コラム
- 2019/02/20
- 逆子
妊娠28週~30週前後に胎児の位置が異常になる状態を逆子といいます。
頭が上になった骨盤位、お尻が下になっている殿位、足が下になっている足位 などがあります。
帝王切開によるお産は、大々的に死産率を下げますが母体に負担が掛かります。
中医学的には、腹部の正中線上には、生命のエネルギーを貯えているツボが密集しているため、帝王切開で、その部分を切開してしまうということは、生命エネルギーの消耗に繋がります。また個人差がありますが、子宮の戻りが遅い、母乳の出が悪いといったトラブルも引き起こしやすくなります。
鍼灸治療は、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。
そのため、胎児の回転を促す力を引き出すとともに、随伴症状(例:足がつりやすい、むくみやすい、便秘など)をも改善していくことができます。
自然なお産で、体の負担を少しでも緩和してくれる鍼灸治療をおすすめします。
<原因>
・骨盤が狭い:胎児が下に下がることができない
・骨盤が広い:水も多いため胎児の安定感が悪い
・胎盤の位置
・臍帯の長さ
・胎児の大きさなど
様々な原因が絡み合って起こると言われています。
<治りづらい場合>
・産道が小さい
・胎児が成長し大きくなってしまった場合
▼中医学的な考え▼
体の活動源である「エネルギー」、栄養源である「血」、体を潤す「水」の不足やこれらの流れが停滞することにより、逆子になりやすくなると考えられています。
原因はタイプ別の項を参照してください。
▼矯正治療のタイミング▼
妊娠28週前後、胎児の重さが約 2000gがベストな状態と言えます。
この時期胎児は大きさもちょうどよく、羊水も多いため矯正率が高く、再発率も低くなります。時期が早すぎる場合は、胎児の成長が足りないため、羊水の中で浮いて動いてしまいます。また、遅すぎる場合は退治が成長してしまい、ツボに刺激を与えても胎位 は移動しないケースが多くみられます。
しかし、28週を過ぎてしまった場合でも、胎児がまだ小さく、羊水も充分な量 があり、上記の器質的な原因がみられない方は、矯正が可能になる場合があります。
その際は一度、お気軽にご相談下さい。
▼中医学的逆子のタイプと治療法▼
●気滞タイプ●
「気滞」とは主に、精神的ストレスなどにより気の流れが停滞してしまうことです。
そのため胎児の転位も停滞しやすくなり、逆子になるタイプです。
○主な原因
精神的ストレス、イライラしやすく怒りっぽい、マイナス思考、仕事が忙しい
○主な症状
脇腹や下腹部が脹る、胸のあたりが悶々とする、げっぷやおならがでやすい
気分が晴れずイライラする、よくため息がでる
○治療方法
気の流れをスムーズにし、脇腹の脹り感や気持ちの鬱滞感をとっていく
「理気行滞」、「安胎転胎」の治療をしていきます。
●気虚タイプ●
エネルギー不足のため、胎位転換の力がなくなって逆子になるタイプです。
○主な原因
虚弱体質、過労、睡眠不足、汗のかき過ぎ
○主な症状
疲れやすい、息切れ、話すのがおっくう、胎児が下がりぎみ、痩せぎみ、唇が白っぽい
○治療方法
エネルギーを増して、母体を元気にするとともに胎動も活発にしていく「益気養血」、「安胎転胎」の治療をしていきます。
●痰湿タイプ●
「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、経絡(気の流れるルート)の運行を阻害します。
そのため、胎児の転位を妨げ、逆子になるタイプです。
○主な原因
冷たい水分・甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの、ビール、生ものを多く摂取する、家が湿気を帯びやすい
○主な症状
水太り体質、色白、体が重だるい、痰が多くでる、頭が重くめまいがする、
手足・目のむくみ、無力感
○治療方法
脾の働きを高めることにより体の余分な水分を外にだしていく「健脾利湿」、「安胎転胎」の治療をしていきます。
▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼
自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。
●気滞タイプ●
【生活習慣】
・
イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、脇腹が脹りやすいといった症状が多くみられます。ヨガや気功などの呼吸法やストレッチで、リラックスできる時間を作りましょう。その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。
・
お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。
【食べ物】
~香りの高い食べ物を摂ることにより鬱々とした気持ちを発散してくれます~
(野菜)春菊、三つ葉、みょうが、シソの葉、パセリ、セロリ
(果物)みかん、レモン、グレープフルーツ、きんかん、ゆず
(お茶)ジャスミン茶、ミントティー
●気虚タイプ●
【生活習慣】
・
消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
・
消化力が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。
・
スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るようにしましょう。
【食べ物】 ~エネルギーを増す食べ物を多く取りましょう~
(穀類)うるち米、粟米
(豆類)大豆や大豆製品、牛乳、豆乳
(肉類)牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜)山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参
(魚類)いか、貝柱
(果物) なつめ、もも、さくらんぼ
(お茶)杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶
●痰湿タイプ●
【生活習慣】
・
甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。
・
水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。
・
運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。
・
梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。
【食べ物】~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~
(穀類)はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆
(野菜)白菜、山芋、チンゲンサイ
(魚類)こい、ふな
(果物)ぶどう
(お茶)紅茶、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶
▼その他日常生活での注意点▼
*
妊娠中は、胎児を養うために、栄養源である「血」の消耗が激しくなります。
睡眠はしっかりとり、パソコンの使いすぎ、本やテレビの見すぎ、夜更かしは避けましょう。できれば過労も避けたいものです。
