コラム

2019/03/11
【内科疾患】発熱1~西洋医学編

今回のテーマは発熱です。皆さんも何度かは経験があると思います。発熱という症状はとても軽い場合もありますし、重大な疾患のサインだったりもします。

ところが、こんなにも身近な症状であるのに意外と詳しく知っておられる方は少ないのではないでしょうか?今回はそんな発熱について紹介したいと思います。

では、まずは西洋医学の観点から見てみましょう。

 

 

★★西洋医学から見た発熱★★

発熱とは、「体温調節中枢に異常があり、平常時以上に体温が上昇すること」と定義されております。体温調節中枢については後述いたしますので、とりあえず今は脳にある体温調節を行う部位 と理解しておいてください。では平常時体温とはいったい何℃なのでしょうか?健康人の平常時体温(腋下計測)は36~37℃と言われております。ですから、通 常では37℃以上を「発熱」と言います。因みに、36℃未満を低体温と言います。

ところで、皆さんは何処で体温を計測しますか?

口・わきの下・お尻(直腸内)などがありますが、本来、体温とは体内の温度のことですから、外界の温度の影響を受けない場所がベストなのです。その観点から言えばお尻(直腸内)が正確な体温計測が出来る部位 になります。

しかし、実際はわきの下で計っておられる方が一番多いのではないでしょうか。ですから今から体温についてはわきの下で計測した数値で説明いたします。(先程、紹介した平常時体温もわきの下で計測したものです。)

因みに、わきの下は、お尻(直腸内)に比べると0.6~1℃、口の中に比べると、0.2~0.5℃程低いと言われております。ですから、口で計測した場合では、37.3℃・お尻では37.6℃以上を発熱といいます。

せっかくですから体温の話をもう少しだけいたしましょう。通常体温は日内変動と言って一日のなかでも変化しており、AM2~4時ごろ最低になりPM2~6時に最高となります。

又、女性は月経周期によって1℃以上体温が上がる場合がありますし、大部分の子供は大人より体温は高く、1日の体温変化も大きくなります。因みに子供は軽度のウイルス感染でも高熱を出すことがありますが、このようなことで脳が直接損傷を受けることはありません。

 

 

☆体温調節のしくみ☆

さて、「発熱」の説明に入る前に、先ず健康な人の体温調節の仕組みを説明します。

ところで、何故体温調節が必要なのでしょうか?

その理由は幾つかありますが、先ず考えられるのは、体内の機能が外気温からの影響を受けずに効率よく作用できる適温を維持するためです。

例えば我々人間は南極の極寒の地でも、中近東の灼熱の地でも暮らしております。両地の温度差は60℃を軽く越えるでしょう。しかし、そこに住んでいる人達の体温の差はそれほどではありません。また、日本でも冬と夏の温度差に比べ、体温の差はそれほどではありません。これは、外気温に関係なく体内は適温に調節されているからなのです。

ではどの様にして体温調整をしているのか簡単に説明します。

 

 

◎産熱と放熱◎

体温を一定に保つ為には、体内で熱を生む「産熱」と体外に熱を出す「放熱」によって行われます。

外気温が下がれば、体温が下がらないように「産熱」が起こり、外気温が高くなれば、体温の上昇を抑えるために「放熱」がおこります。

 

○低温時・・・『産熱』

産熱は内臓や筋肉の代謝が亢進し、酸素が燃焼されて起こります。

例えば、寒い時にふるえが起こりますが、これは筋肉を動かすことにより「産熱」が起こっているのです。又、皮膚にある「立毛筋(りつもうきん)」という筋肉が収縮することにより毛穴や汗腺を閉じて放熱を防ぎます。このときに起こるのが鳥肌や立毛です。更に、皮膚の血管が収縮することにより皮膚の血流量 を減らすことで放熱を防いでもいます。ですから、寒いと顔の表面の血流が減り顔色が青白くなるのです。

 

○高温時・・・『放熱』

皮膚・肺・尿・便・は放熱の作用があります。

熱いと毛穴が開いて放熱が起こります。又、発汗も起きます。発汗すると皮膚が汗で濡れます。次に汗が蒸発する時に体の熱も奪去ってくれます。これは夏によくやる「打ち水」と同じ原理です。因みに、汗をかかない動物などでは自分の体を舐めることにより発汗したのと同じ状態をつくりだしています。又、皮膚血管の拡張が起こり、放熱が促進されます。このため熱いと顔が赤くなるのです。他には、産熱量 の減少のために、食欲不振・運動量の低下が起こります。

 

「産熱」と「放熱」のバランスが上手にとれて体温は適温に保たれます。

これらの反応は我々が意識して起こしているものではありません。無意識のうちに自律神経が行っております。

次は、その仕組みを簡単に説明します。

 

◎体温調節中枢と温冷受容器◎

さて、「産熱」や「放熱」は意識とは関係なく自律神経によって行われているのですが、これらの反応はそれぞれの部位 が自発的に行っているのではなく、脳からの指令によって行われています。脳の中には視床下部(ししょうかぶ)といわれる部位 があり、そこに「体温調節中枢」があります。この体温調節中枢というのが体温調節の司令塔になります。それに対して皮膚には外気温を感知する、温受容器と冷受容器があります。体温調節は、司令塔である体温調節中枢や、外気温を感知する温受容器と冷受容器、体温調節中枢からの命令を受けて、実際に産熱や放熱をする筋や血管といった効果 器と、それらを繋ぐ神経によって行なわれています。

 

◎体温調整の流れ◎

次に体温調節の流れをまとめてみます。

○外気温の低下

1.冷受容器が外気温の低下を感知して体温調節中枢に伝えます。

2.体温調節中枢は

a:

ホルモン系を通じて内蔵や筋肉へ代謝を亢進させ産熱の指示をします。

b:

自立神経を通じて皮膚の血管へ血管を収縮して放熱を抑えるように指示をします。

c:

体性神経を通じて筋肉をふるえさせ産熱の亢進を指示します。

 

○外気温の上昇

1.温受容器が外気温上昇を感知して体温調節中枢に伝えます。

2.体温調節中枢は

a:

自律神経を通じて汗腺へ発汗による放熱の亢進を指示します。

b:

自律神経を通じて皮膚血管へ血管拡張による放熱の亢進を指示します。

以上が体温調節の仕組みです。次に発熱の仕組みを説明します。

 

 

☆発熱の仕組み☆

体温調節の司令塔は視床下部にある体温調節中枢でした。体温調節中枢は「産熱」と「放熱」という手段を使って体温を通 常体温である36℃~37℃の間で一定に保っているわけです。この一定した数値(36℃~37℃)のことを設定値とか、セットポイントといいます。

イメージ的にはエアコンを思い浮かべて下さい。皆さんは快適に過ごせる室温をエアコンに設定し、エアコンはその室温が一定に維持するように働きます。つまり皆さんがエアコンに設定した温度が体温調節中枢のセットポイント(36℃~37℃)に当たるわけです。そしてエアコンが室温を一定に保つのと同じように、体温調節中枢は「産熱」と「放熱」という手段で体温をセットポイントと同じ温度に保つわけです。

ところが、何らかの病的な理由でこのセットポイントが正常値より高くずれてしまうことがあります。すると体はその反応として「産熱」を起こしセットされた高い値に体温を合わせてしまうのです。この状態を『発熱』といいます。つまり、発熱とは、セットポイントが通 常より高い値にセットされてしまう事によって起こるのです。

この発熱を起こす物質を「発熱物質」といいます。発熱物質は体外からやってくる細菌やウイルスといった外因性発熱物質と、外因性発熱物質に刺激され体内で産生される内因性発熱物質があります。発熱物質は外気温に関係なく視床下部の体温調節中枢へ作用して、産熱作用を高め放熱作用の抑制をします。そのため、発熱時には、ふるえ・悪寒・皮膚血管の収縮がおこります。次に、発熱の原因が取り除かれると亢進していた産熱機能はおさまり、放熱機能が高まります。これにより通 常は発汗が起こり体温は元に戻ります。

 

 

☆うつ熱☆

「発熱」に対して、「うつ熱」というタイプがあります。

これは熱放散より熱産生が多くなったり、環境から受ける熱が異常に大きくなって体温が上昇する場合を言います。

うつ熱は直射日光の下や、高温・多湿・無風・の条件下で激しい作業や運動をした際に、産熱が著しく増え放熱がそれに追いつかない状況の時に起こります。

発熱と違い、この場合のセットポイントは正常です。

 

アスピリンなどは、上昇しているセットポイントを正常に戻す作用をしますので、解熱剤としてよく用いられますが、うつ熱のセットポイントは正常ですので、解熱剤の効果 はありません。

ですから、夏場によく耳にする「熱中症」はうつ熱ですので、解熱剤は効きません。

熱中症は、熱痙攣(手足の痙攣・筋肉痛)→熱疲労(倦怠感・嘔吐)→熱射病(意識障害)の順に重くなります。 熱射病では体温調節中枢が障害を受け、発汗や皮膚血管拡張といった放熱作用も低下してしまい体温は40℃を超えることもあります。

先程も述べましたが、これらは解熱剤は効きませんので、冷たい水で体を拭いて体温を下げます。

 

☆発熱の原因となる疾患☆

1.

