コラム

2019/02/20
寝違い

朝目が覚めたときに首に痛みが出ていて、とくに動かすと痛みが増すといった経験をされたことはないでしょうか?

このような状態をいわゆる「寝違い」と言います。寝違いとは医学用語ではなく首周辺の靭帯や筋肉の急性炎症による痛みの総称としてとらえたほうが良いかと思います。

 

原因

不自然な姿勢で眠り続けたときに起こります。

通常は首に痛みが生じたり、違和感を覚えた場合には目が覚めたり、無意識のうちに首の姿勢を変えますが、疲労や睡眠不足、あるいは泥酔状態で寝てしまうとこれらの反応がなくなり、不自然な姿勢で寝続けることがあります。

または、窮屈なソファーで寝たり、いすに座ったまま不自然な姿勢で寝てしまったときに起こります。

 

治療として

軽いものならばシップや消炎鎮痛剤を使って安静にしますが、重い場合にはカラーで固定していく場合もあります。

その他には電気療法や温熱療法も用いるケースもありますが、だいたいは2~3日から1週間で症状は治まります。

 

 

中医学的観点から

中医学では寝違いは「落枕」と言います。枕から落ちるなんてなんとなく想像できますよね。急性で、単純に頚部の筋肉がこわばって痛み、運動範囲の制限などが出る状態を言います。

 

原因として、睡眠時の姿勢が悪い、枕の高さが合わない等で頚部の筋肉に長時間にわたってストレスが加わるとおきます。

また風寒を感受(冷えた)したために局部の経脈の気血が滞り、頚部がこわばって痛むこともあります。

 

「風寒」とは→中医学では外から体の中に入ってきて様々な病気を引き起こすものを「外邪」といいます。

「外邪」には「風」、「暑」、「湿」、「燥」、「寒」、「火」と六つの異なったタイプのものがあります。

その中でも「風」は陽の性質をもち上向き、外向き、また上半身を傷つけやすくなってます。また、ほかの「外邪」と連合しやすく、特に「寒」と結びつく場合には痛みとなってあらわれやすいです。

「寒」は筋肉を引きつらせたり、ひとつの場所にとどまって痛みを引き起こす性質があるからです。

 

「経脈」とは→人の体には「気血」を巡らすためのルートが存在します。

メインとなる大きいルートはそれぞれ14本。その中には首周辺にいっているものもあります。

 

「気血」とは→「気」とは人が生理活動を行う際に必ず必要となるエネルギー源で、正常ならば絶えず経脈を流れています。

 

「血」とは体の各部を滋養してくれているいわば栄養分です。

内臓、筋肉、皮膚などが正常に潤って働けるのは、この「血」が「気」と一緒に「経脈」を流れているからなのです。

 

治療として、基本的に「じょ筋活絡」、「経絡止痛」という考え方を用います。 これはこわばった筋肉をゆるめてそこを通っている「経脈」を通し、その「経脈」の中に「気血」が巡るようにすることです。

中医学では「気」が巡らなくなると「不痛則痛」(通らぬものすなわち痛む)という状態になるので、そこを改善するわけです。

治療で使うツボとしては、首周辺のこわばっている場所だけではなく、先ほども出てきたように首周辺を走る「経脈」は、手や背中のほうにも行っているのでそこの反応点や経験穴を使います。そして、あまりに痛みが強く首が回らない状態では、手の甲に「落枕」という特効穴があるので、そこを鍼で刺したまま徐々に首を動かして痛みが緩んできたところで、ほかの場所に鍼を刺していきます。

また「風寒の邪」のが入っている場合には、体を温める作用のあるツボをプラスしてあげると良いでしょう。

 

寝違いの予防としては、普段から自分に合った枕を使うということ。ソファーや机に寝ないように気をつける。暑い夏の季節、クーラーには注意をしてあまり首を冷やさないということも大事です。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
尋常性白斑

尋常性(じんじょうせい)白斑(はくはん)について

白斑とは突然皮膚の色が抜け、白い斑点ができるものです。

白ナマズなどとも呼ばれたりします。

白斑は後天的なもの(遺伝的ではない)で、発症は子供から高齢者までの幅広い年齢層に発症します。

美容的な皮膚の問題以外身体への影響はない病気ですが、三大難治皮膚病とも言われなかなか治りにくい皮膚病です。

 

皮膚疾患は症状としては表面に出ていますが、西洋医学的にみても、中医学的にみても免疫や臓腑との関係が深いものがたくさんあります。

中国では西洋学的な治療だけでなく、中薬(漢方薬)と針を中心として治療する病院もあり、皮膚疾患でも身体全体を治療して病気を治療しています。

 

 

<西洋医学的な白斑病の考え方>

 

白斑病は始めのうちは、親指の先ほどの小さな白い斑点(白斑)が2~3個できます。

そして次第に数が増え、範囲が広がっていきます。

白斑病はA(汎発型または進行性)白斑とB(神経分節型)白斑の2つに分類します。

それぞれ経過と予後が異なりますので分けてお話していきます。

 

A(汎発型)白斑病

 

白斑病は、まず2~3個の指先ほどの小さな白斑から始まります。

徐々に数が増え、放っておくと全身に広がっていきます。

顔面、体幹部、手足などどこにでもできますが、特にシャツの襟で擦れる首やベルトや下着で擦れる場所に左右対称に発症します。

身体の両側、全身にでる。

発症する年齢は、子供から老人までの全ての年齢層にでます。

 

原因――汎発型の場合、自己免疫現象であると考えられています。

本来は免疫機能とは外部から身体に不利益な異物が入ってきたときに、攻撃して異物の力を弱めて排除することですが、このA型白斑の場合は、その免疫機能が自分自身の色素細胞(メラノサイト)を異物と誤って認識して攻撃し、色素細胞が破壊されてしまうために色が抜けてしまったということです。

この自己免疫現象がおこる理由はまだハッキリとはしていませんが、ウィルスによるものや、ストレス、環境の変化などが原因であると推測されます。

白斑が進行して広がる原因としては、お風呂で身体を過度に洗いすぎたり、また石鹸が残っていたり、お茶やコーヒー、お酒などを飲みすぎたり、衣服のすすぎ残しの洗剤や化学物質などが悪い影響を与えると考えられています。

