・脾・肺・腎 です。

「腑」は「蔵」にタイアップしながら、従うような働きをしますので、ここでは割愛させていただいて、「五蔵」の働きについて、説明しておきます。

 

・肝:

全身の気の流れを良くし、各器官の働きを助けます。

血を蓄えているので、貧血には関係深い臓器です。

筋肉の働きや精神活動にも関係しています。

肝の働きが悪くなるとイライラと怒りやすくなったり、

目や疾患・生理痛・手足のしびれ等を起こす事があります。

 

 

・心:

血の循環をしています。

精神活動に関係し、五臓の働きをとりまとめています。

働きが悪いと、動悸や不眠・舌の先が赤く痛んだりします。

 

 

・脾:

食べたものをエネルギー(気・血・水)に変え、身体の機能を活発にします(運化作用)。

この働きが悪くなると、活力不足で疲れやすくなり、下利しやすくなります。

血を脈外に漏らさないようにする働きもあります(統血作用)。

この働きが低下すると、内出血しやすくなります。少しぶつけただけでも青あざが出来ます。

 

 

・肺:

呼吸することにより、気を全身に巡らし、水分の調節をします。

汗腺の働きにも関与し、皮膚の状態にも関係します。

この働きが弱くなると、呼吸器疾患・鼻炎・などを起こすというのは分かり易いと思いますが、蕁麻疹などの皮膚科疾患も肺の働きに関係しています。

 

 

・腎:

生命力の源、先天の「気」を蓄えています。骨や髪・耳と関係します

成長や生殖能力に関連深く、年齢と共に変化します。

女性では、月経や妊娠と関係します。

腎のエネルギー(先天の気)は、脾から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

腎の働きが弱いと、元気がない・不妊・生理不順・腰痛・冷え症などになります。

加齢と共に腎の働きは弱くなっていきますから、骨が弱ったり、髪がぬ ける、耳の聞えが悪くなるなどの症状がでてきます。

以上の五臓がバランス良く働いてくれるように調節してくれているのが、

「気・血・水」です。

 

中医学の場合は、症状と、どの「臓」の気・血・水の働きが失調し、関係しているかを分析し見極める事が、中医学的診断となり、治療方針をたてていくことになります。

 

 

さて、ここから本題の貧血についてのお話になります。

 

中医学では貧血に現れる症状を、血液検査に頼らずに、どのように把握していくのでしょうか。

身体全体をみる学問ですから、いろいろな方法でみていきます。

 

西洋医学の病院に行き、診察室に入った後のことを思い出してみて下さい。

お医者さんの視線はどこにありますか? 最近ではコンピューターの画面 を主に見ながら、患者さんの訴えを耳だけで聞くというパターンも多いようですね。

 

中医学では、その人を全体的に診るわけですから、患者さんに目を向けてお話をします。

診察室に入ってからの歩き方や、椅子への座り方、話のしかた、体臭等にも、その人の体調を表す メッセージが沢山含まれています。患者さんの感じている主訴以外にも問題点はないかどうか、診る側も五感を駆使して探っていくのです。

その上で、患者さんの訴えをよく聞き、問診をしていきます。

 

今回のテーマである貧血に関していえば、他覚症状として重要なのは、

「顔色」・「舌診」・「脈診」です。

 

「顔色」が青白いような時はかなりな貧血になっていると考えてよいでしょう。

一般的には眼瞼結膜(まぶたの裏側)をめくって、白いかどうか確認するようですが、最近では アレルギーやコンタクトレンズによる炎症で赤くなっている場合も多いので気をつけましょう。

 

「舌診」は中医学独特のものと考えていらっしゃるかたも多いようですね。

もちろん医学的理論体系がきちんとしているのは中医学ですが、日本でも昭和初期のお医者さんは舌を診察しました。

なぜなら舌はその時の病態を良く表しますし、内蔵の調子やストレスがあるかどうかなど、数カ月前からの体調も類推出来るからです。

戦後、西洋医学が主流となってから医学を学んだお医者さんは、なぜか舌の診察をしなくなってしまいました。検査によって病気が判明しやすくなってしまった為かもしれませんね。

 

舌の色や形・苔のつき方などは人によってかなり違うものですし、自分の舌でも毎日観察してみると 体調によってずいぶん違っていることが分かります。

健康であれば色は淡紅色で薄く白い苔があり、形も整っていますが、貧血であると白っぽくなりますし、胃腸の調子が悪いと苔は黄色く厚くなります。ストレスがあると、舌の先が赤くなりますし、他にも沢山の情報を得る事が出来ます。

