コラム

2019/03/12
【内科疾患】風邪について

今日は風邪〈かぜ〉についてのお話です。一般にお医者さんにかかる理由で一番多いのも、この風邪〈かぜ〉かもしれませんね。それだけ身近にある病気です。

 

しかし、実は、風邪〈かぜ〉という病名はありません。正式には、かぜ症候群という上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)の急性炎症の総称として、定義されています。

 

ほとんどが、ウィルスによる感染ですが、まだ発見されていないものも多く、現代医学が克服できない病気の一つです。

 

それではここで、西洋医学的な観点から、風邪〈かぜ〉についてお話しましょう。

 

わかりやすくするため、これからは〈かぜ〉と記しますね。

 

かぜは人間がよくかかる病気で、90%近くがウィルスによる感染です。

 

インフルエンザウィルスの感染で起こった場合をインフルエンザ、それ以外のウィルス、細菌などによる感染の場合を普通 感冒と分類します。

 

鼻かぜや、お腹にくるかぜ…というように、かぜにかかって出る症状は様様です。

 

代表的な症状をとしては、

・ 頭痛、発熱、

・ 咳、痰、喉の痛み

・ 鼻水、鼻詰まり、くしゃみ

・ 腹痛、下痢、嘔吐

・ 関節痛、筋肉痛

・ 全身倦怠感

 

などがあります。症状の違いは原因となるウィルスや、本人の年齢、体質によってもことなります。

 

代表的なウィルスと、それによる症状をみてみると

 

○ ライノウィルス-鼻症状(鼻水・鼻づまり・くしゃみ)

○ アデノウィルス・エンテロウィルス-のど症状(咽頭痛・喉頭発赤)

○ インフルエンザウィルス-38度以上の高熱・全身症状・関節痛・筋肉痛

○ ノロウィルス・ロタウィルス-感染性胃腸炎・嘔吐・下痢・吐き気

になります。

 

 

☆ウィルスってどんなもの?☆

 

ウィルスとは、細菌よりも小さな微生物で、非常に多くの種類があります。冒頭でお伝えしたように、まだ全部が知られているわけではなく、未知のものも多いのです。

 

かぜの原因となるウィルスは低温・乾燥を好む為、かぜが流行するのは、だいたい冬の時期となります。夏に発症するかぜは種類が異なり、高温・多湿に強いウィルスが原因です。

 

 

かぜは普通、時間の経過とともに症状が変化していき、比較的短期間のうちに治ります。しかし、慢性病のある人や、高齢者は症状を悪化させることも多いので、特に注意が必要です。肺炎などの合併症や、薬の副作用にも十分気をつけなければなりません。

 

また、小児のかぜも、自分では症状を的確に表現できないこともありますので、親の観察と判断が重要になります。お顔の色や便の状態、汗のかき方、食欲などを、日ごろからチェックしてみましょう。

 

妊娠中の場合は、特に母体・胎児ともに影響を及ぼす場合があるので、自分で判断せず、専門医にアドバイスを受けることをお勧めします。

 

 

 

☆かぜ薬の効果☆

 

市販の感冒薬は、解熱・咳止め・鼻水止め…のように、一連の症状を抑えるものです。かぜの原因となるウィルスに対して決定的な効果 を発揮する治療薬は、残念ながらまだ見付かっていません。抗生物質も実はウィルスに対してはお手上げなのです。

 

かぜはそのほとんどが飛沫感染といって、咳などとともにでる唾液の粒子から、人から人へ感染します。予防には、マスクの着用やうがい、手洗い、また食器などの共用は避けたほうが賢明です。そして何よりも安静を心がけましょう。

 

 

◎ さて、これまでは西洋医学によるかぜのお話でしたが、いよいよこれから中医学的なお話に入ります。人のからだを小さな宇宙と考え、自然界とより密接に関係を結ぶ中医学ならではの考えを、どうぞご覧下さい!

 

 

<中医学による風邪(かぜ)の考え方>

 

よく、「免疫力が低下すると病気になりやすい」と言われます。同じ状況の中にあっても、かぜを引く人と、そうでない人がいることからも、かぜの原因が決して外の環境だけではないことがわかります。外と中―この二つの状態が大きく作用するのです。

 

1. 外部環境、気候条件(暑い・寒い・風が強い・湿度が高い・湿度が低くウィルスが繁殖しやすい…など)

 

2. 自分のからだの状態(疲れている・寝不足・慢性疾患をもっている…など)

 

中医学では、この外からからだに悪い影響を与えるものを、外邪(外因)といい、風邪(かぜではなく、ふうじゃと読む)・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・熱邪(火邪)の六つがあります。

 

とくにかぜの原因となる外邪は、

1. 風邪

2. 寒邪

3. 熱邪

4. 湿邪 

の四つです。

 

それでは、この四つの外邪の特徴を見てみましょう。

 

○風邪○

・ 変化しやすいー病状の進展が早い(かぜも、寒気→発熱→咳→痰のように変化が早い)

 

・ 遊走性、移動性に富むー疼痛部分が移動する。

 

・ 上半身、皮膚をおかすー風邪は性質が軽く、頭、顔面などの上半身、あるいは表面 の皮膚に症状があらわれやすい。うなじや背中がゾクゾクするなど。

 

・ 動揺するーぐるぐるするめまい、けいれん、震えなど。

 

 

☆☆他の邪気を先導する!☆☆

 

ここがポイント!

風邪は単独で人体に侵入することは少なく、他の外邪をともなって、からだに入る。

<風熱・風寒・風湿など>

 

(風邪の症状)

寒気-温めると緩解、発熱、汗が出る、頭痛、鼻水、皮膚のかゆみ、しびれ、ひきつれ

 

 

○寒邪○

・ 冷えー全身、局所の冷寒症状をあらわす。寒気、手足の冷え、お腹が冷たい。分泌物はさらさらで、色は薄く透明。尿が近くなる。

・ 収斂性があるー縮まる。ひきつる。汗孔も閉じる為、汗が出ない。筋肉のひきつれ

・ 凝滞性があるー気・血の流れが停滞する為、こわばりや激しい痛みをともなう

 

(寒邪の症状)

激しい寒気―温めても変わらない、汗が出ない、うなじや背中のこわばり、関節痛、腹痛、下痢、嘔吐、手足の冷え

 

 

○熱邪○

・ 強い熱感―発熱。ほてり。冷たいものを欲しがる。顔が赤い。尿が黄色く濃い。冷やすと緩解。暑い日に悪化。

・ 炎上性があるー炎のように上にのぼる性質を持つ。上半身、特に顔面 部の熱症状

・ 神明をおかすー精神や意識に影響をあたえる。興奮。意識障害など。

・ 発散する-汗が大量に出る。

・ 気や津液を損傷するー大量発汗で体内の水分が損なわれて、皮膚が乾燥したり、喉が渇く。汗とともに気がもれるため、疲れやすいく、だるい。

・ 発疹、出血しやすいー熱邪が血に侵入するとおこる。血熱ともいう。

 

 

(熱邪の症状)

発熱、発汗、喉の痛み、口渇、黄色い鼻水、発疹、鼻血、血尿、目が赤い、いらいら

 

 

○湿邪○

・ 重く沈む性質があるー湿邪に犯された部分が重だるい。

・ 下に沈むー下半身や下肢に症状が出やすい。(膝、足首、腰)

・ 定着するーいったん体内に侵入すると、なかなか取り除くことが出来ない。症状の長期化。治りずらい。

・ 粘ばりがあるーねばねば、じとじと、ベトベトする。痰がねばったり、じとじとした汗をかく。大便がベトベトして便器が汚れる。

・ 脾をやぶるー食べたものを体内でエネルギーに変え、全身に栄養をめぐらせることができなくなる。食欲が落ちる。悪心。嘔吐。手足がむくむ。

 

 

(湿邪の症状)

頭重感、じとじとの汗、じゅくじゅくした湿疹、関節の重だるい痛み、場所の固定した痛み、ジメジメした日の症状悪化。

 

 

では次に、中医学で考えるひとのからだの面から、かぜとの関連性をみてみましょう。

 

<中医学で考えるひとのからだ>

 

「免疫力」…とは現代医学でよく用いられる言葉です。病気に抵抗する力、からだのバリア機能とも言えます。この考え方は中医学にもみられ、特に、からだの表層で外邪と戦う働きを「衛気(えき)」と呼びます。

この衛気が不足すると外邪の侵入を受けやすくなり、かぜも引きやすくなるわけです。

 

○衛気○

衛気―そもそもこれを説明するには、「気」という概念をお話しなければいけませんね。

 

「気」という言葉は、日本でも日常よく使われていますが、中医学で考える時は、次の二つの概念を重要としています。

 

<気>

1. 人体を構成する物質と考える

物質ですから、消耗したり補充できます。気が足りない人には、気を補う治療を行い、邪気が多く病気に罹っている人からは、この邪気を取り除く治療をします。

 

2. 活動性・運動性を持つ

人体の生理作用は、気の活動が中心となっておこなわれます。気の運動形態は、昇ったり降りたりする上下方向の運動と、発散したり収納したりする出入方向の運動が基本となり「昇降出入」と呼ばれます。

 

では実際に「気」が行う生理作用・種類をあげてみましょう。

 

 

☆気の生理作用☆

・ 人体を栄養する

・ 活動を推進する、ものを動かす

・ からだを温める

・ 病邪、外邪と闘う

・ 異常発汗や出血、遺精などを制御し、内臓の位置を保つ

・ 生体内での物質の相互変化や代謝を行う

 

☆気の種類☆

中医学では、働きや生成される場所などにより、気をいくつかに分類します。ここでは、代表的なものをご紹介しましょう。

 

・ 元気―生命活動の原動力となる。「原気・真気」とも呼ばれ、人体の発育や臓腑組織の活力を旺盛にする。

・ 宗気―心拍運動や呼吸を促進する、胸部にある臓器の働きに関与

・ 営気―特に栄養作用を強く示す。「栄気」ともよばれる。血液の成分となる。

○ 衛気-体表を防御する!!

