コラム

2019/03/11
【その他】診察シュミレーション・不妊症

<はじめに>

 中国医学は、およそ3000年前に中国文明の発祥とともに生まれ、発展してきた伝統医学の一つです。このころは、近代で使われているような検査機器はなかったため、治療者自身の感覚を通 してのみ、患者の身体が発する訴えを察知してきました。そして身体にあらわれた様々な病気や症状を細かく、色々な角度から観察し、治療方法を生み出し、発展させてきた経験による医学なのです。それは、精密な検査機器が発達した今もなお繰り返し実践が積まれ、発展し、伝承され続けています。

 

○中医学における健康の概念

 中医学では、万人に当てはまる正常値という概念がありません。人も自然の一部であるとする観点からみると、季節の変化を受けて、体も変化していくことは自然なことなのです。そのため年間を通 して、体の状態が一定であるということは考えられず、生活環境や年齢の違いなどにより、バランスの取れた「良い状態」は、人それぞれで異なります。

 健康状態の決め手は、免疫力や抵抗力の源とされる「正気」の充実になります。それは、「気」「血」「水」が充分にめぐっていること、「五臓六腑」の働きが順調であること、「陰陽」のバランスがとれていることが重要な条件になります。

 

○中医学でとらえる体のしくみ

 体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。

もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

 この「気・血・水」は、「五臓六腑」によって作られたあと、「経絡」という(エネルギーを通 る)ルートを通って、全身に運ばれその働きを発揮します。

 

それではここから、どのような診察方法で体の中の状態を把握し治療へと結びつけていくのか、実際の臨床ではどのようなかたちで活用されているのか、今回は不妊症を例にご説明していきたいと思います。

 

中医学の治療では、先ず「弁証」を立てていきます。

「弁証」とは、病気の原因、部位、性質など、各段階における病気のタイプを見分けることをいいます。病気の進行にしたがって、各段階のタイプが変化し、治療もそれに応じて変化していきます。その時その時の体の状態をしっかり把握し、見極め、治療もそれにあったものにしていかなくてはいけないのです。ですので、同じ薬を長期間飲み続けている方で、症状が改善しない場合は、その薬が現在の自分の体の状態にあっているのか再確認する必要があります。

 「弁証」が立てられたら、それに基づいて治療方針を決め、治療方針が決まったら、それを基に使用するツボを決めていきます。

その「弁証」を立てる手段が『四診』と言われ、現代医学でいう検査と同様のものです。

『四診』とは「望診」「問診」「切診」「聞診」の総称になります。

 

~四診~

 

① 望診

望診は、患者さんの様子を、目でみて情報を確かめる方法です。患者さんがドアを開けて診察室に入ってきたときから、歩き方や姿勢におかしいところはないか、顔色はどうかなどを観察します。この段階で、すでに望診が始まっています。そのほか舌の色や舌の表面 についている苔(舌苔)の状態を見ることも重要な観察のポイントになります。

顔の色つやの変化をみて、エネルギーの充実度合い、体の中が冷えているのか熱しているのか、五臓の働きの失調ぐあいなどが反映されます。

舌の状態からは、気血の状態が、舌苔からは発病因子である「病邪(邪気)」の性質や深さなどがわかります。健康な人の舌はピンク色で、舌苔は白色のものがうっすらとある程度です。舌の色が白っぽい場合は、体の中が冷えている状態、赤く黄色っぽい場合は熱がある状態をあらわしています。

そのほか、ぼてっと肥大した状態はエネルギー不足を、舌の表面にできる亀裂は血不足でみられます。舌は体の状態に合わせて日々変わります。

またカレーやコーヒーなどの飲食物で、舌の表面が着色されますのでそういう時は注意が必要になります。

 

② 聞診

聞診は、耳で聞き、鼻でにおいをかいで診察する方法です。

まず、声に力があるかどうか、呼吸はスムーズか、咳がある場合はどのような音の咳か、耳で聞いてチェックしていきます。

声が弱々しく、途切れがちだったりする場合は「気」の不足が考えられ、ため息が多いときは気滞(気の流れがうっ滞している状態)が考えられます。

さらに鼻で体臭や口臭などを嗅ぎます。口臭が強い場合は「胃」に熱がこもっていることが疑われます。

 

③ 問診

問診では、病気を引き起こした原因や主な訴えに対する病気の経緯を探るため、一見病巣とは関係なさそうな部位 のことまで問診していきます。

なぜなら病気とは、ある日突然あらわれるといったものではなく、普段の食事や生活習慣を含めさまざまな原因が積み重なって徐々に形成されていくものだからです。

主な問診事項は、精神状態、生活習慣、食欲の有無、味に対する好みなどの食生活、便通 の状態、尿の状態、睡眠状態、汗のかきやすさ、喫煙や飲酒量、女性の場合は月経の状況や基礎体温について詳しく聞きだしていきます。

 

④ 切診

患者さんの体にふれて診察する方法です。現代医学でいう触診のことをさします。主に、脈を調べる「脈診」があります。

脈診では、発病因子である「病邪(邪気)」をはじめ、「気」「血」「水」の異常をみることができます。また、五臓の状態も、両手で押さえた指の位 置とそれぞれ関係しているため、どの臓腑で異常が起こっているのかを把握することができます。

 

これらの四診から得られた情報を総合的に分析して、弁証をたてていきます。

四診を通して、弁証(病気のタイプ)をたてていく流れは以下のようになります。

 

~弁証の手順~

 

①病因:「病気を引き起こす原因」または「誘発させる因子」のことをいいます。

中医学の治療は、最終的には病因に対応する治療ですから、病因の確定は大変重要な事項になります。

<中医学で考えられている病気の原因となるもの>

 

外部から体を障害する「外感」と体内から異常を起こす「内傷」とに大別 されます。

 

*外感には・・

気候の異常な変化である「六淫」(風・寒・湿・暑・火・燥)、外傷、寄生虫などがあります。

「六淫」は季節と関係深く、春(風)、夏(暑・火)梅雨(湿)、秋(燥)、

冬(寒)の特徴がみられ、これらの気候に異常がみられると体へも影響が及び、体調を崩しやすくなります。

しかし、影響を受けるかは、人によって(体質など)異なります。

 

*内傷には・・

過度な感情の乱れである「七情」(喜・怒・悲と憂・思・恐・驚)

食事の不摂生である「飲食不節」、過労とその反対の運動不足を含めた「労逸」があります。

余談ですが・・・

私たちが普段生活をしている環境や社会環境の中に、病気になる因子がたくさん潜んでいるのが、お分かりになると思います。

そのため東洋医学では、日頃から、自分の体質に合ったものをバランスよく食べ、適度な睡眠、運動、落ち着いた心を保つことが、疾病を予防する鍵であり、「養生法」に繋がると考えています。とてもシンプルなことですが、日々実践となると難しいものです。

しかし、心がけひとつでも変わってきます。病気になる前に、また病気に打ち勝てるよう、根気良く続けて実践してみましょう。

②病性:病の性質のことをいいます。

・寒証(冷えのタイプ)か熱証(熱のタイプ)

 

例)

寒証は、夏のクーラーや冬の寒さで誘発され、熱証は、夏の暑さや食べ物の性質が熱性に偏ったものを多く摂取して起こりやすくなります。

・虚証(体のパワー不足によって病邪の勢いはそんなに強くないが病気になってしまう)

