コラム

2019/02/20
坐骨神経痛

腰から足にかけての「痛み」、「しびれ」、「圧痛」。このような症状は、年齢を重ねるにつれて 多くの方が経験しているのではないでしょうか。もちろん若いかたでも経験している方は、 いらっしゃると思います。

今回は、整形外科疾患の一つである坐骨神経痛について、述べていきたいと思います。

 

 

現代医学的な坐骨神経痛の捉え方●

 

まずは現代医学的に坐骨神経痛を捉えていきたいと思います。

 

坐骨神経は腰から骨盤、大腿後面を下り、足先にまで伸びている末梢神経のひとつです。 人体の中で最も太い神経で、比較的皮膚に近い位置にあります。

 

この神経に何らかの外的要因が加わることで、神経に沿った痛みやしびれが誘発されます。

このような症候を総称して坐骨神経痛と言います。

また、坐骨神経痛の症状としてはこの他にも、神経に沿った圧痛、神経障害の徴候として、 筋力低下や筋萎縮、知覚障害なども認められることがあります。

 

坐骨神経痛の原因には主に神経根の圧迫と、梨状筋の過緊張による神経の圧迫が考えられます。

 

神経根の圧迫

 

神経根の圧迫による坐骨神経痛には、具体的な原因として、以下の疾患が挙げられます。

椎間板ヘルニア

変形性脊椎症

脊椎すべり症

 

 

梨状筋の過緊張

 

梨状筋は仙骨から大腿骨に付着している筋肉で、坐骨神経はこの梨状筋の下縁もしくは筋中を通 り、下肢へ続いています。この梨状筋が過緊張を起すことで、坐骨神経を絞扼し、痛みやしびれが誘発されることがあります。

 

これらの治療には、基本的には保存的治療が行われます。

硬いマットレスを用いたベッドでの数週間の安静と、痛みと炎症を軽減するための薬剤だけで 回復することもあります。器質的な問題の場合は、外科手術が行われることがあります。

 

薬剤については、痛みの程度に応じて鎮痛剤が処方されることがあります。

神経根圧迫に伴うものについては、非ステロイド系抗炎症剤が処方されることもあります。

また、ここでは詳しくは触れませんが、運動療法や温熱療法によって改善はかる場合もあります。

 

 

 

中医学的な坐骨神経痛の捉え方●

 

では次に、中医学的に坐骨神経痛を捉えていきたいと思います。

 

中医学では、筋、骨、関節の疼痛、腫脹、しびれを主症状とする病症を“痺証”と呼びます。

坐骨神経痛もこの“痺証”に分類されます。生体エネルギーが消耗している状態で、 風邪・寒邪・湿邪が体内に侵入して、四肢の経絡の気血運行を阻滞することで”痺証”となります。

 

風邪・寒邪・湿邪は、総括して外邪と呼ばれ、人体に外を及ぼす気候的変化のことを言います。

例えば、冬などのとても寒い日に腰が痛みだす、といったことは、中医学的には外邪が人体に 侵襲して発病したと考えられます。

 

このことから、多くの場合“痺証”は、季節の状態に左右されやすい傾向があると言えます。

つまり、基本的には、体質と季節を総合的に考えた養生も、治療に重要なエッセンスに なると考えられます。

 

それでは次に痺証の証タイプについて述べていきます。

痺証は風邪・寒邪・湿邪の強さや経過によって異なったタイプの症状が現れます。

これらのタイプには主に4つのタイプがあり、行痺、痛痺、着痺、熱痺と呼ばれます。

 

行痺

行痺は、3つの外邪の中で主に風邪が旺盛の場合にみられる痺証です。  

風邪は、他の病邪と結合して人体に病を引き起すことが多い外邪で、特徴としては、 症状の移り変わりが早いという特徴を持っています。  

具体的な症状としては、痛みの箇所が一定ではなく、寒さを感じる風にあたると症状が悪化したり、  脈浮または脈弦緩がみられる場合などは、行痺が疑われます。 治療には、風邪を抜きさる治療を主として、寒邪、湿邪に対しても治療ができる配穴が必要です。  

また、体質的に影響を受けやすい状態の場合は、臓腑に対してもエネルギーの底上げが必要と考えます。

特に風邪の場合、肝の臓を健康にすることで、風邪に対する耐性を強くすることができます。

 

痛痺

痛痺は、3つの外邪の中で主に寒邪が旺盛の場合にみられる痺証です。  

寒邪は、体を冷やし、免疫力を低下させる作用をもった外邪です。  

具体的な症状としては、疼痛部位が固定であり、冷えにより症状は悪化し、逆に温めることで症状は  緩和します。また、疼痛部に触ってみても熱感はありません。 この痛痺は、気温が急激に低くなる場合に発症しやすい傾向があります。秋から冬にかけて、急に気温が下がる日や、夏でもクーラーに長時間あたっている場合は危険信号となります。  

治療には、温熱療法や、体質的に寒さに対する耐性を強くする配穴が必要となります。

 

着痺

着痺は3つの外邪の中で主に湿邪が旺盛の場合に見られる痺証です。  

湿邪は、体を重だるく感じさせたり、代謝を妨げる作用を持った外邪です。  

具体的な症状としては、関節局部の重だるさ、痛みの部位は固定であり、雨天の場合に症状が  増悪することがあり、このような場合は着痺が疑われます。梅雨時期などは要注意となります。  

治療には、湿邪を除去する配穴が必要です。また、湿邪は脾の臓を侵襲しやすい外邪です。  

逆に言えば、脾の臓を健康にすることにより、臓腑生理の面から湿邪の除去を手助けすることも可能となります。

 

熱痺

熱痺は、風邪、寒邪、湿邪の外邪が従陽によって化熱することで現れる証です。  

従陽とは、従化という病理的な変化のタイプのひとつであり、寒がりや暑がり、水分代謝に異常がある場合、元気の出ない場合などの体質に上に、外邪が慢性化することで、風邪、寒邪、湿邪が化熱してしまうことを意味します。  

そのため、この証タイプでは、関節部の発赤・腫脹・疼痛、灼熱感がみられ、冷やすことで症状が軽減するといった傾向がみられます。また、口渇や煩悶、脈は数脈といった症状を伴うこともあります。  

この証タイプの場合、清熱、つまりは体内にこもった熱を分散させる配穴を主として、熱に至った原因となる体質改善の配穴も必要となります。

 

 

いかがでしょうか?

