コラム

2019/03/11
【その他】メタボリックシンドロームについて

メタボリックシンドロームという言葉は、最近では様々なメディアで取り上げられ、何度も耳にし、とても身近な言葉になっていると思います。しかし、この現象は、現代社会において普通 に生活をしていても陥りやすい病態であるからこその警鐘であると言えます。

今回は、メタボリックシンドロームについて、中医学的な予防方法を紹介します。健康のための参考になさってくださいませ。

 

メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドロームは、別名、代謝性(metabolic)症候群(syndrome)と呼ばれ、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)を主体として、高血糖、高血圧、高脂血症のうち2つ以上を合併した病態と定義されています。以前より、シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、マルチプルリスクファクター症候群、などとも呼ばれていますが、簡単に言ってしまえば、「肥満が災いして病気になりやすい体質」と言えます。

これらの病態は、重積すると相乗的に、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の発生頻度が高まるため、注意すべき病態として扱われています。

 

以下は、上記の病態の基準値(2005年)です。

必須項目

・内臓脂肪

 男性:85?以上

 女性:90?以上

選択項目(2つ以上)

・血圧

 収縮期血圧:130mmHg以上 or 拡張期血圧:85mmHg以上

・空腹時血糖値

 110mg/dL以上

・血中脂質

 中性脂肪150mg/dL以上 or HDLコレステロール40未満

 

内蔵脂肪を落とせば健康になれるの?

最近では、内臓脂肪の蓄積による肥満が、メタボリックシンドロームを引き起こす共通 の基盤として着目されています。内蔵脂肪の燃焼を手助けする特定保険用食品が、最近増えているのもこのためかもしれません。

では、本当に内臓脂肪を落とせば健康になれるのでしょうか?内臓脂肪の蓄積による肥満は、確かに体にとっては正常な状態ではなく、様々な病気のきっかけになっているかと思います。しかし、ここで間違ってはならないのは、内臓脂肪の蓄積というのは、あくまで体の中で起きている代謝の産物であるという点です。つまり、代謝しきれない要因があるからこその脂肪の蓄積なのです。そういった意味では、内臓脂肪の蓄積というのは、体の警告信号として捉えるのが良いと思われます。そして、この警告信号をきっかけとして、代謝異常を起こす要因をしっかりと探り、改善していくことが健康につながるのだと考えます。

 

体質も要因の一つ

現代社会においては、多くの場合は、運動不足や過食がメタボリックシンドロームの要因の一つとなっていることは否めません。しかし、忘れてはならないのは体質という基盤の上に、生活習慣、生活環境が反映されているということです。「最近、運動不足だから運動をしてみよう」これは、良いことだとは思います。原因が本当に運動不足だけであれば、良い効果 は出るでしょう。しかし、例えば、代謝そのものが落ち始めている体質的変化の上に、運動不足が重なっていた場合はどうでしょう?この場合はやはり体質の改善もしなければ、効果 が出づらいと言えます。

つまり、要因を探る上で重要なのは、体質(内的要因)と生活習慣や環境(外的要因)の両面 をしっかり探らなければならないということなのです。

 

 

中医学的な体質の捉え方

では次に、中医学では、どのように体質を捉えるのかを紹介いたします。

 

中医学では、人の身体は「気」「血」「水」の三つの物質により構成されていると考えられています。そして、これら三つが、ちょうど良いバランスで体内をめぐることにより、人は正常に活動することができると考えられています。言い換えれば、「気」「血」「水」は健康の原点とも言える物質なのです。

 

いわゆる生体エネルギーであり、生命力そのものです。これが正常でなくなることで体内における様々な活動が衰えます。代謝が悪くなるということもこれに当てはまります。

 

いわゆる血液であり、体の隅々に栄養を運ぶものです。これが正常でなくなると、体内の臓腑の機能が正常に働かなくなります。

 

いわゆる体液であり、体を潤す作用があります。これが正常でなくなることで、水分代謝が悪くなり、他の物質の運行を妨げてしまいます。特に体にとって不必要な「水」は「痰湿」と呼ばれ、脂肪はこの「痰湿」から成っていると言われています。

 

これらの「気」「血」「水」のバランス調節には、体内の臓器が関係しています。

特にメタボリックシンドロームでは、「脾」「腎」「肝」の臓器が大きく関係しています。

 

飲食物を消化吸収して「気」や「血」を作りだし、他の臓腑に送り出す作用を持った臓器です。この作用は「運化作用」と言いますが、この「運化作用」が失調することで、体内の様々な活動が衰えてしまい、代謝も悪くなります。

 

元気の源と言われる臓器です。作用には様々なものがありますが、メタボリックシンドロームでは主に、水分代謝や排尿に関する機能が重要と言えます。「腎」の機能が失調することで、水分代謝が悪くなり、痰湿を生じることで、肥満の原因となります。

 

「気」をスムーズに体内をめぐらせる役割を担っている臓器です。「肝」はストレスに非常に弱い臓器で、現代社会においては、生活環境に非常に左右されやすい臓器と言えるでしょう。この「肝」の機能が衰えることで、「気」は体内をスムーズに流れずに停滞し、イライラ感を覚え、血圧も高くなりがちになります。

 

中医学的な体質とはつまり、「気」「血」「水」のバランス、そして臓腑の状態、ここでは「脾」「腎」「肝」の状態により成り立っています。そして、これらの要素を把握した上で、より正常な状態に近づけることが、効果 的なメタボリックシンドロームの改善につながると考えます。

 

体質タイプ別の中医学的予防

それでは、体質タイプ別に中医学なメタボリックシンドロームの体質改善方法を紹介いたします。体質改善の方法としては、ツボ押しによる体質改善と、食材による体質改善を挙げています。ほんの一例ですが、参考になさってください。

 

ただし、どの体質タイプにも共通して言えることですが、適度な運動・食事・睡眠といった外的要因に対する改善は必須であるということは忘れないでください。

 

