コラム
- 2019/02/20
- 習慣性流産
習慣性流産とは、3回以上連続する流産あるいは、早産をいいます。
主な症状に、胎盤がはがれかけるための「性器出血」と、子宮収縮のための「下腹部痛」がみられます。
中医学では「滑胎」(胎児が滑る)といい、体の中のエネルギー不足によって胎位 を維持していくことができないと考えます。
流産の徴候がなく、感染症や頚管ポリープ、器質的異常などの問題がない、初期の出血や下腹部痛は、漢方薬や鍼灸治療が有効といえます。
また、流産直後および妊娠初期から継続して鍼灸治療を受けることにより、自然な状態で流産や早産の予防ができ、胎位 の安定感が得られるとともに、妊娠中にあらわれやすい(つわり、便秘、痔、足のむくみ、脇腹の脹り、疲労感など)諸症状を緩和してくれます。
その他、エネルギーの流れがスムーズになるため情緒の安定感を図ることができ、胎児も健やかに成長していくことができます。
●流産とは・・・
妊娠22W(6ヶ月半ば)未満に、胎児が生まれても生命が維持できない段階で生まれてしまうことをいいます。この時期に生まれてしまった赤ちゃんは、助けることが難しいのが現状です。
~現代医学的診断・治療方法~
<原因>
母体側:子宮の異常(位置、大きさ、形)、頚管無力症、子宮筋腫、卵巣嚢腫、母体の病気(腎臓・心臓の病気、感染症)
母体を中心にした環境:過労、転倒
胎児側:受精卵の染色体異常、重大な形態異常、子宮外妊娠や胞状奇胎
<治療>
梅毒やトキソプラズマ症といった感染症が原因と思われるときは、その病気の治療を受けます。
子宮の形や位置の異常、頚管の裂傷や閉鎖不全症などは手術療法が考えられます。
特に、妊娠の中期にいつも自然に陣痛が起こり破水してしまうようなタイプの習慣性流産の場合は、子宮頚管縫縮手術という手術を行なうことにより80~90%は無事に出産を迎えられます。
●早産とは・・
妊娠22W以後、37W未満で出産してしまうことをいいます。この時期には胎児の発育が完全ではなく、死産になったり、生まれても育ちにくかったり、育っても心身に障害を残したりすることがあります。
~現代医学的診断・治療方法~
<原因>
母体側:過労、精神的ストレスなどの環境的なもの、事故やけがなどの外傷
産科的な異常の閉鎖不全症(頚管無力症)、妊娠中毒症、前期破水
胎児側:重大な奇形、多胎妊娠、逆子、前置胎盤
<徴候>
お産と同様、出血と陣痛とで始まりますが(破水が先に起こることもあります)。
その前に注意して診察を受けられると子宮口が開きかかっていることがわかる場合が多いようです。
<防止>
上記の徴候で見られる切迫流産では、入院して安静をとり、陣痛を抑える薬剤の内服や注射で早産の防止を図ります。
▼中医学的流産・早産のとらえ方▼
中医学では主に「腎」が生殖機能と深く関わっています。
腎の働きが低下することにより、気の働きの一つである『固摂作用』の減退症状があらわれます。
固摂作用とは、血や汗、尿などが不必要に体の外に漏れ出さないようにしたり、出血を抑えたり、臓器や胎児を正常な位 置に保つ働きをしています。
(固め、状態を維持する働きです)
腎のエネルギーが不足することにより、早産、流産、頻尿、尿失禁、脱肛、腹部の下垂感などの症状がみられます。この状態を「腎気不固」といいます。
原因は様々ですが、流産、早産を起こしやすい方の大半は、腎のエネルギー不足が根底にあると考えられています(詳しくは下記の~臓腑の働き~を参照して下さい)。
▼中医学的からだのしくみ▼
~「気」「血」「水」とは~
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、
これらの3つが体内に十分な量で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。
もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。
さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。
~臓腑の働きとは~
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。
ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。
「肝」・・
①
全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。
伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに影響を与えます。
この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。
②
全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。
肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため肝の支配している器官の機能減退症状があらわれてきます。
例)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足の震えやしびれ、筋けいれんが起こりやすくなったりします。
婦人科疾患としては、無月経、不妊症、月経前の乳房のはった痛み、ストレスにより月経周期が早まったり、遅くなったりする。
「脾」・・
①
食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。
②
エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。
働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。
③
血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。
婦人科疾患として見られる症状は白いおりものが多くでる、黄色っぽく臭いおりものがでる、不正出血、月経が早まる、子宮下垂。
「腎」・・
生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。
「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。生まれたときにこのエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの発育不良の状態があらわれます。
「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。
例)骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる、婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい。
▼中医学的診断方法▼
妊婦さんの体質や妊娠した際にあらわれた特徴的な症状などから、流産や早産を引き起こしやすい原因を見極め、治療方法を決めていきます。
そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。