 

 

やっと本題の「衛気」が出てきましたね。ここから衛気のお話に入ります。

 

衛気は先ほどあげた気の六つの生理作用の中で、特に<防御作用・温ク作用>を強く持っています。体表では、肌表を保護して外邪の侵入を防ぎ、汗孔の開閉を管理して体温調節を行います。また、肌の潤いを保つのも衛気の働きによります。

 

体内では筋肉や臓腑組織を温め、その活動を活発にします。

 

◎もし、この衛気が不足したら…◎

外邪からからだを守ることが出来なくなり、特に「風邪(ふうじゃ)」の侵入を受けやすくなってしまいます。いわゆる「かぜをひきやすい」状態です。

 

◎ どうしたら衛気が不足するの??◎

からだを守る働きは、肝・心・脾・肺・腎という五臓のうちの「肺・腎」と密接に関わっています。衛気自体は「腎」という臓にある両親から受け継いだ先天の精を源とし、飲食物からエネルギーを滋養して生成されます。この衛気を「肺」の発散力(宣発作用)によって体表に広く分布して、外邪の侵入を防いでいるのです。

 

慢性病にかかったり、からだ自体の気が消耗していれば衛気自体が不足することになります。また、「肺」の機能が低下していても衛気を体表に行き渡らせる事が出来ず、防衛機能は衰えてしまいますね。

 

 

さてここで、かぜの話に戻りましょう。

 

中医学では、かぜを「感冒」と称します。感冒は、衛気が弱くなった所に、風邪を感受して発病します。季節でみると、春夏には風熱、梅雨時期には暑湿、そして秋冬には風寒をともなうことが多いと言われます。風邪は寒邪・熱邪と結びついて、それぞれ風寒・風熱と言われます。この「寒・熱」の違いは、体温計で測れるものではなく、あくまで患者さんの訴える症状をもとに、脈・舌・顔色…などを考慮しながら診断します。たとえ39度の発熱があっても、本人が寒気や水様性の鼻水を訴えれば、「寒症状」ととらえます。

 

弁証

風寒

風熱

暑湿

 

季節

秋~冬

春~夏

梅雨(長夏)

 

病機

寒邪が体表から侵入。肺の宣発作用が損なわれ温めることも出来ず、寒冷症状を示す。

熱邪が肺を犯す。肺の粛降作用(呼吸で得た清気を腎に降ろしたり、余計な水分を膀胱に送る)が低下。熱症状を示す。

暑湿の邪気が、飲食物の消化、運化作用を失調させる。消化器症状を示す。

 

症状

悪寒・軽度の発熱・汗が出ない・頭痛・水様性の鼻水・くしゃみ・・水っぽい痰・口渇は無い

高熱・悪寒は軽い・喉の腫れ、痛み・口渇・咳そう・痰は黄色く濃い・目が赤い・黄色い鼻汁

頭痛・体に熱がこもる・関節痛・胸悶・お腹が痞える・汗はあまり出ない・腹痛・下痢・口が粘る

 

良い食べ物

体を温めて、寒邪を発散させるものが良い。

例)生姜・ねぎの白い部分・紫蘇・にんにく・こしょう・きんかん・シナモン

熱を外にだすものが良い。

例)薄荷・いちご・梨・緑豆・すいか・冬瓜・ゴーヤ

身体にこもっている熱、体内に停滞している余分な水分を排出するものが良い。

例)緑豆・はとむぎ・あずき・すいか

 

好ましくない食べ物

性質が涼のもの。生もの。体を冷やすもの。

例)生野菜・すいか・柿・なす・冬瓜・きゅうり・トマト

性質が熱や湿のもの。

例)ラム肉・こしょう・唐辛子・生姜・シナモン・人参・卵・にんにく

性質が熱や湿のもの。

例)風熱に同じ

 

症状に合うお茶・飲み物

杏仁茶

紫蘇入り生姜茶

ねぎ入りお味噌汁

菊花茶と緑茶を混ぜたもの

ミントティー

緑豆

はすの葉茶

はとむぎ茶

 

治則

去風散寒

 

宣発解表

疏散風熱

 

清粛肺気

清化暑湿

 

解表和裏

 

配穴

大椎・風池・風門・ 肺ゆ・合谷・列欠

(大椎・肺ゆにはお灸も良い。また汗が出ない時は、合谷・復溜も加える。)

大椎・合谷・外関・ 肺ゆ・尺沢・魚際

(喉の痛みがある場合は、列欠・照海を加える。)

大椎・合谷・曲池・ 中かん・足三里・ 陰陵泉

(吐き気や嘔吐がある場合は内関を加える)

 

※ どんな症状でも、感冒にかかったら安静は必要となります。

 

まずは日ごろから過労・飲食不摂生・寝不足を避けて気を充満させ、風が強い日は特に、からだ(首~背中)に直接風が当たらないような服装を心がけましょう。

 

以上、中医学によるかぜの考え方をお話させていただきました。

 

いかがでしたでしょうか??

 

鍼治療を受けたことが無い方も、また中医学に初めて触れた!という方も、今日をきっかけにして、中医学の鍼灸に興味を持っていただけたら、本当に嬉しいです。

 

からだの声に耳を傾けながら生きるーそうすれば、自分自身が、自分にとっての名医となれるのでは…と思います。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/03/12
【その他】痿証について1

『痿証』とは中医学用語です。

中医学の古典には「痿証とは肢体の筋肉が弛緩・弱化し、病の進行とともに萎縮する病証」と記されております。

症状としては、初期は下肢の脱力感が多くみられ、徐々に手足が弱化してまいり、最終的には筋が萎縮してしまい、運動障害をきたします。

 

現代医学ではこの様な症状を引き起こす疾患には「脊髄空洞症」「重症筋無力症」「進行性筋ジストロフィー」「筋萎縮性側索硬化症」「ギランバレー症候群」「多発性筋炎」・・・・など沢山あります。

勿論、これは代表的な疾患ですから、その他にも沢山の病気が存在します。

尚、これらの疾患については現代医学の専門のHPの方を参照して下さいませ。

 

次に、中医学の視点から『痿証』について説明をしてまいりましょう。

 

★ 痿証について★

*はじめに*

中医学は独自の理論によって構成され、専門用語を多く使用します。

それらの理論や用語は現代医学に慣れ親しんでいる我々にとっては非常に難解で馴染みづらいものであります。

そこで先ず、「痿証」の説明を読まれる前に、「病気別・わかる東洋医学診断」に掲載されている「わかりやすい東洋医学理論」をお読みになって、予め東洋医学の概念的なイメージを掴まれてから、この後を読まれることをおすすめいたします。

これ以降については、説明を出来るだけ簡素にするため、皆様が「わかりやすい東洋医学理論」を読まれているという前提で説明させて頂きますので、ご了承下さい。

さてここでは、「痿証」を理解するために、「わかりやすい東洋医学理論」をもう少し補足したいと思います。

 

《陰陽論について》

陰陽についての概論的な事は既にご理解されていると思いますので、ここでは人間を構成する基礎的なものである「気・血・水(津液)」や「働き」を陰陽で分類してみたいと思います。

『陽』に属す物としては「気」があります。

気はそれぞれの臓腑の働きを促進させたり、体を温める作用などがあります。

『陰』に属す物は「血と水(津液)」があります。

これらの働きには体を潤したり冷却する作用があります。

又、この分類はそのまま「働き」に置き換えることができます。

体を温める働きは「陽」に、体を冷却したり潤す働きは「陰」に属します。

 

《臓腑について》

臓腑については「わかりやすい東洋医学理論」で大まかな説明がありますのでここでは、「痿証」に関係のある臓腑についてだけもう少し説明をします。

 

『肺』

肺の主な生理作用には「宣発・粛降・水道通調」があります。

これらの説明をする前に、中医学の考える体内水液代謝から説明したいと思います。

口から摂取された水分は胃を経由し小腸へと送られます。

小腸は「必別清濁」といい、送られてきた水分を人体に有益な水液と不要な水液に分けます。

人体に有益な水液は脾に運ばれます。脾は小腸から送られてきた有益な水液を消化吸収して肺へ送ります。

肺は「宣発作用」で先程の有益な水液などを皮毛に散布します。

「宣発」とは散布・発散の意味で、肺が有益な水液を「宣発」することにより皮毛や筋肉は栄養されたり、潤されております。

次に散布された有益な水液は肺の「粛降作用」により身体全体を巡りながら下降し、腎へ集められます。

その後再利用できる水液は肺へ戻され、不要な水液は膀胱で貯尿された後排泄されます。

最後に「水道通調」ですが、「水道」とは脾~肺~全身~腎~膀胱~排泄の水液が流れるルートをいいます。

「通調」とは、調節の意味があります。

つまり「水道通調」とは、脾から排泄までの水液の流れが滞らないように調節する作用をいいます。

もう一度「肺」の作用をまとめてみましょう。

肺は「宣発作用」により有益な水液を皮毛に散布します。

次に「粛降作用」により散布された水液は全身を巡りながら下降してゆきます。

このように肺は体内の水液循環に深く携わり、水液の運行が滞らないようにしております。

このような働きを「水道通調」といいます。

 

『肝』

「わかりやすい東洋医学理論」で「血」の説明があったかと思います。

血は全身を巡り、筋や器官など様々の物を栄養して「肝」で貯蔵されます。

更に「肝」は「血」を貯蔵するだけでなく血の体内循環量の調整も行います。

例えば体内を巡っている血液の量が少なくなってきた場合は「肝」は貯蔵してある「血」を血脈へと供給し循環量 を正常な量へ戻します。

逆に体内循環量が多すぎれば貯蔵量を増やして、循環量を正常値へもどします。

以上のように「肝」の働きの1つには「血の貯蔵と循環量の調整」があります。

 

『腎』

「腎」の働きは沢山ありますが、その中の1つに「精を蔵す」働きがあります。

「精」の概念は中医学独特のもので、詳しく説明すると長くなってしまいますので、ここでは「人体を構成したり、生命活動を維持するためのエネルギーの根源」とだけイメージしていただければ結構です。

例えば、赤ちゃんがお母さんのお腹から生まれて直ぐにミルクを飲まなくても、しばらくは生きていられます。

これは既にあかちゃんは何処かにエネルギーを貯えているからです。

このエネルギーが「精」であり、貯えている場所が腎になります。

又、精から髄が生まれ、髄は脳や骨を養っております。

 

『精と血・腎と肝』

精と血は深い関係にあり、お互いに変化しあって生命活動の維持をしております。

例えば何らかの理由で血が足らなくなった場合は、精が血へと変化し血の減少を抑えようとします。

逆に何らかの理由で精が減少した場合は、今度は血が精へと変化することで、精の減少を抑えようとします。

以上のことから精と血は『精血同源』と言われ、腎は精を蔵し肝は血を貯蔵することから、『肝腎同源』とも言われます。

このように、精と血はお互いに変化し合うことで、精や血の不足が起こらないようにしております。

ところが、どちらか一方が過剰に減少してしまい、もう片方が減少を抑えようと過剰に変化してしまうことで、結果 的に「精」も「血」も両方とも足らなくなってしまうことがあります。

このような状態を「肝腎不足」又は「肝腎陰虚」といいます。

これは後ほど痿証の病因・病機で出てきますので、是非覚えておいてください。

2019/03/12
【その他】痿証について2

「痿証」とは冒頭でも述べたように、中医学による疾患名で、「痿躄(いへき)」ともいいます。

「痿」とは肢体が萎えて運動障害が生じた状態を言い「躄」とは足に力が入らないことをいいます。

一言でいってしまえば「痿証」とは四肢の筋肉が弛緩・軟弱・無力となり、進行した場合には筋肉の萎縮や運動障害をまねく病証です。

初期の段階では、下肢の脱力感がみられ、徐々に手足の弱化が起こり、痺れや感覚の消失が起こります。

重症になってくると物が持てなくなったり、体を支えられなくなったり、さらに進行すると筋肉の萎縮が進み自分の意思で手足をコントロールできなくなります。

 

* 「痿証」の病因・病機*

「痿証」は下記のような機序で起こります。

A:湿熱が肺を損傷して起こるもの。

B:湿熱が経脈侵入して起こるもの。

C:脾胃のエネルギー不足によって起こるもの。

D:肝と腎のエネルギー不足によるもの。

以上の4つがあげられます。

 

*「痿証」の分類*

「痿証」には、その病因・病機、及び症状により概ね以下の様に分類されます。

①肺熱到痿 ②湿熱発痿 ③脾胃虚痿 ④肝腎虧痿 ⑤脈痿(心痿)

⑥筋痿(肝痿) ⑦肉痿(脾痿) ⑧骨痿(腎痿) ⑨皮毛痿(肺痿)

 

さて、以上が「痿証」の分類になりますが、これ以降については病因病機で分類し説明をしてゆきます。

 

 

【湿熱が肺を損傷して起きるもの】

湿熱が肺を損傷して起こる「痿証」ですから、『肺熱到痿』といわれます。

また、分類で紹介した「皮毛痿」もこの中に含まれます。

 