中医学的な坐骨神経痛に関しての考え、ご理解頂けましたでしょうか。

 

つまり、中医学的な考えでは、本質的なお手当が大切であり、単に筋肉をほぐす、あるいは牽引などで腰椎を引っぱるといった一時的な手当てだけではなく、気候の変化による体への負担にも注意をはらい、手当てをしていくのが中医学的治療であるとご理解いただけると幸いです。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
三叉神経痛

人間の身体には、感覚をつかさどる知覚神経、筋肉の動きを支配する運動神経、また身体のバランスをとる自律神経があります。

顔では顔の表情をつくる神経が運動神経で、この神経が障害され麻痺すると「顔面 神経マヒ」になります。顔を触られて感じる感覚や温度を感じる神経が三叉神経で、この神経に障害があるととても強い痛みが出ます。

 

ナイフでえぐられるような痛みとか、焼けるような痛みとか、電気が走るようなと表現されるこの三叉神経痛について、西洋医学と中医学からの診断、治療をお話していきます。

 

 

<三叉神経の解剖的特徴>

三叉神経は文字通りⅠ枝、Ⅱ枝、Ⅲ枝と三本に枝分かれしています。

枝:おでこ全体から鼻の真中あたり

枝:頬から鼻の脇、上唇(うわくちびる)のあたり、上の歯、鼻粘膜

枝:下あごのあたり、下の歯

主には顔の知覚をつかさどる神経です。

クシャミが発生する時は鼻の粘膜で異物を三叉神経で察知して、それからクシャミをする筋肉に連絡しています。

歯の痛みを感じたり、口で物を咬む時もこの神経が関係しています。

 

 

<三叉神経痛の特徴>

・ 突発的でとても強い痛み

・ 発症部位はⅡ枝、Ⅲ枝が多い

・ 男性よりも女性に多い (.5~2倍)

40才以降に発生する (50才以降に有意に増加する)

・ 神経痛の持続時間は短く 数秒から数十秒

・ 冷たい物を飲んだり、洗面、歯磨き、ヒゲ剃り、食事などにより誘発される

・ 痛みのあるところに触ると痛みが強くなる

 

 

<西洋医学的原因>

いままで突発性(原因不明)とされてきた多くの三叉神経痛の原因は、屈曲した動脈が脳神経の三叉神経の根元を圧迫することによるものと判断されるようになってきました。少数に脳腫瘍や、ヘルペスウィルスによるものがある。

 

 

<西洋医学的な治療と予後>

1. 薬物治療

まず第一には、テグレトール(カルバマゼピン)といわれる薬による治療から始まる。三叉神経痛には特効薬として良く効く。

短所として徐々に効き目が減少すること、副作用としてふらつき、眠気、脱力感などがある(※てんかんなどにも使う薬)80%の症例に有効といわれています。

 

2. 神経ブロック

痛みを起こしている三叉神経の枝に対して直接、または神経の周囲に麻酔薬を注入して神経を麻痺させる。薬物治療で抑えきれない場合、手術に踏切れない場合には良い治療法です。薬効が切れるたびに再度ブロックする必要があります。

 

ガンマーナイフ(定位放射線手術)治療・・・ガンマーナイフは元々は手術のやりにくいところにある腫瘍にピンポイント(局所的)で放射線をあて腫瘍を焼いて治療する方法です。頭をボルトで固定してガンマ線を病巣部に照射して凝固・壊死させる。速効性はないが身体の負担が少ない。比較的新しい治療なので長期の効果 、副作用は未知である。治療入院期間1~3日。

 

3. 手術療法(微小血管減圧術)

三叉神経を圧迫している血管を手術によって直接圧迫を取り除く手術。十円玉 程度の開頭手術になる。90%以上の効果があると考えられていて、根本治療になる。全身麻酔が必要で、10日程度の入院が必要になる。

 

 

 

<中医学からみた痛みの考え方>

中医学は耳慣れない言葉や考え方がありますので、先に中医学の痛みに対する概念のお話をさせていただきます。

 

中医学では痛みは大きく虚、実の二つに分けて考えます。

 

虚、実とは簡単にいうと 虚は栄養が足りない状態 実は力が過剰な状態や邪気(悪いもの)に侵されてしまっている状態のことをいいます。

虚症の痛み―――

痛みが長時間続く、しくしく痛む、按えると痛みが緩和する。

虚症の痛みは「不栄則痛」といわれ臓腑や経絡上が栄養不足になり起こる痛み。

実症の痛み―――

突然痛み出す、激しく痛む、按えると痛みが強くなる。

実症の痛みは「不通則痛」といわれ邪気が臓腑や経絡上の気血の流れを遮ってしまい起こる痛み。

このことからも三叉神経痛の痛みの症状は実症の痛みであることがわかります。

 

では、具体的にどのような原因でこのような痛みがでるか考えます。

 

 

<原因と症状>

三叉神経痛の原因は主には、風寒(ふうかん)証、熱証、オ血証があります。

 

風寒証―――風邪と寒邪が合わさった邪気に顔面部の経絡が犯されます。

これは、顔面部に冷たい風をあびてしまったり、ウィルスなどの原因によって起こるものがこれにあてはまります。

風邪は身体の上部を犯しやすい性質があり、寒邪は収斂(縮める)作用や凝滞(滞らせる)作用があるので気血の流れを悪くして痛みを発生させ、三叉神経痛をおこします。

特徴的な症状としては、冷えると痛みが増したり、逆に温めると痛みが緩和したりします。

鼻水が出やすくなります。

 