脾虚湿盛タイプ

脾の臓が正常に働かなくなることで、食物を効率的にエネルギーに変えることができず、代謝が悪くなっているタイプです。倦怠感、食欲不振を感じる方が当てはまります。

代謝が悪くなっているタイプのため、肥満になりやすいタイプと言えます。

随伴症状としては、顔色が青白い、お腹が張る、浮腫みやすい、軟便といった症状もみられることがあります。

 

ツボ押し体質改善

足三里(あしさんり)、合谷(ごうこく)

食材による体質改善

豆腐、ヨーグルト、しょうが、フグ

 

 

腎陽不足タイプ

腎の臓が正常に働かなくなっているタイプです。何をするにも元気が出ない方が当てはまります。「脾虚湿性タイプ」とは異なり、食欲はあります。体全体のエネルギーが不足し、水分代謝異常のために痰湿も停滞しやすいため、肥満になりやすいタイプと言えます。

随伴症状としては、寒がり、尿が少ない、殿部と大腿部が肥満といった症状もみられることがあります。

 

ツボ押し体質改善

関元(かんげん)、太谿(たいけい)

食材による体質改善

くり、小麦、丁子

2019/03/11
【内科疾患】むくみ

むくみとは、体内に余分な水分が留まり押すと陥凹するものを指します。筋層や皮下にあふれ出て、 顔面部の眼、まぶた、手足、お腹、背中など、身体全体にあらわれます。

重症になると胸水、腹水を伴うことがあり、そのときは原因となる疾患の治療が優先になってきます。

(例:急・慢性ネフローゼ症候群、肝硬変、クッシング症候群など)

そして、むくみが症状としてあらわれる疾患はたくさんあります。身近な例を上げますと 働く成人女性の7~8割の方は、仕事帰りになると靴がパンパンになるという、むくみの不快さを経験したことがあるかと思います。

最近では、足がむくまない靴下も売られており、女性にとってはありがたい製品だなと感じます。女性はとくに排卵期から月経までの間は、黄体ホルモンの影響を受けるのに加え、男性に比べて筋肉量 も少なく、血管も細いため、むくみが出やすくなってきます。

 

ここのところ疲れやすく代謝が落ちているなと感じる方、冷え症がある方などのむくみは、身体の根本から見直して改善していく必要があります。

むくみとはいえ、身体の機能が低下している状態が長く続きますと、違う症状や病気をまねきます。最近、特にむくみが気になる方は、これから説明していきます、タイプ別 の過ごし方、適した食べ物を参考に日常生活の中で役立てていただけたらと思います。

 

妊娠中の浮腫については「病気別・わかる東洋医学診断~妊娠中トラブルの原因と対処法について~」の項をご参照ください。

 

 

▼中医学的に診るむくみのとらえ方▼

中医学では主に水分代謝に関わる臓器として「脾」「肺」「腎」があります。これらの機能が障害されると、膀胱の働きも影響を受け、不調になります。

そのため余分な水分が順調に排泄されずに停滞し、筋や皮下に溢れてむくみが発生するのです。

中医学でとらえる「肺」「脾」「腎」「膀胱」それぞれの臓器の働きとは・・

「肺」・・汗の調節を行なう。不必要になった水分は、腎へ送られる。

「脾」・・食べた食物の中から、必要な水分の吸収と輸送を行なう。

「腎」・・水分代謝全般を調節し、主導的な役割を担っている。

体内で不要となった水分を尿として排泄します。再利用可能な水分は、霧状のものとして再び各臓器へ送られます。

 

腎は体全体を温める働きがあり(体の中の陽気の源)、各臓腑機能を推し動し、温める役割を果 たしています。よって上記の「脾」「肺」もこの「腎」の推し動かす力によって活動を維持していくことができるのです。

「膀胱」・・腎から作り出された尿を一時的に溜めておく。尿の生成には関与しない。

 

▼中医学的からだのしくみ▼

~「気」「血」「水」とは~

体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。

もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。

さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

 

「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこれら「肺」、「脾」、「腎」の臓腑です。

西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。

ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。

詳しくは、HP上の‘わかる東洋医学診断・まとめ’の中に「わかりやすい東洋医学理論」があります。そちらをご参照ください。

▼水分代謝に関わる主な臓腑の働き▼

「肺」・・

気(エネルギー)を生成する。

下記の「脾」「腎」とともに気の生成をするために不可欠の臓腑です。

気の不足による主な症状は、息切れ、声にはりがない、かぜをひきやすい、抵抗力が弱いなどがあります。

 

 

肺の最も重要な働きに、呼吸を司る。「発散と下降」があります。

肺は身体の上部へ位置するために、瞼や顔にむくみがでやすい。

《気の場合》

発散とは、各臓腑や体表にエネルギーを送り出す働き。

下降とは、息を吸って得たエネルギーを体の中に取り込む。

そして体の活動源とする。

主な症状:喘息、咳が出る。

《水分の場合》

発散とは、咽喉部、皮膚を潤す働き。 汗として体外へ発散させる働き。

下降とは、不要となった水分を腎へ下ろす。

主な症状:喉がイガイガする、皮膚が乾燥する、水分を腎へ下ろせない場合は、主に顔面 部がむくみ、尿がでない。

 

 

鼻や皮膚の働きを司る。

主な症状:鼻づまり、鼻水、くしゃみ、アレルギー性鼻炎、蓄膿症。

 

「脾」・・

食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。

働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。

 

 

エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。

働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。

 

 

血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。

働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

水分代謝の障害が起こると・・軟便または下痢、痰が多く出る、手足がむくむ、食欲がない、身体が重だるい、疲れやすい。

 

 

「腎」・・

 

生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。

「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。生まれたときにこのエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの発育不良の状態があらわれます。

「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。

 

 

例)

骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる。

婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい。

水分代謝の障害が起こると、尿量が少ない、全身のむくみ(特に腰以下)。

冷え症状が加わると、さむけ、下痢をしやすい(特に朝方)、手足、腰の冷え。

 