その他、妊娠前の月経状態(周期・期間・月経量・質・色、月経に伴う不快な症状など)などからも体の中の状態を把握することができます。
さらに、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)、仕事場での環境状態を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。
その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。
▼ 中医学的習慣性流産のタイプと治療方法▼
●腎気不固タイプ●
生殖機能の源である腎のエネルギー不足のため、胎位を維持することができずに流産を繰り返すタイプです。 習慣性流産のなかで、もっとも多いタイプです。
○主な原因
生まれつき虚弱体質、長期間の過労、慢性病、性交過多による腎エネルギーの損傷
○随伴症状
流産の既往がある、妊娠後に腰や膝がだるく無力、下腹部が下がってくるように感じる、めまい、耳鳴り、頻尿あるいは尿失禁、性器出血
○月経の特徴
周期:早まる
血量:多い
色 :薄い赤色
質 :薄くさらさらしている
○治療方法
腎のエネルギーを益し、胎位の安定感を図る「補腎固胎」の治療をしていきます。
●脾気虚タイプ●
食物からエネルギー(気)を生み出す源である「脾」。
この2つの臓器の働きが失調することにより体を養う気や血が作りだせないため、胎児を養うことができず、流産を繰り返すタイプです。
主な特徴として、体全体の機能減退症状がみられます。
○主な原因
生まれつき虚弱体質、飲食の不摂生、過労、あれこれ思い悩むことが多い。
○随伴症状
流産の既往がある、妊娠後に顔が黄色くむくむ、下腹部が脹って下がってくるように感じる、倦怠無力感、吐き気、嘔吐をもよおす
息切れ、話すのがおっくう、味を感じない、食欲不振、泥状もしくは水様便
○月経の特徴
周期:早まる
血量:多い
色 :淡い、薄め
質 :さらさらしている
○治療方法
エネルギーを増やし、胎位の安定を図る「補脾益気」、「固胎」の治療をしていきます。
●陰虚火旺タイプ●
陰陽のバランスが崩れることにより、体の不調がでてきます。
体を養う血、潤す働きの水(陰の部分)が不足し、体の中の陽気が相対的亢進してしまうためにあらわれる症状です。
そのため陽気が盛んになり胎動もその影響を受け活発に動き、流産や早産をまねきやすくなるタイプです。
○主な原因
精神的ストレス、疲労、徹夜が多い(または就寝時間が遅い)、性交過多により体の精や血を損傷する
○随伴症状
流産・あるいは早産の既往があり、妊娠後に痩せる、両頬部の紅潮、手足がほてる、口が乾く、腰がだるく痛む、性器出血
○月経血の状態
月経周期:早まる
量:少ない
色:紅い
質:少し粘る
○治療方法
体を養う血、潤す働きを高め、「滋陰降火」「固胎」の治療をしていきます。
▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼
自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。
●腎気不固タイプ●
【生活習慣】
・
過労を防ぐことが第一です。
・
消化器をいたわるような食生活も大切です。消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
・
穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
・
ダイエットによる食事制限は禁物です。
【食べ物】~主に腎のエネルギーを補う食べ物を多く摂りましょう~
(穀類)うるち米、粟米、小麦製品
(豆類)大豆や大豆製品、牛乳
(肉類)牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜)山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参
(魚類)いか、貝柱
(果物)栗、もも、さくらんぼ
(木の実)くるみ、なつめ、黒ごま、クコの実
(お茶)杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶
●脾気虚タイプ●
【生活習慣】
・
消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
・
消化が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。
・
スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
・
頭や目の使いすぎは血を消耗させてしまうので、この時期は極力長時間パソコン作業や、夜遅くまでの勉強、仕事は避けましょう。
・
ダイエットによる食事制限も禁物です。
【食べ物】~エネルギーを益す食べ物を摂りましょう~
(穀類)うるち米、粟米、小麦製品
(豆類)大豆や大豆製品、牛乳
(肉類)牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜)山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参 (魚類)いか、貝柱
(果物)なつめ、もも、さくらんぼ
(お茶)杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶
~体を冷やす食べ物、辛い食べ物、油っこく味の濃い食べ物は胃を刺激し気を消耗させるので避けましょう~
辛い食べ物・・青唐辛子、ねぎ、コショウなど
冷やす食べ物・・すいか、バナナ、イチジク、なし、苦瓜、薄荷など
●陰虚火旺タイプ●
【生活習慣】
・
イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、ヨガや気功などの呼吸法やストレッチでリラックスできる時間を作りましょう。
その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。
・
お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。
・
体を養う血の消耗につながる生活は避けましょう。
睡眠はしっかりとり、血を消耗させやすいパソコンの使いすぎ、テレビの見すぎ、夜更かしは避けましょう。
・
血を補い、体を潤す働きのある食べ物を摂るよう心がけましょう。
【食べ物】~体を冷まし、潤す作用のある食べ物を摂りましょう~
(乳製品)豆乳、牛乳
(肉類)豚の皮、鴨肉、豚肉
(魚介類)いか、牡蠣、すっぽん(とくに甲羅の部分)
(野菜)山芋、白きくらげ、黒きくらげ
(果物)なし、もも、ぶどう
(木の実)クコの実、くるみ、黒ごま
(お茶)桑の実とクコの実のお茶
~体を温める作用のある食べ物は熱を生み、症状を助長させますので控えめにしましょう~
(穀類) もち米
(肉類) 羊肉、鹿肉、牛肉
(魚介類)えび、なまこ
(野菜) にら、ねぎ、ししとう、かぼちゃ、しょうが、にんにく
(木の実)栗
(香辛料)酒、シナモン、黒砂糖、ウイキョウ(フェンネル)
▼その他日常生活での注意点▼
・妊娠をしたときには
1. 安静療養する
