コラム
- 2019/02/20
- 胆石
胆石は、肝臓から十二指腸に続く胆汁の通り道(胆道)に石ができる病気です。ときとして右上腹部に激痛が起きますが、まったく無症状のまま経過するケースも多くみられます。
胆石は、体内にとり込まれた脂肪やたんぱく質などの消化を促す胆汁の成分が固まって、石状に形成されたもので、大きさや形はもちろん、できる場所、種類、形成・成長過程なども実に様々です。
胆汁には胆汁酸、リン脂質、コレステロール、ビリルビン(胆汁色素)などの成分が含まれています。
胆石の種類は構成成分によって、“コレステロール胆石”と“色素(ビリルビン)胆石”、その他の胆石に分けられます。
胆石は、発生部位によって胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分けられます。
“胆嚢結石”は、胆嚢内にできた結石で、コレステロール石が圧倒的に多く、胆石のなかで最もよくみられるものです。
“総胆管結石”は、胆管内にある結石で、大半は胆嚢内にできた結石が胆管に押し出されてきたのです。
“肝内結石”は、肝臓内の胆管にできる結石で、胆嚢結石や総胆管結石と比べると発生率の低い胆石です。
日本では、胆石保有者数が年々増える傾向にあり、現在、成人の5~10%の人が胆石をもっていると推測されています。
また、第二次世界大戦前には約80%が色素胆石だったのに対し、近年はコレステロール胆石が70%以上を占めるようになっています。
胆石保有者が増えている要因の一つに、検査技術の向上や人間ドックなどの普及によって胆石がみつかりやすくなった点があげられます。
また、食生活が欧米化して、脂肪などの摂取量が増えたことも関係していると考えられます。
胆石ができやすいタイプは、Fecund(多産)、Female(女性)、Fatty(体格がよく、小太り)、Forty(40歳以上)の「四つのF」という特徴があるといわれています。
実際、胆石のできる割合は男性より女性のほうが1,5~2倍ほど高く、やせている人より太っている人のほうが多いことも明らかです。また、年齢が高くなるにつれて胆石ができやすくなり、60~70代がピークです。
このほか、食事の時間が不規則だったり、ストレスが多いことも胆石ができやすい条件になります。
≪コレステロール胆石の形成≫
コレステロール胆石の患者数は年々増加しており、全胆石の大半を占めるといわれています。
成因については、解明されていない点も多くあります。結石ができるまでの3段階は、まず胆汁が過飽和の状態になり、次に核が形成されたり、コレステロールが結晶化し、さらに、肉眼でわかる大きさの結石に成長すると考えられています。
コレステロールは水に溶けないので、胆汁中では、胆汁酸とレシチンで形成されるミセルという形態に包み込まれたり、ベジクルというリン脂質の膜で覆われた状態で存在しています。
しかし、ミセルとベジクルがコレステロールを取り込む量には限度があるため、何らかの原因で胆汁中のコレステロールが増えすぎるか、逆に胆汁酸やレシチンの割合が低くなると、コレステロールをそれ以上ミセルとベジクルに取り込めなくなります。この状態を過飽和といいます。
胆汁中のミセルとベジクル、コレステロールのバランスが崩れた結果 、胆石ができやすくなるのです。
コレステロールが増えすぎる原因としては、コレステロールの摂取量 や腸管から吸収される量の増加、肝臓でのコレステロールの合成量の増加などがあげられます。また、胆汁酸とレシチンが減少する原因としては、腸の手術後や、腸の炎症によって胆汁酸をうまく吸収できなくなるか、先天的な胆汁酸を生成する機能の異常などが考えられます。
これらの理由から、胆汁が過飽和の状態になると、胆汁中のベジクルが集まって塊となったり、コレステロールの結晶が形成されます。さらに、胆嚢の機能障害などが加わり、胆石に成長していくといわれています。
≪色素胆石の形成≫
色素胆石は、ビリルビンカルシウム石と黒色石の2種類に分けられますが、その成因は、胆道への細菌感染や寄生虫の侵入、ファーター乳頭という、胆管の出口にある小さな突起の炎症(乳頭炎)や傍乳頭憩室のよる胆汁の流れの停滞、低脂肪で炭水化物に偏った食事などです。
特に、大腸菌やそのほかの細菌による胆道感染が起こると、これらに含まれるベータ・グルクロニダーゼという酵素によって水溶性のビリルビンが分解され、水に溶けにくい性質に変化します。
このビリルビンが胆汁中のカルシウムと結合して、ビリルビンカルシウム石ができると考えられています。
胆汁のpH(水素イオン指数)がアルカリ性に傾いたり、胆汁酸の濃度が低下しても、ビリルビンカルシウム石ができやすくなるといわれています。
一方、黒色石は、溶血性黄疸や肝硬変が原因になったり、心臓の弁置換手術後や胃の切除手術後などに形成されることが多いのですが、形成されるメカニズムについては、まったく明らかにされていません。
≪胆石による症状≫
胆石で最も特徴的な症状は、疝痛発作といわれる、さし込むような激しい腹痛です。疝痛発作は、胆汁を分泌しようとして胆嚢が収縮するときに、胆石が胆嚢から総胆管や十二指腸のほうへ動かされて内壁とこすれ合うと生じます。
また、胆嚢頸部や総胆管などに胆石がつまる胆石かん頓によっても起こります。
胆嚢は食事でとった脂肪分を処理するために働くので、疝痛発作は脂肪分の多い食事や料理を食べたり、暴飲暴食の後に現れやすくなります。
最初は、上腹部の圧迫感や不快感などで始まりますが、しばらくすると右上腹部に刺すような痛みを感じるようになります。
痛みは、10分程度で治ることもあれば、数時間持続ずることもあり、市販の鎮痛剤では治まらないこともしばしばです。
また、疝痛発作の前ぶれとして、吐気や悪寒、右肩のコリといった症状が現れるケースもみられます。
上腹部のほかに、右肩や右腕、背中などに痛みが起こることもあります。この痛みは放散痛といわれ、内臓の痛みの刺激が脊髄にある知覚神経に影響を与えるために現れるものです。
腹痛とともに右肩への放散痛があれば、胆石である可能性が高いといえます。
疝痛発作のほかに、黄疸や発熱がみられることもあります。黄疸は、胆石によって胆管がつまり、胆汁の流れが悪くなったときに現れます。
また、発熱は37~38℃程度で、疝痛発作に伴う一時的なものがほとんどですが、高熱が何日も続いたり、上がったり下がったりを繰り返すような場合は、胆管炎や胆嚢炎を併発している場所や種類によって異なります。
例えば、疝痛発作はビリルビン胆石よりもコレステロール胆石のほうに起こりやすいといわれています。
コレステロール胆石は軽くて小さく、胆汁の中で動きやすいため、発作を誘発しやすいと考えられます。
また、胆石があっても、まったく症状が現れないこともあります。このような胆石をサイレントストーン(無症状胆石)とよびますが、胆嚢内結石の多くがこの無症状胆石のため、健診などで偶然にみつかるケースが少なくありません。
≪現代医学による治療法≫
胆石の治療法は、手術をしないで胆石だけを取り除く保存療法と、手術によって胆嚢ごと摘出する手術療法に大別 されます。
保存療法には、溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法、内視鏡的療法があります。
