コラム

2019/02/20
帯状疱疹

帯状疱疹は、子供のころにかかった水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、 神経の中に潜んでいて、体力の低下などをきっかけに活性化して起こる病気です。

 

水ぼうそうは、一度かかってしまうと、ウイルスに対する抗体ができるので、免疫状態となります。

しかし、そのウイルスは死んでしまうわけではなく、眠っているような状態なので、 疲労や睡眠不足などによって体力が落ちたり、他の病気で免疫機能が低下したときなどに活性化して、 発症すると考えられています。

 

症状

 

帯状疱疹は身体の左右どちらかに帯のように現れます。

 

はじめはピリピリチクチクした痛みから始まり、しばらくするとその部分が赤くなり、 やがて水ぶくれになって神経痛のような激しい痛みになります。

 

発症部位で一番多いのは肋間神経のある胸から背中にかけてです。

この他、頭部や顔面・腹部・臀部・下肢にもあらわれます。

顔面にある三叉神経に沿って現れる場合は、失明や顔面神経麻痺をともなうこともあるので特に注意が必要です。

 

痛みが始まってから水膨れが治るまでの間は、約3~4週間です。

通常、痛みは水膨れが治る頃に消えますが、治った後も痛みが残る場合があります。

 

一ヶ月以上痛みが続く場合は「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれていて、かなり激しい持続性の痛みがあり、 日常生活にも支障をきたします。

ウイルスによって神経が破壊されることが原因ですから、早めに治療することで、防ぐことができます。

症状が進行する前に、できるだけ早く皮膚科で診てもらいましょう。高齢者は特に注意が必要です。

 

また、それと同時に鍼灸治療をしていくと、回復が早く、予後が大変良いようです。

 

《西洋医学的治療法》

 

帯状疱疹の治療は、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されます。

 

抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止します。

神経がまだ破壊されていない初期の段階で服用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防ができます。

 

一般には、皮膚症状が現れてから5日目ぐらいまでに、抗ウイルス薬による治療を始めれば、 後遺症は残りにくいと考えられています。

 

抗ウイルス剤としては、ゾビラックス・バルトレックスなどがあります。

バルトレックスはゾビラックスを改良した「プロドラッグ」(体内で代謝されることにより、 効果を発揮する薬)です。

ゾビラックスよりも吸収が良く、服用回数が少なくてすむ利点はありますが、 点滴のように血中濃度が上がりやすいので、早期(内服開始1~2日目)に激しい疼痛や腎障害などの副作用が起こることがあります。

特に腎機能障害ある人や高齢者は十分注意してください。

 

補助的な薬としては、神経にいいビタミンであるメチコバール(ビタミンB12)が使われます。

我慢できない痛みがある場合は、消炎鎮痛剤も内服します。

それでも、激しい痛みが取れない場合は、神経ブロックなどの対症療法によって、 痛みを軽くする治療が行われます。

 

最近、薬を必要以上に飲みたくないという方が増えてきましたね。確かにそれも大切なことなのですが、 抗生剤や抗ウィルス剤に関しては、正しい量を、処方された期間きちんと服用しなければいけません。

自覚症状がとれたからといって、早めにやめてしまうと、再発の恐れがあります。

 

余談になりますが、薬の効果を活かすオマジナイをひとつ紹介します。

 

ひとつの薬が開発されるまでには、とても沢山の人々の命や、実験動物達の命が犠牲になっています。

たった一粒の薬について考えても、多くの命が土台となっているのです。薬はモノではありません。

命のかたまりなのです。

 

多くの命に「ありがとう」と、心の中で言ってから飲むと、その効果が最大限に発揮されます。

感謝の気持ちでいるときは、「気」の流れも良くなりますから、東洋医学的に考えても、 身体が良い状態に近づくから・かもしれませんね・・。

 

さて、帯状疱疹の話に戻りましょう。

 

《中医学的考え方》

 

中医学では、「蛇丹」、「纏腰火丹」(てんようかたん)、「纏腰竜」、「水帯疱」などと呼び、 湿熱によるものとされています。疲労やストレスがたまったり、免疫力が低下すると発症します。

 

発疹は熱邪があり、水疱がは湿邪があると考えます。痛みは、患部に気血が滞るために生じるものです。

帯状疱疹後神経痛は「蜘蛛瘡」(ちじゅそう)といわれ、激しい痛みに加えて便秘・口渇・頻脈を 伴うことが多く、精神的な苦痛も大きいようです。                                             

病機別考え方  

1.肝胆欝火(風火の邪が肝経に鬱滞し、火邪が皮膚にこもる)

多くは腰肋部に発症する。    

過労やストレスが原因となることが多い。    

頭痛や眩暈を起こすこともある。    

治則:清泄肝火

   

2.脾経湿熱(湿毒が脾経に鬱滞し、湿熱が皮膚に浸出する)

多くは胸部に発症する。   

疲労がたまっていたり、暴飲暴食が原因となることが多い。    

治則:清利湿熱

   

症状別治療法    

 

1.初期・灼熱性疼痛と水泡の出現

舌診:

紅・薄黄か膩苔

脈診:

弦・滑

治則:

清熱除湿(身体に入ってしまった熱邪と湿邪を取り去る治療をします)

漢方薬:

竜胆瀉肝湯

 

  

2.高熱・口渇・皮膚の痛み

舌診:

紅絳・黄厚苔

脈診:

滑数

治則:

清熱解毒(熱を下げ、外邪の影響を抑える治療をします)

漢方薬:

清営湯

 

 

3・暴飲暴食が原因の場合

舌診:

胖・白厚苔・白膩苔

脈診:

緩または滑

治則:

健脾燥湿(胃腸の働きを整え、湿邪を取り除く治療をします)

漢方薬:

除湿胃苓湯

    

 

4.過労やストレスが原因の場合

舌診:

暗・薄白苔

脈診:

沈細または沈緩

治則:

活血化お(血流を良くし、血の滞りをなくす治療をします)

漢方薬:

益気活血散お湯

 

 

以上のように、中医学的治療では、病気になったもとの原因や、病気の状態を把握して、治療方針を決め、また、さらに患者さんひとりひとりの体質に合わせた治療をしていきます。

 

現状ではまだ、帯状疱疹後神経痛にまで進行してしまった方が、西洋医学ではどうしようもなくなって、鍼灸治療に切り替えるという患者さんが多いのですが、できればもっと早めに、鍼灸治療を受けられることを、お勧めします。

 

痛みや後遺症が軽くてすむという事はもちろんですし、帯状疱疹になる原因となった、 疲労や免疫力の低下も改善できるからです。

病気なった頃よりも、元気な身体作りができるはずです。

 