≪病因・病機≫

湿熱の邪が肺へ侵入して、肺や津液を損傷させてしまうことにより、筋肉を栄養できなくなり発症します。

 

《症状》

*主症状*

①手足の筋力の低下や筋萎縮・・・熱により体内の水分(津液)が損傷され、筋肉を栄養できなくなり起こります。

 

*随伴症状*

①発熱・から咳・のどの渇き・・・熱により体内の水分(津液)が損傷されて起こります。

②皮毛の乾燥や光沢の消失・・肺は「宣発作用」により有益な水液を皮毛に散布していますが、熱により体内の水分(津液)が損傷されたり、肺の「宣発作用」が低下してしまうと、皮毛を潤すことができなくなり、皮毛が乾燥したり光沢の消失が起こります。

この様な状態が先程分類にありました「皮毛痿」です。

 

 

【湿熱が経脈侵入して起こるもの】

湿熱が経脈侵入して起こる「痿証」ですから、「湿熱発痿」といわれます。

 

≪病因・病機≫

『わかりやすい東洋医学理論』に「外因」についての説明があったと思います。

その「外因」の中にあった「湿邪」を受感し、更に長期間体内に「湿邪」が留まってしまったことにより熱化をおこすと、「湿邪」は「湿熱」と変わります。

「湿熱」が経脈に侵入し気血の流れが妨げられ、筋肉を栄養できずに起こります。

又、「湿邪」を受感しなくても、甘い物・味の濃い物・油っぽい物・辛いも物などを食べ過ぎても、体内で「湿熱」を産んでしまうことがあります。

(外因については『わかりやすい東洋医学理論』を参照してください)

 

《症状》

*主症状*

足の筋力低下や麻痺・・・・湿邪は湿気ですから水分です。水は高所から低所へ流れます。

体内でもこれと同じことが起こりますので、湿邪は体の中での下部である足へ影響を及ぼし、筋力低下や麻痺がおこります。

 

* 随伴症状*

① 腹部がつかえる・・・・腹部に湿が停滞しておこります。

② 体が重だるい・・・・・湿が体内にあると、手足や頭が重だるく感じます。

③ 排尿痛・・・・・・・・湿が下腹部に侵入するとおこります。

④ 小便が赤く少量・・・・湿熱の熱の特性です。

 

 

【脾胃虚弱によるもの】

脾胃虚弱によって起こるので「脾胃虚痿」といいます。

 

≪病因・病機≫

『わかりやすい東洋医学理論』で「気・血・水」の説明があったかと思いますが、その中で、「血は様々な器官に栄養や潤いをあたえます」と説明されておりました。

筋肉も「血」によって栄養されております。

「血」は脾や胃の働きによって作られます。

したがって、何らかの原因によって脾胃が虚弱となってしまうと、「血」を作る能力が低下してしまい、最終的には筋が栄養されなくなり運動麻痺が起こります。

 

《症状》

*主症状*

運動麻痺などは緩やかに進行する・・・・脾胃虚弱はエネルギー不足の状態です。

基本的にエネルギー不足からくる病症の進行は緩やかな場合が多いようです。

 

*随伴症状*

①食欲不振・倦怠感・・・脾胃虚弱の為に消化吸収能力が低下しておりますので、それに伴い食欲も低下してまいります。又、「気・血」の生成能力が低下している為エネルギー不足の状態ですから倦怠感もでてまいります。

②むくみ・・・・消化吸収能力の低下は体内の水液代謝も悪くしますので、むくみが現れます。

 

 

【肝腎不足によるもの】

肝腎不足によって起こるので、「肝腎虧痿」といわれます。

分類で紹介した「筋痿(肝痿)」「骨痿(腎痿)」もここに含まれます。

 

《病因病機》

先程、肝や腎の説明で「肝腎不足」の説明をいたしましたが覚えていますか?

「肝腎不足」とは、肝に蔵されている血と腎に蔵されている精が両方とも不足してしまった状態でした。

先天的に腎のエネルギー不足・長患い・慢性病・老化・過剰なSEXや自慰行為は「肝腎不足」をまねきます。

その結果、筋骨を養えなくなって運動麻痺が起こります。

 

《症状》

*主症状*

特に下肢の筋力低下・運動麻痺・・・・肝腎陰虚の特徴で下肢に発症しやすい

 

*随伴症状*

①膝や腰に力が入らない・腰背部のだるさ・耳鳴り・難聴・遺精・抜け毛・・・腎精不足の症状です。

③月経不順・目のかすみ・・・・・・肝血不足の症状です。

 

 

▼その他の「痿証」について

 

『脈痿(心痿)』について

中医学では「心(しん)」は血の循環を統括しております。

そのことから「脈痿」は「心痿」とも言われます。

何らかの原因で心のエネルギーが熱化を起こすことがあります。「化熱上炎」と言って通 常熱は対流によって上に昇ります。

心のエネルギーが熱化して上に昇るとき、血も導いて昇ってしまいます。

すると下半身の血量が減ってしまい筋肉を栄養できずに「痿証」を起します。

ですからこの場合の症状は下半身に現れます。

又は、多量の出血することにより体内に血の量が減って起こる場合もあります。

 

 

『筋痿(肝痿)』について

中医学では「肝は筋を主する」と考えておりますので、「筋痿」は「肝痿」とも言われます。

肝の気は通常上方へ流れます。しかし何らかの原因で過度に上に流れてしまう事があります。

又、冒頭の「肝」の説明で触れましたが、「肝」は血を貯蔵しておりました。

肝に貯蔵されている血量が減ったり、過度に肝の気が上に流れたりして起こる「痿証」をいいます。

主な症状としては、筋のひきつりや痙攣が起こり、徐所に筋肉の弱化が進行し運動障害が発症します。又、勃起不全なども起こります。

 

 

『肉痿(脾痿)』について

中医学では「脾は肌肉を主る」と考えておりますので、「肉痿」は「脾痿」とも言われます。

「肉痿」は先程説明した「脾胃虚痿」に含まれるものと、脾のエネルギーが熱化して起こるもの、長期にわたり湿気を受感した結果 、湿邪が肌肉を障害して起こるものがあります。

主な症状としては、皮膚や筋肉の麻痺や無感覚・筋肉の弱化などがあります。

 

 

『骨痿(腎痿)』について

中医学では、骨と腎は深い関係にあるので「骨痿」は「腎痿」ともいわれます。

先程説明した「肝腎虧痿」に属する「痿証」です。

腎に蔵されている精(腎精)から骨髄が造られ、骨髄は骨を栄養します。

何らかの原因で腎精の不足が起こると骨が栄養されなくなり「骨痿」が発症します。

又、腎の気が何らかの原因で化熱をしても骨髄が減少して骨に影響が出る場合もあります。

 

《治療》

「痿証」の治療については先ず、「疏通経絡」といって経絡の流れを促進させ、更に筋肉や骨を栄養してあげることが基本になります。

同時に先程説明したそれぞれの病因に対しての治療を加えます。

 

では次に各病因や分類に対しての治療を紹介しましょう。

①肺熱到痿

「清肺潤燥」「養陰生津」と言って、肺に潤いを滋養する治療をおこないます。

②湿熱発痿

「清熱利湿」と言って、熱を下げて湿を取り除く治療をおこないます。

③脾胃虚痿

「健脾益気」と言って、脾を元気にして気を益す治療をおこないます。

④肝腎虧痿

「滋補肝腎」と言って、肝血と腎精を補充する治療をおこないます。

⑤脈痿(心痿)

「清心瀉火」「活血養血」と言って、心の熱化を抑え、血を養い全身へ巡らす治療をおこないます。

⑥筋痿(肝痿)

「清肝養血」といって、肝を鎮め肝血を養う治療をおこないます。

⑦肉痿(脾痿)

「清熱利湿」「健脾和胃」と言って、熱を下げて湿を取り除き、脾と胃を元気にする治療をおこないます。

⑧骨痿(腎痿)

「補腎益精」「養陰清熱」と言って、腎精を補し陰のエネルギーを増すことで熱を下げる治療をおこないます。

⑨皮毛痿(肺痿)

皮毛痿は肺熱到痿に含まれますから、治療法は肺熱到痿と同様に「清肺潤燥」「養陰生津」になります。

 

 

《養生法》

皆さんも既におわかりのように「痿証」には多くのタイプや病因がありますので、養生法も色々あります。

その全てを紹介することは不可能なので、ここでは病因に対する食養生を紹介いたします。

 

【湿・熱に対する食養生】

湿と熱では養生法が若干異なりますのでここでは「湿」と「熱」に分けて紹介いたします。

 

《熱に対する食養生》

麦・あわ・とうもろこし・はとむぎ・そば・緑豆・浜納豆・豆腐・豆乳

ピータン・プレーンヨーグルト・かに・あさり・ところてん・昆布・のり

わかめ・しじみ・きゅうり・とうがん・ズッキーニ・にがうり・レタス

白菜・セロリ・なす・たけのこ・ごぼう・大根・チンゲン菜・トマト

キウイ・スイカ・レモン・梨・メロン・バナナ・柿

 

《熱に対する生活上の注意点》

◎脂っこいもの・味の濃い物・甘いもの・お酒・肉類は食べ過ぎないように注意しましょう。

◎熱いお風呂も避けましょう。

 

《湿に対する食養生》

はと麦・とうもろこし・そば・はすの実・小豆・大豆・緑豆・黒豆・えんどう

空豆・あさり・あわび・しじみ・はまぐり・ふな・どじょう・こい・すずき

昆布・のり・わかめ・ところてん・にがうり・たけのこ・きゅうり

さやえんどう・セロリ・とうがん・もやし・白菜・ズッキーニ・ごぼう

すいか・すもも・ぶどう・キウイ・メロン

 

《湿をとる健康茶》

柳茶・プーアール茶・紅茶・ジャスミン茶

 

《湿に対する生活上の注意点》

◎脂っこいもの・味の濃い物・甘いもの・冷たい水分の食べすぎに注意しましょう。

◎適度な運動(汗をかく位)をしましょう。

◎冷えは水液代謝を悪くしますので、体を冷やさないようにしましょう。

お風呂はぬるめのお湯で長めにつかりましょう。

 

《脾と胃の食養生》

ピーナッツ・なつめ・金針菜・くり・メロン・しいたけ・アボガド・ゆりね

そらまめ・にら・さくらんぼ・さといも・ひらたけ・ふな・鯉・サメ・真鯛

はも・たちうお・どじょう・ひらめ・大麦・もち米・米・牛肉・羊肉・きじ

蜂蜜

 

《肺を潤してくれる食べ物》

松の実・さとう・りんご・バナナ・ピーナッツ・さめ

 

《腎の食養生》

くり・・・腎と筋を補ってくれます。

ナマコ・鶏肉・・・・腎精を益してくれます。

 

《肝血を増やす食養生》

金針菜

 

《肝腎虧痿の食養生》

にがうり・にら・ぶどう・クコの実・ごま・いか・たまご

 

《髄や骨を補う食べ物》

アーモンド・かに

 

《その他の養血作用のある食べもの》

レンコン・豆乳・ぶどう・大豆・鶏肉・さめ・ナマコ・いか・うなぎ

 

以上が食養生になりますが、その他に理学療法・機能訓練・マッサージなども併行するとよいでしょう。

 