・実証(体のパワーは充分あるが、病邪の勢いが強いため病気になってしまう)

 

例)

虚証は、体が疲れやすく、風邪をひきやすい場合など。

実証は、普段元気な人でも、感染力の強いウィルス性の風邪が流行して、罹ってしまう場合など。

 

③病位:

病気の部位を確定することです。

 

病邪が臓腑、経絡(エネルギーを通る道)、体の表面 なのか内側なのか、上、中、下部の、どの部位に存在するのかを見極めます。

 

④病状:

病の軽重度を弁別します。

 

2種類以上の病気があるとき、虚証と実証が合わさっているときなどは、その軽重度を弁別 します。治療の比重も異なってくるので、重要な意味を持ちます。

 

⑤病勢:

病が悪化するのか、快方に向かうのかという病の発展傾向

 

人が持っているパワー(正気)と病邪の闘いによって現れる、体の中のエネルギーの動向、バランス具合などをみていきます。

 

⑥病機:

病を引き起こしたメカニズム、その病がなぜ発生し、どう発展、転化するのかを解明することです。

この病機をしっかり把握すると、弁証の結論がでてくるのです。

それでは、症例をもとに、どのように活用していくのかを見ていきたいと思います。

(中医学的な不妊症の捉え方・タイプ、タイプ別養生法などの詳しい説明は、当院のHP上「よくわかる東洋医学理論」に記載してあります。そちらをご参照ください。)

 

 

 患者:○○ ○○ 女性  31歳

 初診日:1998年2月17日

 主訴:結婚して3年余り、まだ妊娠していない。

 現病歴:結婚をして3年、夫婦同居だがまだ妊娠しない。

 

子どもが欲しいので婦人科の診療を受けた。

検査では、子宮内膜の成熟度が遅延しており、基礎体温は2相性を示すものの、月経周期19~20日目ころにようやく高温相になり、黄体機能不全であることがわかった。2年間ホルモン療法で治療をしたが妊娠できない。その後3回の人工授精を試みたが、失敗した。

 

望診:痩せ型・顔色は白っぽい

問診:日頃から腰が重だるく、手足が冷えやすい。尿は透明で量が多く、夜間にも1~2回トイレへいく。大便はゆるいほうである。

脈診:遅・細・無力

舌診 色:淡  苔:薄白

月経状態:初潮は15歳

・月経周期:やや遅れぎみで30~32日型 ・期間:5~6日間

・経血量:少なめ ・月経色:淡い ・質:希薄

・月経前に伴う不快な症状:月経前になると下腹部が痛くなり、温めると楽になる、腰がだるくなる

・おりもの:白く、量は少ない

 

基礎体温の状態:高温期の体温が低く、11日間と短い。

 

弁証:腎陽虚、気血両虚

治則(治療方針):温補腎陽、補気養血

 

【症例の分析および解説】

分析をする前に、弁証で出てきました「腎陽虚」の(中医学で考える)腎の働きについて少し説明したいと思います。

「腎」は、生命力の源、子宮または生殖器・発育・成長関係と深く関わります。

腎のエネルギーは、両親から授かったもの(精気)であり、体全体のパワーを貯蔵してある大事な臓器になります。

エネルギーが少なく足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。

症状としては、腰や膝がだるくなり、足に力が入らなくなる、頻尿傾向になる(特に夜間尿)、耳鳴りや難聴、物忘れが多くなる、早く老いやすくなる、白髪が多くあるなど。

 

この症例を全体的にみますと、上記に書きました「腎」のエネルギー不足による症状が数多くみられます。以下に、現れている症状を当てはめていきたいと思います。

 

<腎のエネルギー不足により見られる症状>

初潮年齢が15歳と遅めである、子宮内膜の成熟度が遅延している、日頃から腰がだるくなる、頻尿で夜間にも1~2回いく、月経前に伴う不快な症状として、月経前になると下腹部が痛くなる(下腹部は子宮の位 置するところ)

 

<陽虚(体を温める力が不足していること)により見られる症状>

陽気の不足=気がさらに不足してしまった状態をいいます。

手足が冷えやすい、尿は透明で量が多い、大便はゆるいほうである、月経前に伴う不快な症状として下腹部痛は温めると楽になる、舌の色が淡く、苔は薄白、脈が遅く無力

 ⇒陽気不足のため、流れが緩慢になり、力の無い脈がみられる。

基礎体温の状態として、高温期の体温が低く、11日間と短い

 ⇒陽気の不足により高温の状態を保持することが出来ないために起こる

月経状態の症状については、体を温める力が低下しているために現れているものです

 ⇒陽気不足になると、臓腑の働きに影響を与えるため血もうまく生産されなくなってしまいます。そのため、子宮の中の血は月経期になっても充足できず、月経が遅れます。症例の経量 が少なく、色は淡い、質は希薄なのは、陽気不足によって子宮の血を充足できていないことを示しています。

 

<気血両虚は、腎陽虚によって、二次的にみられる症状になります>

体の機能が低下しているために、気血をうまく作ることが出来ないのです。

 

治療方針は、腎の温める力を増す治療を主に、気と血を補う治療を補助的にしていきます。

弁証の手順の流れで見ていきますと・・・・

① 病因:

初潮年齢が15歳と遅めであり、子宮内膜の成熟度が遅延していることから、生まれつきパワー不足の徴候が見られる。

② 病性:

冷え症状がみられるので、「寒証」。

体のパワー不足が考えられるので、「虚証」。

③ 病位:

臓腑の「腎」にある。場所は下部になる。

④ 病状:

気血両虚は、腎陽虚によって、二次的にみられる症状になるため、治療のメインとしては、腎の温める力を増す方に重きをおきます。

⑤ 病勢:

この状態のまま治療せずにいくと、冷えの症状がさらに悪化し、機能的にも働きが弱くなってきます。

⑥ 病機:

先天的に虚弱体質であり、パワー不足があり、その体の状態が現在に至るまで続き、冷えの症状をまねいてしまった。さらに、3度の人工授精などにより体力を消耗してしまった。

このようなかたちの流れになります。

 

「不妊症」の問診で、重要事項は以下のようになります。

① 結婚歴について

② 過去の妊娠の有無について

③ 器質的及び機能的な問題について⇒検査結果

④ 夫の精子検査、性機能について⇒検査結果

⑤ 月経状態、基礎体温表(持参)について

これに、日常生活について(食生活、睡眠状態、精神状態、便や尿の状態など)の問診が加わり、「現在の体質」を詳しく把握していきます。

 

<この症例の人工授精について・・>

 この患者さんは、2年間ホルモン療法を受けたにも関わらず、妊娠できず、3度の人工授精にも失敗してしまったのは、いったいなぜでしょうか・・・。

 それは、このケースを見てお分かりのように、冷え症状が多く見られ、体全体の機能が低下しています。これでは、妊娠することはもとより、良い卵さえも作り出すことができません。排卵を促したり、卵子を大きくするためのホルモン剤、人工授精、体外受精などは、あくまでも人工的に体を作り上げている状態に過ぎず、自分自身の力で調えられているわけではありません。そのために、今回のような3度の人工授精の失敗をまねいてしまったのです。