鍼は痛いのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、注射針や縫い針のように太い針を刺す訳ではありません。

鍼灸治療の鍼は、細いものでは髪の毛より細いですし、太くても木綿糸程度で、容易にクニャクニャと 曲げられるほど弾力性があります。

刺して痛いというより、ズーンと重たいような響きがあり、これが「気」を動かす刺激となって、鍼の効果 につながっていくのです。

 

鍼を受けると、気持ちが明るくなると、おっしゃる患者さんが多いのは、やはり、 「気」が元気よく巡るようになるからではないでしょうか。

 

日常生活の注意

 

痒くても病変部位を引掻かないようにしましょう。水泡が破れた場合は、ウィルスが他の場所について、 感染を広げてしまうことがあります。水疱瘡になっていない子供にはうつります。

飲酒や熱い風呂への入浴は避けます。

暴飲暴食は避けて、正しい食生活をし、なるべく身体を休めて、ストレスや疲労をためないように心掛けましょう。

 

帯状疱疹は、鍼灸治療による効果が期待できる主要な疾患のひとつです。

 

世の中には、さまざまな鍼灸院がございます。

自分自身が求めている治療は何かを明確にし、納得できる鍼灸院を探して、治療にあたると良いかと思います。

 

個人個人の体質に合わせての治療を行います。お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
胆石

胆石は、肝臓から十二指腸に続く胆汁の通り道(胆道)に石ができる病気です。ときとして右上腹部に激痛が起きますが、まったく無症状のまま経過するケースも多くみられます。

胆石は、体内にとり込まれた脂肪やたんぱく質などの消化を促す胆汁の成分が固まって、石状に形成されたもので、大きさや形はもちろん、できる場所、種類、形成・成長過程なども実に様々です。

胆汁には胆汁酸、リン脂質、コレステロール、ビリルビン(胆汁色素)などの成分が含まれています。

胆石の種類は構成成分によって、“コレステロール胆石”と“色素(ビリルビン)胆石”、その他の胆石に分けられます。

 

胆石は、発生部位によって胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分けられます。

胆嚢結石”は、胆嚢内にできた結石で、コレステロール石が圧倒的に多く、胆石のなかで最もよくみられるものです。

総胆管結石”は、胆管内にある結石で、大半は胆嚢内にできた結石が胆管に押し出されてきたのです。

肝内結石”は、肝臓内の胆管にできる結石で、胆嚢結石や総胆管結石と比べると発生率の低い胆石です。

 

日本では、胆石保有者数が年々増える傾向にあり、現在、成人の5~10%の人が胆石をもっていると推測されています。

また、第二次世界大戦前には約80%が色素胆石だったのに対し、近年はコレステロール胆石が70%以上を占めるようになっています。

胆石保有者が増えている要因の一つに、検査技術の向上や人間ドックなどの普及によって胆石がみつかりやすくなった点があげられます。

また、食生活が欧米化して、脂肪などの摂取量が増えたことも関係していると考えられます。

胆石ができやすいタイプは、Fecund(多産)、Female(女性)、Fatty(体格がよく、小太り)、Forty(40歳以上)の「四つのF」という特徴があるといわれています。

実際、胆石のできる割合は男性より女性のほうが1,5~2倍ほど高く、やせている人より太っている人のほうが多いことも明らかです。また、年齢が高くなるにつれて胆石ができやすくなり、60~70代がピークです。

このほか、食事の時間が不規則だったり、ストレスが多いことも胆石ができやすい条件になります。

 

 

コレステロール胆石の形成≫

コレステロール胆石の患者数は年々増加しており、全胆石の大半を占めるといわれています。

成因については、解明されていない点も多くあります。結石ができるまでの3段階は、まず胆汁が過飽和の状態になり、次に核が形成されたり、コレステロールが結晶化し、さらに、肉眼でわかる大きさの結石に成長すると考えられています。

コレステロールは水に溶けないので、胆汁中では、胆汁酸とレシチンで形成されるミセルという形態に包み込まれたり、ベジクルというリン脂質の膜で覆われた状態で存在しています。

しかし、ミセルとベジクルがコレステロールを取り込む量には限度があるため、何らかの原因で胆汁中のコレステロールが増えすぎるか、逆に胆汁酸やレシチンの割合が低くなると、コレステロールをそれ以上ミセルとベジクルに取り込めなくなります。この状態を過飽和といいます。

胆汁中のミセルとベジクル、コレステロールのバランスが崩れた結果 、胆石ができやすくなるのです。

コレステロールが増えすぎる原因としては、コレステロールの摂取量 や腸管から吸収される量の増加、肝臓でのコレステロールの合成量の増加などがあげられます。また、胆汁酸とレシチンが減少する原因としては、腸の手術後や、腸の炎症によって胆汁酸をうまく吸収できなくなるか、先天的な胆汁酸を生成する機能の異常などが考えられます。

これらの理由から、胆汁が過飽和の状態になると、胆汁中のベジクルが集まって塊となったり、コレステロールの結晶が形成されます。さらに、胆嚢の機能障害などが加わり、胆石に成長していくといわれています。

 

 

色素胆石の形成≫

色素胆石は、ビリルビンカルシウム石と黒色石の2種類に分けられますが、その成因は、胆道への細菌感染や寄生虫の侵入、ファーター乳頭という、胆管の出口にある小さな突起の炎症(乳頭炎)や傍乳頭憩室のよる胆汁の流れの停滞、低脂肪で炭水化物に偏った食事などです。

特に、大腸菌やそのほかの細菌による胆道感染が起こると、これらに含まれるベータ・グルクロニダーゼという酵素によって水溶性のビリルビンが分解され、水に溶けにくい性質に変化します。

このビリルビンが胆汁中のカルシウムと結合して、ビリルビンカルシウム石ができると考えられています。

胆汁のpH(水素イオン指数)がアルカリ性に傾いたり、胆汁酸の濃度が低下しても、ビリルビンカルシウム石ができやすくなるといわれています。

一方、黒色石は、溶血性黄疸や肝硬変が原因になったり、心臓の弁置換手術後や胃の切除手術後などに形成されることが多いのですが、形成されるメカニズムについては、まったく明らかにされていません。

 

 

胆石による症状≫

胆石で最も特徴的な症状は、疝痛発作といわれる、さし込むような激しい腹痛です。疝痛発作は、胆汁を分泌しようとして胆嚢が収縮するときに、胆石が胆嚢から総胆管や十二指腸のほうへ動かされて内壁とこすれ合うと生じます。