▼現代医学的な治療を必要とするむくみ▼

寝起きの顔がはれぼったい、夕方に靴がきつくなる…などの普段健康的な人に起こるむくみは、“一過性のむくみ”といわれます。以下の原因が考えられますが、きちんと対処すればすぐに治ります。

・長時間立ち続ける、疲労、睡眠不足、月経前、妊娠時、ダイエット、塩分の取りすぎ。

 

一過性のむくみとは違って、以下のようなむくみが局所的または全身的に起こり、長く続いて解消しない場合は注意が必要です。病気が原因となって起こることが多いので、医師の診断と治療を受けるようにしましょう。

 

<顔にあらわれるむくみ>

腎炎、ネフローゼ症候群、血管神経性浮腫、バセドウ病、上大静脈症候群 など

 

<足にあらわれるむくみ>

静脈瘤、うっ血性心不全、静脈炎 など

 

<お腹にあらわれるむくみ>

肝硬変

 

<全身にあらわれるむくみ>

腎炎、ネフローゼ症候群、肝硬変、悪性腫瘍、甲状腺機能低下症

 

▼中医学的病気の診断・治療方法▼

個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。

そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。

この他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。

その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

 

 

▼中医学的むくみのタイプと治療法▼

●風寒犯肺タイプ●

 

冷たく寒い風が体に侵入し、肺の働きを失調させます。

そのためにあらわれるむくみのタイプです。

○主な原因

 

クーラーや冬の寒冷にあたってしまった、体の抵抗力(防御力)の低下、

虚弱体質。

○随伴症状

 

まぶたからむくみが生じ、次第に全身におよぶ、悪寒、発熱、関節痛、

尿量の減少。

○治療法

 

風寒の邪気を体外に発散させる「散寒解表」、

肺の水分代謝作用を高める「宣肺利水」の治療をしていきます。

 

●風熱犯肺タイプ●

 

暖かい空気を伴った風邪が体に侵入し、肺の働きを失調させ、むくみを生じさせます。

○主な原因

 

暖房の生暖かい風、春の暖かい空気を伴った風にあたってしまった、

体の抵抗力(防御力)の低下

○随伴症状

 

突然にまぶたと顔面にむくみが生じ、高熱、軽度の悪風(風にあたるのを嫌がる)、咳、のどの発赤と疼痛、尿が濃い。

○治療法

 

風熱の邪気を体外に発散させる「辛涼解表」、

肺の水分代謝作用を高める「宣肺利水」の治療をしていきます。

 

●水湿困脾タイプ●

 

「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、むくみを生じさせます。

○主な原因

 

冷たい水分・甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの、ビール、

生ものを多く摂取する。

家が湿気を帯びやすい。

○随伴症状

 

慢性に生じる身体全体のむくみ、尿はしぶり量 が少ない、身体が重だるく疲れる、食欲がない、食後胃がもたれる、むかむかする、腹部の膨満感がある。

○治療法

 

停滞している水分を温めて尿として体外へ排出していく「温化水湿」

「通陽利水」の治療をしていきます。

 

●脾陽虚タイプ●

 

冷たい食べ物、生ものの食べ過ぎによって「脾・胃」が冷えてしまい働きが弱まってしまったために水分が胃に停滞して生じるむくみのタイプです。

○主な原因

 

冷たいもの、生ものを多く摂取するなど。

○随伴症状

 

下半身に顕著なむくみがあり、押すと陥凹してなかなかもとにもどらず、反復して慢性に経過する、疲労倦怠感、手足の冷え、食欲がない、胃が悶々として腹が張る、泥状便~水様便、尿量 は少なく色は薄い。

○治療法

 

消化、吸収の要である脾を温める「温運脾陽」、余分な水分として停滞している湿気を尿として体外に排出させる「化湿行水」の治療をしていきます。

 

●腎陽虚タイプ●

 

身体全体を温める働きをもつ「腎陽」。機能が低下すると多くの冷え症状をまねき、むくみを生じさせます。

○主な原因

 

生まれつき体質が虚弱体質、長期間の過労、性交過多による腎エネルギーの損傷。

○随伴症状

 

顔面及び体全体のむくみ、腰以下に顕著で両足の内くるぶしに強くあらわれる。

腰や足がだるく痛む、手足が冷える、動悸、尿はしぶり量は少ない、寒がる。

○治療法

 

陽気の源である腎を温める「温補腎陽」、尿の生成力を増し体外に排出させる「化気行水」の治療をしていきます。

 

●気血両虚タイプ●

 

食物からエネルギー(気)を生み出す源である「脾・胃」。

この2つの臓器の働きが失調することにより体を養う気や血が作りだせないため、身体全体の機能減退症状がみられます。

○主な原因

 

生まれつき虚弱体質、飲食の不摂生、過労、あれこれ思い悩むことが多い。

○随伴症状

 

慢性に生じる顔面、手足のむくみ、顔色が蒼白あるいは黄色っぽい、唇が白っぽい、頭のふらつき、動悸、息切れ、食欲がない、元気がない、倦怠感。

○治療法

 

エネルギーと血を増やしていく「補気養血」の治療をしていきます。

 

▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼

自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。

体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。

●風寒犯肺タイプ●

【生活習慣】

 

日ごろから過労・飲食不摂生・睡眠不足を避けて気を充満させましょう。

 

もともと体が冷えやすい方は、温める働きのある食べ物を摂取し、薄着は避け、寒い日は、腰やお臍の下にホッカイロを貼って、体を温めましょう。

【食べ物】

~風寒の邪気を体外に発散させ、肺の水分代謝作用をもつ食べ物を摂りましょう~

 

ねぎ(白い部分)、生姜、紫蘇の葉、シナモン、こしょう

 

症状にあったお茶や飲み物:紫蘇入り生姜茶 、ねぎ入りお味噌汁

 

 

●風熱犯肺タイプ●

【生活習慣】

 

日ごろから過労・飲食不摂生・睡眠不足を避けて気を充満させましょう。

 

風が強い日は特に、からだ(首~背中)に直接風が当たらないような服装を心がけましょう。

 