体全体のパワーが充分にあり、体内の環境がバランスよく調えられてはじめて、「良い卵が作られる→受精→着床→子どもを10ヶ月間、養い育てていくことができる」のです。

(流産の場合は子どもを産むのと同じくらい、体力や血を消耗し、負担がかかります。)

 

 すでに不妊治療を受けられている方、またこれから受けようと考えられている方は、体内環境を調えることの大切さを充分にご理解いただけたらと思います。

 

<最後に・・・>

 症例を通して、中医学的な考えに基づいた診察方法をみてきましたが、少しご理解していただけましたでしょうか。

同じ不妊症でも、人によって現れる症状は個々それぞれです。今回のような腎陽虚タイプでも、症状の軽重度はさまざまです。それは、体質の違い、生活環境(食生活など)の違い、精神的ストレスを受ける許容量 の違いなどが複雑に絡み合っているからなのです。私たちは(四診などのほかに)、そうした目には見えない状態を考慮しながら、問診を勧め、その人その人にあった治療をし、適切なアドバイスをしていかなければならないのです。

なぜなら、患者さん自身も気づいていない体や心の状態を、問診を通 して自覚してもらい、日々の日常生活で意識をして、改善していくことにより、症状の悪化を防ぐことができるからです。わたしたち治療者側は、患者さんが本来持っている治癒力を引き出すお手伝いをし、最終的には患者さん自身が自然に病気を治していくのです。

双方の協調性がとれたとき、自ずと良い治療結果へと結びついていくことができるのです。

そして問診は、診察以外に、患者さんとの信頼関係をつくる時間でもあるのです。

 

2019/03/11
【内科疾患】排尿障害2~中医学基礎編~

★★中医学から診た排尿障害★★

 

** 初めに **

中医学は独自の理論によって構成され、専門用語を多く使用します。

それらの理論や用語は現代医学に慣れ親しんでいる我々にとっては非常に難解で馴染みづらいものであります。

そこで、先ず、中医学による排尿障害の説明を読まれる前に、

「病気別・わかる東洋医学診断」に掲載されている

「わかりやすい東洋医学理論」をお読みになって、予め東洋医学の概念的なイメージを掴まれてから、この後を読まれることをおすすめいたします。

これ以降については、説明を出来るだけ簡素にするため、皆様が「わかりやすい東洋医学理論」を読まれているという前提で説明させて頂きますので、ご了承下さいませ。

 

さてここでは、中医学による排尿障害を理解するために、「わかりやすい東洋医学理論」をもう少し補足したいと思います。

 

★排尿障害を理解するために必要な基礎知識★

≪気血水≫

「気・血・水」の概念については、既にご理解されておられると思います。

ここではもう少し詳しく説明します。

 

〈気〉

「推動作用」や「栄養作用」・・・といった気の作用については、「わかりやすい東洋医学理論」で説明してありますので、ここでは気の種類を説明します。

気の種類には「元気」「宗気」「衛気」「営気」「臓腑の気」「経絡の気」があります。

この中で「排尿障害」に特に関係があるのは「宗気」です。

「宗気」は推動作用が強く、心拍運動を促進したり、気血をスムースに流す働きをしています。

健康な人の「気」はスムースに流れていなければなりませんでした。

何らかの原因で「気」の流れが滞ってしまうことがあります。

このような状態を「気滞」といい、様々な病態をまねいてしまいます。

排尿障害もこの「気滞」によって起こる場合もあります。

 

〈血〉

「気」と同様に、健康な人の「血」もスムースに流れていなければなりません。

もしその流れが滞ってしまうとどうなってしまうのかを考えてみたいと思います。

中医学では血の流れが滞ることを「オ血」といいます。

「オ血」は経絡や臓腑で滞る場合と、経絡から出て滞る場合があります。

「オ血」の原因は大きく分けて、「気の不足(気虚血オ)」「気の滞り(気滞血オ)」「血への寒の侵入(血寒血オ)」「血への熱の侵入(血熱血オ)」の4つがあります。

オ血が原因となる排尿障害は、「気滞血オ」と「血熱血オ」よる場合の2パターンがあります。

 では、「オ血」になるとどの様な状態になるのか紹介しましょう。

疼痛の出現・・・・中医学では「通 ずれば則ち痛まず・不通なれば則ち痛む」と言い、流れていなければならない物が滞ると、痛みが生じます。

「オ血」の疼痛の特徴は、刺痛と固定痛です。

腫塊を生じます・・・「オ血」は腫塊を生じます。

「オ血」の腫塊の特徴は固定して移動しません。又、押さえると強い痛みを発します。排尿障害では「オ血」の塊が尿道を塞ぐことが原因となります。

その他としては、出血をさせたり、血の色が暗紫色であったり、生理の時に血塊が混じったりします。

又、「オ血体質」の方の顔色は浅黒く、乾燥し、光沢が無く、キメが荒かったりします。

 

〈気と血の関係〉

気の種類と作用で説明した「宗気」と「推動作用」を覚えていますか?

「推動作用」には血脈や経絡の流れを促進させる作用がありました。

「宗気」は推動作用が強く、心拍運動を促進したり、気血の運行を主っていました。

つまり、血がスムースに流れるためには気の働きが必要になります。

ですから、気の不足や気の滞りは「オ血」をまねきます。

 

〈気血水の陰陽分類〉

「わかりやすい東洋医学理論」で陰陽論の概要の説明があったと思います。

ここでは「気血水」を陰陽で分類してみたいと思います。

「気血水」を陰陽で分類すると、「気」は『陽』に、「血」「水」は『陰』に属します。

『陽』の特性の1つに温める作用があり、『陰』には冷す作用があります。

例えば、腎の中で体を温める働きを「腎陽」と言ったり、脾の中で温める働きを「脾陽」といいます。「脾陽」については消化吸収の働きに深く作用します。

一方、血や水が属す『陰』は、熱を抑えたり、肌を潤す働きがあります。

血や水が少ない状態を『陰虚』といいます。

この様な状態になると肌が乾燥したり、体内で熱が生じてしまいます。

又、上記のように陰虚によって生じる熱を、「虚熱」といいます。

 

≪病因≫

病気を起こす原因のことを病因と言いい、中医学ではこの病因を、外因・内因・不内外因の3つに大別 いたしました。

さて外因の中には六淫がありましたね。その六淫の中の「湿邪」と「熱邪」が排尿障害の原因の大素になります。

又、「湿」や「熱」は外因ばかりではなく、「飲食不節」により体内で生まれてしまうこともあります。

 