また、胆嚢頸部や総胆管などに胆石がつまる胆石かん頓によっても起こります。

胆嚢は食事でとった脂肪分を処理するために働くので、疝痛発作は脂肪分の多い食事や料理を食べたり、暴飲暴食の後に現れやすくなります。

最初は、上腹部の圧迫感や不快感などで始まりますが、しばらくすると右上腹部に刺すような痛みを感じるようになります。

痛みは、10分程度で治ることもあれば、数時間持続ずることもあり、市販の鎮痛剤では治まらないこともしばしばです。

また、疝痛発作の前ぶれとして、吐気や悪寒、右肩のコリといった症状が現れるケースもみられます。

上腹部のほかに、右肩や右腕、背中などに痛みが起こることもあります。この痛みは放散痛といわれ、内臓の痛みの刺激が脊髄にある知覚神経に影響を与えるために現れるものです。

腹痛とともに右肩への放散痛があれば、胆石である可能性が高いといえます。

疝痛発作のほかに、黄疸や発熱がみられることもあります。黄疸は、胆石によって胆管がつまり、胆汁の流れが悪くなったときに現れます。

また、発熱は37~38℃程度で、疝痛発作に伴う一時的なものがほとんどですが、高熱が何日も続いたり、上がったり下がったりを繰り返すような場合は、胆管炎や胆嚢炎を併発している場所や種類によって異なります。

例えば、疝痛発作はビリルビン胆石よりもコレステロール胆石のほうに起こりやすいといわれています。

コレステロール胆石は軽くて小さく、胆汁の中で動きやすいため、発作を誘発しやすいと考えられます。

また、胆石があっても、まったく症状が現れないこともあります。このような胆石をサイレントストーン(無症状胆石)とよびますが、胆嚢内結石の多くがこの無症状胆石のため、健診などで偶然にみつかるケースが少なくありません。

 

 

現代医学による治療法≫

胆石の治療法は、手術をしないで胆石だけを取り除く保存療法と、手術によって胆嚢ごと摘出する手術療法に大別 されます。

保存療法には、溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法、内視鏡的療法があります。

溶解療法は、溶解剤を用いて胆石を溶かす方法で、経口薬を服用する場合と、胆嚢にチューブを挿入して胆石に直接溶解剤をかける場合があります。

ただし、すべての胆石に有効なわけではありません。

溶解療法が適応できるのは、胆石が胆嚢内にあることが条件で、さらに直径1~1,5cm以下の純コレステロール石で、表面 が石灰化していないものに限られます。また、胆嚢に変形や萎縮がなく、疝痛発作などの激しい症状がみられないことも条件です。

体外衝撃波胆石破砕法は、体外から衝撃波をあてて胆石を細かく砕く治療法です。

砕いた石は、さらに溶解剤を服用して溶かす必要があります。

体外衝撃波胆石破砕法も溶解療法と同様、胆嚢内の胆石であること、石の大きさが直径2cm以内で、数は最大3個までといった適応条件があります。

また、適応条件をクリアしても1回だけでは破砕できず、何回も行わなくてはならないケースもあります。

総胆管結石に対しては、溶解療法や体外衝撃波胆石破砕法は適応となりませんが、内視鏡を用いた十二指腸乳頭括約筋切開術で摘出できる場合があります。

内視鏡を十二指腸まで挿入し、十二指腸が下行している部分である下行脚に位 置するファーター乳頭の括約筋を一部切開し、総胆管にある胆石の自然排泄を待ったり、機械を用いて切石します。

また、胆石をバスケットという器具を使って摘出したり、切石除去する方法もあります。

結石が大きすぎて切開部を通らない場合は、衝撃波やレーザーで結石を小さくしてからとり出します。

溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法は、手術をせずにすむので苦痛が少ないという長所がある半面 、適応範囲が狭いことと、胆嚢を残しているために再発が多いことが最大の難点です。

また、破砕した石片が胆嚢管に引っかかると、胆嚢が機能しなくなるケースもみられます。

まだ様々な問題が残されており、根本治療という意味では限界があります。

 

疝痛発作をたびたび繰り返したり、保存療法で軽快しないときや、胆嚢炎、胆管炎を合併しているような場合は手術の適応となります。

手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡下胆嚢摘出術があります。

開腹手術は胆石のある場所によって、所要時間や手術方法、入院期間などが異なります。

最も多くみられる胆嚢内胆石では、胆嚢を切除するだけの簡単な手術で、1~2時間前後で済みます。

総胆管結石の場合は、総胆管を切って胆石を取り除くとともに、胆嚢も摘出します。

摘出後、胆汁が腹腔内に流れないように切開した部分にチューブを入れ、胆汁を体外に排出するなど補助的な処理が必要となるため、胆嚢内胆石の場合よりも入院期間は長くなります。

従来の開腹手術に対し、腹部を切らずに胆嚢を摘出するのが腹腔鏡下胆嚢摘出術です。

腹腔鏡下胆嚢摘出術は、腹部に3~5箇所の小さな孔をあけ、そこに内視鏡の一種である腹腔鏡をいれて、腹腔内をモニターで観察しながら胆嚢を取り出す方法です。

開腹手術のように腹部を大きく切開する必要がないため、手術後の痛みが少なく、傷もほとんど残りません。

開腹手術の入院期間が2週間から1ヶ月ほどかかるのに対し、3日から1週間で退院できることから、画期的な治療法として広く普及してきています。

しかも、治療効果は開腹手術とほとんど変わらないので、今後は腹腔鏡下胆嚢摘出術が治療の主流になっていくと思われます。

保存療法、手術療法のどちらにしても、数多くの方法が開発されて選択肢はますます広がっています。

治療にあたっては、胆石の種類や数、大きさ、胆嚢の状態、全身状態などを把握し、最適な方法が選択されます。

 

 

【中医学的な捉え方】

人体について、中医学的な考え方と、現代医学的な考え方は異なります。

中医学では人体を一つの“小宇宙”として捉えています。

身体にある器官を一つ一つ別個に考えるのではなく、一つの有機体とみなし、常に全体のバランスを視野に入れて病気を考えていきます。

詳しくは、「わかりやすい東洋医学理論」をお読み下さい。

胆石について、関わる臓器は「肝と胆」です。

肝の働き・・・

疏泄を司り、血を貯蔵しています。

疏泄”は流れや発散という意味で、気血の流れを円滑にするという働きを指します。血の貯蔵とは、体内を循環してきた血を貯めて全身の血量 を調節する働きをいいます。

 

胆の働き・・・

肝で生成された精汁である胆汁を蔵し、小腸に分泌する働きがあります。

胆は肝に附属しており、両者は経脈に通じて相互に関連しています。また、胆汁の根源は肝にあり、肝の余気が胆に排泄され、そこで凝集して生成されたものが胆汁であるとされています。