また、中には甲状腺の機能亢進によるものやリウマチなどの膠原病などが原因になっているものもありますので、皮膚以外に症状がある時は検査が必要です。

 

治療――自己免疫現象の原因がはっきりとしないため、治療法も原因に対する治療ではなく、抜けてしまった皮膚の色素を復活させる対症療法になります。

進行性白斑は初期、早期での治療が重要です。

何年もたった白斑病でメラノサイトが完全に壊れてしまってからは、治療効果 は期待できません。

 

ステロイド療法…初期にはステロイド外用薬に反応して色素再生がおこります。

また、白斑が増加拡大する時にステロイド薬を服用すると進行を停止、色素再生させる効果 があります。

 

紫外線照射:PUVA(プーバ)療法…PUVAとは光感作物質であるソラレン(Ppsoralen)を外用または内服して、その後で長波長紫外線(UVAultraviolet A)を照射する治療法です。

毛嚢(もうのう)に残っているメラノサイトを刺激して色素産生を促す方法なので、毛嚢のない部分での治療効果 は低い。

過剰照射による副作用の注意や、適切な目の保護などが必要なため専門医での治療が必要です。

 

これらの治療法は併用しても行われます。

それぞれ3~4ヶ月で効果がなければ中止します。

 

レーザー療法…レーザーにはエネルギーの種類や密度によって、特定の細胞を狙って細胞を破壊したり、逆に活性化したりする作用があります。

やはりメラノサイトに働きかけ細胞を活性化させます。

ステロイドやPUVAよりも身体にかかる負担は少なくなりますが、レーザーの種類によっては保険適応外になるため、専門医との相談、治療が必要となります。

 

いずれの治療にしても、白斑の場所を目立たないようにする対症療法ですが、根気よく治療する必要があります。

 

 

B(神経分節型)白斑病

 

片側の神経の走行に沿って白斑が現れます。

若年に発症しやすい特徴があります。

数ヶ月から数年で神経の分節いっぱいに広がって、その後は同じ状態が続きます。

この神経分節型の白斑の発症の発症はとても少ないです。

 

原因――詳しいことはまだ不明ですが、末梢の神経とメラノサイトがつながっているので、神経からの伝達物質の低下や異常が考えられています。

 

治療――神経分節型白斑は、ステロイド療法や紫外線照射療法の効果 があまりなく、治りにくいのが特徴です。

しかし、発症後数年で進行が止まるのと、神経の支配している範囲に限局されているために皮膚移植が行えます。

 

表皮移植手術…白斑の進行が止まった後、メラノサイトがある正常な皮膚を白斑の皮膚に移植します。

数週間から数ヶ月で正常な皮膚の色に戻っていきます。

 

西洋医学ではこのような分類、治療になります。

治りにくい皮膚病ではありますが、美容的、心理的な問題がある以外は身体の方には実害はありません。

これらの治療で残ってしまったものや、治療の時期を逃してしまったものなどは化粧品で色をつけることになります。

 

 

<中医学的な白斑病の考え方>

 

白斑病は中医の中では「白癜(しろなまず)」「白癜風(はくでんぷう)」「白駁(はくばく)」などと呼ばれています。

 

中医学のお話しをする前に、ホームページのトップページのやや下にある「わかりやすい東洋医学理論」の中の中医学の陰陽、生理観、気血水(津液)、内臓(五臓六腑)、経絡を読んでいただきたいとおもいます。

西洋医学では自己免疫が原因と考えられていますが、中医学でも外的な影響もありますが、身体全体の病的状態が皮膚にも影響して皮膚病が起こると考えます。

身体が疲れたり、夜更かししたりすると肌が荒れたり、身体にあわない物を食べると湿疹が出たりするのは誰でも一度は経験があるとおもいます。

中医学の皮膚病に対する考え方は一見難しそうにも見えますが、実はとても自然で一般 的な理論です。

中医学での治療方法としては、針治療と生活での注意点を紹介します。

 

 

皮膚病を起こす原因(白斑と関係の深いもの)

 

皮膚は身体の中で最も大きく、また複雑な器官であります。

身体を外界の風、寒、湿、熱等の外邪から防御したり、汗を排泄して体温調節をしたりします。

中医学では皮膚も臓腑と経絡によりつながっていると考えていますので、病気になる原因として、外界の邪気の影響と身体の臓腑の気血のバランスがくずれてしまっても皮膚病の原因になると考えます。

 

「わかりやすい東洋医学理論」の中にも説明がありましたが、病気を起こす原因として外因(六淫)、内因(七情)、それ以外の不内外因があります。

 

外因とは 体外より人体を襲う病邪(邪気)のことで、六淫(ろくいん)といって、風、寒、暑、湿、燥、火()があります。

季節、気候が正常な状態であれば身体に悪い影響はないのですが、急や異常な気候の変化があったり、季節外れの気候だったりすると身体に悪い影響があり病気になりやすくなります。

 

内因とは 情志(感情)のことで、怒、喜、思、悲、憂、恐、驚の7種類の感情が、臓器の働きを悪くして気血水が正常に働けなくなり、病気になると考えます。

中医学では自然界の中で起こることは体内でも起こると考えます。

臓腑の働きが悪くなると身体の中でも六淫のような邪気が発生します(身体の中でも熱くなったり、寒くなったり、風が吹いたりするということです)

 

不内外因としては過度の労働による疲れや、過度な不労や安静、飲食の不摂生、過度の性行為、寄生虫、毒などがあります。

 

これらが原因となり、そして体質(遺伝的要素)や気候、食事等々のバランスが取れなくなってしまったりすると臓腑のバランスをくずし病気になります。

 

皮膚病が起きる原因になる病因には、内因や外因による風邪、湿邪、熱邪、毒、虫などが主要な病因になり、そして血オ(血の流れが悪くなり滞った状態)、血虚風燥(血が足りなくなって風邪や燥邪に犯された状態)、肝腎不足(肝と腎の臓腑の気が不足している状態)、脾胃虚弱が病理の基礎になると考えられています。

 

 

