コラム

2019/03/11
【内科疾患】血尿・血便について

尿や便は、身体の健康状態を表す重要な指標です。

現代医学においても内科などでは、その状態は問われますが、それ以上に中医学では何科を受診しても、大抵、尿や便についての問診があります。

 

それは何故かというと、尿や便の状態には、その患者さんの病気の状態や、基本的な体質が反映されているからです。

中医学では、身体全体の様子を把握した上で、全体的にバランスの良い治療をしていきます。

 

最近は洋式のトイレが増えてきたため、自分の普段の尿や便の様子を知らない人が多いですが、日頃の健康管理のために、目で見ておくことをお勧めします。

 

血尿や血便は、自覚症状として気づく前に定期健診などで見つかることが多いようです。

見た目に色が普段と違うときも同様に、身体の中の何かしらの異変を表しているわけですし、何かの病気の場合もありますが、一過性で心配のない場合もありますから、早めに医療機関を受診しましょう。

 

 

<中医学的考え方>

 

中医学では常に、表面的な症状だけではなく、根本的な原因を重視して治療を行います。

身体の働きの全体的なバランスを整えていくことで、健康で活力のある身体づくりをしていきます。

なぜ、中医学では現代医学と違って、身体全体のバランスを整えることができるのかと言うと、基本的な身体の働きに関する考え方が違うため、おのずと治療法も違うからなのです。

詳しいことは、病気別わかりやすい東洋医学診断のまとめのページの上段に中医学で考える身体のしくみについて書いてありますので、

「わかりやすい東洋医学理論」をご覧下さい。

 

中医学では身体のみかたが根本的に西洋医学とは違います。西洋医学では身体を細かく分析し、細胞レベルでとらえますが、中医学では身体を大きく捉えて、小宇宙であると考えます。地球は大宇宙に存在する小宇宙の一つです。これと同じように地球からみれば、身体は小宇宙といえるのです。

宇宙に存在するものにはすべて意味があり、無駄なものはひとつもありません。

それぞれが、互いに影響しあいながら、バランスを保ち、大自然の法則に従って動いているのです。人間も同じように体内に存在するものすべてが重要な意味を持ち、個々の臓器も、互いに影響しあい、バランスを保って、健康を維持しているのです。

 

小宇宙である身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・水』です。

気・血・水が、身体を流れ良く巡る事で、身体内の臓器(五臓六腑)も、うまく働くことが出来、健康でいられると考えます。

 

○「気」・「血」・「水」について

<気>

気は人間が活動するために必要な基礎物質です。そのため気の働きは様々です。

主な作用には、物を動かす「推動作用」・栄養に関わる「栄養作用」・身体を温める「温煦作用」・身体を守る「防衛作用」・ものを変化させる「気化作用」・体内から血や栄養物が漏れるのを防ぐ「固摂作用」など様々な働きがあります。

 

<血>

血は様々な器官に栄養や潤いをあたえます。

ここにも中医学独特の概念があり、血は精神活動の栄養源でもあります。

ですから血の不足は精神不安や不眠を発症させます。

また、身体が熱くなりすぎないように冷却する働きもあります。

 

<水(津液)>

水は津液とも言い、体内にある正常な水液のことをいいます。

主な作用としては 身体の各部所に潤いを与えたり、血と同様に冷却する働きもあります。

 

この「気・血・水」の3つが、充分にあり、スムーズに流れていると、健康な状態が保たれます。

これらが停滞したり、不足したりすると、不調をきたし、様々な症状がでてきます。

 

○臓腑の働き

五臓六腑というのが東洋医学の考える内蔵のことです。

西洋医学のそれとは異なり、中医学では内臓を物体として区別するのではなく、働きで区別 します。

主な働きとして、六腑は飲食物の消化吸収を行い、五臓は栄養分から「気・血・水」を作り、運んだり、貯蔵したりしています。

 

五臓とは「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の事で、

六腑は「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」の事です。

 

各々の臓腑には西洋医学と同じような働きをするものや、全く違う働きをするものもあります。同じ臓腑の名前を使ってはいますが、中医学では臓腑の働きに注目していますので、名前が同じでも、全く同じ物を指しているわけではありません。

 

今回のテーマで関係深い臓腑は「心」・「脾」・「腎」です。

 

「心」: 中医学でいう「 心 」は西洋医学と同じ血液ポンプとしての役目に加えて、思考・精神作用の中枢とされています。

心を養う栄養物である血や体液(陰)・気(陽)などが充実していると精神的にもいい状態でいられます。この「陰」は冷やす作用があり、陽は温める作用があって互いにバランスを取り合っています。

 

「脾」:

1.食べたものをエネルギー(気・血・水)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。

この働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能が低下してしまいます。

 

2.エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。

この働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。

 

3.血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。

この働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

 

「腎」 : 生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。

「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。

このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。

「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

このエネルギーが足りなくなると、骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなったりします。

 

 

○タイプ別にみた血尿・血便

 

【血尿】

 

1.心火による血尿

主症状:

小便が赤く熱感がある。

随伴症:

顔面紅潮・喉の渇き・不眠

舌脈像:

舌尖紅・脈数

病機 :

「心」の陰陽バランスが崩れて、陰(冷やす作用)が弱くなった結果 、「心」に熱が起こり、「心」と関係深い「腑」である小腸に熱が移ったため、血尿が起きた。

治法 :

清心瀉火・止血

「心」の陰陽バランスを整えて、熱症状を鎮め、止血する治療をします。

 

2.脾腎両虚による血尿

主症状:

小便頻回・淡紅色の血尿

随伴症:

倦怠・顔面が黄色っぽい・腰背部がだるい・めまい・耳鳴り

舌脈像:

舌質淡・脈細

病機 :

疲労しすぎたり、長く病気をしていたりすると、脾と腎の働きが弱まり、統血作用・固摂作用(必要以上の血液が体外に漏れでないようにする)が弱まり血尿が起こる。

治法 :

健脾益腎・補気摂血

「脾」の働きを良くし、気を補って血が漏れ出ないようにします。

 

 

【血便】

 

1.湿熱による血便(血熱内蘊)

主症状:

便は鮮紅色・先に血が出て、その後便が出る。すっきり排便しない。

随伴症:

肛門の疼痛・腹痛

舌脈像:

舌苔黄膩・脈濡数

病機 :

脂っこいもの甘いもの味の濃いものをとりすぎたり、お酒を飲みすぎたりすることにより、脾胃の働きが悪くなり、「湿熱」※が生じる、または、外界から「湿邪」※が身体に襲来して、これが大腸に移行して損傷が起こり、 血便が起こる。

※「湿熱」:飲食の不摂生などにより、湿が内生し、滞って、熱化した状態です。

※「湿邪」:外因のうちのひとつで、体外から侵入する病因物質。

湿邪の特徴は気機を阻害しやすく脾胃の陽気を損傷しやすい、重濁・粘滞の性質があるなどです。

治法 :

清熱化湿・涼血止血

「湿」を身体の外に出し、熱を下げ、止血します。

 

 

2.脾胃虚寒による血便

主症状:

下血・色は紫暗色または黒

随伴症:

腹痛・顔色が悪い・精神不振・下痢

舌脈像:

舌質淡・脈細

病機 :

長く病気を患い、「脾」の力が低下し、統血作用(血が対外に漏れでないようにする作用)がうまく働かず、血が腸からもれ出て血便が起こる。

治法 :

温中健脾・養血止血

身体を温め、「脾」の働きを良くして、統血作用(血が体外に漏れでないようにする作用)がうまく働くようにし、止血します。

 

 

以上のように、中医学的治療では、病気の『原因』を見極め、根本から治していくので、再発しにくくなり、体調も全体的にバランスが良くなっていきます。

 

体調の不調は身体からのメッセージです。その声をむやみに封じこめることなく、根本を見直し、真の健康に近づいていくきっかけにして下さい。

心の底から明るい笑顔で生活することが出来るようになります。

中医学は身体と心に優しい医学です。是非一度ご相談下さい。

 