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

2019/03/12
【内科疾患】慢性肝炎

6ヶ月以上炎症が持続する場合、慢性肝炎といいます。慢性肝炎を起こすウイルスは今のところB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)と考えられています。日本人では人口の1~2%がHBV、HCVのキャリアーとされています。日常良くみられる疾患で慢性肝炎と区別 を要するものに脂肪肝があります。これは慢性的に肝機能障害が持続しますが、肝臓の炎症(肝炎)を起こすことは稀です。

頻度的には慢性肝炎の約70%がC型肝炎で、B型肝炎が約15%、自己免疫性肝疾患数%とされています。

肝機能が悪化しているのを知らずに放置していると、次第に慢性肝炎から肝硬変へと病気が進行し、ついには肝臓癌に至ることがあるのです。したがって、これらのウイルス性肝炎に対する治療は、肝臓癌を減らすために非常に重要な意味を持つのです。

 

中医学的では独自の理論に基づき、現れている症状や日常の生活習慣状況(睡眠時間、食欲、食べ物の嗜好、排便の状態)などを照らし合わせ、舌診、脈診などを用いて診察していきます。

その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

 

鍼灸治療では、身体の機能を活性化させ、体力や免疫力の増強をはかることができ、現代医学での治療をうまく併用させることにより効果 が高まりやすくなるかと思います。

 

 

▼現代医学的な診断・検査・治療法▼

 肝炎の原因には、下記のようなものがあります。

・ウィルスによるもの(ほとんどが、これになります。)

・アルコールの多飲

・自己免疫性疾患

自己免疫性肝炎(AIH)と原発性胆汁性肝硬変(PBC)があって、これらの疾患は、外からの原因ではなく、自らの免疫系が肝臓を攻撃してしまうもので、比較的稀な疾患です。

・薬剤性

・脂肪肝

 

 ここでは、ウイルス性肝炎の中のB型肝炎とC型肝炎についてお話していきたいと思います。

 

<B型肝炎とは・・>

B型肝炎ウイルス(HBV)の感染により肝臓に炎症が起こる病気です。

急性肝炎の約30%、慢性肝炎の約20%がB型肝炎ウィルスの感染で起こるといわれています。B型肝炎ウイルスは人の血液、体液を介して感染することが知られ、感染経路は、母親から子供に感染する「垂直感染」と、それ以外の経路による「水平感染」に分けられています。

 

■感染経路

<垂直感染>

キャリアの母親から赤ちゃんに感染する母子感染のことで、95%が出産時に産道を通 過する際に起こります。近年では、出産直後からはじまる予防プログラムの普及によりほとんど感染は起こりませんが、母親の子宮内で胎盤早期剥離などのため、出産以前に胎児に感染してしまっているケースが稀に存在します。

 

<水平感染>

輸血・注射・ハリ治療・入れ墨・性交為などにより、キャリアの血液や精液に濃厚に接触した際に起こります。現在では、血液銀行で厳重な検査がなされ輸血で感染することはありません。又ディスポーザブルの注射針やハリが一般 に使用されるので、注射やハリ治療で感染することはありません。

成人期の感染は、発病しても急性肝炎のみで慢性肝炎になることは稀です。しかしごくまれに劇症肝炎を発症することがありますので慎重な観察が必要です。

B型肝炎のほとんどは新生児、乳幼児期に感染したものです。

 

B型慢性肝炎の20~30%が肝硬変へ移行し、さらに肝がんを合併する可能性があります。

また時には、肝硬変を経ずに肝がんになる場合もあります。

 

<C型肝炎とは・・>

C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により肝臓に炎症が起こる病気です。

急性肝炎の約20%、慢性肝炎の約70%はHCVの感染により起こるといわれています。また、日本の肝がんの約80%はC型肝炎が原因といわれ、がん発症率の高さが問題となっています。

 

■感染経路

<輸血後肝炎>

輸血や血液製剤による感染で、およそ半数を占めます。現在では、血液銀行での厳重なチェックにより輸血で感染することはまずありません。

 

<散発性肝炎>

残りの半数にあたり、ほとんどが、昔の予防接種や覚醒剤注射などによる血液感染とみられ、性交為による感染はごくまれです。

HCVはHBVに比べ、血液中のウイルス量がはるかに少なく、精液などの体液に出てくる量 はきわめて微量だからです。HBVでは過去に高率にみられた母子感染もHCVでは2%前後にすぎません。

 

C型肝炎ウイルスに感染すると急性肝炎が起こりますが、症状が軽いために気づかれないケースが多く、劇症肝炎となるケースはほとんどありません。

急性C型肝炎の30%前後は治癒しますが、70%前後は治癒せず慢性C型肝炎に移行していきます。

 

<肝炎の検査>

 慢性肝炎のなかでも軽いものから肝硬変に近いものまであり、その程度を知るために

・血液検査(GOT、GPT、血小板数など)、

・画像検査(エコー検査、CT検査)

などを行います。

進行してくるとGOTの方がGPTよりも高くなってきたり(慢性肝炎のうちはGPTの方が高い)、血小板数が減少したりします。

最終的には肝生検といって、細い針を用いて肝臓の組織を一部採取し、顕微鏡で調べる検査をするとより詳しく状態を見ることができます。

 

<肝炎の治療>

肝炎ウイルス保有者の方すべてに治療が必要なわけではありません。自然に治った方や、肝機能が安定している方の場合は、治療せずに定期的に血液検査を行い、経過をみます。

 

<インターフェロン(IFN)とは・・>

B型・C型どちらの慢性肝炎でも使われますが、特にC型肝炎ウィルスに対してウィルス完全排除が期待出来るので注目されています。

もともとは人間の体内で産生される糖蛋白質で、ウイルスを体内から排除したり、ウイルスの増殖を抑える働きがあります。また、完全にウイルスが排除されなくてもGOT・GPTの数値が正常化したり、肝機能の改善をもたらし、ひいては肝硬変・肝がんへの進行を抑える働きもあります。

 

根治的治療としては、インターフェロン治療があります。最近はリバビリン(経口抗ウイルス剤)を併用することによりインターフェロン単独では約30%の治癒率が、約50%まで上がったと言われています。

対症療法としては、ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンC(静脈注射)などがあります。インターフェロン治療をすると、たとえ治癒しなくても後の肝臓癌の発生を抑制することができるとも言われています。

 

~B型慢性肝炎の治療~

B型肝炎は、HBe抗原が陽性でHBe抗体が陰性であると、ウイルスが増殖し肝炎が増悪し持続する傾向があります。その結果 、肝機能が悪化しやすい状態になります。

しかし、HBe抗原陰性、HBe抗体陽性になるとウイルスの増殖が弱まり肝炎は鎮静化し、肝機能も安定化します。B型慢性肝炎ではこの状態になることを目指し治療をしていきます。

 

~C型慢性肝炎の治療~

C型肝炎ウイルスは、自然に排除されて消えてしまうことが極めて少ないウイルスで、急性感染者の約70%が慢性肝炎へ移行し、肝硬変、肝がんへと悪化する傾向にあります。最近、GPTを下げることができて肝炎を鎮静化させることができれば最終的には肝硬変、肝がんへの進行抑制が出来ることが判明しています。

治療の目標は、まず肝炎を鎮静化させること、最終的にはウイルスを排除することです。

 

 

▼中医学的慢性肝炎のとらえかた▼

中医学では、主に「肝」「胆」「脾」「胃」の働きが低下することにより、慢性肝炎を引き起こすと考えられています。

肝と胆が関わるということは、みなさんも既にお分かりになるかと思います。しかし、脾と胃はというと「???」の方もいらっしゃるかもしれません。この脾と胃こそが慢性化の段階では病気を長引かせる病気の根源となるわけです。

健康な状態の肝と脾胃との関係は、エネルギーの流れを円滑にする働きのある「肝」が、消化機能をつかさどる「脾胃」の働きを高め、消化・吸収の手助けをしています。一方、肝と脾胃との間で不均衡な状態が生まれますと、エネルギーの流れが停滞し、消化吸収がうまく行なわれなくなってしまいます。その結果 、食欲がわかない、吐き気がある、軟便ぎみである、体が重いなどの症状があらわれます。

急性期(肝炎)では、肝胆から脾胃に影響を及ぼし、慢性期では、脾胃のエネルギー不足の病変が肝胆に及ぶケースが多いのです。

 

 脾は、消化吸収をつかさどり、湿をつかさどります。

この湿とは、粘滞性があり、流れを阻む性質があります。一旦この湿が身体に停滞しますと、病気が長引きやすく、熱を生みやすくなります。自然界でいう梅雨の季節がこれにあたります。蒸し暑く、ねっとりとした汗が肌にまとわりつく感じを体感されたことがあるかと思います。この状態が体内でも同じように起こり、気血の運行を阻むのです。この湿を生む主な原因となるのが飲食の不摂生や過度の飲酒になります。その結果 、脾胃の働きを低下させ湿邪(不必要な水分)が身体の中に蓄積します。

病状がさらに進むと肝胆に影響を及ぼし、肝のエネルギーが鬱滞しますと、胆汁の輸送がうまく行なわれなくなり、肝胆の正常な機能を阻害し、本病の発病につながるのです。

 

 ここで簡単に、中医学的体のしくみについて、それぞれの臓腑の働きについてどのように考えられているのかを説明していきたいと思います。

 

▼中医学的からだのしくみ▼

~「気」「血」「水」とは~

体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。

もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

 

~臓腑の働きとは~

「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。

現代医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。ですので、現代医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。

この点をまず理解してください。

「肝」・・

全身のエネルギーの流れを調節する。

精神的ストレスなどを受けて働きが低下(エネルギーの流れが停滞)すると、

 

★ 気、血の流通の停滞が起こり→

偏頭痛、胸や脇の脹った痛みや苦しさ

★ 情緒・感情が不安定になり →

イライラ怒りっぽくなる、憂鬱感、

ヒステリー、ため息をつく

★ 消化機能(脾・胃)の失調 →

げっぷ、悪心、嘔吐、胸焼け、食欲不振、下痢、胃酸がこみ上げる、消化不良、

口が苦くなる、黄疸

肝のエネルギーが巡っている部位に、これらの症状がみられます。

肝の気がスムーズに流れず滞ってしまうと、消化機能をつかさどる脾・胃に影響を与え、消化、吸収の働きが停滞してしまう。

 

全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。

肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため肝の支配している器官の機能減退症状があらわれてきます。

 

 

例)

目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足の震えやしびれ、

筋けいれんが起こりやすくなったりします。

 

「胆」・・

 

肝で生成された消化酵素、胆汁を蓄える。分泌は、肝の調整により行われる。

胆汁の運行が阻まれると、皮膚の外に溢れ、肝の支配器官である目が黄色くなるなどの症状が現れます。

 

「脾」・・

食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。

働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。

軟便または下痢、痰が多く出る、手足がむくむ、食欲がない、身体が重だるい

 

エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。

働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。

 

血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。

働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

 

「胃」・・

食べた物を胃の中空器官で受け取る

 

 

  ↓

 

熟成させる

 

 

  ↓

 

下に位置する小腸へ送るといった一連の働きを担っています。

①の働きが失調しますと、食べたものを戻す(悪心、嘔吐)

②の働きが失調しますと、胃の中に食物が停滞したまま、消化されません。

(臭いげっぷがでる、腹部の膨満感、胃痛)

③の働きが失調しますと、下へ下降させることができません(便秘)。

胃の働きの失調の特徴は、「停滞」と「逆流」です。①②③それぞれの状態で留まった状態が長く続きますと、食べ物は熱と化し腐敗します。そのため、熱症状および臭いを伴った症状が多くみられるのです。