*
逆子体操・・・腰痛のある方や、体操をするとお腹が脹ってしまう方は無理をせず、できる範囲で行いましょう。
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悩んだり、焦ったり、イライラしたりする気持ち、心身の疲労などが症状を悪化させますので、ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功、など)、軽い散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。汗のかき過ぎは「エネルギー」と「血」の消耗に繋がりますので、うっすら汗ばむ程度が適度といえます。
*
室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。
お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。
*
規則正しい生活をし栄養バランスの摂れた食べ物、特にカルシウムやビタミン類をしっかり摂り、十分な睡眠をとりましょう。
★ ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
◎ 当院での治療をお考えへの方へ
= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。
当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。
これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。
しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。
少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。
- 2019/02/20
- 欠乳
欠乳とは、産後に母乳の分泌が少なくなったり、全く出なくなったりする状態で、母乳分泌不足のことです。中医学では“少乳”“乳汁不足”“乳汁不行”とも言われています。
母乳は、出産すればお母さんから分泌されるもの!と簡単に理解されがちですが、実際はいくつかの段階を経ています。まず、母乳分泌の仕組みから説明していきたいと思います。
≪母乳の出るしくみ≫
妊娠中、卵巣や胎盤から分泌される“エストロゲン”や“プロゲステロン”というホルモンの働きで乳腺が発育します。一方では、これらのホルモンが乳汁分泌ホルモンである“プロラクチン”の作用にブレーキをかけていて妊娠中に母乳分泌が起こらないように抑制されています。このように妊娠中はホルモンの働きで抑制されていた母乳分泌も分娩後、赤ちゃんを出産するホルモンによる抑制がとれ母乳分泌が始まります。
具体的な流れは次のようになります。
① 分娩で胎盤が体外に排出されると、胎盤から分泌されていたエストロゲンとプロゲステロン(妊娠の維持に作用するホルモンです)は急激に減少します。
② エストロゲンとプロゲステロンの減少により、乳汁の分泌抑制がとれ、プロラクチン(乳汁の産生を促し、排卵を抑制する作用のあるホルモンです)が乳腺に活発に働きかけ乳汁の生産を始めます。
③ 生産された乳汁は乳管を通って、いったん乳管洞に蓄えられます。乳頭の筋肉は乳汁が 溢れないよう収縮しています。
④ 乳頭には刺激に敏感な知覚神経が集まっていて、赤ちゃんが乳首をくわえ、吸う刺激により乳頭の筋肉はゆるみます。
⑤ 赤ちゃんの吸う刺激が、脳の視床下部を刺激し、下垂体後葉(脳にあるホルモンを分泌する器官です)からオキシトシンが分泌されます。
⑥ オキシトシンは乳腺を取り囲んでいる筋肉を収縮させて、乳汁を乳房から積極的に押し出します。この状態を“射乳”といいます。
このように、母乳分泌には赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激が大きくかかわっています。
さらに、オキシトシンというホルモンは子宮を収縮させる作用があり、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうことには子宮復古の手助けになるといえます。
では、どうして欠乳(母乳分泌不全)になるのか現代医学と中医学の視点から説明したいと思います。
≪現代医学的な捉え方≫
乳汁分泌不全とは、赤ちゃんに必要な量の母乳が分泌されない状態をいいます。
原因は、疲労、精神不安定、栄養不足、貧血、下垂体機能不全など全身的要因や、乳腺発育不全、乳房形成術既往など局所的要因による乳汁産生低下、赤ちゃんの吸啜力不足、オキシトシン性射乳機構不全や、乳管系の開通 不全などによる乳汁排出不全や、それに伴う残乳による血流の変動や、神経反射を介した乳汁産生機転阻害があります。
乳汁分泌促進には、円滑な排乳路の確保や、乳房への血流増加、さらにはプロラクチンなど内分泌性乳汁産生刺激因子(ホルモン)の増強などを必要とします。
従って、乳汁分泌不全に対しては“貧血・脱水・低栄養”などの母体の要因を改善すると共に、乳房マッサージによる血流増加・排乳促進を図ります。プロラクチン分泌には、スルピリドやメトクロプラミドなどの薬剤により亢進します。
≪中医学的な捉え方≫
中医学では、母乳(乳汁)は気・血が変化したものと考えます。
“婦人の乳汁不行は皆気血虚弱、経絡不調によるものである”とあります。
母乳分泌不足は、分娩時に出血過多となり、気が血とともに消耗して起こるもの。
母体がもともと気血不足であったのに加え、出産により気血がより不足したために母乳の生成が不足して起こるもの。
肝鬱気滞(肝の働きが低下して気が巡らない状態)となり気機不暢のために乳路の通 りが悪くなり、そのため母乳がつまって出なくなるもの。
脾胃虚弱により納運失職(飲食物を消化吸収して気血の材料を作り出す働きが低下した状態)となって化源が不足し気血不足となって起こるもの。
肝気犯胃(肝の気を巡らす機能が低下して胃の消化機能に影響が及んだ状態)となって受納(飲食物を胃が受け入れること)が悪くなり気血の化生に影響して母乳が不足するものなどがあります。
具体的な症状を説明する前に、中医学的な人体の考え方について説明します。
人体には“気・血・水”と呼ばれる「人体を構成して生理活動を活発化させる基本的物質」が巡っています。
~気・血・水について~
○気・・・
気は体内を流れるエネルギーの1つです。消化・吸収・排泄を正常に行なう、血を巡らせる、体温を保つ、ウィルスや細菌から体を守る、内臓を正常な位 置に保つなど、体の生理機能を維持する働きがあります。
○血・・・
いわゆる“血液”という意味のほか、“気”とともに体内を流れて、内臓や組織に潤いと栄養分を与え、また精神活動(気持ち・気分・情緒・感情)を支える物質でもあります。
○水・・・
体内を潤すのに必要な水分のことです。胃液・唾液・細胞間液・リンパ液・汗なども含まれます。体表近くの皮毛・肌膚から、体内深部の脳髄・骨髄・関節臓腑までを潤します。
気・血・水の生成や代謝は“五臓六腑”と呼ばれる臓器によって行なわれます。
五臓と六腑は、よく一緒に語られますが役割は異なります。
六腑は、“胃・小腸・大腸・膀胱・胆・三焦”の総称です。