白斑に関係の深い邪気、臓腑の説明

(ふう)について

風は陽邪で、その性質は開泄で、陽位 (上方)を侵し易い;開泄とは汗腺を開いて汗をかくこと。

風は行き先が定まらず、よく変化をする。

風は全ての病気の長:他の邪気と結合し易い、他の邪気の先導者である。

風邪は外邪で皮膚の隙間から入り込み皮膚病をおこす。

 

()(ねつ)について

火熱は陽邪で、その性質は炎上する…上方に燃え上がるイメージです。

高熱、悪熱(熱がる)、煩渇(とてものどが渇く)、汗をかく、脈が力強く振れるなどの症状がでます。

火は気を消耗しやすく、津液を傷付けます。

火は風を生み、血を動かします。

火は腫瘍をつくる。

 

湿について

湿は重く、汚くにごる性質をもつ。

湿は粘滞の性質をもつ。

湿は下降して陰位を侵しやすい。

湿は陰邪で、気の流れを阻滞し、陽気を損傷する。

 

肝の機能は

蔵血作用…血液の貯蔵。血液量の調節。出血予防。などの作用。

疏泄作用…気の流れをスムーズにする。脾胃(消化吸収、栄養運搬など)の働きを促進。情志のコントロール。胆汁の分泌、排泄。女性の排卵や月経、男性の射精をスムーズにする。

血は皮膚を栄養する時にとても重要です。

 

腎の機能

蔵精作用…精を蔵す。成長、発育、生殖を主る。腎精は血に化生することもできる。

水を主る…水液代謝を主る。

納気作用…呼吸を調整する。吸気を主る。

では、これからどのような病因と病機(メカニズム)と治則を考えていきます。

 

 

<弁証論治(中医学診断と治療)

 

白斑病は中医学では内因と外因が相互に作用した結果発病すると考えます。

気血の不足や調和が取れなくなり、皮膚の栄養ができない状態の時に風邪に侵されてしまうことが主な原因です。

 

血熱風熱(ケツネツフウネツ)

 

原因と病機――風邪が皮膚の間に挟まり込み経絡を侵す。また、長期にわたると風邪が熱化して血に入り血熱になる。風熱、血熱の邪気により経絡の流れが滞り、また熱により血を煮つめてオ血状態になり、皮膚を栄養できなくなり白斑が発症する。

 

症状――白斑病の急性期に相当する。発病は急で、皮膚過敏があったりする。白斑は少し赤みを帯び、徐々に増えていく。正常な皮膚との色の境界が不明瞭で、顔面 部など身体の上方から起こる。皮膚に軽い痒みが出ることがある。

その他に口渇、舌が赤くなる、舌苔が黄色くなる等々。

 

針治療――涼血活血、精熱袪風

     (血の熱を冷まし、血を経絡に正常に巡らせて風邪を取り去る)

 

 

風湿(フウシツ)

 

原因と病機――風邪と湿邪が合わさって皮膚の間に挟まり込み経絡を侵す。または内湿が風邪を感受して起こる。風湿が皮膚の気血の流れを阻んでしまい、気血が皮膚を栄養できなくなり白斑を発病する。

 

症状――白斑病の急性期に相当する。正常な皮膚との色の境界が不明瞭で、顔面 部或いは全身に起こる。

その他に頭痛、悪風、身体が重く感じる等々。

 

針治療――袪風除湿、和血通絡

     (風邪を取り去り、湿邪を除き経絡を通し血の流れを正常にする)

 

 

気滞オ血(キタイオケツ)

 

原因と病機――風邪が皮膚の間に挟まり込み経絡を侵すとそこの気血の流れは悪くなる、長期になると気滞(気の流れが滞る)になり、オ血(血の流れが悪くなる)になる。

または精神刺激があったり、イライラしたりして肝気の流れが悪くなり、気の流れが滞るとオ血になり、結果 皮膚で気血不和や血が皮膚を養えなくなり、悪くなったところに風邪が侵入して白斑になる。

 

症状――大小不規則な白い斑点ができる。情緒の変化によって白斑が広がる。白斑は白色か乳白色。皮膚の色の境が不明瞭。わき腹が張る。怒りやすい。舌の色が暗くなる。等々。

 

針治療――行気活血、袪風

     (気血に流れをつけ滞りを解消し、風邪を消滅させる治療)

 

 

肝腎陰虚(カンジンインキョ)

 

原因と病機――七情による内傷や過労、長期の病期などにより精血を損なった結果 、肝陰や腎陰不足をおこす。

肝は血を蔵し、腎は精を蔵す。

精血は互いに転化するため、また源は同じであるため“肝腎同源(カンジンドウゲン)”と呼ばれる。

このことから、肝陰が不足すると腎陰不足を引き起こし、逆に腎陰が不足しても肝陰不足を起こす。

肝腎陰虚により気血不和が起こり、皮膚が栄養できなくなる。そこに風邪が侵入してきて白斑になる。

 

症状――固定期に相当する(長期)。白斑が固定してくる。正常な皮膚との色の境界がはっきりしている。白斑の中の毛も白色になる。

その他に顔色が悪い、めまい、耳鳴り、腰や膝がだるく力がない、寝汗等々。

 

針治療――滋養肝腎、調和気血、袪風(ジヨウカンジン、チョウワキケツ、キョフウ)

(肝腎の陰液を養い、気血を調和させ、風邪を取り去る治療)

 

 これらの証は いろいろな証が同時に発症することがあります。

 

生活上の注意点

日光に当たり過ぎないように注意する――白斑の皮膚は紫外線により容易に皮膚炎を起こしやすくなるので過度の日焼けに気をつける。

ストレスに気をつける――過度のストレスは白斑の進行を早めてしまいます。ストレスを避けるのは難しいこともありますが、ストレスを感じる時は休息をしっかりとるようにする。

疲れすぎないように気をつける。

刺激物との接触を避ける――石鹸、洗剤、シャンプーなどは刺激の強い化学物質を避ける。

刺激のある嗜好品を控える――タバコ、お酒、辛いものなどは控える。

 

<まとめ>

白斑病は色素脱落以外の症状がない皮膚病です。

しかし、難治性で美容的な問題からのストレスは大きいと思われます。

早期の治療が肝心ですので、白斑が発症してしまった場合はほったらかしにせず、速やかな治療と生活の改善必要です。

針治療は皮膚を直接治療するというよりも、白斑を起こす身体の問題を診断し治療します。

 

 

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

 

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。

例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。

ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。

西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。

ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。

例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。

大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

 

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。

又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

 

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

 

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。

当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。

それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。

この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。

特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。

顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)

急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子

その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳

アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など

これらの疾患はほんの一例です。

疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより

一層症状が早く改善されて行きます。

針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

 

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

 

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

2019/02/20
打撲・捻挫

日常生活の中でも、ちょっとした事で起こしてしまう捻挫や打撲。

運動していて足をひねったとか、うっかり転んでぶつけたなど、よく耳にすると思います。

そんな時、あなただったら、どんな処置をしますか?