溶解療法は、溶解剤を用いて胆石を溶かす方法で、経口薬を服用する場合と、胆嚢にチューブを挿入して胆石に直接溶解剤をかける場合があります。
ただし、すべての胆石に有効なわけではありません。
溶解療法が適応できるのは、胆石が胆嚢内にあることが条件で、さらに直径1~1,5cm以下の純コレステロール石で、表面 が石灰化していないものに限られます。また、胆嚢に変形や萎縮がなく、疝痛発作などの激しい症状がみられないことも条件です。
体外衝撃波胆石破砕法は、体外から衝撃波をあてて胆石を細かく砕く治療法です。
砕いた石は、さらに溶解剤を服用して溶かす必要があります。
体外衝撃波胆石破砕法も溶解療法と同様、胆嚢内の胆石であること、石の大きさが直径2cm以内で、数は最大3個までといった適応条件があります。
また、適応条件をクリアしても1回だけでは破砕できず、何回も行わなくてはならないケースもあります。
総胆管結石に対しては、溶解療法や体外衝撃波胆石破砕法は適応となりませんが、内視鏡を用いた十二指腸乳頭括約筋切開術で摘出できる場合があります。
内視鏡を十二指腸まで挿入し、十二指腸が下行している部分である下行脚に位 置するファーター乳頭の括約筋を一部切開し、総胆管にある胆石の自然排泄を待ったり、機械を用いて切石します。
また、胆石をバスケットという器具を使って摘出したり、切石除去する方法もあります。
結石が大きすぎて切開部を通らない場合は、衝撃波やレーザーで結石を小さくしてからとり出します。
溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法は、手術をせずにすむので苦痛が少ないという長所がある半面 、適応範囲が狭いことと、胆嚢を残しているために再発が多いことが最大の難点です。
また、破砕した石片が胆嚢管に引っかかると、胆嚢が機能しなくなるケースもみられます。
まだ様々な問題が残されており、根本治療という意味では限界があります。
疝痛発作をたびたび繰り返したり、保存療法で軽快しないときや、胆嚢炎、胆管炎を合併しているような場合は手術の適応となります。
手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡下胆嚢摘出術があります。
開腹手術は胆石のある場所によって、所要時間や手術方法、入院期間などが異なります。
最も多くみられる胆嚢内胆石では、胆嚢を切除するだけの簡単な手術で、1~2時間前後で済みます。
総胆管結石の場合は、総胆管を切って胆石を取り除くとともに、胆嚢も摘出します。
摘出後、胆汁が腹腔内に流れないように切開した部分にチューブを入れ、胆汁を体外に排出するなど補助的な処理が必要となるため、胆嚢内胆石の場合よりも入院期間は長くなります。
従来の開腹手術に対し、腹部を切らずに胆嚢を摘出するのが腹腔鏡下胆嚢摘出術です。
腹腔鏡下胆嚢摘出術は、腹部に3~5箇所の小さな孔をあけ、そこに内視鏡の一種である腹腔鏡をいれて、腹腔内をモニターで観察しながら胆嚢を取り出す方法です。
開腹手術のように腹部を大きく切開する必要がないため、手術後の痛みが少なく、傷もほとんど残りません。
開腹手術の入院期間が2週間から1ヶ月ほどかかるのに対し、3日から1週間で退院できることから、画期的な治療法として広く普及してきています。
しかも、治療効果は開腹手術とほとんど変わらないので、今後は腹腔鏡下胆嚢摘出術が治療の主流になっていくと思われます。
保存療法、手術療法のどちらにしても、数多くの方法が開発されて選択肢はますます広がっています。
治療にあたっては、胆石の種類や数、大きさ、胆嚢の状態、全身状態などを把握し、最適な方法が選択されます。
【中医学的な捉え方】
人体について、中医学的な考え方と、現代医学的な考え方は異なります。
中医学では人体を一つの“小宇宙”として捉えています。
身体にある器官を一つ一つ別個に考えるのではなく、一つの有機体とみなし、常に全体のバランスを視野に入れて病気を考えていきます。
詳しくは、「わかりやすい東洋医学理論」をお読み下さい。
胆石について、関わる臓器は「肝と胆」です。
●肝の働き・・・
疏泄を司り、血を貯蔵しています。
“疏泄”は流れや発散という意味で、気血の流れを円滑にするという働きを指します。血の貯蔵とは、体内を循環してきた血を貯めて全身の血量 を調節する働きをいいます。
●胆の働き・・・
肝で生成された精汁である胆汁を蔵し、小腸に分泌する働きがあります。
胆は肝に附属しており、両者は経脈に通じて相互に関連しています。また、胆汁の根源は肝にあり、肝の余気が胆に排泄され、そこで凝集して生成されたものが胆汁であるとされています。
胆汁の分泌は肝の疏泄機能の調節を受け、肝胆は協調して消化機能に関与しています。
肝胆は表裏の関係にあり密接で、一方の機能失調は他方に波及して、最終的には肝胆両者の失調が起こります。
胆石は、「肝胆湿熱」の証で起こると考えます。
原因は、
○湿熱の邪を感受(夏・秋に多発)・・・
気候の変化も人体に大きく影響します。
“湿”は人体には余分な水分です。
夏と秋をつなぐ時期は湿気が最も盛んな季節です。湿気の多い気候、また雨に濡れたり長いあいだ湿った所にいることは湿邪が人体に侵入する原因となります。湿邪は気の運行を阻滞(渋滞)させてしまいます。
また、湿邪が人体に侵入し長く停滞すると熱化していきます。
体内に過剰な水分と熱が停滞している状態は、代謝機能を失調させる原因となります。
○甘いもの、油っぽいもの、味の濃いものの過食(肥甘厚味の過食)・・
このような食べ物は脾胃の消化機能を低下させ湿熱を生成させます。脾胃で形成された湿熱は、肝胆に移行していきます。
○過度の飲酒・・・
少量の飲酒は気血の循環を促しますが、飲み過ぎが長期間続くと、湿熱が生成され脾胃を傷め、肝血を障害します。
○ストレス(感情の変化)・・・
気の流れを円滑に行うのが肝の疏泄機能です。
ストレスは気の渋滞を引き起こします。
以上のような原因により、湿熱が体内に侵入し停滞することで胆汁の排出がスムーズに行われなくなります。熱が発生することで炎症を起こり、肝胆の機能が亢進します。
機能が正常を超えてしまうと、分泌過剰や、濃縮が過剰となり、代謝異常が起こります。
このように、胆汁の鬱滞、炎症、代謝異常が起こることで胆石が形成されていきます。
肝胆湿熱で起こる症状には、胆石の他に“脇胸部脹痛・黄疸・食欲減退・悪心嘔吐・口が苦い・寒熱往来(悪寒と発熱が交互にあらわれる)・大便不調(泥状便または便秘)・尿量 減少・陰嚢湿疹・睾丸腫脹・帯下・外陰部瘙痒感”などがあります。
●治療方法・・・
清泄湿熱・疏肝利胆(肝胆の湿熱を取り除き、疏泄機能を整えます)
出来てしまった胆石を取り除くことは、鍼灸治療では困難です。
しかし、胆石が出来た事による附随症状の緩和・痛みの軽減に対しては有効かと思います。
(例:食欲不振、季肋部の脹り・痛みなど・・)
そして、胆石の出来やすい体質を改善することを目的にお手当を続けることも大切です。
X線撮影やエコー検査(超音波検査)など、現代医学の発達した検査機能を活用し、日常の生活習慣・食生活に気をつけながら適切なお手当を受けて頂きたいと思います。
- 2019/02/20
- 蓄膿症
花粉症が流行る春の季節では、鼻が詰まったり、頭痛がしたりする方多いと思います。