2019/03/11
【その他】診察シュミレーション 花粉症1

●診察シュミレーション ~花粉症編~ ●

慢性症状・難治病でお悩みの方、真の中医学(東洋医学)、真の診断と治療を理解していただけると思います。

 

◇はじめに◇

現代医学の発展はめざましいものがあります。

皆さんも病院で検査などを受ければ、その検査データーの精密さや検査機材の進歩にお気づきになると思います。

現代医学では患者さんの病気を調べる手段に様々な検査が用いられております。

例えば、血液検査・レントゲン・CT・超音波・・・など、その症状により様々な検査がございます。

このように医師は検査データーや画像をみて患者さんの状態を把握します。

それに対して鍼灸師は上記の様な検査は一切行いません。

皆さんは鍼灸師が検査機材などを使用しないで、どうして病態を把握することができるのか不思議に思うかもしれません。

しかし、中医学による施術を行っている治療者は、現代医学と同様に患者さんの病態を把握して、治療方針を考えてから治療にあたります。

ただ病んでいる部位や痛い箇所に針を打つだけではありません。

一般的な鍼灸院の言う「東洋医学」と、我々が言う「中医学」とは全くの別 物です。

中医学の治療というのは、先ず「弁証」を立てます。

「弁証」とは簡単に言ってしまえば、患者さんの体の中の、現代医学では出てこないエネルギーバランスの崩れ具合をみて、病気の原因や性質や進行状態などを見極めることです。

「弁証」が立てられたら、それに基づいて治療方針を決め、治療方針が決まったら、それを基に使用するツボを決めていきます。

つまり、治療の第一段階は「弁証」を立てることから始まります。

その「弁証」を立てる手段が『四診』と言われ、現代医学の検査と同様のものです。

『四診』とは「望診」「問診」「切診」「聞診」の総称です。

 

①「望診」とは、患者さんの顔色や舌の状態みて疾病の状況を判断するものです。

 (舌の形状や苔の具合で寒熱や活力量の過不足などを判断します。)

 

②「問診」とは『四診』の中でも重要な診察法で、患者さん本人や付き添いの方に病気のことは勿論の事、生活状況・家庭環境・性格・睡眠状況・など様々な質問をさせて頂き、そこから疾病の状況を判断するものです。

当院に来院された患者さんはお気づきだと思いますが、当院においても「問診」は重要視しており、初診時には「問診」のみに30分位 かける事も珍しくありません。

③「切診」には〈脈診〉と〈按診〉があります。

 

1)

〈脈診〉とは脈拍を診察することですが、現代医学の〈脈診〉と、我々の〈脈診〉とでは内容がやや違います。

我々の脈診は脈拍数や不整脈の他に、脈の強弱・浮き沈み・太い細い・脈の触れ方、などを観察します。

それにより、体の活力具合・体の寒熱などを見極めます。

 

 

2)

〈按診〉とは患者さんの皮膚・手足・胸腹部などを、撫でたり・押したり・触ったりして、しこり・圧痛・温度・湿り気などを観察します。

④「聞診」とは、患者さんの発する声や臭いから、患者さんの疾病の状況を判断します。

 

上記に挙げた4つの診断法は独立するものではなく、これら全ての方法により情報を収集し、総合的に患者さんの体の中でどのような歪みが生じているのかを振り分けます。

このようにして振り分けられたものが、先程紹介した「弁証」です。

 

では実際にどの様に『四診』が行われ、どの様に「弁証」を立てていくのかをシュミレートしてみたいと思います。

 

第一回の今回は「花粉症」の四診をシュミレートしてみたいと思います。

そこで、できるだけ理解しやすいように、東洋医学の基礎的な理論についてと花粉症についての詳しい説明が、こちら『病気別 ・わかる東洋医学診断』の「わかりやすい東洋医学理論」と「花粉症について」に記載されておりますので、そちらを先にお読みになられてから、この後をお読みになることをおすすめいたします。

 

2019/03/11
【その他】診察シュミレーション 花粉症2

◇ 問診シュミレーション◇

では早速シュミレートをしてみたいと思います。

 

初診の患者さんは先ず問診表を書いて頂きます。

問診表には現在の病状を書いていただく箇所と、普段の生活・めまい・耳鳴り・のぼせ、などの有無を答えていただく質問表があります。

質問表は患者さんの症状により、上記の質問の他に20~60位の質問が追加されます。

これらの質問にチェックを入れていただく事により、問診を行う前に治療者は現在の患者さんの病状に加え、患者さんの体質を大まかに把握することができます。

中医学では患者さんの体質を把握するということは、現在の病状を把握することと同等に重要な事だと考えております。

なぜなら中医学は病気を診るのではなく、病人を診る医学だからです。

例えば、風邪という病気は1つしかありませんが、風邪をひいた人(病人)となるとその人の体質に風邪が入っているわけですから、体質+病気=病人、となります。

中医学は病人をみる医学ですから、同じ風邪をひいた場合でも、体質が違えば弁証や治療法が変わってくるのです。

また、中医学では、風邪をひきやすい体質の方であれば、風邪の症状が治まっただけでは完治とは言いません。

このような患者さんの場合で、風邪の症状が辛い時は、先ず、「標治法」と言って風邪の症状を治める治療を行い、ある程度風邪の症状が治まってきた段階で「標治法」から「本治法」に切り替えます。

「本治法」とは風邪をひき易い体質から風邪をひき難い体質に改善します。

そしてこの体質の改善が終了して初めて「根治」といって、いわゆる完治となるわけです。以上のことから、治療者にとっては患者さんの体質を知るということはとても大事なことなのです。

さて、問診表に質問表が付属しているのにも理由があります。

冒頭でも述べましたが、「問診」は「四診」の中でも重要度が高い診察の一つです。

当院でも「問診」にはかなりの時間をかけております。

問診の前に治療者が患者さんの体質を大まかに把握できることにより、問診時間の短縮が可能となります。これは質問表にあった質問を問診時に省くとういうことではなく、質問表をもとに更に深い問診が可能になるということです。

患者さんは何らかの不調があって来られているのですから、問診は出来るだけ短く、正確に、より深く行うのが我々治療者の努めなのです。

さてシュミレーションにもどりましょう。

 

Ⅰ、治療者は問診に入る前に問診表と質問表に目を通します。

問診表には以下のことが書かれてありました。

 

男性 21歳 学生   初診日:H19年3月15日

【主訴】

一週間前から、鼻水・鼻の痒み・くしゃみ、がある。

毎年この時期になると同じような症状が出る。

数年前に病院へ行ったところ「花粉症」と判断された。

耳鼻咽喉科で鼻の検査もしたが異常は無かった。

 

次に質問表を見てみると

軟便傾向・息切れ・落ち込みやすい性格、などにチェックがありました。

 

Ⅱ、問診表に目を通し終えたら、患者さんに問診室へ入ってもらいます。

入り口から痩身な青年がゆっくり入ってまいりました。

顔色は白くツヤが無く、肌が乾燥しやや荒れているようです。

「こんにちは」と声をかけると、挨拶を返してくれましたが、どことなく声に力が無い感じがしました。

椅子に腰掛けてもらい改めて挨拶を交わしました。

患者さんはとりたてて体臭や口臭は無いようです。

又、目も充血していないようです。

 

治療者は患者さんが問診室へ入って来る時から先ほど説明した「望診」と「聞診」を開始しており、患者さんから発せられる多くの情報を既にキャッチしています。

具体的には体型・顔色・顔の肌の質感などチェックしています。

更に患者さんの発する声や臭いにも気を配っています。

 

さてここで、治療者が問診表に目を通してから患者さんが問診室の椅子に腰掛けるまでに治療者がどの様な事を考えていたのか、頭の中を覗いてみましょう。

 