 

とりあえず安静にして、固定し、冷やす・などが一般的かもしれません。

その後、様子をみて整形外科に行き、骨折や靱帯損傷などがないのを確認して、なんともなければ、しばらく湿布をして痛みが緩和したら終わり・・という方が多いのではないでしょうか。

 

しかし、これだけでやめてしまうと、捻挫を繰り返すようになったり、湿度の高い日や、季節の変わり目に、古傷が痛むなどという事になりかねません。

一見治ったようでも、きちんと治しておかないと後で困ります。

 

「捻挫・打撲には『鍼灸治療』が良く効き、早めに治療する事で回復も早く、きちんと治る!!」

ということを、ご存知の方は、どの位いらっしゃるでしょう。

 

日本では、鍼灸というと、肩こりや腰痛を和らげる「癒し」のように捉え、年配の方が受けるものと思っている方も多いようですが、中医学をベースとした鍼灸は、列記とした「治療」であり、その効果 も高いものがあります。

きちんとした学問である「中医学」を土台としているからです。

老若男女を問わず特効があり、身体全体のバランスを調えていきますから、心身ともに健康になっていきます。

 

中医学的鍼灸は何故、捻挫・打撲にも高い効果が期待できるのか・という事は、後程ご説明します。

 

スポーツをされている方々や、お子さん・年配の方々は、捻挫・打撲を起こす可能性も高いですから、是非、みなさんに鍼灸治療の効果 について、知っておいて頂きたいと思います。

 

 

【西洋医学的考え方】

捻挫とは、関節や対して、正常な運動範囲を超えて外力がかかり、「関節包」や「靭帯」、「滑膜」がねじれ、部分的に切れてしまう状態を言います。

この場合、関節の位置は正常で、位置が外れてしまった場合は脱臼と言います。

また、骨や靱帯に損傷がないか確認することも大切です。

最も多いのは足関節の外側やや前方の捻挫です。

 

打撲とは「うちみ」「挫傷」とも言われ、転倒などによって、身体を固い物質に衝突させた時に起こります。

皮膚には損傷がなく、皮下組織に傷害があり、皮下出血などを生じます。

気をつけなければいけないのは、骨折や、神経の損傷がないかということですが、特に頭部の打撲の場合は、意識障害がないか、吐き気がないかなども確認しておきましょう。

 

応急処置

RICE(ライス)療法」を行います。

R (REST=安静)……患部を動かさないで安静にして休む。

I (ICE=冷却)…炎症を抑え、痛みをとるため、患部を中心に広めの範囲で、氷のうなどで冷やす。

C (COMPRESSION=圧迫)……内出血や腫れを防ぐため、弾力包帯やテーピングで患部を圧迫して固定。

E (EREVATION=高挙)……患部を心臓より高い位置に保つことで、内出血や腫れを防ぐ。

 

その後の処置

およそ3日間は冷やし、4日目以降は温めて、血行をよくし、治癒をうながします。

 

 

【中医学的考え方】

さて、やっとここからが、先程の「何故、鍼灸治療が捻挫・打撲に有効か」という説明になります。

 

まずは、「中医学の生体観」についてお話しておきましょう。

 

中医学では身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・水』であると考えています。

 

気というのは、気持ちの気と同じような意味合いもありますが、中医学では、活力という意味であり、 血脈の流れを推進し、臓器組織の活動を促進すると考えます。

血は血液という意味よりも広く考えて全身を栄養するだけでなく、精神活動も支えています。

水は身体をうるおす水分の事です。これらは飲食から得られ、臓腑で消化吸収して作られていきます。

 

気・血・水は『経絡』という、人体の上下・内外を貫く道筋によって流れ、全身を栄養したり、臓器の機能を調節したりしています。

健康な状態では、経絡は全身を滞る事なく流れています。

 

気・血・水が、身体を流れ良く巡る事で、身体内の臓器もうまく働くことが出来ます。

中医学では、それぞれの臓器は、お互いに協力しあい、制御しあいながら、バランス良く健康を保っていると考えます。

西洋医学的な臓器の機能に加えて、それぞれの関連性についても考えているわけです。

 

五臓六腑と言われるように、身体の主な「臓」は、肝・心・脾・肺・腎 の五つです。

それぞれの働きについて、簡単にあげておきます。

・肝:

全身の気の流れを良くし、各器官の働きを助けます。

筋肉の働きにも関係しています。

 

・心:

血の循環をしています。

精神活動に関係し、五臓の働きをとりまとめています。

 

・脾:

食べたものをエネルギー(気・血・水)に変え、身体の機能を活発にします(運化作用)。

働きが弱くなると、活力不足で疲れやすくなります。

血を脈外に漏らさないようにする働きがあります(固摂作用)。

働きが低下すると、内出血しやすくなります。少しぶつけただけでも青あざが出来ます。

 

・肺:

呼吸することにより、気・水を全身に巡らせます。

皮膚の状態に関係します。

 

・腎:

生命力の源、先天の「気」を蓄えています。骨や髪と関係します。

成長や生殖能力に関連深く、年齢と共に変化します。

女性では、月経や妊娠と関係します。

腎のエネルギー(先天の気)は、脾から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

以上の五臓がバランス良く働いてくれるように調節してくれているのが、気・血・水 です。

針灸治療は、この気・血・水に働きかけることにより、治療をするわけです。

 

どこにどのような刺激を与えていったらいいかを、患者さんの体質に合わせて決めていくのですが、ベースとなっているのは、数千年に及ぶ歴史のある中医学の理論体系です。

ただ単に、筋肉が凝っているところを探し、筋疲労をとるだけの鍼灸とは、奥の深さがケタ違いですから、その効果 も全然違います。

 