感染症:細菌・ウイルス・リケッチャ・スピロヘータ・真菌・原虫・などの感染によります。

2.

腫瘍:組織破壊によるものと、しばし、感染症の併発によるものによります。

3.

膠原病:全身エリトマトーデス・皮膚筋炎・結節性多発動脈炎・リウマチ熱などによります。

4.

代謝異常:甲状腺機能亢進症・貧血・妊娠などによります。

5.

アレルギー:薬物アレルギー・不適合輸血・血清病などによります。

6.

吸収熱:大量出血後などによります。

7.

組織障害:心筋梗塞・肺梗塞・外傷などによります。

8.

体温調節中枢の障害:脳出血・脳腫瘍・脳外傷などによります。

 

☆発熱の分類と熱型☆

37℃以上が発熱ということですが、実はもう少し分類があり、37~37.9℃の発熱を「微熱」・39℃以上を「高熱」・41.5℃以上を「過高熱」と言います。

さて、発熱は上記したように、感染症・悪性腫瘍・膠原病・内分泌の疾患・アレルギー疾患・代謝性の疾患・などといった様々な病態で生じます。

発熱時の体温の変化をグラフにして特に特徴的な動きのものを熱型といい、疾患によっては特徴的な熱型を示すものもあります。

例えば、周期的に高熱期と無熱期がくる熱型を「周期的発熱」といい、代表的な疾患としては、「マラリア」があります。他の熱型と代表的な疾患としては、「稽留熱」「弛張熱」「間欠熱」などがあり、「稽留熱」の代表的疾患としては腸チフスや髄膜炎などがあり、「弛張熱」や「間欠熱」の代表的疾患としては、敗血症や膠原病があります。

 

 

☆診断と治療☆

さて西洋医学の発熱の治療は、発熱をおこしている疾患を診断し治療することになります。そこで先ず、発熱の診断に主に必要な検査を紹介します。

◎発熱の診断に主に必要な検査

1.

一般検査・・・全身・局所の診察・尿・便・血液・血圧

2.

レントゲン・・胸部・腹部の撮影・必要に応じて、断層撮影・造影検査・CT検査。

3.

超音波検査・・腹部超音波検査

4.

血清検査

5.

細菌検査・・尿・便・痰・咽頭・血液・髄液・胆汁

 

などがあります。

◎治療

治療は先程述べたように発熱を起こしている疾患の治療になりますが、発熱により不快感が強かったり、体力消耗がある場合は「アスピリン」などの解熱剤を使います。

 

☆発熱から考えられる病気☆

発熱は病気が原因で発症します。そこで、発熱と随伴症状で病気が何なのかを知ることが出来ます。ここでは、発熱から考えられる病気を随伴症状に照らし合わせて紹介します。(ここで紹介する随伴症状は一般 例ですので、あくまでも参考程度に止めて置いてください。)

 

◎まず40℃近い発熱がある疾患からまとめて紹介します。

○急性胆のう炎○

黄疸・寒気・ふるえ・吐き気・発作的なみぞおち・右上腹部の痛み・右肩・右背部に痛み

 

○ 胆石症○

寒気・ふるえ・黄色い液を吐く・黄疸・白い便・右上腹部のはれや痛み・背中や肩の痛みがあることもあり・突然の激しい腹部の痛み

 

○腎盂腎炎○

突然の発熱・悪寒・ふるえ・腰痛・側腹痛・頻尿・排尿痛・尿混濁・血尿・膿の混じった尿

 

○インフルエンザ○

悪寒・頭痛・腰痛・関節痛・筋肉痛・だるさ・食欲不振・のどの痛み・咳・鼻水・下痢

 

 

☆次に40℃までは発熱しない疾患を紹介します。

○急性肝炎○

だるさ・全身の脱力感・食欲不振・吐き気・嘔吐・頭痛・悪寒・神経痛・筋肉痛・関節痛・下痢・便秘・みぞおちの右側に圧迫感と圧痛・黄疸

 

○急性すい炎○

みぞおちの周辺突然の痛み・背部痛・吐き気・嘔吐・黄疸がでる場合もあります。

 

○急性虫垂炎○

急激な腹痛(当初は、みぞおちやへその部分といった、体の中央部から始まり右下腹部へと移動してゆきます)・吐き気・嘔吐・便秘・発熱は37度台

 

○肺結核○

風邪と同じ症状で咳や痰がいつまでも止まらない・食欲不振・だるい・疲れやすい・痩せてきた・不眠・寝汗・肩こり・発熱は微熱が続く。

 

○急性気管支炎○

風邪の症状に続いて発症・乾いた咳と痰に続き、湿った咳や黄色い痰に変わる・黄疸がでることもあります・高熱・まれに呼吸困難や顔色が青くなります。

 

○気管支拡張症○

慢性の咳と痰・胸痛

 

○風邪の諸症状○

鼻づまり・鼻水・くしゃみ・咳・ノドの痛み

 

○亜急性甲状腺炎○

甲状腺部(ノドの前部)の痛み・時に耳の痛み

 

○肺炎○

寒気・赤っぽい痰を伴う咳・時に血痰・胸痛・ノドの痛み・頭痛・関節の痛み・吐き気や嘔吐・下痢

 

○急性上気道炎○

鼻水・鼻づまり・ノドの痛み・頭痛・だるさ・食欲不振・咳・痰

 

簡単ですが、以上が西洋医学から見た「発熱」の説明です。

続いて中医学から見た「発熱」の説明をいたします。

 

2019/03/11
【その他】東洋医学の治療法について

最近では、東洋医学という言葉が定着し、誰でもが鍼や灸、漢方薬、といったものをすぐに思い浮かべるのではないでしょうか。

現代医学の治療だけでは症状が改善されない人、できるだけ体に負担の少ない自然療法的な治療を望む人など、体験されたことのある方も多いのではないかと思います。

人々の健康志向が高まるにつれ、それに関連した薬茶や薬膳料理を専門としたお店なども増えています。

東洋医学的に考えるからだの仕組みとは、ピアノの旋律の狂いによる不協和音と同じように考えることができます。一つの音の狂いは、たとえ原因が部分的な箇所だけであったとしても、弾くと全体的なメロディーの調子が乱れてしまいます。人間の体も同じように、さまざまな症状が現れている原因が1つの箇所だけであっても、体全体はすべて密接に関連をして動いているため、体の不調は全身に現れるのです。

またこの状態は、体のパワーが不足し、病が長期にわたって慢性化すればするほど、症状は複雑さを増し、全身の不調は高まり、治療には長く時間がかかってしまうku棊毆)です。

東洋医学の治療法とは、本来体が持っている力を回復し発揮させることにより、病に打ち克つ力を引き出し、体のバランスを取り戻していく治療法になります。

そこで今回は、この東洋医学の治療方法について、主に鍼や灸、病気の予防と養生法について詳しく説明していきたいと思います。

みなさんの東洋医学に関する認識が高まることにより、状況に応じて現代医学とうまく使い分けできるようになっていただけたらと思っております。

 

 

○ 中医学における健康の概念

 

中医学(中国医学)では、万人に当てはまる正常値という概念がありません。人も自然の一部であるとする観点からみると、季節の変化を受けて、体も変化していくことは自然なことなのです。そのため年間を通 して、体の状態が一定であるということは考えられず、生活環境や年齢の違いなどにより、バランスの取れた「良い状態」は、人それぞれで異なります。

健康状態の決め手は、免疫力や抵抗力の源とされる「正気」の充実になります。

そして、「気」「血」「水」が充分にめぐっていること、「五臓六腑」の働きが順調であること、「陰陽」のバランスがとれていることが重要な条件になります。

 

 

○東洋医学と現代医学の違い

 

東洋医学と現代医学は、それぞれ独自の診断と治療体系をもっています。

その違いは、それぞれのベースになる「体を見る視点」や「病気を見る視点」の違いから生まれています。

解剖学や細胞生理学をベースとする現代医学では、体は器官というさまざまなパーツの集合体とされています。

そのため、病巣であるひとつのパーツを中心に病気を見つめていきます(腫瘍などによる転移は除きます)。

一方、東洋医学では、「体全身は多くの部分が互いに密接に結びつき、生命として一つの体を成し、働いている」と見ますので、病巣がたとえひとつの部位 に限られていても、それが局所だけの問題なのか、または全身と関連して起こった問題なのか、という両方の視点で病気を見つめていきます。

尚、東洋医学では心、精神、情緒の変化でも、体に負担をかけ症状としてあらわれてきます。

そして、こうした考え方の違いは、自ずと治療にも反映されています。

現代医学では、人体を細分化していく方向で研究が行われています。そのため病巣が見つかると、その病巣部位 に、血管や神経、ホルモンなどの異常を見つけだすことで、診断や治療につなげていきます。