2. リラックスを心がける(常に不安がつきまとうので)
・過労、睡眠不足、精神的ストレスによる心身の疲労は症状を悪化させます。ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功、など)、軽い散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。
・栄養バランスの摂れた食べ物、特にカルシウムやビタミン類はをしっかり摂り、十分な睡眠をとりましょう。
★ 流産をしたあとは、産後と同じように「気」や「血」が極端に不足し、子宮や卵巣の血流が悪くなり、疲れた状態になっています。同時に体調の悪さと相まって不安感や後悔の念も強くなりがちです。次の妊娠につなげるためにも、できれば流産の直後からケアをされるとトラブルは起こりにくくなります。
産後の養生と同じような養生が必要です。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
◎当院での治療をお考えの方へ◎
= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに慢性化した、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。
当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。
これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。
しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。
少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。
- 2019/02/20
- 食欲不振
“食欲”とは、食べ物の摂取、エネルギー消費、排泄という生理作用を円滑に営み、生命を維持する為の“本能的食欲”と、視覚・味覚・触覚・嗅覚・聴覚などの感覚器からの刺激によって生じる“精神的食欲”があります。
それらの食べ物への欲求が低下・消失した状態を“食欲不振”といいます。
何故食欲がなくなるのか、現代医学と中医学の視点から、それぞれ説明してみたいと思います。
【現代医学的な捉え方】
空腹状態にありながら、食べ物に対する欲望が起こらない状態を“食欲不振症”といいます。
食べ物を摂取するのは、空腹感と満腹感のバランスによるものであり、大脳の視床下部にある食欲中枢によってコントロールされています。
食欲中枢には、満腹を感知する満腹中枢と、空腹を感じる摂食中枢があります。
人間の体は、血糖(血液中のブドウ糖の量)が下がると摂食中枢が刺激されて食欲が起こります。
空腹による“胃の飢餓収縮”も食欲に関与しています。飢餓収縮とは、胃内が空の状態で時間が経過すると、胃は収縮を起こします。これを飢餓収縮といいますが、この収縮が起こると胃に分布している迷走神経(副交感神経)を通 して摂食中枢に伝えられて空腹感を感じます。
食後に血糖が上がると満腹中枢が刺激されて満腹感を感じます。また、食べ物を十分に摂ると胃が伸張されて、この刺激が迷走神経を通 して満腹中枢に伝えられて摂食中枢を抑制します。
そして食欲は、情緒や食べ物の記憶、視覚、嗅覚などの影響を強く受けます。
食欲不振は、消化器疾患に最も頻繁に認められる症状です。慢性胃炎、胃ガンなどの胃疾患のほか、急性肝炎、肝硬変、慢性膵炎、慢性胆嚢炎などほとんどの消化器疾患でみられます。一般 に、低酸状態(胃酸の塩酸分泌量が低下した状態)が多く、随伴症状である悪心・嘔吐・下痢・下血・腹痛などを参考にして原疾患を診断していきます。
対症療法として、苦味薬、芳香性健胃薬や消化薬が用いられます。
“苦味薬”とは、苦味によって舌の味覚神経末梢に作用して、反射性に唾液・胃液の分泌を促します。ゲンチアナ・オウバク・オウレン・センブリ・ホミカなどがあります。
“芳香性健胃薬”とは、芳香(におい)によって嗅覚を介する反射と、胃粘膜に対する刺激作用によって、胃の分泌機能を高めて胃腸管の運動を促します。トウヒ・ウイキョウ・ケイヒなどがあります。
消化器疾患の他に、内分泌疾患・腎疾患・循環器疾患・高度の貧血・薬剤の副作用・神経性因子などでも食欲不振は引き起こされます。
【中医学的な捉え方】
最初に、中医学的な人体の考え方について説明します。
人体には“気・血・水”と呼ばれる「人体を構成して生理活動を活発化させる基本的物質」が巡っています。
~気・血・水について~
○気・・・
気は体内を流れるエネルギーの1つです。消化・吸収・排泄を正常に行なう、血を巡らせる、体温を保つ、ウィルスや細菌から体を守る、内臓を正常な位 置に保つなど、体の生理機能を維持する働きがあります。
○血・・・
いわゆる“血液”という意味のほか、“気”とともに体内を流れて、内臓や組織に潤いと栄養分を与え、また精神活動(気持ち・気分・情緒・感情)を支える物質でもあります。
○水・・・
体内を潤すのに必要な水分のことです。胃液・唾液・細胞間液・リンパ液・汗なども含まれます。体表近くの皮毛・肌膚から、体内深部の脳髄・骨髄・関節臓腑までを潤します。
気・血・水の生成や代謝は“五臓六腑”と呼ばれる臓器によって行なわれます。
五臓と六腑は、よく一緒に語られますが役割は異なります。
六腑は、“胃・小腸・大腸・膀胱・胆・三焦”の総称です。
六腑というのは、水穀(飲食物)を消化して、身体に有益な物質である“水穀の精微”(これが気・血・水の生成材料になります)と、不必要な物質である糟粕(カスのことです)とに分け、“水穀の精微”を五臓に受け渡し、糟粕を大・小便に変えて排泄を行なう臓器です。
六腑のうち、口から摂取された水穀が最初に運ばれる臓器が“胃”です。
胃が水穀を受け入れて(これを受納といいます)、消化し(これを腐熟といいます)、消化物を下方の臓器に渡す(これを和降といいます)という3つの働きをします。
小腸は、胃の下にある臓器で、胃で消化された水穀を人体に有益な“水穀の精微(清)”と“不要な糟粕(濁)”とに分別 します。
そして分別した“清”を脾に運び、“濁”をさらに水分とそうでない物に分けて膀胱と大腸に移します。大腸と膀胱は“濁”をそれぞれ大・小便にして排泄します。
また、胆は肝で生成された胆汁を小腸に分泌して、消化を助けています。
三焦は、臓腑機能を統轄して、水分や気を運行させる通路の働きをしています。
“五臓”は“肝・心・脾・肺・腎”の総称です。
五臓は、六腑から水穀の精微を受け取り“気・血・水”を生成し貯蔵する臓器です。
~五臓について~
○肝・・・
肝は血を貯蔵する働きのほか、全身の“気”のめぐりをコントロールして、精神・情緒を安定させる作用や、筋肉・目の働きを維持する働きがあります。
○心・・・
血を全身に送り出すポンプの作用のほか、脳の働きの一部を担っていて、情緒や感情といった“こころ”とも関係が深い臓器です。心の機能が充実していると精神状態が穏やかで、情緒が安定し、思考能力も活発になります。
○脾・・・
消化に関わる機能すべてを含んだ臓器です。食べたり飲んだりしたものを、体の役に立つエネルギー(気)に変える役割があります。また、血を脈外に漏さないようにする働きや、味覚をはじめとする口の生理機能を維持する働きもあります。