熱証―――熱証の中には、風熱(ふうねつ)という外邪性のものや、ストレスなどから気が滞り熱化(気は滞ると熱になることがある)して火に変わり、火や熱はやはり上昇する性質があることから身体の上部の経絡に影響をおよぼし、顔面 部の経絡の流れを悪くした場合は、三叉神経痛をおこす。

特徴的な症状としては、焼かれたような痛み、目が充血したり、咽が渇いたりします。

 

オ血証(オ血とは血が滞った状態のことをいいます)―――オ血証は慢性期によくみられる状態です。三叉神経痛は度々発作を繰り返し、強いストレスになります(気滞)。また、食事などの誘引により発作がおきることから食事が取りにくく身体の力も弱くなりがちです(気虚)。これらの原因で気の流れが悪くなった結果 、血の流れも悪くなり、オ血(血の流れが悪くなった状態)になります。

特徴的な症状は、慢性的な痛み、顔色が暗くなるなどがあります。

 

 

<鍼治療>

鍼治療では顔面部のツボと身体のツボの両方を使っていきます。

まず、顔面部では三叉神経のⅠ、Ⅱ、Ⅲ枝とわかれた痛みの症状のある部分のツボをとります。顔面 部の痛みをとる鍼治療は一般的に鍼を長めに置きます(20分以上)。身体には原因を診断した上で、それぞれの原因にあったツボをとります。外性の邪気には邪気を退治する方法、冷えたものは暖め、熱邪に対しては熱を取り、オ血では血の流れを良くするツボを取ります。治療は初期は週に2~3回治療し、痛みがコントロールできるようになったら週1回の治療にしていく方法がよいとおもいます。

発作的な痛みがでると、とてもストレスになります。そのストレスから更なる悪循環をおこさないようにする為にも、しっかりとした治療が必要です。

 

<三叉神経痛のケアの仕方>

患部を不適切に触ると痛みが誘発されることがありますので気をつけましょう。

 

睡眠不足や疲れによっても痛みが出やすくなります。夜更かし、過度の疲労は避けるように心がけましょう。。

 

三叉神経痛は強い痛みが出て、しばしば繰り返し発症するにもかかわらず、薬(テグレトール)のみでは抑えることが難しい病気です。

神経ブロックや手術もありますが、それぞれの長所、短所などを検討した上で方法を選択し、その中で鍼による治療や、薬と鍼の併用治療などでやるのも良いかとおもいます。

三叉神経痛でお悩みの方、一度中医学(東洋医学)による治療を試みるのも宜しいかと思います。鍼治療は、有効的な治療かと思えます。症状が発生して期間が1週間以内なら3~5回の治療で楽になります。逆に時間が過ぎれば過ぎるほど治りが遅くなります。この点にご留意して下さいませ。

 

ご質問のある方は、お気軽に当院までご相談下さい。

2019/02/20
子宮下垂

子宮の位置は、通常骨盤のほぼ中央にあり、先端は膣の中に少し突き出た状態にあります。

子宮下垂とは子宮が正常な位置から離れて、膣に沿って下降した病変をいいます。

そのうち、膣から外に出ていないものを子宮下垂といい、子宮の一部または全体が膣外に脱出しているものを子宮脱といいます。

子宮が下がっている場合、子宮の前にある膀胱、子宮の後方にある直腸がそれぞれ一緒に引っ張られて下降してくることがあります。そのため、膣内に圧迫感がある、便秘や腰痛、腹痛を起こしたり、排尿困難や尿失禁を起こす場合もあります。

 

子宮下垂と子宮脱は子宮を保持している周囲の筋肉群や靭帯群などの緊張力がゆるまってしまったり、弱まってしまったときに起こるとされています。

そのため子宮下垂は加齢によるものが多く、閉経後5~10年で始まるケースが多いようです。また多産によって子宮が下がったり、出産で分娩時に骨盤底の筋肉が引き伸ばされたり、出産後すぐに仕事を始めた方、重労働者、虚弱体質の方に見られます。

 

以下にくわしく、中医学的な子宮下垂の捉え方、タイプ別の治療法・日常生活の過ごし方をご紹介していきたいと思います。

 

 

中医学的子宮下垂の捉え方▼

中医学では主に「体全体のパワー不足」によって引き起こされると考えられています。

子宮下垂になりやすい方は上記でも少しふれましたが、加齢、多産婦、出産後すぐに仕事をした、虚弱体質など、すべての方に共通 してエネルギーの消耗による体のパワー不足があげられます。

その他、疲れ易い、疲れが取れにくい、倦怠感、息切れを起こし易い、話すのが億劫、食欲がない、風邪を引きやすいなどエネルギー不足による症状が全身に見られます。

 

では、なぜ子宮下垂がパワー不足で起こるのかといいますと、通常子宮をはじめとした各々の臓器は「一定の位 置を保つ力」を備えています。

その保つ力が生まれつき弱かったり、後天的に失ってしまった場合、一定の位 置からダランと下がってしまいます。これが中医学で考えます「パワー不足=下垂症状」になります。

皆さんもご存知の身近な例をあげますと胃下垂があります。生まれつき胃下垂がある方の特徴として、痩せていて食べても太らない、疲れやすいなど胃の虚弱症状がみられます。それに対し、子宮下垂は後天的なパワー不足によって起こることがほとんどです。

 

 

中医学的診察・治療方法▼

 

診察方法

個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。

その他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し、中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。

その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

 

治療方法

中医学では、体全体をひとつの働きとして見るため、それが部分的にあらわれている症状だけなのか、或いは全身と関連した中で起こったことなのかという両方の視点で病気を見つめます。そして、全身のバランスを調整していきます。