【1-1問診表】

先ず問診表を見て患者さんの主訴が「花粉症」であることを確認すると、花粉症を引き起す原因には中医学的に何があるのかを考えます。

因みに、「花粉症」という病名はあくまでも現代医学の病名で、中医学には「花粉症」という弁証名は存在しません。

西洋医学では花粉症はアレルギー疾患の1つとして考えます。

当然アレルギーを引き起こす誘発物質はスギなどの花粉です。

中医学では花粉の様に、体の外から体内へ侵入して病気を引き起こすものを外邪と言います。

「花粉症」を引き起こす外邪は主に「風寒」「風熱」「燥熱」などがあります。

更に「花粉症」と関係の深い臓器には「肝」「脾」「肺」「腎」などがあります。

これらの臓器に何らかの損傷が起こると「花粉症」を引き起こすことがあります。

逆を言えば、「花粉症」の患者さんはこれらの臓器のどれかが損傷していることが多いわけです。

(外邪や臓器・花粉症について、詳しくは当HP『病気別・わかる東洋医学診断』の「わかりやすい東洋医学理論」「花粉症について」を参照して下さい。)

さて、もう一度「花粉症」を引き起こす外邪をよくみてみましょう。

「花粉症」を引き起こす外邪は、「寒」の性質のもの(風寒)と、「熱」の性質のもの(風熱・燥熱)の大きく2つに分けられます。

患者さんがどの外邪を受感したのかを判別する場合は、「寒」「熱」では現れる症状にそれぞれ違う特徴がありますので、先ず「四診」により「寒・熱」の判別 をしていきます。

その結果、もし「熱」の症状が認められれば、次に「風」と「燥」の症状の特徴をやはり「四診」により判別 をし、最終的に受感した外邪を特定していきます。

損傷を起した臓器についても同様に「四診」により各臓器それぞれの特徴ある症状を判別 して損傷している臓器を決定していきます。

 

問診表を見てみると

主症状は鼻水・鼻の痒み・くしゃみ、です。

これは「花粉症」の代表的な症状であります。

中医学的にみれば「肺」の機能失調時によくみられる症状です。

 

更に問診表を読み進めていくと、

毎年同じ時期に、同じような症状が出て、病院では「花粉症」と診断されています。

さらに鼻には器質的な異常が無いとなっています。

これは中医学的にみれば、季節的な外邪による病気の可能性をしめしています。

更に発病の時期をみてみると毎年春に発病をしています。

外邪には「風邪(ふうじゃ)」「熱邪」「燥邪」「湿邪」「寒邪」「暑邪」の6種類があり、この中で特に春に現れやすいのが、「風邪(ふうじゃ)」です。

ですから今の段階では季節的な外邪(風邪)の受感による病症の可能性が高いというところまでわかりました。

しかし、今の段階ではまだ情報が足りませんのであくまでも可能性があるというだけです。

 

【1-2質問表】

さて、問診表により患者さんの主訴がわかり、季節的な外邪(風邪)の影響による可能性が高いところまでわかったところで、次は質問表に目を通 します。

この質問表では、主に患者さんの体質や現在現れている病状の性質を大まかに掴むことができます。

勿論、患者さんによって詳しく書いてくださる方や、そうでない方もいらっしゃいますし、体質が現在の病状に隠されてしまい、患者さんの体質がわからない場合などもありますので、必ずしも質問表で体質や現在現れている病状の性質がわかるものではありません。

さて、それでは質問表のチェック項目を見てみると

「寒がり」・「軟便傾向」・「息切れ」・「おちこみやすい性格」、にチェックがされています。

 

A、「寒がり」

寒がりには患者さんの体質を表わす場合と、病状の性質を表わす場合

の2つの意味合いがありますので、この後の問診の際に更に確認する必要があります。

今の段階では体質的には体を温めるエネルギーが不足している「気虚」か、それが更に進行している「陽虚」の可能性と、病状の性質的には「寒性の病性」の可能性があります。

 

B、「息切れ」

息切れは、エネルギーが不足している「気虚」状態の時に現れる症状です。

特に「肺」や「心」の機能失調時の症状です。

この患者さんの主症状を考えると「肺」の機能失調の可能性が高そうですが、これも後ほど問診で確認しましょう。

 

C、「軟便傾向・落ち込みやすい性格」

軟便や落ち込みやすい性格は「脾」の機能失調の可能性を意味します。

脾の働きの1つに消化があります。脾が損傷され消化能力が低下すると軟便傾向になります。

又、エネルギーは飲食物から作られます。したがって消化能力が低下すると、エネルギーが作られず、「気虚」になってしまいます。

尚、過度な思い悩みは脾を損傷させてしまいます。

ですから、落ち込みやすい性格の人は脾を損傷させている人が多いのです。

 

問診表から、この患者さんは「風邪(ふうじゃ)」の受感による病症の可能性が高いと考えられます。

次に質問表を考慮すると、「風寒」の受感の可能性も考えられます。

体質的にはエネルギーの不足である「気虚」がある可能性も考えられます。

又、臓腑の失調については、今のところこの患者さんは「肺」か「心」及び「脾」の機能低下がある可能性も考えられます。

 

治療者は以上のことを頭にいれて問診を始めていきます。

 

【2-1入室~着座】

患者さんが入室してきた時から「望診」と「聞診」は始まります。

ではこの患者さんの場合はどうだったでしょうか?

A 痩身である。 B 顔の肌が乾燥しやや荒れている。 C 顔色が白い。

D 声に力がない。 E、目の充血はない F、口臭・体臭はない

以上6点をチェックしています。

 

A、痩身

痩身をきたす原因は「気虚」「血虚」「陰虚」など沢山ありますが、問診表と質問表から考えると、「脾気虚」により栄養が吸収されず痩せている可能性が考えられます。

 

B、顔にツヤが無く、肌が乾燥しやや荒れている。

これは「肺」の機能失調を表わします。

「肺」は宣発といって、体表へ「気・血」といった、栄養や潤いなどを散布しております。

「肺」が損傷したことにより宣発能力が低下すると、栄養や潤いなどが体表へ散布されず皮膚の乾燥や肌荒れが起こります。

 

C、顔色が白い

顔色が白い原因は「血虚」など幾つかありますが、今までの経過からすると、この患者さんの場合は「肺」の宣発能力の低下により、血が顔まで行きと渡らなくなっている可能性が考えられます。

 

D、声に力が無い

中医学では発声は「肺」の働きが深く関与していると考えます。

ですから「肺」が失調することで、声に力が無くなってしまうことがあります。

 

E、目の充血はない

目の充血は熱症状を意味します。

ですから「花粉症」の場合、目の充血は外邪の種類が「風熱」の可能性を意味します。

この患者さんの場合は目が充血していないので、今の段階では風熱の可能性はまだありません。

しかしこれは今の段階の話で、これだけで風熱の否定にはなりませんので、 問診で再度確認する必要があります。

 

F、体臭・口臭はない

体臭は様々な病状を現します。治療者は体臭の種類によってその患者さんの失調している臓腑の情報を得ることが出来ます。

又、口臭は胃に熱がこもるとおこります。

この患者さんは特に臭いがありませんので、特に情報は得られません。

 

以上のことから、この患者さんに「肺」の失調がある可能性がかなり高いということがわかります。

それ以外については、まだ特に決定的な判断材料はありません。

 

治療者が問診表を見てから患者さんが着座するまでに、どの様なことを考えているかがおわかりになったと思います。

それでは、いよいよ問診の様子を見てみましょう。

2019/03/11
【その他】診察シュミレーション 花粉症3

Ⅲ、先ずは具体的に主症状(鼻水・鼻の痒み・くしゃみ)について質問をしたところ、次のような答えが返ってきました。

A)鼻水はそれほど激しくはない。

B)鼻水は透明でサラサラして、粘調又は黄色ではない。

C)くしゃみが連発する。

D)冷たい風にさらされると症状が悪化する。

E)疲れると症状が悪化する。

 

Ⅳ、次にその他の「花粉症」の症状について質問をしたところ、

次のような答えが返ってきました。

A)粘調又は黄色の痰や目ヤニは無い。又目や鼻や咽に痛みや熱感も無い。

B)激しい鼻づまりはない。

C)熱い所・暑い日・温風に当たっても症状は変わらない。

D)咽や鼻の乾燥感、から咳も無い。

 

