
(病の捉え方・治療方針とは・・・)
「中国医学」とは、日本では一般的に「東洋医学」(鍼灸・漢方)と称されているものですが、実は本家中国とは多少理論や診察法、治療法に違いがあります。
中国では、「中国医学」は略称「中医学」と呼ばれ、鍼灸、漢方治療を行なう際、伝統的で系統のある診察方法を取り入れた体内の活力エネルギーバランスを見る医学です。
上記で述べました「体内活力エネルギー」とは、人間が生まれた時から備えている「三大活力エネルギー」の事です。一般
的には「自然治癒力」と称されています。ではその「自然治癒力」とは一体何なんでしょうか?例えば、空気は目に見えませんが、人間が生活してゆく上で欠かせないものですよね。それと同じ様なもので、体の中に存在し、エネルギー源となって体を動かしたり、体の健康を維持したりしているものを意味します。
そして「三大活力エネルギー」とは、気・血・水のことを言います。気とは活力、内臓を働かす力、血とは栄養素、滋養物資、水とは体を潤す力や体内の正常の水液を指します。中国医学ではこの3つのエネルギーがバランス良くとれている状態を重んじています。これらが人間の元気な状態を維持すると考えてられているのです。
そして、これらのどれかがバランスを崩した時、(崩れたバランス量
によりますが)病が起き易い、或いは起きてしまうということになります。しかし、エネルギーバランスが自然に調整される場合もあります。それは、エネルギーの損傷が軽い場合です。このように、損傷が軽いときは調整される場合もあり、逆にこれらのバランスを調整しないが為に症状が慢性化したり、治りずらくなったりします。或いは実際に症状があっても、検査数値に出て来ないということもあります。これらのバランスは精神的な負荷、急激な気候の変化、普段の偏った食事、睡眠の具合、加齢などの様々な事から影響を受けます。特に精神力が低下している時、体力が落ちている時、疲れている時は影響を受けやすくなります。ただ目には見えない物ですから、一般
的には理解しにくいかもしれませんね。
また、中国医学で考える内蔵(臓腑)のはたらきは西洋医学でいう内臓の働きとイコールではありません。ですから名称も多少違います。中国医学では肝臓を“肝の臓”と呼び、心臓は“心の臓”と称します。これは呼び方を変える事により中国医学の肝の臓は西洋医学の肝臓と同じ意味になりませんということを表しているのです。
そして、中国医学の内臓(臓腑)と西洋医学の内臓の一番大きな違いは、それぞれの役割です。中国医学には、それぞれの内臓(臓腑)に西洋医学にはない役割を与えています。
例えば西洋医学では、肝臓は「消化器系や体内ホルモン分泌の機能を持つ臓器」とされますが、中国医学では、血の貯蔵、目の働き、筋肉の働き、女性の生理の働きに関与を持ち、或いは精神活動、ストレスを受けた時、肝の臓が関わる働きに対して症が出やすい臓器と考えられています。このように、肝の臓は気のエネルギーを全身にスムーズに流すよう働きかける機能を持つものとされています。肝臓一つを取り上げても、こういった役割の違いがありますから、他の臓器に関しても同じ事が言えますが、ここでは割愛させて頂きます。
さて中国医学の場合、患者さんを診る時に色々な角度から個人の情報を得ます。舌の色・型・苔などの状態、脈の打ち方に力が有る無い、速い遅いなどから分析します。(例:舌の色、型で気・血・水のアンバランスを見分けます。気が足りないのか、血が滞っているのか、水が多すぎるか等が分かります。)診察・問診で得た症状、情報を総合的にまとめ、中国医学理論の考えに当てはめていきます。そして個人の体質と活力エネルギーバランスがどこで(臓器)、何が(気・血・水)、どの様に(不足・過剰・停滞)なっているかを見極め、それにより治療方針を決め、鍼灸治療や漢方処方を出す様な型となります。
ですから本来の鍼灸治療に関して言えば、単にTこの病だから何とかのツボは何に効く、だから刺激を与えようU或いはT痛い所、局所のみに手当てを行なうUという治療ではないのです。症状の原因に対してツボの作用、効能などをしっかり考え、組み合わせ、治療方針を立てていきます。大事なのは根本的なエネルギーの崩れを調整することです。最終的に活力エネルギーが調整された時、自然治癒力も自ずと高まり、体調回復し、そしてツボ刺激の治療が達成されたということになるのです。