○肺・・・
肺は呼吸を行ないます。きれいな空気(清気)を体内に取り入れ、汚れた空気(濁気)を体外に出す働きがあります。
また、皮膚や口、鼻などの体表面に細菌やウィルスや有害物質などから体を守るエネルギーのバリア(衛気という気)をはりめぐらせて感染症から守る働きもあります。
○腎・・・
腎には体内の水分代謝をコントロールして不必要な水分を尿として排泄させる作用があるほか、成長・発育・生殖・老化に深くかかわる“精”を蓄える臓器でもあります。
☆精とは・・・
体を構成する栄養物質や生命エネルギーの総称です。 腎に蓄えられて、人の成長・発育を促進し、性行為・妊娠・出産などの性機能や生殖機能を維持する働きがあります。
そして、気・血が流れる通路として人体の上下・内外を貫いて五臓六腑を交流させている 通路のことを“経絡(けいらく)”と呼びます。
中医学には神経という概念がなく、経絡が循環・伝達系の役割を果たしているといえます。
中医学では、人体は“気・血・水”がスムーズにめぐって、必要なところに必要なだけあり、五臓六腑が正常に機能している状態を“健康”と考え、どこかのバランスが崩れた状態が“病気”と考えます。
鍼灸治療は、崩れたバランスを整えることを目的とした治療法なのです。
バランスを崩す原因(病因)には、外因・内因・不内外因があります。外因とは、外界の環境因子(気候の変化など)、内因は感情や精神状態など、不内外因は食生活や過労などの生活習慣のことです。
これらの病因が、気・血・水のバランスを崩し、五臓六腑の働きを失調させることで病気になると考えます。
中医学独特の診断方法で、何の病因で、気・血・水のいずれが、どのようにバランスを崩し、五臓六腑のどの臓器が、どのように失調したかを見極め(これを弁証といいます)、治療方法を決める(これを論治といいます)ことを“弁証論治”といいます。
では、食欲不振について、弁証論治別(タイプ別)に説明したいと思います。
●“肝胃不和”による食欲不振
これはストレスを受けたり、緊張したり、イライラや不安などの感情の変化があると 食欲がなくなるタイプです。
肝には気をめぐらす働き(疏泄作用といいます)があり、この働きによって脾・胃の運化 (消化・吸収)作用や、胆の胆汁分泌を促し、消化活動を調整しています。
ストレスなどによって、肝の疏泄作用が失調することで、脾・胃の運化作用が失調します。
そして、胃の受納機能(食べ物を受け入れること)が障害されて食欲不振となります。
ムカムカして食べたくなくなるほか、ゲップ・吐き気・抑うつ感・胸苦しい・胸脇が張って苦しい・病状が感情の変化に関連しているのが特徴です。
(治療方針)
疏肝和胃・・・
肝の疏泄を調整すると同時に、胃の受納や和降(食べた物を腸に下ろす働き)機能を改善させる治療です。
●“脾胃湿熱”による食欲不振
体内に余分な水分である“湿邪”と、さらに熱の性質を持つ“熱邪”が加わったことで 食欲がなくなるタイプです。
暴飲暴食や、刺激物や、味の濃いもの、アルコールの飲み過ぎ、甘いものの摂り過ぎは、脾の働きを低下させてしまうので、余分な水(湿邪)が体内に滞ってしまいます。
これによって、胃の食べ物を受け入れる働きが低下して、食欲不振となります。
また、食欲不振のほかにも油物や、臭いのあるものを前にすると吐き気がする・胃の辺りが張る・口が粘る・口が苦い・身体が重い・尿が濃くて少ない・便秘あるいは軟便、下痢・おりものが黄色(粘性・有臭)などの症状も見られます。
(治療方針)
清化湿熱・益気健脾・・・
胃腸に停滞した湿熱を清化し、脾の運化(消化・吸収)機能を促すことによって、胃の受納機能を改善させる治療です。
●“食滞”による食欲不振
食べ物が停滞しているタイプで、一時的な食べ過ぎでよくみられるタイプです。
暴飲暴食や、もともと胃腸の弱い人が疲労時に消化の悪い食べ物を食すことで、飲食物の停滞が起こり、胃の降濁作用(消化した飲食物を小腸に送る働き)が失調します。
胃がスッキリしなくて食べたくない症状のほか、胃の辺りが張って痛い・臭いゲップ・ガスが出る・便秘または下痢などがみられます。
(治療方針)
消食導滞・・・
胃腸に停滞する消化物を除去して、運化機能や受納機能を改善させる治療です。
●“胃陰虚”による食欲不振
胃が陰液(滋養する水分のこと)不足により、滋潤能力が失調して、咽喉や腸を潤すことが出来ず降濁作用(消化したものを小腸に送る働き)が低下することで起こるタイプの食欲不振です。
空腹感はあるが、食べる気がしないほか、食べるとすぐ満腹感がある、上腹部の灼痛・ 胸やけ・つかえ・便秘・コロコロ便などの症状がみられます。
(治療方針)
滋陰養胃・・・
胃を滋養して受納機能を回復させる治療です。
●“脾胃虚弱”による食欲不振
過労や、慢性疾患、精神性のもの(思慮過多)などで、脾の気を消耗することで、運化 (消化・吸収)機能が低下して起こるタイプの食欲不振です。
空腹感のないのが特徴で、食べるとすぐに胃が膨満感になる・泥状便(ベットリとした便)、疲労によって症状が増悪などがみられます。
(治療方針)
益気健脾・・・
消化機能を改善させる治療です。
●食養生
日本の夏は、暑さと湿気が特徴です。暑さで汗をかくと共に“気”も消耗します。
そのため、疲れる・だるい・やる気が出ない・・などの夏バテの症状が現れます。
また、湿気によって体内にも余分な水が溜まりやすくなります。この“湿”は胃腸にダメージを与えるため食欲不振や消化不良をまねき、疲れやだるさを悪化させる要因にもなります。
こんな季節は、“気”を補う食材と、余分な水分を出す食材を取り入れてください。
“気を補う食べ物”
豆類・・・・・
大豆、枝豆
ネバネバ系・・
オクラ、長いも、わかめ、納豆
香りもの・・・
青じそ、しょうが、みょうが、玉ねぎ、セロリ、にんにく
その他・・・・
梅干、しじみ、いか、たこ、うなぎ、ごま、かぼちゃ、酢など
“余分な水分を出す食べ物”
きゅうり、とうがん、とうもろこし、そば、海草、豆類、香り野菜 など
また、この季節は冷房による夏冷えも、体調を崩す原因の1つです。体を温める食材を摂りましょう。
“体を温める食べ物”
かぼちゃ、ニラ、ねぎ、にんにく、しょうが、赤唐辛子、青じそ など
暑さで体に熱がたまった時は、冷たい食事や飲み物を多く摂るのではなく、体の熱を取ってくれる食材(主に旬の野菜)を積極的に摂りましょう。
“体の熱を取る食べ物”
きゅうり、とうがん、にがうり、トマト、なす、セロリ、もやし、すいか、メロン、豆腐、春雨、そば、 など
食欲がない時は、消化器官の働きが低下しています。
“よく噛んで、ゆっくり食べる”“冷たい飲み物はゆっくり飲む”“食べ過ぎない(腹八分)”
“疲れをためない”“気分転換をする”など、胃腸を労わることが大切です。
また、食欲不振の原因は多く考えられます。安易な自己判断をせずに、長引く時は検査を受けることをお勧めします。
中医学鍼灸は、一般的な局所治療鍼灸と異なります。
症状のタイプ別や、細かい体質、或は症状の起因を見極め手当てをおこなうところに大きな特徴があります。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/02/20
- 寝違い
朝目が覚めたときに首に痛みが出ていて、とくに動かすと痛みが増すといった経験をされたことはないでしょうか?