 

中医学的治療法

 

捻挫は運動や転倒などで、関節が過度に捻転する事により起こり、打撲は、身体を固いものにぶつけた事により起こりますが、どちらも「経脈」に損傷をおこしたと考えます。

 

局部の経気運行が阻害されるため、気血の流れが滞ってしまっています。

 

中医学では、捻挫・打撲の痛みをとる治療と併行して、この「気血の滞り」を改善し、流れが良くなるような治療をします。ですから、受傷部位 の腫れは、何もしないよりずっと早く引いていきますし、回復も早くなります。

 

また、その気血の滞りにより、バランスの悪くなった身体を整え、全体的にバランスの良い状態にしていく治療もします。

 

例えば、足首の捻挫の場合、滞りは足首にあるわけですが、足首周辺以外の穴も使います。

ツボには特性がありますから、気の流れや、血の流れを良くしてくれる効果 のあるツボを組み合わせていくと、全体的に流れが良くなり、効果も高まっていきます。

 

足首が痛いから足首だけ湿布をするというのは、ちょっと身体がかわいそうです。

 

中医学の鍼灸では痛みや腫れをとるだけではなく、身体全体をみて調節し、例えば靱帯に損傷があれば、その靱帯も元の良い状態していく手助けもします。

ですから、靱帯が少し伸びたまま治ってしまい、捻挫を繰り返すというような事は、防ぐ事ができるわけです。

 

その人の体質によっても、施術の方法は違います。

鍼の刺激に強い人・弱い人、冷え性の人・暑がりの人等々、さまざまな基本体質があるのですから、オーダーメイド的な治療になるのは当然でもあります。

 

身体に対してはもちろん、心に対しても優しく、学問的にも奥の深い中医学は幅広く色々な疾患に対応出来ます。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
帯状疱疹

帯状疱疹は、子供のころにかかった水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、 神経の中に潜んでいて、体力の低下などをきっかけに活性化して起こる病気です。

 

水ぼうそうは、一度かかってしまうと、ウイルスに対する抗体ができるので、免疫状態となります。

しかし、そのウイルスは死んでしまうわけではなく、眠っているような状態なので、 疲労や睡眠不足などによって体力が落ちたり、他の病気で免疫機能が低下したときなどに活性化して、 発症すると考えられています。

 

症状

 

帯状疱疹は身体の左右どちらかに帯のように現れます。

 

はじめはピリピリチクチクした痛みから始まり、しばらくするとその部分が赤くなり、 やがて水ぶくれになって神経痛のような激しい痛みになります。

 

発症部位で一番多いのは肋間神経のある胸から背中にかけてです。

この他、頭部や顔面・腹部・臀部・下肢にもあらわれます。

顔面にある三叉神経に沿って現れる場合は、失明や顔面神経麻痺をともなうこともあるので特に注意が必要です。

 

痛みが始まってから水膨れが治るまでの間は、約3~4週間です。

通常、痛みは水膨れが治る頃に消えますが、治った後も痛みが残る場合があります。

 

一ヶ月以上痛みが続く場合は「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれていて、かなり激しい持続性の痛みがあり、 日常生活にも支障をきたします。

ウイルスによって神経が破壊されることが原因ですから、早めに治療することで、防ぐことができます。

症状が進行する前に、できるだけ早く皮膚科で診てもらいましょう。高齢者は特に注意が必要です。

 

また、それと同時に鍼灸治療をしていくと、回復が早く、予後が大変良いようです。

 

《西洋医学的治療法》

 

帯状疱疹の治療は、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されます。

 

抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止します。

神経がまだ破壊されていない初期の段階で服用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防ができます。

 

一般には、皮膚症状が現れてから5日目ぐらいまでに、抗ウイルス薬による治療を始めれば、 後遺症は残りにくいと考えられています。

 

抗ウイルス剤としては、ゾビラックス・バルトレックスなどがあります。

バルトレックスはゾビラックスを改良した「プロドラッグ」(体内で代謝されることにより、 効果を発揮する薬)です。

ゾビラックスよりも吸収が良く、服用回数が少なくてすむ利点はありますが、 点滴のように血中濃度が上がりやすいので、早期(内服開始1~2日目)に激しい疼痛や腎障害などの副作用が起こることがあります。

特に腎機能障害ある人や高齢者は十分注意してください。

 

補助的な薬としては、神経にいいビタミンであるメチコバール(ビタミンB12)が使われます。

我慢できない痛みがある場合は、消炎鎮痛剤も内服します。

それでも、激しい痛みが取れない場合は、神経ブロックなどの対症療法によって、 痛みを軽くする治療が行われます。

 

最近、薬を必要以上に飲みたくないという方が増えてきましたね。確かにそれも大切なことなのですが、 抗生剤や抗ウィルス剤に関しては、正しい量を、処方された期間きちんと服用しなければいけません。

自覚症状がとれたからといって、早めにやめてしまうと、再発の恐れがあります。

 

余談になりますが、薬の効果を活かすオマジナイをひとつ紹介します。

 

ひとつの薬が開発されるまでには、とても沢山の人々の命や、実験動物達の命が犠牲になっています。

たった一粒の薬について考えても、多くの命が土台となっているのです。薬はモノではありません。

命のかたまりなのです。

 

多くの命に「ありがとう」と、心の中で言ってから飲むと、その効果が最大限に発揮されます。

感謝の気持ちでいるときは、「気」の流れも良くなりますから、東洋医学的に考えても、 身体が良い状態に近づくから・かもしれませんね・・。

 

さて、帯状疱疹の話に戻りましょう。

 

《中医学的考え方》

 

中医学では、「蛇丹」、「纏腰火丹」(てんようかたん)、「纏腰竜」、「水帯疱」などと呼び、 湿熱によるものとされています。疲労やストレスがたまったり、免疫力が低下すると発症します。

 