これに対し東洋医学では、全身を一つの有機体と見なしますので、病巣のある部位 への直接的な治療以外にも、全体的に関連したほかの部位や全身のバランスを調整します。

 

 

○中医学でとらえる体のしくみ

 

東洋医学では、体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらが人体を構成し、生命を保つための基本的な物質であるとされています。これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。

この「気・血・水」は、「五臓六腑」によって作られたあと、「経絡」という(エネルギーを通 る)ルートを通って、全身に運ばれその働きを発揮します。

 

 

○ 東洋医学の治療法

 

~体の中を流れているエネルギーバランスの調整をする~

 

全身に網目のように張りめぐらされている、生命エネルギーの通り道である「経絡」は普通 私たちの目に見えません。その経絡の上に点在している「経穴(ツボ)」を利用して、経絡の中を流れている「気」「血」「水」の補充や代謝、「五臓六腑」の生理作用、「陰陽」のバランスを正常な状態にもどし、正気の回復をはかり、「病邪(邪気)」を取り去っていきます。

この経絡は、体の内側の「臓腑」と体の表面をつないでおり、「内外を貫き」「上下を通 す」働きがあります。このように全身に流れている経絡は、臓腑の働きの失調が、経絡上のツボに反応点としてあらわれます。そして、そのツボに刺激を加えることにより、気血の流れを調節し、臓腑の働きを改善することができるのです。

 

~ツボって???~

 

ツボは経穴とも言われますが、経絡同様、実際に皮膚に穴はあいておらず目には見えません。しかし、目に見えない「気(エネルギー)」が出入りしています。

経絡は「気」や「血」の通り道であり、ツボはその道の上にある駅のようなものであると、よく表現されています。経絡の上のツボには、「気」や「血」の流れが滞ったりしたとき、そのトラブルが反映されます。また、体内部の臓腑ともつながっているため、臓腑の失調もツボの痛み、腫れやしこりなどといった症状としてあらわれてきます。

そして、ツボは病気の変化が現れると同時に、治療のポイントともなり、刺激することにより、気や血の流れを調整し、臓腑の働きを調えることが出来るのです。

 

~鍼編~

 

・ 鍼の種類

用途に応じて、さまざまなものを使い分けます。

 

【長鍼】

坐骨神経痛や腰痛など、深部へ刺激を行き渡らせたい場合は、長い鍼を使って治療していきます。

 

【円皮針・皮内針】

とても小さい針で、持続的に刺激をあたえるときに使う治療です。

主に痛みの疾患(例:生理痛や肩こり、張りのある部分など)のとき多く使われます。

 

【三稜針】

皮膚の表面を軽く傷つけ、数滴出血させる治療法です。

主に、血の滞りによる刺すような痛み(例:肩こりや腰痛など)、炎症による痛みや痒み(例:咽頭痛、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など)のときに多く使われます。

 

【灸頭針】

刺した鍼の頭の部分にもぐさをつけて点火する治療法です。

体の中を温め、冷えをとる効果があります。

 

・ さまざまな鍼治療

 

<現代医学的な理論に基づいた鍼灸>

日本では主に、鍼灸の専門学校教育をはじめ、臨床においても、現代医学的な診察や病気の考え方に基づいた鍼灸治療を行なっているところが多くみられます。

治療では、痛みや筋肉の凝りを取り除くこと目的がメインになり、東洋医学の診察はほとんど行なわれません。鍼を刺す部位 は、ツボや経絡より、解剖学にもとづいた筋肉のポイントを重視しています。

 

<スポーツ鍼灸>

スポーツ選手を対象に、筋肉の凝りを取り除き、疲労回復を目的とした治療法です。

これらは、筋肉の凝りを取り除くという意味では効果がありますが、内科、婦人科疾患には、解剖学的な表層の部分しか見ていない現代医学的な鍼灸治療及びスポーツ鍼灸は、体内部でどのような原因で症状を引き起こしているかを診断することはできません。

 

<中医鍼灸>

中医学の治療では、先ず「弁証」を立てていきます。

「弁証」とは、病気の原因、部位、性質など、各段階における病気のタイプを見分けることをいいます。病気の進行にしたがって、各段階のタイプが変化し、治療もそれに応じて変化していきます。その時その時の体の状態をしっかり把握し、見極め、治療もそれにあったものにしていかなくてはいけないのです。

これが本来の中医学の理論に基づいた治療方法なのですが、一方で中国の鍼だけを用いて太い鍼による強い刺激の治療だけを行ない、理論は全く応用していないというところもあります。

 

このように、日本ではこれといった統一された治療方法がありません。そのため鍼灸を受診される際は、どのような治療方針に基づいて治療を行なっているのか、しっかり把握する必要があります。

 

 

鍼についてよく質問される内容

 

1)鍼は痛くないですか?

 

初めて来られる患者さんは鍼と聞いて、「痛い、怖い」というイメージを強く持たれている方がほとんどです。

それは「鍼=注射針、裁縫で使う針」を連想し、注射針と同じような痛みを想像されているからだと思います。

私達が予防接種などで採血をするときに使われる注射針が、直径0.4~0.8ミリと言われています。これに対し、鍼治療で使われる鍼は、直径0.16・u梠@w)0.2ミリになります。これは、髪の毛ほどの太さであり、注射針の6分の1~2分の1の細さになります。

ですので、鍼を刺入するときの痛みは、皆さんが想像されるようものではありません。

しかし、稀に毛穴に入ってしまった場合、痛みを訴えることもありますが、鍼が細いぶん、柔らかくしなるため、抵抗なく皮膚に刺さるのです。

 

 

2)鍼刺激に対する反応について

 

鍼治療を受けられた方ことのある方は、鍼を刺した時に独特の感覚を感じた方もいらっしゃるかと思います。通 常、鍼治療は痛みをともなうものではありませんが、全く何も感じないというわけでもありません。

鍼を刺入したとき、患者さんはその部位に、重だるいような、ジーンとしびれるような、引っ張られるような感じを受けます。この感覚は、言葉で表現しがたく、体験した者のみが知り得るといったところがあります。こうした感覚は、「得気(とっき)」と呼ばれる鍼刺激によるひびき感であり、痛みではないのです。このひびき感を痛みと混同される方が多いのですが、痛みの場合ですと鍼のチクチク感があり、不快さが残ります。この「得気」とは、気を得るという言葉通 り、鍼灸師が鍼を媒介にして、「気」の流れをコントロールします。

しかし、鍼の操作方法については、鍼灸師の間でも様々であり、いくつもの流派に分かれます。それは、鍼を刺す深さやひびきに対する認識の違いなど、流派によって考え方が異なります。中医学の診断に基づき、治療を行なう私達にとっては、鍼刺激による「得気感」は治療効果 を高める上でとても重要な手技であり、感覚なのです。

 

 

3)鍼は使い捨てですか?

 

今、ほとんどの鍼灸院では、以下のタイプが用いられています。

★1回きりの使い捨て鍼を使用

★個人専用の鍼を使用

当院では後者の個人専用鍼を使用しています。

使用した鍼を個人専用の袋に入れて消毒にかけ、次回使う時まで保管しておきます。鍼は4~5回に1回の・u樞毆)合で交換をしています。また、6ヶ月を過ぎて来院されない場合は鍼を廃棄処分しています。

 

~灸編~

 

○灸治療の方法と効果

 

お灸も鍼と同様、ツボや経絡に働きかける治療法です。

様々な方法があり、ツボの上に直接のせて灸をすえる「直接灸」、生姜やにんにく、塩などの上に、もぐさをのせてすえる「間接灸」、体に刺した鍼の頭部分にもぐさをのせて点火する「灸頭針」という方法があります。

これらは方法の違いはあるものの治療の用途としては、温めて冷えをとり、気血の流れをよくする目的で使われます。

「間接灸」は、体を温める働きのある食材と灸を用いて、体の深部までじんわりあたためる効果 があります。

「灸頭針」は、鍼の刺激プラスお灸の温熱、赤外線効果で体の中から温め、冷えをとる効果 があります。

 

○灸治療の注意点

 

お灸の治療は熱の刺激をあたえて温めるものですので、冷えの症状に対して、高い効果 を発揮します。

しかし、体質によっては、過度の灸治療は、悪い影響が出てしまうことがありますので、注意が必要です。

また、その日の体調によっては、我慢できる程度の熱さだったにも関わらず、水泡状のやけどが出来てしまったという方がいらっしゃいます。

これは、主に体の中でうまく水分代謝が行なわれず、体内に停滞しているときにみられます。足ではむくんでいるときに見られます。

 

~鍼と漢方薬はどのように使い分けるのか~

 