胆汁の分泌は肝の疏泄機能の調節を受け、肝胆は協調して消化機能に関与しています。

肝胆は表裏の関係にあり密接で、一方の機能失調は他方に波及して、最終的には肝胆両者の失調が起こります。

胆石は、「肝胆湿熱」の証で起こると考えます。

原因は、

湿熱の邪を感受(夏・秋に多発)・・・

 

気候の変化も人体に大きく影響します。

湿”は人体には余分な水分です。

夏と秋をつなぐ時期は湿気が最も盛んな季節です。湿気の多い気候、また雨に濡れたり長いあいだ湿った所にいることは湿邪が人体に侵入する原因となります。湿邪は気の運行を阻滞(渋滞)させてしまいます。

また、湿邪が人体に侵入し長く停滞すると熱化していきます。

体内に過剰な水分と熱が停滞している状態は、代謝機能を失調させる原因となります。

 

甘いもの、油っぽいもの、味の濃いものの過食(肥甘厚味の過食)・・

 

このような食べ物は脾胃の消化機能を低下させ湿熱を生成させます。脾胃で形成された湿熱は、肝胆に移行していきます。

 

過度の飲酒・・・

 

少量の飲酒は気血の循環を促しますが、飲み過ぎが長期間続くと、湿熱が生成され脾胃を傷め、肝血を障害します。

 

ストレス(感情の変化)・・・

 

気の流れを円滑に行うのが肝の疏泄機能です。

ストレスは気の渋滞を引き起こします。

以上のような原因により、湿熱が体内に侵入し停滞することで胆汁の排出がスムーズに行われなくなります。熱が発生することで炎症を起こり、肝胆の機能が亢進します。

機能が正常を超えてしまうと、分泌過剰や、濃縮が過剰となり、代謝異常が起こります。

このように、胆汁の鬱滞、炎症、代謝異常が起こることで胆石が形成されていきます。

 

肝胆湿熱で起こる症状には、胆石の他に“脇胸部脹痛・黄疸・食欲減退・悪心嘔吐・口が苦い・寒熱往来(悪寒と発熱が交互にあらわれる)・大便不調(泥状便または便秘)・尿量 減少・陰嚢湿疹・睾丸腫脹・帯下・外陰部瘙痒感”などがあります。

治療方法・・・

清泄湿熱・疏肝利胆(肝胆の湿熱を取り除き、疏泄機能を整えます)

出来てしまった胆石を取り除くことは、鍼灸治療では困難です。

しかし、胆石が出来た事による附随症状の緩和・痛みの軽減に対しては有効かと思います。

(例:食欲不振、季肋部の脹り・痛みなど・・)

そして、胆石の出来やすい体質を改善することを目的にお手当を続けることも大切です。

 

X線撮影やエコー検査(超音波検査)など、現代医学の発達した検査機能を活用し、日常の生活習慣・食生活に気をつけながら適切なお手当を受けて頂きたいと思います。

2019/02/20
蓄膿症

花粉症が流行る春の季節では、鼻が詰まったり、頭痛がしたりする方多いと思います。

しかし、慢性的にこのような症状が現れる病気があるのはご存知でしょうか。

蓄膿症という病気、一度は聞いたことがある方も多いかもしれません。

この病気は、一度発症するとなかなか治りづらく、とても悩んでいる方が多いようです。

今回は、この蓄膿症について述べていきたいと思います。

 

<西洋医学的な蓄膿症>

まず始めに、西洋医学的に捉えた蓄膿症を説明していきます。

 

蓄膿症は、その名の通り、膿が溜る病気ですが、具体的には、鼻腔の周囲にある大小の空洞(副鼻腔)に膿が溜ってしまう病気を言います。

ただ、蓄膿症という名称は、いわゆる俗称であり、正確には慢性の副鼻腔炎のことを言います。

 

この膿が溜る場所である副鼻腔は、顔の骨のなかにある空洞で、一般 的に鼻の穴と言われる鼻腔の奥に位置しています。

 

副鼻腔という空洞は、4つあります。

・上顎洞(じょうがくどう)

・前頭洞(ぜんとうどう)

・篩骨洞(篩骨蜂巣・しこつどう/しこつほうそう)

・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)

 

副鼻腔炎は、これらの空洞が炎症をおこし膿が溜ってしまう病気なのです。

 

症状は、鼻づまり、鼻汁、前頭部に頭重感、嗅覚障害といった症状が現れることがあります。

鼻汁については、いわゆる風邪をひいたときのような、ずるずるとした水溶性のものではなく、粘液性で濃い色のついたものとなります。

 

また、重症になると、鼻腔の周りの器官へ影響が現れるケースも出てきます。

耳から鼻へと通じる管の炎症から中耳炎を起こし、鼻汁がのどに流れ込むことによって、慢性の咽頭炎、気管支炎、胃腸障害にまで発展する例もあります。

 

慢性の副鼻腔炎は、このような症状が繰り返し起こす状態を言い、厳密には、812週間以上続く場合を慢性副鼻腔炎と言います。

 

<原因>

では、なぜこのような炎症が起こるのかを説明します。

 

先ほど述べた症状をみると、とても風邪の諸症状に似ていると思います。

これは、副鼻腔炎と風邪にはとても関連性があるためであると言えます。

実際に、風邪に引き続いて副鼻腔炎となる場合もあります。

このような副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎と言われており、原因は、急性副鼻腔炎はさまざまな細菌やウイルス感染によって引き起こされるものです。

 

では、蓄膿症と呼ばれる慢性副鼻腔炎の原因は何なのでしょう。

もし、急性副鼻腔炎と同じように、さまざまな細菌やウイルス感染のみが原因であれば、細菌やウイルス感染が除去すれば治ると思います。

しかし、慢性副鼻腔炎は、副鼻腔炎の症状が繰り返し発症するものです。

このことを考えると慢性副鼻腔炎の原因は、さまざまな細菌やウイルス感染のみではないと言えます。

では、細菌やウイルス感染以外の要因は何なのか。

これについては、残念ながら現在のところ確実な答えは出ていません。

 

しかし、確実な答えは明がではありませんが、その要因についてはいくつか考えられています。

体質的な要因としては、重度のアレルギ、遺伝的素因、環境的な要因としては、環境汚染物質の影響が考えられています。

 

 

<治療>

繰り返し発症し、その原因も分からない慢性副鼻腔炎ですが、昔は手術による治療が多かったようです。しかし、現在は、抗生物質を長期にわたって持続投与するような、保存的療法による治療が多いようです。

・保存的療法

 - 鼻処置

 

血管収縮剤などを綿棒やスプレーで鼻内に塗布し、鼻汁を吸引する治療です。

 

 - ネブライザー療法

 