 

「脈診」は中医学独特のものです。手首にある橈骨動脈に触れてみて、その人の病態を伺うのですから、知識はもちろん経験も必要です。

脈の速さや強弱・流れ方・脈管の柔軟性などから、患者さんの健康状態を把握します。

なぜ分かるのかというと、先に説明しました「血」は「気」の働きによって押し流されているわけですから、「血」の流れる状態を診れば、その人の「気・血・水」の状態を伺い知ることができる・というわけなのです。

つまり身体のどこかに問題が起きれば、「気・血・水」に影響が及び、「血」の流れ方に現れるという事になります。

 

脈の流れ方は体調によってずいぶん違います。

健康な時でも走れば変わるくらい変化しやすいものなのに病態がつかめるのかと、疑問に思われる方も いらっしゃるかもしれません。そんな方は是非試しに、ご自分の脈に触れてみて下さい。

例えば安静にして横になっている状態でも、健康な時と病気の時では全然違います。

分かりやすいのは痛みがある時とか、発熱している時です。痛みがある時は緊脈といって張りつめたような脈になりますし、熱のある時は速くて浮いているような脈になります。

 

熟練した中医師や鍼灸師は脈からいろいろな情報を得ます。

気・血・水の状態や五臓のバランス状態、邪気の侵入の有無など、実に細かい事が分かるのです。

針灸治療の後では脈も変化し、治療前より落ち着いた脈になります。

 

以上のようにいろいろな角度から診察をして治療方針をきめていくのが中医学です。

 

 

では次に貧血について症状別にみていきましょう。

 

貧血は身体の栄養分である「血」が不足し、その働きが悪くなっている状態です。

主な症状は顔色に艶がなく土気色・唇や爪の色が薄い・めまい・動悸・疲れやすい・不眠・不安・手足の麻痺・月経が遅れがちなどです。

 

貧血の原因としては、長期的な出血の他に「血」をつくる機能の低下があります。

気血生化の源は「脾」ですから「脾」の働きが弱くなると気血が作られず貧血の状態(脾虚)になります。

この他、「血」に関係するのは「心」と「肝」で、「心」の働きが悪い時(心血虚)とか、「肝」の働きが悪い時(肝血虚)にも、「血」の働きが悪くなります。

さらに気血不足が進んで、陽気も損なわれた状態(脾腎陽虚症)でも貧血症状が現れますので、それぞれの症状と対応について書いておきます。

☆脾虚:気血を作る脾の機能が低下

 

症状:

顔色に艶がなく土気色、めまい、食欲不振、疲れやすい、生理が遅れがち

舌質:淡  舌苔:白   脈:沈無力

 

治療:

健脾益気

脾の機能を高め、気血を増やす作用のあるツボをつかいます。

 

食品:

消化の良いものをとり、油もの冷たいものは避けましょう。

ほうれん草・にら・人参・ナツメ・松の実・梅・木耳・豚肉・牛肉など

(注:植物性食品の鉄分は、ビタミンCと一緒に摂ると吸収が良くなります)

 

☆心血虚:「心」の働きが低下した事による「血」の不足

 

症状:

めまい、動悸、不眠、不安、健忘、よく夢を見る

舌質:淡泊  脈:細弱

 

治療:

補血安神

血を補い血流を良くして、精神的にも安定するようにします。

 

食品:

三つ葉・にがうり・よもぎ・あさり

 

☆肝血虚:「肝」の働きが低下した事による「血」の不足

 

症状:

顔色に艶がなく土気色、めまい、目が疲れやすい、爪がもろい、

毛髪に艶がない、手足のシビレ・ひきつり、月経が遅れがち、無月経

舌質:淡泊  脈:弦細

 

治療:

滋補肝血

肝の働きを補い血の働きを良くするようにします。

 

食品:

あさり・ごま・春菊・三つ葉・キャベツ・しいたけ・小松菜

 

☆脾腎陽虚:気血の不足が陽気を損ない、さらに気血が不足した状態

 

症状:

顔色が土気色、めまい、疲れやすい、寒がり、手足の冷え、足腰が重だるい、軟便、下利

舌質:淡 胖大   脈:沈細

 

治療:

温陽助運

身体を暖めて脾の運化作用をたすける治療をします。

 

食品:

身体を暖めるものをとり、冷やすものは避けましょう。

にら・小松菜・くるみ・黒ゴマ・羊肉・えび

 