鍼灸治療では、体表面にあるツボに刺激を加え、経絡に働きかけていきます。そして、経絡と関連する五臓六腑に働きかけていきます。

一方漢方薬は、服用したあと五臓六腑に薬の成分が吸収され、関連した経絡に成分が流れこんでいくことにより、治療の効果 が発揮されます。

双方をうまく併用することにより、相乗効果を生むことができるのです。

そして、整形外科的な疾患による、腰痛や神経痛、顔面神経麻痺、脳卒中後遺症など、痛みやしびれによる症状には、おもに鍼灸治療が有効です。

その他、免疫力の低下やアレルギー疾患などの体質改善に対しても有効です。

しかし、どんな疾患でも慢性病やエネルギーの消耗が激しい方などは、漢方薬との併用が有効かと思います。

 

 

~東洋医学の予防・養生編~

 

それぞれの土着の文化とともに発達してきた伝統医学といわれる、中国医学。

病気の治療方法についてはもちろんのこと、病気にならないために、なにを食べ、どのように生活をしたらよいのかといった病気の予防や養生法が、古典のなかにも数多く記載され、その重要さをうかがい知ることができます。

それは、病気になる前に対処することが大切と考えられ、はっきりとした病名はつかないけれど体の不調がある「未病」の段階で治療或いは予防をし、病気に進行する前に防ぐという概念です。そして、普段から治療が必要な状態にならないよう、食事の内容や生活の仕方に注意をはらいながら生活を送る「養生法」もしっかりと確立されているのです。

 

~養生法の3つの原則~

① 気・血・水の不足や滞りを改善する。

② 五臓六腑の働きを調える。

③ 陰陽(寒熱)のバランスを調える。

 

これらの3つは、最初の方でも述べました「中医学における健康の概念」の健康な状態を維持するための原則になります。

 

~治療と養生の違い~

治療法も、養生法もそれぞれベースになっている健康観は上記を見ていただくとわかるように、共通 しています。

それは、全身のバランスが正常に保たれていることが大切であるということです。

ここで、治療法と養生法の違いについて、はっきり認識していただきたいことがあります。

鍼灸治療や漢方薬治療など専門家による治療は、体に対する作用が強くあらわれます。それに対し、日常生活で実践する養生法は、作用が穏やかです。

養生法は予防法ですので、病気を治す治療ではありません。治療の必要性を感じられるときは、専門家の治療を受けることをお勧めします。

そして、治療と併用することにより効果も高まりますので、怠らずに、どのような養生法が自分の体質や現況にとって必要かといったことも相談されるとよいでしょう。

 

~養生とは~

まずは、自分の体質を把握することからはじめましょう。

その上で個々の生活の仕方がきまってきます。

 

例)食事・生活編

 

<冷え体質の人>

体を温める食材である、ショウガやにんにく、にら、えびなどを摂取し、きゅうりやトマトなど体を冷やす食材の食べものは極力避けましょう。

生活面では、薄着はさけ、特に下半身を冷やさず、温めましょう。

必要であれば、ホッカイロを使い下腹部や腰に貼って防寒しましょう。

 

<パワー不足による・気虚体質の人>

このタイプは、少しからだを動かすと、すぐに疲れてしまいます。スタミナが長く続かず、非常に疲れやすいといった特徴があります。

食べものでは消化吸収の良い、穀物類やかぼちゃ、なつめ、山芋、長いもなどを摂取し、冷やす食材や脂っこいもの、消化しにくい食材は避けましょう。

分量も腹八分くらいがよいでしょう。

生活面では、過労や激しい運動は避け、気功やヨーガ、ウォーキングなどの軽い有酸素運動を心がけましょう。

 

このように、自分の体質を知ることにより日々の日常生活で行なうことのできる養生はたくさんあります。むしろ、日頃の生活習慣が病気を寄せつけない体をつくるのです。

最近では、時代の変化とともに食事や生活の中で規則正しい習慣を送ることは難しくなってきています。

しかし、自分の中で「睡眠だけはしっかりとるようにしよう」、「食事はバランスの良いものを取るよう心がけよう」といった意識を持ち実践することにより、1年後、3年後、10年後の自分の体の健やかさが変わってきます。

意気込みだけが強いと後が続かなくなってしまいますので、無理のない範囲で気軽に行なえることから始めてみましょう。

2019/03/11
【その他】内から美しくなる・中医学

美しさは、常に健康と背中合わせ。輝く肌、引き締まった体、豊かな黒髪、全ては健康が基礎に有ってこそのものです。

中医学で、裏は表に現れると言うのは、まさにこのことを指しています。

裏(内臓)を整え、表(はだ、スタイル、髪)を美しくする中医学の考えをお伝えしましょう。

 

 

美しい肌をつくる

美肌の基本、女性は、25歳が肌の曲がり角と言われていますが、実際には20歳ですでに、肌の美しさに相当な差が出ています。

赤ちゃんの時は皆一様にプルプルツルツル綺麗だった肌が、年とともに差が出てきてしまうのは何故でしょうか?遺伝的なことを抜けば、今から述べられる事が密接に関係します。

 

1)内臓を健康に:そのためには、規則正しい食生活、睡眠、便通。甘いもの、冷たい物を避けた栄養豊かな食事を心がける事。

 

2)肌になるべく異物を塗らない:帰宅後すぐにメイクを落とし化粧している時間を短くする。

 

3)肌を酸性に保つ:健康な肌はペーハー4ぐらいの弱酸性(アルカリ性の肌は感染しやすく、慢性炎症の誘因になります)洗顔後は必ず酸性化化粧水を使用し、アルカリ化した弱酸性に整える。

 

4)紫外線を避ける:シミ、シワソバカスを減らす大切な事です。中医学的お手当てを受けていても、日焼けのし過ぎをしていたのでは望みが薄いです。

 

 

美しい肌をつくる中医学

シミ、ソバカス、中年以降の女性に多く、化粧をして日光に当たると悪化します。日光によるシミ、ソバカスは、お血(オケツ)のある方は特におこりやすく、お血(オケツ)とは血流の低下し血が体の中で渋滞を起こしている状態です。中医学による、鍼灸、漢方で軽くなる事が良く経験されています。

 

赤ら顔、肝臓に疾患が有る場合顔が赤くなることが有ります。その場合は肝臓の治療が先決です。

基礎疾患が無い場合は、お血(オケツ)を改善する作用、さらに自律神経の興奮を和らげる作用の漢方を服用したり、鍼灸治療を受けたりすると頬の赤みが消えてきます。

 

 

美しい髪をつくる

血液不足が白髪や脱毛の起因、中医学では、髪は血餘なり(髪は血の余りであると考えています)と言われますが、その言葉どおり、髪は血液の余りでつくられます。余りですから、何らかの理由で血液が不足してした場合、髪のためには血液が使われなくなります。白髪や脱毛はこのために起こり、つまり頭皮に血液が十分流れてこないために起こるのです。逆に言えば、年齢不相応の白髪や脱毛は「血液不足」または「血行異常(瘀血)が体内に起きている事を警告しております。

女性の場合、白髪や脱毛を起こす血液不足は、同時に月経にも異常をもたらしやすいのです。実際髪のトラブルで相談に見える人に基礎体温を記録してもらいますと、低温期ばかり続くような異常を示す事が多いです。基礎体温の異常はホルモンの異常を意味し、高温期の欠落は月経が正常に訪れないことが多く、ホルモンの分泌が不足していることなのです。

髪を美しくしようと思われるなら、まず体に血液を十分いきわたらせ、月経を正常なものにすることが大切です。それができてはじめて、体は白髪や脱毛の修復作業に取り掛かれるようになると考えてください。

 

 

まずはライフスタイル改善を・・・

血液不足や血流障害が起こる原因の大部分は、基礎疾患(胃炎や肝炎、病的な貧血など)が有る場合を除き、日常生活の歪に有ります。「不適切な食事」「たばこ」「精神的ストレス」は、3大起因でしょう。また、枝毛や切れ毛、つやのないパサパサした髪は、パーマやヘアダイ、ブローなどが大きな起因になっています。ですから、日ごろから気を付けて下さい。髪は、痛いと言葉を発しませんので・・・

髪のトラブル対策の基本は、栄養バランスのとれた食事をし、タバコを控えるなど日常生活を健康的なものにする努力が第一で大切です。同時に、パーマ、ヘアダイは最低3ヶ月の間を置いた方が良いでしょう。

効果を急ぐときや食事の改善のみでは間に合わない場合に、中医学(鍼灸・漢方)の力を借りて血液不足や血行不良の改善を促す治療を受けると良いでしょう。

 

 

簡略的に述べましたが、美しい肌や髪作りに興味のある方、気軽にご相談して下さいませ。当院では、体の中で起きている検査に出てこないひずみを調整し、体の回復力を付け体質改善を目的とした美肌や髪作りにお役に立てられればと思っております。

 

鍼灸・漢方・食養生・健康茶・中医学(東洋医学)に関してご質問のある方は、お気軽に当院までご相談ください。

(月曜日・木曜日は休診日です)