抗生物質、ステロイド、血管収縮剤などの入った液を霧状にして鼻に噴霧する治療です。

 

 - 上顎洞穿刺洗浄

 

鼻から上顎洞に針を刺し、貯まっている膿を吸引し、生理食塩水で洗浄する治療です。

 

 - プレッツ置換法

 

薬液を鼻腔内に注入した後、ポリッツェル球と呼ばれる器具で、鼻腔に圧力をかけて、さらに奥にある副鼻腔内に薬液を送り込む治療です。

 

 - 点鼻薬

 

血管収縮剤入りの点鼻薬により、炎症を抑える治療です。

 

 - 薬物療法

 

抗生物質や酵素製剤、粘液溶解剤の投与による治療です。

また、最近では、マクロライド系抗生物質を長期にわたって投与する治療の有効性が認められ、広く使用されているようです。

 

・手術療法

 

長期の保存的療法により症状が改善しない場合は、手術療法が行われることがあります。

 

 

<中医学的な蓄膿症の捉え方>

では次に、中医学的な蓄膿症の捉え方について、述べていきます。

 

鼻孔から生臭い膿が出て鼻が詰まり、嗅覚が減退することもある、このような症状を、中医学では、鼻淵(びえん)もしくは膿漏(のうろう)と言います。

蓄膿症などの慢性副鼻腔炎や急性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎は、中医学ではこの鼻淵という病症として治療を行います。

 

「わかりやすい東洋医学理論」でも述べられていますが、中医学において、人間の体は気、血、水により構成されており、これらを臓腑が正常に運用することで、人間は正常な生理活動を行っています。

では、鼻淵では、これらがどのように失調することで、起こるのかを述べていきます。

 

ただし、今回は蓄膿症(慢性副鼻腔炎)がテーマですので、急性の鼻淵に関わる部分については、割愛させていただきます。ご了承ください。

 

・気と水の失調

慢性的な鼻淵では、多くの場合、気と水の失調が関係します。

気には推動作用があり、これが失調すると、体内の水を押し出す力が弱くなり、水の流れが悪くなります。

この結果、水の異常物質である痰湿が生成され、この痰湿が鼻に凝集することで、鼻淵となります。このような、気と水の失調は、臓腑の失調が大きく関係してきます。

特に、慢性的な鼻淵では、脾や肺の臓器の失調が大きく関係してきます。

 

 

・脾や肺の失調

- 脾臓

 

脾臓は、横隔膜の下、やや左側にある臓器です。

脾臓の主要な生理機能としては、食べ物から得た栄養や水分を体全体に運び出す運化作用や、体内において物質を上に持ち上げる昇精作用などがあります。

鼻淵では主に、運化作用の失調が大きく関係します。

脾臓が持つ気(脾気)が失調することで、運化作用の失調し、その結果 、水がスムーズに流れなくなり、痰湿が鼻に凝集し、鼻淵を起こすことがあるのです。

 

- 肺臓

 

肺臓は、胸腔内に左右一対で存在する臓器です。主な生理作用としては、大気中の有益な物質を取り入れる作用である呼吸や、他にも水分代謝における重要な作用も持っています。

中医学における水分代謝の流れとしては、食物から得た水分が脾臓から肺臓へ運ばれ、肺臓はその水分を腎臓へ運び、不必要な水分は尿として排泄されるという流れとなります。

他にも肺臓が水分を皮毛に散布することで皮毛を潤すと言ったことも水分に関わる重要な生理活動です。

つまり、肺臓に注目すると、肺臓は水分を、適宜、全身に運び出す役割を担っているのです。

このような作用は、肺の通調水道作用と言います。

鼻淵では主に、肺が持つ気(肺気)が失調することで、通調水道作用の失調を起こし、これにより、水分代謝がスムーズにいかず、痰湿が鼻に凝集し、鼻淵を起こすことがあるのです。

 

<鼻淵の原因>

慢性的な鼻淵の多くは、肺臓や脾臓の失調が大きく関係すると、ご理解いただけたかと思います。

では、肺臓や脾臓の失調はどのような原因で起こるのでしょう。

 

・思慮過度によるもの

中医学では、七情という「喜・怒・思・悲・恐・憂・驚」の七種類の感情があり、これらの感情が過度になりすぎることでも、病気になると考えられています。

実際に、思い悩みが過ぎたりすると、胃腸の調子が悪くなるのは、この思い悩みの感情が、脾臓を損傷するためであると考えられています。

鼻淵でも、思い悩みが過ぎたり、過度に物事を考えることで、脾臓を損傷し、水液代謝がスムーズにいかずに鼻淵となることがあります。

このような場合、脾気虚(脾臓の気が不足している状態)による鼻淵といえるでしょう。

 

・過食や偏食によるもの

過食や偏食は、脾臓の機能を低下させます。摂取した食物が多すぎて、本来もつ脾臓の機能では、食物代謝や水分代謝が追いつかず、これを繰り返すことで、脾臓の機能は低下してきます。

脾臓の機能が低下すれば、痰湿を生みやすくなり、鼻淵となることがあります。

このような場合も、脾気虚による鼻淵といえるでしょう。

 

・経過の長い病気によるもの

経過の長い重度の病気は、体内の気血を損傷します。

これにより、脾臓や肺臓の気が不足することで、鼻淵となることがあります。

この場合は、肺気虚による鼻淵の場合もありますし、脾気虚による鼻淵の場合もありえます。

 

・体質的な肺気虚によるもの

もともと、風邪をひきやすかったり、喘息を持つような方もいらっしゃると思います。

このような方は、体質的に肺気虚があり、鼻淵となることがあります。

もちろん、このような場合は、肺気虚による鼻淵といえます。

 

 

<証タイプ別治療方法>

 

では、次に証分類別の治療方法について述べていきます。

先ほど述べた通り、慢性的な鼻淵には、肺気虚、脾気虚によるものがあります。

 

中医学的な治療は、これらの証分類ごとに行われます。

 

・肺気虚による鼻淵

肺気虚による鼻淵の場合、「益気肺気」「去痰」「通竅」の治療を行います。

この治療は、不足している肺気を補い、さらに鼻に凝集している痰湿を取り除き、鼻を通 すという治療です。

また、肺気虚の場合、体の抵抗力が低下していることがあります。

このような場合は、感冒や花粉などのアレルギーが顕著に現れるので、これらの状態を見ながらの治療が必要と思われます。

 

・脾気虚による鼻淵

脾気虚による鼻淵の場合、「益気健脾」「去痰」「通竅」の治療を行います。

この治療は、不足している健脾を補い、水液の運化作用を高めて、鼻に凝集している痰湿を取り除き、鼻を通 すという治療です。

脾気虚による鼻淵のでは、過食や偏食などの食生活の乱れが、症状を悪化させます。

このことからも、普段の食生活も見直しつつ治療を行う必要があると思われます。

 

 

いかがでしょう?