Ⅴ、最後に随伴症状について質問をしたところ、患者さんからは次のような答えが返ってきました。

A)風邪をひきやすい・B)食欲がなく胃下垂がある。又むくみやすい・疲れやすい

C)寒がりではあるが、冷え症では無い。便に未消化物は混じらない。

D)性機能や聴力は正常で腰や膝にだるさや痛みは無い・E)家族に花粉症はいない。

G)鼻・目・耳・咽などに閉塞感は無く、ストレスが加わっても症状は特に変化しない。H)怒りやすくもない。

 

以上が今回の問診の患者さんの答えです。

 

?、最後に脈診と舌診をしました。

脈は力の無い脈で、脈速はやや遅めでした。

舌は白っぽく、ボテット膨らんだ感じでした。

 

では、患者さんの答えや、脈・舌から、治療者がどの様に弁証を立てるのか

又、治療者の頭の中を覗いてみましょう。

 

【3-1主症状についての問診】

先ず、主症状について詳しく質問をしています。

患者さんの答えから何がわかるか説明しましょう。

A)鼻水はそれほど激しくはない・D)疲れると症状が悪化する。

中医学では、一般的に激しい症状が「実」の症状で、緩慢な症状が「虚」の症状と考えます。

鼻水が激しくないということですから、症状は緩慢であるといえますので、「虚」の症状ととらえることができます。

又、疲れると症状が悪化するのも「気虚」の症状の特徴です。

これらは、先程の問診表や望診などで考えられてきた「気虚」の裏づけの1つの情報となります。

 

次に、

B)鼻水は透明でサラサラして、粘調又は黄色ではない。

C)くしゃみが連発する。

D)冷たい風にさらされると症状が悪化する。

以上の3点とも、主症状が「寒」の性質をもっていることを表わします。

これはそのまま外邪の性質に置き換えられます。

因みに鼻水が粘調又は黄色である場合は熱の症状になります。

 

さて、【1-1問診】の説明を思い出してください。

治療者は問診表や質問表から外邪の種類は「風邪(ふうじゃ)」か「風寒の邪」の可能性が高いと考えていました。

この問診で外邪が「寒」の性質であることがわかったことにより、この患者さんが受感した外邪が「風寒」の可能性が高いことが見えてまいりました。

しかし問診は正確に慎重に行わなければなりませんから、次は「風寒」以外の邪の症状があるかを患者さんに尋ねて、それらの症状が無いことを確かめて、初めてこの患者さんは「風寒」の邪を受感したと決定できるのです。

そこで次は主症状以外の「花粉症」の症状をみてみましょう。

 

【3-2主症状以外の花粉症の症状についての問診】

先ず、A)B)C)の質問ですが、

粘調又は黄色の痰や目ヤニの有無・目や鼻や咽に痛みや熱感、激しい鼻づまりの有無・熱い所・暑い日・温風に当たった時の症状の悪化の有無を訊ねています。

これらは全て「熱邪」の症状の特徴です。

患者さんはこれらの症状は無いと答えておりますから、上記の問診で「熱邪」は否定されました。

次に、D)の、咽や鼻の乾燥感、から咳の有無についての質問ですが、

これは「燥邪」の症状の特性です。

この患者さんの場合「燥邪」の可能性は低いのですが、念のために確認しております。

患者さんは上記のような症状が無いと言っておりますので「燥邪」の可能性も無いと言ってよいでしょう。

これで、「熱邪」と「燥邪」が否定されましたので、患者さんは「風寒の邪」を受感したと考えてよいでしょう。

 

さて今までで患者さんについてわかったことをまとめてみましょう。

この患者さんは季節性の「外邪」を受感したものと考えられます。

「外邪」の種類は「風寒の邪」です。

また、体質的にはエネルギーの不足である「気虚」の可能性が高いと言えます。

しかし、今の段階では「気虚」の可能性があるのはわかっていても、どの臓器のエネルギーが不足しているのかまではわかりません。

そこで、これ以降の問診では随伴症状の質問をしながらどの臓器が虚しているのかを探ってゆきます。

 

【3-3それ以外の随伴症状についての問診】

随伴症状は、闇雲に探ってゆくわけではありません。

しかし質問の仕方は各先生によって様々ですので、今回は先ず、問診表の説明で登場した「花粉症」に関連のある臓器をから質問していきます。

その中でも、今のところ一番可能性が高そうな「肺」から質問を開始してみました。

 

患者さんは、A)風邪をひきやすいと答えております。

これは「肺気虚」の典型的な症状です。

今までの問診や望診や聞診でも「肺」の可能性は高かったので、このへんでこの患者さんは「肺気虚」があると考えて間違いないでしょう。

次にほかの臓腑もチェックしていきます。

B)食欲がない・胃下垂・むくみやすい・疲れやすい、などの症状があります。

これは「脾気虚」の症状です。

今までにも「脾気虚」の症状は幾つかありましたので、この患者さんは「肺気虚」の他に「脾気虚」があると考えてもいいでしょう。

尚、「脾気虚」は進行すると「脾陽虚」になりますので、次はそこも確認しなければなりません。

それについての質問の答えがC)の、寒がりではあるが、冷え症では無い。

便に未消化物は混じらない。になります。

これによってこの患者さんは、冷えはあるものの「脾陽虚」までは進んでいないと判断できます。

次の答えは、D)性機能や聴力は正常で腰や膝にだるさや痛みは無い・E)家族に花粉症はいない。であります。

この答えは、腎についての質問の答えになります。

腎は性機能や遺伝に関わる臓器です。又、耳・腰・膝とも深く関与します。

腎についての質問は全てその症状がありませんので、この患者さんの腎は正常といえます。

次は、G)鼻・目・耳・咽などに閉塞感は無く、ストレスが加わっても症状は特に変化しない。H)怒りやすくもない。です。

これは肝の症状についての質問に対しての答えです。

本来「肝」が関与する基本病理は「気滞」によるものですから「実」の性質です。

この患者さんは明らかに「虚」の病症が出ておりますが、「虚」と「実」が混雑する場合もありますので、「肝」の質問をしています。

しかし患者さんの答えは「肝」の症状は無いと言っております。

 

したがって随伴症状を総合すると、この患者さんは「脾」と「肺」のエネルギー不足があるようです。

 

大体、弁証が組み立てられてきました。

最後に脈診と舌診をして、弁証が間違っていないか最終確認をします。

この患者さんの脈は力がありませんでした。力の無い脈は「気虚」を意味します。

次に脈の速さは「寒・熱」を表わし、遅い脈は「寒」を表わします。

次に舌ですが、白い舌はやはり「寒」を意味し、ボテット膨らんだ舌は「気虚」を意味します。

脈診や舌診の結果も問診と一致しましたので、最終確認も出来ました。

 

今までの四診を総合すると、この患者さんの弁証は「脾気虚」と「肺気虚」の両方がありますので弁証名は『脾肺気虚』となります。

更に、今の患者さんの病状は、体質的に『脾肺気虚』があったところに「風寒の邪」を受感し、現在の症状が発症したと考えられます。

 

ではどの様な機序を経て、現在の症状が発症したのかを簡単に説明したいと思います。

 

この患者さんの体質は『脾肺気虚』ですから「脾」と「肺」のエネルギー不足があります。

「脾」の働きの1つに「運化作用」があります。

「運化作用」とは食べた物をエネルギーに変え、全身へ運ぶ作用です。

「脾」はエネルギーを作り出し全身へ運ぶ仕事をしているのです。

更に「脾」のエネルギーを全身へ運ぶ仕事の手助けをしているのが「肺」の「宣発・粛降作用」です。

つまり、エネルギーは「脾」によって作られ、「脾」と「肺」によって全身へ運ばれます。

ところで、脾によって作られるエネルギーには幾つかの種類があります。

その中の一つに「気」があります。さらに「気」にも幾つかの種類や働きがあり、その中の一つに「衛気」があります。

「衛気」の働きの中には「防衛作用」といって、外邪が体に侵入しようとするのを防ぐ働きがあります。

この「衛気」は「肺」の「宣発作用」によって体表へ運ばれることによって、はじめて「防衛作用」を果 たすことができるのです。

「脾気虚」になってしまうとエネルギーが作られなくなります。その結果 「気」の生成能力が低下してしまい「衛気」の不足につながります。

更に、この患者さんは「肺気虚」もあります。「肺気虚」は「宣発作用」の低下をまねき、「衛気」が体表へ運ばれづらくなってしまいます。

この結果、「防衛作用」の低下が起こり、外邪の侵入が起こりやすくなってしまいます。

ですから「肺気虚」の方は風邪をひきやすくなってしまうのです。

この患者さんの場合も同様に風邪をひきやすいと言っておられます。

更に風邪だけに限らずその他の外邪の受感もしてしまいますので、毎年同じ様な症状に悩まされてしまうのです。

 

さて弁証が立てられた時点で基本的に問診は終了です。

患者さんには施術に備えて治療室へ移動をしていただき、ベッドに横になってもらいます。

その間に治療者は治療方針と使用するツボを決めなければなりません。

先ず最初に考えるのが治療方針です。

皆さんならどの様な治療方針を考えますか?