このような状態をいわゆる「寝違い」と言います。寝違いとは医学用語ではなく首周辺の靭帯や筋肉の急性炎症による痛みの総称としてとらえたほうが良いかと思います。
原因
不自然な姿勢で眠り続けたときに起こります。
通常は首に痛みが生じたり、違和感を覚えた場合には目が覚めたり、無意識のうちに首の姿勢を変えますが、疲労や睡眠不足、あるいは泥酔状態で寝てしまうとこれらの反応がなくなり、不自然な姿勢で寝続けることがあります。
または、窮屈なソファーで寝たり、いすに座ったまま不自然な姿勢で寝てしまったときに起こります。
治療として
軽いものならばシップや消炎鎮痛剤を使って安静にしますが、重い場合にはカラーで固定していく場合もあります。
その他には電気療法や温熱療法も用いるケースもありますが、だいたいは2~3日から1週間で症状は治まります。
中医学的観点から
中医学では寝違いは「落枕」と言います。枕から落ちるなんてなんとなく想像できますよね。急性で、単純に頚部の筋肉がこわばって痛み、運動範囲の制限などが出る状態を言います。
原因として、睡眠時の姿勢が悪い、枕の高さが合わない等で頚部の筋肉に長時間にわたってストレスが加わるとおきます。
また風寒を感受(冷えた)したために局部の経脈の気血が滞り、頚部がこわばって痛むこともあります。
「風寒」とは→中医学では外から体の中に入ってきて様々な病気を引き起こすものを「外邪」といいます。
「外邪」には「風」、「暑」、「湿」、「燥」、「寒」、「火」と六つの異なったタイプのものがあります。
その中でも「風」は陽の性質をもち上向き、外向き、また上半身を傷つけやすくなってます。また、ほかの「外邪」と連合しやすく、特に「寒」と結びつく場合には痛みとなってあらわれやすいです。
「寒」は筋肉を引きつらせたり、ひとつの場所にとどまって痛みを引き起こす性質があるからです。
「経脈」とは→人の体には「気血」を巡らすためのルートが存在します。
メインとなる大きいルートはそれぞれ14本。その中には首周辺にいっているものもあります。
「気血」とは→「気」とは人が生理活動を行う際に必ず必要となるエネルギー源で、正常ならば絶えず経脈を流れています。
「血」とは体の各部を滋養してくれているいわば栄養分です。
内臓、筋肉、皮膚などが正常に潤って働けるのは、この「血」が「気」と一緒に「経脈」を流れているからなのです。
治療として、基本的に「じょ筋活絡」、「経絡止痛」という考え方を用います。 これはこわばった筋肉をゆるめてそこを通っている「経脈」を通し、その「経脈」の中に「気血」が巡るようにすることです。
中医学では「気」が巡らなくなると「不痛則痛」(通らぬものすなわち痛む)という状態になるので、そこを改善するわけです。
治療で使うツボとしては、首周辺のこわばっている場所だけではなく、先ほども出てきたように首周辺を走る「経脈」は、手や背中のほうにも行っているのでそこの反応点や経験穴を使います。そして、あまりに痛みが強く首が回らない状態では、手の甲に「落枕」という特効穴があるので、そこを鍼で刺したまま徐々に首を動かして痛みが緩んできたところで、ほかの場所に鍼を刺していきます。
また「風寒の邪」のが入っている場合には、体を温める作用のあるツボをプラスしてあげると良いでしょう。
寝違いの予防としては、普段から自分に合った枕を使うということ。ソファーや机に寝ないように気をつける。暑い夏の季節、クーラーには注意をしてあまり首を冷やさないということも大事です。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- 2019/02/20
- 尋常性白斑
尋常性(じんじょうせい)白斑(はくはん)について
白斑とは突然皮膚の色が抜け、白い斑点ができるものです。
白ナマズなどとも呼ばれたりします。
白斑は後天的なもの(遺伝的ではない)で、発症は子供から高齢者までの幅広い年齢層に発症します。
美容的な皮膚の問題以外身体への影響はない病気ですが、三大難治皮膚病とも言われなかなか治りにくい皮膚病です。
皮膚疾患は症状としては表面に出ていますが、西洋医学的にみても、中医学的にみても免疫や臓腑との関係が深いものがたくさんあります。
中国では西洋学的な治療だけでなく、中薬(漢方薬)と針を中心として治療する病院もあり、皮膚疾患でも身体全体を治療して病気を治療しています。
<西洋医学的な白斑病の考え方>
白斑病は始めのうちは、親指の先ほどの小さな白い斑点(白斑)が2~3個できます。
そして次第に数が増え、範囲が広がっていきます。
白斑病はA型(汎発型または進行性)白斑とB型(神経分節型)白斑の2つに分類します。
それぞれ経過と予後が異なりますので分けてお話していきます。
○A型(汎発型)白斑病
白斑病は、まず2~3個の指先ほどの小さな白斑から始まります。
徐々に数が増え、放っておくと全身に広がっていきます。
顔面、体幹部、手足などどこにでもできますが、特にシャツの襟で擦れる首やベルトや下着で擦れる場所に左右対称に発症します。
身体の両側、全身にでる。
発症する年齢は、子供から老人までの全ての年齢層にでます。
原因――汎発型の場合、自己免疫現象であると考えられています。
本来は免疫機能とは外部から身体に不利益な異物が入ってきたときに、攻撃して異物の力を弱めて排除することですが、このA型白斑の場合は、その免疫機能が自分自身の色素細胞(メラノサイト)を異物と誤って認識して攻撃し、色素細胞が破壊されてしまうために色が抜けてしまったということです。
この自己免疫現象がおこる理由はまだハッキリとはしていませんが、ウィルスによるものや、ストレス、環境の変化などが原因であると推測されます。
白斑が進行して広がる原因としては、お風呂で身体を過度に洗いすぎたり、また石鹸が残っていたり、お茶やコーヒー、お酒などを飲みすぎたり、衣服のすすぎ残しの洗剤や化学物質などが悪い影響を与えると考えられています。
また、中には甲状腺の機能亢進によるものやリウマチなどの膠原病などが原因になっているものもありますので、皮膚以外に症状がある時は検査が必要です。
治療――自己免疫現象の原因がはっきりとしないため、治療法も原因に対する治療ではなく、抜けてしまった皮膚の色素を復活させる対症療法になります。
進行性白斑は初期、早期での治療が重要です。
何年もたった白斑病でメラノサイトが完全に壊れてしまってからは、治療効果 は期待できません。
①ステロイド療法…初期にはステロイド外用薬に反応して色素再生がおこります。
また、白斑が増加拡大する時にステロイド薬を服用すると進行を停止、色素再生させる効果 があります。