辛い食べ物、お酒の飲みすぎは、体の中に熱を生みます。過食、多飲は避けましょう。

【食べ物】

~風熱の邪気を体外に発散させ、肺の水分の代謝作用をもつ食べ物を摂りましょう~

 

きゅうり、冬瓜、そら豆、薄荷、梨

 

症状にあったお茶や飲み物:菊花茶と緑茶を混ぜたもの 、ミントティー

 

 

●水湿困脾タイプ●

【生活習慣】

 

甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。

 

水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。

 

運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。

 

梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。

 

【食べ物】 ~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~

 

(穀類)

はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆

 

(野菜)

冬瓜、白菜、山芋、トマト、チンゲンサイ

 

(魚類)

こい、ふな

 

(果物)

すいか、ぶどう、メロン

 

(お茶)

紅茶、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶

 

 

●脾陽虚・腎陽虚タイプ●

【生活習慣】

 

夏、冷房が強く寒さを感じる場合は腹巻をしたりレッグウォーマーをはき下半身は冷やさないようにしましょう。

冬は暖かい服装をし体の温まる食べ物を摂取しましょう。

 

入浴時はぬるめのお風呂にゆっくり入り体のしんまで温めるようにしましょう。40℃のお湯に10~15分つかると温まります。

 

冷えやすい下半身は下腹部や腰部にカイロをはって、しっかり温めましょう。

 

体を温める食べ物を摂るようにしましょう。

 

女性は普段よりいっそう体が冷えやすい生理中は、体を冷やさないよう充分気をつけましょう。

 

【食べ物】~体を温め、活動力を増す作用のある食べ物を摂りましょう~

 

(穀類)

もち米

 

(肉類)

羊肉、鶏肉、牛肉

 

(魚介類)

えび、なまこ、あなご、いわし

 

(野菜)

にら、ねぎ、ししとう、かぼちゃ、しょうが、にんにく、らっきょう

 

(木の実)

栗、くるみ、なつめ

 

(香辛料)

こしょう、さんしょう、八角、酒、シナモン、黒砂糖

 

(お茶)

杜仲茶、ジンジャーティー黒砂糖入り、よもぎ茶

 

     ~体を冷やす性質のある食べ物は極力避けましょう~

 

(野菜)

きゅうり、トマト、冬瓜、苦瓜、レタス、なす、ごぼう、大根

 

(果物)

すいか、なし、バナナ、柿、レモン

 

(豆類)

豆腐、豆乳、緑豆

 

(お茶)

緑茶、ウーロン茶、菊花茶、薄荷(ミント)茶

 

 

●気血両虚タイプ●

【生活習慣】

 

消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。

 

消化が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。

 

スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。

 

頭や目の使いすぎは血を消耗させてしまうので、この時期は極力長時間パソコン作業や、夜遅くまでの勉強、仕事は避けましょう。

 

ダイエットによる食事制限も禁物です。

 

【食べ物】  ~エネルギーを益す食べ物を摂りましょう~

 

(穀類)

うるち米、粟米、小麦製品

 

(豆類)

冬大豆や大豆製品、牛乳

 

(肉類)

牛肉、鶏肉、烏骨鶏

 

(野菜)

山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参

 

(魚類)

いか、貝柱

 

(果物)

なつめ、もも、さくらんぼ

 

(お茶)

杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶

 

~体を冷やす食べ物、辛い食べ物、油っこく味の濃い食べ物は胃を刺激し気を消耗させるので避けましょう~

辛い食べ物・・青唐辛子、ねぎ、コショウなど

冷やす食べ物・・すいか、バナナ、イチジク、なし、苦瓜、薄荷など

 

さて、お読みになってむくみにはさまざまなタイプがあり、タイプ別による治療、食養生、生活習慣が重要だということがお分りになって頂けましたでしょうか。

些細なことなのですが日常の過ごし方を少し見直してみるだけで体調が変わりはじめ、体質改善に繋がっていきます。

無理のない範囲で実践し、続けていくことが大事です。

 

 

◎ 当院での治療をお考えへの方へ

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、 中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

2019/03/11
【その他】経路について

鍼灸の治療では、頭痛の治療の時に合谷という親指と人差し指の間にあるツボに鍼を刺したり、胃痛などの消化器に関する治療の時に足三里という脛(スネ)のところにあるツボを使ったりします。

これらは、神経の走行(流れ)やホルモンの分泌によって治療されているわけではありません。痛みにかかわらず内科、婦人科、耳鼻科などを中医学で治療または予防養生する場合は、これからお話しする経絡の流れを利用して治療を行っているのです。

 

経絡は、それ自体は目に見えるものではないので、概念を理解するのは難しいかもしれませんが、中医学の理論の中でもとても重要な理論です。

 

経絡の経とは、「縦の方向」という意味があります。絡には「網」とか「ネットワーク」の意味があります。

つまり経絡とは、身体を縦に貫き、そこから網状にネットワークをつなげる通 路という意味になります。

 

最も基本的な作用としては、気血(気と血)の流れる通り道です。

 

経絡の作用には生理作用、病理作用、予防治療作用と3つあります。

 

 

○生理作用では、気血の運行、陰陽協調の作用と病邪から抵抗防御する作用があります。

①経絡は上下内外の身体中を網状に連絡している

経絡は人体の表裏(浅い所と深いところ)内外や上下左右を通り、身体周囲や前後を連絡します。

 

②経絡上に気血を運行させ、身体を栄養している

気血は経絡を通じ、五臓六腑、四肢から全ての骨、五官(目、耳、鼻、舌、皮膚)九竅(キュウキョウ:穴)、筋肉、脈、皮膚などの全身を栄養しています。

 

③陰陽のバランスをとっている

経絡が気血を全身に巡らせ、上下内外を正常に連絡することにより、身体の陰陽を組織的に統一しています。

 