六腑というのは、水穀(飲食物)を消化して、身体に有益な物質である“水穀の精微”(これが気・血・水の生成材料になります)と、不必要な物質である糟粕(カスのことです)とに分け、“水穀の精微”を五臓に受け渡し、糟粕を大・小便に変えて排泄を行なう臓器です。
六腑のうち、口から摂取された水穀が最初に運ばれる臓器が“胃”です。
胃が水穀を受け入れて(これを受納といいます)、消化し(これを腐熟といいます)、消化物を下方の臓器に渡す(これを和降といいます)という3つの働きをします。
小腸は、胃の下にある臓器で、胃で消化された水穀を人体に有益な“水穀の精微(清)”と“不要な糟粕(濁)”とに分別 します。
そして分別した“清”を脾に運び、“濁”をさらに水分とそうでない物に分けて膀胱と大腸に移します。大腸と膀胱は“濁”をそれぞれ大・小便にして排泄します。
また、胆は肝で生成された胆汁を小腸に分泌して、消化を助けています。
三焦は、臓腑機能を統轄して、水分や気を運行させる通路の働きをしています。
“五臓”は“肝・心・脾・肺・腎”の総称です。
五臓は、六腑から水穀の精微を受け取り“気・血・水”を生成し貯蔵する臓器です。
~五臓について~
○肝・・・
肝は血を貯蔵する働きのほか、全身の“気”のめぐりをコントロールして、精神・情緒を安定させる作用や、筋肉・目の働きを維持する働きがあります。
○心・・・
血を全身に送り出すポンプの作用のほか、脳の働きの一部を担っていて、情緒や感情といった“こころ”とも関係が深い臓器です。心の機能が充実していると精神状態が穏やかで、情緒が安定し、思考能力も活発になります。
○脾・・・
消化に関わる機能すべてを含んだ臓器です。食べたり飲んだりしたものを、体の役に立つエネルギー(気)に変える役割があります。また、血を脈外に漏さないようにする働きや、味覚をはじめとする口の生理機能を維持する働きもあります。
○肺・・・
肺は呼吸を行ないます。きれいな空気(清気)を体内に取り入れ、汚れた空気(濁気)を体外に出す働きがあります。
また、皮膚や口、鼻などの体表面に細菌やウィルスや有害物質などから体を守るエネルギーのバリア(衛気という気)をはりめぐらせて感染症から守る働きもあります。
○腎・・・
腎には体内の水分代謝をコントロールして不必要な水分を尿として排泄させる作用があるほか、成長・発育・生殖・老化に深くかかわる“精”を蓄える臓器でもあります。
☆精とは・・・
体を構成する栄養物質や生命エネルギーの総称です。腎に蓄えられて、人の成長・発育を促進し、性行為・妊娠・出産などの性機能や生殖機能を維持する働きがあります。
そして、気・血が流れる通路として人体の上下・内外を貫いて五臓六腑を交流させている通 路のことを“経絡(けいらく)”と呼びます。
中医学には神経という概念がなく、経絡が循環・伝達系の役割を果たしているといえます。
経絡は、東洋医学独特のもので西洋医学(現代医学)にはその存在はいまだ確認はできていません。
しかし、胃の経絡上の経穴に刺激を与え、レントゲンを撮ると胃の働きが活発になることが分かっております。ただ、先程述べたように経絡そのもの自体、科学的に見つけられないのですが、存在はしているので、経絡上のツボに刺激を与えた事により胃の活動が活発になった事が見つけられております。
経絡とは、体の各部をくまなく流れる気・血・水の通路であり、ツボとツボを結んだ線でもあります。それらは、体内に深く入り臓腑と連絡していて、全身の機能を正常に調節する働きがあります。
中医学では、人体は“気・血・水”がスムーズにめぐって、必要なところに必要なだけあり、五臓六腑が正常に機能している状態を“健康”と考え、どこかのバランスが崩れた状態が“病気”と考えます。
鍼灸治療は、崩れたバランスを整えることを目的とした治療法なのです。
バランスを崩す原因(病因)には、外因・内因・不内外因があります。外因とは、外界の環境因子(気候の変化など)、内因は感情や精神状態など、不内外因は食生活や過労などの生活習慣のことです。
これらの病因が、気・血・水のバランスを崩し、五臓六腑の働きを失調させることで病気になると考えます。
中医学独特の診断方法で、何の病因で、気・血・水のいずれが、どのようにバランスを崩し、五臓六腑のどの臓器が、どのように失調したかを見極め(これを弁証といいます)、治療方法を決める(これを論治といいます)ことを“弁証論治”といいます。
では、欠乳について、弁証論治別(タイプ別)に説明したいと思います。
●気血両虚型
母乳の源になる気・血の不足した状態です。母乳は水様、乳房は軟らかく、張った感じはありません。息切れ、精神疲労、めまい、動悸、顔色がすぐれないなどの症状を伴います。
(治療方針)補益気血・・・
不足した気血を補う治療です。気血を充実させて乳汁の産生を図ります。
●脾胃虚弱型
脾と胃は、飲食物を栄養にかえて生命活動の基礎を作ります。虚弱してしまうと全身を栄養できなくなり、乳汁の産生ができません。乳房は軟らかく、腹脹、食欲不振、息切れ、精神疲労、倦怠、無力感、下痢といった症状を伴います。
(治療方針)健壮脾胃・・・
脾と胃の機能を回復させ栄養の充実を図り、乳汁の産生を促します。
●肝鬱気滞型
肝には“疏泄”という気血の循環を促進させる働きがあります。気血が全身を巡っていれば身体は正常に機能します。しかし、感情の乱れや、ストレスを受けることで機能が低下すると気血の渋滞を招きます。乳房の気血の渋滞が、欠乳となります。
乳房は脹痛(脹満感を伴った痛み)があり、胸脇部の脹り、食欲不振、抑鬱といった症状を伴います。
(治療方針)疏肝解鬱・・・
鬱滞した気の流れを改善し、通乳を図ります。
●肝気犯胃型
肝鬱気滞により胃の働きに影響が及んだ状態です。胃には水穀を受納し腐熟させる(飲食物を消化吸収し全身に栄養源を運搬する)働きがあります。この働きが低下すると気血の化生に影響し、母乳の産生が出来なくなります。乳房の脹痛、胃の脹満・つかえ、脇肋痛、食欲不振、ゲップがすっきり出ないとった症状を伴います。
(治療方針)疏肝和胃・・・
肝の疏泄を調節すると同時に胃の機能を改善し、乳汁の産生を図ります。
以上のように、現代医学と中医学とでは“欠乳”という症状の捉え方が異なります。
違った角度から人体を見つめているので、現代医学とは違ったアプローチで治療が行えるのが中医学であるといえます。
≪食事療法≫
気血を増す食物の摂取は、増乳を促す事になります。
下記の様な食物を摂取することにより、より栄養素の高い母乳の生産を手助け致しますのでご参考までにどうぞ。
(気を補う作用のある食べ物)
旬の青魚
・・・
秋は“さば、さんま、いわし”
いも類
・・・
さつまいも、里いも、じゃがいも
その他
・・・
きのこ類、豆類、穀類、ごぼう、人参、根菜類
(血を補う作用のある食べ物)
豆類
・・・
黒豆、大豆、小豆
種実類
・・・
松の実、くるみ、ごま、栗
魚介・海草類
・・・
しじみ、あさり、かき、わかめ、昆布
その他
・・・
ほうれん草、長いも、うなぎ、レバー
昔から、“もち米(おもち)”は産前産後に良い食品とされています。
“欠乳”には様々な原因があります。経験豊かな助産師さんに相談することも大切なことです。乳房マッサージはとても有効な方法です。
母乳は、赤ちゃんにとってバランスのとれた最高の栄養源です。
また、先にも述べましたが、母乳を与えることは、赤ちゃんのみならず、お母さんの子宮の働きを回復させるのに大切なことでもあります。そして、何よりも母子を密着させて愛情を育む大切な時間となります。
中医学鍼灸は、一般的な局所治療鍼灸と異なります。
