尿失禁とは、不随意(意思とは無関係)におしっこが漏れる状態をいいます。
大人になってからの尿失禁は羞恥心にさいなまれ、普段の生活や外出にも自信が持てなくなってしまいます。また、羞恥心や情報不足などによって治療をしない人も非常に多いのではないかとおもわれます。
尿失禁は、日本では約400万人の人が尿失禁で悩まされています。中でも女性の割合は、男性の3倍にもなります。高齢者に多いのですが、10代の女性では15%ぐらいに、40歳以上の女性には2人に1人の割合で尿失禁が見られます。
尿失禁の影に怖い病気がかくれているということは比較的に少ないのですが、「生活の質」という観点から考えますと、放っておいて悩み続けるのは苦痛であるかと存じます。
これから、おしっこが排泄されるまでの流れと尿失禁について西洋医学と中医学のそれぞれの考え方から治療まで紹介していきたいとおもいます。
<おしっことは>
そもそも、おしっことは一体なんでしょう?
おしっことは食事、水分として体内に取り込んだ物の中の不用物や、人間の生命活動でエネルギーとして使われた物質の老廃物などが血液によって腎臓に運ばれ、吸収、ろ過されたものです。
腎臓で血液から作られる原尿(おしっこの元になる物)の量は一日に180ℓにもなり、ドラム缶
の一本分です。これが100分の1ほどに再吸収ろ過され、残る1〜2ℓが実際に出るおしっこになります。腎臓はこれだけの働きをするので、水分バランスをとるのに非常に重要な器官といわれます。
腎臓でできたおしっこは、一分間に1ccという速度で尿管という管の中をたらたらと流れていき、膀胱の中に溜まっていきます。
膀胱は風船のように伸び縮みする器官です。
150〜300ml.で軽い尿意を感じ、一般的には300〜400ml.ほど溜まるとおしっこにいきます。
我慢をすると500〜600ml.くらいまでは溜めることができます。夜間では膀胱が膨らみやすくなり800ml.までは溜めることができます。
膀胱におしっこが300〜400ml.溜まると風船をつぶす様に膀胱の壁(筋肉)が収縮してきます。そして、おしっこは膀胱から尿道という管を通
り対外へ排泄されます。
尿道には自動的に動く筋肉と自分の意思でコントロールできる筋肉(尿道括約筋)があり、健康な状態では尿意を感じてもある程度コントロールすることができます。排尿の回数は成人で4〜8回が一般
的。
このようにして、血液の不用物はおしっことして対外に排泄されることになります。
※女性と男性の尿道の違い
女性は尿道の長さは4〜5cmで、尿道括約筋が少し弱い。海から近い浜名湖のイメージ
男性の尿道はL字型になっており長さも20cmほどになり、精液も通るため丈夫にできている。海から遠い琵琶湖のイメージ
<西洋医学から尿失禁を考える>
尿失禁の頻度の多いものとして、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁があります。その他には機能性尿失禁、溢流性(いつりゅうせい)尿失禁などがあります。
ここでは、特に頻度の多い腹圧性尿失禁を中心にお話しして行きたいとおもいます。
○腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁とは、咳やくしゃみ、走るなどで腹圧(お腹の中の圧力)が上がってしまったためにおこる尿失禁です。女性特有の症状で男性にはほとんどありません。また、女性の尿失禁の中でも7割ほどを占める症状です。男性におこるのは前立腺の術後などです。
腹圧性尿失禁でも、たまにおしっこが漏れる程度で下着を換える必要もなく生活に支障がない程度でしたら問題はありません。失禁が毎日あったり、下着の交換が必要な状態になったりしましたら治療が必要になります。
| 症状 |
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腹圧性尿失禁の場合、尿意はありません。瞬間的にお腹に力が入ったときにおしっこが漏れる状態です。症状が重くなると歩いているだけでも漏れたり、ちょっと体勢を変えただけでも漏れたりします。 |
| 原因 |
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骨盤底筋や尿道括約筋の収縮(引き締める)力が弱くなり、下がってしまい、膀胱の出口を締める力が弱くなってしまったためにおこります。つまり、膀胱の圧力に耐えられなくなってしまった状態です。
婦人科の手術の経験がある。肥満、便秘、冷えなども影響します。
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※骨盤底筋とは、恥骨と尾骨(尾底骨)の間にハンモックのように張っていて、泌尿器、腟、子宮、直腸などを吊り上げている筋肉です。妊娠、出産、加齢などにより筋力が弱くなります。