④病邪から抵抗防御する

外感六淫(風寒暑湿燥火:気候、環境の影響)=外邪は多くは、皮膚から侵入し、経絡を通 じ徐々に臓腑を侵していきます。

経絡には、この外邪に抵抗し身体を防御する作用があります。

気の種類の中でも「衛気(エキ)」という気が身体表層部の引き締めをし、外邪からの身体の攻撃を防ぎます。

 

 

○病理作用では、身体の内外の邪気による病的変化を反映する作用があります。

病気の元である邪気もまた経絡によって伝達していきます。

中医学の病因は三因論といい、内傷七情(喜怒優思悲恐惊:心因的な影響)、外感六淫や、これら以外の不内外因(飲食不節、過度の労働や運動、安逸、外傷、寄生虫、房事過多など)により邪気が発生します。

これらの内外の邪気が経絡の流れに乗って身体中をめぐり、外から内へ、上から下などと発生した場所以外のところにも到達します。

例えば、冷たい風にあたってしまったのがきっかけで、腰が痛くなったり、お腹の調子まで悪くなったりするのは邪気が経絡に乗って腰や、お腹まで巡ることにより発生するものです。

 

 

○予防治療作用では、経絡に与えられた刺激を伝導して、虚実を調整する作用があります。

経絡上に鍼灸やマッサージを施すと、経絡系統に反応が起きます。この反応が病気のある所に伝導することにより虚実を調整し治療することができます。

鍼灸等の治療の時に、治療を受けている人は一種の感覚を受けます。この感覚は、だるい、シビレ、張る、冷たい、熱い、蟻が這う、または水が流れるなどと表現され、経絡に沿って拡散します。気を得ると書いて「得気(トッキ)」や「響き」と言われます。

また、この感覚は線状で、太さは粗い綿の糸ぐらいで、部位によって太さや深さに差があります。

 

※よく経絡の治療作用は神経や血流によって伝達するホルモンの作用と同じものと説明されることがあります。

しかし、伝達速度の説から見ると、この得気の感覚は10cm/秒の速度で伝達し、トゲが刺さった時に瞬間的に感じる痛みなどの感覚神経(体性神経)の速度(100M/秒)より遅く、また循環、呼吸、消化などの自律機能をつかさどる自律神経の速度(1M/秒)よりも遅く、血流によって作用するホルモンの作用速度(分単位 で作用)よりは速いことからわかるように、経絡とは神経、ホルモンの作用とは違うものです。また、この説の伝達速度からみると経絡は自律神経よりは細いと推測できます。

 

 

次に、経絡の分類についてお話します。

 

経絡には、それぞれ支配する器官によって経脈、経筋、皮部などいくつかの種類がるのですが、その中でも十二経脈という経絡が主体になります。十二経脈の「十二」という数字は十二ヶ月に対応し、人体と自然界が統一的に存在していることを示しています。

この十二経脈は内経(ナイケイ)という古典に「十二経脈は、内は蔵に属し、外は肢節と絡(まと)う」と説明されるように、十二経脈は、内は五臓六腑を連絡し、外は四肢や血管、筋、骨、皮膚などを連絡します。

十二経脈は十二正経とも呼ばれます。

 

 

○十二経脈について

 

①外行部分と内行部分

十二経脈は外行部分と内行部分に分かれます。

外行の流れは体表部に反映し、特有の経穴(ケイケツ、ツボ)を持ちます。

内行する部分は臓腑に連絡しています。

 

②陰と陽

この十二経脈は陰陽にも分かれ、手足でも分かれます。流れには一定の法則があり、手の三陰、手の三陽、足の三陽、足の三陰と4つに分かれています。4つに分かれている事もまた、自然界の四季に通 じているといえます。

陰経は「臓(肝、心、脾、肺、腎)」と連絡し、陽経は「腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)」に連絡します。

三陰と三陽は、陰陽の気の盛衰(量)によって、さらに3つに分けられています。

 

③三陰と三陽

陰気の最も盛んなものから順に太陰→少陰→厥陰(ケツイン)といいます。

陽気の最も盛んなものから順に陽明→太陽→少陽といいます。

 

④表と裏

この内の太陰と陽明、少陰と太陽、厥陰と少陽はペアとなっていて「表裏の関係」といい、経絡上で密接に連絡しています。

 

⑤経脈のつながり

十二経脈の流れは手の太陰から始まり、手の陽明に連絡し、足の陽明に続き、足の太陰に連絡し、今度は手の少陰につながり…と一つ一つの経脈が連絡し、全経脈をつないでいます。

 

⑥経脈の流れの方向

また経脈の流れには方向が決まっています。

手の三陰は胸、腹から指先へ、手の三陽は手から頭へ、足の三陽は頭から足へ、足の三陰は足から腹、胸へという方向が決まっています。

 

また十二経脈以外にも、奇経八脈、十二経筋、十二経皮、十二経別などの経絡の種類があり様々な場所で働いています。

 

 

このように経絡は上から下へ、外から中へ、表から裏へなど、身体中を連絡し生命活動に非常に重要な役割をしていることが分かります。

中医学に基づいた針治療で、内科、婦人科、泌尿器科、精神科疾患などさまざまな病気を治療することができるのは、経絡の作用と流注を正確に理解し、施術しているからなのです。

2019/03/11
【内科疾患】リウマチについて

慢性関節リウマチについて

 

青年、中年に多発し、関節障害の多くは対称性で、手足の指などの小関節あるいは脊椎関節が侵されることが多い疾患です。

脊椎関節が侵された場合、通常、まず仙腸関節が影響を受けます。発症の大部分は緩慢で急性発作の症例も少数みられます。

急性発作時には発熱、関節部の発赤・腫脹があります。初期には、遊走性を呈するが、慢性に経過し、進行すれば関節は強直、変形し、指関節は紡錘形に腫大します。筋萎縮と腱攣縮などの症状があります。

◎ 白血球数…やや増加

◎ 血沈…亢進

◎ ALSO(連鎖球菌による感染)…抗体価に異常など

風邪・肝炎・リウマチ熱などで高値に出ます。

 

 

★慢性関節リューマチ(RA)の診断基準★

 