一方、現代医学では体を細分化し、病巣であるひとつのパーツを中心に病気を見つめていきます。

中医学と現代医学では「身体を見る目」が異なります。こうした考え方の違いは治療にも反映され、それぞれの特徴になっています。

 

症状が軽度で手術の必要がない方は、鍼灸治療でエネルギーの補充を図り、日常生活の食事や体操などでエネルギーの保持・増進されることをおすすめします。

 

ここで簡単に、中医学的体のしくみについて、子宮下垂と関連の深いそれぞれの臓腑の働きについてどのように考えられているのかを説明していきたいと思います。

 

中医学的からだのしくみ▼

 

~「気」「血」「水」とは~

体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。

もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

 

~臓腑の働きとは~

「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。現代医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。

ですので、現代医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。

 

<子宮下垂に関わる主な臓腑の働き>

「脾」・・

食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。

働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。

軟便または下痢、痰が多く出る、手足がむくむ、食欲がない、身体が重だるい

 

 

エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。

働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。

 

 

血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。

働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

 

 

「腎」・・

 

生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。

「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。生まれたときにこのエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの発育不良の状態があらわれます。

生殖器関係では、月経、妊娠、出産時のパワーの源であり、産後エネルギー不足になると子宮を一定の位 置に保つ事ができず下垂しやすくなります。

「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。

例)

骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる

婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい、子宮下垂

冷え症状が加わると、さむけ、下痢をしやすい(特に朝方)、手足、腰の冷え

 

 

現代医学的な診断・検査・治療法▼

 

~子宮下垂・子宮脱のレベル~

 

第1段階(子宮下垂)

子宮が元の位置より少し下がっている状態です。この段階では自覚症状がありませんが、膀胱がいっしょに下がっている場合には尿が漏れやすくなったり、残尿感がでることがあります。

 

第2段階

子宮が腟の入り口あたりまで下がっている状態です。入浴時などに陰部からしこりのような子宮の出口に触れてわかることが多いようです。

 

第3段階(子宮脱)

子宮だけでなく、膀胱や直腸の一部も腟の壁とともに下垂して外陰部の方に出ている状態です。

このように膀胱や直腸が腟の壁をふくらますように下がっている状態を膀胱瘤、直腸瘤と呼びます。歩くのが苦痛になり、排尿も排便もうまくできなくなります。トイレに行っても尿はわずかしかでませんが、手指で子宮をおしこむようにすると排尿できます。

 

検査

子宮下垂の場合は腹圧をかけながら下垂度合いをみたり、子宮の一部(子宮膣部)を牽引しながらみます。

子宮脱の場合は膣外に脱出している子宮をみればわかります。

 

治療

発症初期であれば、合成樹脂製の円形のぺッサリーという子宮を持ち上げる機器を利用しますが、ぺッサリーを外した時には効果 がなくなること、長期使用すると膣壁に炎症をおこしてしまうこともあります。その他手術による子宮保持装置の補強です。

子宮脱に膀胱脱、直腸脱を伴っている場合は膣式子宮全摘術に前・後膣形成術を行なう方法が現在もっとも多く行なわれている方法です。

膀胱脱のみ伴う場合は、前膣壁形成術を、直腸脱のみ伴う場合は、後膣壁形成術を行なうこともあります。

子宮脱があり妊娠を希望し子宮頸部延長症を伴う人の場合には、子宮頸部を切断後に子宮の保持装置を補強をする手術を行ないます。

高齢者の場合などでは前後の膣壁を中央で縫合閉鎖することもあります。

 

 

中医学的子宮下垂の原因▼

 

・虚弱体質

・産後・・・早くから仕事をした、力仕事をした

便秘になり力み過ぎた

長期間咳の症状がある

長期間軟便または下痢症状がある

・性交過多

 

 

中医学的子宮下垂のタイプと治療法▼

 

気虚タイプ●

「エネルギー(気)が不足(虚になる)」により、全身のパワー不足がみられます。

 

主な症状

疲れやすい、やる気がでない、息切れ、話すのが億劫

白いさらさらしたおりものが多くでる、頻尿

 

治療法

エネルギーを益し、下がった子宮を持ち上げていく「補気・昇提・固脱」の治療をしていきます。

 

腎虚タイプ●

腎は生命の源でありエネルギーが蓄えられている場所です。

疲れが長期間続きますと蓄えられているエネルギーが消耗し、さまざまな症状が現れやすくなります。

 

主な症状

めまい、耳鳴り、腰膝がだるく脚に力が入らない、頻尿

疲れやすく取れにくい

 

治療法

腎のエネルギーを益し、下がった子宮を持ち上げていく「補腎・益気・固脱」治療をしていきます。

 

 

タイプ別にみる生活養生・食養生▼

自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます。

タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。

体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。

 

気虚タイプと腎虚タイプは、ベースが気虚ですので生活習慣、食べ物はほぼ同じです。

 

気虚タイプ・腎虚タイプ●

生活習慣 ・産後の方は、子育てがタイヘンでごはんもゆっくり食べられないというお母さんは多いと思います。

しかし食事を抜いたり、栄養素が偏ったりすると下垂状態を悪化させますので、消化が良く、栄養バランスの取れた食事と休養はしっかりとりましょう。

消化力が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。

スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。

ダイエットによる食事制限は禁物です。

 

食べ物 ~エネルギーを益す食べ物を(適度に)摂りましょう~

気虚タイプ・・

(穀類)うるち米、粟米、小麦製品

 

(豆類)大豆や大豆製品、牛乳

 

(肉類)牛肉、鶏肉、烏骨鶏

 

(野菜)山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参

 

(魚類)いか、貝柱

 

(果物)なつめ、もも、さくらんぼ

 

(お茶)杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶

腎虚タイプ・・上記の食べ物にプラス

 栗、くるみ、黒ごま、クコの実

 

~体を冷やす食べ物、辛い食べ物、油っこく味の濃い食べ物は 胃を刺激し気を消耗させるので避けましょう~

 

辛い食べ物・・青唐辛子、ねぎ、コショウなど

冷やす食べ物・・すいか、バナナ、イチジク、なし、苦瓜、薄荷など

 

 

その他日常生活での注意点▼

出産によって子宮下垂になった人は産褥体操(さんじょくたいそう)をきちんと行えば、子宮の位 置は元に戻ります。

加齢にともなう子宮下垂はケーゲル体操がおすすめです。自力更正の方法で、ゆるんだ骨盤底筋を強化する体操です。

 

<ケーゲル体操>

トイレでの体操

おしっこの最中に4~5回、途中で止めてみましょう。止められるなら、筋肉が鍛えられています。

気がついたときのくりかえし体操

1.