しかし、慢性的にこのような症状が現れる病気があるのはご存知でしょうか。
蓄膿症という病気、一度は聞いたことがある方も多いかもしれません。
この病気は、一度発症するとなかなか治りづらく、とても悩んでいる方が多いようです。
今回は、この蓄膿症について述べていきたいと思います。
<西洋医学的な蓄膿症>
まず始めに、西洋医学的に捉えた蓄膿症を説明していきます。
蓄膿症は、その名の通り、膿が溜る病気ですが、具体的には、鼻腔の周囲にある大小の空洞(副鼻腔)に膿が溜ってしまう病気を言います。
ただ、蓄膿症という名称は、いわゆる俗称であり、正確には慢性の副鼻腔炎のことを言います。
この膿が溜る場所である副鼻腔は、顔の骨のなかにある空洞で、一般 的に鼻の穴と言われる鼻腔の奥に位置しています。
副鼻腔という空洞は、4つあります。
・上顎洞(じょうがくどう)
・前頭洞(ぜんとうどう)
・篩骨洞(篩骨蜂巣・しこつどう/しこつほうそう)
・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)
副鼻腔炎は、これらの空洞が炎症をおこし膿が溜ってしまう病気なのです。
症状は、鼻づまり、鼻汁、前頭部に頭重感、嗅覚障害といった症状が現れることがあります。
鼻汁については、いわゆる風邪をひいたときのような、ずるずるとした水溶性のものではなく、粘液性で濃い色のついたものとなります。
また、重症になると、鼻腔の周りの器官へ影響が現れるケースも出てきます。
耳から鼻へと通じる管の炎症から中耳炎を起こし、鼻汁がのどに流れ込むことによって、慢性の咽頭炎、気管支炎、胃腸障害にまで発展する例もあります。
慢性の副鼻腔炎は、このような症状が繰り返し起こす状態を言い、厳密には、8~12週間以上続く場合を慢性副鼻腔炎と言います。
<原因>
では、なぜこのような炎症が起こるのかを説明します。
先ほど述べた症状をみると、とても風邪の諸症状に似ていると思います。
これは、副鼻腔炎と風邪にはとても関連性があるためであると言えます。
実際に、風邪に引き続いて副鼻腔炎となる場合もあります。
このような副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎と言われており、原因は、急性副鼻腔炎はさまざまな細菌やウイルス感染によって引き起こされるものです。
では、蓄膿症と呼ばれる慢性副鼻腔炎の原因は何なのでしょう。
もし、急性副鼻腔炎と同じように、さまざまな細菌やウイルス感染のみが原因であれば、細菌やウイルス感染が除去すれば治ると思います。
しかし、慢性副鼻腔炎は、副鼻腔炎の症状が繰り返し発症するものです。
このことを考えると慢性副鼻腔炎の原因は、さまざまな細菌やウイルス感染のみではないと言えます。
では、細菌やウイルス感染以外の要因は何なのか。
これについては、残念ながら現在のところ確実な答えは出ていません。
しかし、確実な答えは明がではありませんが、その要因についてはいくつか考えられています。
体質的な要因としては、重度のアレルギ、遺伝的素因、環境的な要因としては、環境汚染物質の影響が考えられています。
<治療>
繰り返し発症し、その原因も分からない慢性副鼻腔炎ですが、昔は手術による治療が多かったようです。しかし、現在は、抗生物質を長期にわたって持続投与するような、保存的療法による治療が多いようです。
・保存的療法
- 鼻処置
血管収縮剤などを綿棒やスプレーで鼻内に塗布し、鼻汁を吸引する治療です。
- ネブライザー療法
抗生物質、ステロイド、血管収縮剤などの入った液を霧状にして鼻に噴霧する治療です。
- 上顎洞穿刺洗浄
鼻から上顎洞に針を刺し、貯まっている膿を吸引し、生理食塩水で洗浄する治療です。
- プレッツ置換法
薬液を鼻腔内に注入した後、ポリッツェル球と呼ばれる器具で、鼻腔に圧力をかけて、さらに奥にある副鼻腔内に薬液を送り込む治療です。
- 点鼻薬
血管収縮剤入りの点鼻薬により、炎症を抑える治療です。
- 薬物療法
抗生物質や酵素製剤、粘液溶解剤の投与による治療です。
また、最近では、マクロライド系抗生物質を長期にわたって投与する治療の有効性が認められ、広く使用されているようです。
・手術療法
長期の保存的療法により症状が改善しない場合は、手術療法が行われることがあります。
<中医学的な蓄膿症の捉え方>
では次に、中医学的な蓄膿症の捉え方について、述べていきます。
鼻孔から生臭い膿が出て鼻が詰まり、嗅覚が減退することもある、このような症状を、中医学では、鼻淵(びえん)もしくは膿漏(のうろう)と言います。
蓄膿症などの慢性副鼻腔炎や急性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎は、中医学ではこの鼻淵という病症として治療を行います。
「わかりやすい東洋医学理論」でも述べられていますが、中医学において、人間の体は気、血、水により構成されており、これらを臓腑が正常に運用することで、人間は正常な生理活動を行っています。
では、鼻淵では、これらがどのように失調することで、起こるのかを述べていきます。
ただし、今回は蓄膿症(慢性副鼻腔炎)がテーマですので、急性の鼻淵に関わる部分については、割愛させていただきます。ご了承ください。
・気と水の失調
慢性的な鼻淵では、多くの場合、気と水の失調が関係します。
気には推動作用があり、これが失調すると、体内の水を押し出す力が弱くなり、水の流れが悪くなります。
この結果、水の異常物質である痰湿が生成され、この痰湿が鼻に凝集することで、鼻淵となります。このような、気と水の失調は、臓腑の失調が大きく関係してきます。
特に、慢性的な鼻淵では、脾や肺の臓器の失調が大きく関係してきます。
・脾や肺の失調
- 脾臓
脾臓は、横隔膜の下、やや左側にある臓器です。
脾臓の主要な生理機能としては、食べ物から得た栄養や水分を体全体に運び出す運化作用や、体内において物質を上に持ち上げる昇精作用などがあります。
鼻淵では主に、運化作用の失調が大きく関係します。
脾臓が持つ気(脾気)が失調することで、運化作用の失調し、その結果 、水がスムーズに流れなくなり、痰湿が鼻に凝集し、鼻淵を起こすことがあるのです。
- 肺臓
肺臓は、胸腔内に左右一対で存在する臓器です。主な生理作用としては、大気中の有益な物質を取り入れる作用である呼吸や、他にも水分代謝における重要な作用も持っています。
中医学における水分代謝の流れとしては、食物から得た水分が脾臓から肺臓へ運ばれ、肺臓はその水分を腎臓へ運び、不必要な水分は尿として排泄されるという流れとなります。
他にも肺臓が水分を皮毛に散布することで皮毛を潤すと言ったことも水分に関わる重要な生理活動です。
つまり、肺臓に注目すると、肺臓は水分を、適宜、全身に運び出す役割を担っているのです。
このような作用は、肺の通調水道作用と言います。
鼻淵では主に、肺が持つ気(肺気)が失調することで、通調水道作用の失調を起こし、これにより、水分代謝がスムーズにいかず、痰湿が鼻に凝集し、鼻淵を起こすことがあるのです。
<鼻淵の原因>
慢性的な鼻淵の多くは、肺臓や脾臓の失調が大きく関係すると、ご理解いただけたかと思います。
では、肺臓や脾臓の失調はどのような原因で起こるのでしょう。
・思慮過度によるもの