〈湿〉

『湿』とは外因に含まれる「湿邪」と、体内にある不要な水分の「湿」の2つをさします。

外因(外邪)で言う場合の「湿邪」とは空気中にある、過度の湿気をイメージしていただいて結構です(梅雨時期の空気など)。

健康な体は「気血水」が適量でなくてはなりませんでした。

ですから、外邪の「湿邪」が体内に過度に侵入してくると、余分な水分となってしまい体調を崩してしまうのです。

「湿」の特性には「重い」「粘性」があります。

体内で湿はその「重い」という特性から、下部である膀胱や足へと移行しやすくなります。

よく、梅雨時期に足が浮腫んだり、体や足が重だるく感じる方が多いと思います。

これは、梅雨時期の空気は多湿になりますので、湿邪が体に入りやすい季節となります。

体に入った湿は、その「重い」という特性から下部へと移行しやすいので足を浮腫させたり、重だるさを感じさせたりするのです。

更に湿の粘性の性質から、体内に入り込んだ湿は気血の流れを阻滞させてしまいます。

又、湿は陰陽で区分すると陰邪に属します。

陰邪は陽の気を損傷する性質があり、特に脾の陽気(脾陽)を損傷してしまいます。

脾陽は消化吸収や栄養分を上昇へ送る働き(運化作用・昇提作用)をしており、脾陽の損傷も排尿障害の原因となります。

又、「湿」は体外から入って来るものばかりではなく、「飲食不節」に含まれる「肥甘厚味の過食」によって体内で生まれることもあります。

体内に侵入して来たり、体内で生まれた「湿」は体外に上手く排出できないと、体内で滞りを起こします。

気や湿は滞りを起こすと熱化する性質があります。

この様に熱化した「湿」を『湿熱』と言います。

「飲食不節」に含まれていた「過度の飲酒」は体内で『湿熱』を生みます。

又、外邪の時点で「熱邪」と「湿邪」が合わさって、体内に侵入してくる場合もあります。

このような場合を『湿熱』の受感と言います。

いずれの場合も『湿熱』は排尿障害の原因となりますので、是非覚えておいて下さい。

 

〈熱邪〉

熱邪は夏に多く出現します。皆さんにもイメージしやすい外邪だと思います。

熱邪の特性としては、その熱により体内の水を消耗させてしまいます。

そのため、咽の渇きなどの症状が現れます。

又、熱は血に入ると血を動かし出血させる特性があります。

お風呂などで、のぼせて鼻血が出る場合がこれに当てはまります。

 

〈内因〉

病因の中の内因には七情がありました。

七情は健康な方も持っていますが、これらの感情が過度であったり、長時間持続的に続く場合は「情志失調」と言い、病因になりました。

長期や過度のイライラやストレスは情志を抑鬱状態し、肝の気の流れを滞らせてしまいます。

この様な状態を、「肝気鬱滞」と言い、排尿障害をまねきます。

 

〈不内外因〉

不内外因にも様々なものがありましたが、この中で排尿障害と関係があるのは 「飲食不節」と「疲労」があります。

「飲食不節」に含まれている「肥甘厚味の過食」は『湿』を「過度の飲酒」は『湿熱』を体内で生むことにより「排尿障害」をまねきます。

又、「過度の疲労」は、脾を損傷させることにより「排尿障害」をまねきます。

 

≪五臓六腑(内臓)≫

排尿障害に関わる五臓六腑の働きを理解するには、先ず正常な体内の水液代謝についてイメージを持っている方が理解しやすいので、先ず正常な水液代謝から説明したいと思います。

水液代謝についても、中医学独特の考え方をしますので、皆さんの常識は一度封印してこれから先をお読み下さい。

=中医学的な水液代謝=

①、

口から入った飲食物(水分)は胃に送られ小腸に送られます。

②、

小腸は運ばれてきた飲食物(水分)を人体に必要な物(清)と不必要な物(濁)に分けます。(必別 清濁といいます)

その後、必要な物は脾に送られ、不必要な物の中で水液は膀胱へ、そうでない物は大腸へ送られ、排出されます。

③、

脾は小腸から送られてきた体に必要な物(清)から有益な水液を吸収し肺へ送ります。

④、

肺は送られてきた水液を全身へ行き届かせます。

肺は身体の中では比較的上の方にありますので、水液を全身へ行き届かせるには都合がよいのです。

⑤、

全身を巡ってきた水液は腎臓に集められます。

そこで再利用出来る物は再吸収し、再度肺に戻します。不要な物は膀胱に送ります。

⑥、

膀胱へ送られてきた不要な水液は尿に変えられ排出されます。

また、膀胱へ運ばれる前の不必要になった水液は汗として排出される場合もあります。

これが大まかな体内の水液代謝の流れになります。

 

水液代謝に関わる主な臓腑は今の説明に出てきた脾・肺・腎が主役となり、それを補助する臓器として三焦(さんしょう)・膀胱・肝・心などが関与してまいります。

三焦とは、水液が流れる通路みたいなもので、現代医学には存在しない物です。

 

 それでは次に各臓腑について説明してゆきましょう。

 

≪肺≫

肺の主要な生理作用に「宣発・粛降」と「水道通調」があります。

ここで先程説明した水液代謝を思い出してみましょう。

脾から送られてきた有益な水液は、肺によって全身に散布され腎へと降ろされておりました。

これら一連の流れが「宣発・粛降」になります。

 

【宣発】

「宣発」とは宣布・発散の意で、広く発散させ行渡らせるという意味です。

水液・栄養物・気や濁気などを全身へ散布することです。

この働きにより脾から送られてきた、有益な水液は宣発作用によって全身へ散布されるのです。

又、濁気や汗はこの働きによって排出されます。

宣発作用の失調は、皮膚の乾燥・抵抗力低下・疲れやすい・各種の機能低下・汗が出ない・などの症状が現れます。

 

【粛降】

「粛降」の「粛」は清粛・粛清を意味し、「降」は下降を意味します。

粛降とは気や水液などを下部に輸送する作用です。

肺の宣発作用によって散布された有益な水液は粛降作用によって全身へ渡り腎へと送られます。

粛降作用の失調は、腎に気が届かなくなったり・不要な水液が体内に溜まったり・むくみ・息切れ・疲れやすい・尿量 減少・汗が止まらない・などの症状が現れます。

「肺は宣発・粛降を主る」と言われ、宣発・粛降といった作用を用いて水液や気を全身へ巡らせております。

 

【水道通調】

「水道」とは、先程水液代謝で説明した、脾→肺→全身→腎→膀胱→排出 

といった一連の流れの全通路を指します。

「通調」の「通」は疎通を意味し、「調」は調節を意味します。

肺は先程の宣発・粛降といった作用を用いて水道の流れがスームースに流れるように調節しております。

このことを「水道通調」といいます。

水道通調の失調は、むくみ・汗が出ない・といった症状が現れます。

 

 

≪脾≫

脾の主要な生理作用として「運化作用」と「昇清作用」があります。

 

【運化作用】

「運化作用」の『運』は転運輸送で、『化』は消化吸収を意味します。

つまり、飲食物から栄養分を吸収して、全身へ運ぶ作用です。

先程説明した水液代謝の説明をもう一度思い出してみましょう。

飲食物は口から胃を通り小腸に運ばれます。

小腸では体に必要な物と不要な物が分けられ、必要な物は脾に運ばれます。

脾はそこから有益の物を吸収して肺へ送り、肺から全身へと送られ、腎へ集められていました。

これらの口から始まって腎までの一連の流れが「運化作用」です。

脾の主要な生理作用は運化作用ですから、脾はこれらの働き全てを管理しているのです。

つまり、運化作用とは、栄養分を吸収し、それを全身へ送り届ける作用とイメージしてください。

運化作用は栄養分を吸収する働きがありますので、脾が損傷してしまうと気血を作る能力が低下してしまい、気血の生成不足をまねきます。

その他の運化作用の失調の症状には、食欲不振・下痢・軟便・むくみ・などがあります。

 

【昇清作用】

先程の説明にあったように脾は小腸から送られてきた必要な物から、有益な物を吸収して肺へ送っておりました。

肺へ有益な物を持ち上げる作用が「昇清作用」です。

「昇清作用」が失調を起こすと、有益な物が肺まで持ち上げることが出来なくなってしまい、めまい・ふらつき・などが起こります。

因み、この持ち上げる作用には、臓腑や器官を正常な位置に保つ作用もあります。

この様な場合は「昇提作用」と言い、「昇提作用」の失調は胃下垂や脱肛などが現れます。

ところで先程「湿」の特性の説明で、「湿は重い」と述べました。

例えば皆さんが濡れた洋服を着たら、とても重いと感じるでしょう。

これが「湿は重い」ということです。体の中でもこれと同じ事が起こり、湿は全ての物を重くします。

さて、脾には昇清作用や昇提作用といった物を上に持ち上げる働きがありました。

湿が体に入ってくることによって、脾に持ち上げられ物が重くなってしまったらどうなるでしょう?