患者さんの主訴は、「鼻水・鼻の痒み・くしゃみ」です。

今、患者さんを苦しめているのは上記の三つの症状ですから、先ずはこれらの症状を取り除くことが最優先になります。

これらの症状を引き起こしているのは「風寒の邪」ですから、今回の治療は「風寒の邪」を体から追い払う治療と「肺」のエネルギーを上げる治療が主になります。

これが冒頭に出てきた「標治法」になります。

その後上記の症状が治まったら「本治」である「肺」と「脾」のエネルギーを高める治療に切り替えていきます。

最後に治療法が決まれば、それに沿ったツボを選択します。

問診が終わって針を打つまでに治療者の頭の中では上記の様なことを考えています。

 

我々はこのようにして弁証を立てております。

このような過程は決して珍しいことではなく、中医鍼灸ではごく普通 のことであります。

中医学の治療は『理・法・方・薬(穴)』という大原則にのっとって行われます。

「理・法・方・薬(穴)」とは中医学での診察から治療までの流れを表す言葉です。

「理」とは理解と言う意味で、具体的には「弁証」により病気を理解することをさします。

「法」とは弁証に基づいて治療方針を決定します。

「方」とは治療方針にのっとった漢方薬の処方やツボの選穴になります。

「薬(穴)」とは薬やツボの知識をさします。

つまり、本来の臨床の現場では「弁証」が立てられ、「弁証」に基づいて治療方針を決定して、それに沿った処方や選穴がしっかりした漢方薬やツボの知識により行われるのです。逆を言えば、「理・法・方・薬(穴)」の大原則に沿って行われる治療が中医学の治療となります。

以上のことから、いい加減な問診であったり、痛い所やコリが在る所や病んでいる所にのみ針を打ったり、この疾患にはこのツボといったような短絡的な選穴の仕方のみの治療は本来の中医学(東洋医学)ではありません。

人を治すには、それなりの理論や手順を踏まないと決して結果はでません。

ましてや、慢性症状を治療するには尚のこと繊細な弁証が必要になってまいります。

 

当院は患者さんと伴に病を治していこうと考えております。

真剣にお悩みの方は、お気軽に当院までご相談ください。

我々も誠意を持ってお答えいたします。

2019/03/11
【内科疾患】自律神経失調症について

よく体がだるかったり眠れなかったりすると、「自分は自律神経失調症ではないか?」と心配される方がいる位 『自律神経失調症』は一般の方もよくご存知の疾患です。しかし、「自律神経失調症って何?」と訊かれると、何となくイメージすることは出来ても明確に説明が出来る方は少ないのではないでしょうか。それは、一言で「自律神経失調症」と言っても様々な症状がありますし、そもそも「自律神経」と言う神経自体は聞き馴染みはあっても、いったいどういう神経なのかがよくわからないからではないでしょうか?

一体「自律神経失調症」とはどのような病気なのでしょうか?まずは現代医学(西洋医学)の観点から説明してゆきたいと思います。

 

 

▼現代医学(西洋医学)から診た「自律神経失調症」▼

医学辞典で「自律神経失調症」を調べてみると【種々の身体的自律神経性愁訴を持ち、しかもこれに見合うだけの器質的変化はなく、原因も不明であり、自律神経失調に基づく一連の病症】と書いてあります。

つまりは、『内臓や食道といった臓器や器官などには異常はなく原因も不明な、自律神経の失調によって現れる様々な症状の総称』であるわけです。ですからこの疾患に関しては、まず自律神経の説明から始めていきたいと思います。

 

 

○自律神経とは?○

自律神経は随意的に働く体性神経と対比して不随意神経とも呼ばれています。例えばボールを足で蹴る時は、脳から足の筋肉へ指令が行く事により足の筋肉が収縮してボールを蹴るわけですが、この時脳から筋肉へ指令を伝える神経が随意神経(体性神経)です。よく皆さんが言う運動神経(体性系遠心性神経)と言うやつです。他には感覚神経(体性系求心性神経)もこの中に含まれます。これに対して内臓・血管・汗腺などは意思による指令ではなく独立して働いております。これらの循環(心拍・血圧)・消化・排泄・体温維持などの体内機能を調節しているのが不随意神経(自律神経)です。これらの体内調節機構が意思から自律しているからこそ、我々は眠っている間も呼吸が止まったりせずに、ちゃんと生きていられるわけです。逆を言えば手や足は意思で動かすことが出来ても、内臓や血管などは意思では動かすことが出来ません。ですから一般 的に言えば「自律神経」は自分の意思でコントロールは不可能と言えます。

 

 

○自律神経の分類○

自律神経は求心性に働く「求心性神経」と遠心性に働く「遠心性神経」に2分されます。「求心性神経」は内臓求心神経とも言い各種内臓の情報を伝えます。「遠心性神経」は更に「交感神経」と「副交感神経」に分かれます。「自律神経失調症」はこの「交感神経」と「副交感神経」が深い関わりをもってきますので、もう少しこれらの神経を説明していきましょう。

 

 

○交感神経と副交感神経○

よく「交感神経は緊張の神経で、副交感神経はリラックスの神経」などと言われます。これは、興奮状態時は交感神経の活動が亢進し、反対にリラックス状態時は副交感神経が亢進すること意味します。例えば交換神経は心拍数増加・血管収縮・発汗促進・などの働きがあります。それに対して副交感神経は心拍数低下・血管拡張・発汗抑制といった具合に働きかけるわけです。もう少し具体的に説明をすると、喧嘩や運動時は交感神経が働き心臓の心拍数が上がります、喧嘩が終わり落ち着いたり、運動やめてしばらくすると副交感神経が働いて心臓の心拍数は下がります。他にもまだまだ沢山の働きがありますが、いずれもこの様にして交感神経と副交感神経はバランス良く一つの器官や臓器に対して反対の方向に働きかけることにより機能の調節をしています。

さて、ここで今まで説明してきたことを簡単にまとめてみます。

 

1.自律神経は不随意神経とも呼ばれ、意思とは独立した働きをしています。

 

2.自律神経は呼吸・心拍・血圧・体温・発汗・消化・排泄などの生体が生きるための最も基本的な体内機能の調整をしています。

 

3.自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、この二つの神経がバランス良く相反する働きをすることで体内機能の調節をしています。

 

ここまでは自律神経の働きについて簡単に説明してみましたが、次に自律神経の失調について説明したいと思います。

 

 

○自律神経の失調について○

「自律神経」の失調とは、「交感神経」と「副交感神経」のバランス調整が上手に行われなくなったこと意味します。先ほども説明しましたが「交感神経」と「副交感神経」は、その時その時の体の常態に合わせてバランスよく相反する働きをすることで体内機能の調節をしています。ところが何らかの原因により、このバランスが崩れると、共に亢進したり不安定になったりしてしまうのです。この様な状態を自律神経の失調状態と言います。

先ほども述べましたが「自律神経」は生体が生きるための様々な体内機能の調整をしています。その様な神経が失調を起こしてしまうわけですから、様々な症状が出る理由は理解していただけたかと思います。