 

<中医学で考える慢性肝炎の主な原因>

飲食の不摂生、空腹と満腹のリズムの崩れ、過度の飲酒は、すべて「脾」「胃」の働きを低下させ、消化吸収に影響を及ぼします。そして、体の中に不必要な水分と熱を生み出し、肝胆に影響を及ぼし発病にいたります。

体質的に脾胃が虚弱である、または病後でエネルギーが消耗しているなどの状態から、エネルギーがうまく生産されないため、体の中に冷え症症状を生み出し、その結果 、余分な水分が蒸発せず、停滞し、発病にいたります。

肝炎が長期化してなかなか治癒しないため、エネルギーを損ない、(気血が損なわれ)スムーズに運行しないため、血が肝胆に滞り、かたまりとなって、血の停滞(オ血)症状をまねき発病にいたります。

 

 

▼中医学的慢性肝炎のタイプと治療法▼

 

●湿熱内鬱タイプ●

消化に関わる「脾」の働きが低下すると

⇒水分代謝がうまくおこなわれない為、余分な水分がたまります(湿)。

 またエネルギー不足のため食物が消化されず停滞し、熱を生みます(熱)。

 この湿と熱2つが合わさると、病気は長期化しやすくなります。

 

○主な症状

頭が重い、体がだるい、口が苦い、吐き気、胸から胃の上部がつかえて、脹る、脂っこいものを食べたくない、食欲がない、お腹が脹る、下痢

 

○治療法

鬱滞している水と熱を冷まし、体外へ尿として排泄する「清熱利湿」、

脾胃の働きを保つ「調和脾胃」の治療をしていきます。

 

 

●寒湿阻滞タイプ●

冷えが「脾・胃」に停滞しているため、水分代謝がうまく行なわれず、身体の中に余分な水分を生んでしまい発症するタイプです。

 

○主な症状

食欲がない、消化不良、胃の上部あるいはお腹が脹る、気力が衰え寒さを嫌う、便は軟便

 

○治療法

体の中を温めながら、脾胃の働きを高め、体内に滞ってしまった余分な水分をだしていく「温寒化湿」「健脾和胃」の治療をしていきます。

 

 

●脾虚血損タイプ●

食物からエネルギー(気)を生み出す源である「脾」。

この臓器の働きが失調することにより体を養う気や血が作りだせないため、主に、血の不足症状があらわれるタイプです。

 

○主な症状

顔面および皮膚が黄色くツヤがない、手足に力が入らない、食欲不振、動悸、息切れ、夜ぐっすり眠れない、大便が軟らかくうすい

 

○治療法

脾の働きを高め「健脾和中」、気血を生産していく「補気養血」の治療をしていきます。

 

 

●オ血タイプ●

病気が長期に及ぶと血の流れが停滞し、さまざまな血の停滞症状を現します。

 

○主な症状

身体や目が黄色くてくすんでいる、顔面が青紫で暗い、脇下に固まりがあり、かつ針で刺すような痛みがある、皮膚に静脈が蜘蛛の糸状にみえる、大便がときに黒色。

 

○治療法

肝のエネルギーの流れをスムーズにし「疎肝理気」、血の流れを良くしていく「活血化オ」の治療をしていきます。

 

 

▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼

自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます。

タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。

体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。

●湿熱内鬱タイプ●

【生活習慣】

甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。

水分代謝が悪いため、水分の摂りすぎには注意して下さい。

また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。

運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。

梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。

【食べ物】 ~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~          尿とともに熱も排出されます。

(穀類)はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆

(野菜)冬瓜、白菜、山芋、トマト、チンゲンサイ

(魚類)こい、ふな

(果物)すいか、ぶどう、メロン、なつめ

 

 

●寒湿阻滞タイプ●

【生活習慣】

・夏場のクーラーによる冷やし過ぎや冬場の薄着には気をつけましょう。

 

【食べ物】 ~体を温める性質の食べ物を摂りましょう~

(穀類)もち米

(野菜)にら、にんにく、ねぎ、生姜

(肉類)羊肉

(スパイス)唐辛子、コショウ、シナモン、黒砂糖

(お茶)生姜入り紅茶(甘くして飲みたい時は黒砂糖やはちみつ、麦芽糖を入れて)

 

    ~体を冷やす性質のある食べ物は極力避けましょう~

(野菜)きゅうり、トマト、冬瓜、苦瓜、レタス、なす、ごぼう、大根

(果物)すいか、なし、バナナ、柿、レモン

(豆類)豆腐、豆乳、緑豆

(お茶)緑茶、ウーロン茶、菊花茶、薄荷(ミント)茶

 

●脾虚血損タイプ●

【生活習慣】

消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。

消化が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。

スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。

頭や目の使いすぎは血を消耗させてしまうので、この時期は極力長時間パソコン作業や、夜遅くまでの勉強、仕事は避けましょう。

ダイエットによる食事制限も禁物です。

~血虚(血の不足)の症状が多いタイプは血を補う食べ物を摂りましょう~

(穀物)黒豆、赤豆、もち米、小麦

(豆類)黒豆、豆乳

(野菜)ほうれん草、小松菜

(肉類)動物のレバー、赤みの多い肉

(魚類)まぐろの赤身、牡蠣、しじみ

(木の実)黒ごま、クルミ、なつめ

(ドライフルーツ)レーズン、プルーン、ブルーベリー

(お茶)竜眼茶、ライチ茶、クコの実茶

 

 

●血於タイプ●

【生活習慣】

・夏は冷房、冬は外気の寒さから体が冷えるのを防ぐようにしましょう。

・冷たいものの摂り過ぎは血行を悪くするので気をつけましょう。

・寒い季節や冷房で冷えた日は、生野菜は控え、温野菜を摂るようにしましょう。

・適度に運動をして、適度な汗をかくよう心がけましょう。

 

【食べ物】 ~血液の流れを良くする作用のある食べ物を摂りましょう~

(豆類)小豆、黒豆

(野菜)あぶらな、にんにく、にら、ねぎ、しょうが、とうがらし

(香辛料)酢、少量の酒

(お茶)山ざし茶、バラ茶、紅花茶

▼その他日常生活での注意点▼

(1) 休息

 

肝炎がひどくて主治医より制限指示のある方を除いて、基本的には食後の安静や運動の制限の必要はありません。

しかし多忙な生活を送っている人は、心身のリラックスのために、食後、できれば1時間、最低でも30分は横になって休むようにしましょう。(難しければ椅子にゆったりと腰掛けているだけで構いません。)

 

(2)仕事や日常生活

 

肝機能が安定している場合は、仕事や日常生活は普通 におこなってかまいません。(ただし、過激な労働や運動は避けましょう)

夜更かしなどをせず、規則正しい生活をしましょう。

 

(3)入浴

 

ぬるめ(40℃より少し低め)のお湯に、10分間ぐらい入ると疲れをとるのに効果 があります。熱いお湯や長湯は避けましょう。

 

(4)運動

 

適度な運動は、血流を良くし、脂肪肝を防ぎます。散歩をしたり、自分の好きなスポーツを楽しみましょう。

(ただし過激な運動は避けましょう)

 

(5)食事・アルコール

あっさりとした消化の良いものを摂るようにし、脂っこいものはなるべく避けましょう。

辛いもの、たばこ、お酒等の刺激性のものは断った方が良いでしょう。

病状の回復に有利です。

食事時間を一定にしましょう。

 

(6)定期検査

 

肝炎はひどくなるまで無症状のことが多いため、症状がなくても定期的に受診しましょう。(受診時期は医師と相談しましょう。)

 

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 

2019/03/12
【小児科疾患】虚弱体質児

皆さんは「虚弱体質児」と聞いてどんな症状が思いつきますか?

顔色が悪い、疲れやすい、動作が緩慢、神経過敏、よく吐く、胃腸が弱い、アレルギー、食欲不振、病気にかかりやすい、やせている、すぐ頭痛や腹痛を起こす、他の子と比較して成長が遅い・・・などなど、

一口に虚弱体質児と言っても様々な症状がでてまいります。

では早速、虚弱体質児について、いつものように西洋医学の見地から説明してまいりましょう。

 

 

★★西洋医学から診た虚弱体質児★★

実は西洋医学では「虚弱体質児」という病名はありません。

なぜなら虚弱体質という言葉はあまりにも大きな括りになり過ぎてしまっているからです。

西洋医学の場合、病気と判断されるものは、その症状が実際に治療が必要なものかどうかを基準にしているからなのです。

 

では、実際に西洋医の先生はどのように虚弱体質児の治療を行うのでしょうか。

通常の場合は、患者さんの診断を行い、その症状の原因が何らかの疾患に基づくものであるとわかれば、 その病気に対して治療を行います。

西洋医学的に治療が必要と判断される疾患には次のようなものがあります。

◎「アレルギーなどの慢性疾患」

◎「小児神経症」

◎「自律神経失調症」

◎「内臓疾患や脳神経障害」

◎「精神症」

上記の疾患が原因となっている場合はこれらの疾患に対する治療を行うわけです。

 

ですから、虚弱体質児の治療というよりも、基本的には西洋医学の基準で病気と判断された症状に対して、その病気の治療が行われていると言った方が近いかもしれません。

では、上記の疾患が原因となっていない場合で、医師が治療の必要がないと判断された場合はというと、これといって治療が行われない場合や、乾布摩擦などと言った鍛錬的な指示が出る場合もあります。

冒頭でも述べましたが、西洋医学には「虚弱体質児」という病名が無いわけですから当然と言えば当然ですね。

 

しかし、虚弱体質の症状に含まれるものの中には、医師が治療の必要がないと判断するものや原因が特に無いというものも少なくありません。

では次に中医学ではどの様に虚弱体質を捉えるのかを説明してまいりましょう。

 

 

★★中医学による虚弱体質児★★

中医学も西洋医学と同様に「虚弱体質児」という疾患名はありません。

理由もやはり西洋医学と同じで「虚弱体質」と言ってしまうと、余りにも大きな括りになってしまうからです。

そこで今回は中医学の疾患の中から「疳積(疳証)」について説明をしたいと思います。

一般の方にはあまり聞き馴染みのない疾患だと思いますが、4大小児疾患の1つと言われており、成長発育に影響をおよぼしたり、アトピーや花粉症といったアレルギー疾患に発展することもある疾患です。

あえて現代西洋医学の病名に照らし合わせると、概ね以下の疾患が類似しております。

「栄養失調」「慢性消化不良」「後期の小児結核」「寄生虫感染症」

 

 

★中医学の基礎概念★

さて、今から中医学の説明に入りますが、中医学も現代医学と同様に医学です。

医学である以上そこにはしっかりとした学問体系や理論が存在します。

医学には正常な身体の状態を考える『生理観』(現代医学では生理学や解剖学など・中医学では臓腑学や経絡経穴学や気血津液学など)というものがあり、その上に病気の成り立ちを考える『病理観』(現代医学では病理学・中医学では病因学説や病機学説)が存在します。

つまり、病気を理解するためには、まず正常な身体の仕組みや構造を理解しなければ病気を理解することは出来ません。ですから、まずは中医学の生理観を理解しないと、中医学から見た病気も理解することは出来きません。

しかし中医学の生理観は現代医学のそれとは全く異なった考え方をし、とても奥深いものですので、とりあえず今回は「疳積」に関係するものだけにしぼって説明をさせていただきます。

 

 