昇清能力や昇提能力は下がってしまいます。

したがって脾は「喜燥悪湿」と言い、乾燥を好み湿気を嫌います。

逆を言うと、脾は湿によって損傷されやすい臓器であります。

ですから、「飲食不節」に含まれる「肥甘厚味の過食」や「過度の飲酒」は体内で「湿」や「湿熱」を生み、最終的に脾を損傷させることになります。

この他に脾を損傷させる要因となるものには、過度の疲労や長患いによる体質虚弱などがあげられます。

 

《肝》

肝の排尿障害に関係する、生理作用は「疏泄(そせつ)」です。

疏泄の「疏」は流れが通じるという意で、「泄」は発散や昇発の意です。

疏泄を一言で言うと、気血の運行・消化機能・情志の活動 などをスムースに行わせる働きをいいます。

肝は五行学説では「木」に属し、スムースで秩序だった状況を好みます。

ですから、肝は疏泄作用で上記の働きの促進をしているのです。

この中で、特に排尿障害に関与するのが、気血の運行の促進です。

気血の運行がスムースであるからこそ、他の臓器の機能が正常でいられるのです。

先程も述べましたが、肝はスムースで秩序だった状況を好みます。

もし、過度のストレスやイライラにさらされると肝の気は滞りを起こします。

肝の気の滞りは「肝鬱」といい、このような状態だと、正常な「疏泄」が出来なくなり様々な臓器の機能低下や機能失調をまねきます。

 

〈腎〉

腎は排尿にとってとても繋がりの深い臓器ですので、しっかりイメージを作ってください。

腎は「水を主る」と言われ、体内の水液代謝には大切な臓器です。

腎は全身を巡ってきた水液を必要な物と不必要な物にわけ、それらを吸収して肺に戻したり、膀胱へ送ったりしています。

更に、先程説明した水液代謝は全て腎の気化作用によって保たれております。

そしてこの気化作用を支えているのが腎陽というものです。

これは、腎の働きを「陰」と「陽」で分けた場合の「陽」の働きを指すことばで、身体を温める働きである「温煦作用」をさします。

ですから体内の水液代謝は腎の「温煦作用」によって支えられていると言っても過言ではありません。

そういったことから『腎は水を主る』と言われるのです。

 

又、「腎は骨を主り・髄を生じ・脳に通ず」と言われます。

腎は髄を生み、髄は骨を滋養します。

ですから、腎の損傷は髄の生成不足をまねき、髄の不足は骨の滋養不足をまねきます。

骨の栄養不足は「腰膝酸軟(ようしつさんなん)」といって、腰や膝をだるくさせたり、痛みを生じさせてしまいます。

ですから腎は『腰の府』とも言われております。

さらに髄は「骨髄」と「脊髄」に別れます。「脊髄」は脳とつながります。

中医学では脳は髄が集まっていると考えます。

 

更に「腎は二陰(又は二便)を主る」と言われます。

二陰とは前陰(外生殖器)と後陰(肛門)を指します。

腎には固摂作用により尿や精子を漏らさないようにしております。

腎が損傷を受けて固摂作用が無力となると、精子や尿が漏れ出てしまい、尿失禁や滑精などを起します。

このことを腎気不固といいます。

 

腎を損傷させる要因には、老化や長患い、過度な性交渉などがあげられます。

 

〈膀胱〉

膀胱の主な生理作用は貯尿と排尿です。

膀胱の「気化作用」により尿は体外に排出されます。

「気化作用」は細かく分けると、「気化作用」と「制約作用(約束)」にわけられますが、通 常はこれらをひとまとめにして「気化作用」と言ってしまいます。

膀胱が失調を起こした場合、「気化作用」が失調を起こすと、排尿困難・排尿障害・尿閉といった症状が現れ、「制約作用」が失調を起こすと頻尿・失禁といった症状が現れます。

いずれにしても膀胱の機能が正常に保たれるのも、腎陽の温煦作用と水液調節作用の助けが必要です。

ですから腎の失調は膀胱の機能失調を起こし排尿障害の原因になります。

 

<三焦>

三焦は現代医学にはない概念ですので、最初は理解するのに抵抗があるかもしれません。

三焦とは体内にあり、体内の水液や気が流れる通路とイメージして下さい。

あえて現代医学に例えると、リンパ管・汗腺・涙腺・といったような物ですが、全く同じ物ではありません。

 

2019/03/11
【その他】中医学で考える、ストレスが起因で起こる症状と病気

今、世の中ではストレスが蔓延しており、ストレスによる症状で心療内科を受診される方が非常に増えてきております。

それは何故でしょう?

私が考えるには、多くの方々が体の許容量を超え仕事をしなければならない状況下に置かれている事と、体へのお手当てが足りないために増えてきているのだと思います。

 

また、人間は機械と違い感情を持っています。とてもデリケートな生き物なのです。忙しい世の中だからこそ、自分自身の空白の時間、余暇の時間を持たなくてはいけません。それらが足りないが為に、体も心もオーバヒートを起こしてしまい、体に不具合が出てきてしまうのでしょう。

 

では、理論上「ストレス」を中医学(東洋医学)ではどの様に捉え認識しているのでしょうか?

 中医学(東洋医学)では、各臓器には?各々が精神作用を担っている?と考えられております。

「各臓器」とは、肝・心・脾・肺・腎を指します。

 

・「肝」の気が正常な働きを保っていれば

  常識・礼節をわきまえ、物事をきちんと判断し処理します。

 

・「肝」の気がスムーズでない場合は

  憂うつになりやすい、意欲がわかない、決断力が欠けます。

 

 

・「心」の気が正常な働きを保っていれば

  個性豊かな安定した情緒を保ちます。

 

・「心」の気がスムーズでない場合は

  臆病になりやすく、勇気がなく不安感が出やすくなります。

 

 

・「脾」の気が正常な働きを保っていれば

  包容力が有り、皆さんの意見を公平にまとめます。

 

・「脾」の気がスムーズでない場合は

  くよくよ思い悩み、主体性が無く、気迷う事が多くなります。

 

 

・「肺」の気が正常な働きを保っていれば

  五感がさえます(視る、聴く、痛痒など)

 

・「肺」の気がスムーズでない場合は

  表情が無くなり、注意力が散漫、やる気が出ません。

 

 

・「腎」の気が正常な働きを保っていれば

  志を強く持ち、根気が強く丁寧に物事を処理します。

 

・「腎」の気がスムーズでない場合は

  忍耐力が無くなり、根気も無くなり、面倒くさがります。

 