◆ツボの作用と効能について
「作用」とはツボの働き方であり、温める作用、熱を下げる作用、エネルギーを補充する作用などを指し、「効能」とは胃の症状に効く、頭痛に効く、婦人科疾患に効くと言う様な事で、症状に対して調整、働きかけると思って下さい。ツボは体質、症状、活力エネルギーの崩れに合わせ、組み合わせて始めて局所的な治療のみでなく、体質改善、エネルギーバランス調整の治療となります。
〈ツボの作用・効能(効果)の例 〉
人間の体は機械とは違い、壊れたから部品を変えるという訳には行きません。しかも精密であると共に、ひとりひとり微妙に異なります。10人居れば10通
りの体質があり、活力エネルギーのバランスも10人十色となります。
ですから病の治し方も、個人個人に合わせて手当てをして行く必要があると考えます。その為にツボ配穴は、個人の体質の違いで使い分けて行きます。もちろん数値や症状を抑えて治して行く治療も大切です。
しかし、病・症状によって活力エネルギーの手当て、自然治癒力を高めて行く治療も必要だと考えます。
このように中国医学は、数値や症状を抑える治療に目を向けているのではなく、あくまでも個々の体質改善、病を治そうとする気・血・水・活力エネルギーを調整し、回復させ、自然治癒力を高めて行く治療だということです。
症状があるのに検査異常、数値異常が見つからない方、血の道症、精神疾患、加齢や症状の慢性化でなかなか改善されない時は、違う視点から見立てる意味に於いても、中国医学の受診や相談を考えるのも良いかも知れませんね。尚、体調不良は無くても、普段から予防養生で受診されると、活力エネルギーを良い状態に保て、健康維持にもつながります。また体質改善は、活力エネルギーのバランス調整をすることにより可能となります。これも中国医学の特徴のひとつと言えます。
◆鍼の刺入と刺激量によって得られる“鍼の得気”について
得気とは、体内に鍼を刺入した時に得られるTツンUTダルイUT重いUT張る様な感覚Uの事を言います。
時々、このT得気感UをT痛みUと勘違いしてしまう方がいますが、この反応は痛みとは違うものです。この得気感があったと言うことは、鍼の刺激により体の中の自然治癒力が働きだし、
治ろうとしている良い反応だということをご理解下さい。決して未熟な技術による刺入痛とは違います。刺入痛の場合は、チクとした鈍い感じがします。
尚、この場を借り中国鍼の説明もさせて頂きたいと思います。
一般には太い鍼、強い刺激を与えるのが中国鍼と捉えている方々が多いのですが、実は太い鍼、強い刺激が本来の中国鍼ではありません。ただ、前記で述べた様に鍼の得気を得る為に、やや太目の鍼或いは刺激を加えることはあります。
ですが、中国鍼で一番大切なのは患者さんの体質、崩れたエネルギーバランスの把握と症状の進行具合の判断をし、それらに合わせたその時々の状態にツボの組み合わせを考え、治療を行なう事です。ですから、痛い所、或いは患っている所に単純に鍼を行なうというのではなく、全体のバランスを考え、どのツボが一番現状に対して効果
の高い治療が得られるのかを考え、手当てを行なうのが中国鍼なのです。
確かに、得気を得るために一般の日本式鍼治療より刺激は多少強めになります。ですが、それは体をケア、治すのに必要な刺激であり、決して無意味に刺激を与えている訳ではありません。
その点を理解し中国鍼を受診されると、きっと良い結果、反応が得られると思います。また、個人の感受性によって軽い刺激で治療効果
を得られる方もおります。その様な方には、施術者サイドが見極めて刺激を行なうことでしょう。尚、中国鍼は、体質改善をする根本治療と症状を軽くする対症療法を同時に行なえる治療であることを知って頂きたいと思います。
「鍼灸のいろは」いかがでしたでしょうか?なじみのない気・血・水という言葉が出てきましたが、実際、人間の体内にはその様な活力エネルギーが存在していると理解して頂けたらありがたいかと思います。中国医学に関して何か質問、関心がある時はメール或いは電話などで質問して下さいね。
中国医学が体調不良で悩まれている方々のお役に立てられれば幸いかと存じます。
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