2019/03/11
【内科疾患】発熱2~中医学基礎編

★★中医学から見た発熱★★

中医学も現代医学と同様に医学です。医学である以上そこにはしっかりとした学問体系や理論が存在します。医学には正常な身体の状態を考える『生理観』(現代医学では生理学や解剖学など・中医学では臓腑学や経絡経穴学や気血津液学など)というものがあり、その上に病気の成り立ちを考える『病理観』(現代医学では病理学・中医学では病因学説や病機学説)が存在します。

つまり、病気を理解するためには、まず正常な身体の仕組みや構造を理解しなければ病気を理解することは出来ません。ですから、まずは中医学の生理観を理解しないと、中医学から見た病気も理解することは出来きません。

しかし中医学の生理観は現代医学のそれとは全く異なった考え方をし、とても奥深いもので簡単に理解することは出来ません。そこで、とりあえず「発熱」に関係する生理観にしぼって説明をさせていただきます。

 

 

★中医学の基礎概念★

≪気・血・水≫

中医学では人の身体は「気」「血」「水」の三つの物質により構成されると考えます。そしてこれらが多くも少なくもなく適量 で、バランスよく且つスムーズに流れてこそ健康でいられると考えます。

 

『気』

気とは「人体を構成し、人体が生命を維持するための基本物質の一つ・臓腑の生理機能」と定義されております。何だか、分かった様な、分からない様な感じですね。

本来は「気」の説明だけでも数冊の本が書けてしまうほど深いものなので、一言で理解しようとするのは不可能なことです。しかし、中医学を理解するには「気」の概念を理解する必要があるのも事実です。そこでここでは「発熱」を理解するのに必要なものだけを出来るだけイメージしやすい様に簡単に説明します。

 

*気の作用*

気の働きは多種多様ですが、その中で主だった物としては、物を動かす「推動作用」・栄養に関わる「栄養作用」・身体を温める「温煦作用」・身体を守る「防衛作用」・物を変化させる「気化作用」・体内から血や栄養物が漏れるのを防ぐ「固摂作用」など様々な働きがあります。

ここで「推動作用」について少し補足をしておきます。推動とは「推進」・「促進」の意があり、臓器の活動促進や気血の流れの推進の作用があります。ですから推動作用の低下は気血の流れの滞りを起こすことがあります。

 

*気の種類*

気には「元気(原気)」「宗気」「営気」「衛気」「臓腑の気」「経絡の気」と言った具合に種類があり、その種類によって構成要素や働きが違います。

この中の「元気」「宗気」「衛気」については発熱そのものや、随伴症状に関係しますのでもう少し詳しく説明します。

 

「元気」

真気・原気とも言われ、生命活動の原動力になります。作用も様々で臓器の機能を発揮させたり、成長発育の促進などがあります。元気の不足は様々な症状が現れます。また、元気の不足から推動作用の低下といった具合に、元気の不足は様々な気の作用の低下にもつながります。

 

「宗気」

宗気は先程説明した気の作用の中の「推動作用」と深く関係し、特に胸部に集まって来るので心拍運動や呼吸運動の促進や発声の働きがあります。

 

「衛気」

衛陽とも言われ、体表を保護し体外から体を襲う病気の原因(外邪)から人体を守る働きや、汗孔の開閉調整を行い体温の調整をしております。体外から病気の原因となる物に襲われると、衛気が閉塞を起こすことがあり発熱を発症させることがあります。又、衛気は温煦作用も強いため、衛気が寒邪に障害されると悪寒や冷えの症状がでます。

(寒邪については後ほど説明します)

 

気は本来スムーズに流れていなければなりません。しかし、何かしらの原因で気の流れが滞ることがあります。この状態を「気滞」と言います。長期間の気滞は熱を生むことがあり、これを「気鬱化火」と言い発熱の原因になることがあります。

 

『正気』

人体の抵抗力や回復能力を指します。人体を襲う病気の原因(病邪)に対して体はその構成物質である「気・血・水」の全てを使って戦います。したがって「気・血・水」のどれか一つでも欠けても抵抗力は落ちてしまいます。「正気」とはこれら全てを含んだ病邪に対する抵抗力のことです。

 

『血』

血の作用は、全身を栄養し潤すことや、精神活動を支えるなどがあります。本来は血も気と同様にスムーズに流れていなければなりません。しかしながら、何らかの原因で血の流れが滞ることがあります。これを「オ血」と言い、発熱の原因になってしまうこともあります。

 

『水(津液)』

水は津液とも言い、体内にある正常な水液のことをいいます。主な作用としては身体の各部所に潤いを与えたり、体が熱くなり過ぎないように冷却する働きがあります。又、体表で衛気とともに体外から襲ってくる病気の原因物質(外邪)の体内への侵入を防いでいます。

 

 

《内臓(五臓六腑)》

さて、次は内臓です。よく「五臓六腑にしみわたる」などといいますが、この五臓六腑が中医学の考える内蔵のことです。

西洋医学のそれとは異なり東洋医学では内臓を物体として区別するのではなく、働きで区別 します。六腑は飲食物の消化吸収を行い、五臓が栄養分から「気・血・水」を作ったり運んだり貯蔵をしています。

具体的に五臓とは「肝」「心」「脾」「肺」「腎」があり、六腑には「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」があります。

先程の働きの他にも五臓六腑には沢山の働きがあります。しかし、各々の臓腑は西洋医学と同じような働きもあれば、西洋医学では考えられない働きもあります。それは、西洋医学と同じ臓腑の名前を使ってはいますが、冒頭で説明したように中医学では臓腑の働きに注目しておりますので、名前が同じでも全く同じ物を示しているわけではありません。こういったところが皆さんが混乱してしまうところだと思います。

ですから、今から発熱に関係のある臓器ついて説明をいたしますが、名前が同じでも西洋医学のそれとは違う物という認識で(別 物と思って)これから先を読まれた方がよろしいかと思います。

 

『肺』

肺の主な働きは、呼吸・宗気の生成・水液代謝の調整・全身の気の調整・鼻や皮膚の生理機能の管理などがあります。この中で、今回理解していただきたい作用は、全身の気の調整・水液代謝の調整・皮膚の生理機能の管理です。

全身の気の調整や水液代謝の調整といっても多種多様ですが、特に肺は「宣発・粛降」と言い、気や水液を全身に行渡らせる働きをしています。

皮膚の生理機能の皮膚とは体の表面部をさしますので、皮膚以外に、汗腺・うぶ毛を含みます。肺はその宣発作用で衛気と津液で皮膚表面 を養っております。このことによって体外から襲ってくる病気の原因物質(外邪)の侵入を防いでいます。

又、肺は汗を排出したり、逆に排出を抑えたりもしています。ですから、肺の失調は汗が大量 に出たり、逆に全く出なくなったりします。

 

『脾』

脾の生理作用としては、運化を主る・昇清を主る・統血を主る・肌肉を主る・四肢を主する などがあります。

この中で発熱の症状に関係がある作用は、運化作用です。

運化作用とは「消化・吸収」のことです。脾は消化・吸収の全てを統括しています。又、吸収した栄養分を肺まで送ります。

ところで、脾のある場所から肺に栄養分を送るということは、言い代えれば栄養分を肺まで持ち上げるということになります。ですから、持ち上げる物は出来るだけ軽い方が効率が良いわけです。ところが何らかの原因により体内に余分な水分が溜まると、その湿気が体内の様々な物を重くしてしまいます。その結果 、運化作用の機能低下が起こります。又、運化作用が低下すれば当然、食欲不振や下痢が起こります。

脾の上に持ち上げる作用を「昇提作用」と言い、栄養分以外にも「気」を持ち上げたり内臓を下垂させない働きがあります。

もし「昇提作用」が低下すると、「気」が上に昇れなくなり、めまい・だるい・息切れ・内臓下垂といった症状が現れます。この様な状態を総称して「脾気下陥」といいます。気の不足(気虚)による発熱の機序になりますので覚えておいてください。

又、「思は脾の志」とされていて、脾は思い悩むと損傷され易い臓器です。

その他に「甘は先ず脾に入る」と言われ、甘味には脾胃を調和してくれる作用がありますが、甘味の食べ過ぎは湿を生み、脾胃を損傷させ作用低下をまねきます。

 

『心(しん)』

心の主な作用は血の循環と精神活動の統括になります。

心は血と深い関係があり、特に心が関与している血のことを心血(しんけつ)と言い、心が関与する血の不足を「心血虚」といいます。心血は心を養っておりますので、「心血虚」は心の様々な症状を発現させます。

また、精神活動の統括は発熱の随伴症状に関係があり、心が損傷されると精神活動が不安定になってしまいます。その結果 、不眠や精神不安といった症状が発現します。

 