 

これらの臓器の中で、ストレスを受けると働きに特に影響が出やすくなるのが「肝」です。

 

中医学(東洋医学)では、各臓器の気・血が何時も万遍無くスムーズに流れ、気・血が体に満たされている状態が、人間の体を正常な働きに導き且つ健康な状態を保つのだと考えられています。

 

ですが、外気(天候)・精神状態(気持ち・感情)・食生活・房事・労働などの環境が自分の体の許容量 を超えて、必要以上に極端な変化や負荷が掛かってしまった時、生命活動・体を元気に保ち維持するエネルギー、気・血に影響が及び、その流れが損われてしまいます。そのため、体内での機能バランスが崩れ、症状や病気を引き起こすのだと考えられています。

 

この様な気・血の流れの失調により発症する症状・病気などは、残念ながら幾ら検査を行っても数値に出てきません。

しかし、中医学(東洋医学)的な発想で、問診・脈の打ち具合、舌の色合いなどを診ることで、体のどの部分で機能バランスの失調が起きているのかを知ることができます。

 

西洋医学と中医学(東洋医学)では、病気を診る角度が違うので、おのずと治すプロセスも違ってくるのです。

 

それでは、ストレスを中医学(東洋医学)的に考えた時、どの様に捉えるのでしょうか?

 中医学的な考えでは、人間がストレスを感じた時、「肝」の気の流れや働きに異常が出てくると考えます。

 

「肝」の気と言うのは、伸び伸び流れる事で正常な働きを保っています。しかし、いやな事・イライラする事・怒られる様な事などがあると、肝の臓器に影響が及び、肝の気の流れに問題が生じ、気の流れの渋滞を引き起こします。これを肝気鬱結(かんきうっけつ)といいます。この状況が長引くと、気のエネルギーがどんどん溜まって来て、熱を帯びるようになります。熱と言うものは炎上(上昇)の性質を持っています。そのためイライラやのぼせ・めまいなどが生じるようになり、益々症状が悪化するのです。

 

ですから、このような場合は肝の気の流れを元に戻し、スムーズに流れるように促す治療を行なってあげなければ症状は改善されません。

 

 

 

?肝の気の流れが失調した場合、基本的に下記の症状がおこります?

 ●軽い場合:

 

イライラする、怒り易くなる、落ち着かない、胸脇・乳房の脹痛、下腹部の脹痛。

 

 →さらに状態が進行すると:

 

赤ら顔、のぼせ、目の充血、頭頂痛、片頭痛

 

 →もっと進行すると:

 

めまい、ふるえ、ひきつけ、などの症状が出てきます。

 

また、ストレスが起因により肝に負荷が掛かる事で、様々な病気を引き起こします。

 ●軽いものであれば:

 

肩凝り、緊張性頭痛、軽い不眠、腰痛

 

 →多少重くなってくると:

 

過敏性大腸炎、自律神経失調症、書痙、対人恐怖症、突発性難聴、円形脱毛症、不妊症(器質的な問題のないタイプ)、インポテンツ、アトピー性皮膚炎の悪化

 

 →さらに重くなると:

 

パニック障害、適応障害、うつ病、重い不眠症

 

ストレスによる病気は、挙げたらまだまだございますが、上記の病気は一般 的によく目にする症状・病気かと思います。

 

上記の病気で、精神安定剤、抗うつ剤の服用で症状の改善や治っていくケースも多々有ります。しかし、逆に長引いて強い効能のある薬の投与を受ける方もいらっしゃいます。

 

それはどうしてでしょう?

 

中医学(東洋医学)的な発想では、肝の気の流れを改善していない為に、他の臓器の気の流れにも影響が及び症状が進行していくとのだと考えます。

また、自然治癒力(体の回復力)の低下だとも考えられます。自然治癒力の低下は年齢が増せば増すほど起こりやすくなります。体力の低下もその一つです。体力の低下と共に人間の体を整える自然治癒力と言うのは低下して行きます。その為、年齢が増すのにつれて、症状や病気も進行しやすくなるのです。

 

また、自然治癒力は、普段の生活での体への気配りが足りなくても低下しやすくなります。

 

体に負荷をかける生活が多くなりますと:睡眠不足、過労、食生活の乱れなどが起こってきます。

 

そのため、中医学(東洋医学)の治療では、肝の気の流れを調整すると共に、生活指導を行い、自然治癒力の底上げも同時に行い、症状の改善を図っています。

 

 

 何かの病気が発症する前に、体は声を発しています。

日頃、ストレスを感じている方はなるべく体の発している声に耳を傾けて、早めにお手当てをなさってください。

 例:

突発性難聴になる前、頻繁に耳鳴り(ジーやキーンという音)、肩の凝り、耳の周りの脹り、突っ張る様な症状が出ます。この様な症状は、体が注意信号を出している状態です。中医学(東洋医学)ではこれらの症状を?未病?と言っております。未病とはまだ病気にはなっていないが、病気の現れる前兆である事を指します。

ストレスに関して、中医学(東洋医学)的な考えを多少なりともご理解して頂けましたでしょうか?

 

ちなみに、ストレスを溜めやすいタイプは・・・

 

 ・内向的でおとなしい方

 

 ・真面目で几帳面な方

 

 ・取り越し苦労の多い方

 

 ・自分に否定的な方

 

 ・頑固で厳格な方

 

上記のようなタイプの方は、ストレスを溜め込まないように、リラックスとリフレッシュを心掛けて下さいませ。

大事なのは、オープン(発散)・リラックス(ときほぐす)・リズム(イキイキとした生活)です。

 

 普段の生活でストレスを感じている方、何か気になる症状が出ている方、中医学的な考えに関して詳しく知りたい方は、お気軽に当院へご相談くださいませ。

未病の状態は、中医学(東洋医学)が得意とする分野でございます。

 

2019/03/11
【その他】中医学とは

中医学とは、独自の生理観や病理観、および診断・治療の方法を持つ、ひとつの体系化された中国伝統の医学です。我々がこの中医学を用い、現代医学(西洋医学)とは違った角度から人体を見、治療を施すことによって、西洋医学では手の届かなかった、いわゆる「未病」「慢性症状体内の崩れたエネルギーバランス」「体質が起因の病」の改善やお手当ての治療を行うことができるのです。

 

 

中医学の診察法

中医学の診察は「望診」「聞診」「問診」「切診」の4種類があり、これをひっくるめて「四診」と呼んでいます。

<望診>

患者さんを目で見て観察する診察方法です。

体格・表情・顔色・動作・舌の状態などを見ます。

<聞診>

患者さんの声や呼吸、体臭や口臭などをチェックする診察方法です。

<問診>

患者さんの自覚症状、愁訴を詳しくたずね、病気の経過、熱・汗・食欲など診断に必要な情報を収集する診察方法です。

<切診>

患者さんに直接触れて、診察する方法で、身体の各部とともに、脈の触れ具合も重要な診察データになります。

 

★ 四診での情報を整理・分析し、「証」をみきわめ、各々の病態により適した治療法を決定するのです。

 

 

中医学の魅力

 

1 未病治療

「未病」とは、病気がまだ病気として認識される前の状態の事をいいます。病気は、いきなり発症するわけでなく、徐々に姿を変え、少しずつ育ち、ある段階で症状として認識されるのです。