②紫外線照射:PUVA(プーバ)療法…PUVAとは光感作物質であるソラレン(P:psoralen)を外用または内服して、その後で長波長紫外線(UVA:ultraviolet A)を照射する治療法です。
毛嚢(もうのう)に残っているメラノサイトを刺激して色素産生を促す方法なので、毛嚢のない部分での治療効果 は低い。
過剰照射による副作用の注意や、適切な目の保護などが必要なため専門医での治療が必要です。
これらの治療法は併用しても行われます。
それぞれ3~4ヶ月で効果がなければ中止します。
③レーザー療法…レーザーにはエネルギーの種類や密度によって、特定の細胞を狙って細胞を破壊したり、逆に活性化したりする作用があります。
やはりメラノサイトに働きかけ細胞を活性化させます。
ステロイドやPUVAよりも身体にかかる負担は少なくなりますが、レーザーの種類によっては保険適応外になるため、専門医との相談、治療が必要となります。
いずれの治療にしても、白斑の場所を目立たないようにする対症療法ですが、根気よく治療する必要があります。
○B型(神経分節型)白斑病
片側の神経の走行に沿って白斑が現れます。
若年に発症しやすい特徴があります。
数ヶ月から数年で神経の分節いっぱいに広がって、その後は同じ状態が続きます。
この神経分節型の白斑の発症の発症はとても少ないです。
原因――詳しいことはまだ不明ですが、末梢の神経とメラノサイトがつながっているので、神経からの伝達物質の低下や異常が考えられています。
治療――神経分節型白斑は、ステロイド療法や紫外線照射療法の効果 があまりなく、治りにくいのが特徴です。
しかし、発症後数年で進行が止まるのと、神経の支配している範囲に限局されているために皮膚移植が行えます。
①表皮移植手術…白斑の進行が止まった後、メラノサイトがある正常な皮膚を白斑の皮膚に移植します。
数週間から数ヶ月で正常な皮膚の色に戻っていきます。
西洋医学ではこのような分類、治療になります。
治りにくい皮膚病ではありますが、美容的、心理的な問題がある以外は身体の方には実害はありません。
これらの治療で残ってしまったものや、治療の時期を逃してしまったものなどは化粧品で色をつけることになります。
<中医学的な白斑病の考え方>
白斑病は中医の中では「白癜(しろなまず)」「白癜風(はくでんぷう)」「白駁(はくばく)」などと呼ばれています。
※中医学のお話しをする前に、ホームページのトップページのやや下にある「わかりやすい東洋医学理論」の中の中医学の陰陽、生理観、気血水(津液)、内臓(五臓六腑)、経絡を読んでいただきたいとおもいます。
西洋医学では自己免疫が原因と考えられていますが、中医学でも外的な影響もありますが、身体全体の病的状態が皮膚にも影響して皮膚病が起こると考えます。
身体が疲れたり、夜更かししたりすると肌が荒れたり、身体にあわない物を食べると湿疹が出たりするのは誰でも一度は経験があるとおもいます。
中医学の皮膚病に対する考え方は一見難しそうにも見えますが、実はとても自然で一般 的な理論です。
中医学での治療方法としては、針治療と生活での注意点を紹介します。
○皮膚病を起こす原因(白斑と関係の深いもの)
皮膚は身体の中で最も大きく、また複雑な器官であります。
身体を外界の風、寒、湿、熱等の外邪から防御したり、汗を排泄して体温調節をしたりします。
中医学では皮膚も臓腑と経絡によりつながっていると考えていますので、病気になる原因として、外界の邪気の影響と身体の臓腑の気血のバランスがくずれてしまっても皮膚病の原因になると考えます。
「わかりやすい東洋医学理論」の中にも説明がありましたが、病気を起こす原因として外因(六淫)、内因(七情)、それ以外の不内外因があります。
外因とは 体外より人体を襲う病邪(邪気)のことで、六淫(ろくいん)といって、風、寒、暑、湿、燥、火(熱)があります。
季節、気候が正常な状態であれば身体に悪い影響はないのですが、急や異常な気候の変化があったり、季節外れの気候だったりすると身体に悪い影響があり病気になりやすくなります。
内因とは 情志(感情)のことで、怒、喜、思、悲、憂、恐、驚の7種類の感情が、臓器の働きを悪くして気血水が正常に働けなくなり、病気になると考えます。
中医学では自然界の中で起こることは体内でも起こると考えます。
臓腑の働きが悪くなると身体の中でも六淫のような邪気が発生します(身体の中でも熱くなったり、寒くなったり、風が吹いたりするということです)。
不内外因としては過度の労働による疲れや、過度な不労や安静、飲食の不摂生、過度の性行為、寄生虫、毒などがあります。
これらが原因となり、そして体質(遺伝的要素)や気候、食事等々のバランスが取れなくなってしまったりすると臓腑のバランスをくずし病気になります。
皮膚病が起きる原因になる病因には、内因や外因による風邪、湿邪、熱邪、毒、虫などが主要な病因になり、そして血オ(血の流れが悪くなり滞った状態)、血虚風燥(血が足りなくなって風邪や燥邪に犯された状態)、肝腎不足(肝と腎の臓腑の気が不足している状態)、脾胃虚弱が病理の基礎になると考えられています。
○白斑に関係の深い邪気、臓腑の説明
風(ふう)について
①
風は陽邪で、その性質は開泄で、陽位 (上方)を侵し易い;開泄とは汗腺を開いて汗をかくこと。
②
風は行き先が定まらず、よく変化をする。
③
風は全ての病気の長:他の邪気と結合し易い、他の邪気の先導者である。
風邪は外邪で皮膚の隙間から入り込み皮膚病をおこす。
火(か)熱(ねつ)について
火熱は陽邪で、その性質は炎上する…上方に燃え上がるイメージです。
①
高熱、悪熱(熱がる)、煩渇(とてものどが渇く)、汗をかく、脈が力強く振れるなどの症状がでます。
②
火は気を消耗しやすく、津液を傷付けます。
③
火は風を生み、血を動かします。
④
火は腫瘍をつくる。
湿について
①
湿は重く、汚くにごる性質をもつ。
②
湿は粘滞の性質をもつ。
③
湿は下降して陰位を侵しやすい。
④
湿は陰邪で、気の流れを阻滞し、陽気を損傷する。
肝の機能は
①
蔵血作用…血液の貯蔵。血液量の調節。出血予防。などの作用。
②
疏泄作用…気の流れをスムーズにする。脾胃(消化吸収、栄養運搬など)の働きを促進。情志のコントロール。胆汁の分泌、排泄。女性の排卵や月経、男性の射精をスムーズにする。
血は皮膚を栄養する時にとても重要です。
腎の機能
①
蔵精作用…精を蔵す。成長、発育、生殖を主る。腎精は血に化生することもできる。
②
水を主る…水液代謝を主る。
③
納気作用…呼吸を調整する。吸気を主る。
では、これからどのような病因と病機(メカニズム)と治則を考えていきます。
<弁証論治(中医学診断と治療)>