中医学では、七情という「喜・怒・思・悲・恐・憂・驚」の七種類の感情があり、これらの感情が過度になりすぎることでも、病気になると考えられています。
実際に、思い悩みが過ぎたりすると、胃腸の調子が悪くなるのは、この思い悩みの感情が、脾臓を損傷するためであると考えられています。
鼻淵でも、思い悩みが過ぎたり、過度に物事を考えることで、脾臓を損傷し、水液代謝がスムーズにいかずに鼻淵となることがあります。
このような場合、脾気虚(脾臓の気が不足している状態)による鼻淵といえるでしょう。
・過食や偏食によるもの
過食や偏食は、脾臓の機能を低下させます。摂取した食物が多すぎて、本来もつ脾臓の機能では、食物代謝や水分代謝が追いつかず、これを繰り返すことで、脾臓の機能は低下してきます。
脾臓の機能が低下すれば、痰湿を生みやすくなり、鼻淵となることがあります。
このような場合も、脾気虚による鼻淵といえるでしょう。
・経過の長い病気によるもの
経過の長い重度の病気は、体内の気血を損傷します。
これにより、脾臓や肺臓の気が不足することで、鼻淵となることがあります。
この場合は、肺気虚による鼻淵の場合もありますし、脾気虚による鼻淵の場合もありえます。
・体質的な肺気虚によるもの
もともと、風邪をひきやすかったり、喘息を持つような方もいらっしゃると思います。
このような方は、体質的に肺気虚があり、鼻淵となることがあります。
もちろん、このような場合は、肺気虚による鼻淵といえます。
<証タイプ別治療方法>
では、次に証分類別の治療方法について述べていきます。
先ほど述べた通り、慢性的な鼻淵には、肺気虚、脾気虚によるものがあります。
中医学的な治療は、これらの証分類ごとに行われます。
・肺気虚による鼻淵
肺気虚による鼻淵の場合、「益気肺気」「去痰」「通竅」の治療を行います。
この治療は、不足している肺気を補い、さらに鼻に凝集している痰湿を取り除き、鼻を通 すという治療です。
また、肺気虚の場合、体の抵抗力が低下していることがあります。
このような場合は、感冒や花粉などのアレルギーが顕著に現れるので、これらの状態を見ながらの治療が必要と思われます。
・脾気虚による鼻淵
脾気虚による鼻淵の場合、「益気健脾」「去痰」「通竅」の治療を行います。
この治療は、不足している健脾を補い、水液の運化作用を高めて、鼻に凝集している痰湿を取り除き、鼻を通 すという治療です。
脾気虚による鼻淵のでは、過食や偏食などの食生活の乱れが、症状を悪化させます。
このことからも、普段の食生活も見直しつつ治療を行う必要があると思われます。
いかがでしょう?
中医学的な蓄膿症の治療はご理解頂けましたでしょうか?
蓄膿症のような慢性的な疾患は、病院での対症療法的なお手当てだけでは、なかなか治りづらいことが多いと思います。
これは、体質や生活をしている環境や食生活が大きく関係しているからと言えるでしょう。
根本的な体質から改善をしたい、その体質にあった食養生を知りたいという方は、一度、中医学的なお手当てをされてみるのも良いかと思います。
中医学(東洋医学)全般(鍼灸・漢方・食事療法・体質改善)のご相談は
当院までお気軽にどうぞ。
- 2019/02/20
- 椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、その名の通り、脊椎の間にある椎間板に問題があって起こる病症です。
○自覚症状○
主に腰から足先にかけての痛みやシビレで、下肢の皮膚感覚が鈍い、座った状態から立ち上がるのが辛い、筋力の低下、排尿障害などをおこす事もあります。咳・くしゃみで痛みが強くなったり、前かがみの姿勢になると痛みが増すなど、体位 を変えると変化があります。
《西洋医学的考え方》
椎間板とは、脊柱を構成する骨と骨の間にある柔らかいクッションのような役目をする軟骨のことです。例えていうなら、おまんじゅうを平たくつぶしたような形をしており、まわりの皮の部分を繊維輪、あんこの部分を髄核といいます。ヘルニアは、この髄核が何らかの原因により突出してしまった状態をいいます。その突出部が、脊椎の脇を通 る神経を刺激して痛みやシビレをおこします。
○椎間板ヘルニアの原因○
中腰で重たいものを持ち上げた、スポーツで腰を強くひねったなど、背骨に負担がかかった事等がよく知られていますが、その背景として椎間板や骨の老化・姿勢の悪さなどがあり、思いあたる原因がなくてもおこります。
○治療方法○
・急性期は、消炎・鎮痛剤や筋弛緩剤を内服し、除痛を図りながらコルセットなどで固定し、安静にします。同時に、痛みのコントロールとしてブロック注射を行う事も多いでしょう。 急性期を過ぎると、温熱療法・低周波療法・ストレッチなどの指導がなされます。
・多くは、これら保存療法で改善される場合が多いのですが、急性期が過ぎても症状が残存する場合は牽引療法を行って様子を見ます。
・排尿排便障害がある場合は手術の適応になります。
《中医学的考え方》
中医学では、椎間板ヘルニアに相当する病名はありません。なぜなら、西洋医学と中医学は病気の捉え方・考え方が違うからです。西洋医学では、目に見える症状を中心に考えますが、中医学ではその症状が起きる背景・つまり身体のバランスがどのようにくずれたのかを中心に考えます。
たとえば、桜に害虫がついて葉が枯れてしまった様な時、害虫の駆除剤を噴霧するのが西洋医学です。中医学では、なぜ害虫がついてしまったのかを考えてから、木に薬を使う事もあれば使わない事もあります。
木の生命力そのものが、弱って要る場合は害虫がつきやすくなります。木の栄養源である水や光や土は十分なものだったのか、栄養が十分でもそれを木全体に巡らせる幹に問題はなかったのかなど、全体の状況に応じて手当てをしていくのです。
中医学では『人間も、大いなる宇宙と影響しあいながらバランスをとって生きている生命体のひとつ』であり、身体内部も小宇宙であって、『いろいろな臓器がバランスをとりあい、外界の変化に適応しながら生命を維持している』と考えます。
病気の背景には、まず何らかのバランスの崩れがあり、その後から症状がでると考えますから、病気の症状は同じでも原因はさまざまであり、治療法もおのずと変わってきます。治療をする時には、そのバランスの崩れを整えていく事を念頭に考えながら、表面 的な痛みなどの症状をとっていきます。
では、どのようにしてそのバランスの崩れをつかんでいくのでしょう。西洋医学的な検査ではデータとして出てこないかもしれません。その説明をするには、まず、中医学の生体観についてお話しておきましょう。
中医学では身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・津液』であると考えています。
気というのは、気持ちの気と同じような意味合いもありますが、中医学では、活力という意味であり、血脈の流れを推進したり、臓器組織の活動を促進したり、人体を栄養する作用もあると考えます。
血は血液という意味よりも広く考えて全身を栄養するだけでなく、精神活動も支えています。
津液は身体をうるおす水分の事です。これらは飲食から得られ、臓腑で消化吸収して作られていきます。
気・血・津液は『経絡』という、人体の上下・内外を貫く道筋によって流れ、全身を栄養したり、臓器の機能を調節したりしています。健康な状態では、経絡は全身を滞る事なく流れています。