つまり、症状として現われる以前にも病気として体内に存在するというのが中医学的な考え方です。

人の人体は、いろいろな働きがバランスをとりながら機能しています。どこかに歪みが生じれば、全体的なバランスがくずれ、それが「不定愁訴」という形で、身体から発せられる重要なサインとなるのです。

中医学は、その重要なサインを見逃さず、重大な病に発展する前に、身体の機能のバランスを整え改善していく事を目的とした、無理のない理想的な治療方法なのです。

 

2 体質改善治療

病気の種子が徐々に育ち、病気といて顔をあらわす背景には、日頃の食生活・生活スタイル・職場環境など様々な要因が深く関わっています。自然治癒力を高め、病気そのものに対抗する力を増すとともに、その生活環境を改善し、病気そのものが育ちにくい環境に体質を改善していくことも中医学的治療の持つ重要な役割です。

自分の体質の特徴を理解し、その欠点を補う事で、よりバランスの良い身体=丈夫な身体を維持する事ができるわけです。

 

 

経絡・ツボとは

中医学では、生命エネルギーである「気」の流れる道筋を「経絡」と呼んでいます。この経絡は主なるものが14本あり、それぞれ五臓六腑(内臓器)と密接に関連しています。

この経絡は、血管やリンパ腺のように形のあるものではありませんが、体調を崩したり、そのバランスに歪みが生じると関連する経絡に沿って様々な異常やサインを送ってくれるのです。

「ツボ」は、その経絡の上に並んでいます。ツボは、経絡の中でも得に強い反応が現れる点です。ツボに効果 的な刺激を与えることによって、狂っている体内の機能のバランスを調整する事ができます。つまり、ツボは「身体の反応点」でもあり、「治療点」でもあるわけです。

しかし、疾患部位と治療点は必ずしも一致しません。お腹の調子が悪い時に足のツボを使う事もありますし、頭が痛くて手のツボを使うこともあるわけです。

当然のことながら、症状は同じ「頭痛」でも、患者さんによって使うツボや治療方法が変わってくることになります。

 

全身の経絡の流れ、経穴の特徴や性質を理解した上で、それぞれを組み合わせ、個人個人の状態に合わせて、より効果 的な治療点を選んで治療を施すのが「中医鍼灸治療」なのです。

 

2019/03/11
【内科疾患】排尿障害3~りゅう閉編~

★中医学による排尿障害の概念★

中医学でも排尿障害は「尿閉」「排尿困難」「頻尿」「尿失禁」・・・・など

現代医学と同様に、幾つかの症状が含まれます。

この中で、「尿失禁」は以前に紹介されておりますので、今回は「排尿困難」「尿閉」「頻尿」「尿意急迫」「残尿感」などを主訴とする疾患について紹介します。

中医学では以上のような症状を主訴とする疾患は「りゅう閉」「淋証」の2つがあります。

先ず、この2つの疾患についての共通点と相違点を簡単に紹介しましょう。

 

▼ 共通点

①、 小便が点滴して出難い

②、 残尿感を伴うこともある

▼ 相違点

 

=りゅう閉=

=淋証=

①1日の総尿量

減少

減少しない

②小便の頻数

頻数しない

頻数する

③排尿痛

排尿痛少ない

排尿痛有り

以上のような共通点や相違点があります。

それでは、「りゅう閉」から説明始めてみたいと思います。

 

★★ りゅう閉 ★★

『りゅう閉』の「りゅう」には排尿時に小便の出がわるく、少量しか出なく、下腹部が充満して隆起した状態で、病勢が比較的緩慢なものを指します。

「閉」は小便が閉塞して出ない状態で、病勢が比較的急性なものを指します。

『りゅう閉』とは、排尿困難となり小便が出にくく、重度の場合は閉塞が起こり小便が不通 になる病症を指します。

 

「りゅう閉」はその病因・病機により下記の6つの証に分類されます。

Ⅰ、湿熱が膀胱に下注して起こるもの

Ⅱ、肺に熱が鬱積して起こるもの

Ⅲ、脾の気の不足により起こるもの

Ⅳ、腎陽の不足により起こるもの

Ⅴ、肝の気が鬱滞して起こるもの

?、血の滞りによって起こるもの

 

「りゅう閉」は、以上のように分類をすることができます。

次に上記の分類に従って、病因・病機~弁証名~症状~治療、の順に説明してゆきます。

 

Ⅰ【湿熱が膀胱に下注して起こるもの】

《病因・病機》

病因のところで説明しましたが「肥甘厚味の過食」や「飲酒過度」は体内で湿熱を生みます。

飲食物により生まれた湿熱は、当初は中焦といって腹部の辺りにありますが、湿の重い性質により下部へと移行して膀胱へ入り込んでしまいます。(湿熱下注)

又、性器を不衛生にしていると、性器を通じて濁気が膀胱へ入り込み湿熱となります。

膀胱の生理作用で説明しましたが、尿が体外に排出されるのは膀胱の気化作用によるものです。

膀胱に入り込んだ湿熱は膀胱の気化作用を失調させてしまいます。

又、腎の熱が膀胱へ転移して湿熱が鬱積し、膀胱の気化作用を失調させる場合もあります。

いずれにしても、湿熱が膀胱へ侵入することにより起こる「りゅう閉」です。

 

≪弁証≫

湿熱が膀胱に入って起こるりゅう閉ですから、

弁証は『湿熱りゅう閉』又は「膀胱湿熱証」となります。

≪症状≫

〈主症状〉

小便は点滴状で尿量少・排尿困難・閉塞・・・・膀胱の気化作用の失調のためです。

尿量黄色又は赤色で灼熱間を伴う・・・・湿熱の熱の特徴です。

 

〈随伴症状〉

下腹部が急に痛む・・・・湿熱の湿の粘調の性質で気血が阻滞を起こして痛みが出ます。

咽の渇き・・・・湿熱の熱の特性より体内の水分が損耗されてしまい、咽が渇きます。

≪治療≫

『清熱利湿』といって、熱を下げ湿を体外へ排出する治療を施します。

 

Ⅱ【肺に熱が鬱積して起こるもの】

≪病因・病気≫

「熱邪壅肺(ねつじゃようはい)」と言って、外因に含まれる「熱邪」を受感してしまうと、その熱が肺に停滞してしまうことがあります。

すると肺の生理作用の1つである「粛降作用」が失調を起こしてしまいます。

「粛降」とは、下方へ降ろす作用でした。

 もう一度、水液代謝を思い出してみましょう。

肺は脾から送られてきた有益な水液を「粛降作用」により下方に降ろしておりました。

つまり、粛降作用により水液は全身を巡り腎に到達することができるのです。

更に腎に送られた水液のうち、再利用できないものは膀胱へと送られ、排尿されました。

「粛降作用」が失調を起こすと、水液が下方へ降りて行きづらくなってしまい、腎へ送られる水液の量 が減ってしまいます。

腎へ送られる水液量の減少は、膀胱へ送られる水液量の減少につながり、最終的には尿量 の減少になるわけです。

 

≪弁証≫

肺に熱が鬱積して起こるりゅう閉ですから、『肺熱りゅう閉』となります。

≪症状≫

〈主症状〉

小便は点滴状か閉塞・・・・・・・・膀胱へ水液が送られてこなくて起こります。

尿の色は黄色・・・・・・・・・・・熱邪の特徴です。

 