では次に自律神経失調症の症状を見てみましょう。

 

 

○自律神経失調症の症状○

様々な症状がある「自律神経失調症」ですから、ここで全ての症状を紹介することは不可能なので、主な症状を部位 ごとに紹介します。

頭・・・・・・・

頭痛・頭重感

顔面・・・・・・

口の渇き・口中の痛み・味覚障害・耳鳴り

閉塞感・疲れ目・涙目・目の乾き

のど・・・・・・

異物感・イガイガ感・圧迫感・のどのつまり

呼吸器・・・・・

息がつまる・息が出来ない・酸欠・息切れ

心臓・血管・・・

動悸・脈のみだれ・胸痛・立ちくらみ・のぼせ

胸部圧迫感・冷え・血圧の異常

消化器・・・・・

食道のつかえ・異物感・嘔吐・吐き気・腹部膨満感・下腹部の張り・ 腹鳴・胃の不快感・便秘・下痢・ガスがたまる

筋肉・関節・・・

肩こり・痛み・腰痛

手・足・・・・・

しびれ・痛み・冷え・ほてり・震え・ふらつき

生殖器・泌尿器・

インポテンツ・早漏・生理不順・頻尿・残尿感

皮膚・・・・・・

発汗異常・冷や汗・乾燥感・痒み

精神症状・・・・

不安感・恐怖感・イライラ・落ち込み

やる気や集中力がない・ささいな事が気になる

記憶力や注意力の低下・悲観的になる・怒りっぽい

全身症状・・・・

疲れやすい・倦怠感・めまい・微熱が続く

ほてり・食欲不振・不眠・すぐに目が覚める

朝、起きることができない・体温調節不能・失神発作

 

ざっと主な症状を列挙してみましたが、多岐わたることが理解していただけたと思います。

しかし、この症状の中には軽度の鬱や精神疲労によるものもかなり多く含まれていますので、診断は心療内科などの専門医の受診をおすすめします。

 

 

次に、何故「自律神経」が失調をおこしてしまうのかを考えてみたいと思います。

 

○原因・性差・好発年齢○

残念ながら原因はまだ不明です。

しかしながら自律神経のバランスが崩れる要因にストレスが関与しているケースが多いようです。先ほど自律神経は一般 的に自分の意思ではコントロール不可能と述べましたが、実際にはかなり感情の影響を受けていますし働きも変化してきます。ですから「自律神経失調症」の患者さんの約半数はストレスによるものと言われております。そこで始めに自律神経失調症の患者さんのタイプを大きく4つに分類してみたいと思います。

 

1.本体性型自律神経失調症・・・これのタイプは特にストレスとは関係がなく、体質的に自律神経のバランスを崩しやすい方がなりやすい。

 

2.心身型自律神経失調症・・・・ストレスが原因となるタイプ

 

3.神経症型自律神経失調症・・・神経質な方に多く、悩みや不安などのコントロールが苦手な方がなりやすい。

 

4.抑鬱型自律神経失調症・・・・几帳面・完ぺき主義の方がなりやすい。

これらの分類は病気の原因と密接に関係していますので、自分がどのタイプかを把握することで、適切な治療に繋がるばかりではなく予防や再発防止にも役立ちます。

尚、一般に好発年齢は思春期から40歳代の間で男性より女性が多いと言われています。

 

 

○診断○

次に現代医学では「自律神経失調症」をどのように診断してゆくかを簡単に説明したいと思います。

まず、最初に身体に器質的な疾患がない無いことを調べます。次に面 接や心理検査を行い心因の有無を調べ、更に自律神経系の検査を行います。

 

 

○治療○

治療の基本は精神療法になります。そして補助的に精神安定薬、及び自律神経遮断薬などと、体の不調がある部分に対しての薬を使用します。

 

 

○まとめ○

現代医学の観点からみた「自律神経失調症」は理解できましたでしょうか?簡単に言ってしまえば自律神経が失調してしまって起こる不定愁訴の総称ということになります。そして特長として、多岐にわたる症状があるにもかかわらず検査をしても異常がみつからないという点があります。こういった点が一般 の方がこの疾患に対して何となくイメージは出来ても明確にはわからないところではないでしょうか。

 

次に中医学の観点から「自律神経失調症」の説明をします。 

引き続きNOー49をお読み下さい。

 

 

 

 

 

 

医療機関の薬で症状が改善しなくて困っている方はお読みください。

 

自律神経失調症の症状を改善させるには、

まず自分の体質を知ることが重要です。

 

ではなぜ症状改善の為に、体質を知ることが必要なのでしょうか?

体質を見て治療法を決めることは、当院の特徴です。

 

なぜなら、他院では症状に対しての治療を行っています。

たとえば、自律神経失調症の患者さんに薬を投与するなどです。

 

鍼灸治療の場合は一般的に、自律神経失調症の部位に鍼治療を施術するところが多いです。

これらも一つの治療法ではございますが、本質的な原因(起因・素因)に対しての治療が

行われていないので良い結果に繋がらないケースがあります。

 

例えば、素因に虚弱体質が有ればその点にもお手当を加えることにより一層治療効果を高めることが可能になるのであります。

 

故に自律神経失調症でも、ストレス、睡眠不足、過労、食事の不摂生など、原因は様々です。

 

それらは患者さんの体質から引き起こされているので有ります。

ですから、体質を知らないと症状の根本的な原因も分からず、いくら薬を飲んだとしても症状は改善が難しい場合があります。

 

当院ではまず体質を見極めてから、症状改善にベストな治療法を選択しています。

よって患者さんごとにオーダーメイドの治療を行っています。

 

▼中医学(東洋医学)から診た「自律神経失調症」▼

実は中医学では「自律神経失調症」はありません。なぜなら中医学では神経という概念がありませんので自律神経というものが存在しないのです。一見、乱暴な話にも思えますが、中医学は現代医学とは異なり、体内にある臓器や器官と言った物質的なものに注目するのではなく、働きに注目しているからなのです。このような考え方は物心がついた時から現代医学に慣れ親しんでいる我々にはなかなか理解しがたいところですが、つまりは現代医学とは生理感や病理感の概念が全く違うということです。そして、これはどちらが優れていてどちらが劣っているというものではありません。どちらにも得意・不得意があります。ですから病院で治療してみてあまりよい結果 が出なかった時に、中医学の受診をしてみたら治ってしまった、という事が起こるわけです。そして「自律神経失調症」もそんな疾患の一つだと思います。

 

 

○中医学の診察方法○

現代医学では診察をする際、近代的な器械や検査器具などを使用しますが、中医学では四診という手段を用いて診察をします。四診とは、全身や顔色や舌の状態を見る「望診」、声や話し方や臭いから情報を得る「聞診」、患者さんに色々質問して情報を収集する「問診」、脈をとったり、お腹や患部などを触ったりする「切診」、の四つから成り、これら全ての情報を総合して診察をおこないます。この診察方法は現代医学では行われない方法です。「四診」は東洋医学の独特でかつ興味深い方法なのでもう少し詳しく説明しましょう。例えば「脈」についてですが西洋医の先生方も脈をとりますが、診ている観点が違うのです。中医学では脈拍数だけではなく、脈の浮き沈み・太さ・触れ方などを見ます。更に手首で脈をとるのですが、その位 置を若干変えることで病気のある場所を探ったりもします。「舌」に関しても同様で、我々は形・色・苔・湿り気などを見て診察を行っております。現代医学はミクロの医学と言われ、より細かく細かく見てゆきます。その結果 、近代的な検査が必要になり、数値に注目する診察が行われています。それに対して中医学はマクロの医学と言われ、目には見えない働きや体内のエネルギーの歪みや臓器の相互関係や肉体と自然との関係等に注目して診察が行われます。

そしてこの目や数値では測れない体内の歪みを「四診」を用いて診察してゆくわけです。

 

 