症状のタイプ別や、細かい体質、或いは症状の起因を見極め手当をおこなうところに大きな特徴があります。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
◎ 当院での治療をお考えへの方へ
= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1~2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。
当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。
これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。
しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。
少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。
- 2019/02/20
- 肩こり
肩コリとは、首すじから肩にかけて起こる、筋肉のこわばりのことです・・・なんてあえて言う必要がないくらいよく知られています。と同時にただの強ばりなのに、とても不愉快で、つらく、仕事や家事に影響がでてしまったり、しかもなかなか治らなかったり。中には怖い病気が隠れていたりすることもあります。
では、この肩コリをどうすればいいか?怖い肩コリとはどのようなものか?考えていきたいとおもいます。
<西洋医学的な考え方>
西洋医学の分野においては、単純な肩コリについてはそれほど重要視されないのが現状だとおもいます。単純な肩コリとは長時間同じ姿勢でパソコンをやったり、細かい作業をしたり、また悪い姿勢で作業したりして特に肩の筋肉を緊張、疲労させた結果 おきます。
単純な肩コリはこのようにおこります。ひどい場合はこわばりだけでなく、痛みになることもあります。
特に肩周囲の筋力の弱い人や、なで肩の人では肩コリになりやすいです。男女比では圧倒的に女性が多くなっています。
また肩コリによって緊張性頭痛、吐き気、耳鳴りなどがおこることもあります。
しかし中には他の病気の影響で肩コリがおこることがあります。
首の骨の問題→頚椎症(頚椎の間の靭帯、軟部組織などの問題)など
耳鼻科の問題→耳の疾患、蓄膿症、鼻炎など
眼科の問題→視力の低下、老眼、眼鏡の視力矯正不良、ドライアイなど
歯科の問題→虫歯、噛み合わせ不良など
内科的な問題→自律神経失調症、高血圧、冷え性、心臓の病気など
神経内科的な問題→ストレス、うつ
婦人科の問題→更年期障害など
これら以外にも肩コリの症状がでる病気はたくさんあります。特に首から上の病気はその首から頭を支える肩にも緊張をあたえ、肩コリとの関係が強い傾向があります。このように他の病気が原因の場合は、まずその病気の治療が必要になります。
最近はテレビの中の健康番組などでも取り上げられていることもありますが、肩コリの中には心臓の病気からおこるものもあり、注意が必要です。心筋梗塞、狭心症、肺尖癌(パンコースト症候群)という病気からもおこります。このような怖い肩コリに特徴的なのは、楽な姿勢をとっているにもかかわらず肩が痛んだりします、また心臓の病気からは左肩から左腕に痛みがでることが多い、などの症状があります。ゆっくり横になっても痛みがとれなく、だんだん痛くなったり、今まで肩コリになったことがないのに突然ひどい肩コリになったりした時は心配ですので念のため医療機関での診察が必要になることがあります。
高血圧で動脈硬化がすすむと肩の微細な血管の血流が悪くなり肩コリになります。
頚椎の問題の場合はしばしば腕から手にかけてシビレが出ることがあります。こちらは詳しくは頚椎症の章を参照してください。
肩コリ以外にこのような症状がある場合は当該の病院の診察が必要になります。
<西洋医学的治療>
・湿布
・首の牽引→機械によって首を牽引し首の筋肉にストレッチをかけ、筋肉をほぐす
・低周波療法、温熱療法、マッサージなどの理学療法
・薬→筋肉弛緩剤、安定剤
・運動の指導
これらの治療が主な治療法になります。
基本的にはこわばっている筋肉をほぐすし、ストレッチして症状を緩和させるということになります。 短期間におきてしまった肩コリについては良い結果があります。
○筋弛緩剤について考えてみたいとおもいます。
肩コリもひどくなると痛みになってしまうことがありますが、理学療法で改善しなかったり、理学療法の施設がなかったりする場合は、筋弛緩剤が処方させることがあります。
筋弛緩剤は 筋肉が緊張し痙攣状態になって痛みがある時に脊髄の神経を麻痺させることにより、筋肉のこわばりを取り去ります。
メリットとしては理学療法で改善しない、または理学療法する時間がない、運動する時間もない場合は、選択肢としては考えてもいいかもしれません。
デメリットとしては、薬で症状だけ緩和させて身体を動く状態にしてしまうことが身体にどのような影響を与えるか少々心配である。肩コリは原因があっての身体の反応です。原因を治療せずに神経の興奮だけを長期に抑えさせると身体がどのようになるか想像してみてください。
○マッサージについて考える
上手なマッサージ治療には単に筋肉の緊張をとりやわらかくするだけではなく、神経の興奮を抑えたり、精神的なリラックス効果 が得られ自律神経のバランスをとったりすることができます。また多少の頚椎、肩関節の矯正効果 もあります。筋肉疲労の肩コリや短期間の肩コリには適応だと考えられます。ただし、リラクゼーションのみの慰安的なマッサージは長期にわたる効果 を望むことは難しいとおもいます。
注意することは、首を雑にマッサージされると症状が悪化したりすることもありますので、 事前に評判など調べて信用のできるところでのマッサージ治療を受ける必要があります。
○運動について考える
単純な肩コリは筋肉が緊張してこわばってしまった状態ですから、自分自身で改善させる方法としては、ストレッチや軽めの運動がよいでしょう。
日常生活では意外と手や腕を頭から上に挙げるということがないとおもいませんか?パッと思いつくのは、つり革をにぎったり、洗濯物を干したりぐらいですね。手を上に挙げる動作は、硬くなっている肩の筋肉を動かす作用があります。筋肉を動かせば血管のポンプ作用もちゃんと働き血流もよくなります。血流がよくなればコリも解消するということです。
水泳、エアロビクスなどは自然に手を挙上でき適した運動です。
またその他には、枕の高さが合わないためやメガネ、コンタクトレンズの矯正視力が合わないためにおこる肩コリもあります。
以上がおおまかですが、西洋医学的な肩コリに対する診断から治療までの流れになります。
<中医学的な考え方>
中医学は少し慣れない考え方もありますので、先にポイントだけ説明いたします。
まず身体の中には「経絡」というスパイダーマンのコスチュームのように身体の臓腑から手足まで上下、内外をつなぐ気(見えない活力源)血(栄養を含んだ血液)の通 り道があります。そして筋肉にもその経絡が影響をおよぼしていると考えます、これを「経筋」といいます。
そして健康な身体とは気と血そして水(身体を構成する水分全体)がバランスを保ち、スムーズに流れている状態であることです。気血水は食事で摂ったエネルギーを臓腑で消化、吸収して作られていきます。
健康でなくなるのは、さまざまな原因によってこのバランス、流れがくずれてしまった結果 といえます。