| 検査 |
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問診(中等度までの尿失禁の場合は問診で大体分かります) |
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パッドテスト(尿失禁定量テスト)…パッドを股間に当てた状態で、500ml.の水を、飲んで、15分安静後、30分以上歩行するなど一定の動きをして漏れたおしっこの重量
(2g以下〜50g以上の間で5段階分)でグレイド分けをするテスト。 |
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チェーンテスト…医療用のチェーンを尿道から膀胱に入れレントゲンで撮影する。腹圧性尿失禁の人は膀胱がうしろ側に落ち込んでいるので角度を計測して判断する。 |
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尿道、膀胱内圧検査…管を使って膀胱に水を入れて、圧力計で測定する。 |
| 治療 |
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運動療法…尿道括約筋を含めた骨盤底筋の意識的収縮を行う骨盤底筋体操(※1)を約3ヶ月おこなう。 |
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A |
薬物療法…運動療法だけでうまく治らなかったり、運動療法の補助として、膀胱の筋肉を緩める薬や、尿道括約筋の収縮力を強くする薬を使用 |
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B |
手術療法…運動療法、薬物療法で良い効果
が上がらない場合は手術療法を選択します。 |
・コラーゲン注入法(尿道をふくらます)
・尿道、膀胱を吊り上げる手術
※1:骨盤底筋体操―緩んだ骨盤底筋を鍛える体操です
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仰向けになり、膝を立て身体の力をぬ
きます(膝を立てると腹筋が緩みやすい)。 |
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A |
肛門、腟、尿道に力を入れ収縮させる。身体の中に引き上げる感じ。(慣れないうちは肛門を収縮させることから始める) |
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B |
お腹に力は入れないこと(膀胱、尿道を押し下げてしまうため) |
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C |
5秒かけて収縮させ、ゆっくりと緩める |
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D |
椅子に腰掛けた姿勢、四つんばいの姿勢、立って手を机などについた姿勢などの姿勢でおこなう |
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E |
これらの中でやりやすい姿勢を選んで、一日に50回おこなう |
○切迫性尿失禁
強い尿意がありトイレまで我慢できずにおしっこが漏れてしまうタイプ。
尿道には問題はなく、膀胱の異常収縮でおこります。切迫性尿失禁には急性膀胱炎などの一時的なもの(女性に多い)、高齢によるもの(不安定膀胱)、脳や背髄の病気によるもの(神経因性膀胱)にわかれます。
| 症状 |
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強い尿意を感じるが、トイレに間に合わず漏れる。
尿量が多い(ときに大量になる)
頻尿を伴う。 |
| 原因 |
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膀胱炎など原因のはっきりしているもの。
脳から膀胱へ間違った情報がいってしまうなどがあります。
不安定膀胱については原因不明 |
| 治療 |
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膀胱炎は膀胱炎の治療をすることにより改善します。
神経性膀胱と不安定膀胱は薬物療法により膀胱の筋を緩めることが主体になりますが、改善はなかなか難しいようです。 |
その他の溢流性尿失禁とは、男性に多く、膀胱に尿がたまり過ぎて漏れだすタイプですが、詳しくは別
の章で紹介いたします。
機能性尿失禁とは手足が不自由なもの、痴呆によるもので排尿機能には問題がないので、こちらも省かせていただきます。