これらのどこかに問題がおこることにより、身体のバランスが崩れます。そしてその微妙な崩れは、日頃の体調(食欲・排尿・排便・睡眠・疲労感・主訴以外の症状)などに現れますし、他覚症状としては、顔色や脈状・舌の色や形にも現れてきます。ですから、それらすべてを総合し、その人全体をとらえて、どのように治療したら良いかを決めていくのです。
経絡の流れを良くしてあげる事は、身体機能のバランスをとり、健康な状態に近づけることにつながりますから、治療においては、ただ単に痛みのある部位 だけではなく、経絡上で、その流れを良くしてくれる作用のある穴や、滞りを除いてくれるような穴も使っていきます。穴にはそれぞれ特性がありますから、その詳しい効能を考慮し、効果 的な組み合わせを考える事も大切です。腰痛の治療にも、手足の穴を使いますし、特効穴が手にあったりするのは、そういった理由からです。
その人の体質によっても、施術の方法は違います。鍼の刺激に強い人・弱い人、冷え性の人・のぼせがある人等、さまざまな基本体質があるのですから、オーダーメイド的な治療になるのは当然でもあります。
治療を続けるうちに、1番問題となっていた症状がとれていくだけでなく、身体全体が元気になっていき、やる気が湧くようになった・風邪をひきにくくなった・などという声をよくきくのは、このように個人の身体全体を大切にした治療をするからではないでしょうか。
さて、椎間板ヘルニアの話に戻りましょう。
○椎間板ヘルニアの症状と病因○
自覚症状は最初にあげた通りですが、他覚症状として、舌質は青紫色、オ斑・オ点があることもあり、脈は渋脈、痛みが激しい時は弦脈・緊脈も現れます。
病因の多くは、血が腰背部の経脈に停滞しておこる気血の運行障害です。発症の原因はさまざまです。
ヘルニアという症状がでる背景について、腰痛の原因分類からみてみます。
腰痛の病因は、大きくわけてまず風寒湿・風熱湿など外邪による腰部の経絡の滞り、それから高齢や元気不足、長期間の不適切な仕事による慢性疲労、捻挫・打撲など外傷による腰部の気血の運行障害、などが考えられます。
また、その根底に、『腎虚』と言って、先天の精・つまり、持って生まれた元気の元のような活力が衰えていることが考えられます。中国古典に「腎は腰の府。腎は骨を主り、髄を生じる」とあり、『腎』は腰の状態にとても関係深い臓器です。また、中医学では腎は骨の働きを管理する役割もありますから、骨の病には、腎のエネルギーを調整する手当ても必要になってきます。
○治療方針○
根本の問題である「血の滞り」をなくし、気血の流れをよくしていきます。腰背部の経絡の流れをよくする作用を持つ穴は、腰にもありますが、手の甲や、下腿にもあります。
血の滞りを起こした痛みの原因が風寒湿熱などの邪気がはいったものであれば、その邪気を払い追い出すような穴を使いますし、慢性疲労であれば元気のでるような穴もつかいます。
また「腎」の力を補い、腎の働く力を養うような治療も加えていくと、腰部や骨の働きが良くなるだけでなく、身体に活力が湧いて元気になり、病気が再発しにくい身体づくりが出来ます。
もし、痛みが激しい時は、まず痛みを軽くして、根本治療と平行して行います。
鍼で痛みがとれるの?と思う方もいらっしゃいますが、現在の日本でも鍼麻酔といって鍼で麻酔をかけ、歯科治療や無痛分娩なども行われているくらいですから、鍼の沈痛効果 は確かなものです。
鎮痛剤を使うのとは違って、胃の調子を悪くすることもありませんし、自然治癒力を強めることにもつながりますから、安心して続けることが出来ます。
ただ、気をつけて頂きたいのは、ひとくちに鍼灸治療と言っても、施術方法は多種多様で、表面 的な痛みだけにしか目を向けない治療家も多いという事です。特に最近の日本では、世界的レベルからみて、残念ながら、かなり劣っており、「治療」ではなく「癒し」しか目的としない治療院が乱立しています。表面 だけ癒す事は出来ても、それは治療とはかけ離れたものです。治療院の選択は難しいと思いますが、とにかく、事前に治療内容を調べ、電話やメール等で相談をしてから治療に行く事をお勧めします。
鍼灸の治療とは、やはり、伝統医学の根源である「中医学の治療原則」を基本にして初めて、その本当の治療効果 が活かされるものです。身体的にも精神的にも全体的に調和し、バランスがより良くなっていく中医学的治療は、本当に奥が深く、素晴しいものです。また、ここでの治療は、さらに、日本人の繊細な体質にあうように考えられていますし、事前に良く説明もしていますので、安心して治療を受ける事ができます。
○日常生活での養生法○
一度ヘルニアになってしまうと再発する事が多いので、治らないと思っている方もいらっしゃいますが、 日常生活で養生することで、再発は防ぐ事ができます。
背骨に無理な負担をかけない事が基本ですから、良く知られているのは、重たいものを持ち上げる時に、一度しゃがんでから物を持ち抱え、足の筋力を使って立ち上がることですね。この他、日頃の姿勢に気をつけることも大切です。立っているときには両足に均等に体重をかける・座っている時にはなるべく足を組まない・歩く時にも姿勢良く・荷物を片側の手ばかりに持たないで時々持ちかえる・等です。
それから、なるべく規則正しい生活をすることも大切です。睡眠不足など、無理をして疲労をためてしまう事も、食事の時間や量 が乱れて胃腸の調子をくずしてしまう事も、皆、「腎」の活力を消耗する事につながり、結果 的には腰痛を起こしやすい状態になってしまうからです。要するに、中医学的考えにおいては、腎の臓器に負担をかけない事が、腰痛予防にもつながるのであります。
また、痛みが激しくなってしまう前に、その前兆のような不快感があったら、早めに鍼灸治療を受けられることをお勧めします。中医学における鍼灸治療は、予防医学でもありますから、ヘルニアの再発を予防する事が出来ます。先にお話しました「身体のバランスの崩れ」を症状が出る前に整えてしまえば、痛い思いをしなくてすむわけです。これを『未病治』といい、中医学においては、とても大切な事と考えられています。
身体全体の調和と生命の活力を育む中医学的治療は、身体に無理なく、適切な部位 に、適度な刺激を与えて、人間本来の持つ自然治癒力を高めていきます。宇宙全体に広がるような、大きな優しさのあふれる健康法に、是非一度ふれてみて下さい。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/02/20
- 動悸
動悸という症状は、よく耳にする症状だと思います。
実際に、年齢を重ねれば、このような症状はめずらしくはありませんし、若年の方であっても、自然な体の反応として、動悸がおこることはしばしばあります。
しかし、一方で体にとって重篤な場合の動悸もあり、決して軽視できない症状でもあります。
今回は、この動悸について述べていきたいと思います。
<西洋医学的な動悸とは>
みなさんもご存じのとおり、心臓は、血液を体全体に搬出するために、収縮、弛緩を繰り返してます。この動きを一般 的に鼓動(拍動)といいます。
普段、安静な状態では、この鼓動を意識することはありませんが、運動後や興奮状態に陥ることで、鼓動を自覚することがあります。
これが、動悸という症状なのです。