中医学では肩コリは肩が引きつれるとか肩がだるい、痛いと言います。これは、肩の経絡、経筋のところで気血の流れが悪くなったり、栄養不足になったりしたためひきつれたり、だるくなったり、ひどいと痛くなったりすると考えます。
<中医学的治療>
肩コリの人の中にも 筋肉質の人、痩せている人、冷え性の人、暑がりの人、ストレスを強く感じる人などいろいろなタイプがあり、ただ肩だけに針を刺せば治るというものではありません。確かに、肩に針をするだけでも対症療法的にある程度のコリは取れてしまいますが、やはり原因に対しての治療がないと、体質も変わらず、少し経つとまた強い肩コリに戻ってしまいます。
肩コリに対しても、しっかりした診断から治療を施しひどい肩コリにならない体質作りする治療が必要です。
では、肩コリがどのようなタイプに分かれるかを考えていきたいと思います。
○肝気ウッ滞(気が滞ってしまう)、肝火
原因は緊張や精神的ストレス、怒りなどから気の流れが悪くなってしまったことによります。中医学の臓腑というのは西洋医学でいわれる臓器の機能とは異なるのですが、精神的なストレスなどは「肝」という臓腑に影響を与えます。肝の機能は気の流れをよくしたり、血を蔵したりしています。肝の機能が悪くなれば気の流れも悪くなり、それが滞ってくると燃えて火のようになってしまうのです。そうすると、血が熱せられて肩に充満してしまい肩コリになります。
その他の症状としてはイライラ、緊張、憂鬱、ため息がでる、脇が張って苦しい、目が充血などがあります。
針治療のときは、肩コリにはやはり肩のツボを取ります。そして、気が滞っていればその気の流れを良くするツボを使い、熱があれば熱を取り冷ますツボを使います。
自分でツボを押す場合は、肩以外では足と手のそれぞれ親指と人差し指(第1と第2指)の間の凹んだところをツーンと刺激がでるくらい押しましょう。
軽めの運動やラベンダーなどのアロマセラピーでリラックスさせるのも効果 的です。
○血オ(血が滞ってしまう)
交通事故や打撲、ケガや手術などによって内出血をしてしまったり、肝気ウッ滞から血流の停滞をまねいてしまったりしたために肩に血オをおこし比較的強い肩コリになってしまう。
その他の症状としては 局所が硬い、肩にミミズのような血管拡張が見られたりする。
針治療のときは 血の流れを良くさせるツボを使います。
自分で肩以外を刺激したい場合は、腕から肘周囲や膝裏(委中穴)などを強めに刺激すると効果 てきです。
○気虚(気が足りなくなった状態)
原因は疲労や生まれたときから虚弱体質、老化、慢性的な疾患などで気が不足したため、気が上昇できず、人体の上部の経絡、経筋が通 りにくく力不足となり肩コリがおこる。このような肩コリは自覚があるが、触ると柔らかくコリを触れない。
その他の症状としては元気がない、疲れやすい、立ちくらみなどがある。
針治療では元気を補うツボを使います。
気虚の人は朝鮮人参(なかなか食べれないですよね)、山芋、棗などを食べると気が補われます。棗は生姜と一緒に軟らかく煮てお粥などにすると食欲もでると思います。
○血虚(血が足りなくなった状態)
出血、月経、出産、過労、慢性病などにより血が不足し経筋、筋肉に潤いや栄養がいかなくなり肩コリをおこす。
その他の症状としては 顔色や皮膚にツヤがなくなる、筋肉がひきつる、頭がボーっとする。筋肉の栄養がなくなり筋肉がやせてきたりする。
針治療では 血を補うツボを使います(養血)。
比較的買いやすい食べ物にはクコの実があります。お茶のように煮だして飲んだり、お粥にして少量 の塩をパラッとかけて食べたりすると良いです。
○陰虚陽亢(陰の力が弱くなり、相対的に陽の力が強くなった状態)
老化、慢性病、熱病、多産、過度の性生活のどで水分質(精、血)が不足したため、つまり身体の中のクーラーが壊れてしまい、熱が発生してしまい、その熱が上昇して肩の血を充血させ流れが悪くなったため肩コリになる。
その他の症状としては局所が硬く触れ、イライラ、のぼせ、寝汗、腰や膝がだるくなるなどがある。
針治療では蛇口をひねり水分を補い、上がってしまった熱を引き戻すツボを使います。
陰虚を改善させる食べ物はゴマ、黒豆、スッポンなどが効果的です。
○風寒(冷たい風をあびる)
冷たい風を浴びてしまったり、汗をかいた後よく拭かず風を浴びて冷えてしまったりすると寒くて肩がすくんでしまうように、肩の経絡、経筋の気血の流れが悪くなり肩コリになります。
その他の症状としては 寒気がしたり、風邪の症状がでたりします。一過性のものが多い。
針治療では 身体から風を追い出したり、身体を温めたりするツボを使います。
風寒の状態には葛根湯が有効です。生姜を使った食べ物も身体を温めるので良いでしょう。反対に身体を冷やす生物などは一時避けましょう。
殆どの場合、肩の周囲のツボは使っていくことになりますが、肩以外のツボはそれぞれのタイプにあったツボの選択が必要になります。
今まで針治療しても肩コリが治らなかったという人は、単純に肩だけに針治療をされたのかもしれません。
肩コリにしてもしっかりとした診断、治療が必要だということが理解していただける幸いです。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
尚、遠方の方で当院へ来院しての受診が出来ない方の中で家庭灸を行ってみたい方は、HP内の問診表のチェックを入れ送信して頂ければ灸点のポイントを指導させて頂きます。お気軽にご利用下さいませ。
- 2019/02/20
- 更年期障害
更年期の体の不調は多くの人が経験するものですが、個人差があります。
「ほてり、のぼせ、発汗、不眠、イライラ、めまい、憂うつな気分になる」などいった症状があらわれます。
現代医学では、減少した女性ホルモンを直接的に補う、ホルモン補充療法がよく用いられます。この方法は更年期症状全般 に有効ですが、誰もが飲めるわけではなく、血栓症がある人や乳がんの既往があるような人は服用が制限されてきます。
このような場合中医学では、こころと体全体のバランスを整えることに重きをおき、様々な不定愁訴といわれる症状を独自の診断方法にもとづいて治療していきます。
症状の軽重は、個々の体質や性格、生活環境や社会環境が関係してきます。
▼中医学的な更年期障害のとらえ方▼
中医学では主に「腎」が生殖機能と深く関わっています。更年期にかかる45~55歳の間は体全体の機能低下が見られますが、特に「腎」の働きが自然現象として衰えていきます。腎は下記の≪~臓腑の働きとは~≫でもふれますが、元気の源とも言われ、体全体を温める力(気の働き)と臓腑や各器官に栄養を与え潤す力(血・水の働きに当てはまります)を備え調節しています。この温める力が低下すると手足の冷え、むくみ、頻尿などの冷え症状が強くあらわれ、潤す力が低下するとのぼせ、発汗、めまい、人によっては骨密度の減少、高血圧、高コレステロールをまねくと考えられています。
また、このような状態が長く続くと他の臓器へも影響を及ぼし様々な症状を生み出します。
▼中医学的からだのしくみ▼
~「気」「血」「水」とは~
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。
もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。
~臓腑の働きとは~
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。
中医学的にみた婦人科疾患で重要な臓腑の働きは下記のようになります。
「肝」・・
1.