白斑病は中医学では内因と外因が相互に作用した結果発病すると考えます。
気血の不足や調和が取れなくなり、皮膚の栄養ができない状態の時に風邪に侵されてしまうことが主な原因です。
○血熱風熱(ケツネツフウネツ)
原因と病機――風邪が皮膚の間に挟まり込み経絡を侵す。また、長期にわたると風邪が熱化して血に入り血熱になる。風熱、血熱の邪気により経絡の流れが滞り、また熱により血を煮つめてオ血状態になり、皮膚を栄養できなくなり白斑が発症する。
症状――白斑病の急性期に相当する。発病は急で、皮膚過敏があったりする。白斑は少し赤みを帯び、徐々に増えていく。正常な皮膚との色の境界が不明瞭で、顔面 部など身体の上方から起こる。皮膚に軽い痒みが出ることがある。
その他に口渇、舌が赤くなる、舌苔が黄色くなる等々。
針治療――涼血活血、精熱袪風
(血の熱を冷まし、血を経絡に正常に巡らせて風邪を取り去る)
○風湿(フウシツ)
原因と病機――風邪と湿邪が合わさって皮膚の間に挟まり込み経絡を侵す。または内湿が風邪を感受して起こる。風湿が皮膚の気血の流れを阻んでしまい、気血が皮膚を栄養できなくなり白斑を発病する。
症状――白斑病の急性期に相当する。正常な皮膚との色の境界が不明瞭で、顔面 部或いは全身に起こる。
その他に頭痛、悪風、身体が重く感じる等々。
針治療――袪風除湿、和血通絡
(風邪を取り去り、湿邪を除き経絡を通し血の流れを正常にする)
○気滞オ血(キタイオケツ)
原因と病機――風邪が皮膚の間に挟まり込み経絡を侵すとそこの気血の流れは悪くなる、長期になると気滞(気の流れが滞る)になり、オ血(血の流れが悪くなる)になる。
または精神刺激があったり、イライラしたりして肝気の流れが悪くなり、気の流れが滞るとオ血になり、結果 皮膚で気血不和や血が皮膚を養えなくなり、悪くなったところに風邪が侵入して白斑になる。
症状――大小不規則な白い斑点ができる。情緒の変化によって白斑が広がる。白斑は白色か乳白色。皮膚の色の境が不明瞭。わき腹が張る。怒りやすい。舌の色が暗くなる。等々。
針治療――行気活血、袪風
(気血に流れをつけ滞りを解消し、風邪を消滅させる治療)
②肝腎陰虚(カンジンインキョ)
原因と病機――七情による内傷や過労、長期の病期などにより精血を損なった結果 、肝陰や腎陰不足をおこす。
肝は血を蔵し、腎は精を蔵す。
精血は互いに転化するため、また源は同じであるため“肝腎同源(カンジンドウゲン)”と呼ばれる。
このことから、肝陰が不足すると腎陰不足を引き起こし、逆に腎陰が不足しても肝陰不足を起こす。
肝腎陰虚により気血不和が起こり、皮膚が栄養できなくなる。そこに風邪が侵入してきて白斑になる。
症状――固定期に相当する(長期)。白斑が固定してくる。正常な皮膚との色の境界がはっきりしている。白斑の中の毛も白色になる。
その他に顔色が悪い、めまい、耳鳴り、腰や膝がだるく力がない、寝汗等々。
針治療――滋養肝腎、調和気血、袪風(ジヨウカンジン、チョウワキケツ、キョフウ)
(肝腎の陰液を養い、気血を調和させ、風邪を取り去る治療)
これらの証は いろいろな証が同時に発症することがあります。
○生活上の注意点
①
日光に当たり過ぎないように注意する――白斑の皮膚は紫外線により容易に皮膚炎を起こしやすくなるので過度の日焼けに気をつける。
②
ストレスに気をつける――過度のストレスは白斑の進行を早めてしまいます。ストレスを避けるのは難しいこともありますが、ストレスを感じる時は休息をしっかりとるようにする。
③
疲れすぎないように気をつける。
④
刺激物との接触を避ける――石鹸、洗剤、シャンプーなどは刺激の強い化学物質を避ける。
⑤
刺激のある嗜好品を控える――タバコ、お酒、辛いものなどは控える。
<まとめ>
白斑病は色素脱落以外の症状がない皮膚病です。
しかし、難治性で美容的な問題からのストレスは大きいと思われます。
早期の治療が肝心ですので、白斑が発症してしまった場合はほったらかしにせず、速やかな治療と生活の改善必要です。
針治療は皮膚を直接治療するというよりも、白斑を起こす身体の問題を診断し治療します。
=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。
ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。
当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。
しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。
さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。
当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。
それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。
この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。
特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。
顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)
急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子
その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳
アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など
これらの疾患はほんの一例です。
疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより
一層症状が早く改善されて行きます。
針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。
当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。
少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。
- 2019/02/20
- 打撲・捻挫
日常生活の中でも、ちょっとした事で起こしてしまう捻挫や打撲。
運動していて足をひねったとか、うっかり転んでぶつけたなど、よく耳にすると思います。
そんな時、あなただったら、どんな処置をしますか?