1 朝のこわばりが1時間以上持続する状態が、6時間以上続いている。

2 3箇所以上の部位で関節が腫れている状態が6時間以上続いている。

3 手首の関節、手掌の関節、手指の関節のうち一箇所異常が腫れている状態が、6週間以上続いている。

4 左右対称性の関節炎症が起きている状態が6時間以上続いている。

5 皮下結節が認められる。

6 血液検査(RAテスト)による血清リウマトイド因子が陽性となる。

7 手指・手関節のX線所見で変形が認められる。

 

上記7項目のうち、4項目以上に該当した場合に、慢性関節リューマチと診断されます。

 

 

★中医学的慢性関節リューマチの捉え方★

中医学では、体の活動に必要な物質がうまく流れなくなるために、関節や関節に附属する組織が栄養不足の状態となっておこる病気と考え、診断と治療を行います。

 

 

★西洋医学的治療法★

基礎療法…精神や肉体の適度な運動と安静、バランスのとれた食事などが大事になります。

薬物療法…非ステロイド抗炎症剤・副腎皮質ステロイド剤の投与など。

運動療法…関節の変形や筋力低下をふせぐ為に行います。

 

 

★中医学的考え方★

中医学では、人体は気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)という成分により構成されていると考えます。

気は生体エネルギー、血は血液、津液は血液の構成成分でもある正常な体液成分と考えて下さい。

これらの成分がバランスよく、心身に充分満たされ、うまく働くことで、人体は健康を維持できると考えます。

 

「気・血・津液」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのが臓腑になります。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・津液」が深く関わってきます。西洋医学と全く同じ役割分担ではないため、違う角度から治療できる訳です。

中医学では、病名だけでなく、その症状や体格・体質(「証」といいます)をみてツボを決定します。その証に応じて症状の改善することを中心にツボを組み合わせていきます。

慢性関節リューマチは、病態が多彩であり、その経過も個人差が大きい疾患であるため、個別 的な対応が必要になってきます。

 

 

★生活環境と深い関わりのある慢性関節リューマチ★

病を引き起こす原因には、中医学では「内因」「外因」「不内外因」の3種類があります。

その中で関節リウマチは、「外因」が原因となります。

病を引き起こす原因が外部から発生するものと深い関わりがあると考えています。

これを六淫(りくいん)外邪といいます。

 

ここで少し六淫について説明させて頂きます。

自然界の気候変化には「風」「寒」「湿」「暑(熱)」「燥」「火」があり、その気は万物を発生・変化させる正気(六気)と呼ばれています。

そしてこの六気が人体の適応力や抵抗力が衰えている時などに、人体に発病因子となって疾病を発生させます。

このように六気が病を引き起こす邪氣に変わったものを六淫(外邪)といいます。

 

 

★慢性関節リューマチと関わりの深い臓腑とは★

外因の影響によってはじまる慢性関節リウマチは、急性で激しい症状を示します。しかし、時間の経過とともに体の衰えが進むと外因である風・寒・湿・熱邪などの邪氣が臓腑まで侵入し、免疫能力の異常や抵抗力がさらに低下し、慢性化して肢体の変形や機能障害をもたらします。

 

「腎」…生命の源である「精」や体を温める「陽気」をつくり、全身の水分代謝をコントロールします。

陽気が慢性的に不足すると冷えが体内に入りやすくなります。

 

「肝」…血を蓄え、血の流れを調節します。

 

「脾」…湿邪と関係の深い臓腑で湿邪は痰濁(病理水分)に生まれ変わり、血の流れが滞って生まれる「オ血」と結びついて、骨や関節に付着して固まりやすくなります。

 

主に上記の3つの臓腑がアンバランスになり、曲げ伸ばしが難しくなって、痛みや痺れが激しくなる傾向になります。

 

 

★病気の原因★

人間は適度な運動により気の流れを良くし、汗をかき、陽気が体内にこもらないようにする必要があります。夏はどうしてもちょっと動けば汗をかきます。気温が高く身体が熱を持ちやすくなりますから、発汗することで熱をにがしているわけです。そのため夏などは汗腺(中医学では溱理といいます)が開きがちになっています。

溱理が開いていることは逆に外邪が進入しやすくなっているというマイナス面 があります。これに生気不足(正気とは生体の臓腑・経絡・気血の機能を正常に保ち病邪に抵抗し、損傷を回復させる能力を指しています)が加わるとリウマチ性関節炎になりやすいと考えます。

生まれつき体の弱い人や、大きな病気あるいは慢性病にかかって体が弱っている人は、気や血が不足した「気血不足」の状態にあります。

皮膚の抵抗力が弱く、気候や環境の影響を受けやすい為、わずかな変化にも対応することができません。

その為、病邪が簡単に侵入して関節リウマチを発病しやすいと考えます。

つまりクーラーがきいていて夏にそぐわない風寒邪が沢山ある環境や、過労による疲労後に汗をかいて風に当たったり、雨に濡れたり、多湿の環境で長い間仕事を行ったりすると、容易にこの風・寒・湿の邪氣が溱理から侵入してしまいます。暑い外からクーラーのきいている室内に入るとホッとするのは事実ですが、実は汗をかくために思いっきり開いている溱理から一気に風寒邪が侵入する絶好のチャンスを与えていることになるのです。

風寒邪というのは風邪と寒邪がくっついたものです。

気血の流れを停滞させたり、凝固させたりします。

これらの外邪が入ることで、風邪を引いたり、関節の痛みを起こしたり、お腹が痛くなったりと実に様々な症状を引き起こします。

関節リウマチは気血が滞る為に痺れ、筋肉や関節が長時間滋養されないために変形が起こるのです。

 

 

★中医学的慢性関節リューマチのタイプと治療方法★

 

風痺(行痺)風邪盛ん

( 遊走性の痛みが特徴です )