全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。
2.
全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。
ですので、肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため(肝が支配している器官である)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足がしびれる、筋けいれんが起こりやすくなったりします。
「脾」・・
1.
食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。
2.
エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。
働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。
3.
血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。
「腎」・・
生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。
「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。
女性では、月経不順や不妊症、閉経などの原因になります。
「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
▼中医学的な更年期障害のとらえ方▼
中医学では主に「腎」が生殖機能と深く関わっています。更年期にかかる45~55歳の間は体全体の機能低下が見られますが、特に「腎」の働きが自然現象として衰えていきます。腎は上記の≪~臓腑の働きとは~≫でもふれましたが、元気の源とも言われ、体全体を温める力(気の働き)と臓腑や各器官に栄養を与え潤す力(血・水の働きに当てはまります)を備え調節しています。この温める力が低下すると手足の冷え、むくみ、頻尿などの冷え症状が強くあらわれ、潤す力が低下するとのぼせ、発汗、めまい、人によっては骨密度の減少、高血圧、高コレステロールをまねくと考えられています。
また、このような状態が長く続くと他の臓器へも影響を及ぼし様々な症状を生み出します。
▼中医学的診断・治療方法▼
個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。
そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。
この他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。
その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。
▼中医学的更年期障害のタイプと治療法▼
●肝腎陰虚タイプ●
肝腎要といわれるようにこの2つの臓器の働きが失調することにより、体を養う血、潤す働きの水が不足し、あらわれる症状です。
○随伴症状
月経が早く来る、経血量は多くダラダラとしみでる、色は紅い、めまい
顔面部ののぼせ、いらいら気分になる、汗がでる、口が乾きやすい
手足・胸中がほてる、腰がだるくなる、耳鳴り、動悸、不眠
○治療方法
体を養う血、潤す働きを高める「滋養肝腎」の治療をしていきます。
ツボ:腎ユ、肝ユ、太渓、復溜、三陰交、内関、太衝
漢方:六味丸合四物湯
●腎陽虚タイプ●
体全体を温める働きをもつ「腎」。機能が低下すると冷え症状が多く見られます。
○随伴症状
月経周期がまちまちで経血量は少ない、色は薄く赤い(淡い)
質はさらさらしている、またダラダラでる、顔色はうす暗く、手足が冷える、頭がくらくらめまいがする、腰がだるく冷える、尿が希薄で量 が多い
○治療方法
体を温め、活動力を増す「温補腎陽」の治療をしていきます。
ツボ:腎ユ、命門、関元、三陰交 (お灸も一緒にすると効果が高まります)
漢方:八味地黄丸
●痰湿阻絡タイプ●
「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、経絡(気の流れるルート)の運行を阻害するために生じる症状です。
○随伴症状
水太り体質、頭が重くめまいがする、頭痛、耳鳴り、のぼせる
胸や胃のあたりがもたれる、吐き気、嘔吐をもよおす、食欲低下
むくみ、軟便ぎみ
○治療法
脾の働きを高めることにより痰を作らないようにする「健脾化痰」の治療をしていきます。
ツボ:(鍼)足三里、中カン、豊隆、三陰交
(お灸も一緒にすると効果が高まります)
漢方:半夏白ジュツ天麻湯、二陳湯、五苓散
▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼
自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。
●肝腎陰虚タイプ●
【生活習慣】
・
体を養う血の消耗につながる生活は避けましょう。睡眠はしっかりとり、血を消耗させやすいパソコンの使いすぎ、テレビの見すぎ、夜更かしは避けましょう。
・
血を補い、体を潤す働きのある食べ物を摂るよう心がけましょう。
【食べ物】
~体を冷まし、潤す作用のある食べ物を摂りましょう~
(乳製品)
豆乳、牛乳
(肉 類)
豚の皮、鴨肉、豚肉
(魚介類)
いか、牡蠣、すっぽん(とくに甲羅の部分)
(野 菜)
山芋、白きくらげ、黒きくらげ
(果 物)
なし、もも、ぶどう
(木の実)
クコの実、くるみ、黒ごま
(お 茶)
桑の実とクコの実のお茶
●腎陽虚タイプ●
【生活習慣】
・
冷えやすい下半身は下腹部や腰部にカイロをはって、しっかり温めましょう。
・
体を温める食べ物を摂るようにしましょう。
【食べ物】
~体を温め、活動力を増す作用のある食べ物を摂りましょう~
(穀 類)
もち米
(肉 類)
羊肉、鹿肉、牛肉
(魚介類)
えび、なまこ
(野 菜)
にら、ねぎ、ししとう、かぼちゃ、しょうが、にんにく
(木の実)
栗、くるみ
(香辛料)
酒、シナモン、黒砂糖、フェンネル
(お 茶)
杜仲茶、ジンジャーティー黒砂糖入り
※腎陽虚はからだを温める働きのある食材を、腎陰虚はからだに潤いを与える食材です。
同じ「腎」でも作用させる働きが180度違いますので気をつけて摂取してください。
●痰湿阻絡タイプ●
【生活習慣】
・
甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。
・
水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。
・
運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。
・
梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。
【食べ物】
~水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう~
(穀 類)
はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆
(野 菜)
冬瓜、白菜、山芋、トマト、チンゲンサイ
(魚 類)