『肝』

肝の主な作用は、疏泄を主る・血を蔵す・筋を主る・などがあります。この中で発熱と関係が深いのは、疏泄作用と蔵血作用です。

疏泄作用には、「気機の調整」・「消化吸収の促進」・「精神活動の調整」があります。先ず、この中の「気機の調整」に注目してみましょう。

気機の調整とは、気血の流れなどスムーズにして体内の機能の働きを促進させる作用です。

ですから、肝はスムーズな状況をとても好みます。また、五行説では「木」に属し、ノビノビした状況を好みます。逆を言えば肝はストレスを嫌います。もし、ストレスにさらされると肝の気は渋滞を起こします。この状態を肝鬱と言い、さらに長引けば熱化してしまいます。これを「肝鬱化火」と言い、「肝鬱による発熱」の病理機序になりますので覚えておいてください。

次に、精神活動の調節ですが、「心」は精神活動の統括をしておりました、それに対して「肝の疏泄作用」は心の機能を促進させております。つまり、精神活動は心と肝が協力して行われていると理解してください。

次に肝の蔵血作用ですが、肝は血を貯蔵するだけではなく、例えば運動時など血が多量 に必要な時には貯蔵してある血から補給も行います。つまり、血流量 のコントロールをしているわけです。この肝に貯蔵されている血のことを「肝血(かんけつ)」と言い、肝血の不足を肝血虚と言います。

 

『胆』

胆の主な働きは、胆汁の貯蔵と決断です。胆汁はとても苦いですから、胆や肝が失調すると、口の中が苦くなります。

 

『三焦』

三焦は西洋医学には存在しない臓器ですが、中医学ではとても大事な働きをしております。三焦とは簡単に言うと、気や水液の循環通 路です。もし、湿や湿熱が三焦に留まると発熱を起こすことがあります。

 

 

《経絡》

経絡とは、一言で言えば気血水を全身の各部位へ運ぶための通路みたいなものです。経絡の作用は「生理作用」「病理作用」「治療作用」の3つにわけられます。上記の気血水が流れる経路としての働きが「生理作用」になります。ところが経絡が何らかの病因物質によって塞がれてしまうことがあります。

経絡は人体を縦方向に走る「経脈」と経脈の分枝の「絡脈」に分かれます。又、経脈の中には正経12経と言われる経脈があり、これは経脈の中でも特に重要なもので、それぞれ一対の臓腑と深い関係があります。例えば、肝や胆が失調を起こすと、それに関係の深い経脈が走行している胸脇部が張った感じがします。この症状は「湿熱による発熱」や「肝鬱による発熱」の随伴症状で発現しますので覚えておいてください。

 

 

《病因》

病因とは病気となる原因のことです。中医学ではこの病因を「外因・内因・不内外因」の3つに大別 します。

 

『外因』とは身体の外の環境が病因となるものをさします。これらは「風・湿・熱(火)・暑・寒・燥」の6種類あります。これらを総称して「外邪(がいじゃ)」とか「六淫」といいます。

この中で特に「発熱」と関係があるのは「風」「寒」「湿」「暑」です。

 

「風」

特に春に多く見られますが、どの季節にも発生します。また、「風は百病の長なり」といわれ、他の外邪を連れてやってきます。この様な場合は風寒・風熱・風湿といった具合に複合した邪になります。

自然界では風は枯葉などを空高く舞い上げます。又、熱は対流により上に昇って行きます。体内でもこれと同じように、風や熱は上昇部を侵しやすい特性があります。

 

「寒」

冬に多く見られますが、冬以外でも、雨に濡れたり、汗をかいた後に風に当たると寒邪が入り込みます。

寒邪は一番イメージしやすい病邪で、陰性が一番強く陽気を傷害させ体を冷やします。

又、寒邪の特性の一つとして凝滞性があります。これは種々の物質は冷えることによって流動性が失われるのと同様に、人体も寒邪に襲われると気血の流れが滞ってしまいます。

他には収引性があります。これは一般に筋肉などは温めると弛緩しますが、寒い所などでは、かじかんでしまって動かせなくなってしまったりします。寒邪はこの様に収縮させてしまう性質があり、毛竅を閉塞させ気の出入りや発汗を抑制してしまいます。

 

「暑」

主に夏場に見られます。これもイメージしやすい外邪で、体内に入り熱化してしまいます。

 

「湿」

梅雨時期に多く見られます。湿の特性は「脾を傷(やぶ)りやすい」とあります。湿は脾の持つ運化作用の失調を招きます。

又、湿邪と熱邪が同時に体内に入れば「湿熱」といいます。

湿は「重い」という特性があります。水が高いところから低いところに流れるのと同じように、体内の湿もどちらかと言えば体の下部を侵します。

又、湿は更に悪化して痰に変わることもあります。

 

 

☆外邪の体内への侵入ルート☆

外邪が体内へ侵入する場合は、人体と外界の接点である表皮の孔と呼吸器(鼻・口)から侵入してきます。外邪が体表付近にいる場合は表証といい、体内に侵入してきていると裏証といいます。同じ病因であっても表証と裏証とでは症状も治療法も違ってきます。

 

『内因』とは体の内部の環境が病因となるもので、具体的には過度の精神状態が病因となるものをさし、「喜・怒・思・悲・恐・憂・驚」の7種類あることから、これらは七情と呼ばれます。

七情は健康な方も持っていますが、これらの感情が過度であったり、長時間持続的に続く場合は正常ではありません。この様な状態を「情志失調」といい、病因になってしまいます。

ところで、現代医学では感情の変化と内臓の相関関係はまだ認められていませんが、中医学では感情の変化が各臓腑と深く結びついており、情志の失調が臓腑の働きに障害をおよぼすと考えています。以上の理由から七情が病因に含まれているのです。

では、せっかくですから結びつきの深い五臓と七情のペアーを紹介しましょう。

 

喜⇔心 怒⇔肝 思⇔脾 悲⇔肺 憂⇔肺 恐⇔腎 驚⇔腎

これらのペアーはお互いに刺激しあいますので、五臓に異常が発生すれば感情も変化し、逆に過度な感情は臓器を障害してしまいます。

 

この中で発熱と関係があるものは、

○思は脾に属し、思い過ぎると脾を傷る・思えば則ち気は結ぶ○

思とは、「思考・思慮」のことをさします。正常な思考は悪い影響は与えませんが、過度の思慮は脾を損傷してしまいます。

思慮により精神疲労が過度になると、気の流れがスムーズでなくなり、脾の運化作用に影響がおよび、食欲不振や消化吸収障害が発症してしまいます。

これらの症状は栄養素の摂取の障害につながり、ひいては気血不足を起こします。

また、脾の運化作用に影響がおよぶということは湿を産むことにも繋がります。

 

『不内外因』とは内因・外因のどちらにも属さないものをさします。これらは「不節な飲食・外傷・寄生虫・過労・運動不足」などがあります。この中の「不節な飲食」について補足します。

不節な飲食とは、飲食偏嗜(偏食)と飲食不潔があります。

飲食不潔は、腐敗物の飲食や細菌・毒物・寄生虫の感染などを言います。

飲食偏嗜は「肥甘厚味の過食」「生冷の過食」「辛辣の過食」「飲酒の過度」などがあります。

「肥甘厚味の過食」は甘い物・脂っぽく脂肪分の多い物・味の濃い物などの食べすぎのことを言います。

「生冷の過食」は生ま物と、冷たい物の採り過ぎを言います。

「辛辣の過食」は辛くて熱い味の物の採り過ぎをいいます。

「飲酒の過度」はお酒の飲みすぎです。

この中で「肥甘厚味の過食」「生冷の過食」「飲酒の過度」は脾胃を損傷させ、結果 的に「気虚による発熱」や「湿熱による発熱」を招きますので覚えておいてください。

 

 

《陰陽》

陰陽とは古代中国哲学を構成するものの一つで、中医学にもその考え方は深く影響を及ぼしています。陰陽は一言で説明しきれない奥深いものですので、ここでは簡単に説明します。

陰陽とは「全ての事物や現象には相反する二面性があり、これらは対立しあいながら統一し、互いに色々影響しあう事によりバランスをとっている」という考えです。つまり、陰と陽のバランスが取れていれば自然界は平常な状態です。例えば、上下・左右・内外・夜昼・男女・静動・・・・・と言った具合です。この理論に医療実践を積み重ね確立されたものが「陰陽学説」です。

さて、陰陽が人間に及ぼす影響は多種多様ですので、「発熱」に関係することのみを説明します。

陰陽を寒熱で分類すると、陰が寒性で陽が熱性に分けられます。陽は体を温める作用があり、陰は体を冷やす作用があります。陰陽のバランスが取れていれば体温は平常体温ですが、陽気の亢進や陰気の不足は熱症状を、陰気の亢進や陽気の不足は冷えの症状が現れます。このように陰陽関係のバランスが崩れてしまうことを「陰陽失調」といいます。

又、「気の種類」で説明しました「衛気」は陽に「営気」は陰に属し、陰陽失調から「営衛不和」を招き発熱の原因になることもありますので是非覚えておい下さい。

次に人間の基礎的構成物質である「気・血・水」を陰陽で分類すると、気は陽に血と水は陰に分類されます。これも後ほど、発熱の症状で出てまいりますので覚えておいて下さい。

 

さて、発熱を理解するために必要な知識を紹介したところで、いよいよ発熱についての説明に入りたいと思います。

2019/03/11
【その他】日本における鍼灸治療の現状1

● 日本における鍼灸治療の現状●

 

▼本内容を読むに当たり▼

この文章は、鍼灸・漢方医療の治療を真に求めている方の為に、現状の鍼灸・漢方医療を深く理解して頂きたく、また安易に受診することを避けて頂きたいとの思いから、現状の日本に於いての鍼灸・漢方医療の真実を書き込んでおります。

そして、受診されたい方々に、確り学習と臨床経験を積んだ良い先生方を見つけだして頂く為の指針・道しるべになればと思っております。

ですから、内容そのものは決して批判・批評を行っているものではございません。

真実を伝えているものでございます。誤解の無い様にお願い申し上げます。

 

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「あなたは鍼灸治療をご存知ですか?」と訊かれたらどう答えますか?