〈随伴症状〉

咽の渇き・・・・・・熱の特性より体内の水分が損耗されてしまい、咽が渇きます。

咳嗽・・・・・・・・肺の「粛降作用」が失調している為に、降ろす働きが弱くなり気が逆流(上逆)して上がってきてしまい起こります。

 

≪治療≫

『清泄肺熱』といい、肺の熱を下げる治療を施します。

 

 

Ⅲ【脾の気の不足により起こるもの】

≪病因・病気≫

脾の生理作用の説明の際にも触れましたが、飲食の不節・過度の過労・長患いなどは脾の機能損傷をきたします。

その結果、運化作用や昇清作用の失調が起こります。

正常な水液代謝や脾の生理作用が理解されておられる方なら、既にピンときていると思いますが、これらの機能失調は、脾から肺へ送られてくる水液量 の減少を意味します。

肺に送られてくる水液量が減少すれば、当然体内を巡る水液量も減少し、最終的には尿量 の減少に繋がります。

 

≪弁証≫

脾は体の概ね真ん中にありますので『中虚りゅう閉』又は、「脾気虚証」となります。

 

≪症状≫

〈主症状〉

小便の出が悪い・すっきり出ない又は出ない・・・膀胱へ運ばれてくる水液が減少しているためです。

又、エネルギー不足の為、押し出す力もありません。

排尿後疲労感がある・過労で症状が増悪する・・・・運化作用の失調により、エネルギー不足(気虚)になっているためです。

 

〈随伴症状〉

下腹部が下垂して張った感じがする・・・昇提作用の失調のため下垂感が現れます。

食欲不振・・・・運化作用の失調のため、消化吸収能力が低下し食欲不振となります。

精神疲労・息切れ・だるさ・・運化作用の失調によりエネルギーが不足しておこります(推動作用や宗気の不足)。

 

〈治療〉

『益気健脾』といい脾をたて治し、エネルギー不足を解消させます。

 

 

Ⅳ【腎陽の不足により起こるもの】

≪病因・病気≫

老化や長患いは腎を損傷させます。その中で特に腎陽が損傷を受けると、温煦作用が失調を起こします。

腎の生理作用で説明しましたが、腎陽は温煦作用の力で水液代謝や膀胱の気化作用を支えていました。

温煦作用の失調は水液代謝や膀胱の気化作用を失調させ、癃閉をまねきます。

 

≪弁証≫

腎が損傷して温める力がなくなっておこるりゅう閉ですので、

『腎虚りゅう閉』又は「腎陽虚証」となります。

 

≪症状≫

〈主症状〉

小便が出ない・ポタポタとしか出ない・・・・腎陽虚により水液代謝や膀胱の気化作用が失調しているためにおこります。

排尿に力が入らない・・・・腎陽虚は脾陽を損傷させます。脾陽虚はエネルギー不足となりますので、押し出す力がなくなってしまいます。

老化や過度な性交渉などで症状が増悪します・・・老化や過度な性交渉は腎を損傷させてしまいりゅう閉をまねきます。

 

〈随伴症状〉

寒がり・・・・腎陽虚により体を温める力がなくなっているためにおこります。

顔色が蒼白い・・腎陽虚により気血が循環できず(温運)おこります。

精神不振・・・腎陽虚が進み気虚(エネルギー不足)となり、気の推動作用が失調しておこります。

腰膝に力が入らない・・・腎は「腰の府」と言われ、腎虚になると腰や膝を栄養できなくなりおこります。

(詳しくは腎の生理作用を参照してください)

朝方下痢をする・・・・朝方は気温が一番下がる時間です。この時に体を温める力がないとお腹に冷えが入り下痢をします。

下腹部の冷え・・・・腎は腰の位置にありますので、腎陽虚になると腰や下腹部に冷え感がでます。

 

≪治療≫

「温補腎陽」といって腎陽を補う治療を施します。

 

 

Ⅴ【肝の気が鬱滞して起こるもの】

≪病因・病機≫

病因の内因で説明した情志の失調によるもので、情志が抑鬱状態になると肝の気が鬱滞を起してしまいます。

その結果、肝の生理作用である「疏泄」の機能の低下がおこります。

疏泄の働きの1つに、気血の運行の促進がありました。

疏泄機能が低下することにより、気血の運行も低下を起します。

気は全ての働きの原動力ですから、気血の運行の低下は様々な働き低下させてしまいます。

そのことにより、気化作用や水液の通路である三焦に影響を及ぼしりゅう閉をまねきます。

 

≪弁証≫

肝の気が鬱滞して起こるりゅう閉ですから『肝鬱りゅう閉』となります。

 

≪症状≫

〈主症状〉

小便がすっきりでない・・・疏泄機能の低下によるものです。

下腹部や脇に脹った痛みがある・・・気の流れが渋滞を起すと脹った痛みが出現します。

下腹部や脇には肝と関わりのある経絡が通るので、この部位に脹痛が出ます。

怒りや情志の失調で症状は増悪します・・・情志の失調やイライラは更に疏泄作用を失調させます。

 

〈随伴症状〉

普段からイライラや怒りっぽい・・・・疏泄の作用の1つに情志活動の調節がありますので、疏泄機能が低下すると情志を調節できなくなり、怒りっぽくなったり、いつもイライラするようになります。

咽が渇き、水分を欲する・・・・気の流れが渋滞を起し、熱化してしまったため体内の水分を損傷させてしまっておこります。

便秘・・・・これも熱が腸の水分を損傷しておこります。

 

≪治療≫

「疏肝理気」といって肝の気を流してあげる治療を施します。

 

 

?【血の滞りによって起こるもの】

≪病因・病気≫

血の滞りが尿路を塞ぐために起こります。(イメージ的には現代医学の尿路結石みたいなものです。)

血の滞りのことを「オ血」と言いました。

「オ血」の原因は大きく分けると4種類ありますが、りゅう閉に関係のある原因は「気滞」と「血熱」です。

外傷を受けると血が血脈から流れ出てしまい、更に外傷を受けた部位では気の流れも滞り気滞をおこします。

「オ血」の説明で触れましたが、気の流れが滞ると血の流れも滞ってしまいます。

このことを気の滞りによって生まれる「オ血」ですから『気滞血オ』と言います。

つまり、外傷によって流れ出た血は、その場所で『気滞血オ』となって留まってしまいます。

又、血に熱が侵入すると、熱が血を煮詰めてしまい「血熱血オ」となります。

 

更に「オ血」は塊(腫塊)を生じる特性があります。

外傷や熱の血への侵入により生じた「オ血」が尿道を閉塞しりゅう閉を起します。

その他に、脂っこいものや、味の濃い物を食べ過ぎて(過食肥甘厚味)生じた湿熱が、膀胱へ入り煮詰まり結石となり尿道を閉塞する場合もあります。

 

≪弁証≫

血オによって起こるので「血オりゅう閉」となります。

 

≪症状≫

〈主症状〉

尿がポタポタとしか出ないか、細い。出ない場合もあります・・・尿路が閉塞されているためです。

下腹部が脹って痛む・・・尿路の途中までは尿が来ているからです。

 

≪治療≫

『行オ散結』と言って、オ血をとり尿道を清利します。

 

以上が「りゅう閉」についての中医学的説明になります。

次に「淋証」についての説明に入りましょう。

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