こい、ふな
(果 物)
すいか、ぶどう、メロン
▼その他日常生活での注意点▼
*
悩んだり、焦ったり、イライラしたりする気持ち、心身の疲労などが更年期障害を強くしますので、ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功、など)、軽い散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。
*
室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。
お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。
*
規則正しい生活をし栄養バランスの摂れた食べ物、特にカルシウムやビタミン類をしっかり摂り、十分な睡眠をとりましょう。
更年期というのは本来「更に良い年齢を重ねて行こう」という意味合いが含まれています。
どこか暗くさびしいイメージを持つ方もいますが、卵巣が働きを終えるというのは女性であれば誰にでも起こる自然なことです。更年期をマイナスにとらえるのではなく、よくここまで頑張ってこれたと自分をねぎらい、これからの人生をよりよく生きるための充電期間と考えましょう。
●より細かく『自分の体質を把握したい』、『1つのタイプだけではなく、幾つも混ざっているタイプがあるため詳しく知りたい』という方、中医学的治療を受けたいという方はお気軽に当院へご相談ください。
鍼灸・漢方全般に関するご相談もお受けしております。
- 2019/02/20
- 高血圧
医療機関で測定した血圧の分類では、最高血圧が140~159mmHgまたは最低血圧が90~99mmHgあるときに(軽症)高血圧とし、最高血圧が160~170mmHgまたは、最低血圧が100~109mmHgあるときに(中等症)高血圧とし、最高血圧が180mmHg以上または最低血圧が110mmHg以上あるときに(重症)高血圧と定めています。
血圧値が高血圧の数値でも、一回測っただけでは高血圧症とはいいません。同じ状態で何回も測って決まります。
●高血圧症は原因が分かっているかどうかで大きく2つに分類されます●
血圧が高くなる明らかな原因が分からないものを本態性高血圧と呼び、高血圧症の患者の90~95%を占めています。これに対して血圧が高くなる原因が明らかなものは二次性高血圧と呼ばれています。
本態性高血圧は明らかな原因は解っていませんが、遺伝的素因や加齢、食塩の過剰摂取、寒冷、肥満、ストレス、運動不足、喫煙などが影響して血圧を上昇させていると考えられています。そのため、高血圧症は生活習慣病の一つとして取り扱われています。
二次性高血圧には腎臓の働きが低下したものや、ホルモンの異常によっておこるもの、血管に病気があるもの、神経性のものなどがあります。
本態性高血圧症の自覚症状は、急激に血圧が変動したときに感じることが多いです。
高血圧症の多くを占める本態性高血圧の患者は、初期には自覚症状を訴えないのが普通 です。しかし、まったく自覚症状があらわれないのかといえば、そうではありません。たとえば、一時的ではありますが、急激に血圧が上がった場合に、頭重感、頭痛、めまい、肩こり、動悸、吐き気、手足のしびれ感、顔面 のほてり感などの自覚症状を訴えることがあります。
高血圧症では、合併症が大きな問題です。
高血圧症の状態が長くなると、徐々に血管障害が進行して、脳、心臓、腎臓などに高血圧症による臓器障害と呼ばれる合併症をひきおこします。この合併症が大きな問題です。
高血圧症によって脳の血管に障害がおこると、頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ感などの症状がでることがあります。さらに進行すると、意識障害や運動障害、脳梗塞を起こします。心臓では不整脈や心肥大、心不全、狭心症、心筋梗塞の原因にもなります。また、腎不全や尿毒症などの腎障害や、眼底出血の原因にもなります。
●現代医学的診断・治療方法●
本態性高血圧症は様々な原因がからんで起こるので、問診や検査などによって、考えられる原因を絞り込み、生活習慣を改善した上で、その人に最もあう薬を併用しながら治療を行います。
どのような理由で血圧が高くなっているかによって、循環血液量を減らしたり、血管を拡張させたり、心臓の働きを抑えて、心臓からの血液の拍出量 を減らす薬を用います。
現在使われているのは、利尿剤や血管拡張剤、交感神経抑制剤、レニンアンギオテンシン酵素阻害剤です。
こうして高血圧と深い関係のある動脈硬化や糖尿病などを将来の病気に備えるのが、現代医学の考え方です。西洋薬は副作用などの懸念があるため、絶対的な満足感を得られる治療法にはなってないのが現状です。
●中医学的診断・治療方法●
中医学では主に原因のはっきりしない本態性高血圧症に効果を発揮します。
高血圧症の患者さんは初期には特に症状が現れない人もいれば、自律神経失調による目眩、頭痛、肩こり、イライラ、不眠、動悸、気分の低落など多様な症状を示す患者さんもいます。多様な病態を示す高血圧症に対して、中医学では患者の主症状に注目し、その病機の分析に力を入れます。
中医学は、西洋薬のようには直接的血圧を下げる強力な治療薬はありませんが、患者さんの生体を全身的に調整・治療することによって多様な症状を一つ一つ消し去り、結果 的に血圧異常・代謝異常を改善することができます。
●中医学的からだのしくみ●
中医学(中国医学)では人間の体を次のように考えています。人間の体は五臓六腑を中心に生命を維持する基本物質である気(エネルギー)・血(血液)・水(体液)が十分に生産され、この気・血・水が経絡という通 路を正常に流れて初めて人間の健康が維持できるという考え方にあります。
中医学による病気の治療とは、生命活動を維持する気・血・水のどこに問題があり、それが不足(虚)か有余(実)を判断します。そして五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎)のうちのどの臓腑が、この気・血・水の問題を作り出したかを診断をします。
五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎)は西洋医学と全く同じ役割分担ではありませんので混乱しないようご一読下さい。
●高血圧症に重要なポイントとは?●
中医学的にみた高血圧症で重要な臓腑(肝・心・脾・肺・腎)は下記のようになります。
「肝」…長期的に精神的な緊張が続くため
肝のエネルギーが一箇所に停滞し、停滞し続けた肝のエネルギーは火(熱・興奮状態)に変化しやすく、病理的な肝風・肝火といわれる状態になります。肝風と肝火はいずれも肝のエネルギーが興奮した状態であり、上昇・炎上という動的な性質をもっています。その為に血圧の上昇を起こします。
「脾」…味の濃い食べ物や甘い物を好んで食べたり、過度の飲食不節制のため
飲食の不節制が続くと代謝しきらない余分な栄養素(痰濁)が体内に溜まってきます。
余分な栄養素は停滞すると熱に変化しやすくなる傾向があります。この余分な栄養素(痰濁)が上昇する性質をもつ肝の臓腑と一緒になると頭部を乱し(風痰上優といわれる)、血圧上昇、頭痛、めまいなどを引き起こします。また、痰濁は血流を妨げたり、血液のサラサラを低下させたりします。その為に血圧の上昇につながります。
「腎」…過労または加齢のため