○未病という考え方○

最近テレビのCMなどで「未病」という言葉を耳にするようになりました。「身体の調子が悪いので病院で検査をしたのに検査結果 はどこも悪くない言とわれた」といった話をよく聞きます。患者さんとしてみれば体調不良は確実にあるわけですからとても辛い状況です。なんとか治して欲しいと思うわけですが、データーを重視している現代医学では検査結果 が正常値であれば「異常無し」という診断になり治療は基本的には行われません。こういった状態を中医学(東洋医学)では「未病」と呼んでいます。

例えば、検査結果が正常値であっても異常値に近い場合もあるわけです、このような場合は例え正常な範囲であっても身体の不調に敏感な人であれば何らかの症状が現れます。身体の働きに注目する中医学では検査データーが正常値であっても身体の不調は身体の異常と考えます。

つまり、身体に不調があるということは体内のどこかの働きが失調をしているわけです。これは中医学的に言えば体内のエネルギーのバランスが崩れている状態で、身体の中で歪みが起きているわけです。そこで先ほど紹介した「四診」という手段を用いて、何処でどの様にエネルギーバランスが崩れているかを探し歪みを調整してゆきます。ですから「未病治療」「未病予防」は中医学の得意分野の一つなのです。

さて、話を「自律神経失調症」に戻しましょう。先ほど、近代医学から診た「自律神経失調症」で述べましたが、この疾患の特徴は様々な不定愁訴があるにもかかわらず、器質的な異常は無く検査をしても原因が見つからないという点でした。つまりは今説明した「未病」に含まれる部分が多い疾患といえます。

 

 

さて、中医学の観点で症状の説明をする前に少しだけ中医学の生理感について説明をします。

 

 

○中医学の生理感○

・・「気」「血」「水(津液)」・・

人間は基本的に「気」「血」「水(津液)」という3つの物質から出来ています。そして健康な身体は「気」「血」「水(津液)」が多すぎることも、少な過ぎることも無く、適量 な状態で且つスムースに流れていなければなりません。もし、どれかが少なくなったり、流れが滞ったりすると、身体の中で歪みが生じ不調が現れます。又、その状態が長引けば、他の部位 にも影響が出てしまい、症状は更に悪化します。「気・血・水」の各々の作用については病気の症状と照らし合わせて説明したほうがわかり易いと思いますので後述します。

 

・・「五臓六腑」・・

次に内臓について説明します。よく年配の方が「五臓六腑にしみわたる」などという表現をいたしますが、この五臓六腑というのは中医学が考える内臓をさします。五臓とは肝・心・脾・肺・腎を言い、六腑とは胆・大腸・小腸。胃・三焦を言います。五臓六腑の「三焦」以外は皆さんも知っている内臓の名称と同じですね。しかし、その働きとなると現代医学で考える働きとは大分違ってきます。尚、中医学が考える内蔵の働きについても「気・血・水」と同様に病気の症状と照らし合わせて説明します。

 

・・経絡・・

経絡とは簡単に言うと「気」「血」が流れる通路のようなものです。経絡は身体中に何本も走っており、一部例外はありますが経絡の上にツボが存在しております。針灸やツボ押しはツボに刺激を与えることにより、この経絡を通 じて全身や歪みのある部位へ刺激を流しているのです。また、経絡にはそれぞれに臓腑と深い関係のある経絡があります。

 

 

○病因○

病因とは病気を引き起こす原因です。中医学ではこの病因を外因・内因・不内外因の3つに分類します。

 

◎外因とは人体の外部が病因になることで主に環境をさします。「六淫」といい風・暑・寒・湿・乾・熱があります。

 

◎内因とは過度の精神状態が病因になることで「七情」といい怒・喜・思・悲・憂・驚・恐があります。

 

◎不内外因とは飲食の失調・外傷・寄生虫・過労・運動不足などがあります。

 

 

 

○中医学の観点から見る代表的な「自律神経失調症」の症状○

 

現代医学では原因が無い不定愁訴の総称を「自律神経失調症」としてひとまとめに考えたのに対して、中医学ではこれらの症状は全て独立した疾患と考え、個々に原因や病気の機序を診察して治療を施してゆきます。

それでは今から症状の説明をしてまいりますが、症状が多岐に渡るため全てを説明することや各々を深く説明するのは不可能なので、代表的な症状を「気・血・水」「五臓六腑」の働きと照らし合わせながら、簡単に説明をさせていただきます。尚、各々症状の細かい説明に関しては、既に当HPにアップされている疾患については別 記いたします。それ以外については次回の機会に回したと思います。

 

 

■頭痛・耳鳴り・難聴

「肝」はノビノビした環境を好みます。しかし、過度のストレス・イライラなどの状況下では「肝」はノビノビできず「肝の気」がスムースに流れなくなってしまい渋滞を起こします。気や血は渋滞を起こすと熱を生む特性を持っていますので、肝の気が渋滞したことにより熱が生まれてしまいます(肝鬱)。又、「肝」は「血」を貯蔵しており「腎」は水を主ります。

「血」も「水」もどちらも身体の熱を冷やす働きをしています。ところが睡眠不足・過労などにより肝に貯蔵されている「血」や腎の水が消耗してしまうと身体を冷やすことができなくなり熱を生んでしまいます。(肝腎陰虚)

皆さんもご存知のように自然界では熱は上に行きます。身体の中でもこれと同じことが起こります。肝の気の渋滞によって生まれた熱や「血」や「水」の不足によって生まれた熱は上に行き、頭や耳に影響を及ぼすことがあります。熱の影響が頭に及ぼせば頭痛で特に側頭部痛が起こりますし、耳に及ぼした場合は難聴や耳鳴りを起こします。

 

「脾」は運化といって飲食物から「気・血」を生成します。ところが「脾」の機能の失調がおこると水液を気化する力も減退してしまい体内に余分な水分が停滞してしまいます〔脾気虚〕。また、冷たい物や油もののとり過ぎや過度の飲酒も余分な水分を生みます。この余分な水分のことを「痰濁」といい、この痰濁により頭痛や頭重感・耳鳴り・難聴の症状が現れます。頭痛は前頭痛が多いようです、耳鳴りは重く濁った音がして難聴は耳が閉塞してはっきり聞こえません。又、「脾」の運化作用には食べ物から気血を作りそれを上にある肺などに送る働きも含まれます。この気血を上に持ち上げること「昇清機能」と言います。「脾」の運化作用が失調すると気血を生成できなくなるばかりか昇精機能も減退してしまいます。その結果 、頭部の栄養不足が起こり頭痛や耳鳴り・難聴を生じます。〔気血両虚〕

 

「腎」は『精』と言って生命の根本をなすものを蔵するとされています。『精』は両親から受け継いだ「先天の精」と飲食物から作られる「後天の精」により形成されます。『精』は腎に貯蔵されることから「腎精」とも言います。腎精の作用のなかに脳の滋養があります。老化・過労・睡眠不足は『腎精』を消耗させます。『腎精』が消耗すると脳の滋養不足が起こり頭痛や耳鳴り難聴を招きます。(腎虚)

 

 

■乾燥

「水(津液)」は皮毛・臓器・喉・目・鼻・口・耳・舌を潤しており、「血」にも潤す働きがあります。これらを滋潤作用と言い、これらが不足すると目・口・皮膚の乾きが生じます。〔陰血不足〕

 

「肝」は「血」を貯蔵しています。「肝」の「血」を貯蔵する能力が減退すると、「血」の不足が起こり目の乾きが生じます〔肝血虚〕

 

 

■胸痛

「気」は温煦作用といって身体を温める働きがあります。温煦作用が失調してしまうと気・血の流れが経絡で停滞を起こします。(陽虚)

 

「肝」の働きは疏泄といって気・血の流れの調節をしています。肝の疏泄が失調すると気・血の流れが経絡で停滞をお越します。)

 

「脾」の機能失調や油っぽいものや甘いものや味の濃いものを多量に摂取したり、過度の飲酒などにより作られた『痰濁』も気・血の流れを妨害して経絡で停滞を起こします。

経絡の流れが悪くなると停滞を起こした箇所で痛みが生じます。胸部で停滞が起これば胸痛が生じます。

 

 