おそらく「はい、知っています。」と答えるでしょう。

では、「東洋医学をご存知ですか?」と訊かれたらどう答えますか?

やはり「知っています。」と答えるでしょう。

逆にこれらの質問に「いいえ、知りません。」と答える方は少ないと思います。

日本で生活しておられる方なら『鍼灸治療』や『東洋医学』という言葉を聞いたことがない、もしくはイメージが出来ないという方はいないでしょう。

では、「『鍼灸治療』は『東洋医学』ですか?」と訊かれたらどうでしょう?

おそらく「はい、そうです。」とお答えになる方が多いと思います。

針やお灸は中国から伝わった治療法であるから「鍼灸治療イコール東洋医学」

とお考えになられると思います。

しかし答えは「YES」でも「NO」でもありません。

何故なら今の日本では、東洋医学とは全くかけ離れた治療をおこなっている鍼灸院の方が多いからです。

実際に私が卒業した鍼灸学校の卒業生で東洋医学による治療を行っている鍼灸師は5%もいないでしょう。

しかも、日本の場合は「医療」ではなく「癒し」が目的の治療院の方が多いと言えます。

このような日本の現状を考えると、先程の質問の答えはどちらかと言えば「NO」の方が正解に近いかもしれません。

更に残念な事に、一般の方なら上記のような考え方をしても仕方がありませんが、東洋医学による治療を行っていないのに、鍼灸治療を行っているというだけで、自分は東洋医学を行っていると誤解をしてしまっている鍼灸師さえいます。

東洋の国である日本に住んでいながら鍼灸師までも何故このような誤解が生じてしまうのか皆さんは不思議に思うかもしれませんが、日本における東洋医学がおかれている現状を考えてみると、これは一概に誤解をしている鍼灸師だけの問題ではなく、医療制度や鍼灸学校の教育システムにも問題があるように思えます。

又、近年は「東洋医学ブーム」とやらで、テレビや雑誌などで東洋医学が頻繁に紹介されておりますが、かなり本物の東洋医学からかけ離れた情報もみうけられます。

このような状況を総合して考えてみると、一般の方々が東洋医学を誤解してしまうのも仕方のないことだと思います。

そこで今回は皆さんが知っていそうで、実はよく理解されていない鍼灸治療や東洋医学の日本の現状の話をしたいと思います。

 

★医学とは?★

では先ず「東洋医学」についての説明をする前に「医学」について少し考えてみたいと思います。

皆さんは「医学」とはどの様な学問だと思いますか?

例えば、お医者さんになるために学ぶ学問は勿論「医学」ですよね。

では、最近テレビで人気の健康番組などで得た「○○病には○○がいい」といった知識は「医学」と言えるのでしょうか???

皆さんはどう思いますか?

答えは「NO」です。これは医学とは言えません。

 

何故なら、「医学」とは病気を治す為の学問ですよね。

では病気とはどの様な状態かといえば、正常な体のしくみが崩れた状態です。

この正常なしくみを「生理」といいます。

さらに病気を発病させる仕組みを「病理」といいます。

つまり、病気を治すということは元の正常な状態へ戻すということです。

その為には、正常な体の仕組みを知らなくてはなりません。

ですから、「生理学」や正常な構造を学ぶ「解剖学」、「病理学」といった学問を学ばなくては、病気を治すことは出来ません。

又、これらを知っているだけでは病気を治すことが出来ません。

次に必要になるのは病気の診断方法である「診断学」や治療法を学ぶ「治療学」を知らなくてはなりません。

つまり「医学」とは、根底にしっかりした、「解剖学」「生理学」といった正常な体の仕組みや構造についての知識があり、次に「病理学」があり、その上に「診断学」「治療学」が存在していなければなりません。

このなかのどれか一つが欠けても「医学」とは言えないのです。

更に、同じ種類の「医学」を勉強した人は基本的に1つの疾患に対してはどの先生が施術をしても同じ結果 が出なければなりません。

例えば、一般的な疾患にかかってしまった時にどの病院へ行っても治療ができるということです。

つまり「再現性」がなければ「医学」ではないということです。

ですから「西洋医学」にせよ「東洋医学」にせよ「医学」という言葉が付く以上は上記の条件を満たしているのです。

 

それでは先程の条件をまとめてみましょう。

①、 健康な状態の体の構造や仕組みの概念がしっかりあること

(西洋医学では生理学・解剖学など、東洋医学では臓腑学・経絡経穴学など)

②、 病気が発症するメカニズムの概念がしっかりあること

(西洋医学では病理学など、東洋医学では病因病機学など)

③、①や②の上に診断や治療についての方法論があること

(西洋医学では診断学・治療学など、東洋医学では、弁証学・治療学など)

④、治療には再現性があること

これらが条件になります。

 

つまり、西洋医学であれ中医学であれインド医学であれ、医学と名のつくものには各々の概念による、生理学・解剖学・病理学があり、その上に各々の概念による、治療学が存在するのです。

1つの疾患であっても、各医学によって生理学~治療学まで各々の概念があるということです。

 

さて、「医学」と言われるものの条件を理解して頂いたところで、次に「現代医学」と「伝統医学」を簡単に紹介しましょう。

「現代医学」とは、日本でよく「西洋医学」と言われているもので、皆さんが病院などで受診される最先端医療をさします。

それに対して「伝統医学」とは現代医学とは違う理論による治療を意味します。

つまり、現代医学(西洋医学)と伝統医学の違いは、先程紹介した、生理学・解剖学・病理学・診断学・治療学などの概念が違うということです。

そして「東洋医学」もこの「伝統医学」の1つなのです。

 

★東洋医学とは?★

ここ数年、日本では予防医学への関心が高まっており、それにともない東洋医学への注目や期待といったものも高まりつつあります。

実際にCMなどでも「未病」といった東洋医学の言葉などを耳にする機会も増えてまいりました。

しかし残念な事に、東洋医学について表面上の紹介はされているものの、きちんとした説明までしているものは少ないようです。

逆に東洋医学を間違った解釈で紹介したり、受けて側に誤解を与えるような表現をしているメディアも多々見受けられます。

これはとても残念なことであります。

又、日本では「東洋医学」=「中国で生まれた医学」と思っている方が多いようですが本来の東洋医学とは、それだけを指すものではありません。

「東洋」という意味は「中国」という意味ではないのと同じように、「東洋医学」とは「東洋の医学」ということです。

つまり、「東洋医学」には、中国で生まれた「中国伝統医学(中医学)」の他にも、有名なものでは、インドのアーユルヴェーダやユーナニー・インドネシアのジャム医学・チベット医学などがあります。

 

では、中国で生まれた医学だけを言う場合は何というかというと「中国伝統医学」又は「中医学」といいます。

如何ですか「東洋医学」と「中医学」の違いがおわかりになりましたか?

当院の治療はこの「中医学」に基づいて行っております。

そこでこれ以降は混乱を避けるため、中国で生まれ伝承された医学のことは「中医学」と呼ぶことにいたします。

そして、中医学を含めた東洋の医学のことを「東洋医学」と呼びます。

 

さて、ここまで読まれると、西洋医学も中医学も同じ医学であるのがご理解できたと思います。

又、中医学のみに限らず、その他の東洋医学もれっきとした医学です。

しかし、日本の一般の方々は東洋医学を西洋医学と同等に考えている人は少ないでしょう。

なかには、「東洋医学」を、民間療法の1つ・非科学的な治療・いかがわしい・「お呪い」や「迷信」といった認識で捉えておられる方もいらっしゃいます。

何故、その様なことになったのか?

その答えは日本おける中医学の歴史や、鍼灸学校の教育システムの中に隠れております。

 

それでは中医学の歴史からのぞいてみましょう。

 

★ 日本における中医学の歩み★

=中医学の受容期(飛鳥~室町)=

中医学はいつごろ中国で生まれたと思いますか?