発疹は熱邪があり、水疱がは湿邪があると考えます。痛みは、患部に気血が滞るために生じるものです。

帯状疱疹後神経痛は「蜘蛛瘡」(ちじゅそう)といわれ、激しい痛みに加えて便秘・口渇・頻脈を 伴うことが多く、精神的な苦痛も大きいようです。                                             

病機別考え方  

1.肝胆欝火(風火の邪が肝経に鬱滞し、火邪が皮膚にこもる)

多くは腰肋部に発症する。    

過労やストレスが原因となることが多い。    

頭痛や眩暈を起こすこともある。    

治則:清泄肝火

   

2.脾経湿熱(湿毒が脾経に鬱滞し、湿熱が皮膚に浸出する)

多くは胸部に発症する。   

疲労がたまっていたり、暴飲暴食が原因となることが多い。    

治則:清利湿熱

   

症状別治療法    

 

1.初期・灼熱性疼痛と水泡の出現

舌診:

紅・薄黄か膩苔

脈診:

弦・滑

治則:

清熱除湿(身体に入ってしまった熱邪と湿邪を取り去る治療をします)

漢方薬:

竜胆瀉肝湯

 

  

2.高熱・口渇・皮膚の痛み

舌診:

紅絳・黄厚苔

脈診:

滑数

治則:

清熱解毒(熱を下げ、外邪の影響を抑える治療をします)

漢方薬:

清営湯

 

 

3・暴飲暴食が原因の場合

舌診:

胖・白厚苔・白膩苔

脈診:

緩または滑

治則:

健脾燥湿(胃腸の働きを整え、湿邪を取り除く治療をします)

漢方薬:

除湿胃苓湯

    

 

4.過労やストレスが原因の場合

舌診:

暗・薄白苔

脈診:

沈細または沈緩

治則:

活血化お(血流を良くし、血の滞りをなくす治療をします)

漢方薬:

益気活血散お湯

 

 

以上のように、中医学的治療では、病気になったもとの原因や、病気の状態を把握して、治療方針を決め、また、さらに患者さんひとりひとりの体質に合わせた治療をしていきます。

 

現状ではまだ、帯状疱疹後神経痛にまで進行してしまった方が、西洋医学ではどうしようもなくなって、鍼灸治療に切り替えるという患者さんが多いのですが、できればもっと早めに、鍼灸治療を受けられることを、お勧めします。

 

痛みや後遺症が軽くてすむという事はもちろんですし、帯状疱疹になる原因となった、 疲労や免疫力の低下も改善できるからです。

病気なった頃よりも、元気な身体作りができるはずです。

 

鍼は痛いのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、注射針や縫い針のように太い針を刺す訳ではありません。

鍼灸治療の鍼は、細いものでは髪の毛より細いですし、太くても木綿糸程度で、容易にクニャクニャと 曲げられるほど弾力性があります。

刺して痛いというより、ズーンと重たいような響きがあり、これが「気」を動かす刺激となって、鍼の効果 につながっていくのです。

 

鍼を受けると、気持ちが明るくなると、おっしゃる患者さんが多いのは、やはり、 「気」が元気よく巡るようになるからではないでしょうか。

 

日常生活の注意

 

痒くても病変部位を引掻かないようにしましょう。水泡が破れた場合は、ウィルスが他の場所について、 感染を広げてしまうことがあります。水疱瘡になっていない子供にはうつります。

飲酒や熱い風呂への入浴は避けます。

暴飲暴食は避けて、正しい食生活をし、なるべく身体を休めて、ストレスや疲労をためないように心掛けましょう。

 

帯状疱疹は、鍼灸治療による効果が期待できる主要な疾患のひとつです。

 

世の中には、さまざまな鍼灸院がございます。

自分自身が求めている治療は何かを明確にし、納得できる鍼灸院を探して、治療にあたると良いかと思います。

 

個人個人の体質に合わせての治療を行います。お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
胆石

胆石は、肝臓から十二指腸に続く胆汁の通り道(胆道)に石ができる病気です。ときとして右上腹部に激痛が起きますが、まったく無症状のまま経過するケースも多くみられます。

胆石は、体内にとり込まれた脂肪やたんぱく質などの消化を促す胆汁の成分が固まって、石状に形成されたもので、大きさや形はもちろん、できる場所、種類、形成・成長過程なども実に様々です。

胆汁には胆汁酸、リン脂質、コレステロール、ビリルビン(胆汁色素)などの成分が含まれています。

胆石の種類は構成成分によって、“コレステロール胆石”と“色素(ビリルビン)胆石”、その他の胆石に分けられます。

 

胆石は、発生部位によって胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分けられます。

胆嚢結石”は、胆嚢内にできた結石で、コレステロール石が圧倒的に多く、胆石のなかで最もよくみられるものです。

総胆管結石”は、胆管内にある結石で、大半は胆嚢内にできた結石が胆管に押し出されてきたのです。

肝内結石”は、肝臓内の胆管にできる結石で、胆嚢結石や総胆管結石と比べると発生率の低い胆石です。

 

日本では、胆石保有者数が年々増える傾向にあり、現在、成人の5~10%の人が胆石をもっていると推測されています。

また、第二次世界大戦前には約80%が色素胆石だったのに対し、近年はコレステロール胆石が70%以上を占めるようになっています。

胆石保有者が増えている要因の一つに、検査技術の向上や人間ドックなどの普及によって胆石がみつかりやすくなった点があげられます。

また、食生活が欧米化して、脂肪などの摂取量が増えたことも関係していると考えられます。

胆石ができやすいタイプは、Fecund(多産)、Female(女性)、Fatty(体格がよく、小太り)、Forty(40歳以上)の「四つのF」という特徴があるといわれています。

実際、胆石のできる割合は男性より女性のほうが1,5~2倍ほど高く、やせている人より太っている人のほうが多いことも明らかです。また、年齢が高くなるにつれて胆石ができやすくなり、60~70代がピークです。

このほか、食事の時間が不規則だったり、ストレスが多いことも胆石ができやすい条件になります。

 

 

コレステロール胆石の形成≫

コレステロール胆石の患者数は年々増加しており、全胆石の大半を占めるといわれています。

成因については、解明されていない点も多くあります。結石ができるまでの3段階は、まず胆汁が過飽和の状態になり、次に核が形成されたり、コレステロールが結晶化し、さらに、肉眼でわかる大きさの結石に成長すると考えられています。