以上のように、中医学では、一人の患者さんを全体的にみて、どこに問題があって、どのような進行状態であるのかを慎重に考えて、「証」をたて、治療方針を決めていきます。

患者さんの性格や生活環境も考慮しながら、日常生活のアドバイスをする事もあり、まさに全人的な医学です 。

 

身体に対してはもちろん、心に対しても優しく、学問的にも奥の深い中医学は、幅広くいろいろな疾患に対応することが出来ます。

 

当院では個人個人の体質に合わせた治療を行います。

お気軽にご相談ください。

 

 

◎ 当院での治療をお考えの方へ

 

= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

 

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに慢性化した、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。

これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 

2019/03/12
【その他】肥満・痩せについて

肥胖(肥満)・消痩について

 

肥胖・消痩とは、太り過ぎ・やせ過ぎの事です。

一般的には、食べ過ぎや運動不足から太り過ぎになり、無理な食事制限や病気で痩せすぎになると考えられることが多いようです。

しかし、少食なのに太りぎみの人もいれば、大食いなのに痩せている人もいます。

体質の違いだと言ってしまえば、それまでなのですが、では、いったい何が違うのでしょう。

まず、肥満について考えてみましょう。

単純に考えれば、摂取したカロリーに比べて、消費したカロリーが少ないと、 余分なカロリーが体内に蓄積されていきます。

摂取カロリーが過剰になってしまう原因としては、単なる食べすぎや、味の好みが濃いという事もありますが、精神的なストレスによるものや、摂食中枢の異常による場合もあります。

消費カロリーが少なくなる原因としては、運動不足もありますが、体質的に栄養を活力にかえていく力が弱いという場合もありますし、年齢的に中年以降は代謝が低いということもあります。

外見上、太っていても、その原因はさまざまです。

根本的な原因を治していくことにより、健康的に、適正な体重に近づくことができます。

やせすぎの場合も同様にその原因は何かを考えていくことが大切です。

 

中医学では常に、表面的な症状だけではなく、根本的な原因を重視して治療を行います。

身体の働きのバランスを整えていくことで、健康で活力があり魅力的な身体づくりをしていきましょう。

なぜ、中医学では現代医学と違って、身体全体のバランスを整えることができるのでしょう。

それは、基本的な身体の働きに関する考え方が違うため、おのずと治療法も違っているからなのです。

詳しいことは、病気別わかりやすい東洋医学診断のまとめのページの上段に中医学で考える身体のしくみについて書いてありますので、「わかりやすい東洋医学理論」をご覧下さい。

 

 

今回のテーマで関連深い臓腑について、少し説明しておきます。

 

五臓六腑というのが東洋医学の考える内蔵のことです。

西洋医学のそれとは異なり、中医学では内臓を物体として区別するのではなく、働きで区別 します。

主な働きとして、六腑は飲食物の消化吸収を行い、五臓は栄養分から「気・血・水」を作り、運んだり、貯蔵したりしています。


 

五臓とは「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の事で、六腑は「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」の事です。

各々の臓腑には西洋医学と同じような働きをするものや、全く違う働きをするものもあります。同じ臓腑の名前を使ってはいますが、中医学では臓腑の働きに注目していますので、名前が同じでも、全く同じ物を指しているわけではありません。

 

食物から得た栄養分を肌肉や活力にかえていく作用に関連深いのは、

「脾」・「胃」・「肝」・「腎」です。

「脾」:

「脾」の働きは、飲食物の消化・吸収・代謝、および栄養物質の生成です。

食べ物から栄養成分を吸収し、「気」「血」といった栄養物質を生成し身体全体に運んでいます。また、水分代謝も調節しています。

 

「胃」:

「胃」の主な働きは、飲食物を受け入れ(受納)、初期消化し(腐熟)、小腸に送ること(和降)の3つがあります。

 

「肝」:

「肝」は、全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。

精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。

特に脾胃の働きに影響は受けやすく、食欲不振などを起こします。

また、全身の血液量をコントロールし、蓄える働きもあります。

 

「腎」:

「腎」は、成長・発育・老化・ホルモンバランス・生殖・水分代謝に関係しています。

 

【 肥胖について 】

 

大きく分けて以下の3つのタイプに分けられます。

 

1. 脾胃倶旺タイプ :

脾胃の働きが非常に強く、食欲があり、多食で且つ運動不足の方に多く見られます。

 