症状

●関節部の疼痛、遊走性の疼痛、関節の屈伸不利

関節部の疼痛はどのタイプにも共通する症状で疼痛部位が一定しない。

これは風寒湿邪が経絡に残留し、気血の流れが悪くなるとおこる。

●悪寒 発熱

●舌苔薄白 脈浮

治則:疏風

漢方:「防風湯」「疎経活血湯」

治法:去風通絡 散寒袪湿

 

 

湿痺(着痺)湿邪が盛ん

(全身や肢体に重だるい感覚があり、疼痛を感じ知覚麻痺になりやすいのが特徴です)

しびれ、浮腫、舌苔は賦、脈は濡緩などの症状がある。

●雨天に増強しやすい。

雨天は湿気が多くなり、気血の運行がいっそう悪くなるので起こります。

漢方:薏苡仁湯加減

治法:去湿通絡 去風散寒

 

 

寒痺(痛痺)寒邪が盛ん

( 一定の場所が痛む固定性の痛みが特徴です )

●患部が冷えて痛む、疼痛は固定性、寒冷刺激により変化

寒邪は陰邪であり、凝滞性がある。

寒邪が経絡を阻滞させて気血が凝滞すると固定性の疼痛がおこります。

冷やすと凝滞がひどくなるので疼痛は増強し、温めると気血の流れが改善するので疼痛は軽減する。

舌苔は薄白・脈は弦緊などの症状がある。

漢方:鳥頭湯加減

治法:温経散寒 去風去湿

 

 

熱痺

( 局所に発赤・腫脹・熱感・疼痛があるのが特徴です )

触れると疼痛が激しくなり、全身の熱感、口内乾燥感・赤色尿・便秘・舌苔は黄賦、脈 数などの症状がある。

風熱の邪に湿邪がからんで人体に侵襲し、経絡や関節に阻滞し、その為に気血の流れが阻 滞するのがこのタイプになります。

あるいは「風」「寒」「湿」の邪が長期にわたって改善されないと熱に変化し、発熱・汗か いても熱が下がらないなどの症状がでてきます。

漢方:白虎加桂枝湯加減

治法:清熱利湿 去風活血

 

 

 

★食事・運動・日常生活の注意★

 

青身魚に多いエイコサペンタエンサンには抗炎症作用があると言われています。

いわし・さば・さんま・まぐろ・さけ等は摂取する必要があります。

鶏肉に多いコラーゲンはリウマチによいという歩行があります。皮の裏に多くくっついています。緑黄色野菜も良いとされています。

 

運動はやりすぎて悪くなる人より、使わなくて悪くなる人のほうがはるかに多いのです。

リウマチ体操は入浴後にあたためた後に行うと、運動がしやすく、効果 的です。

 

日常生活の注意点として邪氣の侵入を防ぐことが重要です。

そのためには湿度の高い場所を避ける。

寒暖の差、気候の変化に敏感になって身体を冷やしすぎないように気をつけましょう。

直接クーラーが当たる場所は注意して下さい。

冷たい飲み物も控えましょう。

当院の「ためになる話」に食品の性質表がありますので、ご参考に開いて見て下さい。

自分の体質を把握して予防していくことも大切です。

 

 

家庭療法

生姜湯シップを15分ほど、隔日に一回当てて血行をよくする。

もし生姜湯シップが強すぎるときには、温シップでもよい。

またごま油に生姜をすりおろしてよく混ぜ、それを布地または綿に染み込ませ、硬化している部分にすり込むようにして、約15分間そのままにしておき、その後温かいタオルでふき取る。

 

当院は、不安やストレスから自ら病気や悪化を招くことがないように、リウマチを正しく理解してもらい守るべきことを守り、規則正しい生活を明るい前向きな気持ちで送って頂けるようにアドバイスさせて頂いております。

スタッフ一同、治療後は心も身体もリフレッシュして頂ければと願っております。

 

体質改善などのご相談はお気軽にどうぞ。

 

◎ 当院での治療をお考えへの方へ

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行い、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出し、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。只、大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

この点をご理解して頂ければ幸いかと思います。

2019/03/11
【その他】倦怠について

倦怠とは、身体が疲れて動きたくなくなるという自覚症状のことです。

全身の無力感、局所のだるさ、両足の無力感、思考力低下、眼精疲労、視力低下、ふらつき、手足のふるえ、など様々な症状があります。

身体的なものだけでなく、精神的に感じるだるさも含まれます。

 

倦怠感を伴う病気には・・・

貧血、低血圧、肺結核、肝臓疾患、糖尿病、腎臓疾患、精神的疾患(うつ病など)、栄養状態不良、脱水症状、悪性腫瘍、筋神経疾患、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)、自律神経疾患、薬剤の影響、長期感染症、睡眠障害など様々あります。

 

病院で行う検査項目には・・・

体温測定、尿検査、末梢血液検査、炎症反応検査、血圧測定、肝機能測定、腎機能測定、 心電図、胸部レントゲン、糞便検査などがあります。

 

その結果、さらに詳しく調べる場合には・・・

肝臓胆嚢系検査、糖尿病検査、腎臓検査、血清総タンパク、電解質、血中薬物機能、感染に対する免疫検査、など疑われる検査を行ないます。

 

しかし、“だるさ、疲れが取れない”という症状は数値では現れにくいものです。

機械を使った検査を行わない中医学では、どのように治療していくのか説明していきます。

 

 

【中医学的な捉え方】

 

中医学では、身体を構成する“気・血・水”を十分に生成・代謝できる五臓六腑が正常に機能している状態を健康と考えます。

“気・血・水”が生成できない、正常に代謝できない、臓腑の機能が低下・失調する、原因(病因といいます)によって分類されます。

病因を見極めて治療方法を決めていくことを“弁証論治”といいます。

病因に沿って“証”(症状の進行具合、体質、気・血・水のバランス失調を見極める)が決まれば(これを弁証といいます)治療方法が決まっていきます。

病因が異なれば、治療方法も異なります。

病因を見極める方法は、四診(望診・聞診・問診・切診)といいます。

患者さんの様子を、観察し(望診)、声を聞き・発せられる臭いを嗅ぎ(聞診)、話しを聞き(問診)、患部に触れる(切診)などで判断していきます。

 