10秒間力強く肛門を締めてください。

このときに、肛門と会陰部の間に軽く指をあててみて肛門と会陰部の間が硬く少し持ち上がるように力をいれます。

2.

力を抜きます。

3.

3回ほど、肛門を素早く締めては、力を抜きます。

4.

1分間休みます。

毎日100回、最低3ヶ月間続けましょう。

 

その他、骨盤底筋肉を鍛える簡単体操

・・あお向けに寝て・・

あお向けに寝て、脚を肩幅に開き、膝を立てます。

身体の力を抜き、肛門と腟をキュッと締め、そのままゆっくり5つ数えます。

この動作を繰り返します。

 

・・椅子に座って・・

床につけた脚を肩幅に開きます。

背中をまっすぐに伸ばし、顔を上げます。

肩の力を抜いて、お腹が動かないように気をつけながら肛門と腟をキュッと締め、そのままゆっくり5つ数えます。

この動作を繰り返します。

2019/02/20
子宮筋腫

子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で成人女性の4人に1人の割合で見られる疾患です。

思春期前の若い女性に発症することはほとんどなく、閉経後には退縮して小さくなるため、筋腫の発育には女性ホルモンが強く関係していると考えられています。

この場合現代医学での検査は重要な診断・治療の目安となるため、比較的小さな筋腫で、特別 な症状が無い場合でも定期的な検診を受けることをお勧めします。

 

またその際、鍼灸治療と併用することにより(筋腫の大きさや症状の程度によりますが) 一定の効果があらわれやすく、治癒力も高められるため身体への負担も軽減されます。

 

そのほか病の根本である原因、誘発要因に着眼し治療を進めていくため再発しにくい体質へと改善していくことができます。

 

中医学的子宮筋腫のとらえ方▼

子宮筋腫で見られる症状の1つに「しこり」があります。

 

中医学では、この「しこり」の性質や特徴、全身に現れている症状を把握することにより 筋腫が形成された原因、誘発要因を導き出していきます。

 

「しこり」は体の活動源である<エネルギー>、栄養源である<血>、体を潤す<水>の流れが 長期間停滞することにより形成されていきます。

 

 

症状の軽重や進行状態は、生活環境や社会環境、個々の体質や性格が深く関与します。

 

現代医学的診断・治療方法▼

 

<筋腫の発生する部位>   

 

*子宮体部(ショウ膜下筋腫、粘膜下筋腫、筋層内筋腫)   

*子宮頚部(粘膜下分娩、子宮を支える靭帯に筋腫が発生する)    

  全体の95%は子宮体部に発生し、残りの5%が頚部に発生するといわれています。

 

<筋腫の主な症状>    

 月経の量が多くなる、月経期間の延長、頻発月経、月経痛などの月経異常と不正出血が見られます  (これは中医学も同様です)。  

  

 また発生する部位や発育方向によりそれぞれ特異な症状が伴います。

 

 

<検査法>    

 子宮卵管造影や子宮鏡などがあります。

 

 

<治療法>    

 薬物療法と手術療法があります。

~薬物療法~

「偽閉経療法」という薬物を使って半年間ほど月経をとめ、子宮筋腫を小さくする方法です。

 

治療中は月経の症状で苦しむこともなく筋腫も小さくなるため有効な方法です。

 

しかし長期間の服用により骨量の減少や更年期障害のような副作用、さらには薬剤の服用中止後に卵巣機能が再開すると筋腫がまた大きくなってしまうという問題点もあります。

 

その他UAE(子宮動脈塞栓法)という子宮へ流れる血管に栓をして子宮筋腫を小さくするといった治療を行なっている施設もあるようです。

 

 

~手術療法~

手術を要する子宮筋腫は、大きさがこぶし大以上のとき、過多月経や不正出血などの出血傾向が強く貧血がひどくなる場合、不妊や習慣性流産、早産の原因になると考えられるときなどです。          

治療法は子宮全摘術と筋腫核出術があります。           

どちらの手術法を用いるかは全身状態、筋腫の数や大きさ、発生部位 、将来子どもを希望するかどうかなどにより選択されます。

 

 

中医学的からだのしくみ▼

~「気」「血」「水」とは~

体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、 これらの3つが体内に十分な量で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。

 

もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。

 

さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

 

~臓腑の働きとは~

「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。

 

西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。

 

ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。

 

ゆえに違う診たてができるのです。

 

この点をまず理解してください。

 

「肝」・・

全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。   

 

伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。      

   

この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。

 

全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。    

 

肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため肝の支配している器官の機能減退症状があらわれてきます。

 

例)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足の震えやしびれ、筋けいれんが起こりやすくなったりします。         

 

婦人科疾患としては、無月経、不妊症、月経前の乳房のはった痛み、ストレスにより月経周期が早まったり、遅くなったりする。

 

 

「脾」・・

食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。

 

働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。

 

エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。

 

働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。

 

血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。

 

働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

 

婦人科疾患として見られる症状は白いおりものが多くでる、黄色っぽく臭いおりものがでる、不正出血、月経が早まる、子宮下垂

 

 

「腎」・・

生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。

 

「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。

 

このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。

 

「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。

 