中医学的な蓄膿症の治療はご理解頂けましたでしょうか?

蓄膿症のような慢性的な疾患は、病院での対症療法的なお手当てだけでは、なかなか治りづらいことが多いと思います。

これは、体質や生活をしている環境や食生活が大きく関係しているからと言えるでしょう。

根本的な体質から改善をしたい、その体質にあった食養生を知りたいという方は、一度、中医学的なお手当てをされてみるのも良いかと思います。

 

中医学(東洋医学)全般(鍼灸・漢方・食事療法・体質改善)のご相談は

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2019/02/20
椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、その名の通り、脊椎の間にある椎間板に問題があって起こる病症です。

 

自覚症状○

主に腰から足先にかけての痛みやシビレで、下肢の皮膚感覚が鈍い、座った状態から立ち上がるのが辛い、筋力の低下、排尿障害などをおこす事もあります。咳・くしゃみで痛みが強くなったり、前かがみの姿勢になると痛みが増すなど、体位 を変えると変化があります。

 

《西洋医学的考え方》

 

椎間板とは、脊柱を構成する骨と骨の間にある柔らかいクッションのような役目をする軟骨のことです。例えていうなら、おまんじゅうを平たくつぶしたような形をしており、まわりの皮の部分を繊維輪、あんこの部分を髄核といいます。ヘルニアは、この髄核が何らかの原因により突出してしまった状態をいいます。その突出部が、脊椎の脇を通 る神経を刺激して痛みやシビレをおこします。

 

椎間板ヘルニアの原因○

中腰で重たいものを持ち上げた、スポーツで腰を強くひねったなど、背骨に負担がかかった事等がよく知られていますが、その背景として椎間板や骨の老化・姿勢の悪さなどがあり、思いあたる原因がなくてもおこります。

 

治療方法○

・急性期は、消炎・鎮痛剤や筋弛緩剤を内服し、除痛を図りながらコルセットなどで固定し、安静にします。同時に、痛みのコントロールとしてブロック注射を行う事も多いでしょう。 急性期を過ぎると、温熱療法・低周波療法・ストレッチなどの指導がなされます。

・多くは、これら保存療法で改善される場合が多いのですが、急性期が過ぎても症状が残存する場合は牽引療法を行って様子を見ます。

・排尿排便障害がある場合は手術の適応になります。

 

《中医学的考え方》

 

中医学では、椎間板ヘルニアに相当する病名はありません。なぜなら、西洋医学と中医学は病気の捉え方・考え方が違うからです。西洋医学では、目に見える症状を中心に考えますが、中医学ではその症状が起きる背景・つまり身体のバランスがどのようにくずれたのかを中心に考えます。

 

たとえば、桜に害虫がついて葉が枯れてしまった様な時、害虫の駆除剤を噴霧するのが西洋医学です。中医学では、なぜ害虫がついてしまったのかを考えてから、木に薬を使う事もあれば使わない事もあります。

 

木の生命力そのものが、弱って要る場合は害虫がつきやすくなります。木の栄養源である水や光や土は十分なものだったのか、栄養が十分でもそれを木全体に巡らせる幹に問題はなかったのかなど、全体の状況に応じて手当てをしていくのです。

 

中医学では『人間も、大いなる宇宙と影響しあいながらバランスをとって生きている生命体のひとつ』であり、身体内部も小宇宙であって、『いろいろな臓器がバランスをとりあい、外界の変化に適応しながら生命を維持している』と考えます。

 

病気の背景には、まず何らかのバランスの崩れがあり、その後から症状がでると考えますから、病気の症状は同じでも原因はさまざまであり、治療法もおのずと変わってきます。治療をする時には、そのバランスの崩れを整えていく事を念頭に考えながら、表面 的な痛みなどの症状をとっていきます。

 

では、どのようにしてそのバランスの崩れをつかんでいくのでしょう。西洋医学的な検査ではデータとして出てこないかもしれません。その説明をするには、まず、中医学の生体観についてお話しておきましょう。

中医学では身体を構成し、生命活動の源として働くものは『気・血・津液』であると考えています。

 

気というのは、気持ちの気と同じような意味合いもありますが、中医学では、活力という意味であり、血脈の流れを推進したり、臓器組織の活動を促進したり、人体を栄養する作用もあると考えます。

血は血液という意味よりも広く考えて全身を栄養するだけでなく、精神活動も支えています。

津液は身体をうるおす水分の事です。これらは飲食から得られ、臓腑で消化吸収して作られていきます。

 

気・血・津液は『経絡』という、人体の上下・内外を貫く道筋によって流れ、全身を栄養したり、臓器の機能を調節したりしています。健康な状態では、経絡は全身を滞る事なく流れています。

 

これらのどこかに問題がおこることにより、身体のバランスが崩れます。そしてその微妙な崩れは、日頃の体調(食欲・排尿・排便・睡眠・疲労感・主訴以外の症状)などに現れますし、他覚症状としては、顔色や脈状・舌の色や形にも現れてきます。ですから、それらすべてを総合し、その人全体をとらえて、どのように治療したら良いかを決めていくのです。

 

経絡の流れを良くしてあげる事は、身体機能のバランスをとり、健康な状態に近づけることにつながりますから、治療においては、ただ単に痛みのある部位 だけではなく、経絡上で、その流れを良くしてくれる作用のある穴や、滞りを除いてくれるような穴も使っていきます。穴にはそれぞれ特性がありますから、その詳しい効能を考慮し、効果 的な組み合わせを考える事も大切です。腰痛の治療にも、手足の穴を使いますし、特効穴が手にあったりするのは、そういった理由からです。

 

その人の体質によっても、施術の方法は違います。鍼の刺激に強い人・弱い人、冷え性の人・のぼせがある人等、さまざまな基本体質があるのですから、オーダーメイド的な治療になるのは当然でもあります。

 

治療を続けるうちに、1番問題となっていた症状がとれていくだけでなく、身体全体が元気になっていき、やる気が湧くようになった・風邪をひきにくくなった・などという声をよくきくのは、このように個人の身体全体を大切にした治療をするからではないでしょうか。

 

 

さて、椎間板ヘルニアの話に戻りましょう。

 

椎間板ヘルニアの症状と病因○

自覚症状は最初にあげた通りですが、他覚症状として、舌質は青紫色、オ斑・オ点があることもあり、脈は渋脈、痛みが激しい時は弦脈・緊脈も現れます。

病因の多くは、血が腰背部の経脈に停滞しておこる気血の運行障害です。発症の原因はさまざまです。

 