中医学の原典といわれる書に「黄帝内経(こうていだいけい)」という書物があります。

この書は紀元前200年頃の「前漢時代」に編集されたと言われます。

更にそれからさかのぼること500年前の「春秋時代」には、既に鍼灸治療は行われていたそうです。

この様に中医学は長い年月をかけて経験と実績を積み重ねて除々に出来上がってきたのです。

因みに中医学の基本的な部分は「漢」の時代に出来上がっておりますから、日本では中医学のことを「漢方」と呼びます。

皆さんもよくご存知の「漢方薬」はここからきております。

さて、そして日本には伝わったのは6世紀の半ばに、中国人が鍼灸治療の方法を持込んだのが始まりだと言われております。

その後「遣隋使」や「遣唐使」などにより徐々に伝えられ、平安時代には日本に定着していったそうです。

平安後期から室町時代にかけての医療は寺院により行われていたので、中医学は僧侶によって伝承されてゆきます。

その後、室町時代に入ると医師を専門職とする人が現れ始め、中国(明)に漢方を学ぶために留学をする者まで出てまいりました。

飛鳥時代から室町時代にかけてが、中医学の受容期とも言われます。

因みに、中国から医学が伝わる以前の日本の医学は「和方」と呼ばれ、現在でも民間療法として残っているものもあります。

 

=漢方の最盛期と日本の漢方(和漢)の誕生(安土桃山~江戸)=

さて、漢方が日本に定着してくると、日本人の漢方医の手によって書かれた医書が出回るようになります。

その中には、本来の漢方理論を無視したハウツー本的な本も出回るようになり、これが安土桃山時代には大流行したそうです。(今も昔も日本人はハウツー本が好きなようですね。)

そして、これが日本特有の漢方(和漢)を生むきっかけになってゆきます。

江戸時代へと入ると経済や社会も安定してまいり、益々医療が盛んになってまいります。

江戸時代が漢方の最盛期といってよいでしょう。

やがて江戸時代も中期になると漢方の理論を受け入れず、日本独自の漢方を目指す派閥も現れてまいりました。

この一派の理論は簡便であったことから、多くの医師から支持を受け、やがて全国へと広まってゆきました。

そしてその後明治以降も受け継がれることとなるのです。

 

=鎖国と日本漢方の発展(江戸)=

江戸時代の大きな出来事として「鎖国」がございます。

この「鎖国」は日本の漢方にとっても大きな影響を及ぼします。

先ず鎖国により中国からの情報が途絶えてしまいます。

この時点で中国から日本に伝わっていた漢方の情報は不十分であったため鎖国以降は不十分な漢方の情報を元に日本独特の漢方へと発展してゆくことになります。

 

=転換期(江戸)=

江戸幕府は鎖国時代にもオランダとは国交を保っていたのは皆さんもご存知のことと思います。

江戸中期にそのオランダから現代医学のルーツである「蘭方」が入ってまいりました。

やがて徐々に「蘭方」は「漢方」に代わり、日本の医療の主役となりってまいります。

とはいうものの、まだまだ鍼灸治療は明治維新までは盛んに行われていたそうです。

 

=衰退期(明治~昭和初期)=

時代は明治時代へと入ってまいります。

漢方は江戸時代中期に入ってきた「蘭方」によって主役の座から降ろされてしまっていたわけですが、今度は明治維新により医療の表舞台からも消されてしまいます。

明治政府は西洋医学のみを医療として普及させたのです。

具体的には、西洋医学を修得した者のみを医師として認めました。

つまり、明治以降の医療制度では、漢方医や鍼灸師は医療の枠から外されてしまったわけで、これは現在も続いております。

しかし明治維新以降、漢方や鍼灸治療が消えたわけではありません。

何故なら、現在と同様にこれらの治療に頼っている患者さんが存在するからです。

この様に医療の表舞台から降ろされた鍼灸治療や漢方薬は、民間療法・民間薬として医療の枠の外で生き残ってゆきます。

以上の政治的な方針により、今現在も残る鍼灸治療のイメージや中国漢方と同じ名前を持つのに効能が全く違う漢方(和漢方)が存在したりするのです。

明治の後期になると、臨床に携わる一部の医師から漢方の効果を認める者も出てきて漢方の学習を始める者も現れたそうです。

 

=再注目期と現代の問題点(昭和~現代)=

時代は昭和へ入り漢方が再度注目を浴びる時代がやってまいりました。

第2次世界大戦が終戦をむかえ、社会が落ち着きを取り戻すと、漢方薬の慢性病への効能が評価をされ始めます。

昭和47年には日中国交回復により閉ざされていた中医学の知識が再度日本へ入って来るようになり、これを学習する医師・薬剤師・鍼灸師が現れます。

昭和50年代前半には健康保険適用の漢方エキス剤が増え、これを機会に漢方が再び見直されるきっかけとなり、以降漢方エキス剤を使う医師は現在まで増え続けております。

漢方が見直され漢方エキス剤を使う医師が増えるのはとても良いことなのですが、その反面 新たな問題も発生しております。

医師が漢方エキス剤を使用する場合、本来の漢方の理論ではなく現代西洋医学の病名に合わせて使用せれていることの方が多いため、効き目が無かったり、副作用の問題も出てきております。

 

以上が日本における中医学の歩みです。

当初は医療として日本に入ってきた中医学が明治維新以降、医療制度から外されてしまい現在に至っていること。

また、中国から伝わった漢方が簡易的なものとして一部の流派に伝わっていったこと。

日本漢方が鎖国により独自の発展をしたことなどが、おわかりになったと思います。

これらの歴史が日本の一般の方が持つ「東洋医学」や「鍼灸治療」のイメージを作り上げるきっかけになってしまったのです。

更に、この様な歴史は、現代において下記のタイプの漢方薬や鍼灸に携わる人達をうみました。

タイプ①:中医学を1からしっかり学ぼうとするタイプ

タイプ②:中医学をしっかり学んではいないのに、学んだ気になっているタイプ

タイプ③:中医学の理論を受け入れず、日本独自の漢方処方や鍼灸を行うタイプ

タイプ④:中医学の理論を受け入れず、現代医学の概念で漢方処方や鍼灸を行うタイプ

 

現在の日本で漢方薬や鍼灸に携わる仕事をしている人々の考え方は概ね上記の4パターンになります。

そしてこれらの人々の多くが東洋医学を実践していると言うでしょう。

このことが一般の方々を混乱させる根源になっているのです。

 

さて、ここでちょっと矛盾を感じる方はいませんか?

先程「医学」とは、「生理学」や「解剖学」といった正常な身体の働きの知識の上に病気の成り立ちである「病理学」があり、さらにその上に「治療法」がありました。

漢方薬や鍼灸治療とは、中医学による治療法の1つであります。

つまりこれらの根底には中医学による生理学や解剖学(経絡・経穴学、臓腑学)病理学(病因・病機学)などの基礎的な理論の上になりたつものです。

先程の②③④のパターンの場合だと、基礎的な中医学理論を受け入れずに、最後の治療法のみを利用しているにすぎません。

例えば、現代西洋医学と中医学ではそれらの学問の概念や理論が全く違います。

生理学などの基礎的な学問から最終的な治療学まで現代西洋医学の概念で行えば矛盾はありませんが、基礎的な理論は現代西洋医学で治療法は中医学というやり方では治療効果 を100%発揮することは難しいと思います。

針治療の場合は最初から最後まで現代西洋医学の概念で治療をすることは可能ですが、現代西洋医学では、中医学による針治療の全てが解明されてはおりませんので、全てを現代西洋医学の概念で治療できる疾患は限られてしまいます。

しかしながら、針や漢方薬は基礎的な学問や理論を知らずに、「○○病には○○が効く」といった使用法でも効果 が出る場合も多いのも事実です。

ですから②③④のパターンの場合でも全く効果がでないというわけではありません。

ただし、鍼灸や漢方の効果を100%発揮させるのは不可能でしょう。

それどころか身体に対して悪影響や副作用を及ぼしてしまう場合もあります。

よく、針や漢方薬には副作用が無いと言われますが、それは全くの嘘です。

病を治すものですから、間違った使い方をすれば副作用がでるのは当たり前のことです。

日本国内における漢方薬の世界では、最初から診断までを現代西洋医学の概念で行い最後に現代西洋医学の病名に合わせて漢方薬を処方したり、症状のみに合わせて簡易的に漢方薬処方を行っている所もよくあります。

その場合、たまたま薬が合えば効き目はありますが、効き目が出ない場合も多々あります。

当院にも、中国で処方してもらった漢方薬は効いたのに、帰国して日本の病院や薬局で漢方処方をしてもらったら、以前の症状が再発してしまったという相談が度々あります。

 

さて皆さんの中には、

{お医者さんは中医学や東洋医学の知識をもっていて当たり前だろう}とか

{お医者さんは針の知識は無くても漢方薬の知識は持っているだろう}とか

{鍼灸師は皆中医学や東洋医学については詳しいだろう}

などと思っている方も多いと思います。

では、次のコーナーではその辺について紹介をしてみたいと思います。

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