腎精が不足すると肝の陰血も不足となり、肝腎不足という状態になります。肝の陰血が不足すると、相対的に肝陽が過剰となり、肝陽が上亢して清空を乱す結果 、血圧上昇、頭痛、めまいなどの症状がおこります。分かりやすく述べると興奮状態(肝陽上亢)、陰血不足は血液の粘着率が高い状態です。
上に述べた関連臓腑の中で中心的役割を果たすのが、「肝と腎」2つの臓腑のアンバランスな関係(陰陽失調)です。
●中医学的高血圧症のタイプと治療法●
高い血圧を一時的に下げても、高血圧の原因・崩れた体質、病態がそのまま残るならば血圧は再び上昇する可能性があります。したがって高血圧症には根本的な治療が必要であり、中医学には次のような考えかたがあります。
1.肝火上炎タイプ
体を温めるエネルギーが過剰になりすぎて、体の上部にその熱が集まってしまう状態です。
主な症状
イライラする・怒りっぽい・頭痛(張った痛み)・赤ら顔・めまいなど
治療方法:
清瀉肝火
漢方薬:
竜胆瀉肝湯
2.肝陽上亢タイプ
肝火上炎タイプより、症状が複雑化したタイプです。
肝陰を損傷すると肝陽は陰の制約を失ってしまい、上下の陰陽が失調するタイプ。
ストレスなどで肝の働きが過剰となり、またそれを制するための肝の滋養が衰えているタイプ。滋養不足からめまい・ふらつき・耳鳴りなどが起こりやすい。
主な症状
めまい・耳鳴り・頭痛・偏頭痛など
治療方法:
平肝潜陽 (上がっている肝のエネルギーを下に下げる治療法)
滋補肝腎 (肝と腎のエネルギーバランスを補う治療法)
漢方薬:
天麻釣藤飲
3.肝風上擾証タイプ
このタイプは肝陽が上逆して肝風を生じたものです。
主な症状
めまい(倒れそうになる)・頭痛(張った痛みまたは激痛)
手足の痺れまたはふるえ・言語障害・歩行困難
治療方法:
平肝熄風(肝の機能亢進状態を改善し、めまい・痙攣など状態を改善する)
滋陰潜陽(体を潤しつつ、栄養分を補い上がっているエネルギーを下に下げる)
漢方薬:
鎮肝熄風湯
4.肝腎陰虚証タイプ
気持ちが鬱々とした状態が続くと肝火(肝の機能亢進状態)を動かし、陰液を消耗するタイプ。
主な症状
五心煩熱・健忘(物忘れ)・足腰のだるさ・盗汗(寝汗)・遺精
治療方法:
補益肝腎(人体に内在する抵抗力を強め、肝と腎の生理機能の回復を促進する)
漢方薬:
杞菊地黄丸
5.痰濁内阻証タイプ
脾のエネルギーが足りないために、食べたものが気や血に変わらず、余分な水分が体内に停滞しているタイプ。
主な症状
目眩・口が粘る・口が苦い・痰が多い・大小便がすっきり出ない
肥満体型・手足のしびれ
治療方法:
健脾化痰
(胃腸を調整し、体内に内在する不必要な物質を取り除く)
平肝熄風
(肝の機能亢進を改善し、めまい・筋肉の痙攣などを改善する)
漢方薬:
黄連温胆湯
6.気滞血お証タイプ
血の流れが滞ってしまうことにより、気の流れも渋滞を起こしてしまうタイプ。
主な症状
めまい・頭痛・固定痛・激痛がある
治療方法:
疏肝理気
(肝の疏泄失調と整え、気の流れを調整し、気の滞りを改善する)
活血養血
(血の流れを改善し、血の滞りを改善し、血の不足を補う)
漢方薬:
逍遥散
7.陰陽両虚証タイプ
陰と陽が両方とも衰えている状態で、大病後の回復期あるいは慢性病の末期などに現れるしまうタイプです。
主な症状
目眩・耳鳴り・動悸・息切れ・不眠または夢を多く見る・足腰がだるい・手足の冷え・夜間尿が多い
治療方法:
調補陰陽(エネルギーを陽気といい、それを補給する物質を陰分といいます。この2つをバランスよく調整する)
漢方薬:
二仙湯
●高血圧の食養生と生活養生とは?●
ドクダミ茶
乾燥したドクダミの葉25gを600mlの水で半量になるまで煎じて1日3回に分けて飲みます。
杜仲茶
中国原産のトチュウには、利尿などの作用があります。市販の葉5~10gを600mlの水で煎じ、1日3回に分けて飲みます。
決明子茶
便秘傾向の強い高血圧の方に向いています。血圧を下げる作用と便秘(コロコロ便)を改善します。
釣藤鈎(ちょうとうこう)
カキカズラのとう(生薬のちょうとうこう)5~10gを煎じて1日3、4回飲みます。特に動脈硬化性の高血圧に効果 があるとされます。
菊花茶
のぼせ、火照り感のある高血圧により、血圧を下げる作用とのぼせ、火照りの改善になります。
青菜の効用
まず、食用にできる青菜や野草の葉を~6種類用意し、よく水洗いして細かく刻みます。
それをすり鉢ですりつぶし、すりこぎでつくと青汁が取れます。これをなるべく多量 に(目安は90mlずつ)1日2、3回飲むとよいとされています。
野菜や草木の緑の葉には、多くのビタミン、ミネラル、をはじめ、酵素や植物性ホルモンなどが含まれています。これが、健康的な血液を作るのに役立ち、血圧の安定につながる青汁の効用です。
入手しやすい青汁の材料…ほうれん草・小松菜・大根の葉・シソ・ヨモギ・柿の葉など
クエン酸の効用
クエン酸は食酢や梅干し、柑橘類などに含まれる酸味成分です。クエン酸は現代医学でも体内の細胞のエネルギー代謝を活発にすることが分かっています。血圧には、全身の細胞の代謝が良くなり、心臓や血管の負担が軽減すると考えることができます。
梅肉エキス…5g程度を1日3回に分けて取るとよい。
酢…50g程度を1日3回に分け、水などで薄めて飲用するのが目安。
日常生活の改善ポイントとして、
○
血管収縮作用を引き起こす喫煙を控える。
○
精神的ストレスを解消するために趣味を持つ。
○
ウォーキングやストレッチなどの適度な運動を習慣づけて、新陳代謝を活発にし、肥満を解消する。
○
食べ過ぎによるカロリー過剰を避ける。
○
動物性脂肪を控えめにし、ビタミンなどのミネラルや食物繊維を取り入れることが大切です。
中でも特に気をつけたいのが、食生活です。
カツオやマグロ、イワシ、サバなどの青魚には、血液をサラサラにするDHAや、EPAなどの不飽和脂肪酸が含まれており、滞った血液の流れを促進する働きがあります。
また、コレステロールを下げて、血栓を予防するタマネギ、血圧を緩和し、末梢循環を促進させて動脈硬化を予防するニンニク、不足しがちなミネラルが豊富な、ワカメや昆布などの海藻類を取るようにしましょう。
他に血液を増やす食材に、
ほうれん草やニンジンなどの緑黄色野菜、アサリやシジミなどの貝類、レバー、鶏肉、黒豆、くるみなどがあります。
なお、血をめぐらせる作用にすぐれた中成薬に、
「丹参(たんじん)」という生薬を配合したものがあります。
「丹参」には、
◇血管を拡張して血流を増やす作用
◇血圧降下作用
◇血栓抑制作用
◇血液粘度を下げる作用
◇血管を若々しく保つ作用
◇血小板の凝集を抑制する作用
◇抗酸化作用
などがあることが分かっていて、中国でもお年寄りの病気予防や治療に広く用いられています。
日本では、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」という名前で市販されている中成薬があります。血の汚れが悪くなると起こる、頭痛、肩こり、関節痛などの痛みに即効性があります。
また、毎日、服用を続けていると心臓病や脳卒中、認知症の防止にも効果 的です。
高血圧ひとつ取り上げても様々なタイプがあることがお分かり頂けたでしょうか?
当治療院は、お一人お一人の症状に合った治療法を取り、漢方、食生活などをアドバイスさせて頂きます。
お気軽に当院までご相談下さいませ。
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