コレステロールは水に溶けないので、胆汁中では、胆汁酸とレシチンで形成されるミセルという形態に包み込まれたり、ベジクルというリン脂質の膜で覆われた状態で存在しています。

しかし、ミセルとベジクルがコレステロールを取り込む量には限度があるため、何らかの原因で胆汁中のコレステロールが増えすぎるか、逆に胆汁酸やレシチンの割合が低くなると、コレステロールをそれ以上ミセルとベジクルに取り込めなくなります。この状態を過飽和といいます。

胆汁中のミセルとベジクル、コレステロールのバランスが崩れた結果 、胆石ができやすくなるのです。

コレステロールが増えすぎる原因としては、コレステロールの摂取量 や腸管から吸収される量の増加、肝臓でのコレステロールの合成量の増加などがあげられます。また、胆汁酸とレシチンが減少する原因としては、腸の手術後や、腸の炎症によって胆汁酸をうまく吸収できなくなるか、先天的な胆汁酸を生成する機能の異常などが考えられます。

これらの理由から、胆汁が過飽和の状態になると、胆汁中のベジクルが集まって塊となったり、コレステロールの結晶が形成されます。さらに、胆嚢の機能障害などが加わり、胆石に成長していくといわれています。

 

 

色素胆石の形成≫

色素胆石は、ビリルビンカルシウム石と黒色石の2種類に分けられますが、その成因は、胆道への細菌感染や寄生虫の侵入、ファーター乳頭という、胆管の出口にある小さな突起の炎症(乳頭炎)や傍乳頭憩室のよる胆汁の流れの停滞、低脂肪で炭水化物に偏った食事などです。

特に、大腸菌やそのほかの細菌による胆道感染が起こると、これらに含まれるベータ・グルクロニダーゼという酵素によって水溶性のビリルビンが分解され、水に溶けにくい性質に変化します。

このビリルビンが胆汁中のカルシウムと結合して、ビリルビンカルシウム石ができると考えられています。

胆汁のpH(水素イオン指数)がアルカリ性に傾いたり、胆汁酸の濃度が低下しても、ビリルビンカルシウム石ができやすくなるといわれています。

一方、黒色石は、溶血性黄疸や肝硬変が原因になったり、心臓の弁置換手術後や胃の切除手術後などに形成されることが多いのですが、形成されるメカニズムについては、まったく明らかにされていません。

 

 

胆石による症状≫

胆石で最も特徴的な症状は、疝痛発作といわれる、さし込むような激しい腹痛です。疝痛発作は、胆汁を分泌しようとして胆嚢が収縮するときに、胆石が胆嚢から総胆管や十二指腸のほうへ動かされて内壁とこすれ合うと生じます。

また、胆嚢頸部や総胆管などに胆石がつまる胆石かん頓によっても起こります。

胆嚢は食事でとった脂肪分を処理するために働くので、疝痛発作は脂肪分の多い食事や料理を食べたり、暴飲暴食の後に現れやすくなります。

最初は、上腹部の圧迫感や不快感などで始まりますが、しばらくすると右上腹部に刺すような痛みを感じるようになります。

痛みは、10分程度で治ることもあれば、数時間持続ずることもあり、市販の鎮痛剤では治まらないこともしばしばです。

また、疝痛発作の前ぶれとして、吐気や悪寒、右肩のコリといった症状が現れるケースもみられます。

上腹部のほかに、右肩や右腕、背中などに痛みが起こることもあります。この痛みは放散痛といわれ、内臓の痛みの刺激が脊髄にある知覚神経に影響を与えるために現れるものです。

腹痛とともに右肩への放散痛があれば、胆石である可能性が高いといえます。

疝痛発作のほかに、黄疸や発熱がみられることもあります。黄疸は、胆石によって胆管がつまり、胆汁の流れが悪くなったときに現れます。

また、発熱は37~38℃程度で、疝痛発作に伴う一時的なものがほとんどですが、高熱が何日も続いたり、上がったり下がったりを繰り返すような場合は、胆管炎や胆嚢炎を併発している場所や種類によって異なります。

例えば、疝痛発作はビリルビン胆石よりもコレステロール胆石のほうに起こりやすいといわれています。

コレステロール胆石は軽くて小さく、胆汁の中で動きやすいため、発作を誘発しやすいと考えられます。

また、胆石があっても、まったく症状が現れないこともあります。このような胆石をサイレントストーン(無症状胆石)とよびますが、胆嚢内結石の多くがこの無症状胆石のため、健診などで偶然にみつかるケースが少なくありません。

 

 

現代医学による治療法≫

胆石の治療法は、手術をしないで胆石だけを取り除く保存療法と、手術によって胆嚢ごと摘出する手術療法に大別 されます。

保存療法には、溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法、内視鏡的療法があります。

溶解療法は、溶解剤を用いて胆石を溶かす方法で、経口薬を服用する場合と、胆嚢にチューブを挿入して胆石に直接溶解剤をかける場合があります。

ただし、すべての胆石に有効なわけではありません。

溶解療法が適応できるのは、胆石が胆嚢内にあることが条件で、さらに直径1~1,5cm以下の純コレステロール石で、表面 が石灰化していないものに限られます。また、胆嚢に変形や萎縮がなく、疝痛発作などの激しい症状がみられないことも条件です。

体外衝撃波胆石破砕法は、体外から衝撃波をあてて胆石を細かく砕く治療法です。

砕いた石は、さらに溶解剤を服用して溶かす必要があります。

体外衝撃波胆石破砕法も溶解療法と同様、胆嚢内の胆石であること、石の大きさが直径2cm以内で、数は最大3個までといった適応条件があります。

また、適応条件をクリアしても1回だけでは破砕できず、何回も行わなくてはならないケースもあります。

総胆管結石に対しては、溶解療法や体外衝撃波胆石破砕法は適応となりませんが、内視鏡を用いた十二指腸乳頭括約筋切開術で摘出できる場合があります。

内視鏡を十二指腸まで挿入し、十二指腸が下行している部分である下行脚に位 置するファーター乳頭の括約筋を一部切開し、総胆管にある胆石の自然排泄を待ったり、機械を用いて切石します。