年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。

 

例)骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる。

 

婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい。

 

 

中医学的診断方法▼

中医学では主に以下の状態での治療に一定の効果をもたらします。

1.筋腫の大きさが5センチ以下と比較的小さいもの

2.過多月経、不正出血による貧血など出血傾向の少ない場合

3.周辺臓器への圧迫や他の器官への癒着のない場合

 

 

個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。

 

そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。

 

月経の状態(周期・期間・月経量・質・色、月経に伴う不快な症状など)、基礎体温表などから体の中の状態を把握することができます。

 

この他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。

 

その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

 

 

中医学的子宮筋腫のタイプと治療方法▼  

 

「気滞」とは主に、精神的ストレスなどにより気の流れが停滞してしまうことです。

 

「血オ」とは血の流れが停滞してしまう状態をいいます。

 

気と血は、体の中をいっしょに運行していますので、気滞(血オ)により流れがスムーズでなくなると血(気)の流れも影響を受け、 滞ってしまうタイプです。

 

その結果、しこりが形成されやすくなっていきます。

 

 

気滞タイプ●

 

主な原因     

精神的ストレス、イライラしやすく怒りっぽい、マイナス思考

 

筋腫の特徴  

・下腹部にしこりがあり、張った感じはあるが触れると堅くはない     

・しこりを押すと移動する      

・日によっては触れるときと触れない時がある    

・痛む部位は一定しない

 

月経の特徴

周期:早まったり、遅くなったりその時の精神状態により変わる      

血量:少なく、ぽたぽたと出る程度       

色 :紫色っぽく、赤黒い色       

質 :レバー状のかたまりが血に混じる

 

随伴症状

胸や脇、乳房がはって痛む、イライラしやすい、ガスやげっぷが出やすくなる、   

頭痛は頭の側面が張って痛む、偏頭痛

 

治療方法

気の流れをスムーズにし、しこりを散らしていく「疎肝解鬱」「行気散結」の治療をしていきます。       

ツボ:太衝、子宮、関元、帰来、三陰交、内関、合谷       

漢方:香リョウ丸

   

 

血オタイプ●  

 

主な原因   

月経中或いは産後、子宮から血が体外へ排出されず(子宮へ)停滞してしまう、   

ストレス、冷え、外傷、打撲、手術によるうっ血、過労

 

筋腫の特徴  

・下腹部にしこりを触れる   

・しこりは堅く移動しない   

・痛みが強く、触れられるのを嫌がる

 

随伴症状  

月経中、下腹部が痛む、脹った痛み、腰痛、痛みのため下腹部を押さえるのを嫌がる

 

月経血の特徴

月経周期は遅れがち    

色:赤黒い    

量:少ない    

質:レバー状のかたまりが血に混じる

 

治療法

血の流れを良くし、停滞した血のしこりを取り除いていく「活血破オ」「散結」の治療をしていきます。      

ツボ:子宮、中極、血海、三陰交、合谷      

 

漢方:桂枝茯苓丸

   

 

痰湿タイプ●

「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、経絡(気の流れるルート)の運行を阻害します。

滞っている状態が長く続きますと「しこり」が形成されていきます。

 

主な原因  

冷たい水分・甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの、ビール、生ものを多く摂取する、    

家が湿気を帯びやすい

 

筋腫の特徴

・下腹部の真ん中に堅いしこりを触れる   

・しこりを押すと柔らかい

 

月経の特徴

周期:遅れがち、    

血量:少なめ     

色 :黒っぽい赤色     

質 :レバー状のかたまりが血に混じる、粘っこい

 

随伴症状

白いおりものが多くでる、水太り体質、色白、体が重だるい、痰が多くでる、 頭が重くめまいがする、胸や胃のあたりがもたれる、吐き気、嘔吐をもよおす、手足・目のむくみ

 

治療方法  

脾の働きを高めることにより痰を作らないようにする「健脾化痰」、しこりを散らしていく「散結」の治療をしていきます。   

 

ツボ:子宮、中極、帰来、豊隆、百会、陰陵泉、三陰交   

漢方:開鬱二陳湯、または抑肝散と二陳湯

  

 

タイプ別にみる生活養生・食養生▼

自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。

体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。

 

気滞タイプ●

【生活習慣】

イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、ヨガや気功などの呼吸法やストレッチでリラックスできる時間を作りましょう。  

その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。

お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。  

 

【食べ物】~香りの高い食べ物を摂ることにより鬱々とした気持ちを発散してくれます~

 

(野菜)春菊、三つ葉、みょうが、シソの葉、パセリ、セロリ、   

(果物)みかん、レモン、グレープフルーツ、きんかん、ゆず   

(お茶)ジャスミン茶、ミントティー

 

 

血於タイプ●

 

【生活習慣】

夏は冷房、冬は外気の寒さから体が冷えるのを防ぐようにしましょう。

 

冷たいものの摂り過ぎは血行を悪くするので気をつけましょう。

 

寒い季節や冷房で冷えた日は、生野菜は控え、温野菜を摂るようにしましょう。

 

適度に運動をして、適度な汗をかくよう心がけましょう。

 

【食べ物】  ~血液の流れを良くする作用のある食べ物を摂りましょう~     

 

(豆類)小豆、黒豆        

(野菜)あぶらな、にんにく、にら、ねぎ、しょうが、とうがらし     

(香辛料)酢、少量の酒        

(お茶)さんざし茶、バラ茶、紅花茶

 

 

痰湿タイプ●  

 

【生活習慣】

甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。

 

水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。

 

運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。

 

梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。

 

【食べ物】  ~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~     

 

(穀類)はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆        

(野菜)冬瓜、白菜、山芋、トマト、チンゲンサイ        

(魚類)こい、ふな      

  

(果物)すいか、ぶどう、メロン

       

(お茶)紅茶、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶

 