ヘルニアという症状がでる背景について、腰痛の原因分類からみてみます。

腰痛の病因は、大きくわけてまず風寒湿・風熱湿など外邪による腰部の経絡の滞り、それから高齢や元気不足、長期間の不適切な仕事による慢性疲労、捻挫・打撲など外傷による腰部の気血の運行障害、などが考えられます。

 

また、その根底に、『腎虚』と言って、先天の精・つまり、持って生まれた元気の元のような活力が衰えていることが考えられます。中国古典に「腎は腰の府。腎は骨を主り、髄を生じる」とあり、『腎』は腰の状態にとても関係深い臓器です。また、中医学では腎は骨の働きを管理する役割もありますから、骨の病には、腎のエネルギーを調整する手当ても必要になってきます。

 

治療方針○

根本の問題である「血の滞り」をなくし、気血の流れをよくしていきます。腰背部の経絡の流れをよくする作用を持つ穴は、腰にもありますが、手の甲や、下腿にもあります。

 

血の滞りを起こした痛みの原因が風寒湿熱などの邪気がはいったものであれば、その邪気を払い追い出すような穴を使いますし、慢性疲労であれば元気のでるような穴もつかいます。

 

また「腎」の力を補い、腎の働く力を養うような治療も加えていくと、腰部や骨の働きが良くなるだけでなく、身体に活力が湧いて元気になり、病気が再発しにくい身体づくりが出来ます。

 

もし、痛みが激しい時は、まず痛みを軽くして、根本治療と平行して行います。

 

鍼で痛みがとれるの?と思う方もいらっしゃいますが、現在の日本でも鍼麻酔といって鍼で麻酔をかけ、歯科治療や無痛分娩なども行われているくらいですから、鍼の沈痛効果 は確かなものです。

鎮痛剤を使うのとは違って、胃の調子を悪くすることもありませんし、自然治癒力を強めることにもつながりますから、安心して続けることが出来ます。

 

ただ、気をつけて頂きたいのは、ひとくちに鍼灸治療と言っても、施術方法は多種多様で、表面 的な痛みだけにしか目を向けない治療家も多いという事です。特に最近の日本では、世界的レベルからみて、残念ながら、かなり劣っており、「治療」ではなく「癒し」しか目的としない治療院が乱立しています。表面 だけ癒す事は出来ても、それは治療とはかけ離れたものです。治療院の選択は難しいと思いますが、とにかく、事前に治療内容を調べ、電話やメール等で相談をしてから治療に行く事をお勧めします。

 

鍼灸の治療とは、やはり、伝統医学の根源である「中医学の治療原則」を基本にして初めて、その本当の治療効果 が活かされるものです。身体的にも精神的にも全体的に調和し、バランスがより良くなっていく中医学的治療は、本当に奥が深く、素晴しいものです。また、ここでの治療は、さらに、日本人の繊細な体質にあうように考えられていますし、事前に良く説明もしていますので、安心して治療を受ける事ができます。

 

 

日常生活での養生法○

 

一度ヘルニアになってしまうと再発する事が多いので、治らないと思っている方もいらっしゃいますが、 日常生活で養生することで、再発は防ぐ事ができます。

 

背骨に無理な負担をかけない事が基本ですから、良く知られているのは、重たいものを持ち上げる時に、一度しゃがんでから物を持ち抱え、足の筋力を使って立ち上がることですね。この他、日頃の姿勢に気をつけることも大切です。立っているときには両足に均等に体重をかける・座っている時にはなるべく足を組まない・歩く時にも姿勢良く・荷物を片側の手ばかりに持たないで時々持ちかえる・等です。

 

それから、なるべく規則正しい生活をすることも大切です。睡眠不足など、無理をして疲労をためてしまう事も、食事の時間や量 が乱れて胃腸の調子をくずしてしまう事も、皆、「腎」の活力を消耗する事につながり、結果 的には腰痛を起こしやすい状態になってしまうからです。要するに、中医学的考えにおいては、腎の臓器に負担をかけない事が、腰痛予防にもつながるのであります。

 

また、痛みが激しくなってしまう前に、その前兆のような不快感があったら、早めに鍼灸治療を受けられることをお勧めします。中医学における鍼灸治療は、予防医学でもありますから、ヘルニアの再発を予防する事が出来ます。先にお話しました「身体のバランスの崩れ」を症状が出る前に整えてしまえば、痛い思いをしなくてすむわけです。これを『未病治』といい、中医学においては、とても大切な事と考えられています。

 

身体全体の調和と生命の活力を育む中医学的治療は、身体に無理なく、適切な部位 に、適度な刺激を与えて、人間本来の持つ自然治癒力を高めていきます。宇宙全体に広がるような、大きな優しさのあふれる健康法に、是非一度ふれてみて下さい。

 

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

2019/02/20
動悸

動悸という症状は、よく耳にする症状だと思います。

実際に、年齢を重ねれば、このような症状はめずらしくはありませんし、若年の方であっても、自然な体の反応として、動悸がおこることはしばしばあります。

しかし、一方で体にとって重篤な場合の動悸もあり、決して軽視できない症状でもあります。

今回は、この動悸について述べていきたいと思います。

 

 

<西洋医学的な動悸とは>

 

みなさんもご存じのとおり、心臓は、血液を体全体に搬出するために、収縮、弛緩を繰り返してます。この動きを一般 的に鼓動(拍動)といいます。

普段、安静な状態では、この鼓動を意識することはありませんが、運動後や興奮状態に陥ることで、鼓動を自覚することがあります。

これが、動悸という症状なのです。

簡単に表現すると「胸がドキドキする」といった表現が分かりやすいと思います。

 

この動悸という症状は、運動後や興奮状態で動悸を自覚するのは、ごく自然なことだといえます。

運動をすると、体内の酸素を安静時よりも消費し、酸素が不足している状態となり、その結果 、心臓の鼓動が早くなり、素早く体内に酸素が供給されます。

このような動悸は、むしろ体を維持する上で、自然な反応といえます。

 

他の原因によっても動悸は起こりますが、多くの場合は、生命を脅かすものではないことがほとんどなのです。

 

しかし、時に、重篤な病気が原因となって動悸を誘発していることもあります。

 

たとえば、拡張型心筋症を例に挙げましょう。

この病気は、心筋の細胞の性質が変わって、とくに心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気です。

これにより、血液をうまく送り出せなくなり、うっ血性の心不全を起こすこともあります。

このような重篤な病気が引き金となり、動悸症状を自覚させる場合があるのです。

また他にも、不整脈を伴う心臓の病気でも、動悸症状を自覚する場合があります。

このような重篤な病気が原因の場合、早期に治療を行う必要があります。

 