簡単に表現すると「胸がドキドキする」といった表現が分かりやすいと思います。
この動悸という症状は、運動後や興奮状態で動悸を自覚するのは、ごく自然なことだといえます。
運動をすると、体内の酸素を安静時よりも消費し、酸素が不足している状態となり、その結果 、心臓の鼓動が早くなり、素早く体内に酸素が供給されます。
このような動悸は、むしろ体を維持する上で、自然な反応といえます。
他の原因によっても動悸は起こりますが、多くの場合は、生命を脅かすものではないことがほとんどなのです。
しかし、時に、重篤な病気が原因となって動悸を誘発していることもあります。
たとえば、拡張型心筋症を例に挙げましょう。
この病気は、心筋の細胞の性質が変わって、とくに心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気です。
これにより、血液をうまく送り出せなくなり、うっ血性の心不全を起こすこともあります。
このような重篤な病気が引き金となり、動悸症状を自覚させる場合があるのです。
また他にも、不整脈を伴う心臓の病気でも、動悸症状を自覚する場合があります。
このような重篤な病気が原因の場合、早期に治療を行う必要があります。
<気をつけるべき随伴症状>
身体的に問題のない場合もあれば、原因の早期治療が必要な場合もある動悸症状ですが、重篤な場合は、動悸症状の他にも随伴症状が現れます。
参考のために、一部を紹介します。
・胸痛や発作性呼吸困難を伴う場合
このような随伴症状は、心臓そのものに原因がある可能性があります。
血液を体内に送り出す機能が低下しているため、すぐに息切れを起こすこともあります。
・不整脈
安静時にも関わらず、脈が早かったり、遅かったり、また、それらが交互に現れる場合、これも心臓そのものに原因がある可能性があります。
・発汗過多および体重減少
甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫などの病気により、ホルモン分泌が正常にされていない可能性があります。
・全身倦怠感、頭重感
鉄欠乏性貧血の場合、このような随伴症状を伴う場合があります。
これらは、動悸の随伴症状の一部ですが、とても重篤な病気が裏に潜んでいる可能性がありますので早急な検査と、重篤な病気が見つかった場合は、早急な治療が必要と思われます。
<ほとんどは問題のない動悸?>
冒頭でも述べたとおり、動悸の多くは、生命にとって問題のないものがほとんどです。
これは、精神的なストレスや、体の状態の微々たる変化によっても、動悸という症状が、現れるからなのでしょう。実際に、病院での心電図検査などでも、何も問題のない結果 となる場合も多いようです。
しかし、精神的なストレスが多いこの現代で、この動悸という症状を考えると、あまり軽視できるものではないのかもしれません。精神的なストレスが身体に様々な形で影響を及ぼす以上、病気だけをみるのではなく、生活環境そのものも視野にいれなければ、後に重篤な病気に発展しないとも限りません。
動悸という症状は、生命にとって問題のないものであっても、体にとっての危険信号として捉えるのがよいかと思います。
<中医学的な動悸の捉えかた>
では、次に中医学的な動悸の捉えかたを述べていきます。
中医学では、動悸という症状を「心悸」を呼びます。
「悸」とは、ドキドキする、跳ねるように動くという意味を表す言葉で、心悸とは、動悸がして不安を伴う病症として捉えられています。
「心悸」は主に、心の臓の失調により起こります。
心という臓器は、五臓の中でも、もっとも重要な臓器で、人体の生命活動の一切を統帥し主宰することから、「君主の官」とも呼ばれている臓器です。
心では、血液の循環をコントロールする働きと、脳の思惟意識活動の機能を持ち合わせています。
つまり、「心悸」という症状は、この血液の循環をコントロールする働きに問題があると発症するのです。
<動悸の病因病機>
では、どのような原因が心の臓器に問題を引き起こすのでしょう?
わかりやすい東洋医学理論でも説明されている通り、中医学では、気、血、津液が身体を構成している物質で構成されています。
心の臓では、その機能を維持するために、気と血が大きく関係しています。
つまり、多くの場合、心の病気は、心が持つ気と血の失調により起こります。
心が持つ気血が体にとって不十分だったり、もしくは気血の運行が悪かったりすることで、血液の循環をコントロールする働きが弱くなってしまうのです。
<心悸の原因>
では、このような心の気血失調がどのようにして起こるのか、もう少し詳しく述べていきたいと思います。
・経過の長い病気によるもの
経過の長い重度の病気は、体内の気血を損傷します。
これにより、心血を損傷することで、心悸を自覚することがあります。
つまり、血虚による心悸なのです。
・思慮過度によるもの
思い悩みが過ぎたり、過度に物事を考えることで、心血を損傷することがあります。
これにより、心血を損傷することで、心悸を自覚することがあります。
この場合も、経過の長い病気によるものと同じように、血虚による心悸なのです。
・過食や偏食によるもの
過食や偏食は、脾臓という臓器の機能を低下させます。
脾臓は食物を気血に変え、体内に送り出す役割があります。
また、水液代謝にも関係する重要な臓器です。
この脾臓の機能低下により、痰という体にとって不必要な水分が体内に停留し、それが熱を生み、さらに心臓に影響することで、心悸を自覚することがあります。
つまり、過食や偏食は、痰火による心悸につながるのです。
・体質的な心気虚によるもの
もともと、心が持つ気が不十分な方もいらっしゃいます。
このような方は、平素から驚きやすい、恐れやすいといった特徴を持っています。
心の気が不足することで、心が血液を送り出す力が弱まり、その結果 、心悸という症状を自覚することがあります。
このような場合は、気虚による心悸と言えます。
また、体質的な心気虚が発展し、心陽虚となっている方もいらっしゃいます。
このような方は、血の運行が悪く、そのために心に負担がかかり、心悸という症状を自覚することがあります。
このような場合は、お血による心悸と言えます。
<証分類別治療方法>
では、次に証分類別の治療方法について述べていきます。
先ほど述べた心悸の原因をまとめると、心の気血失調の分類として、気虚、血虚、お血、痰火による分類があると言えます。
中医学的な治療は、これらの証分類ごとに行われます。
・気虚による心悸
気虚による心悸の場合、「益気安神」のお手当てをして行きます。
「益気安神」は、不足している心気を補充し、精神的な緩和も図ることで、心悸の症状を改善する治療です。
・血虚による心悸
血虚による心悸の場合、「養血定悸」のお手当てをして行きます。
「養血定悸」は、不足している心血を補充することで、心悸の症状を改善する治療です。
・お血による心悸
お血による心悸の場合、「活血強心」のお手当てをして行きます。
「活血強心」は、流れの悪い心血の流れを改善し、心の機能も強めることで、心悸の症状を改善する治療です。
・痰火による心悸
痰火による心悸の場合、「清熱化痰」のお手当てをして行きます。
「清熱化痰」は、熱化した痰を取り除くことで、心悸の症状を改善する治療です。
いかがでしょう?
中医学的な動悸の治療はご理解頂けましたでしょうか?