その他日常生活での注意点▼ 

悩んだり、焦ったり、イライラしたりする気持ち、心身の疲労などが症状を悪化させますので、ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功、など)、軽い散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。

 

室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。   

お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。

 

規則正しい生活をし栄養バランスの摂れた食べ物、特にカルシウムやビタミン類をしっかり摂り、十分な睡眠をとりましょう。

 

さて、お読みになって子宮筋腫にはさまざまなタイプがあり、タイプ別による治療、食養生、生活習慣が重要だということがお分りになって頂けましたでしょうか。

些細なことなのですが日常の過ごし方を少し見直してみるだけで体調が変わりはじめ、 体質改善に繋がっていきます。無理のない範囲で実践し、続けていくことが大事です。

 

 

当院では現代医学が苦手とする領域

「検査で問題はないが症状がある」

「活力エネルギーの調整(自然治癒力の底上げ)、体質改善」

「予防と未病の手当て」に力を入れています。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に楊中医鍼灸院までご相談ください。

 

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吉祥寺|中医学に基づく|子宮筋腫

鍼灸・吸玉(カッピング)療法専門 楊中医鍼灸院

吉祥寺駅より徒歩10分

2019/02/20
子宮内膜症

女性を悩ませる代表的な病名ですが、どのような病態なのでしょう。

治療方法は西洋医学と東洋医学でかなり違うようですね。  

 

 

《西洋医学的考え方》  

 

 子宮内膜症とは、本来子宮内腔に存在するはずの子宮内膜組織が、子宮以外の場所(主に腹部)にできる病気です。その内膜組織は,本来の子宮の周期と同じように月経期になると剥離・出血しますが、血液を体外に出すことが出来ず、体内に溜めてしまいます。

 

そのため、激しい月経痛や腰痛・不妊などの原因となったり、チョコレート嚢胞が出来たりすることがあります。

生殖年齢の女性の5%に,子宮内膜症があるという統計があり、やせ型・胃腸下垂型の人に多いようです。

 

症状

 

激しい月経痛や、月経時以外の下腹部痛が主な症状です。また不妊との関係も指摘されています。  

生理時の出血が多くなる事もあります。

検査と診断

 

症状などから子宮内膜症が疑われた場合、内診や直腸診、超音波検査、血液検査(腫瘍マーカー測定)が行われます。確定診断に腹腔鏡検査を行う事もあります。

治療法

 

大きく分けて薬物療法と手術療法の2つがあります。

 

【薬物療法】

 

子宮内膜症は、卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)によって、病状が進行します。

薬物療法では、卵胞ホルモンの分泌や働きを抑えるホルモン剤を使い、月経を一時的に止めて 病巣を小さくします。

この薬を服用中には妊娠を期待することは出来ません。

痛みの軽い場合は、鎮痛剤のみで経過をみます。

 

【手術療法】

 

 

 

 

 

病状が進行している場合に行われます。

 

将来、妊娠を希望する場合は卵巣や子宮を残し、病巣のみを取り除きます。  

腹腔鏡を使って行われる事が多く、身体の負担も少ないのですが、およそ3割の患者さんは再発をします。

妊娠の希望はなく、閉経までまだ期間が長い場合、女性ホルモンを分泌する卵巣機能の正常な部分のみを残し、子宮を摘出する場合もあります。

閉経間近い患者さんの場合、子宮、卵巣、卵管を全て摘出します。  

再発はなくなりますが、更年期障害のような症状が出ることがあります。

 

《中医学的考え方》

 

中医学では、子宮内膜症は子宮内膜異位症とも言われ、本来あるべきではない位 置に子宮内膜が増殖し、生理のように剥離・出血をくりかえす病態で、出血した血液の行き場がないところに問題があります。

 

この状態を中医学では「お血(おけつ)」といいます。(身体の中の血がどこかで滞っている状態です)

 

中医学では、身体のしくみの考え方が、西洋医学とは少し違います。

 

人間の身体を車に例えると、エンジンにあたるのが『五臓六腑』で、ガソリンにあたるのが、『気・血・水』です。

エンジンとガソリンのどちらに問題があっても、車は動きませんね。

 

人間も同じように、五臓六腑の働きを整えるのと同時に、『気・血・水』の働きも整えて、初めて 健康を維持する事が維持出来るのです。

 

中医学では、生命活動の源として働くものは『気・血・水』であると考えています。

 

気というのは、気持ちの気と同じような意味合いもありますが、中医学では、活力という意味であり、 血脈の流れを推進したり、臓器組織の活動を促進したり、人体を栄養する作用もあると考えます。

血は血液という意味よりも広く考えて全身を栄養するだけでなく、精神活動も支えています。

水は津液とも言われ、身体をうるおす水分の事です。

これらは飲食から得られ、五臓六腑で消化吸収して作られていきます。

 

気・血・水は『経絡』という、人体の上下・内外を貫く道筋によって、全身を流れ、栄養したり、 臓器の機能を調節したりしています。健康な状態では、経絡は全身を滞る事なく流れています。

 

これらのどこかに問題がおこることにより、身体のバランスが崩れます。

そしてその微妙な崩れは、日頃の体調(食欲・排尿・排便・睡眠・疲労感・主訴以外の症状)などにも 現れますし、他覚症状としては、顔色や脈状・舌の色や形にも現れてきます。

 

少しだけバランスが崩れた時、早めに治療をすれば、大きな病になることなく、 元の健康な状態に戻ることが出来ます。

これを『未病治』といい、病になる前のケアで治す、東洋医学の基本概念でもあります。

 

バランスの崩れが進んで、病に陥った場合も、治療の目的はバランスを整える事ですから、 細かい症状のすべてを総合し、その人全体をとらえて、どのように治療したら良いかを決めていきます。

 

経絡の流れを良くしてあげる事は、身体機能のバランスをとり、 健康な状態に近づけることにつながりますから、 中医学的治療を続けると、主訴がとれていくだけでなく、自然治癒力が増すなど、人間の基本的な生命力が強くなっていきます。