 

<気をつけるべき随伴症状>

 

身体的に問題のない場合もあれば、原因の早期治療が必要な場合もある動悸症状ですが、重篤な場合は、動悸症状の他にも随伴症状が現れます。

参考のために、一部を紹介します。

 

・胸痛や発作性呼吸困難を伴う場合

 

このような随伴症状は、心臓そのものに原因がある可能性があります。

血液を体内に送り出す機能が低下しているため、すぐに息切れを起こすこともあります。

 

・不整脈

 

安静時にも関わらず、脈が早かったり、遅かったり、また、それらが交互に現れる場合、これも心臓そのものに原因がある可能性があります。

 

・発汗過多および体重減少

 

甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫などの病気により、ホルモン分泌が正常にされていない可能性があります。

 

・全身倦怠感、頭重感

 

鉄欠乏性貧血の場合、このような随伴症状を伴う場合があります。

これらは、動悸の随伴症状の一部ですが、とても重篤な病気が裏に潜んでいる可能性がありますので早急な検査と、重篤な病気が見つかった場合は、早急な治療が必要と思われます。

 

 

<ほとんどは問題のない動悸?>

 

冒頭でも述べたとおり、動悸の多くは、生命にとって問題のないものがほとんどです。

これは、精神的なストレスや、体の状態の微々たる変化によっても、動悸という症状が、現れるからなのでしょう。実際に、病院での心電図検査などでも、何も問題のない結果 となる場合も多いようです。

 

しかし、精神的なストレスが多いこの現代で、この動悸という症状を考えると、あまり軽視できるものではないのかもしれません。精神的なストレスが身体に様々な形で影響を及ぼす以上、病気だけをみるのではなく、生活環境そのものも視野にいれなければ、後に重篤な病気に発展しないとも限りません。

動悸という症状は、生命にとって問題のないものであっても、体にとっての危険信号として捉えるのがよいかと思います。

 

 

<中医学的な動悸の捉えかた>

では、次に中医学的な動悸の捉えかたを述べていきます。

 

中医学では、動悸という症状を「心悸」を呼びます。

「悸」とは、ドキドキする、跳ねるように動くという意味を表す言葉で、心悸とは、動悸がして不安を伴う病症として捉えられています。

 

「心悸」は主に、心の臓の失調により起こります。

心という臓器は、五臓の中でも、もっとも重要な臓器で、人体の生命活動の一切を統帥し主宰することから、「君主の官」とも呼ばれている臓器です。

心では、血液の循環をコントロールする働きと、脳の思惟意識活動の機能を持ち合わせています。

 

つまり、「心悸」という症状は、この血液の循環をコントロールする働きに問題があると発症するのです。

 

 

<動悸の病因病機>

では、どのような原因が心の臓器に問題を引き起こすのでしょう?

 

わかりやすい東洋医学理論でも説明されている通り、中医学では、気、血、津液が身体を構成している物質で構成されています。

心の臓では、その機能を維持するために、気と血が大きく関係しています。

つまり、多くの場合、心の病気は、心が持つ気と血の失調により起こります。

心が持つ気血が体にとって不十分だったり、もしくは気血の運行が悪かったりすることで、血液の循環をコントロールする働きが弱くなってしまうのです。

 

 

<心悸の原因>

では、このような心の気血失調がどのようにして起こるのか、もう少し詳しく述べていきたいと思います。

・経過の長い病気によるもの

 

経過の長い重度の病気は、体内の気血を損傷します。

これにより、心血を損傷することで、心悸を自覚することがあります。

つまり、血虚による心悸なのです。

 

・思慮過度によるもの

 

思い悩みが過ぎたり、過度に物事を考えることで、心血を損傷することがあります。

これにより、心血を損傷することで、心悸を自覚することがあります。

この場合も、経過の長い病気によるものと同じように、血虚による心悸なのです。

 

・過食や偏食によるもの

 

過食や偏食は、脾臓という臓器の機能を低下させます。

脾臓は食物を気血に変え、体内に送り出す役割があります。

また、水液代謝にも関係する重要な臓器です。

この脾臓の機能低下により、痰という体にとって不必要な水分が体内に停留し、それが熱を生み、さらに心臓に影響することで、心悸を自覚することがあります。

つまり、過食や偏食は、痰火による心悸につながるのです。

 

・体質的な心気虚によるもの

 

もともと、心が持つ気が不十分な方もいらっしゃいます。

このような方は、平素から驚きやすい、恐れやすいといった特徴を持っています。

心の気が不足することで、心が血液を送り出す力が弱まり、その結果 、心悸という症状を自覚することがあります。

このような場合は、気虚による心悸と言えます。

 

 

また、体質的な心気虚が発展し、心陽虚となっている方もいらっしゃいます。

このような方は、血の運行が悪く、そのために心に負担がかかり、心悸という症状を自覚することがあります。

このような場合は、お血による心悸と言えます。

 

<証分類別治療方法>

 

では、次に証分類別の治療方法について述べていきます。

先ほど述べた心悸の原因をまとめると、心の気血失調の分類として、気虚、血虚、お血、痰火による分類があると言えます。

 

中医学的な治療は、これらの証分類ごとに行われます。

・気虚による心悸

 

気虚による心悸の場合、「益気安神」のお手当てをして行きます。

「益気安神」は、不足している心気を補充し、精神的な緩和も図ることで、心悸の症状を改善する治療です。

 

・血虚による心悸

 

血虚による心悸の場合、「養血定悸」のお手当てをして行きます。

「養血定悸」は、不足している心血を補充することで、心悸の症状を改善する治療です。

 

・お血による心悸

 

お血による心悸の場合、「活血強心」のお手当てをして行きます。

「活血強心」は、流れの悪い心血の流れを改善し、心の機能も強めることで、心悸の症状を改善する治療です。

 

・痰火による心悸

 

痰火による心悸の場合、「清熱化痰」のお手当てをして行きます。

「清熱化痰」は、熱化した痰を取り除くことで、心悸の症状を改善する治療です。

 

いかがでしょう?

中医学的な動悸の治療はご理解頂けましたでしょうか?

動悸という症状は、しばしば自覚する症状であり、なかなか病気と結び付けづらいものです。

しかし、症状である以上、体の変調の表れであることは確かなのです。

 

時には、ご自身の体の変調に耳を傾けていくのも健康であるための秘訣であるといえます。

耳を傾けてみて、動悸という自覚症状がある方、また、病院で検査をしても検査結果 に表れない動悸をお持ちの方は、一度、中医学的なお手当てをされてみるのも良いかと思います。

 

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