主症 : 全身が太る。上腹部の肥満が著明。皮膚を押すと張りがある。

随伴症 : 食欲亢進・多食・顔面紅潮・暑がり・多汗・腹脹・便秘

舌脈 : 舌苔薄黄・脈滑有力

治則 : 清胃瀉火(過剰な胃の働きを整える治療をします)

日常生活 : 過食を防ぐ為に、香味野菜(しそ・セロリ・春菊等)やスパイス(クミン・カルダモン等)を利用しましょう。

全身運動(ジョギング、水泳など)で、汗をかいて気分をスッキリさせると良いでしょう。

 

 

2.脾胃虚弱タイプ :

脾は、胃で消化吸収された栄養物質を活力に変え、全身に栄養を運ぶ作用のある臓器です。これらの働きが弱くなると、代謝が低下するため、少食でも太ってしまいます。

 

主症 : 顔面、大腿部の肥満が著明。肌肉はゆるんでいる

随伴症 : 顔面蒼白・精神疲労・気力がない・疲れやすい・寒がり・すぐに横になりたがる・食欲不振・便秘

舌脈 : 舌質淡・舌苔薄・脈沈細遅

治則 : 健脾益気(脾の働きを良くする治療をします)

日常生活 : 代謝を高め、胃腸にやさしく、「気」を補う作用のある雑穀類がお勧めです。

胃腸の働きを低下させる、冷たいもの・生もの・油っこいものは摂りすぎに注意して下さい。温かく消化の良いものを適量 とりましょう。

運動は、軽いものを無理なく続け、充分な睡眠をとることも大切です。

 

 

3. 真元不足タイプ :

高齢者など、身体がもともと持っている元気が足りないために、体が冷え、むくみを伴う事が多い、水太りタイプです。

 

主症 : 肥満・殿部と大腿部が著明・肌肉はゆるんでいる

随伴症 : 気力がない・動きたがらない・食欲は正常または少食・寒がり・浮腫

舌脈 : 舌質淡・歯痕・舌苔薄白・脈沈細遅

治則 : 健脾益腎(身体を暖め、代謝を良くして元気をつける治療をします)

助気化湿(水分の代謝を良くします)

日常生活 : 腎を養う作用のある黒色の食材(黒豆・黒ゴマなど)をとりましょう。

黒い食材は、ビタミンB群・ビタミンE・良質なたんぱく質を含み、ホルモンのバランスを整え、貧血を改善して血行を促進してくれる作用があります。生もの・冷たいものは出来るだけ避け、身体を冷やさないようにしましょう。 生姜・ねぎ・にんにくなど、体を温める薬味やスパイスを上手に利用して下さい。運動は、疲れが残るほど激しいものではなく、体力に合ったものを選びましょう。よく歩くことも大切です。

 

 

【消痩について】

 

消痩とは、筋肉がやせて体重が異常に減少することを言います。

体型が痩せていても、元気があって、顔色も体調も良い場合は消痩とは言いません。

 

大きく分けて以下の4つのタイプに分かれます。

 

1. 脾胃気虚タイプ:

後天性の栄養不足や、悩み事が多く、脾胃の働きが悪くなることにより生じます。

 

症状 : 食欲不振・やせ・顔色が黄色い・疲れやすい・息切れ・話したがらない・軟便

治則 : 健脾益気(脾胃の調子を整え、栄養分をうまく体に巡らせるように治療をします)

 

 

2.気血両虚タイプ :

過労や病後の失調により生じます。

 

症状 : やせ・疲れやすい・息切れ・話したがらない・めまい・動悸・不眠

治則 : 益気養血(栄養分を筋肉や体力に変える力を補い、気血が増すように治療します)

 

 

3.胃熱タイプ :

辛いもの・熱いもの・甘いもの・脂っこいもの・などの食べ過ぎにより生じます。

 

症状 : 沢山食べてもお腹がすく・のどが渇き冷たいものを好んで飲む。胸焼け・口臭・大便が硬い

治則 : 清胃瀉火(胃の熱を鎮め、食欲や味覚を適正にする治療をします)

 

 

以上のように、中医学では、根本的な原因を見極め、根っこから治していくので、全体的にバランスが良く、活力のある身体をつくっていきます。

 

体調の不良は身体からのメッセージです。その声をむやみに封じこめることなく、根本を見直し、真の健康に近づいていくきっかけにして下さい。

心の底から明るい笑顔で生活することが出来るようになります。

中医学は身体と心に優しい医学です。是非一度ご相談下さい。

 

当院は予約制となります

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