▼中医学の生理観▼

≪気・血・水≫

中医学では人の身体は「気」「血」「水」の三つの物質により構成されると考えます。

そしてこれらが多くも少なくもなく適量でバランスよく、且つスムーズに流れてこそ健康でいられると考えます。

 

<気>

気の主な作用には、物を動かす「推動作用」・栄養に関わる「栄養作用」・身体を温める「温煦作用」・身体を守る「防衛作用」・ものを変化させる「気化作用」・体内から血や栄養物が漏れるのを防ぐ「固摂作用」など様々な働きがあります。

「疳積」では、栄養不良により「気」が作られなくなり、「栄養作用」や「固摂作用」が失調することがあります。

「栄養作用」が失調すれば全身は栄養されず、エネルギー不足をおこします。

又、「固摂作用」が失調すると体内から余分な汗がでたり、失禁を起こしたりします。

 

<血>

血は様々な器官に栄養や潤いをあたえます。

ここにも中医学独特の概念があり、血は精神活動の栄養源でもあります。

ですから血の不足は精神不安や不眠を発症させます。

また、身体が熱くなりすぎないように冷却する働きもあります。

 

<水(津液)>

水は津液とも言い、体内にある正常な水液のことをいいます。

主な作用としては身体の各部所に潤いを与えたり、血と同様に冷却する働きもあります。

 

 

《内臓(五臓六腑)》

さて、次は内臓です。

よく「五臓六腑にしみわたる」などといいますが、この五臓六腑が東洋医学の考える内蔵のことです。

西洋医学のそれとは異なり中医学では内臓を物体として区別するのではなく、 働きで区別します。

六腑は飲食物の消化吸収を行い、五臓が栄養分から「気血水」を作ったり運んだり貯蔵をしています。

具体的に五臓とは「肝」「心」「脾」「肺」「腎」があり、六腑には「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」があります。

先程の働きの他にも五臓六腑には沢山の働きがあります。

しかし、各々の臓腑には西洋医学と同じような働きをするものや、全く違う働きをする臓腑もあります。

それは、西洋医学と同じ臓腑の名前を使ってはいますが、冒頭で説明したように中医学では臓腑の働きに注目しておりますので、名前が同じでも全く同じ物を指しているわけではありません。

私もそうですが、こういったところが皆さんが混乱してしまうところだと思います。ですから、今から「疳積」に関係のある臓腑ついて説明をいたしますが、名前が同じでも西洋医学のそれとは違う物という認識で(別 物と思って)これから先を読まれた方がよろしいかと思います。

 

さて、今回は各臓腑の説明に入る前にちょっと角度を変えて、飲食物が口から入った後どの様な臓腑とどの様に関係し排泄されるのかを、中医学の視点から簡単に説明したいと思います。

やはりこの流れも西洋医学とは違う概念がありますのでイメージだけでもつかんでおいて下さい。

 

 

〈飲食物の流れ〉

1.口から入った飲食物は先ず「胃」に運ばれます。

 

2.胃は飲食物を受け入れ(受納)、初期消化を行い(腐熟)消化された飲食物を「小腸」に送ります(和降)。

 

3.次に小腸は送られてきた消化物を、人体に必要な物である「水穀の精微」(清)と不必要な物である「糟粕」(濁)に分けます。この働きを『必別 清濁』と言います。

次に、小腸は「水穀の精微」を脾へ送り、糟粕を水分とそれ以外に分け、それぞれを膀胱と大腸へ送ります。

 

4.脾は送られてきた「水穀の精微」を栄養分として吸収して肺へ送ります。この働きを「脾の昇提作用」といいます。「昇提作用」とは、エネルギーを上へ持ち上げることを指す言葉です。

 

5.肺は送られてきた栄養分を全身へ散布します。この働きを「肺の宣発粛降作用」といいます。

 

6.一方、膀胱と大腸は、それぞれ小便・大便にして体外へ排出します。

 

以上が中医学が考える体内での飲食物の流れになりますので、上記をふまえて以下の臓腑の生理を読まれると理解しやすいと思います。

 

 

『脾』

脾の生理作用としては、運化を主る・昇清を主る・統血を主る・肌肉を主る・四肢を主する などがあります。

この中で「疳積」と関係がある作用は、運化作用です。

運化作用とは「消化・吸収・運送」のことです。

因みに「運化」の「運」が運送を意味し、「化」が消化吸収を意味します。

さて、ここでもう1度「飲食物の流れ」を思い出してみましょう。

口から入った飲食物は胃に送られ、次に小腸で「必別清濁」され、脾や大腸や膀胱へと送られ、脾から肺へ、肺から全身へ、一方、大腸や膀胱から体外へといった流れでした。

この一連のながれを「運化」といいます。

つまり、脾の働きは「運化を主する」わけですから、この一連の流れ全ての管理を脾が行っているのです。

ですから、けして小腸から「水穀の精微」を受け取ってからが脾の仕事ではありません。

このような考え方が中医学独特の考え方で、先程書いたように、内臓を物体として捉えるのではなく、働きとして捉えているところなのです。

さて、ここで「脾の昇提作用」に注目をしてみたいと思います。

脾の昇提作用とは栄養分を肺まで送る働きでした。

ところで、脾のある場所から肺に栄養分を送るということは、言い代えれば栄養分を肺まで持ち上げるということになります。

ですから、持ち上げる物は出来るだけ軽い方が効率が良いわけです。

ところが何らかの原因により体内に余分な水分が溜まると、その湿気が体内の様々な物を重くしてしまいます。その結果 、運化作用の機能低下が起こります。

又、運化作用が低下すれば当然、食欲不振や下痢が起こります。

上記の理由から「脾」は湿気をとても嫌いますし、湿気にとても弱い臓器ということになります。

又、「甘は先ず脾に入る」と言われ、甘味には脾胃を調和してくれる作用がありますが、甘味の食べ過ぎは湿を生み、脾胃を損傷させ作用低下をまねきます。

これは「疳積」の機序になる大事な部分ですので是非覚えておいて下さい。

 

 

『胃』

胃の主な働きは、先程も説明したように、飲食物を受け入れ、初期消化し、小腸に送るという[受納・腐熟・和降]の3つの働きがあります。

1.胃は先ず飲食物を受け入れます。・・・このことを「受納」といいます。

2.次に、初期消化をします。・・・・・・このことを「腐熟」といいます。

3.最後に消化物を下にある小腸に送ります。・・・このことを「和降」といいます。

 

 

『脾・胃の働き』

ここで脾と胃についてもう一度まとめてみましょう。

脾と胃はとても深い関係にあり、「脾」は良いものを上へ持ち上げ体全体へ回し、「胃」は不要な物を下方へ下げ排出させています。

このように両内臓は互い協力し合い飲食物から栄養物を摂取し、「気・血・水」を作り、全身へ供給しているのです。

つまり、脾と胃は「消化吸収」に非常に重要な役割をはたしているわけです。

人が生命活動を維持するためには脾と胃が正常に機能するということがとても重要になってまいります。

 

 

『心(しん)』

心の主な作用は血の循環と精神活動の統括になります。

精神活動の統括は「疳積」の随伴症状に関係があり、心が損傷されると精神活動が不安定になってしまいます。その結果 、不眠や精神不安といった症状が発現します。

 

 

『肝』

肝の主な作用は、疏泄を主る・血を蔵す・筋を主る・などがあります。

この中で発熱と関係が深いのは、疏泄作用と蔵血作用です。

疏泄作用には、「気機の調整」・「消化吸収の促進」・「精神活動の調整」があります。

「気機の調整」とは、気血の流れなどスムーズにして体内の機能の働きを促進させる作用です。

次に、精神活動の調節ですが、「心」は精神活動の統括をしておりました、それに対して「肝の疏泄作用」は心の機能を促進させております。

この働きによりリラックスを保っております。

つまり、精神活動は心と肝が協力して行われていると理解してください。

 

 

『肺』

肺の主な作用は、呼吸を主る・気を主する・宣発と粛降を主るなどがあります。

宣発とは、気や栄養分を全身へ行き渡らせる働きで、粛降とは、気・濁気・栄養分などを下に下げる働きを言います。

又、肺は鼻と特に深い関係があります。

「疳積」の場合は肺が損傷すると、咳嗽・鼻づまり・鼻水などの症状が出現します。

 

 

『腎』

腎の主な作用は、発育生殖を主る・水を主る・納気を主る・などがあります。

また、生体の各臓腑や器官組織を滋養・濡潤する働きをするものに「腎陰」というものがあります。

腎陰は何らかの原因により、不足を起こすことがあり、「疳積」の症状の中にも「腎陰の不足」によるものが出てまいりますので覚えておいてください。

 

 

《経絡》

経絡とは一言で言えば気血水を全身の各部位へ運ぶための通路みたいなものです。

経絡の作用は「生理作用」「病理作用」「治療作用」の3つに分けられます。

上記の気血水が流れる経路としての働きが「生理作用」になります。

ところが経絡が何らかの病因物質によって塞がれてしまうことがあります。

経絡は人体を縦方向に走る「経脈」と経脈の分枝の「絡脈」に分かれます。

又、経脈の中には正経12経と言われる経脈があり、これは経脈の中でも特に重要なもので、それぞれ一対の臓腑と深い関係があります。

 

中医学の生理観はご理解していただけましたでしょうか?

我々が慣れ親しんでいる西洋医学とは大分違っていたと思います。

最初はなかなか理解するのは難しかったり、抵抗があったりすると思いますが、生理観の概念が違うからこそ、西洋医学で治らなかった病気が中医学で治ったりすることがあるわけです。

中医学の基本理論は生命エネルギーの流れと調和にあります。

それでは次に生理観の他に中医学の独特の考え方をするものを少しだけ紹介します。

これも中医学を理解する上でとても大事な予備知識になります。

 

 

 

▼「疳積」を理解するための中医学の基礎概念▼

《病因》

病因とは病気となる原因のことです。

中医学ではこの病因を「外因・内因・不内外因」の3つに大別します。

 

『外因』とは身体の外の環境が病因となるものをさします。

これらは六淫と呼ばれ「風・湿・熱(火)・暑・寒・燥」の6種類あります。

季節の変化により気候は変化します。

通常の気候の変化は身体には影響がありませんが、急激であったり過剰な気候の変化は身体に負担をかけ病気を引き起こします。

例えば、暑ければ熱中症・寒ければ体の冷えなどが起こります。

 

『内因』とは過度の精神状態が病因となるものをさします。

これらは「喜・怒・思・悲・恐・憂・驚」の7種類あります。

 

『不内外因』とは内因・外因のどちらにも属さないものをさします。

これらは「不節な飲食・外傷・寄生虫・過労・運動不足」などがあります。

特に「疳積」の病因となるものは「不節な飲食」と「寄生虫」が挙げられます。

「不節な飲食」とは食べ過ぎ・飢え・偏食・不衛生な物の飲食があります。

この中の偏食に注目してみましょう。

偏食には、「肥甘厚味の過食」「辛辣の過食」「生冷の過食」「飲酒の過度」があります。

この中で「肥甘厚味の過食」と「生冷の過食」が「疳積」の病因になりますので少し説明をします。

 

「肥甘厚味の過食」

肥甘厚味とは、甘い物・味の濃い物・油っぽい物・といった食物をさします。

これらの採り過ぎを肥甘厚味の過食といいます。

 

「生冷の過食」は生ま物と、冷たい物の採り過ぎを言います。

 

これらの食物の採り過ぎは湿や痰や熱を生みやすく、脾や胃を損傷させてしまいます。

 