■動悸・脈の異常・息切れ

「気」には推動作用といって気・血の流れを良くする働きがあります。推動作用が失調すると息切れが生じます。(気虚)

 

「心」は血を全身へ循環しています。「心」が失調することで血が全身を廻らなくなることで動悸・脈の異常・息切れの症状が現れます。(心血虚)

 

「肺」は呼吸をおこないます。「肺」が失調すると息切れ・呼吸がしづらい、などの症状が現れます。(肺気虚)

 

 

■消化器の失調

「血」の滋潤作用の失調が起こると腸が滋潤されず便秘になります。(血虚) 動悸の説明で述べましたが「気」には推動作用があります、推動作用が減退すると押し出す力がなくなってしまい便秘が起こります。(気虚)

辛い物の食べ過ぎや身体の中で熱がこもりやすい体質の人は「胃」に熱がこもり「水(津液)」を損傷してしまいます。その結果 、便秘が起こります。(胃熱)

 

「脾」の働きには「運化作用」といわれ、飲食物から「気」や「血」を作る働きがあります。「脾の運化作用」が失調すると食欲不振・腹部のもたれ感・食後の倦怠感・食後の眠気・軟便・下痢・などの症状が現れます。(脾気虚)

 

「胃」は初期消化の働きをしていますので、「胃」が失調を起こすと、上腹部のもたれ症状が現れます。又、「胃の気」がスムースに流れないと胃部の経絡で「気」が渋滞を起こし、胃腸の張った感じが現れます。更に「胃」は通 常食べた物を食道から受け取り、下にある小腸に引き渡します。これは「胃の気」の流れが上から下に流れることにより食物も上から下に落ちて行っているわけです。ところが何らかの原因により「胃の気」が下から上に流れてしまうことが起こります。この「気」の流れが逆になること『気逆』(胃の場合は上逆とも言う)と言い、「胃の気」の気逆や「胃」に余分な水分が溜まり熱化するとゲップ・食欲不振・悪心嘔吐が起こります。(湿熱)

 

中医学では「肝」が障害されると、それ続いて「脾」「胃」が障害される場合があります(木克土)。これは中国の古代哲学(五行説)の考え方からきたものですが「肝気犯胃」)とか「肝気横逆」といい、ストレスなどで「肝の気」が停滞を起こし、その影響が「脾」に及ぶと下痢になり(肝脾不和)、「胃」に及ぶと「胃気の上逆」が起こります。

長期に渡る病気や疲労により「胃」の中の必要な水分が損傷されると、食欲不振をまねきます。(胃陰虚)又、「脾」と「胃」の気が衰退しても、食欲不振が起きます。(脾胃虚弱)

 

 

■イライラ・怒りっぽい・憂鬱感・ため息・不眠・思考力低下・不安感・多夢・精神疲労

先程も記載しましたが、腎精の作用のなかに脳の滋養があります。「腎精」が不足して脳を滋養できないと精神疲労を起こします。〔腎精不足〕

「血」は精神活動に対しての栄養源になっています。「血」が充実していれば情緒も安定しますが、不足すると不安感・不眠・情緒不安定などの症状が現れます。(血虚)

「心」と「脾」が失調すると血が生まれず不眠になります(心脾両虚)

「肝」は「血」を貯蔵しております。この貯蔵力が減退することで不眠が起こります。〔肝血虚〕又、肝の疏泄が失調して血が全身へ廻らなくなっても精神症状があらわれます。〔肝鬱〕 身体の中の余分な水分が熱化し「心」を犯し不眠をまねきます。(痰火擾心)

ストレスなどにより「肝の気」が停滞を起こし熱化したことにより「心」に影響をおよぼし不眠が起こります。(肝火上炎)

「心」は精神の働きを統括していますので、「心」が失調すると様々な精神症状があらわれます。

臓腑と精神の関係をもう少し詳しく説明すると、「肝」は理性・判断・意思の調節、「脾」は思考・記憶・集中の調節、「腎」は意思・信念・記憶力が宿り、これらを「神」と言い、「心」が「神」を統括しています。

 

 

■めまい・ふらつき・健忘・頭がボーっとする

「血」は脳髄を栄養しています。「血」が不足すると脳髄が栄養されなくなり結果 としてめまいが起こります。(血虚)

 

「脾」の作用には「昇提作用」といわれ、飲食物から作られた「気・血」を上にある「肺」まで送る働きがあります。「昇提作用」が失調するとめまい・ふらつき・健忘・頭がボーっとするなどの症状が現れます。(脾気虚)

 

「腎」は髄を作ります。中医学では脳は髄が集まって出来ると考えますので、「腎」の働きが失調するとめまい・健忘・頭痛や、頭がボーっとしたりします。〔腎精不足〕

 

 

■疲れ易い・無汗・多汗・息切れ・倦怠

「気」には気化作用といって物を変化させる働きがあります。例えば食べた物を「気」や「血」に変化させたり不要な水分を汗や尿に変化させています。気化作用が失調すると無汗や尿が出づらくなります。又「気」は栄養作用といって身体の隅々を栄養しています。栄養作用が失調すると、痩せ・疲れ易い・倦怠などの症状が現れます。その他に「気」には固摂作用といって異常発汗や出血を防ぐ作用があります。固摂作用が減退すると多汗が生じます。(気虚)

 

「心」や「脾」は気血の生成や循環に深く関与します。これらが失調すると疲労や倦怠を感じます。(心脾両虚)又、「腎精」の不足でも疲労や倦怠がおこります。(腎精不足)

 

「肺」は宣発粛降といって「脾」で作られたエネルギーを全身へ散布します。「肺」が失調してしまうと、エネルギーを全身へ送ることができずに息切れや疲れ易くなります。また、宣発には発汗の作用もありますので、失調を起こすと無汗になることもあります。逆に「肺」は発汗だけでなく皮毛や汗孔を閉じ、発汗を抑えることもしていますので失調を起こすと多汗にもなります。(肺気虚)

 

 

■不妊・性欲減退・インポテンツ・早期の閉経

「腎精」により人は発育します。逆に「腎精」が衰えると、老化が始まります。「腎精」がある一定のレベルを超えると精子が作られたり排卵が始まったり性欲がでてまいります。ですから「腎精」が衰えると不妊・性欲減退・インポテンツ・早期の閉経といった症状が現れます。

 

△インポテンツ

身体の中に余分な水分が貯まり熱化し起こります(湿熱)

過剰な精神状態(恐怖)などから「腎」と「心」が犯され起こります(七情内傷)

過度な性交など(房事過度)により「腎」のエネルギーが消耗したり、下半身を冷やしたりしても起こります。(命門火衰)

過度な思い悩みで「心」や「脾」が障害され気血が作られなくなり起こります(心脾両虚)

 

 

■体温調節不能

「気」の温煦作用が失調すると手足の冷え・寒がり・などの症状が現れます。(気虚・陽虚)

 

代表的な「自律神経失調症」の症状を中医学の見地から「気血水」や「五臓六腑」の生理作用と照らし合わせながら説明してみました。今回は症状が多岐にわたったため簡単な説明になってしまいましたが、今回皆さんに一番理解して頂きたかったのは、「自律神経失調症」を現代医学と中医学の二つの視点で見たときに、全然違う観点で診察をしてゆくという事です。又、それぞれの症状はどのような機序でおこると中医学では考えるかをイメージできていただけたらと思います。

どうでしょう、理解して頂けましたでしょうか?

 

皆さんの中に「自律神経失調症」と診断され症状が改善されない方や、体調が優れないのに検査をしても異常が見つからないでおられる方は、是非一度別 の視点から身体の歪みを診てみてはいかがでしょうか?

 

***今回の症状で既に『病気別・わかる東洋医学診断』にアップせれている疾患のナンバーです

うつ・・・・・・・NOー9

過敏性大腸炎・・・NOー17~18

不眠・・・・・・・NOー21

冷え症・・・・・・NO-39

高血圧・・・・・・NO-42

ストレス・・・・・NO-43

未病・・・・・・・NO-44

めまい・・・・・・NO-47

 

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