動悸という症状は、しばしば自覚する症状であり、なかなか病気と結び付けづらいものです。
しかし、症状である以上、体の変調の表れであることは確かなのです。
時には、ご自身の体の変調に耳を傾けていくのも健康であるための秘訣であるといえます。
耳を傾けてみて、動悸という自覚症状がある方、また、病院で検査をしても検査結果 に表れない動悸をお持ちの方は、一度、中医学的なお手当てをされてみるのも良いかと思います。
中医学(東洋医学)全般(鍼灸・漢方・食事療法・体質改善)のご相談は、
当院までお気軽にどうぞ。
- 2019/02/20
- 乳腺炎
乳腺炎とひとくちに言っても症状は様々です。
もともとあったしこりが、どんどんひどくなって熱を持ち、真っ赤になり、乳腺炎になる場合や、何の前触れもなく、ある日突然しこりができて、一気に高熱が出る場合や、熱はないものの、おっぱいが石のように固くなり、搾乳もできないほどになる場合もあります。どんな状態にしても、そのままにしておくとどんどん悪化し、切開(手術)しなくてはいけなくなります。
おかしい、と思ったら早めに対処することで悪化を防ぐことができます。
産婦人科だと抗生物質などを処方されて終わりということもよくあるようです。
お薬を飲んでも搾乳はできますが、一時的な対処法であり、根本的な解決にはなりません。
一般的に乳腺炎は母乳が出すぎて乳腺がつまってしまうことを想像される方が多いかと思います。実は張らないおっぱいでも溜まらないおっぱいでも乳腺炎になりえるのです。
これは何故でしょう?
はじめに西洋医学からみた乳腺炎の種類、症状、治療方法をご説明します。
その後東洋医学(中医学)からみた乳腺炎(乳少といいます)の説明をさせていただきます。
西洋医学からみた乳腺炎
① 急性乳腺炎
授乳中の乳腺に細菌感染(主にブドウ球菌)が起きて生じる
② 鬱滞性乳腺炎
乳汁が分泌されず、に乳腺内にたまることによって起きる
③ 慢性乳腺炎
陥没乳頭(陥凹乳頭ともいう)が原因で起きる
症状
① 急性乳腺炎
乳房が赤く腫れあがり、激しい痛みと高熱を伴う。
感染は乳首を乳歯によって傷つけられることが原因と考えられています。
生後5ヶ月以上の乳児を育てているお母さんが発病します。
② 鬱滞性乳腺炎
乳児への授乳が十分でない場合
乳首の発達が悪くて乳汁が分泌されにくい場合
(急性乳腺炎ほど激しい全身症状は出ません)
③ 慢性乳腺炎
授乳とあまり関係せず、乳輪近辺に腫瘤が生じ、時々腫れて膿が出ることを繰り返します。
一般的な治療法
① 急性乳腺炎
抗生物質による治療が必要になります。
化膿が進み、膿瘍ができてしまった場合は切開・排膿せねばなりません。
治療が功を奏すると急速に症状は改善しますが、授乳はストップしなければなりません。
② 鬱滞性乳腺炎
搾乳(乳しぼること)と乳房を冷やすなどの治療があります。
③ 慢性乳腺炎
炎症性腫瘤の切除と炎症のもとになっている陥没乳頭の処置療法を行わなければなりません。行わなければ、再燃する可能性が高くなります。
まず、抗生物質で炎症を沈静させ、それから根治手術を行います。
これから妊娠・出産を考えている人は形成外科で治療してもらうほうがいいでしょう。
東洋医学(中医学)からみた乳腺炎とは?
中医学は体に存在する活力エネルギーの失調部分を調整し、元のバランスの良い状態に戻し、体の元気を回復させる事にあります。
乳腺炎が引き金となって起こっている他の不快な症状も緩和されていくことが大きなメリットです。例えば、体のだるさ、食欲不振など様々な症状が乳腺炎と一緒に快方に向かっていきます。
中医学では専門用語がたくさん出てきますので、わかりやすい言葉でご説明していきたいと思います。
乳腺炎と関わりの深い臓腑
中医学では基礎物質(気・血・水)のほかに臓腑(内臓)がとても大切なものと考えられています。
現在、日本の西洋医学で使われている、内臓を表す用語は中医学の「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」と同じ文字で表現していますが、機能は必ずしも一致しません。
肝臓ではなく、「肝」というように、中医学について書かれた文章の中で五臓の名前に「臓」の文字をつけないのは西洋医学と区別 するためなのです。
中医学独特の診断方法で、何が原因で、気・血・水のいずれが、どの様にバランスを崩し、五臓六腑のどの臓腑が、どの様に失調したかを見極めます。
これらによって治療方法が異なるわけです。
タイプによって治療方法が異なりますので、もちろん鍼を打つ場所や漢方の処方も異なるわけです。
乳腺炎にはおおまかに2つのタイプに分かれます。
ご自分の体調などと照らし合わせてどちらのタイプなのかご参照ください。
☆ タイプⅠ☆
気血両虚によるもの
乳汁は「血」が化生したものであり、気によって運行されると考えます。したがって普段から気血生化の源である脾胃が虚して(不足している)いたり、分娩時や産後の出血過多で気血が不足すると乳汁の生成に影響し、乳少(乳腺炎)がおこります。
基本的に栄養状態が悪いことが原因です。
「血」とは中医学的な専門用語です。どのような働きをしているのか詳しく紹介していきたいと思います。
血の生成
血は五臓でいう「脾胃」で作られます。脾胃の消化吸収により「血」が生成される為、脾と胃は気血生化の源といわれます。
血の機能
・ 全身に栄養分を供給し、潤いを与えます。
・ 精神活動の主要な基本物質になります。例を出すと、血の運行が異常である場合には、精神不足、不安感、多夢などの症状が出やすくなります。
血の循環
正常な血の循環は気の推動作用(正常な生理活動に対し激発と促進作用があります)によい行われ、内蔵の生理機能と深く関係しています。
血は「脾」で飲食物から作られ、「心」と「肺」の力によって全身に運ばれ、「脾」の統摂と「肝」の貯蔵、疏泄機能の調整で行われています。
血の原料は五臓の中の「脾」で飲食物を消化して生成される水穀の精微(栄養分)です。生成された血は「心」と「肺」の働きで五臓六腑から皮膚にいたるまで全身に送られ続けます。
全身に送られる血は体の働きを支える栄養源として活用されます。
筋肉や骨格が丈夫でたくましくなるのも、物がしっかり見えるのもすべて血の働きです。
さらに血は気とともに精神活動を支える基本物質でもあります。
基本物質が十分にあるからこそ、意識がはっきりし、精神が安定するのです。
先ほども述べましたが、乳腺炎(乳少)は「血」が化生したもので、気によって運行されています。
では「気」とは何でしょう?簡単にご説明します。
「気」は先天の生まれつきと食べ物の栄養分(脾胃で血と一緒に消化吸収により作られます)呼吸(肺の機能により人体に吸いこまれます)取り込まれ、体内の様々な働きを支えています。
「気」は一種の活動であり、絶えず運動し、全身の内外の各組織、器官をめぐっているのです。そして「血」の項でも紹介しましたが、推動作用など、様々な働きを担っているのです。
「血」は「気」から作られ、その「血」は「気」に変化することもあるように、気血は車の車輪のように、密接に連動しながら人体の生理を支えています。
気血両虚とは、どちらか一方の乱れがもう一方に深刻な影響を与えて病気が起きることをいいます。
● 気血両虚による細かい症状 ●
● 産後に乳汁が分泌しない、または分泌量が非常に少ない
原因
母乳はお母さんの血液「血」からできています。
母乳のおおもとが気血不足になり、乳汁の生成が不足すると起こります。
● 皮膚の乾燥
原因
血虚のために皮膚を潤せないとおこります。
前項でも述べましたが、「血」には身体を潤す働きがあります。これらを滋潤作用といます。これらが不足すると皮膚の栄養失調状態になり、皮膚の乾燥感が起こります。
皮膚表面の皮脂膜を作る力が弱くなってしまっている状態です。
● 顔面蒼白
原因
気血が不足して顔面部をうまく栄養できないと起こります。
「脾」の運化作用には食べ物から気血を作りそれを上にある「肺」などに送る働きも含まれています。この気血を上に持ち上げることを「昇清作用」といいます。
「脾」の運化作用が失調すると気血を生成できなくなるばかりか昇清作用も減退してしまいます。その結果 、顔面部の栄養不足がおこり、顔面蒼白になるのです。