(今回の「疳積」では「小児期の飲食の不節」も原因になります。乳幼児期の飲食の不節は大人のそれとは内容が若干異なりますので、病因・病機のコーナーで説明いたします。)

 

 

《陰陽》

陰陽とは古代中国哲学を構成する物の一つで、中医学にもその考え方は深く影響を及ぼしています。

陰陽だけでも一冊の本が書けてしまう程奥が深いものでありますので、ここでは簡単に説明します。

陰陽とは「全ての事物や現象には相反する二面性があり、これらは対立しあいながら統一し、互いに色々影響しあう事によりバランスをとっている」という考えです。

つまり、陰と陽のバランスが取れていれば自然界や人体は平常な状態です。

例えば、上下・左右・内外・夜昼・男女・静動・・・・・と言った具合です。

この理論に医療実践を積み重ね確立されたものが「陰陽学説」です。

「疳積」の症状に関係のある陰陽としては、寒熱があります。

寒熱を陰陽で分類すると、寒は陰に、熱は陽に属します。

体内で寒(陰)・熱(陽)は互いに抑制し合うことで適度な体温を保っております。

例えば、陽気(熱)が旺盛になりすぎたり、陰気(寒)が少なすぎる(虚)と体内の熱が過剰に上がってしまいます。

逆に陽気が少なく(虚)陰気が旺盛になれば低体温や様々な臓器の機能低下が起こります。

ここで、熱の過剰な上昇に注目してみましょう。

陽気は熱性に属しますから、陽気の亢進は過剰な熱産生になることは想像がつきやすいと思います。

 

次に陰気ですが、陰気は寒性に属します。

寒性は体を冷す働きがありますので、熱くなりすぎるのを抑制する働きをしているわけです。

もし陰気が減ってしまうと熱を抑えることが出来なくなり過剰な熱上昇がおこります。

中医学では前者のような熱を『実熱』といい、後者のような熱を『虚熱(陰虚熱)又は、虚火』といいます。

このように同じ熱の過剰な上昇という状態であっても、その発生の機序は大きく2つあるわけです。

当然、発生の機序が違えば、症状や治療法(使用するツボや漢方)は全く違ってきます。

陰には当然、「寒」以外にも沢山の特性がありますが、もう1つ知っておいて欲しい働きに、体(内臓・皮膚・関節・など)に潤いを与える作用があります。

そして、これらの働きは腎や胃とかの幾つかの臓腑が関与しています。

ですから、特に1つの臓器の「陰」の働きを示す場合は、「陰」という言葉の前にその臓腑の名前を付けます。

例えば、更年期などの火照り感などは加齢により腎のエネルギー不足が生じ、腎の陰が不足を起こして「虚熱」により火照りが生じます。ですから、この場合は『腎陰』の不足が原因というように使います。

疳積の症状には「腎陰」「胃陰」の不足によるものが出てまいりますので、是非覚えておいてください。

又、「陰虚熱」の特徴的な症状としては、両頬が赤い・寝汗・午後の発熱・などがあります。

体質的に「陰虚」の方や、ちょっとしたことで「陰虚」になりやすい方を「陰虚体質」といいます。

 

 

《弁証》

中医学では病気の種類を「証」(しょう)と言います。

その「証」を見極めることを「弁証」と言います。

つまり、弁証とは簡単に言えば病気の原因や性質や状態などを見極めることです。

もう少し具体的に説明しましょう。

先程「生理観」のところでも述べましたが、健康であるためには「気・血・水」が適量 であり、スームーズに流れていなくてはなりません。

もし、その中のどれかのバランスが崩れると、重度・軽度はありますが、何らかの不調が現れてきます。

弁証とは、何が原因で・何が・何処で・どの様に・バランスを崩しているのかを見極めるのです。

皆さんの中には「病証」とは現代医学の「病名」のことと思われる方もいらっしゃると思いますが、実は似ているようで少し違うのです。

例えば現代医学で○○病と言われれば、その病名によって治療法が決まり、同じ病名の患者さんであれば基本的には、みな同じ治療が施されたり、同じ薬が処方されたりします。

しかし「証」となると、もっと細かい分類になります。

今回の「疳積」でも、幾つかに分類され、すべて処方される漢方薬や、使用するツボも異なってきます。

ですから、「弁証」とは病気を診るものではなく、あくまでも体の中のバランスの崩れを診るものなのです。

 

さて、実際の治療では、患者さんの弁証が出来たら、次に治療方針を考えます。

 

《治則と治法》

中医学の治療理論は治則と治法に分けられます。

治則とは治療の根本的な原則で、標治と本治と標本同治の3種類あります。

治法とはそれぞれの疾患に対しての具体的な治療法のことです。

簡単に言えば、治則は治法を導き出すための大原則です。

つまり、「弁証」により病気の状態がわかり、次に「治則」による治療の方向性を出し「治法」で具体的な治療法を考えるのです。

そして最後に「治法」にそって漢方薬は処方され使用するツボが決まるのです。

 

《【理・法・方・薬(穴)】という大原則》

『理・法・方・薬(穴)』とは中医学での診察から治療までの流れを表す言葉です。

「理」とは理解と言う意味で、具体的には「弁証」により病気を理解することをさします。

「法」とは弁証に基づいて治療方針を決定します。

「方」とは治療方針にのっとった漢方薬の処方やツボの選穴になります。

「薬(穴)」とは薬やツボの知識をさします。

つまり、本来の臨床の現場では「弁証」が立てられ、「弁証」に基づいて治療方針を決定して、それに沿った処方や選穴がしっかりした漢方薬やツボの知識により行われるのです。

逆を言えば、「理・法・方・薬(穴)」の大原則に沿って行われる治療が中医学の治療となります。

問診もしっかり行わず痛い所やコリが在る所に針を打ったり、この疾患にはこのツボといったような短絡的な選穴の仕方のみの治療は本来の中医学(東洋医学)ではありません。

さて、中医学の予備知識もだいぶ頭に入ってきたところで、本題の「疳積」に入りましょう。

 

{今後使われる専門用語等については、今まで説明してあるもののみを使用しますので、もし分からない言葉がありましたら、もう一度★中医学の基礎概念★を参照してください。}

 

 

★疳積(疳証)★

さて、先ず「疳」という字について説明しましょう。

「疳」には大きく2つの意味があります。

1つは「甘」という意味で、病因である「甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの」を表し、もう1つは「乾」で、病機である「気・血・水」の消耗と、症状である「身体に潤いが無く痩せる」ことを意味します。

5歳以下の小児にみられ、特に3歳前後に多くみられます。

症状は「痩せ」「脱毛」「食欲の異常」「冷え」「精神衰弱」「静脈が浮き出る」・・・・・など多種多様です。

主な病因・病機は、授乳を止めるのが早すぎたり、不適切な栄養状態、長期にわたる下痢や嘔吐、寄生虫感染、などにより脾胃が損傷を受け、消化吸収能力が低下し、その結果 飲食物が体内で停滞を起こし、これが長引くことにより、熱が発生し気血水が損耗してしまい五臓を栄養できなくなり、症状が発症します。

 

症状が多種多様に及ぶことからこの疾患の分類法も、

1.症状の進行段階によるものと、2.症候によるものの2つがあります。

この中で一番その患者さんにあった弁証を行い、治療法を選択し治療にあたります。

そこで、「疳積」の説明は、先ずは病因・病機を紹介し、次に、1.症状の進行段階による分類と、それについての症状と治療を説明します。

次に2.症候による分類と、それについての症状と治療を説明したいと思います。

 

 

▼病因・病機▼

「疳積」の病因は、小児期の飲食不節・栄養の不足・寄生虫・慢性病・があります。

それでは病因別に病機を説明しましょう。

 

Ⅰ,【小児期の飲食不節】

小児期の飲食不節とは、食事の過多であったり、不規則や不適切な時間に食事を採ったりといった事と、病因の不内外因で説明した「肥甘厚味の過食」「生冷の過食」などです。

これらは全て脾胃を損傷させてしまいます。

すると胃の受納*や脾の消化機能が低下してしまい、食べた物が胃腸で停滞を起こします。このことを「食積」又は「宿食」「宿滞」といい、そのまま長引くと脾の消化吸収の働きである運化作用**が低下をしてしまいます。

すると今度はいくら食べても食物から栄養を摂取できなくなり、やがては気血の生成不足→臓腑への滋養不足へと発展してしまいます。

(受納*:胃の生理を、運化作用**:脾の生理を参照してください。)

 

Ⅱ,【栄養の不足】

小児の成長に対して栄養的に不十分な食事や、母親が栄養失調のために、母乳に含まれる栄養分が希薄であったりすると小児にも栄養不足が生じます。

その結果、脾胃の機能低下が起こり気血が生成されなくなり、体を栄養することが出来なくなります。

 

Ⅲ,【慢性疾患・寄生虫】

慢性的な下痢は体内の水分を損耗させたり、脾胃を損傷させてしまい、胃の受納作用や脾の運化作用を低下させてしまいます。

又、寄生虫も人体内で脾胃を損傷し、臓腑を乱し精微*が吸い取られてしまいます。

その結果両者とも、「気・血・水」が著しく不足を起こし、身体が極度に痩せてしまいます。

(精微:内臓の説明の中の《食物の流れ》を参照してください)

 

以上が「病因・病機」になります。このような機序で「疳積」が発症します。

次に、症状の進行による分類により弁証・症状・治療・について説明をします。

 

 

▼症状の進行による分類と弁証▼

症状の進行による分類は、

1.初期の「疳気」

2.中期の「疳積」

3.後期の「乾疳」の3段階に分類できます。

 

【疳気】

初期の症状です。食物が胃腸で停滞を起こしている「食積」*の状態で、脾への影響についてはまだ軽く及ぼしている程度であったり、母乳不足や偏食による栄養バランスが崩れている状態です。

いずれもまだ軽症の段階です。

(食積:食物が胃腸に滞っている状態です。詳しくは病因病機の【小児期の飲食不節】を参照してください。)

 

《弁証》

「脾気虚弱疳証」又は「脾胃不和」

《症状》

○痩せ・・・

 

脾胃の損傷により、気血が生成されないために栄養不足となり起こります。

○食欲不振・・・

 

胃の受納作用の低下や、脾の運化作用の低下によるものです。

○食後にお腹が張る・・・

 

胃腸の中に「食積」があるためです。

○元気がない・・・

 

脾の運化作用が低下して「気」の生成が出来ないためおこります。

○顔色にツヤがなく血色もよくない・髪もツヤがなく薄い・・・

 

脾胃の損傷により、気血が生成されないために栄養不足となり起こります。

○軟便、又は乾燥便・・・

 

全く逆の症状ですが、軟便は脾胃の損傷により発症します(詳しくは脾の生理を参照してください)。

乾燥便についてですが、中医学では本来流れているものが滞ると、熱化する傾向があると考えます。この疾患の病因である「食積」は食物の滞りですから熱化してしまう可能性があります。腸のなかで熱化をすれば周りの水液を損耗させてしまい、大便は乾燥します。

○大便に未消化物が混じる・・・

 

運化作用の低下により消化吸収能力が低下しているためにおこります。

○精神不振・目に光がない・・・

 

脾胃の損傷により血が生成されないために精神が栄養されなくなりおこります。(詳しくは血の生理を参照してください。)

《治療》

「脾気虚弱疳証」に対しては・・・・「益気健脾」

損傷をうけている脾をたて治し気を益す治療を行います。

ツボ:中カン・天枢・足三里・気海・三陰交・脾兪 など

漢方:参苓白朮散加減・六君子湯 など

 