 

ですから、赤ちゃんのころから、中医学的養生を続けていると、根が深い樹木が太く高い木になるように、強く生命力のある子に育つでしょう。

高齢者においては、若返ることはないにしても、老化のスピードを遅くすることは出来ますから、元気に天寿を全うする事ができるでしょう。

 

治療においては、ただ単に痛みのある部位だけではなく、経絡上で、その流れを良くしてくれる作用のあるツボや、滞りを除いてくれるようなツボも使っていきます。

 

ツボにはそれぞれ特性がありますから、その詳しい効能を考慮し、効果 的な組み合わせを考える事も大切です。

頭痛の治療にも、手足のツボを使いますし、特効穴が手にあったりするのは、ツボの特性を利用しているからです。

 

 

子宮内膜症の話に戻りましょう。

 

子宮内膜の症状は主に生理痛などの激しい腹痛です。

基本的な原因は、気血の流れが悪くなり、オ血(おけつ・血の滞り)が出来るためです。

 

かなり痛みがひどく、鎮痛剤を服用してしまう方も多いようですね。

 

話は少しズレますが、鎮痛剤について考えてみましょう。

最近の鎮痛剤の作用機序は、痛みを感じる元の物質〔発痛物質〕の働きを止めるものがほとんどです。

痛みは感じなくなるかもしれませんが、果たして身体への影響は大丈夫なのでしょうか?

 

生理痛の原因は気・血の滞りです。

ただでさえ流れが滞っている身体に、さらに普通の働きを止めてしまうものを与えてしまって いいわけがありません。

本当は気血の流れを良くしてあげるお手当てをするべきなのですから・・・。

 

「すべてのものには意味があります」発痛物質にも大切な意味があるのです。

 

痛みは身体の異常を伝えるメッセージです。「ここに異常がありますから、なんとかして下さい」と、脳に伝えてくれる役目をしているのが、発痛物質です。その働きをむやみに止めてはいけません。

 

動けないほど痛い時は、本当は寝ているべきなのです。

横になり、暖かくして消化のいいものをとり、気血の流れを少しでも良くしてあげれば、 自然治癒力が治してくれます。

 

しかし、現代社会では、もちろん呑気に寝ているわけにはいきません。

鎮痛剤を飲んで動かなければいけない事も多いでしょう。

でも忘れないで下さい、身体は困っているのです。

痛みは感じなくても、いたわってあげて下さい。

 

なるべく気血の流れが良くなるように、時々深呼吸をするとか、胃腸に負担をかけないようにする・ 早めに寝るようする・等、ちょっとの努力で出来る事は沢山あります。

 

飲んですぐ効く薬というのは、つまり身体のバランスをすぐに崩してくれるものです。

やむなく服用した場合は、バランスを良くしてあげる事も合わせてしてください。

 

さて、中医学の話に戻りましょう。

中医学ではどのように子宮内膜症を治療していくのでしょうか。

 

患者さんの、その時の症状を細かく伺い、

舌診・脈診を通して体質をつかみ、食べ物の嗜好や生活習慣(食欲・排尿便・睡眠)等も加味したうえで、 診断をし、その人その人にあった治療をします。

 

身体全体のバランスを良くするというのが、目標です。    

 

子宮内膜の主な原因である「血の滞り」は、なぜ起こるか考えてみましょう。

 

大きく分けて、以下の三つ原因があります。  

 

1. 滞血オ : 気の流れが滞りその結果として血が滞る  

2. 凝血オ : 寒邪(冷え)が身体に侵入し血が滞る  

3. 気虚血オ: 気を流す力が弱く気滞を生じ、その結果血も滞る

 

 

【原因別 主な症状・治療法・日常の養生について】

 

1. 気滞血オ

症 状:

 

治 療:

 

養 生:

 

お勧め

の食品:

 

漢方薬:

精神的ストレス、イライラ、下腹部の張痛。生理の時、血の塊が出ると痛みが軽くなる。

「気」の流れを改善して、心身をのびやかに保ち、血行を良くする治療をします。

ヨガや気功などの呼吸法、ストレッチ等でリラックスしましょう。

 

 

シソの葉、梅、みょうが、みかん、レモン、ジャスミンティー、ミントティー等

血府逐お湯(けっぷちくおとう)

 

2.寒凝血オ

症 状:

 

治 療:

 

養 生:

 

お勧め

の食品:

 

漢方薬:

手足の冷え、寒がり、薄着、生ものや冷たいものの飲食を好む。生理痛は暖めると軽減する。

身体を温めて血流を良くする治療をします。

 

夏でも冷房などで冷えてしまう事がありますから、上着を着るなど、こまめに体温の調節をして、日頃も身体を冷やさないようにしましょう。

 

ショウガ、にんにく、シソ、ネギ、鳥肉、ジンジャーティーなど

 

少腹逐お湯(しょうふくちくおとう)、温経湯(うんけいとう)

 

3.気虚血オ    

症 状:

 

治 療:

 

養 生:

 

お勧め

の食品:

体力がない、すぐ疲れる、やせ型、胃下垂、虚弱体質

 

体力をつけ、血行をよくする。「気」を補って血流を正常にする治療をします。

日常の食事をバランス良くとり、睡眠をしっかりとるようにしましょう。

 

 

梅、キクラゲ、しじみ、ショウガ、なつめ、クコの実、豆腐、なつめ茶など

 

漢方薬:

 

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)四物湯(しもつとう)

 

なお、子宮内膜症は、下腹部痛以外にも、生理の量が多くなる・生理の期間が長くなる等で出血が多くなる場合もあります。

その際、生理中は、必要以上に出血が多くならないようにする配慮も必要ですし、生理中とそうでない時では、治療法も違う場合があります。

 

個人個人の体質に合わせて治療を行います。お気軽に当院までご相談くださいませ。

当院は予約制となります

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