● 食欲減退・大便溏薄
原因
脾胃虚弱により運化機能(食べたものを消化吸収して全身に栄養分を運ぶ作用)が減退すると起こります。
★ タイプ② ★
肝鬱気滞によるもの
産後に情志が抑鬱して条達が悪くなると、気機(気の運動)が滞って経脈の運行不利がおこります。そのために乳汁の分泌が阻害されると乳汁がおこります。
「肝」は肝臓だけでなく、体全体の機能を調節し、消化吸収や血流を正常に保ち、精神活動や情緒をも司る臓腑と捉えられています。
自律神経系の緊張や失調との関係が深いのです。「鬱」は機能の阻滞を表します。
つまり肝鬱には肝機能のストライキによる体調や精神活動の不調のことなのです。
「肝」は憂鬱、イライラ、思考力の低下、ため息などの精神面との関連が深い臓腑です。
こういう状態を「気滞」といいます。「気」は活気の気で、本来体内をスムーズに流れる生命エネルギーを指します。「滞」は渋滞の滞で、流れの悪い状態を指します。
つまり「気滞」は精神面、肉体面でのスムーズな気の流れが悪くなった状態です。
これが乳汁の分泌と深く関係していると考えます。
● 肝鬱気滞による細かい症状 ●
● 産後に乳汁が分泌せず、乳房は脹満して痛む
原因
肝気が鬱滞して気機(気の運動)の運行が失調するとおこります。
「肝」
「肝は女性の先天の本」とも古来言われているほど、女性にとっては大きな臓腑です。「肝」には「血を貯蔵する」「疏泄をつかさどる」という大きな2つの働きがあります。
生理時の血液量をコントロールしているのは、主に肝の「血を蔵す」働きによるものです。
女性の病気は、血の問題と切っても切れない関係にあります。
また、これらは感情、精神状態、自律神経の状態と密接に関連しています。
臓腑の中で、最も感情の状態や自律神経、血の問題と深く関連するのが肝です。
肝は「疏泄(全身の気・血を伸びやかにさせる)」という働きによって、全身の気・血を伸びやかに、滞りなく循環させています。
● 身体発熱
原因
「肝」はのびのびとした環境を好みます。しかし、過度のストレス・イライラなどの状況下では「肝」はのびのびせず、「肝の気」がスムーズに流れなくなってしまい、渋滞を起こします。気や血が渋滞を起こすと熱を生む特性を持っていますので、肝の気が渋滞したことで熱が生まれてしまいます。
これを肝鬱といいます。つまり肝鬱は肝機能のストライキによる体調や精神活動の不調のことなのです。気欝化火によりおこります。
● 胸脇部の不快感
原因
「肝」の働きは疏泄といって気血の流れを調節しています。肝の疏泄が失調すると気血の流れが停滞を起こします。
流れが悪くなると停滞を起こした箇所で不快感や痛みが生じます。
胸脇部に不快感が生じるのは「肝」のエネルギーが流れているルートが胸脇部を通 っているためです。
● 胃脘部の脹痛・食欲減退
原因
「気」の滞りが続いて「肝」の機能が異常に亢進すると、「気」は本来違う方向に働きます。このような症状を「気逆」といいます。
気逆には体の上のほうに向かう「上逆」と脾胃の機能を損なう「横逆(おうぎゃく)」があります。
横逆がおこると栄養素を「肺」に送る「脾」の働きと、不要物を大腸に送る「胃」の働きが乱れ、お腹の張り感や痛みなどの症状があらわれます。
人によって、ゲップやむかつき、吐き気、大小便がすっきり出ない、便がゆるくなるなどの症状も併発します。
乳汁不足の原因のひとつがストレスであることがわかっていただけたかと思います。
育児に家事と日々の生活に追われ、常に気が張った状態ではないでしょうか?
できる範で周囲の協力を得ながら、ストレス解消し、針治療をしながら、育児を楽しく乗り切りましょう。
さて、乳腺炎になってしまった場合、里芋湿布やじゃがいも湿布などを患部に当てると良いなどの知識を持ち、乳房マッサージの経験豊富な助産婦さんもいらっしゃいますが、残念ながら、現状はごくわずかしかいらっしゃいません。
最後に日常生活に取り入れて頂きたい食べ物、生活習慣について書きます。
タイプに合った食養生を1つでも取り入れて、毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し、体調が軽くなっていくのが実感できると思います。
気血両虚タイプ
さくらんぼ・桃
インゲン豆・キクラゲ
蓮根・さつまいも・きゃべつ
枸杞の実・栗・棗
真鯛・ヒラメ・カレイ・どじょう・フナ
鶏・卵・ウズラ・羊
生姜など
消化力が弱く、高カロリーや繊維質が多い食材などは消化吸収しきれず、胃腸の負担にえなるので、栄養価は高くても消化しにくいものは控えめに取りましょう。
肉を少なくし、冷たい飲み物や食べ物を控えめにすることが大切です。
また、牛乳にはカルシウムの吸収を助ける乳糖を含み、日本人の大多数はその乳糖の消化酵素の活性が低いので、牛乳を飲んだ後、むかつきや下痢、水太りなどの症状を引き起こしやすいので控えめに摂りましょう。
「血」を補うためには夜は早く寝るようにしましょう。正しい睡眠が「血」を増やすので睡眠不足や夜更かしは大敵です。
また、激しい運動やサウナ入浴のように多量の発汗を促すことはなるべくしないようにしましょう。
もともと足りないパワー(気)を汗とともに奪ってしまうのでよくありません。
肝鬱気滞タイプ
三つ葉・生姜・パセリ・紫蘇の葉
ジャスミン茶
レモン・きんかん・ゆず・グレープフルーツなど
このタイプの方はストレスは禁物です。
気血の巡りを悪くし、マイナス思考に陥りやすくなってしまいます。
ご自分にあったストレス解消法(アロマ・ヨガなど)を実践してみてください。
「食養」は漢方薬と同様、一人ひとりの体質にあう食品を摂取することが基本になります。
穀物類、野菜類、果物類、動物性食品をバランスよくとれば、氣力を養うことができます。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。
ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。
当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。
しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。
さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。
当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。
それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。
この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。
特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。
顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)
急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子
その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳
アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など
これらの疾患はほんの一例です。
疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。
針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。
当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。
少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。
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