「脾胃不和」に対しては・・・・「健脾和胃」

脾と胃をたて治す治療を行います。

ツボ:中カン・下カン・天枢・足三里・三陰交・脾兪・胃兪 など

漢方:資生健脾丸 など

 

 

 

【疳積】

中期の症状です。「食積」や脾の機能低下(脾気虚)もだいぶ進んだ状態です。

 

《弁証》

『積滞傷脾疳証』

《症状》

○痩せは「疳気」より進行・・・

 

脾胃の損傷により、気血が生成されないために栄養不足となり起こります。

○腹部の張った感じ(特に食後)・・・

 

食物が胃腸に停滞を起こし、さらに脾の働きが低下して起こります。

○お腹の静脈が浮き出る・・・

 

気血の流れが悪くなり、経絡が詰まった状態です。

○食欲不振・・・

 

胃の受納作用の低下・脾の運化作用の低下によるものです。

○多食・多便・・・

 

上記とは逆の症状です。これは、「胃強脾弱」といい、胃の受納作用の過剰な亢進と、脾の運化作用の低下を意味します。

このような状態だと脾と胃の協力関係のバランスが崩れてしまい、食欲が旺盛になり、食後にお腹が張り、大便は最初は硬く最後には軟便となります。

○顔色は黄色っぽく・髪もツヤがなく薄い・・・

 

脾胃の損傷により、気血が生成されないために栄養不足となり起こります。

○精神不振・・・

 

脾胃の損傷により血が生成されないために精神が栄養されなくなりおこります。(詳しくは血の生理を参照してください。)

○落ち着かず胸がそわそわする・イライラ・不眠・・・

 

血や水(津液)は体を冷却する作用がありますが、「食積」により熱が生まれ、その熱が周りの水液を損耗し、更に運化機能の低下で血や水(津液)が生成されないと、体内では熱が盛んになってしまいます。その熱が肝と心に影響を及ぼした状態です。

(精神状態と「心」「肝」の関係は、「心」「肝」の生理を参照してください。)

○未消化物の嘔吐・大便に未消化物や寄生虫が混じる・・・

 

運化作用の低下により消化能力が低下すると未消化物が排出されます。

寄生虫は寄生虫感染を意味します。

《治療》

「益気健脾・消積」といい、やはり脾をたてなおし、食積を解消させる治療を行います。

ツボ:中カン・天枢・足三里・気海・三陰交・章門・公孫・脾兪

   胃兪・四縫穴 など

漢方:肥児丸加減・消疳理脾湯 など

 

 

 

【乾疳】

後期の症状です。気や血がだいぶ失われた状態で、臓腑肌肉が儒養されない重症です。

 

《弁証》

『気血両虚疳証』

《症状》

○極度の痩せ・腹部に陥凹ができる・元気がない・泣き声に力がない・・・

 

気の不足により全身を栄養出来ない状態です。 (詳しくは、気の生理を参照してください。)

○食欲不振・・・

 

胃の受納作用の低下・脾の運化作用の低下によるものです。

○汗を大量にかく・・・

 

気の不足により体を引き締める働き(気の固摂作用*)の低下によるものです。 (気の固摂作用*:気の生理を参照してください。)

○軟便又は便秘・・・

 

脾胃の機能低下によるもので、脾は持ち上げる働きである「昇提作用」・胃は降ろす働きである「和降」の両方の働きが無力(昇降無力)になってしまい起こります。(詳しくは脾・胃の生理を参照してください。)

○唇の乾燥・髪につやがない・・・

 

血や水(津液)が損耗して潤せない状態です。

○精神衰弱・・・

 

気血が精神を栄養出来ない状態です。

○紫斑の出現・・・

 

陽気は陰陽論では温性に属します。この場合、気の中でも特に陽気の不足により、体を温められず気血が滞り起こし紫斑が出現します。

○微熱・・・

 

陽気は温性でした。温かい空気が上に行くのと同じように、陽気の不足が起こると本来は全身にあるはずの陽気が、全て上にある頭に集まってしまいます。しかし陽気は不足している状態ですから、少ししか集まらず、微熱程度の熱しか上がりません。

○大量の汗・呼吸が弱い・手足が冷たい・失禁

(一般に言う危篤状態です)・・・

 

陰と陽の相互関係が完全に壊れた状態で「陰陽離決」といい、とても危険な状態です。「乾疳」の場合は体内のエネルギーが尽きた状態になり「陰陽離決」が起こります。

《治療》

『益気養血』『健脾和胃』・・・・気と血を補う治療と脾と胃をたてなおす治療をします。

『回陽固脱』・・・危篤状態の時の治療になります。

ツボ:腎兪・脾兪・血海・天枢・気海・下カン・関元(回陽固脱)

   神闕(回陽固脱)

漢方:人参養栄湯加減・帰脾湯・八珍湯

 

 

次に、症候による分類を紹介しましょう。

症候による分類は主に「五疳」・「熱疳」・「口疳」・「丁奚疳(ていけいかん)」などがあります。

 

 

『五疳』

疳積を五臓にもとづいて分類したもので、「五臓疳」とも言われます。

「肝疳」「心疳」「脾疳」「肺疳」「腎疳」の5つがありますので、一つ一つ説明してまいりましょう。

(尚、症状については今まで説明してきたものとほぼ同様ですので、詳しくはそちらを参照してください。)

 

* 「肝疳」・・・・脾胃が損傷を受け、運化作用が低下すると、結果 的に、気血不足が起こることは今まで何度も説明してまいりました。

さて、気血の不足が起こると様々な悪影響が出てまいります。その悪影響の1つとして、肝の陽気を抑えきれなくなり、肝の熱が原因となって起こる疳積が「肝疳」です。

 

《症状》

顔色が青黄色・痩せ・腹部の張り・目の乾燥・下痢・などです。

 

《治療》

「清肝瀉熱」「健脾消積」といい、肝を整えて熱を下げ、脾を立て直して運化作用を高め食積を消失させる治療を行います。

ツボ:行間・中カン・足三里・三陰交・気海 など

漢方:瀉青丸・合羊肝丸加減・加味逍遥散 など

 

 

*「心疳」・・・・偏食などにより脾胃が損傷され、食積が形成され、それが長引くことにより生まれた熱が「心」へ影響を及ぼし、心の熱が原因となって起こる疳積が「心疳」です。

・・・・過食や偏食により脾胃が損傷され食積が形成されます。それが湿熱に変化して発症する疳積が「脾疳」です。又、重症化すると「丁奚疳」に発展します。

 

《症状》

顔色が黄色い・痩せる・髪が薄い・お腹が張る・疲れやすい

常に眠い・話すのも億劫・下痢・便に未消化物が混じる

 

《治療》

「清熱利湿」と言い、湿を体外に出し熱を下げる治療を行います。

ツボ:豊降・中カン・天枢・足三里・三陰交・気海・四縫穴 など

漢方:集聖丸 など

 

 

*「肺疳」・・・・過食や偏食により食積が形成され、長期化することにより熱化し、肺に影響を及ぼし発症する疳積が「肺疳」です。

 

《症状》

顔色が白い・痩せ・髪が薄い・腹部が張る・咳嗽・鼻づまり・鼻水

 

《治療》

「清肺瀉熱」・「益気健脾」と言い、肺を整えて熱を下げ、脾をたてなおして気を益す治療を行います。

ツボ:太淵・中カン・天枢・足三里・三陰交・気海 など

漢方:瀉白散 など

 

 

*「腎疳」・・・・脾胃の損傷により湿熱が生まれ、それが長期化することにより腎陰* を損耗してしまい発症するのが「腎疳」です。

(腎陰*:腎の生理と陰陽を参照してください。)

 

《症状》

顔色が白い・両頬が赤い・痩せ・髪が薄くツヤがない・腹部が張る

歯肉から出血する・寝汗・午後の発熱・下痢 など

 

《治療》

「滋陰養腎」と言い腎陰を滋養する治療を行います。

ツボ:太谿・腎兪・脾兪・中カン・天枢・三陰交・気海 など

漢方:六味滋養丸 など

 

 

『熱疳』

脾胃の損傷により生じた湿熱が肌膚に入って発症する疳積が「熱疳」です。

 

《症状》

顔色が黄色い・髪が薄い・痩せ・腹部が張る・ノドが乾き、冷たい飲み物を欲する・発熱・イライラ・皮膚の痒み など

 

《治療》

「清熱消疳」と言い熱を下げる治療を行います。

ツボ:曲池・内庭・中カン・足三里・気海・四縫穴 など

漢方:黄連丸加減 など

 

 

『口疳』 口の中に「びらん」を伴う「疳積」で、食積が長期化することにより体内の水液(津液)を損耗し、 胃陰*が不足して虚火**が生じたり、陰虚体質***の方が毒邪を受けた時に発症します。

(胃陰*・虚火**・陰虚体質***については陰陽を、参照してください。)

 

《症状》

口の中や舌に「びらん」が生じる・顔色が黄色い・痩せ・髪が薄い・腹部の張り

 

《治療》

「滋陰清熱」と言い、陰を滋養し熱を下げる治療を行います。

ツボ:内庭・中カン・足三里・三陰交・気海 など

漢方:青黛散 など

 

 

『丁奚疳(ていけいかん)』

脾胃の損傷により運化作用が失調し気血が作られなくなり、肌肉が滋養されなくなり発症する疳積が「丁奚疳」で、骨格の軟弱化や弱体化を伴う疳積です。先程説明した「脾疳」の重症化したものです。

 

《症状》

顔色が蒼白・痩せる・腹部が張る・髪の毛にツヤがない・微熱・下痢 など

 

《治療》

「補脾養胃」といい、脾と胃をたてなおす治療を行います。

ツボ:中カン・天枢・足三里・三陰交・気海・脾兪・胃兪

漢方:肥児丸加味

 

以上が症候による分類と症状・治療になります。

 

 

「疳積」の病因は主に、授乳を止めるのが早すぎたり、不適切な栄養状態、長期にわたる下痢や嘔吐、寄生虫感染、などでそれ程多くはありません。

病機についても、脾胃の損傷→運化機能の能力低下→食積形成→長期化による熱化→水液(津液)の損耗や気血生化不足、といった一連の流れになります。

ところがこの後に様々な臓腑に影響が及んでしまいます。

そして、その影響を受けた臓腑により症状が違うので、症状が多種多様になってしますわけです。

臨床では多種多様の症状の中から患者さんが、何が病因で、どのような病機でどういう症状が出ているのかを見極めて、一番適切な治療法を選択して治療にあたります。

皆さんに理解していただきたいのは、中医学は病因や病機や症状といったもの全てを考慮に入れて治療方針を決めます。

当然、治療方針が違えば使用するツボや漢方薬も違ってきます。

けして、この病気にはこのツボとか、この漢方薬といった短絡的なものではないということです。

 

最後に疳積の予防について簡単に紹介してみたいと思います。

 

 

★疳積の予防★

1.幼児に必要な栄養価のある食事を与える。

2.母乳が不足している場合は捕食を与える。

3.消化不良に気をつける。消化能力が減退している場合は、消化力に合わせた量 や時間を考慮する。

4.食事の時間は出来るだけ定時にする。

5.偏食に注意する

6.ストレスのない規則正しい生活をおくる。

などがあります。

 

以上が「疳積」についての説明です。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

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=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行い、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出し、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。只、大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。この点をご理解して頂ければ幸いかと思います。

 

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