では、いくつかのタイプ(弁証)別に説明していきます。

 

 

≪脾気虚による倦怠≫

脾の働きは、大まかにいうと消化器です。解剖学的な”脾臓”そのものを指すのではなく消化に関わる機能すべてを含んでいます。

脾には、運化作用・昇清作用があります。

“運化”とは、水穀(飲食物)を消化・吸収する作用です。

これにより水穀の精微(栄養素)が作られて、身体の基本物質(エネルギー)である“気・血・水”が生成されます。

“昇清”とは、脾の気が“水穀の精微(清といいます)”を心・肺へ上らせて栄養を全身に送る働きのことです。

栄養不足、慢性疾患、労力過度、思慮過度などが原因となって脾の働きが失調すると、気血の生成が低下し、全身性の気血不足を引き起こします。

つまり、エネルギー不足=気虚という状態となります。

このタイプの場合、活動時や食後に倦怠が強く、四肢無力(手足に力が入らない状態)、食欲不振、軟便・泥状便、嗜睡(傾眠・強い眠気)などの症状を伴うことがあります。

 

(治療方針)補気健脾・・・脾気を補って気の推動機能を改善します

 

 

≪痰湿による倦怠≫

まず“痰湿”から説明します。身体の中には、多くの水分が必要です。

常に代謝されて身体を巡り、不要な水分は汗や尿などで体外に排泄されます。

冷たい物やなま物の食べ過ぎ、お酒や脂っこい物、味の濃い物の食べ過ぎなどで脾に負担をかけ、運化(消化吸収)機能が低下すると水分の代謝が出来ず“痰湿”が形成されます。つまり余計な水分が溜まった状態のことをいいます。

痰湿は、粘り気・重たい性質があり、身体を巡る気の動き阻害し、経絡の流れを阻滞させてしまいます。

充分なエネルギーが巡らず、余分なものが体内にあるために倦怠が起こります。

このタイプの場合、胸苦しい、悪心・嘔吐、胃部のつかえ、泥状便、痰が多い、身体が重だるい、下肢のむくみ、冷えなどの症状を伴うことがあります。

(治療方針)補益脾気・健運化湿・・・

脾気を補って気の推動作用を改善するとともに、運化を促して痰湿を取り除きます

 

≪腎虚による倦怠≫

腎には、体内の水分代謝をコントロールして、不必要な水分を尿として排泄させる作用があります。その他、成長・発育・生殖・老化に深くかかわる“精(生命エネルギー)”を蓄える臓器でもあります。

腎の機能が低下すると「腎虚」という状態になり、子供の場合は成長が遅れ、大人の場合は不妊・性欲減退・聴力の低下・足腰が衰える・骨がもろくなる・記憶力が低下する、などが現れます。

腎の機能が低下する原因には、虚弱体質・房事過多・加齢によるものがあります。

このタイプの場合、足腰のだるさ・無力感が顕著で、記憶力・知力の減退、眼精疲労などを伴います。

また、特に”腎陰”(人体における陰液【体を潤す栄養の有る潤滑水の様な物】の根源で、臓腑・組織を潤し、滋養する働きがあります)が低下すると寝汗、手足のほてり感、なども伴います。

または”腎陽”(人体における陽気【体を温めるエネルギー】の根源で、臓器・組織を温め・活動させる作用があります)が低下すると冷えを強く感じる、頻尿、明け方に下痢をする、なども伴います。

 

(治療方針)

腎陰虚の場合:滋補腎陰・・・腎陰を滋養して虚熱を抑えます

腎陽虚の場合:温補腎陽・・・腎陽を補い、全身を温めて改善します

 

 

≪心脾両虚による倦怠≫

心は、血液を全身に送り出すポンプ作用のほか、脳の働きの一部を担っていて、情緒や感情といった「こころ」とも関係が深い臓器です。

心の機能が充実していると、精神状態が穏やかで、情緒も安定して、思考能力も活発になります。

心の機能が低下すると、動悸や脈の乱れが起こると同時に、不安感・不眠・夢を多く見る・驚きやすい、など精神面 の症状も現れます。

脾の機能低下と、心の機能低下は相互に影響しあって”心脾両虚”に発展し、消化活動と精神活動をともに低下させてしまいます。

脾気が低下して、運化機能が衰えると血の生成不足を引き起こし、心血も不足してきます。

また、思慮過度により心血が消耗されると、脾を滋養できなくなり運化機能にまで影響が及びます。

このタイプの場合、脾気虚にみられる症状のほかに精神疲労を伴い、動悸、不眠、多夢、精神不安なども現れます。

(治療方針)補益心脾・益気養血・・・

脾気を補って気虚を改善し血の生成を促し、心血を補って精神状態の安定を図ります

 

≪食養生≫

いずれのタイプも、「気」が不足しています。気を補う食材を積極的に取り入れて下さい。

●豆類・・・大豆、枝豆

●ネバネバしたもの・・・オクラ、長いも、わかめ、納豆

●香りのもの・・・青じそ、生姜、みょうが、セロリ、にんにく、玉 ねぎ

●その他・・・梅干し、しじみ、いか、うなぎ、ごま、酢など

 

余分な「水分」を出す食べ物

●きゅうり、とうがん、とうもろこし、香り野菜、豆類(小豆)、そば、海草など

 

身体を「温める」食べ物

●かぼちゃ、にら、ねぎ、にんにく、生姜、赤唐辛子など

 

生命エネルギーを高める食べ物

●黒豆、大豆、ごま、くるみ、昆布、小魚、えび、長いもなど

 

その他、青魚(いわし、さんま、さば)は血行を良くしてくれます。

 

当院は予約制となります

  • まずはお電話でご相談ください。

  • 0088-221818

診療時間

9:00~
12:00
13:00まで
14:00~
16:30

※ 火曜日・水曜日・木曜日が祝祭日の場合は午前診療となります。
※ 当院は予約制です。

アクセス

〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1丁目17-10

院内の様子