とりあえず安静にして、固定し、冷やす・などが一般的かもしれません。
その後、様子をみて整形外科に行き、骨折や靱帯損傷などがないのを確認して、なんともなければ、しばらく湿布をして痛みが緩和したら終わり・・という方が多いのではないでしょうか。
しかし、これだけでやめてしまうと、捻挫を繰り返すようになったり、湿度の高い日や、季節の変わり目に、古傷が痛むなどという事になりかねません。
一見治ったようでも、きちんと治しておかないと後で困ります。
☆「捻挫・打撲には『鍼灸治療』が良く効き、早めに治療する事で回復も早く、きちんと治る!!」
ということを、ご存知の方は、どの位いらっしゃるでしょう。
日本では、鍼灸というと、肩こりや腰痛を和らげる「癒し」のように捉え、年配の方が受けるものと思っている方も多いようですが、中医学をベースとした鍼灸は、列記とした「治療」であり、その効果 も高いものがあります。
きちんとした学問である「中医学」を土台としているからです。
老若男女を問わず特効があり、身体全体のバランスを調えていきますから、心身ともに健康になっていきます。
中医学的鍼灸は何故、捻挫・打撲にも高い効果が期待できるのか・という事は、後程ご説明します。
スポーツをされている方々や、お子さん・年配の方々は、捻挫・打撲を起こす可能性も高いですから、是非、みなさんに鍼灸治療の効果 について、知っておいて頂きたいと思います。
【西洋医学的考え方】
捻挫とは、関節や対して、正常な運動範囲を超えて外力がかかり、「関節包」や「靭帯」、「滑膜」がねじれ、部分的に切れてしまう状態を言います。
この場合、関節の位置は正常で、位置が外れてしまった場合は脱臼と言います。
また、骨や靱帯に損傷がないか確認することも大切です。
最も多いのは足関節の外側やや前方の捻挫です。
打撲とは「うちみ」「挫傷」とも言われ、転倒などによって、身体を固い物質に衝突させた時に起こります。
皮膚には損傷がなく、皮下組織に傷害があり、皮下出血などを生じます。
気をつけなければいけないのは、骨折や、神経の損傷がないかということですが、特に頭部の打撲の場合は、意識障害がないか、吐き気がないかなども確認しておきましょう。
○応急処置
「RICE(ライス)療法」を行います。
R (REST=安静)……患部を動かさないで安静にして休む。
I (ICE=冷却)…炎症を抑え、痛みをとるため、患部を中心に広めの範囲で、氷のうなどで冷やす。
C (COMPRESSION=圧迫)……内出血や腫れを防ぐため、弾力包帯やテーピングで患部を圧迫して固定。
E (EREVATION=高挙)……患部を心臓より高い位置に保つことで、内出血や腫れを防ぐ。
○その後の処置
およそ3日間は冷やし、4日目以降は温めて、血行をよくし、治癒をうながします。
【中医学的考え方】
さて、やっとここからが、先程の「何故、鍼灸治療が捻挫・打撲に有効か」という説明になります。
まずは、「中医学の生体観」についてお話しておきましょう。
中医学では身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・水』であると考えています。
気というのは、気持ちの気と同じような意味合いもありますが、中医学では、活力という意味であり、 血脈の流れを推進し、臓器組織の活動を促進すると考えます。
血は血液という意味よりも広く考えて全身を栄養するだけでなく、精神活動も支えています。
水は身体をうるおす水分の事です。これらは飲食から得られ、臓腑で消化吸収して作られていきます。
気・血・水は『経絡』という、人体の上下・内外を貫く道筋によって流れ、全身を栄養したり、臓器の機能を調節したりしています。
健康な状態では、経絡は全身を滞る事なく流れています。
気・血・水が、身体を流れ良く巡る事で、身体内の臓器もうまく働くことが出来ます。
中医学では、それぞれの臓器は、お互いに協力しあい、制御しあいながら、バランス良く健康を保っていると考えます。
西洋医学的な臓器の機能に加えて、それぞれの関連性についても考えているわけです。
五臓六腑と言われるように、身体の主な「臓」は、肝・心・脾・肺・腎 の五つです。
それぞれの働きについて、簡単にあげておきます。
・肝:
全身の気の流れを良くし、各器官の働きを助けます。
筋肉の働きにも関係しています。
・心:
血の循環をしています。
精神活動に関係し、五臓の働きをとりまとめています。
・脾:
食べたものをエネルギー(気・血・水)に変え、身体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱くなると、活力不足で疲れやすくなります。
血を脈外に漏らさないようにする働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、内出血しやすくなります。少しぶつけただけでも青あざが出来ます。
・肺:
呼吸することにより、気・水を全身に巡らせます。
皮膚の状態に関係します。
・腎:
生命力の源、先天の「気」を蓄えています。骨や髪と関係します。
成長や生殖能力に関連深く、年齢と共に変化します。
女性では、月経や妊娠と関係します。
腎のエネルギー(先天の気)は、脾から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
以上の五臓がバランス良く働いてくれるように調節してくれているのが、気・血・水 です。
針灸治療は、この気・血・水に働きかけることにより、治療をするわけです。
どこにどのような刺激を与えていったらいいかを、患者さんの体質に合わせて決めていくのですが、ベースとなっているのは、数千年に及ぶ歴史のある中医学の理論体系です。
ただ単に、筋肉が凝っているところを探し、筋疲労をとるだけの鍼灸とは、奥の深さがケタ違いですから、その効果 も全然違います。
○中医学的治療法
捻挫は運動や転倒などで、関節が過度に捻転する事により起こり、打撲は、身体を固いものにぶつけた事により起こりますが、どちらも「経脈」に損傷をおこしたと考えます。
局部の経気運行が阻害されるため、気血の流れが滞ってしまっています。
中医学では、捻挫・打撲の痛みをとる治療と併行して、この「気血の滞り」を改善し、流れが良くなるような治療をします。ですから、受傷部位 の腫れは、何もしないよりずっと早く引いていきますし、回復も早くなります。
また、その気血の滞りにより、バランスの悪くなった身体を整え、全体的にバランスの良い状態にしていく治療もします。
例えば、足首の捻挫の場合、滞りは足首にあるわけですが、足首周辺以外の穴も使います。
ツボには特性がありますから、気の流れや、血の流れを良くしてくれる効果 のあるツボを組み合わせていくと、全体的に流れが良くなり、効果も高まっていきます。
足首が痛いから足首だけ湿布をするというのは、ちょっと身体がかわいそうです。
中医学の鍼灸では痛みや腫れをとるだけではなく、身体全体をみて調節し、例えば靱帯に損傷があれば、その靱帯も元の良い状態していく手助けもします。
ですから、靱帯が少し伸びたまま治ってしまい、捻挫を繰り返すというような事は、防ぐ事ができるわけです。
その人の体質によっても、施術の方法は違います。
鍼の刺激に強い人・弱い人、冷え性の人・暑がりの人等々、さまざまな基本体質があるのですから、オーダーメイド的な治療になるのは当然でもあります。
身体に対してはもちろん、心に対しても優しく、学問的にも奥の深い中医学は幅広く色々な疾患に対応出来ます。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00~ 11:30 |
〇 13:00まで | 休 | 〇 | 〇 | 〇 | 休 | 〇11:40まで |
14:00~ 16:00 |
休 診 |
診 | 〇 | 〇 | 〇 | 診 | 〇16:40まで |
※ 火曜日・水曜日・木曜日が祝祭日の場合は午前診療となります。
※ 当院は予約制です。
〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1丁目17-10