また、胆石をバスケットという器具を使って摘出したり、切石除去する方法もあります。

結石が大きすぎて切開部を通らない場合は、衝撃波やレーザーで結石を小さくしてからとり出します。

溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法は、手術をせずにすむので苦痛が少ないという長所がある半面 、適応範囲が狭いことと、胆嚢を残しているために再発が多いことが最大の難点です。

また、破砕した石片が胆嚢管に引っかかると、胆嚢が機能しなくなるケースもみられます。

まだ様々な問題が残されており、根本治療という意味では限界があります。

 

疝痛発作をたびたび繰り返したり、保存療法で軽快しないときや、胆嚢炎、胆管炎を合併しているような場合は手術の適応となります。

手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡下胆嚢摘出術があります。

開腹手術は胆石のある場所によって、所要時間や手術方法、入院期間などが異なります。

最も多くみられる胆嚢内胆石では、胆嚢を切除するだけの簡単な手術で、1~2時間前後で済みます。

総胆管結石の場合は、総胆管を切って胆石を取り除くとともに、胆嚢も摘出します。

摘出後、胆汁が腹腔内に流れないように切開した部分にチューブを入れ、胆汁を体外に排出するなど補助的な処理が必要となるため、胆嚢内胆石の場合よりも入院期間は長くなります。

従来の開腹手術に対し、腹部を切らずに胆嚢を摘出するのが腹腔鏡下胆嚢摘出術です。

腹腔鏡下胆嚢摘出術は、腹部に3~5箇所の小さな孔をあけ、そこに内視鏡の一種である腹腔鏡をいれて、腹腔内をモニターで観察しながら胆嚢を取り出す方法です。

開腹手術のように腹部を大きく切開する必要がないため、手術後の痛みが少なく、傷もほとんど残りません。

開腹手術の入院期間が2週間から1ヶ月ほどかかるのに対し、3日から1週間で退院できることから、画期的な治療法として広く普及してきています。

しかも、治療効果は開腹手術とほとんど変わらないので、今後は腹腔鏡下胆嚢摘出術が治療の主流になっていくと思われます。

保存療法、手術療法のどちらにしても、数多くの方法が開発されて選択肢はますます広がっています。

治療にあたっては、胆石の種類や数、大きさ、胆嚢の状態、全身状態などを把握し、最適な方法が選択されます。

 

 

【中医学的な捉え方】

人体について、中医学的な考え方と、現代医学的な考え方は異なります。

中医学では人体を一つの“小宇宙”として捉えています。

身体にある器官を一つ一つ別個に考えるのではなく、一つの有機体とみなし、常に全体のバランスを視野に入れて病気を考えていきます。

詳しくは、「わかりやすい東洋医学理論」をお読み下さい。

胆石について、関わる臓器は「肝と胆」です。

肝の働き・・・

疏泄を司り、血を貯蔵しています。

疏泄”は流れや発散という意味で、気血の流れを円滑にするという働きを指します。血の貯蔵とは、体内を循環してきた血を貯めて全身の血量 を調節する働きをいいます。

 

胆の働き・・・

肝で生成された精汁である胆汁を蔵し、小腸に分泌する働きがあります。

胆は肝に附属しており、両者は経脈に通じて相互に関連しています。また、胆汁の根源は肝にあり、肝の余気が胆に排泄され、そこで凝集して生成されたものが胆汁であるとされています。

胆汁の分泌は肝の疏泄機能の調節を受け、肝胆は協調して消化機能に関与しています。

肝胆は表裏の関係にあり密接で、一方の機能失調は他方に波及して、最終的には肝胆両者の失調が起こります。

胆石は、「肝胆湿熱」の証で起こると考えます。

原因は、

湿熱の邪を感受(夏・秋に多発)・・・

 

気候の変化も人体に大きく影響します。

湿”は人体には余分な水分です。

夏と秋をつなぐ時期は湿気が最も盛んな季節です。湿気の多い気候、また雨に濡れたり長いあいだ湿った所にいることは湿邪が人体に侵入する原因となります。湿邪は気の運行を阻滞(渋滞)させてしまいます。

また、湿邪が人体に侵入し長く停滞すると熱化していきます。

体内に過剰な水分と熱が停滞している状態は、代謝機能を失調させる原因となります。

 

甘いもの、油っぽいもの、味の濃いものの過食(肥甘厚味の過食)・・

 

このような食べ物は脾胃の消化機能を低下させ湿熱を生成させます。脾胃で形成された湿熱は、肝胆に移行していきます。

 

過度の飲酒・・・

 

少量の飲酒は気血の循環を促しますが、飲み過ぎが長期間続くと、湿熱が生成され脾胃を傷め、肝血を障害します。

 

ストレス(感情の変化)・・・

 

気の流れを円滑に行うのが肝の疏泄機能です。

ストレスは気の渋滞を引き起こします。

以上のような原因により、湿熱が体内に侵入し停滞することで胆汁の排出がスムーズに行われなくなります。熱が発生することで炎症を起こり、肝胆の機能が亢進します。

機能が正常を超えてしまうと、分泌過剰や、濃縮が過剰となり、代謝異常が起こります。

このように、胆汁の鬱滞、炎症、代謝異常が起こることで胆石が形成されていきます。

 

肝胆湿熱で起こる症状には、胆石の他に“脇胸部脹痛・黄疸・食欲減退・悪心嘔吐・口が苦い・寒熱往来(悪寒と発熱が交互にあらわれる)・大便不調(泥状便または便秘)・尿量 減少・陰嚢湿疹・睾丸腫脹・帯下・外陰部瘙痒感”などがあります。

治療方法・・・

清泄湿熱・疏肝利胆(肝胆の湿熱を取り除き、疏泄機能を整えます)

出来てしまった胆石を取り除くことは、鍼灸治療では困難です。

しかし、胆石が出来た事による附随症状の緩和・痛みの軽減に対しては有効かと思います。

(例:食欲不振、季肋部の脹り・痛みなど・・)

そして、胆石の出来やすい体質を改善することを目的にお手当を続けることも大切です。

 

X線撮影やエコー検査(超音波検査)など、現代医学の発達した検査機能を活用し、日常の生活習慣・食生活に気をつけながら適切なお手当を受けて頂きたいと思います。

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